特開2015-168602(P2015-168602A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 堺化学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2015168602-二酸化チタン粒子の製造方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-168602(P2015-168602A)
(43)【公開日】2015年9月28日
(54)【発明の名称】二酸化チタン粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/04 20060101AFI20150901BHJP
【FI】
   C01G23/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-45100(P2014-45100)
(22)【出願日】2014年3月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000174541
【氏名又は名称】堺化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小泉 寿夫
(72)【発明者】
【氏名】小野 啓治
(72)【発明者】
【氏名】山本 務
(72)【発明者】
【氏名】見上 勝
(72)【発明者】
【氏名】和田 瑞穂
【テーマコード(参考)】
4G047
【Fターム(参考)】
4G047CA06
4G047CA07
4G047CB05
4G047CB09
4G047CC01
4G047CD03
(57)【要約】
【課題】 高い近赤外線反射率となるBET比表面積を有し、分散性に優れた二酸化チタン粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】 水酸化チタンに焼成処理剤を混合して水酸化チタン−焼成処理剤混合物を作製する混合工程と、上記水酸化チタン−焼成処理剤混合物を焼成して二酸化チタン粒子を作製する焼成工程とを含む二酸化チタン粒子の製造方法であって、上記焼成処理剤は、カリウム化合物、リチウム化合物及び亜鉛化合物からなる群より選ばれる少なくとも2種の化合物を含み、かつ、アルミニウム化合物を含まないことを特徴とする二酸化チタン粒子の製造方法。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化チタンに焼成処理剤を混合して水酸化チタン−焼成処理剤混合物を作製する混合工程と、前記水酸化チタン−焼成処理剤混合物を焼成して二酸化チタン粒子を作製する焼成工程とを含む二酸化チタン粒子の製造方法であって、
前記焼成処理剤は、カリウム化合物、リチウム化合物及び亜鉛化合物からなる群より選ばれる少なくとも2種の化合物を含み、かつ、アルミニウム化合物を含まないことを特徴とする二酸化チタン粒子の製造方法。
【請求項2】
前記焼成処理剤に含まれるカリウム化合物のKO換算の重量は、前記水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05〜3.0質量部である請求項1記載の二酸化チタン粒子の製造方法。
【請求項3】
前記焼成処理剤に含まれるリチウム化合物のLiO換算の重量は、前記水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05〜8.0質量部である請求項1又は2に記載の二酸化チタン粒子の製造方法。
【請求項4】
前記焼成処理剤に含まれる亜鉛化合物のZnO換算の重量は、前記水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05〜4.0質量部である請求項1〜3のいずれか1項に記載の二酸化チタン粒子の製造方法。
【請求項5】
前記水酸化チタン−焼成処理剤混合物を850〜950℃で焼成する請求項1〜4のいずれか1項に記載の二酸化チタン粒子の製造方法。
【請求項6】
前記焼成処理剤は、さらにリン化合物を含み、前記焼成処理剤に含まれるリン化合物のP換算の重量は、前記水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05〜5.0質量部である請求項1〜5のいずれか1項に記載の二酸化チタン粒子の製造方法。
【請求項7】
前記焼成処理剤は、さらにホウ素化合物を含み、前記焼成処理剤に含まれるホウ素化合物のB換算の重量は、前記水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05〜5.0質量部である請求項1〜6のいずれか1項に記載の二酸化チタン粒子の製造方法。
【請求項8】
前記焼成処理剤は、さらにナトリウム化合物を含み、前記焼成処理剤に含まれるナトリウム化合物のNaO換算の重量は、前記水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05〜3.0質量部である請求項1〜7のいずれか1項に記載の二酸化チタン粒子の製造方法。
【請求項9】
前記焼成処理剤は、さらにマグネシウム化合物を含み、前記焼成処理剤に含まれるマグネシウム化合物のMgO換算の重量は、前記水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05〜1.0質量部である請求項1〜8のいずれか1項に記載の二酸化チタン粒子の製造方法。
【請求項10】
