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特開2015-168673フラーレン誘導体およびフラーレン誘導体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-168673(P2015-168673A)
(43)【公開日】2015年9月28日
(54)【発明の名称】フラーレン誘導体およびフラーレン誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 13/68 20060101AFI20150901BHJP
   C07C 2/00 20060101ALI20150901BHJP
   C07C 43/21 20060101ALI20150901BHJP
   C07C 41/30 20060101ALI20150901BHJP
   C07C 25/22 20060101ALI20150901BHJP
   C07C 17/275 20060101ALI20150901BHJP
   C07C 69/757 20060101ALI20150901BHJP
   C07C 67/347 20060101ALI20150901BHJP
【FI】
   C07C13/68CSP
   C07C2/00
   C07C43/21
   C07C41/30
   C07C25/22
   C07C17/275
   C07C69/757 Z
   C07C67/347
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-46930(P2014-46930)
(22)【出願日】2014年3月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100146879
【弁理士】
【氏名又は名称】三國 修
(72)【発明者】
【氏名】安田 浩
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】柳 日馨
(72)【発明者】
【氏名】植田 光洋
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB90
4H006AC28
4H006AD17
4H006BJ10
4H006BJ30
4H006BJ50
4H006BM30
4H006BM72
4H006BP30
4H006EA43
4H006GP03
4H006KA31
(57)【要約】
【課題】新たな四員環を持つフラーレン誘導体およびその製造方法を得ることを目的とする。
【解決手段】本発明のフラーレン誘導体は、下記一般式(1)で表される。
[化1]

(式中、FLNはフラーレン骨格であり、R〜Rはそれぞれ独立に炭素数1〜20の有機基あるいは水素原子であり、前記Rが、芳香族炭化水素基、または一部が置換された芳香族炭化水素基であり、nは1〜5の整数である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるフラーレン誘導体。
【化1】
(式中、FLNはフラーレン骨格であり、R〜Rはそれぞれ独立に炭素数1〜20の有機基あるいは水素原子であり、前記Rが、芳香族炭化水素基、または一部が置換された芳香族炭化水素基であり、nは1〜5の整数である。)
【請求項2】
前記Rの芳香族炭化水素基がアルコキシ基を有する請求項1に記載のフラーレン誘導体。
【請求項3】
フラーレン骨格の炭素数が60〜120である請求項2に記載のフラーレン誘導体。
【請求項4】
nが1である請求項1〜3のいずれか一項に記載のフラーレン誘導体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のフラーレン誘導体の製造方法であって、
フラーレン骨格を有する化合物と下記一般式(2)のアレン誘導体とを、光および/または熱を用いて反応させる工程を有することを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法。
【化2】
(式中、R〜Rはそれぞれ独立に炭素数1〜20の有機基あるいは水素原子であり、前記Rが、芳香族炭化水素基、または一部が置換された芳香族炭化水素基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラーレン誘導体およびフラーレン誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラーレン化合物は、その特異な特性から物理や化学の分野で注目を浴びてきた。特に、1990年のアーク放電による大量合成法が確立されて以来、その研究はより注目を浴びている。フラーレン化合物は、電子材料、半導体、生理活性物質などとして有用な素材であるということが知られており、さらに多様なフラーレン誘導体の開発が望まれている。
【0003】
非特許文献1では、ジメトキシベンジンを4,5−ジメトキシアニリン酸から生成させて、フラーレンに付加する製造方法が記載されている。この製造方法で得られたフラーレン誘導体は、フラーレンに単数または複数のベンゼン環が付加されたものであることが記載されている。
【0004】
また、非特許文献2及び非特許文献3では環状のエノンを光照射によりフラーレンに四員環を導入する製造方法が提案されている。この製造方法では、フラーレンに結合する四員環のα位にカルボニル基を持つ化合物のみが生成されることが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】M.Ohashi.et al.Chem.Lett.,1992,p.2333−2334.
【非特許文献2】D.I.Schuster.et al.J.Am.Chem.Soc.,Vol.115,No18,1993,p.8495−8496.
