【解決手段】プラットホームの線路側側面に設置され監視エリア内を走査するスキャン装置と、スキャン装置を制御するデータ管理装置200と、を備える隙間落ち検知システムであって、データ管理装置200は、プラットホームに停止中の鉄道車両の停止パターンを検出する検出部201と、検出した鉄道車両の停止パターンに基づいて、プラットホームと鉄道車両との間にスキャン装置の監視エリアを設定する設定部202と、監視エリアにおいてスキャン装置が異物を走査すると、隙間落ちを検知する検知部203と、を備える。
プラットホームの線路側側面に設置され監視エリア内を走査するスキャン装置と、前記スキャン装置を制御する制御装置と、を備え、プラットホームにおける隙間落ちを検知する隙間落ち検知システムであって、
前記制御装置は、
プラットホームに停止中の鉄道車両の停止パターンを検出する検出部と、
前記検出部が検出した鉄道車両の停止パターンに基づいて、プラットホームと鉄道車両との間に前記スキャン装置の監視エリアを設定する設定部と、
前記監視エリアにおいて前記スキャン装置が異物を走査すると、隙間落ちを検知する検知部と、
を備える隙間落ち検知システム。
前記設定部は、第1車両の側面と当該第1車両に隣接する第2車両の側面との角度に応じて広さが異なるように、前記第1車両及び前記第2車両の間の連結部に対する監視エリアを設定する、
請求項1から4のいずれかに記載の隙間落ち検知システム。
前記スキャン装置は、線路の所定領域を監視エリアとする第1監視パターンと、前記第1監視パターンよりも狭い領域でありプラットホームに停止中の鉄道車両とプラットホームとの間の領域を監視エリアとする第2監視パターンと、を備え、
前記設定部は、プラットホームに鉄道車両が停止することを条件に前記スキャン装置の監視パターンを第2監視パターンに設定し、停止している鉄道車両が動くことを条件に前記スキャン装置の監視パターンを第1監視パターンに設定する、
請求項1から5のいずれかに記載の隙間落ち検知システム。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[隙間落ち検知システムの概要]
初めに、
図1を参照して、本発明の隙間落ち検知システムの概要について説明する。
【0017】
本発明の隙間落ち検知システムは、プラットホームから線路上を走査するスキャン装置を用いて、プラットホームと鉄道車両との間の隙間に転落する隙間落ちを検知する。スキャン装置を用いた隙間落ち検知では、プラットホームと鉄道車両との間の隙間を適切に走査しなければならず、スキャン装置の監視エリアを適切に設定する必要がある。
【0018】
ここで、プラットホームは一部湾曲している場合があるのに対して、鉄道車両の各車両は直線状であるため、湾曲しているプラットホームでは、プラットホームと鉄道車両との間の隙間が、鉄道車両の停止位置に応じて異なる。具体的には、
図1A(A)に示す停止位置1と
図1A(B)に示す停止位置2とでは、プラットホームと鉄道車両との間の隙間が夫々異なる。
【0019】
このとき、スキャン装置の監視エリアMA1を、例えば
図1B(A)に示すように停止位置1に好適に設定していると、鉄道車両の停止位置がずれた場合に隙間落ちの誤検知や検知漏れが発生してしまう。
即ち、停止位置によりプラットホームと鉄道車両との間の隙間が異なるため、
図1B(B)に示すように、停止位置が停止位置2にずれた場合、監視エリアMA1内の地点P1に鉄道車両の一部が位置することになり、隙間落ちの誤検知に繋がる。同様に、地点P2は、プラットホームと鉄道車両との間の隙間であるのに監視エリアMA1に含まれないことになるため、地点P2で隙間落ちが起こった場合に検知漏れに繋がる。
【0020】
そこで、本発明の隙間落ち検知システムは、鉄道車両の停止パターンに応じてスキャン装置の監視エリアを設定する。
即ち、
図1B(C)に示すように、停止位置が停止位置1から停止位置2にずれた場合、停止位置2に応じた監視エリアMA2を設定し、プラットホームと鉄道車両との間の隙間を監視する。これにより、鉄道車両の停止位置に関わらず、乗客の隙間落ちを適切に検知することができる。
