特開2015-168226(P2015-168226A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-168226(P2015-168226A)
(43)【公開日】2015年9月28日
(54)【発明の名称】金箔の切断加工方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B44C 1/14 20060101AFI20150901BHJP
   B23K 26/38 20140101ALI20150901BHJP
   B23K 26/02 20140101ALI20150901BHJP
   B23K 26/10 20060101ALI20150901BHJP
   B23K 26/70 20140101ALI20150901BHJP
【FI】
   B44C1/14
   B23K26/38 A
   B23K26/02 A
   B23K26/10
   B23K26/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-46645(P2014-46645)
(22)【出願日】2014年3月10日
(71)【出願人】
【識別番号】305052827
【氏名又は名称】株式会社今井金箔
(74)【代理人】
【識別番号】100078673
【弁理士】
【氏名又は名称】西 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】今井 康弘
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168CB01
4E168HA01
4E168JA01
(57)【要約】
【課題】金箔を所望形状の金箔片に切断し、切断された金箔片の搬送や貼付作業を容易に行うことを可能にする方法及び装置を得る。
【解決手段】切り取る図形を塗りつぶし領域と白地領域とで塗り分けたマスキングシートと、作図データに基づいてレーザービームの照射位置を制御するレーザー切断機と、スクリーン印刷版と、帯電シートとを用いる。スクリーン印刷版にマスキングシートの図形を転写し、その上に通気性シートを介して金箔を置き、レーザービームをスクリーン印刷版に転写した図形の輪郭に沿って照射して金箔を切断し、テーブルに負圧を作用させながら空気流で不用部分の金箔を除去し、残った金箔片を帯電シートに吸着して取り出す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切り取る金箔片の図形を塗りつぶし領域と白地領域とで塗り分けたマスキングシートを作り、
感光乳剤を塗布したスクリーン印刷版の上に当該マスキングシートを添設して露光及び乳剤の洗い落としを行って前記図形が転写されたスクリーン印刷版を作り、
当該スクリーン印刷版をレーザー切断機のテーブル上に位置決めすると共に、上面に金箔を添設した通気性シートを当該スクリーン印刷版上に置き、
金箔のみを切断する強度のレーザービームをスクリーン印刷版に転写した前記図形の輪郭に沿って照射し、
テーブルに負圧を作用させながらスクリーン印刷版上に空気流を吹いて前記図形部分を除く部分の金箔を吹き飛ばして除去し、
帯電したシートをスクリーン印刷版の上に挿入して金箔片を覆うように添設し、
テーブルの負圧を解除して前記帯電したシートをこれに吸着した金箔片と共に搬出する、
金箔の切断加工方法。
【請求項2】
切り取る金箔片の図形をパソコンの描画ソフトで作図してその作図データをレーザー切断機の制御器に登録すると共に、当該作図した図形部分を塗りつぶして印刷用紙に印刷して前記マスキングシートを得、
当該マスキングシートを用いて得られたスクリーン印刷版に当該マスキングシート又はこれと同じ図形ないし位置決めマークを印刷した印刷用紙を添設した状態でレーザー切断機のテーブル上での当該スクリーン印刷版の位置決めを行い、
前記登録した作図データでレーザー切断機を制御して前記金箔上にレーザービームを照射する、請求項1記載の金箔の切断加工方法。
【請求項3】
レーザー切断機のテーブルにスクリーン印刷枠の位置決め具を設け、
切り取る金箔片の図形をパソコンの描画ソフトで作図してその作図データをレーザー切断機の制御器に登録し、