前記焼成処理剤は、さらにジルコニウム化合物を含み、前記焼成処理剤に含まれるジルコニウム化合物のZrO換算の重量は、前記水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05〜3.0質量部である請求項1〜9のいずれか1項に記載の二酸化チタン粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化チタン粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二酸化チタンは、一次粒子径を0.2〜0.3μmにコントロールすることで、高い可視光反射率が得られる。これは、物質固有の高い屈折率と可視光反射に適した粒子径によるものである。このように一次粒子径を調整された二酸化チタンは、白色顔料として塗料、インキ、プラスチックス、化粧品等に使用されている。
一方、二酸化チタンの一次粒子径を大きくすること(0.35〜1.5μm)で、反射率の高い波長領域が可視光域よりも長波長側にシフトするため、高い近赤外線反射率が得られるようになることがわかっている。このような粒子径を持つ二酸化チタンのBET比表面積は、1.0〜4.0m/gとなる。
近年、夏の日差しが強くなってきており、太陽光に含まれる近赤外線の反射率を高めた高日射反射材料の要望が高まっている。そこで太陽光エネルギーのうちの約50%を占める近赤外線の反射率を高めた材料として、一次粒子径が0.35〜1.5μmの二酸化チタンを、例えば建築物の塗装に用いると、その内部の温度上昇を抑えることができる。
【0003】
このような二酸化チタン粒子の製造方法として、特許文献1には、含水酸化チタンと含水酸化チタン中のTiOに対しAl換算で0.1〜1.5重量%のアルミニウム化合物と、NaO換算で0.1〜1.5重量%のナトリウム化合物と、KO換算で0.1〜1.5重量%のカリウム化合物と、P換算で0.1〜1.5重量%のリン化合物を混合し、加熱焼成するルチル型棒状二酸化チタンの製造方法が開示されている。アルミニウム化合物とナトリウム化合物とカリウム化合物を用いることで棒状に粒子成長させるが、アルミニウム化合物を添加することでナトリウム化合物とカリウム化合物の添加量を低減でき、製造設備をナトリウムやカリウムによる腐食から守ることができる。また、アルミニウム化合物は二酸化チタンの結晶内部に固溶されても、二酸化チタンの耐候性を向上させる効果をもたらす、と記載されている。
特許文献2には、含水酸化チタンと含水酸化チタン中のTiOに対しAl換算で0.1〜0.5重量%のアルミニウム化合物と、ZnO換算で0.2〜1.0重量%の亜鉛化合物と、KCO換算で0.1〜0.5重量%のカリウム化合物を混合し、加熱焼成する粒状酸化チタンの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−256341号公報
【特許文献2】国際公開第2004/052786号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に開示された方法では、製造される二酸化チタン粒子の一次粒子径は大きくなるものの、二酸化チタン粒子が硬く焼結しており、このように焼結された二酸化チタン粒子は、非常に硬く粉砕が困難であった。つまり、このような硬い二酸化チタン粒子を粉砕した場合、粗大粒子が多く発生する。
このような粗大粒子が多い二酸化チタン粒子は、塗膜に仕上げたときの分散性が悪いため、単位重量当たりの近赤外線反射率が低いという問題があった。単位重量当たりの近赤外線反射率を向上させるために、粗大粒子を除去するという方法もあるが、このような粗大粒子を除去することによって歩留まりが悪化するという問題があった。すなわち、一次粒子径の大きな二酸化チタンを、簡便な方法で工業的に有用な粒子として生産性良く得ることは極めて困難であった。
また、アルミニウム化合物を使用した場合、二酸化チタン粒子の粉体色は黄色味がつきやすいため、塗膜の可視光反射率が上がらないという問題があり、アルミニウム化合物を使用せずに高い近赤外線反射率をもつ二酸化チタン粒子を製造することが望まれていた。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、高い近赤外線反射率となるBET比表面積を有し、分散性に優れた二酸化チタン粒子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、焼成処理剤にアルミニウム化合物が含まれている場合、二酸化チタン粒子を焼成する際は、粒子が成長すると同時に硬く焼結し、焼結した粒子は粉砕しても取り除くことができないことを見出した。さらに、カリウム化合物、リチウム化合物及び亜鉛化合物からなる群より選ばれる少なくとも2種の化合物を含み、かつ、アルミニウム化合物を含まない焼成処理剤を用いることにより、高い近赤外線反射率となるBET比表面積を有し、分散性に優れた二酸化チタン粒子を製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、水酸化チタンに焼成処理剤を混合して水酸化チタン−焼成処理剤混合物を作製する混合工程と、上記水酸化チタン−焼成処理剤混合物を焼成して二酸化チタン粒子を作製する焼成工程とを含む二酸化チタン粒子の製造方法であって、上記焼成処理剤は、カリウム化合物、リチウム化合物及び亜鉛化合物からなる群より選ばれる少なくとも2種の化合物を含み、かつ、アルミニウム化合物を含まないことを特徴とする二酸化チタン粒子の製造方法に関する。
【0009】
上記二酸化チタン粒子の製造方法は、好ましくは、上記焼成処理剤に含まれるカリウム化合物のKO換算の重量は、上記水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05〜3.0質量部であるものである。
【0010】
上記二酸化チタン粒子の製造方法は、好ましくは、上記焼成処理剤に含まれるリチウム化合物のLiO換算の重量は、上記水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05〜8.0質量部であるものである。
【0011】
上記二酸化チタン粒子の製造方法は、好ましくは、上記焼成処理剤に含まれる亜鉛化合物のZnO換算の重量は、上記水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05〜4.0質量部であるものである。