【0021】
<第1実施形態>
続いて、
図2から
図8を参照して、本発明の隙間落ち検知システムの第1実施形態について説明する。
【0022】
[隙間落ち検知システム10の全体構成]
図2は、第1実施形態に係る隙間落ち検知システム10の全体構成を示す図であり、
図3A乃至3Cは、スキャン装置101の配置及び構成例を示す図である。
【0023】
図2に示すように隙間落ち検知システム10は、スキャン装置群100と、撮影装置群110と、スキャン装置群100及び撮影装置群110と通信可能に接続されたデータ管理装置200と、を含んで構成される。
なお、隙間落ち検知システム10は、データ管理装置200とスキャン装置群100及び撮影装置群110との間にハブ300を備えてもよく、また、ハブ300に接続されるスキャン装置群100及び撮影装置群110を複数備えてもよい。この場合、例えば、夫々のスキャン装置群100及び撮影装置群110を、駅にある複数のプラットホームの夫々に設置することとしてもよい。また、隙間落ち検知システム10は、撮影装置群110で撮影された画像を表示するモニタ400を備えてもよい。
【0024】
撮影装置群110は、複数の撮影装置111(撮影装置111−1、撮影装置111−2・・・撮影装置111−n、ただしnは3以上の自然数)が駅のプラットホームの長さ方向に沿ってデイジーチェーン接続されて構成される。
【0025】
撮影装置111は、2つの撮像素子を有するステレオカメラであり、
図3Aに示すように、駅のプラットホームの上部(天井)に設置される。なお、撮影装置111は、撮影範囲が隣接する撮影装置111の撮影範囲と重なり合うように設置される。
撮影装置111は、例えば、駅に停車中の鉄道車両のドアを含むドア周辺画像を俯瞰的に撮影する。なお、ドア周辺画像には、鉄道車両を待つ乗客やプラットホームの様子、及び、ドアの周辺の鉄道車両の一部を撮影した画像が含まれる。撮影装置111が撮影したドア周辺画像は、所定の通信線を介してデータ管理装置200に送信され、モニタ400に表示される。
【0026】
スキャン装置群100は、複数のスキャン装置101(スキャン装置101−1、スキャン装置101−2・・・スキャン装置101−n、ただしnは3以上の自然数)が駅のプラットホームの長さ方向に沿ってデイジーチェーン接続されて構成される。
【0027】
スキャン装置101は、レーザーを用いて対象物までの距離を測定するレーザースキャナであり、
図3Aに示すように、駅のプラットホームの線路側側面に設置される。ここで、スキャン装置101は、宙吊りになる隙間落ちを検知するため、線路面から所定の高さの位置に設置される。なお、詳細については後述するが、本実施形態では、スキャン装置101は、鉄道車両の下部に設置された制御箱Bを検知することとしているため、所定の高さとしては、この制御箱Bと略同一の高さであることが好ましい。
図3Bに示すように、スキャン装置101は、プラットホームの長さ方向(水平方向)に沿って設置され、線路上を水平方向に走査し、異物を検知する。なお、スキャン装置101は、走査範囲が隣接するスキャン装置101の走査範囲と重なり合うように設置され、プラットホームよりも線路側の空間を複数のスキャン装置101で隙間なく走査する。
【0028】
また、スキャン装置101は、
図3Cに示すように、走査範囲の任意の位置のみを監視エリアMAとして設定することができる。スキャン装置101は、監視エリアMAが設定されると、監視エリアMAの異物のみを検知し、走査範囲の監視エリアMA以外の領域の異物を検知しない。
このように監視エリアMAを任意に設定できるスキャン装置101としては、ジック株式会社のレーザースキャナ「LMS100」が知られており、例えば、この「LMS100」を用いることで、スキャン装置101を実現することができる。もちろん、スキャン装置101は、「LMS100」に限らず他のレーザースキャナを用いて実現することとしてもよい。
【0029】