紙を添設したスクリーン印刷版を前記位置決め具で位置決めして前記登録した作図データでレーザー切断機を制御して前記紙の上にレーザービームを照射して前記図形の輪郭を描いてその内側を塗りつぶして前記マスキングテープを得、
当該マスキングシートを用いて得られたスクリーン印刷版に上面に金箔を添設した通気性シートを置き、
当該スクリーン印刷版を前記位置決め具で前記テーブル上に位置決めし、
前記登録した作図データでレーザー切断機を制御して前記金箔上にレーザービームを照射する、請求項1記載の金箔の切断加工方法。
【請求項4】
スクリーン印刷版を固定する固定具を備えたテーブルと、
描画ソフトの作図データに基づいてテーブル上に閉曲線を描くように制御されるレーザー発信器と、
を備えている、金箔の切断加工装置。
【請求項5】
前記テーブル上でスクリーン印刷版を位置決めする位置決め具を備えている、請求項4記載の金箔の切断加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金箔を所望形状に切り抜いてその切り抜いた金箔片を取り出す方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金箔は、間紙を挟んで何枚も積み重ねたものを、繰り返し箔打ち機で叩いて展伸することによって製造され、所定寸法に切断されたものが間紙と交互に積重した状態で提供される。
【0003】
提供された金箔は、1枚ずつ剥がして用いるが、1枚の金箔は非常に薄く、わずかな空気の乱れによっても皺になって縮んだり折れ曲がったりするので、金箔の取扱いには非常な熟練を必要とする。
【0004】
近時、金箔の小片を菓子などの食品の表面に貼付したり、酒などの飲料に浮かせたりして装飾することが行われている。このような目的で用いる金箔片は、矩形か不定形であるのが普通であるが、種々の形状の金箔片を用いてより高度な装飾を付与したいという要望があった。
【0005】
金箔は、レーザー切断機で切断することができ、閉曲線に沿ってレーザービームを照射すれば、任意の図形に切り抜くことができる。しかし、所望形状に金箔を切り抜いたとしても、切り抜かれた金箔片を取り出すのに高度な熟練を要する。食品や飲料の製造ないし提供現場では、金箔を扱う熟練者が居ないので、得られた金箔片を取り出して菓子などの物品に添着することも困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、食品その他の物品に所定形状、例えばハート形や三角形などの図形に切断した金箔片を貼着することを可能とする技術手段を得ることを目的として為されたもので、金箔を所望形状の金箔片に切断し、切断された金箔片の搬送や貼付作業を容易に行うことを可能にする金箔の切断加工方法及びそれに使用する切断加工装置を得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の金箔の切断加工方法は、切り取る金箔gの図形を塗りつぶし領域31と白地領域32とで塗り分けたマスキングシート3と、制御器13に登録された作図データ(一般的にはCADデータ)に基づいてレーザービームの照射位置を制御可能なレーザー切断機1(1a、1b)と、メッシュに感光乳剤を塗布したスクリーン印刷版2と、帯電したシート5とを用いて、次の手順で金箔gの切断加工と取り出しとを行う。
(a)スクリーン印刷版2aにマスキングシート3を添設して露光及び乳剤の洗い落としを行って図形31が転写されたスクリーン印刷版2(以下、「転写済印刷版」と言う。)を作る。
(b)転写済印刷版2bをレーザー切断機1のテーブル11上に位置決めする。
(c)金箔gをレーヨン紙などの通気性のあるシート4の上に添設して、転写済印刷版2bの上に置く。
(d)金箔gのみを切断する強度のレーザービームを転写済印刷版2bに転写した転写図形21の輪郭に沿って照射する。
(e)テーブル11に負圧を作用させながら転写済印刷版2b上に空気流を吹いて図形部分を除く部分の金箔g2を吹き飛ばして除去する。除去した金箔は回収する。
(f)帯電したナイロンシートやロウ紙などのシート(帯電シート)5を転写済印刷版2bの上に挿入して金箔片g1を覆うように添設し、テーブル11の負圧を解除する。
(g)帯電シート5を取り出す。切断された金箔片g1は、帯電シート5と共に取り出される。
(h)取り出した金箔片g1を帯電シート5に添着した状態で包装する。
【0008】