【0012】
上記二酸化チタン粒子の製造方法は、好ましくは、上記水酸化チタン−焼成処理剤混合物を850〜950℃で焼成するものである。
【0013】
上記二酸化チタン粒子の製造方法は、好ましくは、上記焼成処理剤に、さらにリン化合物を含み、上記焼成処理剤に含まれるリン化合物のP換算の重量は、上記水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05〜5.0質量部であるものである。
【0014】
上記二酸化チタン粒子の製造方法は、好ましくは、上記焼成処理剤に、さらにホウ素化合物を含み、上記焼成処理剤に含まれるホウ素化合物のB換算の重量は、上記水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05〜5.0質量部であるものである。
【0015】
上記二酸化チタン粒子の製造方法は、好ましくは、上記焼成処理剤に、さらにナトリウム化合物を含み、上記焼成処理剤に含まれるナトリウム化合物のNaO換算の重量は、上記水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05〜3.0質量部であるものである。
【0016】
上記二酸化チタン粒子の製造方法は、好ましくは、上記焼成処理剤に、さらにマグネシウム化合物を含み、上記焼成処理剤に含まれるマグネシウム化合物のMgO換算の重量は、上記水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05〜1.0質量部であるものである。
【0017】
上記二酸化チタン粒子の製造方法は、好ましくは、上記焼成処理剤に、さらにジルコニウム化合物を含み、上記焼成処理剤に含まれるジルコニウム化合物のZrO換算の重量は、上記水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05〜3.0質量部であるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の二酸化チタン粒子の製造方法では、焼成処理剤が、カリウム化合物、リチウム化合物及び亜鉛化合物からなる群より選ばれる少なくとも2種の化合物を含む。そのため、高い近赤外線反射率となるBET比表面積を有し、分散性に優れた二酸化チタン粒子を得ることができる。
また、本発明の二酸化チタン粒子の製造方法で用いる焼成処理剤は、アルミニウム化合物を含まない。そのため、本発明の二酸化チタン粒子の製造方法では、二酸化チタン粒子が硬く焼結せず粗大粒子の発生が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施例1又は比較例6に係る二酸化チタン粒子が用いられた遮熱塗料組成物の反射スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の二酸化チタン粒子の製造方法について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0021】
(二酸化チタン粒子の製造方法)
本発明の二酸化チタン粒子の製造方法では、(a)混合工程、及び、(b)焼成工程が含まれる。各工程について以下に説明する。
【0022】
(a)混合工程
(a−1)水酸化チタンの準備
水酸化チタンを準備する方法としては、特に限定されず、従来の硫酸法で水酸化チタンを準備する方法と同様の方法で準備してもよい。例えば、硫酸チタン(IV)を熱加水分解することにより水酸化チタンとしてもよい。
【0023】
(a−2)焼成処理剤の準備
カリウム化合物、リチウム化合物及び亜鉛化合物からなる群より選ばれる少なくとも2種の化合物を含み、かつ、アルミニウム化合物を含まない焼成処理剤を準備する。
【0024】
(a−3)水酸化チタンと焼成処理剤との混合
準備した水酸化チタンと焼成処理剤とを混合する。
混合する方法としては、特に限定されず、乾式又は湿式にて混合すればよい。
混合された水酸化チタンと焼成処理剤とは、水酸化チタン−焼成処理剤混合物となる。
【0025】
本発明の二酸化チタン粒子を製造する方法に用いる焼成処理剤は、カリウム化合物、リチウム化合物及び亜鉛化合物からなる群より選ばれる少なくとも2種の化合物を含むので、高い近赤外線反射率となるBET比表面積を有し分散性に優れた二酸化チタン粒子を得ることができる。
また、焼成処理剤にアルミニウム化合物が含まれていると、成長した粒子が硬く焼結して粉砕が困難となり、粉砕した場合も10μm以上の粗大粒子が多く発生し、塗膜に仕上げたときの分散性が悪いため、単位重量当たりの近赤外線反射率が低くなる。
しかし、上記焼成処理剤は、アルミニウム化合物を含まない。そのため、焼成後の二酸化チタン粒子は硬く焼結せず、簡単な粉砕で上記10μm以上の粗大粒子を減らすことができる。
【0026】
本明細書において、「焼成処理剤は、アルミニウム化合物を含まない」とは、焼成処理剤の準備に使用する出発物質にアルミニウム化合物を含まないことであり、これは焼成後に得られる二酸化チタン中のアルミニウム化合物の含有量により確認できる。具体的には、ICP発光分光分析装置を用いて、二酸化チタン中のアルミニウム化合物の含有量を定量した際に、アルミニウム化合物のAl換算の含有量が0.05wt%未満であることを意味する。
二酸化チタン中のアルミニウム化合物の含有量は、以下の方法により測定することができる。
