特開2015-168275(P2015-168275A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-168275ロータリーベーン舵取機アクチュエーターの内部油圧室シーリングシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-168275(P2015-168275A)
(43)【公開日】2015年9月28日
(54)【発明の名称】ロータリーベーン舵取機アクチュエーターの内部油圧室シーリングシステム
(51)【国際特許分類】
   B63H 25/30 20060101AFI20150901BHJP
   F15B 15/12 20060101ALI20150901BHJP
   F16J 15/26 20060101ALI20150901BHJP
【FI】
   B63H25/30 A
   F15B15/12 J
   F16J15/26
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-42218(P2014-42218)
(22)【出願日】2014年3月5日
(11)【特許番号】特許第5738447号(P5738447)
(45)【特許公報発行日】2015年6月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000107365
【氏名又は名称】ジャパン・ハムワージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨田 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】生田目 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】若林 喬之
【テーマコード(参考)】
3H081
3J043
【Fターム(参考)】
3H081AA02
3H081AA29
3H081BB02
3H081CC14
3H081CC29
3H081DD24
3H081EE04
3H081EE09
3H081EE10
3H081HH09
3J043AA01
3J043BA01
3J043CA13
3J043FA04
3J043FB20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】作動油室の間を油密に保つロータリーベーン舵取機アクチュエーターの内部油圧室シーリングシステムを提供する。
【解決手段】セグメント11bの頂端面にセグメント頂端面横シールを保持し、このシール面をトップカバー裏面に当接させ、トップカバー裏面に上部リングシール53を保持してシール面をローター上部端面の外周縁に当接せしめ、シール面の外周側端縁部をセグメント頂端面横シールのシール面内周側端縁およびベーン上部横シール12gのシール面内周側端縁に当接させ、トップカバー裏面に上部外周側リングシール55を保持してシール面をハウジング頂端面内周円環部に当接せしめ、シール面の内周側端縁部をセグメント頂端面横シールのシール面外周側端縁およびベーン上部横シール12gのシール面外周側端縁に当接させ、上部各シールのそれぞれの背面に高圧側となる作動油室から圧油を導き、相手面および相手縁に押し付ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
舵軸に嵌合装着するローターと、ローターを収納してローターの周囲に油室用空間を形成するハウジングと、ハウジングの上部開口に配置し、周縁部を全周に亘ってハウジングの頂面周縁部にボルトで固着する環状のトップカバーとを備え、ローターが外周面の周方向に沿った等間隔の位置に複数のベーンを有し、ハウジングが内周面の周方向に沿った等間隔の位置に複数のセグメントを有し、前記油室用空間内にベーンとセグメントによって区画する複数の油室を有し、
トップカバーは、裏面におけるローターの上部端面の外周縁に対向する部位に環状の上部リングスリットを有するとともに、上部リングスリット内にローターの上部端面と当接する上部リングシールを保持し、
ハウジングは、内底面におけるローターの下部端面の外周縁に対向する部位に環状の下部リングスリットを有するとともに、下部リングスリット内にローターの下部端面と当接する下部リングシールを保持し、
ローターの各ベーンは、トップカバーの裏面に対向する上部端面に半径方向に延びるベーン上部横スリットを有するとともに、ベーン上部横スリット内にトップカバーの裏面と当接するベーン上部横シールを保持し、ハウジングの内底面に対向する下部端面に半径方向に延びるベーン下部横スリットを有するとともに、ベーン下部横スリット内にハウジングの内底面と当接するベーン下部横シールを保持し、ハウジングの内周面に対向する半径方向先端面にローターの軸心方向に延びるベーン縦スリットを有するとともに、ベーン縦スリット内にハウジングの内周面と当接するベーン縦シールを保持し、ベーン縦シールの上端面がベーン上部横シールの裏面に当接し、ベーン縦シールの下端面がベーン下部横シールの裏面に当接し、
ハウジングの各セグメントは、ローターの外周面と対向する半径方向先端面に軸心方向に延びるセグメント縦スリットを有するとともに、セグメント縦スリット内にローターの外周面と当接するセグメント縦シールを保持し、セグメント縦シールの上端面をトップカバーの裏面に圧接させるとともに、その下端面をハウジングの内底面に圧接させるようにしたロータリーベーン舵取機のアクチュエータにおいて、
ハウジングの各セグメントのトップカバーの裏面に対向する頂端面にセグメント縦スリットと連続し、半径方向に延びるセグメント頂端面横スリットを有するとともに、セグメント頂端面横スリットにトップカバーの裏面に当接するセグメント頂端面横シールを保持し、セグメント縦シールの上端面がセグメント頂端面横シールの裏面に当接し、
セグメント頂端面横シールは、セグメント縦シールと同じ断面形状を有し、セグメント頂端面横シールとセグメント縦シールの上端との連接部において、セグメント縦シールの背面の空間とセグメント頂端面横シールの背面の空間とが連通し、
トップカバーは、裏面におけるハウジングの頂端面の内周縁に対向する部位に、前記上部リングスリットと同心の外周側に、環状の上部外周側リングスリットを有するとともに、上部外周側リングスリット内に、ハウジングの頂端面と当接する上部外周側リングシールを保持し、セグメント頂端面横シールのシール面の内周側端縁が前記上部リングシールのリングシール面の外周側端縁部と接触し、
セグメント頂端面横シールのシール面の外周側端縁が上部外周側リングシールのリングシール面の内周側端縁部と接触し、上部外周側リングシールのリングシール面の内周側端縁部は、同時にベーン上部横シールのシール面の外周側端縁にも当接し、
前記各シールのそれぞれの背面に高圧側となる作動油室から圧油を導いて、この油圧によりそれぞれのシール面およびシール面の縁部をそれぞれ相手面および相手縁に押し付けることを特徴とするロータリーベーン舵取機アクチュエーターの内部油圧室シーリングシステム。
【請求項2】
ハウジングの各セグメントは、ハウジングの内底面に対向する底端面に、セグメント縦スリットと連続し、半径方向に延びるセグメント底端面横スリットを有するとともに、セグメント底端面横スリットにセグメント底端面横シールを保持し、
セグメント底端面横シールはセグメント縦シールと同じ断面形状を有し、
セグメント底端面横シールとセグメント縦シールの下端との連接部において、セグメント縦シールの背面の空間とセグメント底端面横シールの背面の空間とが連通し、
セグメント底端面横シールのシール面がハウジングの内底面に当接し、
セグメント底端面横シールの裏面がセグメント縦シールの下端面に当接し、
セグメント底端面横シールのシール面の内周側端縁が下部リングシールのリングシール面の外周側端縁部と接触し、
セグメント底端面横シールの外周側端面がハウジングの内周面と接触し、
