【解決手段】ポリカルボン酸を含むガスバリア層(1)が形成されたプラスチック基材(A)と少なくとも1層からなるプラスチック基材(B)とを接着層(2)を介して貼り合せてなる積層体であって、接着層(2)もしくはプラスチック基材(B)の少なくとも一方に金属化合物が含まれることを特徴とするガスバリア積層体。
ポリカルボン酸を含むガスバリア層(1)が形成されたプラスチック基材(A)と、プラスチック基材(B)とを、接着層(2)を介して貼り合せてなる積層体であって、接着層(2)もしくはプラスチック基材(B)の少なくとも一方に金属化合物が含まれることを特徴とするガスバリア積層体。
プラスチック基材(B)が、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂から選ばれる1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガスバリア性積層体。
請求項1〜6のいずれかに記載のガスバリア積層体の製造方法であって、ガスバリア層(1)が形成されたプラスチック基材(A)とプラスチック基材(B)とを接着層(2)を介して貼り合せることを特徴とするガスバリア積層体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のガスバリア積層体は、ガスバリア層(1)が形成されたプラスチック基材(A)を接着剤を介してプラスチック基材(B)と貼り合せた積層体であり、接着層(2)もしくはプラスチック基材(B)の少なくともどちらか一方が金属化合物を含有することが必要である。
【0012】
金属化合物を構成する金属としては、特に限定されず、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の1価の金属や、マグネシウム、カルシウム、ジルコニウム、亜鉛、銅、コバルト、鉄、ニッケル、アルミニウム等の2価以上の金属が挙げられる。中でも、カルボン酸と反応しやすいという観点から、イオン化傾向の高い金属が好ましく、ガスバリア性の観点から、1価や2価の金属であることが好ましい。具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛であることが好ましく、マグネシウム、カルシウム、亜鉛であることがより好ましい。金属の種類は1種に限定されず、2種以上でもよい。
【0013】
本発明において金属化合物は、上記金属を含有する化合物であり、化合物としては、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物や、炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、硫酸塩等の無機塩や、酢酸塩、ギ酸塩、ステアリン酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩などのカルボン酸塩や、スルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられ、酸化物、炭酸塩であることが好ましい。また、金属化合物として金属単体を用いてもよい。
【0014】
上記の金属化合物のうち、好ましい例として、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛などを挙げることができ、ガスバリア性の観点からは、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウムなどのマグネシウム塩や炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、酸化亜鉛、酢酸亜鉛などの2価金属化合物が好ましく、プラスチック基材(I)の透明性の観点からは、炭酸リチウムや炭酸水素ナトリウムなどの1価の化合物や、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムなどのマグネシウム塩が好ましい。これらは1種類で用いてもよく、2種類以上を添加してもよい。
【0015】
金属化合物は粉末状であることが好ましく、その平均粒径は、特に限定されないが、0.001〜10.0μmであることが好ましく、0.005〜5.0μmであることがより好ましく、0.01〜2.0μmがさらに好ましく、0.05〜1.0μmが特に好ましい。平均粒径が0.001μm未満の金属化合物は、表面積が大きいため凝集しやすく、粗大凝集物が散在し、貼り合せた積層体の接着強度を低下させることがある。一方、平均粒径が10.0μmを超える金属化合物を含有するプラスチック基材(B)は、製膜が必要な場合に破断する頻度が高くなり、生産性が低下する傾向がある。
【0016】
金属化合物は、無機処理や有機処理などの表面処理を施すことで、分散性や耐候性、熱可塑性樹脂との濡れ性、耐熱性、透明性等を向上させることができる。無機処理としては、アルミナ処理、シリカ処理、チタニア処理、ジルコニア処理、酸化錫処理、酸化アンチモン処理、酸化亜鉛処理等が挙げられる。有機処理としては、脂肪酸化合物、ペンタエリトリット、トリメチロールプロパン等のポリオール化合物、トリエタノールアミン、トリメチロールアミン等のアミン化合物、シリコーン樹脂、アルキルクロロシラン等のシリコーン系の化合物を用いた処理が挙げられる。
【0017】
接着剤もしくはプラスチック基材(B)中の金属化合物の含有量は、特に限定されないが、0.1〜70質量%であることが好ましく、0.2〜20質量%であることがより好ましく、0.2〜5質量%であることがさらに好ましい。ヘイズの観点からは5質量%未満であることが好ましい。金属化合物の含有量が、0.1〜70質量%であると、得られるガスバリア性積層体は、優れたガスバリア性を得ることができる。しかし、金属化合物の含有量が0.1質量%未満であると、ガスバリア層(1)のポリカルボン酸と反応して形成される架橋構造が少なくなり、得られるガスバリア性積層体は、ガスバリア性が低下する。一方、含有量が70質量%を超える接着剤もしくはプラスチック基材(B)は、接着性が低下しやすくなり、プラスチック基材(B)の製膜時に延伸が必要な場合において、破断する頻度が高くなり、生産性が低下しやすくなり、機械物性も低下しやすい。
【0018】
プラスチック基材(B)に金属化合物を含有させる方法は特に限定されず、その製造工程の任意の時点で、配合することができる。例えば、プラスチック基材(B)を構成する熱可塑性樹脂を重合するときに金属化合物を添加する方法や、プラスチック基材(B)を構成する熱可塑性樹脂と金属化合物とを押出機にて混練する方法や、金属化合物を高濃度に練り込んで配合したマスターバッチを製造しこれをプラスチック基材(B)を構成する熱可塑性樹脂に添加して希釈する方法(マスターバッチ法)などが挙げられる。本発明においてはマスターバッチ法が好ましく採用される。
【0019】
接着層(2)に金属化合物を含有させる方法は特に限定されず、接着層(2)を形成する樹脂と混合後に分散してもよいし、あらかじめ金属化合物を分散機を用いて分散し、接着層(2)と混合してもよい。
【0020】
分散機としては、特に限定されるものではないが、例えば、ペイントコンディショナー( レッドデビル社製) 、ボールミル、サンドミル( シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等) 、アトライター、パールミル( アイリッヒ社製「D C P ミル」等) 、コボールミル、バスケットミル、ホモミキサー、ホモジナイザー( エム・テクニック社製「クレアミックス」等) 、湿式ジェットミル( ジーナス社製「ジーナスP Y 」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等) 等を用いることができる。コスト、処理能力等を考えた場合、メディア型分散機を使用するのが好ましい。また、メディアとしてはガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、磁性ビーズ、ステンレスビーズ等を用いることができる。