二酸化チタン1gと硫酸アンモニウム10gを精秤し、濃硫酸25mLを加えて、加熱して完全に溶解させる。この溶解液にイオン交換水100mLを液温が50℃を超えないように徐々に加えた後、溶液の体積が250mLとなるようにイオン交換水で希釈する。次に、標準添加法に基づいて、測定用の溶液を作製する。100mLメスフラスコを4本用意し、この溶液をそれぞれに25mLずつ分取する。次に、ICP用アルミニウム1000ppm標準液(和光純薬工業株式会社製)を100倍希釈して得られたアルミニウム10ppm標準液をそれぞれに0mL、1mL、5mL、10mL加える。そしてそれぞれをイオン交換水で100mLの標線まで希釈する。これら測定用溶液を用いて、ICP発光分光装置(セイコー電子工業製 SPS3000型)の波長396.15nmにおけるアルミニウムの発光強度を測定する。得られた発光強度から検量線を作成し、アルミニウム化合物のAl換算での含有量を算出する。この方法では0.01wt%以上のアルミニウム含有量を有意に測定できる。なお、この測定方法において、アルミニウム化合物のAl換算での含有量の測定値が0.01wt%未満である場合も、上記「焼成処理剤は、アルミニウム化合物を含まない」ことに含まれる。
【0027】
上記焼成処理剤にカリウム化合物が含まれる場合、特に限定されないが、カリウム化合物のKO換算の重量が、水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05〜3.0質量部であることが好ましい。より好ましくは、0.05〜2.8質量部であり、さらに好ましくは、0.05〜2.6質量部であり、よりさらに好ましくは、0.05〜2.5質量部である。
カリウム化合物は、二酸化チタン粒子の粒子径のバラツキを整える効果を有する。
カリウム化合物のKO換算の重量が、水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05質量部未満である又は3.0質量部を超えていると、二酸化チタン粒子の粒子径がバラツキやすくなる。
カリウム化合物としては、特に限定されないが、水酸化カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が好ましい。
【0028】
上記焼成処理剤にリチウム化合物が含まれる場合、特に限定されないが、リチウム化合物のLiO換算の重量が、水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05〜8.0質量部であることが好ましい。より好ましくは、0.05〜7.5質量部であり、さらに好ましくは、0.05〜7.0質量部であり、よりさらに好ましくは、0.05〜6.0質量部である。
リチウム化合物は、二酸化チタン粒子の粒子径を大きくする効果を有する。
リチウム化合物のLiO換算の重量が、水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05質量部未満であると、二酸化チタン粒子の粒子径を大きくする効果が得られにくくなる。
リチウム化合物のLiO換算の重量が、水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、8.0質量部を超えると、二酸化チタン粒子の過剰成長や粒子同士の結着が生じやすくなる。
リチウム化合物としては、特に限定されないが、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硫酸リチウム等が好ましい。
【0029】
上記焼成処理剤に亜鉛化合物が含まれる場合、特に限定されないが、亜鉛化合物のZnO換算の重量が、水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05〜4.0質量部であることが好ましい。より好ましくは、0.05〜3.5質量部であり、さらに好ましくは、0.05〜3.0質量部である。
亜鉛化合物は、二酸化チタン粒子の粒子径を大きくする効果を有する。
亜鉛化合物のZnO換算の重量が、水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05質量部未満であると、二酸化チタン粒子を大きくする効果が得られにくくなる。
亜鉛化合物のZnO換算の重量が、水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、4.0質量部を超えると、二酸化チタンに比べて屈折率の低いチタン酸亜鉛が副生成物として多く含まれることになる。そのため、このような二酸化チタン粒子では、充分な近赤外線反射率が得られにくくなる。
亜鉛化合物としては、特に限定されないが、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、塩基性炭酸亜鉛等が好ましい。
【0030】
なお、焼成処理剤として、カリウム化合物、リチウム化合物又は亜鉛化合物をそれぞれ単独で使用した場合には、所望の二酸化チタン粒子を得ることができない。その理由は以下の通りである。
上記焼成処理剤として、カリウム化合物を単独で使用した場合には、粒子成長が抑制される。
上記焼成処理剤として、リチウム化合物を単独で使用した場合には、粒子は大きくなるものの、粒子成長が急激に進むため、粒子径制御が困難であり、容易に焼結が進み、分散性が低下することがある。また、得られた二酸化チタンは、粉体色がくすむことで、可視光反射率が低下し、遮熱効果が低下してしまうことがある。
上記焼成処理剤として、亜鉛化合物を単独で使用した場合には、粒子は大きくなるものの、粒子成長が急激に進むため、粒子径制御が困難であり、容易に焼結が進み、分散性が低下することがある。また、得られた二酸化チタンは副生成物のチタン酸亜鉛を多く含んでおり、チタン酸亜鉛は近赤外線反射率低下の原因となるので、充分な近赤外線反射率が得られにくくなる。
また、カリウム化合物、リチウム化合物及び亜鉛化合物からなる群より選ばれる少なくとも2種の化合物を含んでいてもアルミニウム化合物を含んでいる場合には、粒子成長の制御が困難になる。この場合、成長した粒子が硬く焼結して粉砕が困難となり、粉砕した場合も10μm以上の粗大粒子が多く発生し、塗膜に仕上げたときの分散性が悪いため、単位重量当たりの近赤外線反射率が低くなる。あるいは、焼結を防止するために焼成温度を下げる等、焼成条件を変更した場合には、近赤外線反射能力を持つBET比表面積1.0〜4.0m/gになるまで粒子が成長しない。
