(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-168631(P2015-168631A)
(43)【公開日】2015年9月28日
(54)【発明の名称】ACE阻害剤の製造方法及びACE阻害剤
(51)【国際特許分類】
A61K 35/56 20150101AFI20150901BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20150901BHJP
【FI】
A61K35/56
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-42919(P2014-42919)
(22)【出願日】2014年3月5日
【新規性喪失の例外の表示】申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】509304933
【氏名又は名称】ワキ製薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】上田 光宏
(72)【発明者】
【氏名】井上 國世
【テーマコード(参考)】
4C087
【Fターム(参考)】
4C087AA01
4C087AA04
4C087AA05
4C087BB11
4C087CA06
4C087CA30
4C087NA14
4C087ZC20
(57)【要約】
【課題】本発明は、ミミズ由来の成分にACE阻害能が存在することを確認し、ミミズからACE阻害活性能を有するACE阻害剤を製造し提供することを目的とする。
【解決手段】ACEの阻害活性を有するACE阻害剤の製造方法において、ミミズ乾燥粉砕物を抽出溶媒に接触させてミミズ抽出液を得る抽出工程(#01)と、抽出工程で得たミミズ抽出液を分子量分画して、分子量5kDa以下の低分子量画分を回収する分子量分画工程(#02)と、を実行して、分子量分画工程(#02)で回収した低分子量画分をACE阻害剤として得る
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ACEの阻害活性を有するACE阻害剤であって、
ミミズ乾燥粉砕物を抽出溶媒に接触させて得たミミズ抽出液のうちの分子量5kDa以下の低分子量画分を主成分とするACE阻害剤。
【請求項2】
請求項1に記載のACE阻害剤の製造方法であって、
ミミズ乾燥粉砕物を抽出溶媒に接触させてミミズ抽出液を得る抽出工程と、
前記抽出工程で得たミミズ抽出液を分子量分画して、分子量5kDa以下の低分子量画分を回収する分子量分画工程と、を実行して、
前記分子量分画工程で回収した低分子量画分をACE阻害剤として得るACE阻害剤の製造方法。
【請求項3】
前記抽出工程が、前記ミミズ乾燥粉砕物を蒸留水に分散させてなる分散液にオートクレーブ処理を施し、当該オートクレーブ処理後の処理液を遠心分離し、当該遠心分離後の上清液を前記ミミズ抽出液として回収する工程である請求項2に記載のACE阻害剤の製造方法。
【請求項4】
前記分子量分画工程で回収した低分子量画分を強陽イオン交換カラムを用いた強陽イオン交換クロマトグラフィーにより分画して、吸着画分を回収する強陽イオン交換クロマトグラフィー工程を実行し、
前記強陽イオン交換クロマトグラフィー工程で回収した吸着画分をACE阻害剤として得る請求項2又は3に記載のACE阻害剤の製造方法。
【請求項5】
前記強陽イオン交換クロマトグラフィー工程で回収した吸着画分をC18逆相シリカゲルカラムを用いた逆相高圧液体クロマトグラフィーにより分画して、保持時間が、6分付近、12分付近、23分付近、25分付近、42分付近、及び、48分付近の少なくとも1つの特定保持時間の活性画分を回収する逆相高圧液体クロマトグラフィー工程を実行し、
前記逆相高圧液体クロマトグラフィー工程で回収した活性画分をACE阻害剤として得る請求項4に記載のACE阻害剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ACE(アンジオテンシン変換酵素)の阻害活性を有するACE阻害剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間には血圧を上げるもしくは上がる作用が存在しており、代表的な機構の一つにレニン−アンジオテンシン系という機構が存在する。レニン−アンジオテンシン系は肝臓で産生されるアンジオテンシノーゲンというタンパク質が腎臓で発現するレニンによって一部分解され、アンジオテンシンIと呼ばれるペプチドに変換される。