[データ管理装置200の機能構成]
図4は、データ管理装置200の機能構成を示すブロック図である。データ管理装置200は、検出部201と、設定部202と、検知部203と、記憶部205と、を含んで構成される。また、データ管理装置200は、乗降口検出部204を更に含むこととしてもよい。
なお、データ管理装置200が備える検出部201乃至記憶部205のうちの1部の機能を複数のスキャン装置101の夫々が備えることとしてもよい。即ち、本発明の制御装置(コンピュータ)は、データ管理装置200により実現されることとしてもよく、また、複数のスキャン装置101の夫々により実現されることとしてもよく、また、データ管理装置200と複数のスキャン装置101の夫々とにより実現されることとしてもよい。
【0030】
検出部201は、プラットホームに停止中の鉄道車両の停止パターンを検出する。設定部202は、検出部201が検出した鉄道車両の停止パターンに基づいて、プラットホームと鉄道車両との間にスキャン装置101の監視エリアMAを設定する。
【0031】
ここで、第1実施形態の隙間落ち検知システム10では、検出部201は、鉄道車両の停止パターンとして、プラットホームに停止中の鉄道車両の側面の位置を検出し、設定部202は、検出した鉄道車両の側面の位置からプラットホーム方向に所定範囲の領域を監視エリアMAとして設定する。
この点、
図5を参照して、具体的に説明する。
【0032】
図3Aに示すように、鉄道車両の下部には制御箱Bが設置されている。この制御箱Bは、
図5(A)に示すように、鉄道車両の幅方向の車両限界線Lに沿って設置される。検出部201は、スキャン装置101がプラットホームに停止した鉄道車両の制御箱Bの位置を測定すると、この制御箱Bを直線で結ぶことで鉄道車両の側面の位置(車両限界線L)を検出する。
なお、制御箱Bの中には車両限界線Lよりも内側に設置されているものもあるため、検出部201は、制御箱Bの最凸部を直線で結ぶことで、鉄道車両の側面の位置(車両限界線L)を検出する。
【0033】
このように、本実施形態の検出部201は、スキャン装置群100の走査結果に基づいて鉄道車両の側面の位置を検出することとしているが、鉄道車両の側面の位置の検出方法は任意である。即ち、スキャン装置群100の走査結果ではなく、撮影装置群110の撮影結果に基づいて、鉄道車両の側面の位置を検出することとしてもよく、また、スキャン装置群100及び撮影装置群110以外の他の測定装置と連動して、鉄道車両の側面の位置を検出することとしてもよい。
【0034】
設定部202は、鉄道車両の側面の位置を検出すると、
図5(B)に示すように、鉄道車両の側面の位置(車両限界線L)からプラットホーム方向に所定範囲の領域を監視エリアMAとして設定する。
所定範囲は、プラットホームと鉄道車両との間の最も広い隙間であっても漏れなく監視可能な範囲であり、スキャン装置101が設置された位置のプラットホームの形状と線路の形状とから、スキャン装置101毎に予め設定しておく。このような所定範囲では、監視エリアMAがプラットホームと鉄道車両との間の隙間よりもプラットホーム側に広くなるものの、プラットホーム側に広い分には誤検知及び検知漏れが発生することがないため好適である。
【0035】
ここで、鉄道車両の各車両の連結部は、線路(プラットホーム)の湾曲に併せて変形するため、プラットホームとの間の隙間が、連結部以外の車両部分とプラットホームとの間の隙間に比べて広くなる。即ち、
図6A(A)に示すように、車両と車両との間の連結部分には、連結部分に特有の隙間Gが生じる。
そこで、設定部202は、鉄道車両の連結部とプラットホームとの間の監視エリアを、鉄道車両の他の部分とプラットホームとの間の監視エリアよりも広く設定する。
【0036】
なお、連結部の位置は、例えば、撮影装置群110やその他の測定装置と連動して検出する等、任意の方法により検出することができるが、本実施形態では、スキャン装置群100の走査結果に基づいて連結部の位置を検出する。
【0037】