セグメント底端面横シールの背面に高圧側となる作動油室から作動圧油を導いて、この油圧により、セグメント底端面横シールのシール面およびシール面の内周側端縁をそれぞれ相手面および相手縁に押し付けることを特徴とする請求項1に記載のロータリーベーン舵取機アクチュエーターの内部油圧室シーリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロータリーベーン式舵取機に関し、詳しくはアクチュエーターの内部油圧室シーリングシステムに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来のロータリーベーン舵取機のアクチュエーター1は、例えば図14図22に示すようなものであり、ハウジング11と、その内部に収納されて回転するローター12とを有している。
【0003】
ハウジング11は、外周底部に備えたフランジ部11aがボルトで据付台に取り付けられており、トップカバー13は、ハウジング11の環状の頂端面11bにトップカバー取付ボルト11cで取り付けられている。
【0004】
ローター12は、下部軸部12aがハウジング11の底部に設けたボス部11dにラジアル軸受11eを介して半径方向において支持されており、上部軸部12bがハウジング11の上部開口を塞ぐように配置した環状のトップカバー13にラジアル軸受13aを介して半径方向において支持されている。また、ローター12の下端面がハウジング11の内底面11fにスラスト軸受11gを介して軸方向において支持されている。
【0005】
ローター12は、軸方向に貫通する内部貫通孔12cを有し、内部貫通孔12cに舵軸14の軸頭14aを装入して軸頭14aと緊密に嵌合する。また、外周面の周方向に沿った等間隔の位置に、複数(1〜n)のベーン12dが突設してある。ここではn=2の場合について説明する。
【0006】
ハウジング11は、内周面の周方向に沿った等間隔の位置に、ベーン12dと同数のセグメント11hが突設してある。セグメント11hは、その底端面11iがハウジング11の内底面11fに当接し、ハウジング11の底部のボス部11dを貫通するボルト11jでハウジング11に固着されている。また、セグメント11hは、その頂端面11kが、トップカバー13の裏面13bに当接し、トップカバー13を貫通するボルト11mでトップカバー13に固着されている。
【0007】
図14図16に示すように、運動体であるローター12の各ベーン12dは、接触摺動部であるハウジング11の内周面11nに摺接する部位にベーン縦シール12nが設けてあり、同じく接触摺動部であるトップカバー13の裏面13bに摺接する部位にベーン上部横シール12gが設けてあり、同じく接触摺動部であるハウジング11の内底面11fに摺接する部位にベーン下部横シール12jが設けてある。
【0008】
ベーン上部横シール12gは各ベーン12dの上端面12eに半径方向に延びて形成したベーン上部横スリット12f内に保持されており、ベーン下部横シール12jは各ベーン12dの下端面12hに半径方向に延びて形成したベーン下部横スリット12i内に保持されており、縦シール12nはベーン12dの半径方向の先端面12kに軸心方向に延びて形成した縦スリット12m内に保持されている。
【0009】
また、図14図16に示すように、固定体であるハウジング11のセグメント11hには、接触摺動部であるローター12の外周面12oに摺接する部位にのみ、セグメント縦シール11oが設けてあり、縦シール11oはセグメント11hの半径方向の先端面11pに形成した縦スリット11q内に保持されている。なお、セグメント11hの頂端面11kはトップカバー13の裏面13bに、底端面11iはハウジング11の内底面11fに油密に固着されている。
【0010】
ハウジング11内において、ローター12は、ベーン12dのベーン上部横シール12gのシール面12gaがトップカバー13の裏面13bに摺接し、ベーン下部横シール12jのシール面12jaがハウジング11の内底面11fに摺接し、同縦シール12nのシール面12naがハウジング11の内周面11nに摺接し、ローター12の外周面12oがハウジング11のセグメント11hの縦シール11oのシール面11oaに摺接する状態で回転する。
【0011】
これにより、ローター12の外側周囲に形成された油室用空間15が、ベーン12dとセグメント11hとによって、作動油室15a、15b、15c、15dに区画される。なお、ローター12の回転軸心を隔てた対極の位置にある作動油室15a、15c同士、および作動油室15b、15d同士は、それぞれ互いに連通している。例えば油圧ポンプから作動油室15aに作動圧油が供給されると、対極の位置にある作動油室15cにも同時に作動圧油が供給される。同時に残りの作動油室15b、15dからは油が排出されて、その油が油圧ポンプ側に戻される。かくて、作動圧油によるローター12の回転が成立する。
【0012】
図15図17図19に示すように、ハウジング11の内底面11fには、ローター12の下部端面の外周円環部に対向する部位に、その全周にわたって環状の下部リングスリット11rが形成してあり、下部リングスリット11rに下部リングシール11sを保持している。下部リングシール11sのシール面11sbがローター12の下部端面の外周円環面と摺接する。この構成により、各作動油室15a、15b、15c、15dにおいて、ローター12の下部端面の外周円環部とハウジング11の内底面11fとの油密を確保する。
【0013】
また、トップカバー13の裏面13bには、ローター12の上部端面の外周円環部に対向する部位に、その全周にわたって環状の上部リングスリット13cが形成してあり、上部リングスリット13cの内部に上部リングシール13dを保持している。上部リングシール13dのシール面13dbがローター12の上部端面の外周円環部と摺接する。
【0014】
なお、下部リングシール11sのシール面11sbの外周側端縁部11scは、図18図19に示すように、各セグメント11hの縦シール11oのシール面11oaのシール面下端縁11odおよび各ベーン12dのベーン下部横シール12jのシール面12jaのシール面内周側端縁12jbとそれぞれ接触し、接触部位における作動圧油の漏洩を防止する。
【0015】
また、上部リングシール13dのシール面13dbの外周側端縁部13dcは、図15図17に示すように、各セグメント11hの縦シール11oのシール面11oaのシール面上端縁11oe、各ベーン12dのベーン上部横シール12gのシール面12gaのシール面内周側端縁12gbとそれぞれ接触し、接触部位における作動圧油の漏洩を防止する。
【0016】
なお、ローターベーン12dのベーン上部横シール12g、ベーン下部横シール12j、縦シール12n、およびセグメント11hの縦シール11o、また、下部および上部リングシール11s、13dは、それぞれポリマー等の弾性材料によって形成されており、図20図21に示す断面形状を有する。
【0017】
ローター12のベーン12dのベーン上部横シール12g、ベーン下部横シール12j、縦シール12n、ハウジング11のセグメント11hの縦シール11o、ハウジング11の下部リングシール11sおよびトップカバー13の上部リングシール13dは、それぞれ接触摺動する相手面との間のシーリング効果を高めるために、油圧を受けてそれぞれのシール面がそれぞれ相手面に押し付けられるものであり、このため、各シール12g、12j、12n、11o、11s、13dのそれぞれの背面には、高圧側となる作動油室15a、15c(あるいは15b、15d)から圧油が導かれる。
【0018】
高圧側となる作動油室15a、15c(あるいは15b、15d)から圧油を各シール12g、12j、12n、11o、11s、13dの背面に導く手段には、いろいろな方式があるが、本発明の背景技術となる方式について以下に説明する。
【0019】
図22に示すように、対極にあって連通し合う作動油室15aと15c同士、および15bと15d同士にそれぞれ連通する油圧ライン16aをアクチュエーター1の機外に設け、その各油圧ライン16aのそれぞれに圧力バルブ16を設けており、いずれか高圧側となった作動油室15a、15c(あるいは15b、15d)の作動圧油が圧力バルブ16を通して抽出される。