アンジオテンシンIが肺で発現する酵素であるアンジオテンシン変換酵素(本願において「ACE」と呼ぶ。)は、血圧を上昇させる重要な酵素であり、この酵素を阻害することで、高血圧症抑制効果を示すことが知られている。このようなACE阻害活性を有する物質(本願において「ACE阻害剤」と呼ぶ。)としては、今までにたくさんの食品・漢方・由来のものが発見されている(例えば特許文献1を参照。)。それらの多くはプロテアーゼによる加水分解物や発酵食品に多く見られる。プロテアーゼ加水分解物としてはサケ、ミルク、ワカメなどがあり、発酵食品としては納豆などがあり、これらのACE阻害剤はほとんどがペプチド成分である。非ペプチド性のACE阻害剤としては、醤油に含まれているニコチアナミン、紅茶などのカテキンなどがある。
【0003】
ミミズは地龍という名で、漢方薬としてよく知られている。中国では、紀元前から生薬として扱われており、食経験が十分な素材といえる。地龍の効能としてよくあげられるものには解熱作用、利尿作用、筋肉・気管支弛緩作用、鎮痛作用、血栓溶解作用、降圧作用などが知られている。
そして、ミミズは、生物の時の利点、食品、餌、薬品としての利点がそれぞれあり、しかも条件さえ整えば、年中増えるので生産が容易という利点が存在する。そして、食用ミミズ凍結乾燥物の健康食品が作られ販売されており(例えば特許文献2を参照。)、ミミズの有用物質の単離、評価が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−306775号公報
【特許文献2】特開2013−183722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ミミズは薬品、健康食品として多くの機能を秘めた生物である。そして、人工的に増殖させるのが容易な生物であり、ミミズの凍結乾燥粉末は一般的に販売されるまでに至っている。また、医療費の増大などから、自身の健康に気を使う人が増えており、健康食品などに頼る人が増えている。
本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、ミミズ由来の成分にACE阻害能が存在することを確認し、ミミズからACE阻害活性能を有するACE阻害剤を製造し提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するための本発明に係るACE阻害剤は、
ACEの阻害活性を有するACE阻害剤であって、
その特徴構成は、
ミミズ乾燥粉砕物を抽出溶媒に接触させて得たミミズ抽出液のうちの分子量5kDa以下の低分子量画分を主成分とする点にある。
【0007】
また、この目的を達成するための本発明に係るACE阻害剤の製造方法は、
上記特徴構成を有する本発明に係るACE阻害剤であって、
その第1特徴構成は、
ミミズ乾燥粉砕物を抽出溶媒に接触させてミミズ抽出液を得る抽出工程と、
前記抽出工程で得たミミズ抽出液を分子量分画して、分子量5kDa以下の低分子量画分を回収する分子量分画工程と、を実行して、
前記分子量分画工程で回収した低分子量画分をACE阻害剤として得る点にある。
【0008】
本発明の発明者らは、鋭意研究により、ミミズ由来の成分にACE阻害能が存在することを発見し、本発明を完成するに至った。
即ち、上記特徴構成によれば、ミミズ乾燥粉砕物を原料として上記抽出工程を実行することでミミズ抽出液を得て、そのミミズ抽出液に対して上記分子量分画工程を実行して分子量5kDaで分画を行えば、分子量5kDa以下の低分子量画分を回収することができる。そして、この低分子量画分については、比較的高いACE阻害活性を発現することが確認でき、これをACE阻害剤として製造し提供することができる。
【0009】
本発明に係るACE阻害剤の製造方法の第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、