【0021】
特に、2価以上の金属化合物 として有効な、マグネシウムまたはカルシウム の酸化物、水酸化物、炭酸塩は、分散剤 を用いて分散することにより、透明な接着剤層を形成することができる。
【0022】
分散剤としては既知のものが使用でき、たとえばビックケミー社製のDisperbykまたはDisperbyk−101、103、107、108、110、111、116、130、140、154、161、162、163、164、165、166、170、171、174、180、181、182、183、184、185、190、191、192、2000、2001またはAnti−Terra−U、203、204またはBYK−P104、P104S、220SまたはLactimon、Lactimon−WSまたはBykumon等、アビシア社製のSOLSPERSE−3000、9000、13240、13650、13940、17000、18000、20000、21000、24000、26000、27000、28000、31845、32000、32500、32600、34750、36600、38500、41000、41090、43000、44000、53095等、エフカケミカルズ社製のEFKA−46、47、48、452、LP4008、4009、LP4010、LP4050、LP4055、400、401、402、403、450、451、453、4540、4550、LP4560、120、150、1501、1502、1503等や(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、大豆多糖類、カロボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、アルギン酸プロピレングリコールエステル、加工澱粉、グアーガム、ローストビーンガム、キサンタンガム、ペクチン、カラギーナン、ガティガム、カードラン、タマリンドシードガム、カラヤガム、タラガム、ジェランガム、トラガントガム、アラビアガム、アラビーノガラクタン、アルキルリン酸エステル、ポリカルボン酸塩等が例示されるが、衛生性、分散性、ガスバリア性より( ポリ) グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリカルボン酸塩が好ましく、より好ましくは(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルとポリカルボン酸塩である。
【0023】
(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルとしては分散性の観点より重合度1から20が好ましく、12以下がより好ましい。脂肪酸としては好ましくは炭素数10から22の飽和または不飽和脂肪酸であり、その具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ドコサン酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、エルカ酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。(ポリ)グリセリン脂肪酸エステルのHLBとしては水系で用いる場合は5以上が好ましく、より好ましくは7以上である。有機溶媒系で用いる場合は2から15が好ましく、4から13がより好ましい。
【0024】
本発明において、プラスチック基材(A)を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー等のポリオレフィン樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロンMXD6、ナイロン9T等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル樹脂、塩化ビニル、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのまたはそれらの混合物が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂のうち、包装用袋を構成したときに、突刺し強力や耐衝撃性等に優れることから、ポリアミド樹脂が好ましく、また、耐熱性と経済性に優れることから、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0025】
熱可塑性樹脂には、必要に応じて、プラスチック基材(A)の性能に悪影響を与えない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤、強化材、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、防腐剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤等の各種の添加剤を、1種あるいは2種以上添加してもよい。また、熱可塑性樹脂には、プラスチック基材(A)のスリップ性を向上させるなどの目的で、金属化合物以外の無機粒子や有機系滑剤を添加してもよく、中でも、シリカを添加することが好ましい。
【0026】
プラスチック基材(A)の厚みは、得られるガスバリア性積層体が必要とする機械強度に応じて、適宜選択できる。機械強度やハンドリングのしやすさの理由から、プラスチック基材(A)の厚みは、5〜100μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。プラスチック基材(A)は、厚みが5μm未満であると十分な機械強度が得られず、突刺し強力が悪化する傾向がある。
【0027】
プラスチック基材(A)は、単層構成のフィルムであっても、複層構成のフィルムであってもよい。
【0028】
本発明のガスバリア性積層体を構成するガスバリア層(1)は、ポリカルボン酸を含有することが必要である。ガスバリア層(1)中のポリカルボン酸は、接着剤もしくはプラスチック基材(B)中の金属化合物と反応することによって、ガスバリア性を発現することができる。
【0029】
本発明におけるポリカルボン酸は、分子中にカルボキシル基を2個以上有する化合物や重合体であり、これらのカルボキシル基は、無水物の構造を形成していてもよい。
ポリカルボン酸の具体例としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸−メタクリル酸共重合体、アクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリマレイン酸、エチレン−マレイン酸共重合体などのオレフィン−マレイン酸共重合体、アルギン酸のように側鎖にカルボキシル基を有する多糖類、カルボキシル基含有のポリアミド、ポリエステルなどを例示することができる。上記ポリカルボン酸は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0030】
ポリカルボン酸が重合体である場合、その重量平均分子量は、1,000〜1,000,000であることが好ましく、10,000〜150,000であることがより好ましくは、15,000〜110,000であることがさらに好ましい。ポリカルボン酸の重量平均分子量が低すぎると、得られるガスバリア層(1)は脆弱になり、一方、分子量が高すぎると、ハンドリング性が損なわれ、場合によっては、後述するガスバリア層(1)を形成するための塗工液中で凝集し、得られるガスバリア層(1)は、ガスバリア性が損なわれる可能性がある。