【非特許文献3】M,Orfanopoulos.et al.J.Org.Chem.,Vol.64,No.10,1999, p.3392−3393.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1の製造方法では、ベンゼン環がフラーレンに結合した化合物しか生成することができなかった。また、この製造方法は工程が複雑であり、生産性に劣るという問題があった。
また非特許文献2および3の製造方法では、フラーレンに結合する四員環のα位にカルボニル基を持つ化合物しか生成することができなかった。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、新たな四員環を持つフラーレン誘導体およびその製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、フラーレン骨格を有する化合物と特定のアレン誘導体とを、熱および/または光により反応させることで、新たな四員環を持つフラーレン誘導体が得られることを見出した。
すなわち、本発明は以下に示す構成を備えるものである。
【0009】
〔1〕下記一般式(1)で表されるフラーレン誘導体。
【化1】
(式中、FLNはフラーレン骨格であり、R〜Rはそれぞれ独立に炭素数1〜20の有機基あるいは水素原子であり、前記Rが、芳香族炭化水素基、または一部が置換された芳香族炭化水素基であり、nは1〜5の整数である。)
〔2〕前記Rの芳香族炭化水素基がアルコキシ基を有する〔1〕に記載のフラーレン誘導体。
〔3〕フラーレン骨格の炭素数が60〜120である〔2〕に記載のフラーレン誘導体。
〔4〕nが1である〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のフラーレン誘導体。
〔5〕〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載のフラーレン誘導体の製造方法であって、フラーレン骨格を有する化合物と下記一般式(2)のアレン誘導体とを、光および/または熱を用いて反応させる工程を有することを特徴とするフラーレン誘導体の製造方法。
【化2】
(式中、R〜Rはそれぞれ独立に炭素数1〜20の有機基あるいは水素原子であり、前記Rが、芳香族炭化水素基、または一部が置換された芳香族炭化水素基である。)
【発明の効果】
【0010】
フラーレン骨格を有する化合物とアレン誘導体とを、光および/または熱を用いて反応させることにより、新規な四員環を持つフラーレン誘導体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態についてその構成を説明する。本発明は、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0012】
[フラーレン誘導体]
本発明のフラーレン誘導体は、下記一般式(1)で表される。式中、FLNはフラーレン骨格であり、R〜Rはそれぞれ独立に炭素数1〜20の有機基あるいは水素原子である。またRが、芳香族炭化水素基、または一部が置換された芳香族炭化水素基であり、nは1〜5の整数である。
なお、本発明において「フラーレン誘導体」とは、これらのフラーレン骨格に対して特定の基が付加した構造を有する化合物を意味し、「フラーレン骨格」とはフラーレン由来の閉殻構造を構成する炭素骨格をいう。
【0013】
【化3】
【0014】
また本発明のフラーレン誘導体は、フラーレン骨格にアレル誘導体が付加され、一般式(1)の構造を有する。そのため、求核攻撃に対して、反応性に乏しく安定性が高い。
同様の4員環構造を有する非特許文献2および3に記載されたフラーレン誘導体は、芳香族炭化水素基を有さないため、カルボニル基の炭素が求核攻撃を受けやすく安定性が低いという問題を有していたが、本発明のフラーレン誘導体は当該問題を解消することができる。
【0015】
また本発明のフラーレン誘導体は、Rが、芳香族炭化水素基、または一部が置換された芳香族炭化水素基のいずれかを有している。そのため立体的に嵩高い置換基により反応が抑制され、安定性が高いという特性を有する。したがって、従来のフラーレン誘導体と比較しても電子材料、半導体、生理活性物質等に好適に用いることができ、高い性能を示すことができる。
【0016】
〜Rはそれぞれ独立であり、炭素数1〜20の有機基あるいは水素原子である。R〜Rはそれぞれが同一のものでもよく、異なるものでもよい。
【0017】
〜Rが有機基である場合、その炭素数は1〜20である。炭素数が20より大きいと、フラーレン骨格に結合する基が嵩高くなってしまい、フラーレン骨格に付加させることが難しくなる。また中でも炭素数は、1〜10であることが好ましい。炭素数が当該範囲であれば、有機溶剤との親和性の制御が容易となる。
【0018】
〜Rに用いられる有機基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基およびイソプロピル基等の直鎖又は分岐の鎖状アルキル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基およびシクロヘキシル基等の環状アルキル基、ビニル基、プロペニル基およびヘキセニル基等の直鎖又は分岐の鎖状アルケニル基、シクロペンテニル基およびシクロヘキセニル基等の環状アルケニル基、エチニル基および1−プロピオニル基等のアルキニル基、フェニル基、ビフェニル基、トルイル基およびナフチル基等のアリール基、ベンジル基およびフェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。また、複素環基であってもよく、例えば、2−チエニル基、2−ピリジル基、フルフリル基等が挙げられる。中でも、アルキル基が好ましく、有機溶剤への溶解が容易となる。
