(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-168579(P2015-168579A)
(43)【公開日】2015年9月28日
(54)【発明の名称】集材装置
(51)【国際特許分類】
B66C 21/00 20060101AFI20150901BHJP
B66D 1/60 20060101ALI20150901BHJP
E02F 3/36 20060101ALI20150901BHJP
A01G 23/00 20060101ALI20150901BHJP
【FI】
B66C21/00 Z
B66D1/60 Z
E02F3/36 A
A01G23/00 551F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-47383(P2014-47383)
(22)【出願日】2014年3月11日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 集会名、開催場所:平成25年度林業機械化推進シンポジウム 国立オリンピック記念青少年総合センター カルチャー棟 大ホール (東京都渋谷区代々木神園町3−1) 開催日 :平成26年2月28日
(71)【出願人】
【識別番号】508107630
【氏名又は名称】株式会社南星機械
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 幸史
(74)【代理人】
【識別番号】100150968
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 悠有子
(72)【発明者】
【氏名】草野 喜行
(72)【発明者】
【氏名】田中 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】杉山 聖二
(72)【発明者】
【氏名】中重 友和
【テーマコード(参考)】
2D012
【Fターム(参考)】
2D012DA00
(57)【要約】
【課題】効率良く材を引き寄せることができ、搬器の運搬性を向上させることができる集材装置を提供する。
【解決手段】搬器35と、搬器35に接続された引戻索38と、搬器35に設けられた滑車44を介して吊り具36を吊り下げる引寄索39と、搬器35に接続され、引戻索38の張力を受ける搬器保持索40と、を備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬器と、
前記搬器に接続された引戻索と、
前記搬器に設けられた滑車を介して吊り具を吊り下げる引寄索と、
前記搬器に接続され、前記引戻索の張力を受ける搬器保持索と、
を備えた集材装置。
【請求項2】
集材機をさらに備え、
前記引戻索は、前記集材機に設けられた引戻索用ウインチに一端が巻き取られ、他端が前記搬器に接続され、
前記引寄索は、前記集材機に設けられた引寄索用ウインチに一端が巻き取られ、前記搬器に設けられた引寄索用滑車を通り荷掛具に他端が接続され、
前記搬器保持索は、前記集材機に設けられた搬器保持索用ウインチに一端が巻き取られ、他端が前記搬器に接続された請求項1記載の集材装置。
【請求項3】
前記集材機に設けられた主索用ウインチに一端が巻き取られ、前記搬器に設けられた主索用滑車を通り先柱を通り他端が固定された主索をさらに備えた請求項2記載の集材装置。
【請求項4】
前記集材機は、油圧ショベルであり、
前記油圧ショベルは、前記引戻索、前記引寄索、および前記搬器保持索を案内する滑車を備えた作業機を有する請求項2または3記載の集材装置。
【請求項5】
前記集材機は、油圧ショベルであり、
前記油圧ショベルは、ブームと、前記ブームに接続されたアームと、前記引戻索、引寄索、および搬器保持索を案内する滑車を備えた前記ブームに接続された元柱用タワーとを有し、
集材時において前記ブームとの連結部を支点に前記元柱用タワーは起立し、前記アームは先端を接地させる請求項2または3記載の集材装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易架線集材装置や機械集材装置などの集材装置に関する。
【背景技術】
【0002】
林業における集材作業には、材木を吊った架線を巻き出し、または巻き込みする集材用のウインチを備えた集材装置が用いられる(例えば特許文献1および2参照)。このような集材装置は、例えば油圧ショベルをベースマシンとして用い、ランニングスカイライン方式などの索張り方式を利用して集材を行う。
【0003】