【0020】
抽出された作動圧油は、図15図17に示すように、トップカバー13を貫通する油路13eを通ってローター12の上端面に設けたリング状のローター上面油溝12pに通じるとともに、トップカバー13を貫通する前記油路13eから分岐する油路13fを通って、ハウジングセグメント11hの縦シール11oの背面11ocに通じる。
【0021】
図17に示すように、ローター12の上端面に設けたローター上面油溝12pは、トップカバー13の上部リングスリット13cの内周側側面に設けた油溝13gを経由して上部リングシール13dの背面13daに連通する。
【0022】
図18に示すように、ローター12の下端面に設けたリング状のローター下面油溝12qは、ローター12を上端面から下端面まで上下に貫通するバランス孔12rでローター上面油溝12pと連通する。ローター12の下面油溝12qは、ハウジング11の下部リングスリット11rの内周側側面に設けた油溝11tを経由して下部リングシール11sの背面11saに連通する。また、図15図19に示すように、ローター上面油溝12pからローターベーン12dの縦シール12nの背面12nbに連通する油路12sを設ける。
【0023】
なお、ローターベーン12dの縦シール12nとベーン上部横シール12g、ベーン下部横シール12jとを組み付けた状態において、縦シール12nの背面12nbは、ベーン上部横シール12gの背面12gcおよびベーン下部横シール12jの背面12jcとにそれぞれ連通する構成であるので、縦シール12nの背面12nbに導かれた作動圧油は、同時にベーン上部横シール12gの背面12gcとベーン下部横シール12jの背面12jcとに導かれる。
【0024】
以上の構成において、上部リングスリット13cの内周側側面に設けた油溝13gに導かれた作動圧油、および高圧側となった作動油室15a、15c(あるいは15b、15d)から上部リングシール13dのシール面13dbを越えて漏洩した作動圧油が、ローター12の上部軸部12bを遊嵌するトップカバー13の貫通孔13hを通って外部に漏出することを防ぐ手段として、図15に示すように、上部グランドシール装置13iが設けられており、下部についても同様に、下部リングスリット11rの内周側側面の油溝11tに導かれた作動圧油、および下部リングシール11sのシール面11sbを越えて漏洩した、高圧側の作動圧油が、ローター12の下部軸部12aを遊嵌するハウジング11の底部のボス部11dの貫通孔11uを通って外部に漏出することを防ぐ手段として、図15に示すように、下部グランドシール装置11vが設けられている。
【0025】
なお、各直線シール12g、12j、12n、11oおよび各リングシール13d、11sのそれぞれの背面12gc、12jc、12nb、11oc、13da、11saに導かれた作動圧油がそれぞれのスリット12f、12i、12m、11q、13c、11rの側壁を通って低圧側に漏洩することを防ぐために、図20図21に示すように、各直線シールの背面12gc、12jc、12nb、11ocにはリップ17sを、また、各リングシールの背面13da、11saにはリップ17rをそれぞれの両側に設けている。
【0026】
上記のロータリーベーン式舵取機のアクチュエーター1を作動させる油圧装置2の回路は、例えば図22に示すようなものである。この油圧回路を構成する主要要素は、油圧ポンプ21、操舵方向切換弁22と、それを駆動する電磁弁23、取舵側および面舵側パイロット逆止弁24p、24s、取舵側および面舵側流量調整弁25p、25s、油タンク26、操舵方向切換弁22の出口とアクチュエーター1とを結ぶ取舵側主油圧ライン27pおよび面舵側主油圧ライン27sである。なお、操舵方向切換弁22を作動させるための制御油圧は独立した制御油ポンプ29から作り出す方式を採用している。
【0027】
油圧ポンプ21は一方向一定吐出量型であり、油圧ポンプ21からの吐出油によりアクチュエーター1を取舵側に回転させる場合と面舵側に回転させる場合との流路の切換えを操舵方向切換弁22によって行う。アクチュエーター1を作動させたあとの作動油は、操舵方向切換弁22を通って、リターンライン30から、リターンフィルター31を経て油タンク26に戻る。また、操舵方向切換弁22は、アクチュエーター1を作動させないとき、油圧ポンプ21からの吐出油を操舵方向切換弁22を通って油タンク26に戻す作用も行う。
【0028】
取舵側および面舵側パイロット逆止弁24p、24sは、アクチュエーター1を作動させるとき、すなわち、油圧ポンプ21からの吐出油に油圧が発生するときに、主油圧ライン27p、27sを開き、アクチュエーター1を作動させないときには、逆止作用を行って、作動油をアクチュエーター1の作動油室15a、15b、15c、15d内に閉じ込め、ローター12を固定する、すなわち舵軸14の軸頭14aを固定する。
【0029】
而して、取舵側および面舵側流量調整弁25p、25sは、作動油のアクチュエーター1からの流出側、すなわち、油タンク26への戻り側の主油圧ライン27pあるいは27sに抵抗を与えることによって、アクチュエーター1の運動を滑らかにするものである。
【0030】
なお、アクチュエーター1の隣接する作動油室15a、15dおよび15b、15c間をそれぞれ防衝弁28p、28sによって結んでおり、作動油室15a、15b、15c、15dがパイロット逆止弁24p、24sによってロックされているとき、舵に異常に大きい力が作用すると、防衝弁28pあるいは28sが作用して、高圧側となった作動油室15a、15cあるいは15b、15dの作動油を低圧側の作動油室15b、15dあるいは15a、15cに逃がすようになっている。
【0031】
なお、アクチュエーター1の各シールの背面に、いずれか高圧側となった作動油室15a、15c(あるいは15b、15d)の作動圧油を導くために機外に設けた圧力バルブ16への油圧ライン16aは、防衝弁28p、28sのそれぞれの入口に連通するように設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】特許4514617号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
上記した構成のロータリーベーン舵取機のアクチュエーター1において、作動油室15a〜15dのそれぞれの油密を確保するために、運動体であるローター12のベーン12dには、ハウジング11の内周面11nに摺接する接触摺動部に縦シール12nを、トップカバー13の裏面l3bに摺接する接触摺動部にベーン上部横シール12gを、ハウジング11の内底面11fに摺接する接触摺動部にベーン下部横シール12jをそれぞれ設ける必要がある。
【0034】
これに対して、固定体であるハウジング11のセグメント11hには、ローター12の外周面12oに摺接する接触摺動部に縦シール11oを設けるだけでよく、セグメント11hの頂端面11kと底端面11iは、それぞれトップカバー13の裏面13bおよびハウジング11の内底面l1fに油密に固着されており、その方法は以下のものである。
【0035】
セグメント11hの底端面11iは、ハウジング11の内底面11fに接着剤で油密に固着される。これに対して、トップカバー13の裏面13bに当接するセグメント11hの頂端面11kは、当接面の仕上げ精度を上げて接触密度を高めることにより、該当接面の油密を確保するという方法に依っていた。
【0036】
その理由は、トップカバー13を着脱できるようにするために接着剤での固着ができないことにある。そのうえトップカバー13の裏面13bに当接するハウジング11の上部の形状が複雑で、面積が大きいために、セグメント11hの頂端面11kと、これに当接するトップカバー13の裏面13bとの間にパッキングを挿入する方法が一般的にとられていないからである。
【0037】
また、トップカバー13は、ローター12の上部軸部12bを中心部に遊嵌せしめて、ハウジング11の上部開口を塞ぐように配置した環状の板であって、その周縁部をハウジング11の頂端面11bにボルト11cで取り付ける構成である。そのため、作動油室15a〜15dの油圧がトップカバー13の裏面13bに作用すると、周縁部のボルト11c部を支点とする環状の片持梁となる。