前記抽出工程が、前記ミミズ乾燥粉砕物を蒸留水に分散させてなる分散液にオートクレーブ処理を施し、当該オートクレーブ処理後の処理液を遠心分離し、当該遠心分離後の上清液を前記ミミズ抽出液として回収する工程である点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、ミミズ乾燥粉砕物を原料として用い、その粉砕物を蒸留水に分散させてなる分散液にオートクレーブ処理を施せば、ミミズ乾燥粉砕物からの成分抽出を効率良く行うことができる。また、そのオートクレーブ処理後の処理液を遠心分離して上清液をミミズ抽出液として回収すれば、ミミズ乾燥粉砕物の抽出成分を比較的高濃度且つ高純度で分離することができる。
【0011】
本発明に係るACE阻害剤の製造方法の第3特徴構成は、上記第1乃至第2特徴構成の何れかに加えて、
前記分子量分画工程で回収した低分子量画分を強陽イオン交換カラムを用いた強陽イオン交換クロマトグラフィーにより分画して、吸着画分を回収する強陽イオン交換クロマトグラフィー工程を実行し、
前記強陽イオン交換クロマトグラフィー工程で回収した吸着画分をACE阻害剤として得る点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、上述したようにミミズ抽出液に対して分子量分画工程を実行することで分子量5kDa以下の低分子量画分を回収するのに加えて、その低分子量画分に対して上記強陽イオン交換クロマトグラフィー工程を実行して強陽イオン交換クロマトグラフィーによる分画を行うことで、強イオン交換カラムに吸着される吸着画分を回収することができる。そして、この吸着画分については、低分子量画分と比べて一層高いACE阻害活性を発現することが確認でき、これをACE阻害剤として製造することができる。
【0013】
本発明に係るACE阻害剤の製造方法の第4特徴構成は、上記第3特徴構成に加えて、
前記強陽イオン交換クロマトグラフィー工程で回収した吸着画分をC18逆相シリカゲルカラムを用いた逆相高圧液体クロマトグラフィーにより分画して、保持時間が、6分付近、12分付近、23分付近、25分付近、42分付近、及び、48分付近の少なくとも1つの特定保持時間の活性画分を回収する逆相高圧液体クロマトグラフィー工程を実行し、
前記逆相高圧液体クロマトグラフィー工程で回収した活性画分をACE阻害剤として得る点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、上述したようにミミズ抽出液に対して分子量分画工程を実行することで分子量5kDa以下の低分子量画分を回収し、更に、その低分子量画分に対して強陽イオン交換クロマトグラフィー工程を実行することで吸着画分を回収するのに加えて、その吸着画分に対して上記逆相高圧液体クロマトグラフィー工程を実行して逆相高圧液体クロマトグラフィーによる分画を行うことで、上記特定保持時間の活性画分を回収することができる。そして、この活性画分については、低分子量画分並びに吸着画分と比べて一層高いACE阻害活性を発現することが確認でき、これをACE阻害剤として製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ACE阻害剤の製造方法の各工程の流れを示す図
【
図2】濃度とACE阻害活性との関係を示すグラフ図
【
図3】逆相高圧液体クロマトグラフィーで得られるクロマトグラムを示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るACE阻害剤の製造方法及びACE阻害剤の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態のACE阻害剤の製造方法は、ミミズ乾燥粉砕物を原料とし、所定の工程を実行することにより回収された物質を実施例1、実施例2、及び、実施例3のACE阻害剤として得るものである。尚、原料となるミミズ乾燥粉砕物としては、ワキ製薬株式会社が販売するシマミミズ(Eisenia fetida)の凍結乾燥粉砕物を利用した。尚、本実施形態では、原料となるミミズとしてLumbricidae科に属するシマミミズを用いた。
【0017】
尚、各工程の詳細については後述するが、実施例1のACE阻害剤は、所定の抽出工程(#01)及び分子量分画工程(#02)を順に実行することで回収される低分子量画分として得られるものであり、実施例2のACE阻害剤は、このように回収される低分子量画分に対して強陽イオン交換クロマトグラフィー工程(#03)を実行することにより回収される吸着画分として得られるものであり、更に、実施例3のACE阻害剤は、このように回収される吸着画分に対して逆相高圧液体クロマトグラフィー工程(#04)を実行することにより回収される活性画分として得られるものである。