従って、上記焼成処理剤は、カリウム化合物、リチウム化合物及び亜鉛化合物からなる群より選ばれる少なくとも2種の化合物を含み、かつ、アルミニウム化合物を含まないことで、目的の二酸化チタン粒子を得ることができる。
【0031】
上記(a)混合工程では、焼成処理剤が、さらにリン化合物を含むことが好ましい。
焼成処理剤が、リン化合物を含んでいると、二酸化チタン粒子の粒子径が大きくなりすぎることを抑制することができる。
特に限定されないが、リン化合物のP換算の重量が、水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05〜5.0質量部であることが好ましい。より好ましくは、0.05〜4.5質量部であり、さらに好ましくは、0.05〜4.0質量部であり、よりさらに好ましくは、0.05〜3.0質量部である。
リン化合物のP換算の重量が、水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05質量部未満であると、二酸化チタン粒子の粒子径が大きくなりすぎることを抑制する効果が得られにくい。
リン化合物のP換算の重量が、水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、5.0質量部を超えると、二酸化チタン粒子の成長が過剰に抑制され、二酸化チタン粒子が大きくなりにくく、所望の二酸化チタン粒子が得られにくい。
リン化合物としては特に限定されないが、リン酸、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム等が好ましい。
【0032】
上記(a)混合工程では、焼成処理剤が、さらにホウ素化合物を含むことが好ましい。
焼成処理剤が、ホウ素化合物を含んでいると、二酸化チタン粒子の粒子径を大きくすることができる。
特に限定されないが、ホウ素化合物のB換算の重量が、水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05〜5.0質量部であることが好ましい。より好ましくは、0.05〜4.5質量部であり、さらに好ましくは、0.05〜4.0質量部であり、よりさらに好ましくは、0.05〜3.5質量部である。
ホウ素化合物のB換算の重量が、水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05質量部未満であると、二酸化チタン粒子の粒子径を大きくする効果が得られにくくなる。
ホウ素化合物のB換算の重量が、水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、5.0質量部を超えると、二酸化チタン粒子の過剰成長が生じやすくなり、焼結が激しくなりやすくなる。
ホウ素化合物としては、特に限定されないが、ホウ酸、五ホウ酸アンモニウム等が好ましい。
【0033】
上記(a)混合工程では、焼成処理剤が、さらにナトリウム化合物を含むことが好ましい。
焼成処理剤が、ナトリウム化合物を含んでいると、二酸化チタン粒子の粒子径のバラツキを整えることができる。
特に限定されないが、ナトリウム化合物のNaO換算の重量が、水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05〜3.0質量部であることが好ましい。より好ましくは、0.05〜2.5質量部であり、さらに好ましくは、0.05〜2.0質量部であり、よりさらに好ましくは、0.05〜1.5質量部である。
ナトリウム化合物のNaO換算の重量が、水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05質量部未満である又は3.0質量部を超えていると、二酸化チタン粒子の粒子径がバラツキやすくなる。
ナトリウム化合物としては、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム等が好ましい。
【0034】
上記(a)混合工程では、焼成処理剤が、さらにマグネシウム化合物を含むことが好ましい。
焼成処理剤が、マグネシウム化合物を含んでいると、二酸化チタン粒子の粉体色が白くなり、反射率が向上する。
特に限定されないが、マグネシウム化合物のMgO換算の重量が、水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05〜1.0質量部であることが好ましい。より好ましくは、0.05〜0.9質量部であり、さらに好ましくは、0.05〜0.8質量部である。
マグネシウム化合物のMgO換算の重量が、水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05質量部未満であると、二酸化チタン粒子の粉体色を白くする効果が得られにくくなる。
マグネシウム化合物のMgO換算の重量が、水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、1.0質量部を超えると、それ以上に粉体色が白くなる効果は得られにくくなる。
マグネシウム化合物としては、特に限定されないが、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等が好ましい。
【0035】
上記(a)混合工程では、焼成処理剤が、さらにジルコニウム化合物を含むことが好ましい。
焼成処理剤が、ジルコニウム化合物を含んでいると、二酸化チタン粒子の粉体色が白くなり、反射率が向上する。
特に限定されないが、ジルコニウム化合物のZrO換算の重量が、水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、0.05〜3.0質量部であることが好ましい。より好ましくは、0.05〜2.0質量部である。
ジルコニウム化合物のZrO換算の重量が、TiO換算の水酸化チタン100質量部に対して、0.05質量部未満であると、二酸化チタン粒子の粉体色を白くする効果が得られにくくなる。