即ち、鉄道車両の各車両が直線状であるのに対して連結部は変形可能であるため、連結部は、線路(プラットホーム)の湾曲に応じて変形する。そこで、本実施形態では、検出部201が検出した車両限界線Lの変曲点Oから、連結部の位置を検出する。
図6A(A)に示すように、湾曲したプラットホームに鉄道車両が停止すると、車両の車両限界線Lの角度は、車両毎に異なる。検出部201は、検出した車両限界線Lの交点を変曲点Oとして、即ち連結部の位置として検出する。
【0038】
設定部202は、検出部201が変曲点O(連結部)を検出すると、
図6A(B)に示すように、他の部分と比較して広い監視エリアMA4を設定する。なお、連結部の隙間Gは鉄道車両側に広く生じるため、設定部202は、連結部の監視エリアとして鉄道車両側に広い監視エリアMA4を設定する。
【0039】
ところで、連結部の隙間Gの大きさは、連結部の変形度合、言い換えると連結する車両間の角度によって異なる。具体的には、
図6B(A)に示すように、連結する車両間の角度が小さい場合と大きい場合とでは、隙間Gの大きさが異なる。
そこで、
図6B(B)に示すように、設定部202は、第1車両の側面と当該第1車両に隣接する第2車両の側面との角度に応じて広さが異なるように、第1車両及び第2車両の間の連結部に対する監視エリアを設定することとしてもよい。
【0040】
なお、連結する車両間の角度は、撮影装置群110やその他の測定装置と連動して算出する等、任意の方法により算出することができるが、本実施形態では、スキャン装置群100の走査結果に基づいて、即ち変曲点Oにおける車両限界線Lの角度から算出する。
【0041】
図4に戻り、検知部203は、設定部202が設定した監視エリアMA(即ちプラットホームと鉄道車両との間の隙間)において、スキャン装置101が異物を走査すると、隙間落ちを検知する。検知部203が隙間落ちを検知すると、駅員等に対して隙間落ちの発生及び発生場所を通知する所定の警報が行われる。
【0042】
記憶部205は、スキャン装置群100を構成する複数のスキャン装置101の走査結果や、撮影装置群110を構成する複数の撮影装置111の夫々において撮影されたドア周辺画像を記憶する。また、記憶部205は、データ管理装置200やスキャン装置101の制御部を検出部201乃至乗降口検出部204として機能されるための各種プログラムやデータを記憶する。
【0043】
以上説明したように本発明の隙間落ち検知システム10では、鉄道車両の停止パターンに応じてスキャン装置101の監視エリアMAを設定することで、プラットホームと鉄道車両との間の隙間落ちを検知する。
ところで、隙間落ちは、鉄道車両がプラットホームに停止中に起こるものであり、プラットホームに鉄道車両が存在しない空線時には、隙間落ちに限らず線路への落下を検知することが好ましい。この点、スキャン装置101は、プラットホームの線路側側面に設置され、線路上を水平方向に走査するものであるため、プラットホームの状態に応じてスキャン装置101の監視パターンを切り替え、スキャン装置101を用いて隙間落ち及び線路落下を検知することとしてもよい。
【0044】
即ち、スキャン装置101に、第1監視パターンと第2監視パターンとを設定する。なお、第1監視パターンは、線路の所定領域を監視エリアとする監視パターンであり、隙間落ちに限らず線路への落下を検知する。また、第2監視パターンは、第1監視パターンよりも狭い領域でありプラットホームに停止中の鉄道車両とプラットホームとの間の領域、即ち、プラットホームと鉄道車両との間の隙間を監視エリアとする監視パターンである。
設定部202は、スキャン装置101の監視パターンを、プラットホームの状態に応じて切り替え、隙間落ち及び線路落下を検知する。具体的には、設定部202は、プラットホームに鉄道車両が停止することを条件に、スキャン装置101の監視パターンを第2監視パターンに設定し、停止している鉄道車両が動くことを条件にスキャン装置101の監視パターンを第1監視パターンに設定する。
【0045】
この点、