一例としてのランニングスカイライン方式は、例えば油圧ショベルとその前方に位置する先柱との間に引寄索(ホールライン、HAL)と引戻索(ホールバックライン、HBL)を架設し、HBLに沿って移動可能な搬器を用いる。また、搬器に設けられた滑車を通ったHALの先端から吊り下げられたフックブロックなどの荷掛具に木材が吊られ、HBLの巻き出しおよびHALの巻き込みにより搬器を引き寄せつつ、木材を運搬する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−315226号公報
【特許文献2】特開2005−22793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
材を運ぶ場合、岩や切株などの地面上の障害物により運搬が妨げられないよう、材の鼻先(切口側の一端)を上げて運ぶ必要がある。ランニングスカイライン方式を採用した場合、材の鼻先を上げようとすると、HALを巻き込むと同時にHBLによる「バックテンション(集材する方向とは反対方向への張力)」を掛ける必要がある。すなわち、HALによる搬器を引き寄せる力とHBLの張力の釣り合いにより搬器の自重に対して浮かせた状態で移動させるためには、HALの巻き込みとHBLの巻き出しを制御し緊張状態を保つ必要がある。
【0006】
しかし、このバックテンションは、材を運搬するためのHAL(HALのウインチ)の巻き込み力に損失を発生させるものであった。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、効率良く材を引き寄せることができ、搬器の運搬性を向上させることができる集材装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る集材装置は、上述した課題を解決するために、搬器と、前記搬器に接続された引戻索と、前記搬器に設けられた滑車を介して吊り具を吊り下げる引寄索と、前記搬器に接続され、前記引戻索の張力を受ける搬器保持索と、を備えた。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る集材装置においては、効率良く材を引き寄せることができ、搬器の運搬性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る集材装置の一実施形態を示す全体的な構成図。
【
図2】(A)〜(C)は、搬器保持索を備えない集材装置に作用するバックテンションの説明図。
【
図3】搬器保持索を備えない集材装置のフックブロックを下ろす際の動作を説明する図。
【
図4】(A)および(B)は、本実施形態におけるスイングヤーダがフックブロックを下す際の動作を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る集材装置の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、本発明に係る集材装置の一実施形態を示す全体的な構成図である。
【0013】
本実施形態における集材装置は、いわゆるスイングヤーダ1であり、ランニングスカイライン方式による索張り方式を利用したものである。本実施形態においては、集材機として油圧ショベル(ドラグショベル)10を用いて説明する。
【0014】
スイングヤーダ1は、下部走行体11と、下部走行体11上に旋回自在に設けられた上部旋回体12と、上部旋回体12に取り付けられた作業機13とを備える。また、上部旋回体12は、運転席を覆うキャノピ15や、エンジンルーム(図示せず)を備える。
【0015】
作業機13は、ブーム16と、ブーム16の先端部に接続されたアーム17と、アーム17の先端部に接続されたウッドグラップル18とを備える。このウッドグラップル18は、一対の把持爪18aを備える。把持爪18aは、木材をつかんで束ねたり、運搬したり、積み重ねたりする動作を行う。なお、ブーム16、アーム17およびウッドグラップル18は、それぞれに設けられたシリンダ20、21、および22の伸縮によってそれぞれ上下方向、または前後方向に回動する。
【0016】
また、作業機13は、ブーム16に接続された元柱用タワー24を備える。元柱用タワー24は、ブーム16とアーム17とを連結する連結ピン25を支点として回動する。元柱用タワー24は、アーム17とほぼ同じ長さを有する長尺部材である。元柱用タワー24の連結側端部は、門型に形成され、ブーム16を挟むように連結される。集材時においては、ブーム16との連結ピン25を支点に元柱用タワー24は起立し、アーム17は先端(ウッドグラップル18)を接地させる。これにより、スイングヤーダ1による集材作業の際に機体を安定させることができる。元柱用タワー24は、非集材時にはブームに沿って格納される。この元柱用タワー24を含む作業機13の詳細な構成および動作については、例えば特開2004−315226号公報に開示された技術を適用することができる。
