(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-168577(P2015-168577A)
(43)【公開日】2015年9月28日
(54)【発明の名称】ブームの起立方法
(51)【国際特許分類】
B66C 23/42 20060101AFI20150901BHJP
【FI】
B66C23/42 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2014-47199(P2014-47199)
(22)【出願日】2014年3月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】村手 徳夫
(72)【発明者】
【氏名】高山 浩司
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA05
3F205CB02
3F205DA01
(57)【要約】
【課題】限られた作業スペースの中で、煩雑な作業をすることなく、建設機械の伸縮ブームを起立させる方法を提供する。
【解決手段】
建設機械は、少なくとも2段目以降のブーム16bの先端に対し一端が連結されたペンダントロープ24と、ペンダントロープの他端に設けられたミドルシーブ28と、ガントリ17の上端に設けられたガントリシーブ29と、ガントリシーブ29とミドルシーブ28との間に巻き掛けられた起伏ロープ20と、起伏ロープを巻き取るために上部旋回体の後部に搭載された起伏ドラム21とを備えており、伸縮ブーム16を水平状態から引き起こす際には、ガントリシーブ29とミドルシーブ28との間の起伏ロープの長さを一定のまま、伸縮ブーム16を伸長させることにより起立させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前部に基端が起伏可能に設けられた伸縮ブームと、前記上部旋回体の後部に設けられたガントリとを備えた建設機械のブーム起立方法であって、
前記建設機械は、少なくとも2段目以降のブームの先端に対し一端が連結されたペンダントロープと、該ペンダントロープの他端に設けられたミドルシーブと、前記ガントリの上端に設けられたガントリシーブと、該ガントリシーブと前記ミドルシーブとの間に巻き掛けられた起伏ロープと、該起伏ロープを巻き取るために上部旋回体の後部に搭載された起伏ドラムとを備えており、
前記ブームを水平状態から引き起こす際には、前記ガントリシーブと前記ミドルシーブとの間の起伏ロープの長さを一定のまま、前記伸縮ブームを伸長させることにより前記伸縮ブームを起立させることを特徴とするブーム起立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブームの起立方法に関し、詳しくは、伸縮ブームを用いた建設機械のブームの起立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テレスコピック式のブームを下方から起伏シリンダで支持する伸縮ブームは、各種移動式クレーンのブームとして広く用いられており、近年は、アースドリルのブームとしても用いられている(例えば、特許文献1参照。)。また、クレーンのラチスブームを起伏させる方法として、ブームの先端に対し一端が連結されたペンダントロープと、該ペンダントロープの他端とベースマシンの後部に設けられたガントリとを繋ぐ起伏ロープと、起伏ロープを巻き取るウインチとを備えたクレーンにおいて、該ウインチにより起伏ロープを巻き取ったり、送り出したりすることで、起伏ロープの長さを変更して、ブームを起伏させる方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−46866号公報
【特許文献2】特開2009−40571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された伸縮ブームを用いたアースドリルのブームを起立させるのに、特許文献2に記載された方法を適用しようとすると、起伏ロープをウインチから送り出しつつ、伸縮ブームを伸縮シリンダで伸ばしながら作業しなければならず、煩雑な作業が求められていた。また、水平方向に伏せられた伸縮ブームを伸ばすため、ブームが伸びる分の作業スペースを確保しなければならなかった。
【0005】
そこで本発明は、限られた作業スペースの中で、煩雑な作業をすることなく、伸縮ブームを用いた建設機械のブームを起立させる起立方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のブームの起立方法は、下部走行体の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前部に基端が起伏可能に設けられた伸縮ブームと、前記上部旋回体の後部に設けられたガントリとを備えた建設機械のブーム起立方法であって、前記建設機械は、少なくとも2段目以降のブームの先端に対し一端が連結されたペンダントロープと、該ペンダントロープの他端に設けられたミドルシーブと、前記ガントリの上端に設けられたガントリシーブと、該ガントリシーブと前記ミドルシーブとの間に巻き掛けられた起伏ロープと、該起伏ロープを巻き取るために上部旋回体の後部に搭載された起伏ドラムとを備えており、前記ブームを水平状態から引き起こす際には、前記ガントリシーブと前記ミドルシーブとの間の起伏ロープの長さを一定のまま、前記伸縮ブームを伸長させることにより前記伸縮ブームを起立させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明のブームの起立方法は、起伏ロープの送り出し作業が不要となり、伸縮ブームを伸長させるという作業のみでブームを起立させることができる。また、ブームの起立時に伸縮ブームが水平方向には伸びないので、作業スペースを取らない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のブーム起立方法を実施するアースドリルの一例を示す説明図である(水平状態)。