以下、ACE阻害活性の測定方法について説明を加え、続いてACE阻害剤の製造方法に含まれる各工程の詳細について説明する。
【0018】
(ACE阻害活性測定方法)
本実施形態におけるACE阻害活性の測定方法は、以下のとおりである。
ACE阻害活性測定法は、100mM(1M=1mol/L、以下同じ)のホウ酸緩衝液(pH=8.3)にウサギ肺由来ACE(SIGMA A6778−.25UN)を50mU/mLになるように溶解させた溶液20μLに、1MのNaClを30μL、サンプルを10μL添加し、37℃で5分間予備加温を行う。
そして、基質として100mMのホウ酸緩衝液(pH=8.3)に溶解させた6mMのHHL(プリル−ヒスチジル−ロイシン)(SIGMA H4884−100MG)を60μLを加え、反応を開始させる。この反応液を37℃で60分間反応させた後、1MのHClを加え、反応を停止させる。この反応させた溶液をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)に供試し、HA(馬尿酸)を定量する。
【0019】
尚、HPLCの条件は以下に示す。
関東化学株式会社製のHPLCカラム「Mightysil RP−18GP 250−4.6」を使用し、カラム温度は室温とする。移動相はメタノールと10mMのKH
2 PO
4 とが1:1で混合された混合液とし、溶出液流速スピードは0.5mL/minとする。そして、生成物の定量は、228nmの吸光度を検出することで行う。
また、ACE阻害率は以下のように算出する。
阻害率(%)=100(1−A/B)
ここで、Aはサンプルを使用した時のHAピーク面積値とし、Bはサンプルの代わりに100mMのホウ酸緩衝液(pH=8.3)を使用した時のHAピーク面積値とする。
【0020】
〔抽出工程〕
図1に示す抽出工程(#01)では、ミミズ乾燥粉砕物を10倍量の蒸留水に分散させてなる分散液に、121℃、15分間オートクレーブ処理を施す。そして、オートクレーブ処理後の処理液を3000rpm、20分間遠心分離にかけ、上清をミミズ抽出液として回収した。
【0021】
〔分子量分画工程〕
図1に示す分子量分画工程(#02)では、抽出工程(#01)で得たミミズ抽出液を分子量分画して、分子量5kDa以下の低分子量画分を回収する。そして、このようにして回収した低分子量画分を実施例1のACE阻害剤として得る。
具体的に、分子量分画工程(#02)では、ザルトリウス社製の遠心濃縮チューブ「VIVASPIN(登録商標)20,MWCO5,000,PES」を用いて、分子量5kDaでの分画を行い、分子量5kDa以下の低分子量画分及び分子量5kDa超の高分子量画分を夫々回収した。そして、このように回収した低分子量画分及び高分子量画分の夫々について、凍結乾燥し、100mMのホウ酸緩衝液に溶解し、2.5mg/mLの濃度に調製し、ACE阻害活性測定を行なった。
その結果、下記[表1]に示すように、分子量5kDa超の高分子量画分(比較例1)には、ACE阻害活性が確認できなかったのに対し、分子量5kDa以下の低分子量画分(実施例1)には、比較的高いACE阻害活性があることを確認できた。
【0023】
また、5kDa以下の低分子量画分を、25mg/mL、10mg/mL、2.5mg/mL、1mg/mLの濃度に調整し、夫々の濃度でACE阻害活性測定を行なった。
その結果、
図2に示すように、夫々の濃度でACE阻害活性が確認され、具体的に、1mg/mLの濃度でACE阻害率が29.6±0.8%、2.5mg/mLの濃度でACE阻害率が48.2±1.6%、10mg/mLの濃度でACE阻害率が76.8±0.8%、25mg/mLの濃度でACE阻害率が86.9±0.3%と、ACE阻害活性が濃度依存性を有するとともに、2.5mg/mL以上の濃度において実用的なACE阻害活性を発現できることが確認できた。また、濃度が10mg/mLを超えると、ACE阻害活性の濃度依存性が低下することから、ACE阻害剤の使用量削減等を踏まえて、濃度は10mg/mL以下とすることが望ましい。
【0024】
〔強陽イオン交換クロマトグラフィー工程〕
図1に示す強陽イオン交換クロマトグラフィー工程(#03)では、上述した分子量分画工程(#02)で回収した低分子量画分を強陽イオン交換カラムを用いた強陽イオン交換クロマトグラフィーにより分画して、吸着画分を回収する。そして、このようにして回収した吸着画分を実施例2のACE阻害剤として得る。