【0019】
またRに用いられる芳香族炭化水素基としては、特に限定するものではないが、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラセニル基及び置換基を有するこれらの基等を用いることができる。中でも、フェニル基が好ましく、安定性が高い。
【0020】
また芳香族炭化水素基が置換基を有する場合は、特に限定されるものではないが、例えばメチル基、エチル基およびブチル基などのアルキル基、フェニル基およびナフチル基などのアリール基、メトキシ基およびエトキシ基などのアルコキシ基、フェノキシ基などのアリールオキシ基、3級アミノ基、フッ素原子などのハロゲン原子、トリメチルシリル基およびトリエトキシシリル基などのシリル基、ヒドロキシ基、チオール基、ブチルチオ基等のアルキルチオ基、フェニルチオ基などのアリールチオ基、アセチル基などのアシル基、アセトキシ基などのカルボニルオキシ基などが挙げられる。中でも、アルコキシ基に置換されていることが好ましく、アレン誘導体とフラーレンの反応が容易であり、生産性に優れている。
【0021】
本発明のフラーレン誘導体中のフラーレン骨格は、炭素数が60〜200のものを用いることができる。具体例としては、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94、C96、C120、C200等が挙げられる。また中でも、フラーレン骨格の炭素数は、60〜120であることが好ましく、より好ましくは60である。炭素数の少ないものの方が純度の高いものを容易に得ることができ、また特にC60は他のフラーレン骨格よりも純度の高いものを容易に得ることができるためである。
【0022】
また本発明のフラーレン誘導体における、nは1〜5である。これは、nが1〜5であれば、平易な条件で合成可能であるためである。またnは1であることが好ましい。nが1であると、半導体として用いたときに、高い性能を発揮する。
【0023】
[フラーレン誘導体の製造方法]
本発明のフラーレン誘導体の製造方法は、フラーレン骨格を有する化合物と下記一般式(2)のアレン誘導体とを、光および/または熱を用いて反応させる工程を有する。式(2)中、R〜Rはそれぞれ独立な炭素数1〜20の有機基あるいは水素原子であり、前記Rが芳香族炭化水素基、または一部が置換された芳香族炭化水素基である。
【0024】
【化4】
【0025】
まず、フラーレン骨格を有する化合物を準備する。フラーレン骨格を有する化合物は、公知の方法(例えばアーク放電を利用した方法)等で得ることができる。
フラーレン骨格を有する化合物は、フラーレン誘導体中のフラーレン骨格と同様のものを用いることができ、C60、C70、C76、C78、C82、C84、C90、C94、C96、C120、C200等を用いることができる。中でもC60がより好ましい。フラーレン骨格を有する化合物がC60の場合、より高い収率でフラーレン骨格を有する化合物にアレン誘導体が付加されたフラーレン誘導体を得ることができる。
【0026】
次にアレン誘導体を準備する。アレン誘導体も公知の方法で得ることができる。
本発明で用いるアレン誘導体は、前記式(2)中のRが、芳香族炭化水素基、または一部が置換された芳香族炭化水素基のいずれかである。芳香族炭化水素基、または一部が置換された芳香族炭化水素基のいずれも有さない場合は、フラーレン骨格を有する化合物にアレン誘導体が付加されたフラーレン誘導体を得ることができない。これは、アレン誘導体の電子供与性が乏しいためと考えられる。
そのため、本発明のフラーレン誘導体の製造方法は、従来の環化付加反応と同様の方法を用いているが、アレン誘導体の一部が芳香族炭化水素基、または一部が置換された芳香族炭化水素基のいずれかであることにより、従来の方法ではフラーレン骨格に付加することができなかったアレン誘導体を付加することを可能にしたものである。
【0027】
またアレン誘導体のRは、芳香族炭化水素基、または一部が置換された芳香族炭化水素基のいずれかであることが好ましい。アレン誘導体のR〜Rの複数が、芳香族炭化水素基、または一部が置換された芳香族炭化水素基のいずれかで置換されていると、フラーレン骨格を有する化合物に複数のアレン誘導体が付加されたフラーレン誘導体(上述のフラーレン誘導体におけるnが2以上のもの)の収率が高くなる。それに伴い、フラーレン骨格を有する化合物に1つのアレン誘導体が付加されたフラーレン誘導体の収率が減少する。
【0028】
またアレン誘導体のR〜Rは、前述のフラーレン誘導体中のR〜Rと同一の炭素数1〜20の有機基あるいは水素原子を用いることができる。中でもR〜Rが、水素原子またはカルボキシル基であることが好ましい。当該R〜Rを有するアレン誘導体を用いると、フラーレン骨格を有する化合物にアレン誘導体が付加されたフラーレン誘導体を高い収率で得ることができ、生産性の面で優れている。
【0029】
次に、用意したフラーレン骨格を有する化合物とアレン誘導体とを溶媒中で混合する。この時の溶媒は特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン、トリメチルベンゼン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンを用いることができる。またアレン誘導体そのものを溶媒として用いることもできる。
【0030】
