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特開2015-168091プレストレストコンクリート部材の製造装置、及びプレストレストコンクリート部材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-168091(P2015-168091A)
(43)【公開日】2015年9月28日
(54)【発明の名称】プレストレストコンクリート部材の製造装置、及びプレストレストコンクリート部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 23/04 20060101AFI20150901BHJP
【FI】
   B28B23/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-42496(P2014-42496)
(22)【出願日】2014年3月5日
(71)【出願人】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 伸二
(72)【発明者】
【氏名】浅井 洋
(72)【発明者】
【氏名】竹山 忠臣
(72)【発明者】
【氏名】三加 崇
【テーマコード(参考)】
4G058
【Fターム(参考)】
4G058GA01
4G058GB01
4G058GF12
4G058GF17
4G058GF26
4G058GF30
(57)【要約】
【課題】プレストレストコンクリート部材を製造するに当たり、緊張材の配置や緊張の作業を簡素化できるようにする。
【解決手段】緊張材Wには可撓性に富むもの(例えば、強化繊維製の紐状部材や、金属製のワイヤ)を用い、図1(a) 及び(b) に示すように、該緊張材Wを複数の軸状部材2A,…、2B,…に順次巻き掛けて行く。そして、該緊張材Wの一端は図1(d) に示すように固定し、該緊張材Wの他端は図1(c) に符号30で示すような部材(被回転部材)に巻き付けて、該被回転部材30を回転させる。これによって、緊張材Wは全長に亘って緊張されることとなる。本発明によれば、何本もの緊張材を並設する場合に比べて、緊張材の配置や緊張の作業を簡素化できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊張力が付与された緊張材を生コンクリートに埋設してプレストレストコンクリート部材を製造する、プレストレストコンクリート部材の製造装置において、
可撓性に富む前記緊張材が巻き掛けられるように構成されると共に前記生コンクリートの少なくとも一部を挟むようにその一側と他側とにそれぞれ複数個ずつ配置された被巻掛部材(以下、該一側に配置された被巻掛部材を“第1被巻掛部材”とし、該他側に配置された被巻掛部材を“第2被巻掛部材”とする)と、
前記第1被巻掛部材と前記第2被巻掛部材とに順次巻き掛けられながら該第1被巻掛部材と該第2被巻掛部材との間に掛け渡された状態で前記生コンクリートに埋設されてなる前記緊張材に緊張力を付与する緊張力付与手段と、
を備えたことを特徴とする、プレストレストコンクリート部材の製造装置。
【請求項2】
前記緊張力付与手段は、前記第1被巻掛部材と前記第2被巻掛部材とが互いに離れる方向に該第1被巻掛部材及び/又は該第2被巻掛部材を駆動することにより前記緊張材に緊張力を付与するように構成された、
ことを特徴とする請求項1に記載の、プレストレストコンクリート部材の製造装置。
【請求項3】
前記緊張力付与手段は、回転自在に支持されると共に電動モーターの回転軸に接続可能な被回転部材を有し、前記緊張材が巻き掛けられた状態の前記被回転部材を前記電動モーターで回転させることにより該緊張材に緊張力を付与するように構成された、
ことを特徴とする請求項1に記載の、プレストレストコンクリート部材の製造装置。
【請求項4】
前記電動モーターは電動工具のモーターである、
ことを特徴とする請求項3に記載の、プレストレストコンクリート部材の製造装置。
【請求項5】
前記第1及び第2被巻掛部材は、前記生コンクリートの表面に略直交する方向に延設された軸状の部材である、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の、プレストレストコンクリート部材の製造装置。
【請求項6】
前記第1及び第2被巻掛部材を回転自在に支持すると共に振動させる加振手段、
を備えたことを特徴とする請求項5に記載の、プレストレストコンクリート部材の製造装置。
【請求項7】
緊張力が付与された緊張材を生コンクリートに埋設してプレストレストコンクリート部材を製造する、プレストレストコンクリート部材の製造方法において、