図7を参照して具体的に説明する。
図7(A)に示すように、プラットホームに鉄道車両が存在しない空線時には、設定部202は、スキャン装置101の監視パターンを第1監視パターンに設定し、線路の所定領域(例えば、全域)を監視エリアMA7に設定する。
その後、
図7(B)に示すように、プラットホームに鉄道車両が進入する入線時には、設定部202は、スキャン装置101の監視パターンをクリアし、スキャン装置101を用いた監視を停止する。
【0046】
その後、
図7(C)に示すように、プラットホームに鉄道車両が停止する停止時には、設定部202は、スキャン装置101の監視パターンを第2監視パターンに設定し、プラットホームと鉄道車両との間の隙間を監視エリアMA8として設定する。
その後、
図7(D)に示すように、プラットホームに停止していた鉄道車両が動き出す出線時には、設定部202は、スキャン装置101の監視パターンをクリアし、スキャン装置101を用いた監視を停止する。なお、鉄道車両がスキャン装置101の走査範囲から出てプラットホームが空線になると、
図7(A)に示すように、設定部202は、スキャン装置101の監視パターンを第1監視パターンに設定し、線路の所定領域(例えば、全域)を監視エリアMA7に設定する。
【0047】
これにより、隙間落ち検知システム10では、鉄道車両が停止中の隙間落ちだけでなく、空線時の線路落下等も検知することができる。
なお、入線時及び出線時にスキャン装置101の監視パターンを第1監視パターンとするのは、鉄道車両が動いている状態では、プラットホームと鉄道車両との間の隙間が逐次変化するためである。
【0048】
以上、データ管理装置200の機能構成について説明したが、データ管理装置200は、
図4に示す乗降口検出部204を更に含むこととしてもよい。
【0049】
乗降口検出部204は、プラットホームに停止中の鉄道車両の乗降口を検出する。乗降口の検出方法は任意であり、乗降口検出部204は、スキャン装置群100、撮影装置群110又はその他の測定装置と連動して乗降口を検出することができる。
設定部202は、乗降口検出部204が乗降口を検出すると、乗降口からプラットホーム方向に所定範囲の領域を監視エリアMAとして設定する。
【0050】
隙間落ちの多くは、鉄道車両への乗り降りの際に起こる。データ管理装置200が乗降口検出部204を含む構成とすることで、隙間落ちが起きやすい場所のみを重点的に監視することができ好適である。また、プラットホームと鉄道車両との間の隙間全域を監視エリアMAとして設定した場合には、鉄道車両の一部が存在する位置に誤って監視エリアMAが設定されてしまうおそれがあり、誤検知に繋がるおそれがある。この点、乗降口に限定して監視エリアMAを設定することで、誤検知の可能性を抑えることができ好適である。
【0051】
[隙間落ち検知システム10の処理]
以上、隙間落ち検知システム10の構成について説明した。続いて、隙間落ち検知システム10の処理の流れについて
図8を参照して説明する。
【0052】
初めに、データ管理装置200は、第1監視パターンに設定されたスキャン装置101がプラットホームに進入する鉄道車両を検出するまで待機する(ステップS1)。その後、スキャン装置101がプラットホームに進入する鉄道車両を検出すると、データ管理装置200(設定部202)は、スキャン装置101の監視パターンをクリアし、スキャン装置101を用いた監視を停止する(ステップS2)。
【0053】
続いて、データ管理装置200は、入線している鉄道車両がプラットホームに停止するまで待機する(ステップS3)。スキャン装置群100の走査結果等からプラットホームに鉄道車両が停止したことを検知すると、データ管理装置200(検出部201)は、停止中の鉄道車両の制御箱Bの走査結果から車両限界線Lを算出し、鉄道車両の側面位置として検出する(ステップS4)。続いて、データ管理装置200(検出部201)は、車両限界線Lの変曲点Oから、連結部の位置を検出する(ステップS5)。
【0054】