ジルコニウム化合物のZrO換算の重量が、水酸化チタンのTiO換算100質量部に対して、3.0質量部を超えると、それ以上に粉体色が白くなる効果は得られにくくなる。
ジルコニウム化合物としては、特に限定されないが、オキシ塩化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム等が好ましい。
【0036】
(b)焼成工程
次に、上記工程を経て得られた水酸化チタン−焼成処理剤混合物を焼成する。
焼成する温度としては特に限定されないが、850〜950℃で焼成することが望ましく、860〜945℃で焼成することがより望ましく、870〜940℃で焼成することがさらに望ましい。
焼成温度が850℃以上であると、焼成の際に、二酸化チタン粒子を充分に成長させることができる。そのため、得られる二酸化チタン粒子の平均粒子径を充分に大きくすることができ、BET比表面積を小さくすることができる。
焼成温度が950℃以下であると、焼成の際に、二酸化チタン粒子が焼結しにくくなる。そのため、二酸化チタン粒子が硬くなりにくく、分散性が良くなる。また、粗大粒子が生成しにくくなり、粗大粒子の除去等をする必要がほとんどないので生産性が良好になる。なお、本明細書において焼成温度とは、水酸化チタン−焼成処理剤混合物を焼成する際の、最高到達温度のことを意味する。
【0037】
以上の工程を経ることにより、二酸化チタン粒子を得ることができる。
また、必要に応じて、以下の工程を行ってもよい。
【0038】
(c−1)粉砕工程
上記(b)焼成工程後、得られた二酸化チタン粒子の粉砕を行ってもよい。粉砕方法は、特に限定されず、湿式や乾式の公知の方法で粉砕することができる。例えば湿式粉砕には、サンドミル、乾式粉砕には、自動乳鉢粉砕機や、ハンマーミル、ジェットミル等を用いることができる。
(c−2)分級工程
上記(c−1)粉砕工程の後、得られた二酸化チタン粒子の分級を行ってもよい。分級方法は、特に限定されず、湿式や乾式の公知の方法で分級することができる。例えば所定の大きさの篩目を有する篩等を用いることができる。
【0039】
(d)表面処理工程
上記(b)焼成工程、(c−1)粉砕工程、(c−2)分級工程を経て得られた二酸化チタン粒子の表面に、公知の無機化合物又は有機化合物を被覆してもよく、これらを組み合わせて被覆してもよい。無機化合物の被覆には、分散性や、耐候性を向上させる効果がある。有機化合物の被覆には、樹脂成分との親和性を向上させる効果がある。
上記無機化合物としては、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、錫、チタニウム、アンチモン等の酸化物、水酸化物、水和酸化物等があげられる。
上記有機化合物としては、多価アルコール、アルカノールアミン又はその誘導体、有機ケイ素化合物、高級脂肪酸又はその金属塩等があげられる。
例えば、多価アルコールとしてはトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等があげられる。アルカノールアミンとしてはトリエタノールアミン等があげられる。有機ケイ素化合物としてはジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等のポリシロキサン類、ヘキシルトリメトキシシラン等のアルキルシラン類、アミノシラン、ビニルシラン等のシランカップリング剤やオルガノシラン類等があげられる。高級脂肪酸としてはステアリン酸等があげられ、高級脂肪酸の金属塩としてはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛等があげられる。これらは単独で用いても、2種以上を用いてもよい。
【0040】
無機化合物の被覆は、以下の方法により実施することができる。すなわち、得られた二酸化チタン粒子を水等の媒液に分散させスラリーにした後、目的とする無機化合物の塩の溶液を添加し、酸性化合物又は塩基性化合物を添加する、あるいは無機化合物の塩と酸性化合物又は塩基性化合物とを同時に添加する等して中和反応させる等の方法で無機化合物を二酸化チタン粒子の表面に沈着させることにより無機化合物を被覆することができる。
【0041】
有機化合物の被覆は、通常、得られた二酸化チタン粒子、もしくは、無機化合物で被覆した二酸化チタン粒子を乾式粉砕後にヘンシェルミキサー等の高速流動混合機を用い、上記有機化合物と混合することにより被覆することができる。
【0042】
上記(b)焼成工程の後、上記(c−1)粉砕工程、(c−2)分級工程又は(d)表面処理工程は、それぞれの工程を単独で行ってもよく、2工程以上を組み合わせて行ってもよい。
なお、表面処理を効果的に行うために、各工程は記載の順に行うことが好ましい。
【0043】
(二酸化チタン粒子)
次に、本発明の二酸化チタン粒子の製造方法により製造される二酸化チタン粒子について説明する。
【0044】
本発明の二酸化チタン粒子の製造方法により、BET比表面積が、1.0〜4.0m/gである二酸化チタン粒子を製造することができる。このようなBET比表面積を有する二酸化チタン粒子は、近赤外域の光を効率的に反射させることができる。
なお、本発明においてBET比表面積とは、JIS Z 8830の規定に準じて測定された窒素吸着BET1点法により測定した値をいう。
【0045】
本発明の二酸化チタン粒子の製造方法により、粒子径が10μm以上の粗大粒子の割合が5.0%未満である分散性が良い二酸化チタン粒子を製造することができる。
粒子径が10μm以上の粗大粒子の割合が5.0%未満であると、粗大粒子を取り除く必要がないので歩留まりが良好となる。
粒子径が10μm以上の粗大粒子の割合が5.0%以上であると、その二酸化チタン粒子は、分散性が劣り、また、分級などの操作で粗大粒子を取り除く量が増えるため、歩留まりが悪くなる。
【実施例】
【0046】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