可撓性に富む前記緊張材が巻き掛けられるように構成された被巻掛部材を、前記生コンクリートの少なくとも一部を挟むようにその一側と他側とにそれぞれ複数個ずつ配置する工程(以下、該一側に配置された被巻掛部材を“第1被巻掛部材”とし、該他側に配置された被巻掛部材を“第2被巻掛部材”とする)と、
前記緊張材を前記第1被巻掛部材と前記第2被巻掛部材とに順次巻き掛けながら該第1被巻掛部材と該第2被巻掛部材との間に掛け渡す工程と、
回転自在に支持された被回転部材に前記緊張材を巻き掛ける工程と、
電動モーターの回転軸に前記被回転部材を接続し、前記緊張材が巻き掛けられた状態の前記被回転部材を前記電動モーターで回転させることにより該緊張材に緊張力を付与する工程と、
前記緊張材を前記生コンクリートに埋設する工程と、
を備えたことを特徴とする、プレストレストコンクリート部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊張力が付与された緊張材を生コンクリートに埋設してプレストレストコンクリート部材を製造するプレストレストコンクリート部材の製造装置、及びプレストレストコンクリート部材の製造方法に係り、詳しくは、可撓性に富む緊張材を使用するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、緊張力が付与された緊張材を生コンクリートに埋設してプレストレストコンクリート部材を製造する技術については種々のものが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
図4は、プレストレストコンクリート部材の製造装置及び製造方法の一例(従来例)を示す平面図であり、符号24は、コンクリートが打設される型枠を示し、符号25は、該型枠24を囲むように配置された枠状の架台を示している。また、この枠状の架台25には、複数本の緊張材(PC鋼材)Wが緊張された状態で固定されている。そして、該緊張材W,…を埋め込むように前記型枠24内に生コンクリートを打設することにより、プレストレストコンクリート部材が製造されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−266422号公報
【特許文献2】特開平11−061989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の製造装置及び製造方法の場合、前記緊張材Wを1本ずつ緊張した状態で前記架台25に取り付けて行かなければならず、その作業が煩雑であった。
【0006】
本発明は、上述の問題を解消することのできるプレストレストコンクリート部材の製造装置、及びプレストレストコンクリート部材の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、図1(a) 及び図2に例示するものであって、緊張力が付与された緊張材(W)を生コンクリート(図2の符号C参照)に埋設してプレストレストコンクリート部材を製造する、プレストレストコンクリート部材の製造装置(1,10)において、
可撓性に富む前記緊張材(W)が巻き掛けられるように構成されると共に前記生コンクリート(C)の少なくとも一部を挟むようにその一側と他側とにそれぞれ複数個ずつ配置された被巻掛部材(2A,…、2B,…、12A,…、12B,…)(以下、該一側に配置された被巻掛部材を“第1被巻掛部材”とし、該他側に配置された被巻掛部材を“第2被巻掛部材”とする)と、
前記第1被巻掛部材(2A,…、12A,…)と前記第2被巻掛部材(2B,…、12B,…)とに順次巻き掛けられながら該第1被巻掛部材(2A,…、12A,…)と該第2被巻掛部材(2B,…、12B,…)との間に掛け渡された状態で前記生コンクリート(C)に埋設されてなる前記緊張材(W)に緊張力を付与する緊張力付与手段(3,13)と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、図2に例示するものであって、請求項1に係る発明において、前記緊張力付与手段(13)が、前記第1被巻掛部材(12A,…)と前記第2被巻掛部材(12B,…)とが互いに離れる方向(矢印P参照)に該第1被巻掛部材(12A,…)及び/又は該第2被巻掛部材(12B,…)を駆動することにより前記緊張材(W)に緊張力を付与するように構成されたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、図1(a) 