続いて、データ管理装置200(設定部202)は、車両限界線Lからプラットホーム方向に所定範囲の領域を監視エリアMAとして設定する(ステップS6)。このとき、データ管理装置200(設定部202)は、上述のように連結部に対してより広い領域の監視エリアMAを設定する。続いて、データ管理装置200(設定部202)は、スキャン装置101の監視パターンを第2監視パターンに設定し、ステップS6で設定した監視エリアMAの監視を行う(ステップS7)。
【0055】
データ管理装置200(検知部203)は、監視エリアMAの監視中に隙間落ちを検知すると、即ち監視エリアMAにおいて異物を検知すると(ステップS8)、隙間落ちが起こったことを駅員等に通知する(ステップS9)。また、データ管理装置200(設定部202)は、鉄道車両が動き出したことを検知すると(ステップS10)、スキャン装置101の監視パターンをクリアし、スキャン装置101を用いた監視を停止する(ステップS11)。
【0056】
続いて、データ管理装置200は、動き出した鉄道車両がプラットホームから出線するまで、即ち、スキャン装置101が鉄道車両を検出しなくなるまで待機する(ステップS12)。その後、鉄道車両がプラットホームから出線し、プラットホームが空線になると、データ管理装置200(設定部202)は、スキャン装置101の監視パターンを第1監視パターンに設定し、線路の所定領域(例えば、全域)の監視を行う。
【0057】
[第1実施形態の隙間落ち検知システム10における効果]
以上、本発明の隙間落ち検知システム10の第1実施形態について説明した。続いて、隙間落ち検知システム10における効果について説明する。
【0058】
本発明の隙間落ち検知システム10では、プラットホームに鉄道車両が停止すると、停止した鉄道車両の停止パターンを検出し、この停止パターンに応じた監視エリアMAを設定する。これにより、鉄道車両の停止パターンに応じて異なる監視エリアMAを設定することができるため、鉄道車両の停止位置がずれた場合の誤検知や検知漏れを防止することができる。その結果、本発明の隙間落ち検知システム10によれば、プラットホームと鉄道車両との間の隙間に転落する隙間落ちを適切に検知することができる。
【0059】
また、隙間落ち検知システム10では、停止パターンとして鉄道車両の側面の位置を検出し、この側面の位置からプラットホーム方向に所定範囲の領域を監視エリアMAとして設定する。このような構成によれば、鉄道車両の側面に確実かつ容易に監視エリアMAを設定することができ、プラットホームと鉄道車両との間の隙間に転落する隙間落ちを適切に検知することができる。
【0060】
また、隙間落ち検知システム10では、鉄道車両の連結部とプラットホームとの間の隙間Gに、他の隙間部分と比較して広い監視エリアMAを設定するため、隙間が生じやすい連結部における隙間落ちを適切に検知することができる。
このとき、連結部の変形度合(即ち連結する車両間の角度)に応じて連結部に設定する監視エリアの広さを異ならせることで、連結部における隙間落ちをより適切に検知することができる。
【0061】
また、隙間落ち検知システム10では、線路の所定領域を監視する第1監視パターンと、プラットホームと鉄道車両との間の隙間を監視する第2監視パターンとを、プラットホームの状態に応じて切り替える。これにより、鉄道車両が停止中の隙間落ちだけでなく、空線時の線路落下等も検知することができる。
【0062】
なお、隙間落ち検知システム10では、鉄道車両の乗降口から所定範囲の領域を監視エリアMAとして設定することで、鉄道車両への乗り降りの際の隙間落ちを重点的に監視することができる。
【0063】
<第2実施形態>
続いて、
図9を参照して、第2実施形態の隙間落ち検知システム10について説明する。第1実施形態の隙間落ち検知システム10では、停止パターンとして鉄道車両の側面の位置(車両限界線L)を検出し、鉄道車両の側面から所定範囲をスキャン装置101の監視エリアMAとして設定した。第2実施形態の隙間落ち検知システム10では、停止位置に応じた監視エリアを予め記憶しておき、停止パターンとして検出した鉄道車両の停止位置に応じた監視エリアを読み出すことで、スキャン装置101の監視エリアMAを設定する。