【0031】
本発明において、上記ポリカルボン酸のうち、ポリアクリル酸やオレフィン−マレイン酸共重合体、特にエチレン−マレイン酸共重合体(以下、EMAと略記することがある)が、ガスバリア性の点から、好ましく用いられる。EMAは、無水マレイン酸とエチレンとを溶液ラジカル重合などの公知の方法で重合することにより得られる。
オレフィン−マレイン酸共重合体中のマレイン酸単位は、乾燥状態では隣接カルボキシル基が脱水環化した無水マレイン酸構造となりやすく、湿潤時や水溶液中では開環してマレイン酸構造となる。したがって、本発明においては、特記しない限り、マレイン酸単位と無水マレイン単位とを総称してマレイン酸単位という。
EMA中のマレイン酸単位は、5モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることがさらに好ましく、35モル%以上であることが最も好ましい。
また、EMAの重量平均分子量は、1,000〜1,000,000であることが好ましく、3,000〜500,000 であることがより好ましく、7,000〜300,000であることがさらに好ましく、10,000〜200,000であることが特に好ましい。
【0032】
本発明においてガスバリア層(1)は、ポリアルコールを含有することが好ましい。ポリアルコールを含有することによって、ガスバリア層(1)中のポリカルボン酸は、接着層(2)もしくはプラスチック基材(B)中の金属化合物と反応することに加えて、ポリアルコールとも反応するので、ガスバリア性を向上することができる。
ポリアルコールは、分子内に2個以上の水酸基を有する化合物であり、低分子化合物としては、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの糖アルコール、グルコースなどの単糖類、マルトースなどの二糖類、ガラクトオリゴ糖などのオリゴ糖が挙げられ、高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、でんぷんなどの多糖類が挙げられる。上記ポリアルコールは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール共重合体のケン化度は、95モル%以上であることが好ましく、98モル%以上であることがさらに好ましい。また、平均重合度は、50〜2,000であることが好ましく、200〜1,000であることがより好ましい。
【0033】
ガスバリア層(1)における、ポリカルボン酸とポリアルコールとは、OH基とCOOH基のモル比(OH基/COOH基)が、0.01〜20となるように含有することが好ましく、0.01〜10となるように含有することがさらに好ましく、0.02〜5となるように含有することがより好ましく、0.04〜2となるように含有することが最も好ましい。
【0034】
また、本発明においてガスバリア層(1)は、ポリアクリルアミド、ポリメタアクリルアミドまたはポリアミンを含有することも好ましい。これらの化合物を含有することによって、ガスバリア層(1)中のポリカルボン酸は、接着層(2)もしくはプラスチック基材(B)中の金属化合物と反応することに加えて、これらの化合物とも反応するので、ガスバリア性を向上することができる。
【0035】
ポリアミンは、分子中にアミノ基として第一級、第二級から選ばれる少なくとも1種のアミノ基を2個以上有するものであり、その具体例としては、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、分岐状ポリエチレンイミン、線状ポリエチレンイミン、ポリリジン、キトサンのように側鎖にアミノ基を有する多糖類、ポリアルギニンのように側鎖にアミノ基を有するポリアミド類などが挙げられる。
ポリアミンの重量平均分子量は、5,000〜150,000であることが好ましい。ポリアミンの重量平均分子量が低すぎると、得られるガスバリア層(1)は脆弱になり、一方、分子量が高すぎると、ハンドリング性が損なわれ、場合によっては、後述するガスバリア層(1)を形成するための塗工液中で凝集し、得られるガスバリア層(1)は、ガスバリア性が損なわれる可能性がある。
【0036】
ガスバリア層(1)における、ポリアミンとポリカルボン酸との質量比(ポリアミン/ポリカルボン酸)は、12.5/87.5〜27.5/72.5であることが好ましい。ポリアミンの質量比がこれより低いと、ポリカルボン酸のカルボキシル基の架橋が不十分となり、逆に、ポリアミンの質量比がこれより高いと、ポリアミンのアミノ基の架橋が不十分となり、いずれの場合も、得られるガスバリア性積層体は、ガスバリア性に劣ることがある。
【0037】
本発明におけるガスバリア層(1)は、架橋剤を含有してもよい。架橋剤を含有することによって、ガスバリア性を高めることができる。
ガスバリア層(1)における架橋剤の含有量は、ポリカルボン酸100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが好ましく、1〜20質量部であることがより好ましい。
架橋剤としては、自己架橋性を有する化合物や、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物が挙げられ、ガスバリア層(1)がポリアルコールを含有する場合は、水酸基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物でもよい。具体的な架橋剤としては、イソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、炭酸ジルコニウムアンモニウムなどのジルコニウム塩化合物、金属アルコキシド等が好ましく挙げられる。これらの架橋剤は、組み合わせて使用してもよい。
【0038】
金属アルコキシドとは、アルコキシ基が結合した金属を含む化合物であり、一部のアルコキシ基の代わりにハロゲンやカルボキシル基との反応性を有する官能基で置換されたアルキル基が結合していてもよい。ここで、金属とは、Si、Al、Ti、Zrなどの原子が挙げられ、ハロゲンとは、塩素、ヨウ素、臭素などが挙げられ、カルボキシル基との反応性を有する官能基とは、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、ウレイド基などが挙げられ、アルキル基とは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基などが挙げられる。このような化合物の例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシラン化合物、テトライソプロポキシチタン、テトラエトキシチタンなどのアルコキシチタン化合物、トリイソプロポキシアルミニウムなどのアルコキシアルミニウム化合物、テトライソプロポキシジルコニウムなどのアルコキシジルコニウム化合物などが挙げられる。
【0039】
これらの金属アルコキシドは、その一部または全部が加水分解したもの、部分的に加水分解、縮合したもの、完全に加水分解しその一部が縮合したもの、あるいは、これらを組み合わせたものを用いることもできる。
【0040】
上記の金属アルコキシドとポリカルボン酸とを混合すると、両者が反応して塗工することが困難になる場合があるので、予め、加水分解縮合物を形成させてから混合することが好ましい。加水分解縮合物を形成させる方法としては、公知のゾルゲル法で用いられている手法を適用することができる。