及び(c) に例示するものであって、請求項1に係る発明において、前記緊張力付与手段(3)が、回転自在に支持されると共に電動モーター(不図示)の回転軸に接続可能な被回転部材(30)を有し、前記緊張材(W)が巻き掛けられた状態の前記被回転部材(30)を前記電動モーターで回転させることにより該緊張材(W)に緊張力を付与するように構成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の発明において、前記電動モーターが電動工具のモーターであることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発明において、前記第1及び第2被巻掛部材(2A,…、2B,…、12A,…、12B,…)が、前記生コンクリート(C)の表面に略直交する方向に延設された軸状の部材であることを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の発明において、前記第1及び第2被巻掛部材(2A,…、2B,…)を回転自在に支持すると共に振動させる加振手段(図1(a) の符号15参照)、を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る発明は、緊張力が付与された緊張材(W)を生コンクリート(C)に埋設してプレストレストコンクリート部材を製造する、プレストレストコンクリート部材の製造方法において、
可撓性に富む前記緊張材(W)が巻き掛けられるように構成された被巻掛部材(2A,…、2B,…、12A,…、12B,…)を、前記生コンクリート(C)の少なくとも一部を挟むようにその一側と他側とにそれぞれ複数個ずつ配置する工程(以下、該一側に配置された被巻掛部材(2A,…、12A,…)を“第1被巻掛部材”とし、該他側に配置された被巻掛部材(2B,…、12B,…)を“第2被巻掛部材”とする)と、
前記緊張材(W)を前記第1被巻掛部材(2A,…、12A,…)と前記第2被巻掛部材(2B,…、12B,…)とに順次巻き掛けながら該第1被巻掛部材(2A,…、12A,…)と該第2被巻掛部材(2B,…、12B,…)との間に掛け渡す工程と、
回転自在に支持された被回転部材(30)に前記緊張材(W)を巻き掛ける工程と、
電動モーターの回転軸に前記被回転部材(30)を接続し、前記緊張材(W)が巻き掛けられた状態の前記被回転部材(30)を前記電動モーターで回転させることにより該緊張材(W)に緊張力を付与する工程と、
前記緊張材(W)を前記生コンクリート(C)に埋設する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0015】
請求項1、2及び5に係る発明によれば、前記被巻掛部材が複数配置されていて、可撓性に富む前記緊張材を各被巻掛部材に巻き掛けて配置するようになっているので、複数本ではなく1本の該緊張材でありながらも該緊張材を比較的広い領域に配置し、緊張力付与手段によって該緊張材に緊張力を一挙に付与することができる。したがって、複数本の緊張材を1本ずつ配置して緊張力を付与していく場合に比べて、その作業を簡素化できる。
【0016】
通常、並列配置されたN本の緊張材にそれぞれFの大きさの緊張力を一気に与えようとすると、F×Nの力で緊張する必要があるが、請求項3及び7に係る発明によれば、Fの力の緊張だけで足り、その分、緊張力付与手段をコンパクトなものにできる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、製造装置自体に電動モーターを常備しておく必要が無く、その分、低コスト化及び省スペース化を図ることができる。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、前記緊張材と前記被巻掛部材との間の摩擦が振動によって低減されることとなり、前記緊張力付与手段により付与される緊張力が該緊張材の全長に亘ってロス無く伝達される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1(a) は、本発明に係るプレストレストコンクリート部材の製造装置の構造の一例を示す平面図であり、同図(b) は、第1及び第2被巻掛部材に緊張材を巻き掛ける様子の一例を示す模式図であり、同図(c) は、緊張力付与手段の構成の一例を示す平面図であり、同図(d) は、緊張材を固定する状態を示す側面図である。
図2図2は、本発明に係るプレストレストコンクリート部材の製造装置の構造の他の例を示す平面図である。
図3図3(a) 〜(d) は、本発明に係るプレストレストコンクリート部材の製造方法の一例を示す模式図(側面図)である。