【0038】
従って、作動油室15a〜15dに油圧が発生すると、トップカバー13は、周縁部のボルト11c部を支点として、内周部が持ち上げられるように変位する。この変位は、材料のヤング率が無限大でない限り、大なり小なり発生することを避けられない。
【0039】
これにより、セグメント11hの頂端面11kとトップカバー13の裏面13bとの間に大なり小なりクリアランスが発生して、この部分を通って、高圧側となる作動油室15a、15c(あるいは15b、15d)から低圧側となる作動油室15b、15d(あるいは15a、15c)に圧油が漏洩することを避けられない。
【0040】
このため、この圧油の漏洩分を加味して、予め油圧ポンプの吐出量を、その分だけ多くしていた。なお、トップカバー13の裏面13bとローター12の上部端面およびローターベーン12dの上端面12eとの間にもクリアランスが発生するが、上部リングシール13dとベーン上部横シール12gがこのクリアランスに追従することにより、漏洩は防止される。
【0041】
このクリアランスの量は、油圧が高くなるほど大きくなる。このため、作動油圧を高めようとすると、クリアランスが大きくなり過ぎて、油圧ポンプの吐出量をその分大きくするだけでは対応できず、漏洩により油圧がそれ以上に立たなくなるケースもあるという問題があった。
【0042】
このクリアランスの量を抑制するためには、トップカバー13の肉厚さを大きくするとか、多数のリブを入れるとか、また、セグメント11hの頂端面11kをトップカバー13の裏面13bに固着しているボルト11mの直径と数とを増加させるとかの対策が考えられてきたが、いずれも重構造になり過ぎて、実用のためには限定される。
【0043】
さらに、トップカバー13の材料としてヤング率の小さい材料を使用すると、強度は十分であっても歪みが大きくなるために、上記クリアランスの量がより大きくなる。従って、ヤング率の大きい材料しか使えないという問題があった。
【0044】
さらに、上記クリアランスの発生は、舵取機の作動におけるクリーピング現象に対する耐性を弱める原因になるという問題があった。すなわち、転舵命令によって舵が命令された角度に達すると操舵方向切換弁22が中立位置になり、アクチュエーター1の各作動油室15a〜15dは、パイロット逆止弁24p、24sの作用によりロックされて、舵はその角度位置に保持されねばならない。しかし、このとき大なり小なりの上記クリアランスを通って、高圧側の作動油室の作動油が低圧側の作動油室に漏洩するので、舵はその漏洩分だけ移動する。これがいわゆるクリーピング現象である。
【0045】
そして、クリーピングが発生すると、舵取機は、それを検知して、舵を再び元の命令舵角に復帰させるように作動する。しかし、舵が元の舵角位置に戻って、作動油室15a〜15dがロックされると、再び、上記クリアランスを通っての作動油の漏洩により、クリーピングが発生し、舵取機は復帰の作動を行う。
【0046】
このクリーピング現象と舵取機アクチュエーター1の復帰の作動とが繰り返すことにより、アクチュエーター1は不断の作動を強いられ、耐久性を損じるという問題があった。
上記の諸問題があるために、ロータリーベーン舵取機の作動油圧は、一般に、最大80kg/cmとされており、それ以上の作動油圧の使用はできないとされてきた。作動油圧を80kg/cm以上とするためには、上記の諸問題を解決することが必要である。
【0047】
また、ロータリーベーン舵取機アクチュエータの更なる高圧化を図るためには、更なる問題があった。すなわち、ハウジング11のセグメント11hは、上述のごとく、その頂端面11kをボルト11mによりトツプカバー13の裏面13bに固着せしめるとともに、その底端面11iをボルト11jによりハシジング11の内底面11fに固着せしめているが、上述のように、作働油室15a〜15dに油圧が発生して、トップカパー13が周縁部のボルト11c部を支点とする環状の片持梁として、持ち上げられるように変位するとき、セグメント11hも、その頂端面11kにおける上記ボルト11mを介して、かつ、その底端面11iにおける上記ボルト11jの引張力に抗して、上方に引き上げられるように変位する傾向となる。
【0048】
そして、油圧力の大きさによっては、セグメント11hの底端面11iとハウジング11の内底面11fとの間に有害なクリアランスが発生し、このクリアランスを通って、高圧側の作動油室から低圧側の作動油室に作動曲が漏洩し得るという問題があった。
【0049】
そのために、上記のセグメント11hの頂端面11kにおけるクリアランスの発生に伴う諸問題と同様の問題を惹起する可能性があった。
本発明は、上記した課題を解決するものであり、ロータリーベーン舵取機のアクチュエーター1の作動油室15a〜15dに発生する油圧により、トップカバー13の裏面13bとハウジングセグメント11hの頂端面11kとの間に不可避的に大なり小なりのクリアランスが発生するにもかかわらず、また、作動油圧の大きさによっては、ハウジング11のセグメント11hの底端面11iとハウジング11の内底面11fとの間に有害なクリアランスが発生しても、高圧側となる作動油室15a、15c(あるいは15b、15d)と低圧側となる作動油室15b、15d(あるいは15a、15c)との間を油密に保つことができるロータリーベーン舵取機アクチュエーターの内部油圧室シーリングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0050】
上記課題を解決するために、本発明のロータリーベーン舵取機アクチュエーターの内部油圧室シーリングシステムは、舵軸に嵌合装着するローターと、ローターを収納してローターの周囲に油室用空間を形成するハウジングと、ハウジングの上部開口に配置し、周縁部を全周に亘ってハウジングの頂面周縁部にボルトで固着する環状のトップカバーとを備え、ローターが外周面の周方向に沿った等間隔の位置に複数のベーンを有し、ハウジングが内周面の周方向に沿った等間隔の位置に複数のセグメントを有し、前記油室用空間内にベーンとセグメントによって区画する複数の油室を有し、
トップカバーは、裏面におけるローターの上部端面の外周縁に対向する部位に環状の上部リングスリットを有するとともに、上部リングスリット内にローターの上部端面と当接する上部リングシールを保持し、
ハウジングは、内底面におけるローターの下部端面の外周縁に対向する部位に環状の下部リングスリットを有するとともに、下部リングスリット内にローターの下部端面と当接する下部リングシールを保持し、
ローターの各ベーンは、トップカバーの裏面に対向する上部端面に半径方向に延びるベーン上部横スリットを有するとともに、ベーン上部横スリット内にトップカバーの裏面と当接するベーン上部横シールを保持し、ハウジングの内底面に対向する下部端面に半径方向に延びるベーン下部横スリットを有するとともに、ベーン下部横スリット内にハウジングの内底面と当接するベーン下部横シールを保持し、ハウジングの内周面に対向する半径方向先端面にローターの軸心方向に延びるベーン縦スリットを有するとともに、ベーン縦スリット内にハウジングの内周面と当接するベーン縦シールを保持し、ベーン縦シールの上端面がベーン上部横シールの裏面に当接し、ベーン縦シールの下端面がベーン下部横シールの裏面に当接し、
ハウジングの各セグメントは、ローターの外周面と対向する半径方向先端面に軸心方向に延びるセグメント縦スリットを有するとともに、セグメント縦スリット内にローターの外周面と当接するセグメント縦シールを保持し、セグメント縦シールの上端面をトップカバーの裏面に圧接させるとともに、その下端面をハウジングの内底面に圧接させるようにしたロータリーベーン舵取機のアクチュエータにおいて、
ハウジングの各セグメントのトップカバーの裏面に対向する頂端面にセグメント縦スリットと連続し、半径方向に延びるセグメント頂端面横スリットを有するとともに、セグメント頂端面横スリットにトップカバーの裏面に当接するセグメント頂端面横シールを保持し、セグメント縦シールの上端面がセグメント頂端面横シールの裏面に当接し、