【
図3】同じく説明図である(起立状態)。態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1乃至
図3は、本発明のブーム起立方法を実施するアースドリルの一例を示すものである。アースドリル11におけるベースマシン12は、下部走行体13の上部に旋回ベアリング14を介して上部旋回体15を回転可能に設けている。上部旋回体15の前部には、伸縮ブーム16が起伏可能に設けられており、上部旋回体15の後部には、折り畳み可能なガントリ17が設けられている。伸縮ブーム16とガントリ17との間の上部旋回体15の幅方向中央部には、前方から順に、ケリーバ(図示しない)を吊り上げるための昇降ロープである主巻ロープ(図示しない)を巻回した主巻ドラム18及び補巻ロープ(図示しない)を巻回した補巻ドラム19と、後述するブーム起伏用の起伏ロープ20を巻回した起伏ドラム21が配置されており、上部旋回体15の後端部には、カウンタウエイト22が搭載されている。また、上部旋回体15の右側部には運手席15aや機器室15bが設けられ、左側部にはエンジンや油圧ポンプを収納したエンジン室(図示せず)が設けられている。
【0010】
伸縮ブーム16は、箱形断面を有する三段式のテレスコピック型であって、基端部に設けた取付ブラケット23が上部旋回体15のブームブラケットにフートピンを介して起伏可能に装着されるロアブーム(ベースブーム)16aと、該ロアブーム16a内に伸縮可能に挿入されたセカンドブーム16bと、該セカンドブーム16b内に伸縮可能に挿入されたアッパーブーム16cとで形成されている。
【0011】
さらに、伸縮ブーム16には、ロアブーム16aとセカンドブーム16bとの間に、ロアブーム16aに対してセカンドブーム16bを伸縮させる第1伸縮シリンダ(図示せず)が設けられており、セカンドブーム16bとアッパーブーム16cとの間に、セカンドブーム16bに対してアッパーブーム16cを伸縮させる第2伸縮シリンダ(図示せず)が設けられている。
【0012】
さらに、セカンドブーム16bの先端部には、ブーム起伏用の左右一対のペンダントロープ24の先端が取り付けられている。また、アッパーブーム16cの先端には、吊り上げ用の主巻ロープ及び補巻ロープが掛け回されるトップシーブ25が設けられ、ロアブーム16aには、ケリーバ駆動装置(図示しない)を支持するためのフロントフレーム26及び複数のフレームシリンダ27が取り付けられている。
【0013】
一端がセカンドブーム16bの先端に連結されたペンダントロープ24の他端にはミドルシーブ28が設けられており、ガントリ17の上端にはガントリシーブ29が設けられている。起伏ロープ20は、ミドルシーブ28とガントリシーブ29との間に巻掛けられており、起伏ドラム21によって巻き取ったり、送り出したりすることで、ミドルシーブ28とガントリシーブ29との間の起伏ロープ20の長さを変更することができる。
【0014】
次に、
図1乃至
図3を用いて、本発明のブーム起立方法の手順を説明する。アースドリル11の輸送状態では、伸縮ブーム16は短縮した状態で水平方向に倒され、ガントリ17も折り畳まれている。伸縮ブーム16を起立させたい場所に移動したアースドリル11は、まず
図1に示されるように、上部旋回体15の後部にカウンタウエイト22を搭載し、ガントリ17を起立させる。
【0015】
この状態で、起伏ドラム21を作動させず、ミドルシーブ28とガントリシーブ29との間の起伏ロープ20の長さを一定にしたまま、第1伸縮シリンダにより、ロアブーム16aに対してセカンドブーム16bを伸長させると、
図2に示されるように、ペンダントロープ24と起伏ロープ20の張力と、セカンドブーム16bを伸長させようとする力が働き、伸縮ブーム16がロアブーム16aの基端部を中心に回動し、起立しはじめる。
【0016】
ミドルシーブ28とガントリシーブ29との間の起伏ロープ20の長さを一定にしたまま、セカンドブーム16bがロアブーム16に対して最大限伸長すると、
図3に示されるように、伸縮ブーム16の起立状態となる。セカンドブーム16bをロアブーム16aに対して任意の固定手段で固定すると、クレーン作業が可能となる。さらに、この状態から適宜ケリーバ駆動装置等を装着し、アッパーブーム16cを伸長させることで、アースドリルとしての作業が可能となる。
【0017】
このように、起伏ドラム21を作動させる必要がなく、第1伸縮シリンダによる伸長作業だけで、伸縮ブーム16を起立させることができる。また、水平方向にセカンドブーム16bがロアブーム16に対して伸長しないので、作業スペースを取ることがない。
【0018】
なお、伸縮ブームにおける伸縮段数は任意であり、ペンダントロープの取付位置は、ロアブーム以外の少なくとも2段目以降の先端に設けられればよい。また、アースドリルでの実施を説明しているが、伸縮ブームを用いているものであれば、杭打機やクレーン等の各種建設機械で実施することができる。
【符号の説明】
【0019】
11…アースドリル、12…ベースマシン、13…下部走行体、14…旋回ベアリング、15…上部旋回体、15a…運手席、15b…機器室、16…伸縮ブーム、16a…ロアブーム、16b…セカンドブーム、16c…アッパーブーム、17…ガントリ、18…主巻ドラム、19…補巻ドラム、20…起伏ロープ、21…起伏ドラム、22…カウンタウエイト、23…取付ブラケット、24…ペンダントロープ、25…トップシーブ、26…フロントフレーム、27…フレームシリンダ、28…ミドルシーブ、29…ガントリシーブ