以下の方法により実施例1に係る二酸化チタン粒子を得た。
【0048】
(a)混合工程
(a−1)水酸化チタンの準備
二酸化チタンの製造方法の一つである硫酸法に従って、硫酸チタン(IV)を熱加水分解
し、ろ過水洗することで水酸化チタンのウェットケーキを得た。
TiOとして50gに相当する量の上記水酸化チタンを量り取り、外径150mm、容量400mLの磁製蒸発皿に移した。次に、その蒸発皿にイオン交換水100mLを添加し水酸化チタンをスラリー化した。
(a−2)焼成処理剤の準備
焼成処理剤として、炭酸リチウム(和光純薬特級)を0.62g、49wt%水酸化カリウム水溶液(和光純薬特級)を0.29g、85wt%リン酸水溶液(和光純薬特級)を0.079g、及び、ホウ酸(和光純薬特級)を0.27g準備した。
(a−3)水酸化チタンと焼成処理剤との混合
上記(a−1)で準備した水酸化チタンのスラリーに、上記(a−2)で準備した焼成処理剤を添加し混合した。その後、蒸発皿を水浴で加熱し、乳棒でよく撹拌しながら内容物を蒸発乾燥させて水酸化チタン−焼成処理剤混合物とした。
なお、水酸化チタンのTiO換算100質量部に対する、焼成処理剤の各成分の酸化物換算の重量は、以下の通りとなる。炭酸リチウムはLiOとして0.50質量部、水酸化カリウムはKOとして0.24質量部、リン酸はPとして0.10質量部、ホウ酸はBとして0.30質量部である。
【0049】
(b)焼成工程
得られた水酸化チタン−焼成処理剤混合物のうち40gを外径55mm、容量60mLのアルミナ製ルツボに仕込み電気マッフル炉(ADVANTEC社製、KM−420)内で焼成し二酸化チタン粒子を得た。焼成条件は、700℃まで90分間で昇温し、次に900℃まで200分間で昇温し、900℃に到達してから30分間その温度を保持する条件とした。
【0050】
得られた二酸化チタン粒子を、ライカイ機(機種名:ANM−150、製造元:日陶科学株式会社製)で粉砕した。粉砕条件は、焼成工程後の二酸化チタン粒子を10gライカイ機に仕込み、10分間粉砕した。
粉砕後の二酸化チタン粒子は、実施例1に係る二酸化チタン粒子となる。
【0051】
(実施例2)〜(実施例23)及び(比較例1)〜(比較例6)
焼成処理剤及びその量と焼成温度を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして実施例2〜実施例23及び比較例1〜比較例6に係る二酸化チタン粒子を製造した。
【0052】
【表1】
【0053】
(評価1:BET比表面積の評価)
実施例1〜実施例23及び比較例1〜比較例6に係る二酸化チタン粒子のBET比表面積を測定した。結果を表2に示す。
なお、BET比表面積は、JIS Z 8830の規定に準じ、窒素吸着BET1点法により測定した。
【0054】
(評価2:粒子径が10μm以上の粗大粒子の割合の評価)
実施例1〜実施例23及び比較例1〜比較例6に係る二酸化チタン粒子の粒度分布を、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、マイクロトラックMT3300EX)により測定した。まず、二酸化チタン0.1gに0.025wt%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液60mLを加え、超音波ホモジナイザー(US−600、日本精機製作所製)を用いて、強度をV−LEVEL3に設定して2分間分散処理を行うことにより、二酸化チタンの懸濁液を準備した。この後、0.025wt%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液180mLを試料循環器に準備し、透過率が0.71〜0.94になるように上記懸濁液を滴下して、流速50%、超音波出力30Wにて60秒間分散してから測定を行った。体積基準粒度分布の10μm以上の頻度の累積値を粗大粒子の割合とした。結果を表2に示す。10μm以上の粗大粒子の割合が5%以上であると、塗膜に仕上げたときに光沢が出にくくなったり、荒れた表面になったりすることから分散性が悪いと評価した。
【0055】
(評価3:初期分散性評価)
まず、実施例1〜実施例23及び比較例1〜比較例6に係る二酸化チタン粒子5.00gと、固形分60.1%のアルキド樹脂(製品名:ベッコゾール J−524、製造元:DIC(株))10.18gと、固形分51.1%のブチル化メラミン樹脂(製品名:スーパーベッカミン J−820、製造元:DIC(株))4.33gと、キシレン2.71gと、1.5mmφガラスビーズ30gとを70mLマヨネーズ瓶に量り取り、混合した。該混合物をペイントコンディショナー(機種名:5110型、製造元:レッドデビル社)にて20分間又は40分間処理し遮熱塗料組成物とした。遮熱塗料組成物に含まれる樹脂成分(アルキド樹脂及びブチル化メラミン樹脂)の重量と、二酸化チタン粒子の重量の比は、樹脂成分:二酸化チタン粒子=1.0:0.6となる。
次に、得られた遮熱塗料組成物を用いて、グラインドゲージ線条法により分散度を求めた。測定手順はJIS K5600−2−5の規定に準じた。この方法で粒子の分散し易さを評価できる。結果を表2に示す。
ペイントコンディショナーで20分間処理した遮熱塗料組成物の分散度が40μm以下であり、ペイントコンディショナーで40分間処理した遮熱塗料組成物の分散度が10μm以下である場合、初期分散性が良好であると評価した。また、上記以外の場合には、初期分散性が不良であると評価した。
【0056】
(評価4:反射スペクトルとグロス評価)
二酸化チタン粒子の反射スペクトルおよびグロス評価は、二酸化チタン粒子にアルミニウムの含水酸化物による表面処理を施した後に行った。表面処理方法を以下に示す。