【0041】
本発明におけるガスバリア層(1)には、ガスバリア性や、プラスチック基材(A)との接着性を大きく損なわない限りにおいて、熱安定剤、酸化防止剤、強化材、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、滑剤、防腐剤、消泡剤、濡れ剤、粘度調整剤などが添加されていてもよい。
熱安定剤、酸化防止剤、劣化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物などが挙げられ、これらを混合して使用してもよい。
強化材としては、例えば、クレー、タルク、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、珪酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、ゼオライト、モンモリロナイト、ハイドロタルサイト、フッ素雲母、金属繊維、金属ウィスカー、セラミックウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、窒化ホウ素、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維、フラーレン(C60、C70など)、カーボンナノチューブなどが挙げられる。
【0042】
本発明においてプラスチック基材(A)に積層される上記ガスバリア層(1)の厚みは、ガスバリア性積層体のガスバリア性を充分高めるために、0.05μmより厚いことが好ましく、経済性の点から、5.0μmより薄いことが好ましい。
【0043】
本発明におけるガスバリア層(1)は、プラスチック基材(A)上に、ガスバリア層(1)形成用塗工液を塗布、乾燥することによって、形成することができる。
上記塗工液は、作業性の面から水性であることが好ましいため、塗工液を構成するポリカルボン酸や、ポリアルコールやポリアミンは、水溶性または水分散性であることが好ましく、水溶性であることがより好ましい。
【0044】
本発明において、ポリカルボン酸とポリアルコールとを混合して水性の塗工液を調製する場合、ポリカルボン酸のカルボキシル基に対して、0.1〜20当量%のアルカリ化合物を加えることが好ましい。ポリカルボン酸は、カルボキシル基の含有量が多いと親水性が高くなるので、アルカリ化合物を添加しなくても水溶液にすることができる。しかし、アルカリ化合物を適正量添加することにより、得られるガスバリア性積層体のガスバリア性を格段に向上することができる。アルカリ化合物は、ポリカルボン酸のカルボキシル基を中和できるものであればよく、その添加量は、ポリカルボン酸のカルボキシル基に対して、0.1〜20モル%であることが好ましい。
【0045】
上記塗工液の調製は、撹拌機を備えた溶解釜等を用いて、公知の方法で行うことができ、例えば、ポリカルボン酸とポリアルコールとを別々に水溶液とし、塗工前に混合する方法が好ましい。この時、上記アルカリ化合物をポリカルボン酸の水溶液に加えておくと、その水溶液の安定性を向上させることができる。
【0046】
また本発明において、ポリカルボン酸とポリアミンとを混合して水性の塗工液を調製する場合、ゲル化を抑制するために、ポリカルボン酸に塩基を添加しておくことが好ましい。塩基は、得られるガスバリア性積層体のガスバリア性を阻害しないものであればよく、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等の無機物や、アンモニア、メチルアミン、ジエタノールアミン等の有機物が挙げられ、乾燥、熱処理で揮発しやすいことから、アンモニアであることが好ましい。塩基の添加量は、ポリカルボン酸のカルボキシル基に対して、0.6当量以上であることが好ましく、0.7当量以上であることがより好ましく、0.8当量以上であることがさらに好ましい。塩基の添加量が少ないと、塗工液は塗工中にゲル化し、プラスチック基材(A)上にガスバリア層(1)を形成することが困難となることがある。
【0047】
ガスバリア層(1)形成用塗工液をプラスチック基材(A)に塗布する方法は特に限定されず、エアーナイフコーター、キスロールコーター、メタリングバーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ディップコーター、ダイコーター等、あるいはこれらを組み合わせた方法を用いることができる。
【0048】
ガスバリア層(1)形成用塗工液をプラスチック基材(A)に塗布後、直ちに加熱処理を行い、乾燥皮膜の形成と加熱処理を同時に行ってもよいし、また塗布後、ドライヤー等による熱風の吹き付けや赤外線照射等により水分等を蒸発させて乾燥皮膜を形成させた後に、加熱処理を行ってもよい。ガスバリア層(1)の状態やガスバリア性等の物性に特に障害が生じない限り、塗布後、直ちに加熱処理を行うことが好ましい。
加熱処理方法としては特に限定されず、オーブン等の乾燥雰囲気下で加熱処理を行う方法が挙げられる。工程の短縮化等を考慮すると、ガスバリア層(1)形成用塗工液を塗布した後でプラスチック基材(A)の延伸を行うのが好ましい。
上記のいずれの場合においても、ガスバリア層(1)を形成したプラスチック基材(A)を、100℃以上の加熱雰囲気中で5分間以下の熱処理を施すことが好ましい。
【0049】
ガスバリア層(1)が、ポリカルボン酸とポリアルコールとを含有する場合においては、それらの比率や、添加成分の有無やその含有量等によっても影響を受け得るので、塗工液を塗布後の加熱処理温度は、一概には言えないが、100〜300℃であることが好ましく、120〜250℃であることがより好ましく、140〜240℃であることがさらに好ましく、160〜220℃であることが特に好ましい。熱処理温度が低過ぎると、ポリカルボン酸とポリアルコールとの架橋反応を充分に進行させることができず、充分なガスバリア性を有する積層体を得ることが困難になることがあり、一方、高過ぎると、ガスバリア層(1)などが脆化するおそれなどがある。
また、熱処理時間は、5分間以下であることが好ましく、1秒間〜5分間であることがより好ましく、3秒間〜2分間であることがさらに好ましく、5秒間〜1分間であることが特に好ましい。熱処理時間が短すぎると、上記架橋反応を充分に進行させることができず、ガスバリア性を有する積層体を得ることが困難になり、一方、長すぎると生産性が低下する。
【0050】
また、プラスチック基材(A)に塗布されたガスバリア層(1)形成用塗工液は、上記乾燥の前後に、必要に応じて、紫外線、X線、電子線等の高エネルギー線照射が施されてもよい。このような場合には、高エネルギー線照射により架橋または重合する成分が配合されていてもよい。
【0051】
本発明におけるプラスチック基材(B)を構成する熱可塑性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー等のポリオレフィン樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロンMXD6、ナイロン9T等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル樹脂、塩化ビニル、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのまたはそれらの混合物が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂のうち、包装用袋を構成したときに、ヒートシール性に優れるポリオレフィン樹脂が好ましく、また突刺し強力や耐衝撃性等に優れることから、ポリアミド樹脂が好ましく、さらに、耐熱性と経済性に優れることから、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0052】