フラーレン骨格を有する化合物とアレン誘導体との混合比は、フラーレン骨格を有する化合物に対して、1〜1000倍モル量の範囲であることが好ましく、1〜100倍モル量であることがさらに好ましい。1000倍モル量より多くても、反応の制御が困難なため好ましくない。一方で、当該範囲内でアレン誘導体の量を適宜増減することで、フラーレン骨格を有する化合物への付加数を増減させることができる。
【0031】
次に、フラーレン骨格を有する化合物とアレン誘導体とを含む溶媒に、光および/または熱を加える。
光および/または熱を加えると、環化付加反応が生じ、フラーレン骨格を有する化合物にアレン誘導体が付加する。すなわち、フラーレン誘導体が生成される。
環化付加反応とは、π電子系に対して別のπ電子系が付加反応を起こして環を形成する化学反応のことをいう。
【0032】
光のみを加える場合、その反応に用いる光の波長は適宜選択ができ、特に限定はされないが、アレン誘導体が吸収を持つ波長を含むことが好ましい。また光の強度、照射時間はフラーレン骨格を有する化合物、アレン誘導体および合成スケールによって異なる。そのため、特に限定されるものではないが、例えば、下記実施例で示す規模の合成では、反応容器に近接させた15W以上のブラックライトで、12時間以上照射すれば十分に反応が進行する。
【0033】
また熱のみを加える場合、その反応温度は特に限定されるものではないが、40℃以上で溶媒の沸点以下であることが好ましい。40℃より温度が低いと十分に反応が進行しない。また溶媒の沸点以下であると、溶媒が蒸発してしまい安定的な反応の維持をすることが難しい。
【0034】
また光および熱を同時に加える場合は、光のみを加える場合と比較して、光の強度および照射時間は少なくてもよい。また熱のみを加える場合と異なり、反応温度も40℃より低くてもよい。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0036】
アレン誘導体として以下の一般式(3)〜(12)の10種類を準備した。
【0037】
【化5】
【0038】
【化6】
【0039】
【化7】
【0040】
【化8】
【0041】
【化9】
【0042】
【化10】
【0043】
【化11】
【0044】
【化12】
【0045】
【化13】
【0046】
【化14】
【0047】
(実施例1)
フラーレンとしてC60(7.8mg,0.011mmol)と一般式(3)のアレン誘導体(allene 1,72.7mg,0.63mmol)とをベンゼン25mLに溶解し、アルゴンバブリングを5分間行い、脱気を行った後、80℃で12時間還流した。反応後の生成物の割合をHPLCにより定量した。次に、得られた反応溶液を溶媒留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより未反応のアレンを除いた後、分取HPLCを用いて目的物を単離し、目的物をLC−MS(Agilent Tecnologies 6120 Quadrupole LC/MS)、H NMRにより、下記式(13)の化合物が得られたことを確認した。なお、式(13)中、FLNはC60を表し、nは1〜5の整数を示す。
【0048】
【化15】
【0049】
(実施例2)
15Wのブラックライトを反応容器に近接させて光を照射しながら、室温で還流反応を行った以外は、実施例1と同様にして合成を行った。実施例1と同様の方法で、前記式(13)の化合物が得られたことを確認した。
【0050】
(実施例3)
フラーレンとして、C70を用いた以外は実施例1と同様にして合成を行った。実施例1と同様の方法で、前記式(13)の化合物(ただし、式(13)中、FLNはC70である)が得られたことを確認した。
【0051】
(実施例4)
フラーレンとして、C60、C70、および高次フラーレンの混合物を用いた以外は実施例1と同様にして合成を行った。実施例1と同様の方法で、前記式(13)の化合物(ただし、FLNがC60、C70、および高次フラーレンのいずれかの混合物である)が得られたことを確認した。
【0052】
(実施例5〜10)
アレン誘導体として表1に示したように一般式(4)〜(9)のアレン誘導体(allene 2〜7)のいずれか一つずつを用いた以外は、実施例1と同様にして合成を行った。またフラーレン誘導体が得られていることを、実施例1と同様の方法で確認した。
【0053】
(比較例1)
反応温度を室温としたこと以外は、実施例1と同様にして合成した。なお、実施例1は光を照射していないため、比較例1では熱も光も加えていない。実施例1と同様の方法で確認した結果、フラーレン誘導体が得られなかった。
【0054】
(比較例2〜4)
アレン誘導体として表1に示したように一般式(10)〜(12)のアレン誘導体(allene 8〜10)のいずれか一つずつを用いた以外は、実施例1と同様にして合成を行った。実施例1と同様の方法で確認した結果、いずれの場合もフラーレン誘導体が得られなかった。
【0055】
実施例1〜10、および比較例1〜4の各条件における、反応前の原料フラーレンに対する反応後の生成物の割合をHPLCにより定量した結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
比較例1から、光および熱を加えないと付加反応が生じていないことがわかる。また比較例2〜4から、Rが芳香族炭化水素基、または一部が置換された芳香族炭化水素基でないと、付加反応が生じていないことがわかる。またR及びRの二つが芳香族炭化水素である実施例9は、アレン誘導体がフラーレン骨格を有する化合物に多数付加した多付加体の収率が高くなっていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のフラーレン誘導体は、電子材料、半導体、生理活性物質など、様々な分野で用いるのに好適である。