具体的に、強陽イオン交換クロマトグラフィー工程(#03)では、東ソー株式会社製の強陽イオン交換体「TOYOPEARL(登録商標)SP−650M」を充填した強陽イオン交換カラムを利用した。この強陽イオン交換カラムに分子量分画工程(#02)で回収した低分子量画分を供試し、2Mのアンモニア水による溶出を行うことで、強陽イオン交換体に対する非吸着画分と吸着画分とを夫々回収した。そして、このように回収した非吸着画分と吸着画分の夫々について、ロータリーエバポレーターで濃縮し、凍結乾燥してサンプルを作成し、これら凍結乾燥したサンプルを100mMのホウ酸緩衝液に溶解して、5mg/mLの濃度に調製し、ACE阻害活性測定を行なった。
その結果、下記[表2]に示すように、強陽イオン交換カラムに対する非吸着画分(比較例2)及び吸着画分(実施例2)の両方についてACE阻害活性が確認できたが、吸着画分(実施例2)の方がより高いACE阻害活性があることが確認できた。
【0026】
〔逆相高圧液体クロマトグラフィー工程〕
図1に示す逆相高圧液体クロマトグラフィー工程(#04)では、上述した強陽イオン交換クロマトグラフィー工程(#03)で回収した吸着画分をC18逆相シリカゲルカラムを用いた逆相高圧液体クロマトグラフィーにより分画して、
図3に示すように、大きくピークが出た活性画分、即ち、保持時間が、6分付近(
図3のP1)、12分付近(
図3のP2)、23分付近(
図3のP3)、25分付近(
図3のP4)、42分付近(
図3のP5)、及び、48分付近(
図3のP6)の少なくとも1つの特定保持時間の活性画分を回収する。そして、このようにして回収した活性画分を実施例3のACE阻害剤として得る。
具体的に、逆相高圧液体クロマトグラフィー工程(#04)では、関東化学株式会社製のHPLCカラム「Mightysil RP−18GP 250−4.6」を使用し、カラム温度は室温とした。移動相はmilliQ水(ミリQ水)100%+TFA(トリフルオロ酢酸)0.1%から50分かけてアセトニトリル50%+milliQ水50%+TFA0.1%にグラジエント溶出条件を設定した。
検出吸光度は230nmで行なった。上記HPLCカラムに対し強陽イオン交換カラムに吸着した吸着画分を供試し、
図3に示すように、大きくピークが出た活性画分(
図3のP1〜P6)を回収した。そして、このように回収した活性画分の夫々について、遠心エバポレーターで乾燥させ、それをインジェクションした液量と同量の100mMのホウ酸緩衝液に溶解して、ACE阻害活性測定を行なった。
その結果、下記[表3]に示すように、夫々の活性画分についてACE阻害活性が確認できた。
【0028】
また、逆相高圧液体クロマトグラフィーで回収した活性画分のうち、比較的ピークが大きいものが見られた活性画分P1,P2,P5について、miliQ水をコントロールに使用してニンヒドリンによる染色を行なった。結果、活性画分P1にはペプチド結合の存在が確認されたが、活性画分P2,P5にはペプチド結合が確認されなかった。
このことから、活性画分P1にはペプチドもしくはペプチド類似物質が含まれていることが示唆される。一方、活性画分P2,P5については、吸光度のピークにはペプチド結合が確認できなかったことから、ミミズのタンパク質分解物ではなく、ミミズ自身が持っている物質であると考えられる。
【0029】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0030】
(1)本実施形態では、原料のミミズとしてシマミミズを用いたが、アカミミズなどの健康食品用・薬剤用で用いられる別の種類のミミズを原料として用いてもよい。
【0031】
(2)本実施形態におけるACE阻害剤の製造方法に含まれる各工程の処理条件については適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、ACEの阻害活性を有するACE阻害剤及びその製造方法として好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0033】
#01:抽出工程
#02:分子量分画工程
#03:強イオン交換クロマトグラフィー工程
#04:逆相高圧液体クロマトグラフィー工程