図4図4は、プレストレストコンクリート部材の製造装置及び製造方法の一例(従来例)を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1乃至図3に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0021】
本発明に係るプレストレストコンクリート部材の製造装置は、緊張力が付与された緊張材を生コンクリートに埋設してプレストレストコンクリート部材(床スラブ等)を製造するための装置である。また、該製造装置において用いることができる緊張材は、可撓性に富む長尺のもの(つまり、折り曲げることができる程度の柔軟なもの)であり、具体的には、
・ アラミド繊維や炭素繊維などの強化繊維からなる紐状のものや、
・ 金属製のワイヤー
を挙げることができ、好ましくは、3000N/mm以上の引張弾性率を持つ材料を挙げることができる。
【0022】
また、本発明に係るプレストレストコンクリート部材の製造装置は、図1(a) 及び図2に符号1及び10で例示するものであって、前記緊張材Wが巻き掛けられるように構成された被巻掛部材2A,…,2B,…,2C,…,2D,…,12A,…,12B,…を備えている。これらの被巻掛部材2A,…,12A,…としては、種々の形態のものを挙げることができるが、
・ 回転自在に支持された部材(例えば、ボルトや丸棒などの軸状の部材や、ローラーや、滑車など)
・ 低摩擦係数の材料で形成された部材(例えば、フック状の部材や、その他の形状の部材)
などを用いて、緊張力が前記緊張材Wの全長に亘ってロス無く伝達されるようにすると良い。なお、前記緊張材Wの横ズレ(例えば、回転自在に支持された部材を被巻掛部材に用いる場合にはその回転軸方向のズレ)を防止するために、
・ 被巻掛部材にローラーを用いる場合には鼓状のローラーを用いたり、
・ ローラーや滑車以外の被巻掛部材を用いる場合には、前記緊張材の経路を規定するための溝や凹みを形成したり、
しておくと良い。
【0023】
前記被巻掛部材2A,…,12A,…は、打設される生コンクリート(図2の符号C参照)を挟むようにその一側と他側とにそれぞれ複数個ずつ配置されている。なお、本明細書においては、該一側に配置された被巻掛部材2A,12Aを“第1被巻掛部材”とし、該他側に配置された被巻掛部材2B,12Bを“第2被巻掛部材”とする。これらの第1被巻掛部材2A,12Aと第2被巻掛部材2B,12Bとは、打設される生コンクリートの全体を挟む位置(つまり、生コンクリートに埋設されない位置)に配置されている方が好ましいが、(緊張材Wに緊張力を付与できる構成であれば)打設される生コンクリートCの一部を挟む位置(つまり、生コンクリートに埋設される位置)に配置されていても良い。したがって、本発明における被巻掛部材2A,…,12A,…は、前記生コンクリートCの“少なくとも一部”を挟むようにその一側と他側とにそれぞれ複数個ずつ配置されていれば良い。後者の場合(つまり、生コンクリートに埋設される位置に被巻掛部材を配置する場合)は、該被巻掛部材は鉄筋に固定しても良く、或いは、鉄筋自体を被巻掛部材として該鉄筋に緊張材を巻き掛けるようにしても良い。一方、図1(a) (b) 及び図2に示す例では、前記緊張材Wは各被巻掛部材2A,…,12A,…に略半周だけ巻き掛けられた状態であるが、緊張力の伝達が阻害されない状態であれば1周以上巻き掛けられていても良い。
【0024】
なお、前記第1被巻掛部材と前記第2被巻掛部材とは、生コンクリートを挟むように配置されていれば足り、その条件を満たしさえすればどのような位置に配置されていても良い。例えば、図1(a) に示す例では、前記第1被巻掛部材12A,…、12C,…と前記第2被巻掛部材12B,…、12D,…とは、矩形状に打設されるコンクリートを挟み込むようにその四辺に沿ってそれぞれ配置されているが、もちろんこれに限られるものではなく、
・ 四辺の内のいずれか三辺に沿ってそれぞれ配置する場合
・ 四辺の内のいずれか二辺(相対向して略平行な二辺、或いは隣り合う二辺)に沿ってそれぞれ配置する場合、
を排除するものではなく、さらには、打設されるコンクリートの辺に沿わない(つまり、該辺に対して平行でない)位置に配置して良く、打設されるコンクリートが矩形状以外の形状であっても良い。なお、図1(a) に示す例では、2本の緊張材W,Wが2つの方向(つまり、x方向とy方向)にそれぞれ掛け渡されるように碁盤の目状に配置されているが、図2に例示するように1つの方向xに掛け渡すようにしても良い。また、図1(a) (b) 及び図2に示す例では、前記第1被巻掛部材2A,…、12A,…及び前記第2被巻掛部材2B,…、12B,…は、それぞれ一列に整列させた状態で配置されているが、もちろんこれに限られるものではなく、整列させない状態で配置するようにしても良い。さらに、前記第1被巻掛部材2A,…、12A,…と前記第2被巻掛部材2B,…12B,…、とは同じ個数でなくても良い。