プラスチック基材(B)には、必要に応じて、プラスチック基材(B)の性能に悪影響を与えない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤、強化材、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、防腐剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤等の各種の添加剤を、1種あるいは2種以上添加してもよい。また、プラスチック基材(B)には、スリップ性を向上させるなどの目的で、金属化合物以外の無機粒子や有機系滑剤を添加してもよく、中でも、シリカを添加することが好ましい。
【0053】
プラスチック基材(B)の厚みは、得られるガスバリア性積層体が必要とする機械強度に応じて、適宜選択できる。機械強度やハンドリングのしやすさの理由から、プラスチック基材(B)の厚みは、5〜100μmであることが好ましく、10〜80μmであることがより好ましい。
【0054】
プラスチック基材(B)は、単層構成のフィルムであっても、複層構成のフィルムであってもよい。プラスチック基材(B)が金属化合物を含有する際、プラスチック基材(B)が複層フィルムである場合は、その少なくとも1層が金属化合物を含有することが必要である。プラスチック基材(B)に金属含有層を形成する方法は、特に限定されないが、プラスチック基材(B)を構成する熱可塑性樹脂に金属化合物を練り込り込む方法や、コーティング等によりプラスチック基材(B)上に積層する方法が挙げられる。
以下、プラスチック基材(B)が金属化合物を含有する場合、複層フィルムにおける金属化合物を含有する層や、単層フィルムを「金属含有層(m)」と称し、複層フィルムにおける「金属含有層(m)」以外の層を「樹脂層(R)」と称することがある。
【0055】
本発明のガスバリア性積層体において、ガスバリア層(1)が形成されたプラスチック基材(A)と、プラスチック基材(B)とを貼り合せる際には、ガスバリア層(1)側が接着層(2)と隣接してもよいし、プラスチック基材(A)側が接着層(2)と隣接していてもよい。前者の場合は、得られる積層体の層構成は、(A)/(1)/(2)/(B)となり、後者の場合は、(1)/(A)/(2)/(B)となる。後者の場合には、ガスバリア層(1)を保護するための層をさらに(1)の上に設けることが好ましい。こうした保護層は、コート液を塗布したり、熱可塑性樹脂フィルムをラミネートすることにより形成することができる。
【0056】
プラスチック基材(B)が金属化合物を含みかつ複層フィルムである場合、その構成としては、m/R、m/R/m、m/R/m/R、R/m、R/m/R、R/m/R/m等が挙げられる。中でもプラスチック基材(B)の構成として、ガスバリア層(1)中のポリカルボン酸と金属含有層(m)中の金属化合物とが反応しやすい、m/R、m/R/m、m/R/m/Rの構成が好ましい。金属含有層(m)と樹脂層(R)の厚み構成比率は、特に制限されず、金属含有層(m)の合計厚み(mt)と、樹脂層(R)の合計厚み(Rt)の比率((Rt)/(mt))は、1/1000〜1000/1であることが好ましく、それぞれの層の厚み制御が容易であるため、1/100〜100/1であることがより好ましく、1/10〜10/1であることがさらに好ましい。
【0057】
本発明における接着層(2)は、公知のものが使用される。例えば、イソシアネート系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、ポリオレフィン系、アルキルチタネート系が挙げられる。これらの中で、密着性、耐熱性、耐水性などの効果を勘案すると、イソシアネート系、ポリウレタン系、およびポリエステル系が好ましい。さらにはイソシアネート化合物、ポリウレタンおよびウレタンプレポリマーの1種または2種以上の混合物および反応生成物;ポリエステル、ポリオールおよびポリエーテルの1種または2種以上とイソシアネートとの混合物および反応生成物であることが好ましい。
ラミネート接着剤の厚みは、0.1μmよりも厚くすることが好ましく、生産性の観点から10μm以下程度であることが好ましい。
【0058】
ポリカルボン酸を含むガスバリア層(1)を有するプラスチック基材(A)と、少なくとも1層からなるプラスチック基材(B)とを、接着層(2)を介して貼り合せる方法としては、公知の方法が用いられる。例えば、ドライラミネーション法、ウエットラミネーション法、無溶剤ドライラミネーション法、ホットメルトラミネーション法などのラミネーション法などが挙げられるが、密着性、耐熱性、耐水性などを勘案するとドライラミネーション法が好ましい。
【0059】
本発明のガスバリア性積層体は、上記の構成を有するため、ガスバリア性に優れるものであり、95℃、30分の熱水処理したガスバリア性積層体は、20℃、相対湿度65%の雰囲気下で測定した酸素透過度を、250ml/(m
2・day・MPa)以下とすることができ、酸素透過度は、0.01〜250ml/(m
2・day・MPa)であることが好ましく、0.01〜200ml/(m
2・day・MPa)であることがより好ましい。
【0060】
本発明のガスバリア性積層体は、以下のような方法により製造することができる。
単層構成のフィルムからなるプラスチック基材(A)は、例えば、熱可塑性樹脂を、押出機で加熱溶融してTダイよりフィルム状に押出し、エアーナイフキャスト法、静電印加キャスト法など公知のキャスティング法により回転する冷却ドラム上で冷却固化して、未延伸状態のプラスチック基材(A)のフィルムを得る。
また、複層構成のフィルムからなるプラスチック基材(A)は、例えば、熱可塑性樹脂を押出機Aで加熱溶融し、また熱可塑性樹脂を押出機Bで加熱溶融し、それぞれ溶融した2種の樹脂をダイス中で重ね合わせて、例えば、2層構成のフィルムをTダイから押出し、上記同様、冷却固化することによって、未延伸状態で得ることができる。
得られたプラスチック基材(A)の単層や複層の未延伸フィルムに、塗工液を塗布してガスバリア層(1)を形成し、テンター式同時二軸延伸機にて、縦方向(MD)および横方向(TD)に同時二軸延伸を施すことで、同時二軸延伸されたガスバリア層(1)を有するプラスチック基材(A)を得ることができる。
また得られた未延伸フィルムを縦方向(MD)に延伸したのち、塗工液を塗布してガスバリア層(1)を形成し、次いで横方向(TD)に延伸を施すことで、逐次二軸延伸されたガスバリア層(1)を有するプラスチック基材(A)を得ることができる。
なお、未延伸フィルムが配向していると、後工程で延伸性が低下することがあるため、未延伸フィルムは、実質的に無定形、無配向の状態であることが好ましい。
【0061】
熱可塑性樹脂としてポリアミド樹脂を用いる場合は、未延伸フィルムを、80℃を超えないように温調した水槽に移送し、5分間以内で浸水処理を施し、0.5〜15%吸湿処理することが好ましい。
また、フィルムの延伸倍率は、一軸延伸の場合は1.5倍以上であることが好ましく、縦横二軸延伸の場合も、縦横に各々1.5倍以上であることが好ましく、面積倍率で、通常3倍以上であることが好ましく、6〜20倍であることがより好ましく、6.5〜13倍であることがさらに好ましい。延伸倍率がこの範囲であると、優れた機械物性のガスバリア性積層体を得ることが可能となる。
延伸処理工程を経たフィルムは、延伸処理が行われたテンター内において150〜300℃の温度で熱固定され、必要に応じて0〜10%、好ましくは2〜6%の範囲で、縦方向および/または横方向の弛緩処理が施される。熱収縮率を低減するためには、熱固定時間の温度および時間を最適化するだけでなく、熱弛緩処理を熱固定処理の最高温度より低い温度で行うことが望ましい。