この発明の方法で金箔を所望形状に切り抜いて取り出すためには、レーザー切断機のテーブル11上に置かれた転写済印刷版2bの転写図形21の輪郭に沿ってレーザービームを照射して金箔gを切断する必要がある。
【0009】
下記実施例に示すように、この必要は、レーザー切断機で金箔gを切断するとき、図形をスクリーン印刷版2aに転写したマスキングシート3を転写済印刷版2bの上に同じように位置決めしてレーザービームを照射して、テーブル11上での転写済印刷版2bの位置決めを行うとか、金箔を切断するときと同じ位置に位置決めしたスクリーン印刷版2a上のシートにレーザービームで図形を描いてマスキングシート3を作るとか、テーブル上の転写済印刷版2b上に位置決めしたマスキングシート3の図形をカメラで読み取ってレーザー切断機の制御器13に登録するなどの方法で実現することができる。
【0010】
そのようにすれば、テーブル11に負圧を供給して金箔を吹き飛ばす空気流を付与したとき、所望図形に切り抜かれた金箔片g1のみが吸着されて留まり、図形部分以外の金箔g2は吹き飛ばされる。
【0011】
そして、帯電シート5を金箔片g1の上に添設してテーブル11の負圧を解除すれば、金箔片g1は帯電シート5に吸着されるから、帯電シート5を取り出して搬送し、必要により包装することで、金箔片g1の取り出し及び搬送や包装を容易に行うことが可能になる。そして、帯電シートと金箔を貼付する物品との間に逆方向の電位差を作ることにより、装飾対象物への金箔の貼付も容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施例の装置を示す斜視図
図2】スクリーン印刷版の露光工程を示す斜視図
図3】図形を転写したスクリーン印刷版の斜視図
図4】転写済印刷版の位置決め工程を示す斜視図
図5】金箔の切断工程を示す斜視図
図6】切り抜いた金属片の搬出工程を示す斜視図
図7】搬出された金属片を示す斜視図
図8】第2実施例におけるマスキングシートの作成工程を示す斜視図
図9】第2実施例における金箔の切断工程を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。図1ないし図7は、第1実施例を示した図である。
【0014】
第1実施例で用いるレーザー切断機1aは、テーブル11とレーザー発信器12と制御器13とを備えている。制御器13は、読み込まれた作図データ(一般的にはCADデータ)に基づいてレーザー発信器12のビーム照射位置を制御する。テーブル11は、枠状でその枠の内側14は図示しないブロワの吸込み口に接続されている。テーブル11の作業者から見て奥側上方には、テーブル上面の上記内側の領域に空気流を流すノズル15が設けられ、このノズルは図示しないファンの吐出口に接続されている。テーブル11には、その上に定置するスクリーン印刷版2(2a、2b)を固定するための固定具16が設けられている。
【0015】
次に第1実施例の金箔の切断加工方法を説明する。CADソフトで所望の図形を配置した図面を作成し、当該図形31を塗りつぶして紙に印刷したマスキングシート3と、当該図形の輪郭線61と位置決めマーク63とを同一寸法の紙に印刷した位置決めシート6とを印刷する。
【0016】
次にマスキングシート3の一方の角をスクリーン印刷版2aの枠の内側の角に合わせて位置決めした状態で、紫外線Lを照射し(図2)、その後スクリーン印刷版を水洗することによってマスキングシート3の図形31が転写された転写済印刷版2bを得る(図3)。
【0017】
スクリーン印刷版2aのメッシュに塗布された乳剤は、紫外線が照射された領域が硬化し、塗りつぶしによって紫外線が遮蔽された図形部分の乳剤は硬化しないで水洗により洗い流されるので、塗りつぶした図形部分がインクが通過可能、従って空気が通過可能な領域となる。
【0018】
このようにして図形を転写した転写済印刷版2bの上に位置決めシート6を、マスキングシート3と同様に転写済印刷版2bの内側角に位置決めして、レーザー切断機のテーブル11上に載置し、図形の印刷に用いたCADデーダをレーザー切断機の制御器13に登録する。そして、出力を弱めたレーザービームをCADデータの原点位置に照射し、そのレーザースポットが位置決めシート6の位置決めマーク63に一致するように転写済印刷版2bの位置を調整して、固定具16でテーブル11に固定する。
【0019】