【0025】
一方、本発明に係る、プレストレストコンクリート部材の製造装置1,10は、前記緊張材W(つまり、前記第1被巻掛部材2A,…、12A,…と前記第2被巻掛部材2B…、12B,…とに順次巻き掛けられながら該第1被巻掛部材2A,…、12A,…と該第2被巻掛部材2B…、12B,…との間に掛け渡された状態で前記生コンクリートCの少なくとも一部に埋設された緊張材W)に緊張力を付与する緊張力付与手段3,13、を備えている。
【0026】
本発明によれば、前記被巻掛部材2A,…が複数配置されていて、可撓性に富む前記緊張材Wを各被巻掛部材2A,…に巻き掛けて配置するようになっているので、複数本ではなく1本の該緊張材Wでありながらも該緊張材Wを比較的広い領域に配置し、緊張力付与手段3,13によって該緊張材Wに緊張力を一挙に付与することができる。したがって、図4に例示するように複数本の緊張材Wを1本ずつ配置して緊張力を付与していく場合に比べて、その作業を簡素化できる。
【0027】
ところで、図1(b) に示す例では、前記緊張材Wが巻き掛けられている順序は、
・ 第1被巻掛部材2A
・ 第2被巻掛部材2B
・ 該第1被巻掛部材2Aの隣の第1被巻掛部材2A
・ 該第2被巻掛部材2Bの隣の第2被巻掛部材2B
………の順序であるが、もちろんこれに限られるものではなく、前記緊張材Wが前記第1被巻掛部材2A,…と前記第2被巻掛部材2B,…とに順次巻き掛けられながら該第1被巻掛部材2A,…と該第2被巻掛部材2B,…との間に掛け渡された状態で前記生コンクリートCの少なくとも一部に埋設されるのであれば、どのような順序であっても良い。例えば、
・ 第1被巻掛部材2A
・ 該第1被巻掛部材2Aの隣の第1被巻掛部材2A
・ 第2被巻掛部材2B
・ 該第2被巻掛部材2Bの隣の第2被巻掛部材2B
………の順序で前記緊張材Wが巻き掛けられていても良い。また、該緊張材Wの端部は、図1(d) に示すように、何らかの係止部材Eに結びつけたりして固定しておくと良い。
【0028】
図2に例示する緊張力付与手段13は、前記第1被巻掛部材12A,…と前記第2被巻掛部材12B,…とが互いに離れる方向(矢印P参照)に該第1被巻掛部材12A,…及び該第2被巻掛部材12B,…を駆動する(移動させる)ことにより前記緊張材Wに緊張力を付与するように構成されている。なお、図中の符号130は、前記第1被巻掛部材12A,…及び前記第2被巻掛部材12B,…を支持すると共にP方向に移動可能な部材(介装部材)を示し、符号131は、これらの被巻掛部材12A,…,12B,…をそれぞれ駆動するための駆動手段を示し、符号132は、該介装部材130と該駆動手段131とを連結する連結部材を示している。なお、該第1被巻掛部材12A,…及び該第2被巻掛部材12B,…の両方を駆動するのではなく、どちらか一方を固定しておいて他方を駆動するようにしても良い。また、前記駆動手段131には油圧ジャッキや電動モーター等の公知の手段を用いると良い。さらに、符号14は、生コンクリートを打設するための型枠を示している。
【0029】
一方、図1(a) 及び(c) に例示する緊張力付与手段3は、回転自在に支持された部材(本明細書においては“被回転部材”とする)30を有しており、該被回転部材30には、電動モーター(不図示)の回転軸に接続可能となるような被係合部31が形成されている。そして、前記緊張材Wが巻き掛けられた状態の該被回転部材30を前記電動モーターで回転させることにより該緊張材Wが該被回転部材30に巻き取られて該緊張材Wに緊張力が付与されるように構成されている。この電動モーターは、本発明に係る製造装置1に専用のモーターとして設置されたものでも良いが、電動ドリルや電動ドライバーや電動レンチ等の電動工具のモーターであっても良い。図1(c) に示す例では、前記被係合部31はボルトの頭部分の形をしているので、電動レンチ(電動の六角レンチ)を該被係合部31に接続して回転させれば良い。該被係合部は他の形状であっても良く、例えば、凹部とか、電動工具のチャック部に接続可能な軸部などであっても良い。なお、該被回転部材にはラチェット機構を設けておいて、該被回転部材の戻り方向(つまり、前記緊張材Wの緊張力が緩む方向)への回転が制限されるようにしておくと良い。
【0030】