【0062】
延伸方法は特に限定されないが、同時二軸延伸方法を用いる方が好ましい。同時二軸延伸方法は、一般に、機械的特性、光学特性、熱寸法安定性、耐ピンホール性などの実用特性を兼備させることができる。このほか、縦延伸の後に横延伸を行う逐次二軸延伸方法では、縦延伸時にフィルムの配向結晶化が進行して横延伸時の熱可塑性樹脂の延伸性が低下することにより、金属化合物の配合量が多い場合にフィルムの破断頻度が高くなる傾向がある。このため、本発明においては、吸水処理を施し、同時二軸延伸方法を採ることが好ましい。
【0063】
単層構成のフィルムからなるプラスチック基材(B)は、例えば、金属化合物を混合した熱可塑性樹脂を、押出機で加熱溶融してTダイよりフィルム状に押出し、エアーナイフキャスト法、静電印加キャスト法など公知のキャスティング法により回転する冷却ドラム上で冷却固化して、未延伸状態のプラスチック基材(B)のフィルムを得る。
また、複層構成のフィルムからなるプラスチック基材(B)は、例えば、金属化合物を混合した熱可塑性樹脂を押出機Aで加熱溶融し、また熱可塑性樹脂を押出機Bで加熱溶融し、それぞれ溶融した2種の樹脂をダイス中で重ね合わせて、例えば、金属含有層(M)/樹脂層(R)の2層構成のフィルムをTダイから押出し、上記同様、冷却固化することによって、未延伸状態で得ることができる。
得られたプラスチック基材(B)の単層や複層の未延伸フィルムは、プラスチック基材(A)と同様に、延伸しても良い。プラスチック基材(B)を構成する熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂やポリエステル樹脂の場合は、延伸することが好ましく、シーラントフィルムとしてポリオレフィン樹脂を使用する場合は、未延伸状態であることが好ましい。
【0064】
本発明の積層体は、プラスチック基材(B)が金属化合物を含有しない場合、あらかじめ金属化合物を分散機を用いて分散して接着剤と混合し、ドライラミネーション法などの公知のラミネーション法により金属化合物を含む接着層(2)をグラビアロールにてプラスチック基材(A)またはプラスチック基材(B)のどちらか一方に塗布して、両基材を貼り合せて積層体を得ることができる。また、ガスバリア層(1)を形成したプラスチック基材(A)とプラスチック基材(B)とをニップロールにて貼り合せる段階で接着剤を押出し、同時にサンドイッチして積層体を得ても良い。
プラスチック基材(B)が金属化合物を含有する場合も同様に、ドライラミネーション法などの公知のラミネーション法により金属化合物を含むもしくは含まない接着層(2)をグラビアロールにてプラスチック基材(A)またはプラスチック基材(B)のどちらか一方に塗布して、両基材を貼り合せて積層体を得ることができる。また、プラスチック基材(A)とプラスチック基材(B)をニップロールにて貼り合せる段階で接着剤を押出し、同時にサンドイッチして積層体を得ても良い。
【0065】
本発明のガスバリア性積層体は、ガスバリア性を高める目的で、積層体を製造した後に加湿された雰囲気下で処理することもできる。加湿処理により、接着層(2)またはプラスチック基材(B)に含まれる金属化合物とガスバリア層(1)のポリカルボン酸との作用を、より促進することができる。このような加湿処理は、高温、高湿度下の雰囲気において積層体を放置してもよいし、高温の水に直接積層体を接触させてもよい。加湿処理条件は種々目的により異なるが、高温高湿の雰囲気下で放置する場合は、温度30〜130℃、相対湿度50〜100%が好ましい。高温の水に接触させる場合も、温度30〜130℃程度(100℃以上は加圧下)が好ましい。加湿処理時間は処理条件により異なるが、一般に数秒から数百時間の範囲が選ばれる。
【0066】
本発明のガスバリア性積層体には、必要に応じて、コロナ放電処理等の表面処理を施してもよい。
【0067】
本発明のガスバリア性積層体は、プラスチック基材(B)としてシーラント樹脂を用いることができるが、(B)としてシーラント樹脂を用いない場合であっても、さらにシーラントなど樹脂層を積層することができる。
シーラントとして用いる樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸/メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸/メタクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニル系樹脂等が挙げられ、ヒートシール強度や材質そのものの強度が高いポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン共重合体などのポリオレフィン樹脂が好ましい。これらの樹脂は、単独で用いても、また他の樹脂と共重合や溶融混合して用いても、さらに酸変性などが施されていてもよい。
シーラント層をガスバリア性積層体に形成方法する方法としては、シーラント樹脂からなるフィルムまたはシートを、接着剤を介して、ガスバリア性積層体にラミネートする方法や、シーラント樹脂をガスバリア性積層体に押出ラミネートする方法などが挙げられる。前者の方法においては、シーラント樹脂からなるフィルムまたはシートは、未延伸状態であっても低倍率の延伸状態でもよいが、実用的には、未延伸状態であることが好ましい。
シーラント層の厚みは、特に限定されないが、20〜100μmであることが好ましく、40〜70μmであることがより好ましい。
【0068】
本発明のガスバリア性積層体を用いて包装用袋を作製することができ、この包装用袋は、例えば、飲食品、果物、ジュ−ス、飲料水、酒、調理食品、水産練り製品、冷凍食品、肉製品、煮物、餅、液体ス−プ、調味料、その他等の各種の飲食料品、液体洗剤、化粧品、化成品といった内容物を充填包装することができる。
【実施例】
【0069】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
1.測定方法
【0071】
(1)各層厚み
得られたガスバリア性積層体を23℃、50%RHの環境下に2時間以上放置してから、走査型電子顕微鏡(SEM)によりフィルム断面観察を行い、各層の厚みを測定した。
【0072】
(2)酸素透過度
得られたガスバリア性積層体を95℃、30分の条件で熱水処理した後、23℃、90%RHの環境下に2時間以上放置してから、モコン社製酸素バリア測定器(OX−TRAN 2/20)を用いて、温度20℃、相対湿度90%の雰囲気下における酸素透過度を測定した。単位はml/(m
2・day・MPa)である。
【0073】
2.原料
下記の実施例・比較例において使用した原料は、以下のとおりである。
(1)プラスチック基材(A)、(B)構成用の熱可塑性樹脂
・PA6:ナイロン6樹脂(ユニチカ社製 A1030BRF、相対粘度3.0)
・PET:ポリエチレンテレフタレート樹脂(ユニチカ社製 UT−CBR 極限粘度0.62)
・PP:ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロピレン社製 ノバテックPP FL02A)
【0074】
(2)金属化合物
・酸化マグネシウム(タテホ化学工業社製 PUREMAG FNM−G 平均粒径0.4μm)
・炭酸マグネシウム(神島化学工業社製 MSS 平均粒径1.2μm)
・炭酸カルシウム(白石工業社製 Vigot15 平均粒径0.5μm)
・酸化亜鉛(堺化学工業社製 FINEX−50 平均粒径0.02μm)
【0075】