【0064】
具体的には、第2実施形態の記憶部205は、
図9に示すように、鉄道車両の停止位置に対応付けて監視エリアMAのパターンを記憶する。なお、鉄道車両の形状によって、停止位置と、プラットホーム及び鉄道車両間の隙間と、が異なるため、記憶部205は、鉄道車両の種別毎に停止位置に対応付けて監視エリアMAのパターンを記憶することとしてもよい。
【0065】
第2実施形態の検出部201は、停止パターンとして、プラットホームにおける鉄道車両の停止位置を検出する。停止位置の検出方法は任意であり、検出部201は、スキャン装置群100の走査結果(変曲点Oの位置)や、撮影装置群110の撮影結果に基づいて、停止位置を検出することとしてもよく、また、スキャン装置群100及び撮影装置群110以外の他の測定装置と連動して、停止位置を検出することとしてもよい。
また、検出部201は、スキャン装置群100、撮影装置群110及び/又は他の測定装置と連動して、プラットホームに停止する鉄道車両の種別を検出することとしてもよい。
【0066】
第2実施形態の設定部202は、検出した停止位置(及び鉄道車両の種別)に対応するパターンの監視エリアを、記憶部205から読み出し、スキャン装置101の監視エリアとして設定する。例えば、車両種別「Z111」の鉄道車両が「停止位置3」に停止した場合には、設定部202は、監視エリアMAとして「監視エリア3」を設定する。
【0067】
[第2実施形態の隙間落ち検知システム10における効果]
以上、本発明の隙間落ち検知システム10の第2実施形態について説明した。第2実施形態の隙間落ち検知システム10では、鉄道車両の停止位置に対応付けて監視エリアMAのパターンを予め記憶しておき、プラットホームに鉄道車両が停止すると、その停止位置に対応する監視エリアMAを設定する。これにより、鉄道車両の停止位置がずれた場合であっても、実際に鉄道車両が停止した位置に最適な監視エリアMAを設定することができ、誤検知や検知漏れを防止することができる。その結果、隙間落ち検知システム10によれば、プラットホームと鉄道車両との間の隙間に転落する隙間落ちを適切に検知することができる。
【0068】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0069】
例えば、第2実施形態の隙間落ち検知システム10では、記憶部205に、鉄道車両の停止位置毎に監視エリアMAを記憶することとしている(
図9参照)。この点、記憶部205には、任意の停止位置(例えば、通常の停止位置)に対応する監視エリアMAのみを記憶しておくこととしてもよい。この場合、設定部202は、実際の停止位置が任意の停止位置からずれた場合には、記憶している監視エリアMAをずれた分だけ移動することで、実際の停止位置に対応する監視エリアMAを設定する。
もちろん、任意の停止位置は1箇所に限られず、複数個所であってもよい。設定部202は、実際の停止位置が記憶部205に記憶された任意の停止位置と異なる場合に、任意の停止位置に対応する監視エリアMAを所定量ずらすことで実際の停止位置に対応する監視エリアMAを設定する。
【0070】
このような構成によっても、鉄道車両の実際の停止位置に最適な監視エリアMAを設定することができ、プラットホームと鉄道車両との間の隙間に転落する隙間落ちを適切に検知することができる。
【0071】
また、上記実施形態では、隙間落ち検知システム10は、複数のスキャン装置101から構成されるスキャン装置群及び複数の撮影装置111から構成される撮影装置群110を備えることとしている。この点、プラットホームの一部のみが湾曲している場合には、当該一部のみを監視すれば足りるため、スキャン装置101及び撮影装置111が1台で十分な場合がある。そのため、隙間落ち検知システム10が備えるスキャン装置101及び撮影装置111は、複数に限らず1台であってもよい。