【0017】
さらに、上部旋回体12は、引戻索用ウインチ28と、引寄索用ウインチ29と、搬器保持索用ウインチ30とからなる3胴ウインチを備える。各ウインチ28、29、30は、上部旋回体12の側面に設けられたウインチ取付板31に、上から引戻索用ウインチ28、搬器保持索用ウインチ30、引寄索用ウインチ29の順で配置される。また、さらなるウインチとして、ブーム16の上側(外側)(油圧ショベル10)には、主索用ウインチ32が設けられる。なお、主索用ウインチ32は、ブーム16の下側(内側)に設けられてもよい。
【0018】
このようなスイングヤーダ1はさらに、材2を運搬(集材)するための搬器35、フックブロック36、引戻索38、引寄索39、搬器保持索40、および主索41を有する。
【0019】
搬器35は、回転可能に支持された滑車43、44、45を有する。荷掛具としてのフックブロック36は、搬器35下方に引寄索39により吊り下げられ、運搬される材2を吊り上げる。
【0020】
引戻索(ホールバックライン、以下HBLという。)38の一端は、HBL用ウインチ28に巻き取られる。また、HBL38の他端は、搬器35に設けられた滑車43を通り、定置物としての立木3(先柱)にて滑車46により折り返された後、搬器35に接続される。
【0021】
引寄索(ホールライン、以下HALという。)39の一端は、HAL用ウインチ29に巻き取られる。また、HAL39の他端は、搬器35に設けられた滑車44を通りフックブロック36に接続される。
【0022】
搬器保持索(ホールキャリッジライン、以下HCLという。)40の一端は、油圧ショベル10に設けられたHCL用ウインチ30に巻き取られる。また、HCL40の他端は、搬器35に接続される。
【0023】
主索(スカイライン、以下SKLという。)41の一端は、油圧ショベル10に設けられたSKL用ウインチ32に巻き取られる。また、SKL41の他端は、搬器35に設けられた滑車45を通り立木3(先柱)に設けられた滑車47を通り、先柱より遠方の立木4に固定される。
【0024】
なお、HBL38、HAL39、HCL40、SKL41は、各ウインチ28、29、30、32に巻き取られた後に元柱用タワー24に設けられた滑車48、49、50、51を通り案内される。また、HBL38、HAL39、HCL40、SKL41には、繊維ロープや、ワイヤロープを適用することができる。
【0025】
次に、本実施形態におけるスイングヤーダ1の作用について説明する。まず、本実施形態におけるスイングヤーダ1との比較のため、HCL40を備えない集材装置に作用するバックテンション(インターロック運転)の問題点について説明する。
【0026】
図2(A)〜(C)は、HCL40を備えない集材装置100に作用するバックテンションの説明図である。
図2においては、ウインチ128、129、元柱に設けられる滑車148、149、先柱に設けられる滑車146、搬器135、およびフックブロック136のみ図示し、他の構成については説明の簡素化のため省略する。
【0027】
集材装置100は、本実施形態におけるスイングヤーダ1(集材装置)に比べてHCL40、ウインチ30、滑車50を備えない。このような集材装置100は、HAL139およびHBL139を緩めることなく搬器135を寄せるために、HAL139とHBL138との巻き込みおよび巻き出しを同調制御するインターロック運転を行う。具体的には、
図2(A)に示すように、HAL用ウインチ129がHAL139を巻き込むことにより、フックブロック136が上昇する。
図2(B)に示すように、上昇したフックブロック136が搬器135と接触することにより、搬器135が持ち上げられ、これによりHAL139とHBL138とが緊張する。なお、HAL139の巻き込みの際にHBL138も同時に巻き込んでもよい。
【0028】
HAL139およびHBL138が緊張した後、搬器135を引き寄せる場合には、
図2(C)に示すように、HAL139の巻き込みに伴う引き寄せ方向の張力に対して、HBL用ウインチ128は弱い引き戻し方向の張力(バックテンション)を働かせながらHBL138を巻き出す。これにより、HAL139およびHBL138を緊張状態としたまま搬器135を所望高さに保持して引き寄せることができる。
【0029】
しかし、このようなバックテンションが作用すると、HAL用ウインチ129にバックテンション相当の損失が発生してしまう。また、フックブロック136に吊られた材の鼻先を上げようとすると、さらに大きなバックテンションが必要となり、引き寄せ方向の力にさらなる損失を発生させてしまう。