(3)プラスチック基材(B)構成用の金属化合物マスターチップ
・マスターチップ1
PA6の85質量部と、酸化マグネシウムの15質量部とを混練してマスターチップを作成し、金属化合物の含有量が5質量%未満の金属含有層(m)を調製する際に使用した。
・マスターチップ2
PA6の85質量と、炭酸マグネシウムの15質量部とを混練して作成した。
・マスターチップ3
PA6の85質量と、炭酸カルシウムの15質量部とを混練して作成した。
・マスターチップ4
PA6の85質量と、酸化亜鉛の15質量部とを混練して作成した。
・マスターチップ5
PETの85質量部と、酸化マグネシウムの15質量部とを混練して作成した。
・マスターチップ6
PPの85質量部と、酸化マグネシウムの15質量部とを混練して作成した。
【0076】
(4)ガスバリア層(1)形成用塗工液のポリカルボン酸成分
・EMA水溶液:
EMA(重量平均分子量60,000)と水酸化ナトリウムとを水に加え、加熱溶解後、室温に冷却して調製した、EMAのカルボキシル基の10モル%が水酸化ナトリウムにより中和された、固形分15質量%のEMA水溶液。
・PAA水溶液:
ポリアクリル酸(東亞合成社製 A10H、数平均分子量200,000、25重量%水溶液)と、水酸化ナトリウムとを用いて調製した、ポリアクリル酸のカルボキシル基の10モル%が水酸化ナトリウムにより中和された、固形分15質量%のポリアクリル酸(PAA)水溶液。
【0077】
(5)ガスバリア層(1)形成用塗工液の他の樹脂成分
・PVA水溶液:
ポリビニルアルコール(クラレ社製 ポバール105、ケン化度98〜99%、平均重合度約500)を水に加え、加熱溶解後、室温に冷却することにより調製した、固形分15質量%のポリビニルアルコール(PVA)水溶液。
・EVOH水溶液:
エチレン−ビニルアルコール共重合体(クラレ社製 エクセバールAQ−4105)を溶解した、固形分10質量%のエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)水溶液。
・澱粉:
可溶性でんぷん(和光純薬工業社製)
・PAM:
・ポリアクリルアミド(キシダ化学社製、試薬、重量平均分子量900万〜1000万重合度12.7万〜14.1万)。
【0078】
(6)接着層(2)に添加する金属化合物分散液
酸化マグネシウム(タテホ化学工業社製 PUREMAG FNM−G 平均粒径0.4μm)の懸濁トルエン溶液に、酸化マグネシウム100重量部に対して25重量部の分散剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル)を加え、撹拌機で撹拌後、ビーズミルを用い分散し、固形分20%の酸化マグネシウムの分散体溶液(I)を得た。
【0079】
(7)接着層(2)の接着成分
・ポリウレタン系接着剤(DICグラフィックス社製 ディックドライ LX−500/KR−90S)
【0080】
実施例1
ナイロン6樹脂を押出機に投入し、270℃のシリンダー内で溶融した。溶融物をTダイオリフィスよりシート状に押出し、10℃に冷却した回転ドラムに密着させて急冷することで、厚さ150μmの未延伸ナイロン6フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを50℃の温水槽に送り、2分間の浸水処理を施した。
次に、PVAとEMAの質量比(固形分)が30/70になるように、PVA水溶液とのEMA水溶液とを混合して、固形分10質量%のガスバリア層(1)形成用塗工液を得た。この塗工液を、浸水処理を施した未延伸フィルムの片面に塗布した後、乾燥した。
フィルムの端部を、テンター式同時二軸延伸機のクリップに保持させ、180℃で、MD、TDにそれぞれ3.3倍に延伸した。その後、TDの弛緩率を5%として、210℃で4秒間の熱処理を施し、室温まで徐冷して、厚みが15μmのナイロン6フィルム(A)に、厚みが0.3μmのガスバリア層(1)を積層したガスバリア性積層体を得た。
次に、ナイロン6樹脂とマスターチップとを、酸化マグネシウムの含有量が1質量%となるように混合した。この混合物を押出機に投入し、270℃のシリンダー内で溶融した。溶融物をTダイオリフィスよりシート状に押出し、10℃に冷却した回転ドラムに密着させて急冷することで、厚さ150μmの未延伸ナイロン6フィルムを得た。得られた未延伸フィルムを50℃の温水槽に送り、2分間の浸水処理を施した。
フィルムの端部を、テンター式同時二軸延伸機のクリップに保持させ、180℃で、MD、TDにそれぞれ3.3倍に延伸した。その後、TDの弛緩率を5%として、210℃で4秒間の熱処理を施し、室温まで徐冷して、酸化マグネシウムを含有する厚みが15μmのナイロン6フィルム(B)を得た。
【0081】
[積層体の製造]
ナイロン6フィルム(A)に形成したガスバリア層(1)の上に、接着剤(DICグラフィックス社製の接着剤(LX−500/KR−90S:質量比13/1))をドライラミネーターにより塗布し、厚み1.5μmの接着層(2)を形成した。
接着層(2)にナイロン6フィルム(B)を貼り合せた後、40℃で2日間静置し、ナイロン6フィルム(A)/ガスバリア層(1)/接着層(2)/酸化マグネシウム含有ナイロン6フィルム(B)からなる積層体を得た。
【0082】
実施例2、12および13、比較例2
プラスチック基材(A)、ガスバリア層(1)、接着層(2)は、表1に記載のものになるようにした以外は実施例1と同様にして、プラスチック基材(A)としてのナイロン6フィルムにガスバリア層(1)を積層し、プラスチック基材(B)の金属含有層(m)が接着層(2)に隣接するようにプラスチック基材(B)と貼り合せてプラスチック基材(A)/ガスバリア層(1)/接着層(2)/金属含有層(m)/樹脂層(R)からなる積層体を得た。ここで、金属含有層(m)/樹脂層(R)はプラスチック基材(B)の積層構成である。
なお、プラスチック基材(B)の製造にあたっては次のように条件を変更した。
実施例2および比較例2については、ナイロン6樹脂とマスターチップとを、酸化マグネシウムの含有量が5質量%となるように混合した。この混合物を押出機Aに投入し、260℃で溶融押出した。一方、ナイロン6樹脂を押出機Bに投入し260℃で溶融押出した。
押出機A、押出機Bでそれぞれ溶融した2種の樹脂をダイス中で重ね合わせて、金属含有層(m)/樹脂層(R)の2層構成のシートをTダイから押し出し、表面温度20℃の冷却ロールに密着させて、(m)/(R)=30/120μmとなる厚み150μmの未延伸の複層フィルムを得た。得られた未延伸の複層フィルムを50℃の温水槽に送り、2分間の浸水処理を施した。
次に、実施例1と同様にして、同時二軸延伸、熱処理を施して、厚みが3μmの金属含有層(m)と厚みが12μmの樹脂層(R)とからなる、厚みが15μmのプラスチック基材(B)を得た。
比較例2では、マスターチップを添加せず、押出機A、押出機Bでそれぞれナイロン樹脂を溶融し、ダイス中で重ね合わせて、2層構成のシートをTダイから押し出し、表面温度20℃の冷却ロールに密着させて、30/120μmとなる厚み150μmの未延伸の複層フィルムを得た。得られた未延伸の複層フィルムを50℃の温水槽に送り、2分間の浸水処理を施した。
実施例12では、プラスチック基材(B)の熱可塑性樹脂としてポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を使用したのにともない、さらに、次のように条件を変更した。すなわち、シリンダー温度を280℃として未延伸フィルムを作製し、得られた未延伸フィルムの浸水処理を施さなかった。また、同時二軸延伸における温度を90℃とし、熱処理の温度を230℃とした。
