【解決手段】3層以上の多層構造を有するシート状基材と、該シート状基材の片面に設けられた粘着剤層と、該粘着剤層の粘着面を保護する剥離ライナーと、を備える剥離ライナー付き保護シートが提供される。前記シート状基材は、第一層と、該第一層とは異なる材料から形成された第二層と、を含む。また、前記シート状基材の引張弾性率は、1000〜4000MPaの範囲内である。そして、前記剥離ライナー付き保護シートは、60mm×60mmの正方形状の試験片を用いて測定されるカール高さが3mm未満である。
3層以上の多層構造を有するシート状基材と、該シート状基材の片面に設けられた粘着剤層と、該粘着剤層の粘着面を保護する剥離ライナーと、を備える剥離ライナー付き保護シートであって、
前記シート状基材は、第一層と、該第一層とは異なる材料から形成された第二層と、を含み、
前記シート状基材の引張弾性率は、1000〜4000MPaの範囲内であり、
前記剥離ライナー付き保護シートは、60mm×60mmの正方形状の試験片を用いて測定されるカール高さが3mm未満である、剥離ライナー付き保護シート。
前記シート状基材は、第一表面を構成する第一表面層と、該第一表面の反対側の表面(第二面)を構成する第二表面層と、該第一表面層と該第二表面層との間に配置された中間層と、を備える、請求項1または2に記載の保護シート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書における「シート」は、シートより厚さが相対的に薄いとされるフィルムや、一般的に粘着テープと称されるようなテープを包含する。
【0018】
この明細書において「粘着剤」とは、前述のように、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料をいう。ここでいう粘着剤は、「C. A. Dahlquist, “Adhesion : Fundamental and Practice”, McLaren & Sons, (1966) P. 143」に定義されているとおり、一般的に、複素引張弾性率E
*(1Hz)<10
7dyne/cm
2を満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)である。
また、この明細書において「主成分」とは、特記しない場合、50重量%を超えて含まれる成分を指す。
【0019】
<保護シートの構成>
ここに開示される保護シートは、基材と、該基材の一方の表面に設けられた粘着剤層と、を備える。保護シートの形態は、例えばロール状やセパレータ付きの単板状等であってもよい。
【0020】
保護シートの典型的な構成例を
図1に模式的に示す。この保護シート1は、シート状の基材(例えば樹脂製のシート状基材)10と、その一方の面(片面)に設けられた粘着剤層20と、を備える。シート状基材10は、A層11と、B層12と、A層11とB層12とのあいだに配置された中間層15と、の積層構造を有する。A層11は、シート状基材10の一方の表面(第一表面)10Aを構成しており、B層12は、シート状基材10の他方の表面(第二表面。シート状基材において第一表面の反対側の表面)10Bを構成している。シート状基材10の第一表面10Aには粘着剤層20が配置されており、第二表面10Bは保護シート1の外表面となっている。この保護シート1は、その粘着剤層20側の表面を被着体の保護対象部分に貼り付けて使用される。使用前(すなわち被着体への貼付前)の保護シート1は、典型的には
図2に示すように、粘着剤層20の表面(被着体への貼付面。以下、粘着面ともいう。)が、少なくとも粘着剤層20側が剥離面となっている剥離ライナー30によって保護された形態であり得る。あるいは、基材10の背面(第二表面)10Bが剥離面となっており、保護シート10がロール状に巻回されることにより該背面10Bに粘着剤層20が当接してその表面(粘着面)が保護された形態であってもよい。
【0021】
<保護シートの特性>
ここに開示される保護シートは、60mm×60mmの正方形状の試験片のカール高さが10mm以下であることによって特徴づけられる。これによって、保護シートは、例えばロール状で保管された場合であっても、優れた作業性(典型的には貼り合わせ作業性)を発揮する。また、上記のようにカールが抑制された保護シートは、被着体に貼り合わせた後に端部が剥がれる事象が発生し難い。したがって、ここに開示される保護シートを例えば薬液処理用途に適用した場合には、端部剥がれが防止されていることから、端部からの薬液浸入を好適に防ぐことができる。上記カール高さは、5mm未満(例えば3mm未満、典型的には1mm未満)であることが好ましい。カール高さは実質的に0〜0.5mmの範囲内であることが特に好ましい。
【0022】
ここに開示される保護シートが、粘着面を保護する剥離ライナーを備える場合には、剥離ライナーを備える剥離ライナー付き保護シートは、60mm×60mmの正方形状の試験片のカール高さが3mm未満であることによって特徴づけられる。これによって得られる利点は上記のとおりである。上記カール高さは、2mm未満(例えば1mm未満)であることが好ましい。カール高さは実質的に0〜0.5mmの範囲内であることが特に好ましい。
【0023】
上記カール高さは、保護シートまたは剥離ライナー付き保護シートを例えばカットする等して60mm×60mmの正方形サイズとし、これを試験片として用いて、当該試験片を水平面においたときの最大カール高さを測定することにより求められる。具体的には、