セグメント頂端面横シールは、セグメント縦シールと同じ断面形状を有し、セグメント頂端面横シールとセグメント縦シールの上端との連接部において、セグメント縦シールの背面の空間とセグメント頂端面横シールの背面の空間とが連通し、
トップカバーは、裏面におけるハウジングの頂端面の内周縁に対向する部位に、前記上部リングスリットと同心の外周側に、環状の上部外周側リングスリットを有するとともに、上部外周側リングスリット内に、ハウジングの頂端面と当接する上部外周側リングシールを保持し、セグメント頂端面横シールのシール面の内周側端縁が前記上部リングシールのリングシール面の外周側端縁部と接触し、
セグメント頂端面横シールのシール面の外周側端縁が上部外周側リングシールのリングシール面の内周側端縁部と接触し、上部外周側リングシールのリングシール面の内周側端縁部は、同時にベーン上部横シールのシール面の外周側端縁にも当接し、
前記各シールのそれぞれの背面に高圧側となる作動油室から圧油を導いて、この油圧によりそれぞれのシール面およびシール面の縁部をそれぞれ相手面および相手縁に押し付けることを特徴とする。
【0051】
また、本発明のロータリーベーン舵取機アクチュエーターの内部油圧室シーリングシステムは、さらに、以下の構成が追加されたものである。
すなわち、ハウジングの各セグメントは、ハウジングの内底面に対向する底端面に、セグメント縦スリットと連続し、半径方向に延びるセグメント底端面横スリットを有するとともに、セグメント底端面横スリットにセグメント底端面横シールを保持し、
セグメント底端面横シールはセグメント縦シールと同じ断面形状を有し、
セグメント底端面横シールとセグメント縦シールの下端との連接部において、セグメント縦シールの背面の空間とセグメント底端面横シールの背面の空間とが連通し、
セグメント底端面横シールのシール面がハウジングの内底面に当接し、
セグメント底端面横シールの裏面がセグメント縦シールの下端面に当接し、
セグメント底端面横シールのシール面の内周側端縁が下部リングシールのリングシール面の外周側端縁部と接触し、
セグメント底端面横シールの外周側端面がハウジングの内周面と接触し、
セグメント底端面横シールの背面に高圧側となる作動油室から作動圧油を導いて、この油圧により、セグメント底端面横シールのシール面およびシール面の内周側端縁をそれぞれ相手面および相手縁に押し付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、作動油室の油圧によって、ハウジングのセグメントの頂端面とトップカバーの裏面との間にクリアランスが発生するにもかかわらず、セグメント頂端面横シール、上部リングシール、上部外周側リングシールの作用によって、前記クリアランス部を通っての作動油の漏洩を防止でき、作動油室間の油密を確保することができるので、ロータリーベーン舵取機の作動油圧を高めることができる。さらに、舵取機の作動におけるクリーピング現象に対する耐性が高まることにより、舵取機の耐久性を高めることができる。
【0053】
従来のロータリーベーン舵取機において、2−セグメント方式、3−セグメント方式では、作動油圧が最大80kg/cmであったのに対して、本発明におけるロータリーベーン舵取機においては、作動油圧を160kg/cm以上に高めることも可能である。
【0054】
また、上記クリアランスの発生量の多寡の影響がなくなるので、トップカバーの材料として、鋼板溶接構造など、ヤング率の低い材料による構成を使用することが可能になる。
また、従来のロータリーベーン舵取機では、上記クリアランスの部分を通って作動圧油が漏洩する分を見込んで、油圧ポンプの吐出量を大きくすることが必要であったのに対して、本発明のロータリーベーン舵取機においては、ハウジングのセグメントの頂端面とトップカバーの裏面との間にクリアランスが発生するにもかかわらず、このクリアランスを通って作動油が漏洩することがなくなるので、油圧ポンプに漏洩を見込んだ余分の容量を与える必要もなくなる。
【0055】
さらに、作動油圧の大きさによっては、ハウジングのセグメントの底端面とハウジングの内底面との間に有害なクリアランスが発生しでも、このクリアランスを通っての、作動油室間の作動油の漏洩を防止できることにより、ハウジングのセグメントの頂端面におけるクリアランスの発生への対処による効果と同様の効果を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】本発明の実施の形態におけるロータリーベーン舵取機のアクチュエーターを示す縦断面図
図2図1におけるA部の拡大図
図3図1におけるB部を示す斜視図
図4】本発明の実施の形態におけるセグメントを示し、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は下面図、(d)は側面図
図5図1におけるA部を示す縦断面図であり、図3におけるa−a矢視断面
図6図5におけるb−b矢視断面
図7図5におけるc−c矢視断面
図8】各型式、各出力トルクのロータリーベーン舵取機の実機について、アクチュエーターのトップカバーに対する、負荷時の軸方向歪みの計測データを示す図
図9】本発明の実施の形態におけるロータリーベーン舵取機の実機について、作動油圧の変化に対するアクチュエーター内部の漏洩量の変化を、転舵所要時間の変化として捉えて計測したデータを示す図
図10】本発明の他の実施の形態におけるロータリーベーン舵取機のアクチュエーターを示す縦断面図
図11図10におけるC部を示す拡大縦断面図
図12図11におけるd−d矢視断面
図13図11におけるe−e矢視断面
図14】従来のロータリーベーン舵取機のアクチュエーターを示す部分断面斜視図
図15】同、ロータリーベーン舵取機のアクチュエーターを示し、図16におけるf−f矢視断面図
図16】同、ロータリーベーン舵取機のアクチュエーターを示す横断面図
図17】同、図15におけるC部の拡大図
図18】同、図15におけるD部の拡大図
図19】同、図15におけるE部の拡大図
図20】同、ロータリーベーン舵取機のアクチュエーターにおける直線シールの横断面図
図21】同、ロータリーベーン舵取機のアクチュエーターにおけるリングシールの横断面図
図22】同、ロータリーベーン舵取機の油圧システム図
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。先に、図14図22において説明した背景技術と基本的に同様の作用を行う部材については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0058】
図1図7に示すように、ロータリーベーン舵取機のアクチュエーター1のハウジング11の各セグメント11hには、その頂端面11kに、セグメント縦スリット11qと連続するセグメント頂端面横スリット50が半径方向に形成してあり、セグメント頂端面横スリット50内に、セグメント頂端面横シール51を保持している。このセグメント頂端面横シール51のシール面51aがトップカバー13の裏面13bと当接する。
【0059】
セグメント頂端面横シール51は、ポリマー等の弾性材料によって形成されており、図6に示すように、セグメント縦シール11oと同じ断面形状を有している。
かくて、セグメント11hを介して両隣にある作動油室15aと15bとの間(あるいは15cと15dとの間)において、セグメント11hの頂端面11kを通って作動油が漏洩することは、セグメント頂端面横シール51のシール面51aがトップカバー13の裏面13bに当接することで防止できる。
【0060】
セグメント頂端面横シール51とセグメント縦シール11oの上端との連接部は、図3図7に示すようなものである。すなわち、セグメント頂端面横シール51は、セグメント縦シール11oの上端との連接部において、リップ部51bが欠けており、この欠けた部分にセグメント縦シール11oの頂端面11ofが嵌め込まれている。
【0061】