実施例13では、プラスチック基材(B)の熱可塑性樹脂としてポリプロピレン樹脂(PP)を使用したのにともない、さらに、次のように条件を変更した。すなわち、シリンダー温度を200℃として未延伸フィルムを作製し、未延伸フィルムの浸水処理および二軸延伸処理は施さなかった。
【0083】
実施例3
実施例1と同様にして、ガスバリア層(1)を積層したナイロン6フィルム(A)を得た。次に、ナイロン6樹脂を押出機に投入し、270℃のシリンダー内で溶融した。溶融物をTダイオリフィスよりシート状に押出し、10℃に冷却した回転ドラムに密着させて急冷することで、厚さ150μmの未延伸ナイロン6フィルム(B)を得た。得られた未延伸フィルムを50℃の温水槽に送り、2分間の浸水処理を施した。フィルムの端部を、テンター式同時二軸延伸機のクリップに保持させ、180℃で、MD、TDにそれぞれ3.3倍に延伸した。その後、TDの弛緩率を5%として、210℃で4秒間の熱処理を施し、室温まで徐冷して、厚みが15μmのナイロン6フィルム(B)を得た。
固形分20質量%の酸化マグネシウムの分散体溶液(I)とDICグラフィックス社製の接着剤(LX−500/KR−90S:質量比13/1))を酸化マグネシウムの含有量が表1に記載の含有量になるように混合し、ドライラミネーターによりナイロン6フィルム(A)のガスバリア層(1)上に塗布して厚み1.5μmの接着層(2)を形成した。
接着層(2)にナイロン6フィルム(B)を貼り合せた後、40℃で2日間静置し、ナイロン6フィルム(A)/ガスバリア層(1)/酸化マグネシウム含有接着層(2)/ナイロン6フィルム(B)からなる積層体を得た。
【0084】
実施例4〜9、11
実施例1と同様にして、未延伸プラスチック基材(A)を得た。
ここで、実施例11では、熱可塑性樹脂としてポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を使用したのにともない、さらに、次のように条件を変更した。すなわち、シリンダー温度を280℃として未延伸フィルムを作製し、得られた未延伸フィルムの浸水処理を施さなかった。また、同時二軸延伸における温度を90℃とし、熱処理の温度を230℃とした。
次に、PVAなどの他の樹脂やポリカルボン酸について、種類や質量比(固形分)が表1に記載のものになるようにした以外は、実施例1と同様にして、ガスバリア層(1)形成用塗工液を調製した。
得られた塗工液を用いて、延伸後の厚みが表1記載の厚みになるようにした以外は、実施例1と同様にして、未延伸フィルムに塗布、乾燥後、同時二軸延伸してガスバリア層(1)を積層したプラスチック基材(A)を得た。
表1に記載の金属化合物含有量になるように、ナイロン6樹脂とマスターチップとを混合し、また延伸後の厚みが表1に記載の厚みになるようにした以外は、実施例1と同様にして、未延伸ナイロン6フィルム(B)を得て、浸水処理を施した。フィルムの端部を、テンター式同時二軸延伸機のクリップに保持させ、180℃で、MD、TDにそれぞれ3.3倍に延伸した。その後、TDの弛緩率を5%として、210℃で4秒間の熱処理を施し、室温まで徐冷して、各種金属化合物を含有する厚みが15μmのナイロン6フィルム(B)を得た。
次に実施例1と同様にして、ドライラミネーターによりプラスチック基材(A)のガスバリア層(1)上に接着剤を塗布して厚み1.5μmの接着層(2)を形成した。
接着層(2)にプラスチック基材(B)を貼り合せた後、40℃で2日間静置し、プラスチック基材(A)/ガスバリア層(1)/接着層(2)/金属化合物含有ナイロン6フィルム(B)からなる積層体を得た。
【0085】
実施例10
ガスバリア層(1)形成用塗工液を、次にようにして調製した。
すなわち、数平均分子量200,000のポリアクリル酸(PAA)を蒸留水で溶解し、水溶液中の固形分濃度が13質量%であるPAA水溶液を得た。続いて、このPAA水溶液に、13質量%アンモニア水溶液を加え、PAAのカルボキシル基の1モル%を中和して、PAAの部分中和物水溶液を得た。
また、数平均分子量40,000のポリアクリル酸(PAA)100質量部をメタノール1064質量部に溶解し、続いて、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMOS)166質量部を攪拌しながら加えた。このようにして、APTMOSメタノール溶液(10−1)を得た。APTMOSメタノール溶液(10−1)では、APTMOSのアミノ基の少なくとも一部がPAAのカルボキシル基によって中和されている。
次に、テトラメトキシシラン(TMOS)34.5質量部をメタノール34.5質量部に溶解することによって、TMOSメタノール溶液を調製した。このTMOSメタノール溶液の温度を10℃以下に維持しながら、蒸留水2.3質量部と0.1Mの塩酸5.7質量部とを加え、攪拌しながら10℃で60分間、加水分解および縮合反応を行うことによって、溶液(10−2)を得た。
続いて、溶液(10−2)を、メタノール214.7質量部および蒸留水436.1質量部で希釈した後、攪拌しながら上記PAAの部分中和物水溶液235.9質量部を添加し、溶液(10−3)を得た。
続いて、溶液(10−3)を攪拌しながらAPTMOSメタノール溶液(10−1)36.2質量部を加え、さらに30分間攪拌することによって、溶液(10−4)を得た。
上記方法で調製した溶液(10−4)を、ガスバリア層(1)形成用塗工液として使用した以外は実施例1と同様にして、ナイロン6フィルム(A)/ガスバリア層(1)/接着層(2)/酸化マグネシウム含有ナイロン6フィルム(B)からなる積層体を得た。
【0086】
実施例14
実施例1において、ガスバリア層(1)を形成したナイロン6フィルム(A)と酸化マグネシウム含有ナイロン6フィルム(B)を貼り合せる際に、ガスバリア層(1)/ナイロン6フィルム(A)/接着層(2)/酸化マグネシウム含有ナイロン6フィルム(B)の順になるようにして貼り合せ、積層体を得た。
【0087】
比較例1
接着剤に酸化マグネシウムの分散体溶液(I)を混合しなかった以外は、実施例3と同様の方法でナイロン6フィルム(A)/ガスバリア層(1)/接着層(2)/ナイロン6フィルム(B)からなる積層体を得た。
【0088】
比較例3
表1に記載のとおりポリカルボン酸成分を含まないガスバリア層(1)になるようにした以外は、実施例1と同様の方法で、ナイロン6フィルム(A)/ガスバリア層(1)/接着層(2)/酸化マグネシウム含有ナイロン6フィルム(B)からなる積層体を得た。
【0089】
比較例4
表1に記載のとおりポリカルボン酸成分を含まないガスバリア層(1)になるようにした以外は、実施例2と同様の方法で、ナイロン6フィルム(A)/ガスバリア層(1)/接着層(2)/金属含有層(m)/樹脂層(R)からなる積層体を得た。
【0090】
比較例5
表1に記載のとおりポリカルボン酸成分を含まないガスバリア層(1)になるようにした以外は、実施例3と同様の方法で、ナイロン6フィルム(A)/ガスバリア層(1)/接着層(2)/ナイロン6フィルム(B)からなる積層体を得た。
【0091】
実施例、比較例で得られたガスバリア性積層体の構成や、酸素透過度を測定した結果を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
実施例1〜14では、いずれも、ガスバリア性に優れたガスバリア性積層体が得られた。
比較例1と2では、接着剤層(2)とプラスチック基材(B)のいずれにも金属化合物を含有していなかったため、十分なガスバリア性を有するガスバリア性積層体が得られなかった。
比較例3〜5では、ガスバリア層(1)にポリカルボン酸を含有していなかったため、十分なガスバリア性を有するガスバリア性積層体が得られなかった。