位置決めシート6に図形の輪郭線61を印刷しておけば、この位置合わせのときに、レーザースポットを制御器のCADデータで制御してレーザースポットの走査位置を確認することができる。
【0020】
転写済印刷版2bがテーブル11上に固定されたら、位置決めシート6を取り除き、切断しようとする金箔gを通気性シート4の上に載せて転写済印刷版2bの上に載せる。このときの位置合わせは、切り取る図形が金箔gの周縁からはみ出さない程度の大まかな位置合わせでよい。
【0021】
そして、テーブル11の内側に負圧を作用させ、金箔gのみが切断される強度に設定したレーザービームをCADデータの図形の輪郭線に沿って照射して図形の周縁を切断する(図5)。
【0022】
テーブル11上での上記の転写済印刷版2bの位置決めによって、金箔を切断する際のレーザービームの軌跡は、転写済印刷版の転写図形21の輪郭と一致することとなる。
【0023】
従って、レーザービームによって切り取られた金箔の図形部分(金箔片)は、通気性シート4及び乳剤が除去された転写済印刷版の転写図形21を通して作用する負圧により、通気性シート4に吸着され、通気性シート4もまた転写済印刷版2bに吸着されることとなる。
【0024】
金箔の図形以外の部分g2は、転写済印刷版2bの硬化した乳剤の層に阻まれて負圧が作用しないので、吸着されない。そこで空気ノズル15から空気流を通気性シート4上に吹くことによって図形部分以外の金箔g2を吹き飛ばして回収する。
【0025】
空気ノズル15からの空気の流出を止めた後、所望形状に切断された金箔片g1を覆うように帯電シート5を通気性シート4の上に載せ、テーブル11の負圧を解除して帯電シート5を取り出せば、切断された金箔片g1を帯電シート5に吸着した状態で一括して取り出すことができる。通気性シート4の材質を選択することにより、金箔片g1を帯電シート5と通気性シート4とで挟んだ状態で取り出すことも可能である。
【0026】
取り出した金箔片g1は、帯電シート5に吸着させた状態で包装して顧客に提供することができる。
【0027】
図8及び9は、第2実施例を示した図である。第2実施例で用いるレーザー切断機1bは、テーブル11にスクリーン印刷版2の位置決め具17が取り付けられている。
【0028】
この第2実施例では、マスキングシート3をレーザー切断機によって作成する。まず、マスキングシートとなる紙を図形が転写されていないスクリーン印刷版2aの上に一方の角をスクリーン印刷版の一方の内側角に位置決めして添設し、更にそのスクリーン印刷版2aをテーブルの位置決め具17に位置決めしてレーザー切断機のテーブル11上に置く。
【0029】
そして、所望の図形を作図したCADデータに基づいてスクリーン印刷版2a上の紙30にレーザービームを照射する。このときのレーザービームの強度は、金箔を切断するときと同程度の強度である。
【0030】
レーザービームを照射した紙30には、図形の輪郭が焦げ跡となって表されるから、その内側を塗りつぶすことによってマスキングシート3を得る。このマスキングシートを用いて第1実施例と同様な手順で図形が転写された転写済印刷版2bを作成し、当該印刷版を位置決め具17により位置決めした状態でテーブル11に固定する。
【0031】
このとき転写済印刷版2bは、マスキングシートとなる紙30に図形を描いたときと同じ位置に位置決めされるので、図形を描かせたときと紫外線を照射したときにマスキングシートがスクリーン印刷版2の同じ位置に位置決めされていれば、位置決め具17で位置決めされた転写済印刷版の転写図形21の輪郭線の位置は、レーザービームの走査位置と一致することとなる。従って、第2実施例の場合には、手作業によるテーブル11上での転写済印刷版2bの位置合わせ作業が不要である。
【0032】
このようにして転写済印刷版2bをレーザー切断機のテーブル11に位置決めした後の手順は、第1実施例における手順と同様である。
【符号の説明】
【0033】
1(1a、1b) レーザー切断機
2a スクリーン印刷版
2b 図形を転写したスクリーン印刷版
3 マスキングシート
4 通気性シート
5 帯電シート
6 位置決めシート
11 テーブル
13 制御器
21 転写図形
31 マスキングシートの図形
32 白地領域
g 金箔
g1 金箔片
g2 金箔の残余の部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9