これにより、セグメント縦シール11oとセグメント頂端面横シール51とをそれぞれセグメント縦スリット11qおよびセグメント頂端面横スリット50内に装着した状態において、セグメント縦シール11oの背面11ocの空間とセグメント頂端面横シール51の背面51cの空間とが連通する。
【0062】
セグメント頂端面横シール51のシール面51aにおける内周側端縁51dおよび外周側端縁51eのそれぞれの部位における油密を確保するために、内周側端縁51dおよび外周側端縁51eのそれぞれと接触する上部リングシール53および上部外周側リングシール55を設ける。すなわち、トップカバー13の裏面13bにおいてローター12の上部端面の外周縁部に対向する部位に環状の上部リングスリット52を形成し、このリングスリット52内に弾性材料よりなる上部リングシール53を保持する。
【0063】
上部リングシール53は、先に述べた上部リングシール13dと同様の構成および作用を有する。すなわち、上部リングシール53は、ローター12の上部端面の外周縁部に対向し、そのリングシール面53aがローター12の上部端面に摺接する。更に、リングシール面53aの外周側端縁部53bが、各ベーン12dのベーン上部横シール12gのシール面内周側端縁12gbと接触し、上部リングシール53のリングシール面53aの外周側端縁部53bがセグメント頂端面横シール51のシール面51aの内周側端縁51dに当接する。
【0064】
また、トップカバー13の裏面13bにおいてハウジング11の頂端面11bの内周縁部に対向する部位に環状の上部外周側リングスリット54が形成してあり、このリングスリット54内に弾性材料よりなる上部外周側リングシール55を保持している。而して、上部外周側リングシール55のリングシール面55aは、ハウジング11の頂端面11bの内周縁部に当接して、この部位から高圧作動油が機外へ漏出することを防止する。また、セグメント頂端面横シール51のシール面51aは外周側端縁51eが上部外周側リングシール55のリングシール面55aの内周側端縁部55bに当接して、この部分における油密を確保する。
【0065】
上記のセグメント頂端面横シール51、およびトップカバー13の裏面13bに設けた上部リングシール53と上部外周側リングシール55は、それぞれ相手面との当接によるシーリング効果を高めるために、および相手面の縁部との当接によるシーリング効果を高めるために、各シール51、53、55のそれぞれの背面51c、53c、55cに、高圧側となる作動油室15a、15c(あるいは15b、15d)から作動圧油を導き、この油圧によりそれぞれのシール面51a、リングシール面53a、55a、およびリングシール面端縁部53b、55bをそれぞれ相手面および相手面の縁部に押し付けている。
【0066】
高圧側となる作動油室15a、15c(あるいは15b、15d)から作動圧油を上記セグメント頂端面横シール51、上部リングシール53、上部外周側リングシール55の各背面51c、53c、55cに導くのは次の手段による。
【0067】
すなわち、上部リングシール53の背面53cに高圧側となった作動油室15a、15c(あるいは15b、15d)からの作動圧油を導く手段は、先に述べた上部リングシール13dの背面13daに作動圧油を導いている手段と同じである。
【0068】
つまり、図1図2に示すように、高圧側となった作動油室15a、15c(あるいは15b、15d)から抽出した作動圧油は、トップカバー13を貫通する油路13eを経てローター上面油溝12pに導かれ、さらに上部リングスリット52の内周側面から底面に至る油溝13gを通って上部リングシール53の背面53cに導かれる。
【0069】
上部外周側リングシール55の背面55cに高圧側となった作動油室15a、15c(あるいは15b、15d)からの作動圧油を導く手段は、図1図2に示すように、上部リングスリット52の底面から上部外周側リングスリット54の底面に至る油路56をトップカバー13の肉内に設けたものである。
【0070】
セグメント頂端面横シール51に対しては、図1に示すように、ハウジング11の底部のボス部11d内に、下部リングシール11sの背面11saとセグメント縦シール11oの背面11ocの下端部11obとを連通する油路11wを設け、下部リングシール11sの背面11saに導かれた、高圧側となった作動油室15a、15e(あるいは15b、15d)からの作動圧油を同時に、セグメント縦シール11oの背面11ocおよびセグメント頂端面横シール51の背面51cにも作用させる。
【0071】
以下、上記した構成における作用および効果を説明する。ロータリーベーン舵取機のアクチュエーター1の作動油室15a〜15dにおいて、いずれかの作動油室15a、15cあるいは15b、15dに油圧が発生すると、その油圧力を受けるトップカバー13は、その周縁部をハウジング11の頂端面11bに固着しているボルト11cの部分を支点とする環状の片持梁となって、その内周側が油圧の大小に応じて必然的に上方に変位する。これにより、ハウジングセグメント11hの頂端面11kとトップカバー13の裏面13bとの間にクリアランスが生じる。
【0072】
他方において、作動油室15a、15cあるいは15b、15dに発生した油圧は、図1に示すように、トップカバー13を貫通する油路13eを通って、ローター12の上部端面におけるローター上面油溝12pに入り、さらに、ローター12のバランス孔12rを通ってローター12の下部端面におけるローター下面油溝12qに入る。
【0073】
而して、ローター下面油溝12qに導かれた作動圧油は、油溝11tを通って下部リングシール11sの内周側側面と背面11saとに作用し、さらに、油路11wを通って、各セグメント縦シール11oの背面11ocに作用し、セグメント縦シール11oのシール面11oaをローター12の外周面12oに押し付けて、その部分のシーリング作用を行う。
【0074】
それと同時に、この油圧は、各セグメント縦シール11oの背面11ocの下端部11obを通って、各セグメント頂端面横シール51の背面51cに作用し、セグメント頂端面横シール51を、上述したハウジングセグメント11hの頂端面11kとトップカバー13の裏面13bとの間に発生するクリアランスの分だけ上方に押し上げ、そのシール面51aをトップカバー13の裏面13bに押し付ける。
【0075】
一方、ローター上面油溝12pに入った作動圧油は、図2に示すように、上部リングスリット52の内周側面の油溝13gに作用し、そして、上部リングシール53の外周側面を上部リングスリット52の外周側面に押し付ける。これにより、高圧側の作動油室15a、15c(あるいは15b、15d)の作動油がこの側面を通って低圧側の作動油室15b、15d(あるいは15a、15c)に漏洩することを防止する。
【0076】
上部リングスリット52の内周側面の油溝13gに入った高圧の作動油は、さらに、上部リングシール53の背面53eにも作用して、リングシール面53aをローター12の上部端面の外周縁部に押し付けるとともに、上部リングシール53のリングシール面53aの外周側端縁部53bを、図2図5に示すように、それぞれベーン上部横シール12gのシール面12gaの内周側端縁12gbおよびセグメント頂端面横シール51のシール面51aの内周側端縁51dに押し付ける。これにより、高圧側の作動油室15a、15c(あるいは15b、15d)の作動油が、このリングシール面53aを通って、また、各端縁部53b、12gbおよび53b、51dを通って低圧側の作動油室15b、15d(あるいは15a、15c)に漏洩することを防止する。
【0077】
この高圧側となる作動油室15a、15c(あるいは15b、15d)からの作動圧油は、図2に示すように、上部リングシール53の背面53cから、トップカバー13の肉内に設けた油路56を通って、上部外周側リングシール55の背面55cに作用する。これにより、上部外周側リングシール55のリングシール面55aをハウジング頂端面11bの内周縁部に押し付けて、この部位を通って高圧作動油が機外へ漏出することを防ぐとともに、上部外周側リングシール55の背面55cに導かれた作動圧油は、上部外周側リングシール55のリングシール面55aの内周側端縁部55bを、図2図5に示すように、それぞれベーン上部横シール12gのシール面12gaの外周側端縁12gd、および、セグメント頂端面横シール51のシール面51aの外周側端縁51eに押し付ける。これにより、高圧側の作動油室15a、15c(あるいは15b、15d)の作動圧油が、この各端縁部55b、12gdおよび55b、51eを通って、低圧側の作動油室15b、15d(あるいは15a、15c)に漏洩することを防止する。