通常、並列配置されたN本の緊張材にそれぞれFの大きさの緊張力を一気に与えようとすると、F×Nの力で緊張する必要があるが、緊張力付与手段を上述のような構成にした場合は、Fの力の緊張だけで足り、その分、緊張力付与手段3をコンパクトなものにできる。また、緊張力を測定する場合は、F×Nの力を測定できる大型の計測器ではなくFの力を測定できる小型の計測器で足りる。
【0031】
さらに、上述のように、前記緊張力付与手段3に電動工具を用いるようにした場合には、前記製造装置自体に電動モーターを常備しておく必要が無く、その分、低コスト化及び省スペース化を図ることができる。
【0032】
一方、図1(a) においては、前記被巻掛部材2A,…を支持している部材(以下、“支持部材”とする)15は枠状の形状をしているが、もちろんこれに限られるものではなく、その他の形状であっても良い。また、前記緊張材Wに緊張力を付与する際に該支持部材15及び前記被巻掛部材2A,…が振動するようにしておいて、該緊張材Wと該被巻掛部材2A,…との間の摩擦を低減して緊張力が該緊張材Wの全長に亘ってロス無く伝達されるようにすると良い。そのような振動を起こす方法としては、
・ 前記第1及び第2被巻掛部材2A,…、2B,…を支持する支持部材15を加振手段として該被巻掛部材2A,…、2B,…を振動させる方法
・ 加振手段(不図示)を前記支持部材15に連結しておいて該加振手段によって該支持部材15を振動させる方法
などを挙げることができる。
【0033】
一方、本発明に係る、プレストレストコンクリート部材の製造方法は、緊張力が付与された緊張材を生コンクリートに埋設してプレストレストコンクリート部材を製造する方法である。
【0034】
また、本発明に係る、プレストレストコンクリート部材の製造方法は、
・ 可撓性に富む前記緊張材Wが巻き掛けられるように構成された被巻掛部材2A,…、2B,…を、前記生コンクリートの少なくとも一部を挟むようにその一側と他側とにそれぞれ複数個ずつ配置する工程(以下、該一側に配置された被巻掛部材2A,…を“第1被巻掛部材”とし、該他側に配置された被巻掛部材2B,…を“第2被巻掛部材”とする)と、
・ 前記緊張材Wを前記第1被巻掛部材2A,…と前記第2被巻掛部材2B,…とに順次巻き掛けながら該第1被巻掛部材2A,…と該第2被巻掛部材2B,…との間に掛け渡す工程と、
・ 回転自在に支持された被回転部材30に前記緊張材Wを巻き掛ける工程と、
・ 電動モーター(不図示)の回転軸に前記被回転部材30を接続し、該緊張材Wが巻き掛けられた状態の前記被回転部材30を前記電動モーターで回転させることにより該緊張材Wに緊張力を付与する工程と、
・ 前記緊張材Wを前記生コンクリートに埋設する工程と、
を備えている。
【0035】
この場合、“前記緊張材Wを前記被回転部材30に巻き掛ける工程”は、“前記緊張材Wを前記被巻掛部材2A,…に順次巻き掛ける工程”の後に実施しなければならないことは無く、その前に実施するようにしても、これら2つの工程を同時に実施するようにしても、どちらでも良い。また、“前記緊張材Wを生コンクリートCに埋設する工程”は、“該緊張材Wに緊張力を付与する工程”の前に実施しても後に実施しても、どちらでも良い。
【0036】
ここで、本発明に係るプレストレストコンクリート部材の製造方法の一例を、図3(a) 〜(d) に沿って説明する。
【0037】
まず、図3(a) に示すように、複数の第1被巻掛部材2A,…と複数の第2被巻掛部材2B,…とを床面Gに固定し、それらの被巻掛部材2A,…、2B,…に緊張材Wを順次巻き掛けていく。そして、緊張力付与手段(図3(a) においては不図示)によって該緊張材Wに緊張力を付与する。
【0038】
次に、図3(b) 及び(c) に示すように、該緊張材Wを配置した部分に型枠14と鉄筋16とを設置し、該型枠14の中に生コンクリートCを打設する。
【0039】
その後、図3(d) に示すように、生コンクリートCの上面側にも第1被巻掛部材2A,…や第2被巻掛部材2B,…を配置し、該生コンクリートCに埋設されるように緊張材Wを巻き掛ける。これによって、上面と下面とにそれぞれ緊張材Wが埋設されたプレストレストコンクリート部材が製造されることとなる。
【符号の説明】
【0040】
1 プレストレストコンクリート部材の製造装置
2A,… 第1被巻掛部材
2B,… 第2被巻掛部材
3 緊張力付与手段
10 プレストレストコンクリート部材の製造装置
12A,… 第1被巻掛部材
12B,… 第2被巻掛部材
13 緊張力付与手段
15 加振手段
30 被回転部材
C 生コンクリート
W 緊張材
図1
図2
図3
図4