【0030】
これに対し、本実施形態におけるスイングヤーダ1は、HCL40を新たに設けたため、大きなバックテンションによりHAL39の巻き込みの力をロスすることなく効率よく集材することができる。すなわち、HBL38の張力(バックテンション)にHCL40の張力を対応させ、HAL39の巻き込みにHBL38のバックテンションを影響させないようにすることができる。
【0031】
また、HCL40を備えない集材装置の場合、搬器が自重で下がってしまい、好ましい位置でフックを自在に下ろすことができない。
図3は、HCL40を備えない集材装置200のフックブロック236を下ろす際の説明図である。
図3においては、HBL238、HAL239およびSKL241を備える集材装置200を例に説明する。また、
図3においては、説明の簡素化のためHBL238、HAL239、SKL241、搬器235およびフックブロック236のみ図示する。
【0032】
例えば、搬器235を目的地まで移動させ停止した後にフックブロック236を搬器235より下ろす際、搬器235の自重により搬器235はSKL241を伝って下がってしまう。このため、搬器235の自重とSKL241の搬器235の保持力とがバランスし下降が停止するまで、HAL239を巻き出したとしてもフックブロック236を下すことができない。
【0033】
これに対し、本実施形態におけるスイングヤーダ1はHCL40を備えるため、目的地点まで搬器35に自重の影響を及ぼすことなく移動させ、所望のタイミングでフックブロック36を下すことができる。
【0034】
図4(A)および(B)は、本実施形態におけるスイングヤーダ1がフックブロック36を下す際の動作を説明する図である。
【0035】
図4(A)に示すように、スイングヤーダ1は、HBL38を巻き込むと同時にHCL40を巻き込む。これにより、搬器35は巻き込まれたHBL38の張力を受けると同時に、この張力とバランスするHCL40の張力により自重により下がることなく保持される。すなわち、スイングヤーダ1は、HBL38の張力とHCL40の張力とをバランスさせて、搬器35を所望の高さで固定することができる。これにより、
図4(B)に示すように、スイングヤーダ1はHAL39を巻き出すことにより、フックブロック36を自在に下ろすことができる。
【0036】
このような本実施形態におけるスイングヤーダ1は、例えばHAL39を巻き込み搬器35を引き寄せる場合に発生するHBL38のバックテンションをHCL40でバランスさせるため、HAL39の張力、すなわちHAL用ウインチ29の巻き込み力にロスを発生させることがない。これにより、HCL40を設けない場合の集材装置に比べて、HAL用ウインチ29は同様の動力で材2の鼻先2aを高く上げることができ効率よく集材することができる。
【0037】
また、HBL38とHCL40との張力のバランスにより、搬器35を自重で下げてしまうことなく移動および保持することができ、搬器35の運搬性を向上させることができる。また、これに伴いフックブロック36を下ろす制御を好適に行うことができる。このため、索や搬器35、フックブロック36を引きずったり人力で移動させたりすることなく、所望の位置およびタイミングでフックブロック36を下降させることができる。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0039】
例えば、
図1は本発明の集材装置の一実施形態を示したものであり、本発明の索張り方式はこれに限らない。例えば、フォーリングブロック方式を採用することができる。
【0040】
集材時に起立する元柱用タワー24を備えた作業機13を例に説明したが、元柱用タワー24を設けることなく、アーム17に滑車48〜51を備えてもよい。
【0041】
また、SKL41およびSKL用ウインチ32は、省略してもよい。また、搬器35は、各滑車43〜45を係止させるための滑車集合金具であってもよい。さらに、荷掛具はフックブロック36に限らず、シャックルなどの、材などを掛けることができるものであればよい。
【符号の説明】
【0042】
1 スイングヤーダ
2 材
10 油圧ショベル
11 下部走行体
12 上部旋回体
13 作業機
16 ブーム
17 アーム
18 ウッドグラップル
24 元柱用タワー
28 引戻索(HBL)用ウインチ
29 引寄索(HAL)用ウインチ
30 搬器保持索(HCL)用ウインチ
32 主索(SKL)用ウインチ
35 搬器
36 フックブロック
38 引戻索(HBL)
39 引寄索(HAL)
40 搬器保持索(HCL)
41 主索(SKL)
43〜51 滑車