【0078】
上述したこれらシールの各当接は、上記クリアランスの発生にもかかわらず、シール背面の作動油圧力を受けて、上記クリアランスに追従して確保されるので、油密を確保することができる。
【0079】
而して、作動油室15a、15cあるいは15b、15dに発生した油圧が高くなるほど、上記クリアランスの量は大きくなるが、それと同時に、セグメント頂端面横シール51、上部リングシール53、および上部外周側リングシール55の各シール面51a、53a、55aを相手面および相手縁に押し付ける力も強くなり、上記クリアランスの発生に追従することができるのみならず、油密も強められる。
【0080】
本発明の実施の形態による効果を検証するために、実機を使用して試験を行った。その結果を以下に説明する。
図8は、各型式、各出力トルクのロータリーベーン舵取機の実機において油圧を与えた時に、アクチュエーター1のトップカバー13の半径方向各部位において生じる軸方向の歪み(トップカバー13の裏面13bと、それぞれセグメント11hの頂端面11k、ローター12の上部端面、および、ハウジング11の頂端面11bとの間に発生するクリアランスの量)を計測した結果を示す。
【0081】
例えば、最も軸方向歪みが大きくなったケースとしてN−105型(3−ベーン)において、試験油圧15MPaを与えた場合、トップカバー13の貫通孔13hの部位で0.88mmの歪み(クリアランス)を生じた。また、より小型のN−30型(2ーベーン)の場合、試験油圧15MPaにおいて、上記と同じ部位における歪み(クリアランス)は0.47mmであった。
【0082】
図9は、上記のN−30型(2−ベーン)ロータリーベーン舵取機において、舵取機が65°転舵するのに所要する時間を、各作動油圧に対して、計測した結果を示す。
比較のために、標準型(従来技術)、改造1(本発明の実施の形態において、上部外周側リングシール55を除外したもの)、および、改造2(改造1において、上部外周側リングシール55も設けたもの)の3種について、試験を行った。
【0083】
その結果、図9に示すように、標準型においては、作動油圧が高くなるにつれて、65°転舵(ローター12の65°回転)の所要時間が増加し、特に、ほぼ11MPa以上では、急激な増加となり、遂には、作動油圧が約11.5MPaにおいて118secに達し、そして、ローター12はそれ以上には回転せずストール状態になった。
【0084】
すなわち、約11.5MPaの作動油圧においては、高圧側の作動油室15a、15c(あるいは15b、15d)に送られた油圧ポンプ21からの作動油は、その全量が低圧側の作動油室15b、15d(あるいは15a、15c)に漏洩していることを意味する。
【0085】
改造1においては、作動油圧が約11Mpaまでは、65°転舵(ローター12の65°回転)の所要時間は、船級協会の規定値である28秒以下であるが、作動油圧がそれ以上になると、65°転舵(ローター12の65°回転)の所要時間は急激に増加する。すなわち、高圧側の作動油室15a、15c(あるいは15b、15d)から低圧側の作動油室15b、15d(あるいは15a、15c)への作動油の漏洩が大きくなり、作動油圧が発生しにくくなる状況になった。
【0086】
これに対して、改造2においては、65°転舵(ローター12の65°回転)の所要時間は作動油圧の大きさには殆ど影響されず、作動油圧が17MPaになってようやく、船級協会の規定値である28秒に達した。すなわち、高圧側の作動油室15a、15c(あるいは15b、15d)から低圧側の作動油室15b、15d(あるいは15a、15c)への作動油の漏洩量は、作動油圧が高くなっても、無負荷時と殆ど変わらないという結果が得られ、本発明の実施の形態の有効性が確認された。
【0087】
上述したことにより、従来のロータリーベーン舵取機においては、作動油圧を最大80kg/cm程度に抑えざるを得ず、かつ、油圧ポンプの吐出量を、該クリアランスの部分を通っての作動圧油の漏洩分を見込んで大きくする必要があったのに対して、本実施の形態におけるロータリーベーン舵取機においては、作動油圧を160kg/cm以上に高めることも可能であり、かつ、油圧ポンプの吐出量を、該クリアランスの部分を通っての作動圧油の漏洩分を見込んで大きくすることが不必要になる。
【0088】
また、上記クリアランスの影響がなくなるので、トップカバー13の材料として、鋼板溶接構造など、ヤング率の低い材料を使用することが可能になる。また、舵取機の作動におけるクリーピング現象に対する耐性が高まることにより、舵取機の耐久性が高められる。
【0089】
次に、ロータリーベーン舵取機アクチュエーター1の作動油圧の更なる高圧化に対処するための本発明の他の実施の形態を図10図13に基づいて説明する。この実施の形態は、先に説明した実施の形態をそのまま適用するとともに、それに加えるものであるので、その付加部分、および、それに伴って必要となる変更部分についてのみ説明する。
【0090】
図10図13に示すように、ロータリーベーン舵取機のアクチュエーター1のハウジング11の各セグメント11hには、その底端面11iに、セグメント縦スリット11qと連続するセグメント底端面横スリット57が半径方向に形成してあり、セグメント底端面横スリット57内に、セグメント底端面横シール58を保持している。このセグメント底端面横シール58のシール面58aがハウジング11の内底面11fと当接する。
【0091】
セグメント底端面横シール58は、ポリマー等の弾性材料によって形成されており、図12図13に示すように、セグメント縦シール11oと同じ断面形状を有している。かくて、セグメント11hを介して両隣にある作動油室15aと15bとの間(あるいは15cと15dとの間)において、セグメント11hの底端面11iを通って作動油が漏洩することは、セグメント底端面横シール58のシール面58aがハウジング11の内底面11fに当接することで防止できる。
【0092】
セグメント底端面横シール58とセグメント縦シール11oの下端との連接部は、セグメント頂端面横シール51とセグメント縦シール11oの上端との連接部と同様の構成である。
【0093】
すなわち、図11に示すように、セグメント底端面横シール58は、セグメント縦シール11oの下端との連接部において、リップ部58bが欠けており、この欠けた部分にセグメント縦シール11oの底端面11ogが嵌め込まれている。
【0094】
これにより、セグメント縦シール11oとセグメント底端面横シール58とをそれぞれセグメント縦スリット11qおよびセグメント底端面横スリット57内に装着した状態において、セグメント縦シール11oの背面11ocの空間とセグメント底端面横シール58の背面58cの空間とが連通する。
【0095】
セグメント底端面横シール58のシール面58aにおける内周側端縁58dは、下部リングシール11sのシール面11sbの外周側端縁部11scと接触しており、これにより、セグメント底端面横シール58のシール面58aにおける内周側端縁58dの部位における油密を確保する。
【0096】
また、同シール面58aにおける外周側端縁58eの部位については、セグメント底端面横シール58の外周側端面58fがハウジング11の内周面11nに当接することにより、油密を確保できる。
【0097】
セグメント底端面横シール58のシール面58aの、当接する相手面であるハウジング11の内底面11fとの、また、該シール面58aにおける内周側端縁58dの、当接する相手縁である下部リングシール11sのシール面11sbの外周側端縁部11scとの、それぞれの間のシールリング効果を高めるために、セグメント底端面横シール58の背面58cに、高圧側となる作動油室15a、15c(あるいは15b、15d)から作動圧油を導き、この油圧により、シール面58aおよび内周側端縁58dをそれぞれ相手面および相手縁部に押し付けている。