二酸化チタン粒子15gと、イオン交換水23mLと、1mmφジルコニアビーズ35mLとを70mLマヨネーズ瓶に量り取り、混合した。該混合物をペイントコンディショナー(機種名:5110型、製造元:レッドデビル社)にて10分間処理した後、得られたスラリーを400メッシュ(目開き38μm)に通して粗大粒子を除去し、篩下のスラリーを二酸化チタン濃度が400g/Lとなるように調整した。このスラリー35mLを撹拌しながら45℃に調整し、この温度を維持しながらTiO100質量部当たり、Al換算で2質量部に相当する量のアルミン酸ナトリウム水溶液(Al換算で260g/L)を添加した。この際、10%希硫酸を30分かけて添加してスラリーのpHを7とし、20分間熟成した。得られたスラリーを400メッシュ(目開き38μm)に通し、篩下のスラリーを濾過水洗後、乾燥して粉砕することにより、アルミニウムの含水酸化物により表面処理された二酸化チタン粒子を得た。この二酸化チタン粒子5.00gと、固形分60.1%のアルキド樹脂(製品名:ベッコゾール J−524、製造元:DIC(株))10.18gと、固形分51.1%のブチル化メラミン樹脂(製品名:スーパーベッカミン J−820、製造元:DIC(株))4.33gと、キシレン2.71gと、1.5mmφガラスビーズ30gとを70mLマヨネーズ瓶に量り取り、混合した。該混合物をペイントコンディショナー(機種名:5110型、製造元:レッドデビル社)にて60分間処理し遮熱塗料組成物とした。遮熱塗料組成物に含まれる樹脂成分(アルキド樹脂及びブチル化メラミン樹脂)の重量と、二酸化チタン粒子の重量の比は、樹脂成分:二酸化チタン粒子=1.0:0.6となる。
次に、得られた遮熱塗料組成物をバーコーター(#60)を用いて、JIS K5600−4−1:1999の4.1.2[方法B(隠ぺい率試験紙)]に規定する白色部及び黒色部を持つ隠ぺい率試験紙上に塗布し、120℃で30分間焼付けて試験片を作製した。得られた試験片の黒色部の反射スペクトルを、分光光度計(機種名:V−570、製造元:日本分光株式会社)を用いて測定した。図1は、実施例1又は比較例6に係る二酸化チタン粒子が用いられた遮熱塗料組成物の反射スペクトルを示す図である。
また、この塗料を1.5milsのアプリケーターでガラス板に塗布し、120℃にて20分間乾燥した後グロスメーター(機種名:VG7000、製造元:日本電色工業製)で60゜−60゜グロス(鏡面光沢)を測定した。実施例1に係る二酸化チタン粒子が用いられた遮熱塗料組成物について測定したところ、89であった。
【0057】
(評価5:酸化アルミニウムの含有量)
実施例1〜実施例23及び比較例1〜比較例6に係る二酸化チタン1gと硫酸アンモニウム10gを精秤し、濃硫酸25mLを加えて、加熱して完全に溶解させた。この溶解液にイオン交換水100mLを液温が50℃を超えないように徐々に加えた後、溶液の体積が250mLとなるようにイオン交換水で希釈した。次に、標準添加法に基づいて、測定用の溶液を作製した。100mLメスフラスコを4本用意し、この溶液をそれぞれに25mLずつ分取した。次に、市販のICP用アルミニウム1000ppm標準液を100倍希釈して得られたアルミニウム10ppm標準液をそれぞれに0mL、1mL、5mL、10mL加えた。そしてそれぞれをイオン交換水で100mLの標線まで希釈した。これら測定用溶液を用いて、ICP発光分光装置(セイコー電子工業製 SPS3000型)の波長396.15nmにおけるアルミニウムの発光強度を測定した。得られた発光強度から検量線を作成し、アルミニウム化合物のAl換算での含有量を算出した。結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
表2に示すように、実施例1〜実施例23に係る二酸化チタン粒子では、BET比表面積が1.0〜4.0m/gの範囲にあった。そのため、これら二酸化チタン粒子は、近赤外線反射率が優れる。図1に示すように実施例1に係る二酸化チタン粒子を用いた遮熱塗料組成物で作製した塗膜の分光反射率を測定すると、近赤外線領域のいずれの波長でも反射率が充分に高かった。
また、粒子径が10μm以上の粗大粒子の割合の評価において、実施例1〜実施例23に係る二酸化チタン粒子では、粒子径が10μm以上の粗大粒子の割合は5.0%未満であった。従って、これら二酸化チタン粒子の分散性は良い。
【0060】
比較例1〜比較例5に係る二酸化チタン粒子では、BET比表面積が1.0〜4.0m/gの範囲にあった。しかし、粒子径が10μm以上の粗大粒子の割合が5.0%以上であった。従って、これら二酸化チタン粒子の分散性は悪い。
そこで、二酸化チタンの分散性を上げるために比較例5と同一組成物を低温で焼成した比較例6では、粒子径が10μm以上の粗大粒子の割合は5.0%未満となった。しかし、比較例6に係る二酸化チタン粒子では、BET比表面積が4.0m/gよりも大きかった。従って、比較例6に係る二酸化チタン粒子は、近赤外線反射率が劣る。
比較例6に係る二酸化チタン粒子を用いた遮熱塗料組成物で作製した塗膜の近赤外線反射率を測定すると、特に1100nm以上の波長での反射率が充分でなかった。
比較例6に係る二酸化チタン粒子のBET比表面積が4.0m/gよりも大きいということは、比較例6に係る二酸化チタン粒子は、実施例1〜23に係る二酸化チタンと比較して平均粒子径が小さいことを意味する。
【0061】
表2に示すように、初期分散性の評価において、実施例1〜実施例23に係る二酸化チタン粒子が用いられた遮熱塗料組成物では、初期分散性が良好であった。
しかし、比較例1〜比較例5に係る二酸化チタン粒子が用いられた遮熱塗料組成物では、初期分散性が不良であった。
【0062】
表2に示すように、実施例1〜実施例23に係る二酸化チタン粒子には、二酸化チタン粒子を製造する際にアルミニウム化合物が含まれていない焼成処理剤を用いていたので、酸化アルミニウムの含有量は0.01wt%未満であった。一方、比較例5及び6に係る二酸化チタン粒子には、二酸化チタン粒子を製造する際に、アルミニウム化合物が含まれている焼成処理剤を用いていたので、酸化アルミニウムの含有量は0.05wt%以上であった。
図1