【0098】
上記の、高圧の作動圧油をセグメント底端面横シール58の背面58cに導くのは次の手段による。
すなわち、高圧側となった作動油室15a、15c(あるいは15b、15d)から抽出した作動圧油は、前述の実施の形態において説明したように、トップカバー13を貫通する油路13eに導かれるが、図10に示すように、油路13eから分岐する油路59を設け、そして、この油路59を、セグメント11hの肉内を通って、セグメント縦シール11oの背面11ocに開口せしめる。
【0099】
かくて、セグメント縦シール11oの背面11ocに導かれた作動圧油は、前述した、セグメント縦シール11oの背面11ocの空間とセグメント底端面横シール58の背面58cの空間との連通により、セグメント縦シール11oの背面11ocに作用するとともに、セグメント底端面横シール58の背面58cにも作用する。
【0100】
なお、セグメント縦シール11oの背面11ocに導かれた作動圧油は、先の実施の形態において説明したように、セグメント頂端面横シール51の背面51cにも作用する。
以下、上記した構成における作用および効果を説明する。
【0101】
ロータリーベーン舵取機のアクチュエーター1の作動油室15a〜15dにおいて、いずれかの作動油室15a、15c、あるいは、15b、15dに油圧が発生すると、その油圧力を受けるトップカバー13は、その周縁部をハウジング11の頂端面11bに固着しているボルト11cの部分を支点とする環状の片持梁となって、その内周面が油圧の大小に応じて必然的に上方に変位する。
【0102】
これにより生じるハウジングのセグメント11hの頂端面I1kとトップカバー13の裏面13bとの間に生じるクリアランスを通っての、高圧側となる作動油室15a、15c(あるいは15b、15d)から低圧側の作動油室15b、15d(あるいは15a、15c)への作動圧油の漏洩は、先の実施の形態において説明したように、セグメント頂端面横シール51、上部リングシール53、上部外周側リングシール55の作用によって防止される。
【0103】
他方において、作動油室15a〜15dに発生した油圧により、トップカバー13が環状の片持梁となって、その内周面が上方に変位させられるとき、ハウジングのセグメント11hも、その頂端面11kにおけるボルト11mを介して、かつ、セグメント11hの底端面11iにおけるボルト11jの引張力に抗して、上方に引き上げられるように変位する傾向となるが、油圧力が更に大きくなると、セグメント11hの底端面11iとハウジング11の内底面11fとの間に、高圧側の作動油室15a、15c(あるいは15b、15d)から低圧側の作動油室15b、15d(あるいは15a、15c)ヘの作動圧油の漏洩にとって有害なクリアランスが発生する。
【0104】
一方において、高圧側となる作動油室15a、15c(あるいは15b、15d)における作動圧油は、図10に示すように、トップカバー13を貫通する油路13eから分岐する油路59を通って、セグメント縦シール11oに作用する。
【0105】
それと同時に、この作動圧油は、セグメント縦シール11oの背面11ocの空間と連通する、セグメント底端面横シール58の背面58cの空間に導かれる。
そして、その油圧力は、セグメント底端面横シール58を、セグメント11hの底端面11iとハウジング11の内底面11fとの間に発生するクリアランスの分だけ下方に押し下げ、そのシール面58aをハウジング11の内底面11fに押し付けるとともに、シール面58aの内周側端縁58dを下部リングシール11sのシール面11sbの外周側端縁部11scに押し付ける。
【0106】
かくて、作動油室15a〜15dに発生した油圧が大きくて、これにより、セグメント11hの底端面11iとハウジング11の内底面11fとの間に有害なクリアランスが発生しても、セグメント底端面横シール58は、シール背面58cに作用する作動油圧力を受けて、このクリアランスに追従することができる。これにより、高圧側の作動油室15a、15c(あるいは15b、15d)の作動油が、セグメント11hの底端面11iの部位を通って、低圧側の作動油室15b、15d(あるいは15a、15c)に漏洩することを防止する。
【0107】
而して、作動油室15a〜15dにおける作動油圧が高くなるほど、前記クリアランスの量は大きくなるが、それと同時に、セグメント底端面横シール58のシール面58a、および、シール面58aの内周側端縁58dにおける面圧も強くなり、セグメント11hの底端面11iにおける油密が強められ、作動油圧のより高圧化に対処することができる。
【符号の説明】
【0108】
1 ロータリーベーン舵取機アクチュエーター
11 ハウジング
11a フランジ部
11b 頂端面
11c トップカバー取付用周縁ボルト
11h セグメント
11i セグメント底端面
11k セグメント頂端面
11n 内周面(ハウジング11の)
11o セグメント縦シール
11oa シール面
11ob 下端部
11oc 背面
11od シール面下端縁
11oe シール面上端縁
11of 頂端面
11og 底端面(セグメント縦シール11oの)
11q セグメント縦スリット
11r 下部リングスリット
11s 下部リングシール
11sa 背面
11sb シール面
11sc シール面外周側端縁部
11t 油溝(下部リングスリット内周側面の)
11u 貫通孔
11v 下部グランドシール装置
11w 油路(下部リングシール背面とセグメント縦シール背面とを連通する)
12 ローター
12d ローターベーン
12e ベーン上端面
12f ベーン上部横スリット
12g ベーン上部横シール
12ga シール面
12gb シール面内周側端縁
12gc 背面
12gd シール面外周側端縁
12h ベーン下端面
12i ベーン下部横スリット
12j ベーン下部横シール
12ja シール面
12jb シール面内周側端縁
12jc 背面
12m ベーン縦スリット
12n ベーン縦シール
12na シール面
12nb 背面
12o 外周面(ローター12の)
12p ローター上面油溝
12q ローター下面油溝
12r バランス孔
12s 油路(ローター上面油溝からベーン縦シール背面への)
13 トップカバー
13b トップカバー裏面
13c 上部リングスリット
13d 上部リングシール
13da 背面
13db シール面
13dc シール面外周側端縁部
13e 油路(トップカバーを貫通する)
13f 油路(油路13eから分岐する)
13g 油溝(上部リングスリットの内周側面の)
13h 貫通孔
13i 上部グランドシール装置
14 舵軸
15 油室用空間
15a、15b、15c、15d 作動油室
16 圧力バルブ
16a 油圧ライン(防衝弁から圧力バルブへの)
17s リップ(直線シールの)
17r リップ(リングシールの)
50 セグメント頂端面横スリット
51 セグメント頂端面横シール
51a シール面
51b リップ部
51c 背面
51d シール面内周側端縁
51e シール面外周側端縁
52 上部リングスリット
53 上部リングシール
53a リングシール面
53b リングシール面外周側端縁部
53c 背面
54 上部外周側リングスリット
55 上部外周側リングシール
55a リングシール面
55b リングシール面内周側端縁部
55c 背面
56 油路(上部リングスリット底面と上部外周側リングスリット底面とを結ぶ)
57 セグメント底端面横スリット
58 セグメント底端面横シール
58a シール面
58b リップ部
58c 背面
58d シール面の内周側端縁
58e シール面の外周側端縁
58f 外周側端面
59 油路(油路13eから分岐、セグメント縦シール11oの背面11ocに開口)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22