図1に示すように、試験片100がカールしている場合は、試験片端部が反り上がるように載置する。通常、試験片の四隅のいずれかがカール高さの最大値hを示すので、上記四隅のカール高さを測定することにより、カール高さの最大値hは得られる。カール高さは、より具体的には後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0024】
ここに開示される好ましい一態様では、保護シートのガラスに対する粘着力(対ガラス粘着力)は0.05N/20mm以上(例えば0.1N/20mm以上、典型的には0.2N/20mm以上)であることが好ましい。上記対ガラス粘着力を示す保護シートは、ガラスに貼り付ける用途に好ましく利用され得る。特に、例えばガラスを薬液処理する際に薬液処理非対象部分を保護する薬液処理用保護シートとして利用する場合に、薬液処理工程中に保護シートが剥離してしまうといった不具合をより好適に防止することができる。上記粘着力は3N/20mm以下(例えば2.5N/20mm以下、典型的には2N/20mm以下)であることが好ましい。これによって、粘着力が高くなりすぎず、例えば薬液処理時における保護目的を達成した後に保護シートを剥離する際に、被着体が破壊される(例えばガラスが割れる、ITO膜等が剥がれる)不具合がより好適に防止される。
【0025】
ガラスに対する粘着力(対ガラス粘着力)は、以下の方法によって測定することができる。測定に供する保護シートを、MD方向を長手方向とする20mm×60mmの方形状にカットして試験片を作製する。この試験片の粘着面をガラス基板に2kgのローラーを1往復させて貼り付ける。これを25℃、RH50%の環境下に30分間保持した後、引張試験機(商品名「テンシロン」、島津製作所社製)を用い、JIS Z0237に準拠して、25℃、RH50%の環境下、剥離角度180°、引張速度300mm/分の条件にて、ガラスに対する180°引き剥がし粘着力を測定する。ガラス基板としては、松浪硝子社製「MICROSLIDE GLASS」(65mm×165mm×1.3mm)を用いることができる。
【0026】
ここに開示される好ましい一態様では、保護シートは、薬液浸入防止性評価において、封止されたpH試験紙のpHの変化が、HF溶液に浸漬してから3時間後において1未満であり得る。この特性を満たす保護シートは、保護対象部分への薬液浸入を充分に防止することができる。上記評価試験において、HF溶液に浸漬してから3時間後におけるpH試験紙の色(pH)が実質的に変化しないことがより好ましい。
【0027】
薬液浸入防止性評価は、下記の方法で測定される。すなわち、保護シートを80mm×30mmのサイズにカットする。次いで、ガラス基板の中央に5mm×5mmサイズのpH試験紙を載置し、このpH試験紙が中央にくるように、上記カットした保護シートをその粘着面が下方となるように重ねて、ハンドローラを一往復させて貼り合わせる。このようにしてpH試験紙を保護シートで完全に封止することにより評価用サンプルを作製する。30分静置した後、プラスチック容器(縦100mm×横100mm×深さ30mm)に、HF20mol%溶液を100mL注入し、このHF溶液中に上記で得た評価用サンプルを浸漬する。上記浸漬から所定時間後(1時間後、3時間後)におけるpH試験紙の色変化(pH変化)を目視で確認し、pHを記録する。上記確認は、ポリエチレン製のピンセットで評価用サンプルをHF溶液から取り出し、十分に水洗した後、50℃で2時間乾燥してから行うものとする。ガラス基板としては、例えば、松浪硝子社製「MICROSLIDE GLASS」(76mm×26mm×1.3mm)を用いればよい。
【0028】
<シート状基材>
保護シートに用いられるシート状基材は多層構造を有する。また、上記多層構造のシート状基材は、第一層と、該第一層とは異なる材料から形成された第二層と、を含む。これによって、単層構造では実現しにくい複数の特性を実現したり、該特性を向上させたりすることができる。シート状基材の層数は、複数の特性をバランスよく向上する観点から、典型的には3層以上(例えば3〜9層)であり、好ましくは3層、4層または5層(より好ましくは3層または5層)である。
【0029】
シート状基材の引張弾性率は、1000〜4000MPaの範囲内である。上記引張弾性率を示すシート状基材は、適度なコシを有するので、貼り付け時における縒れや皺の発生が防止されて貼り合わせ性が向上する。上記引張弾性率は、貼り合わせ性向上の観点から、好ましくは1100MPa以上(例えば1200MPa以上、典型的には1300MPa以上)である。また、被着体表面への追従性の観点から、上記引張弾性率は3800MPa以下(例えば3500MPa以下、典型的には3000MPa以下)とすることが好ましい。上記引張弾性率が2300MPa以下(例えば2100MPa以下、典型的には1500MPa以下)のシート状基材を使用することが特に好ましい。好ましい一態様では、シート状基材は、室温(23℃)におけるMD(Machine Direction)への引張弾性率および同温度におけるTD(Transverse Direction;MDに直交する方向)への引張弾性率の少なくとも一方(例えばMDへの引張弾性率、好ましくは両方)が、上記の引張弾性率を示すものであり得る。
【0030】
シート状基材の引張弾性率は、シート状基材から任意の一方向(例えばMDまたはTD)に沿って所定幅の試験片を切り出し、JIS K7161:1994に準拠して、室温(23℃)にて試験片を引張速度300mm/分の条件で上記一方向に延伸して得られた応力−ひずみ曲線の線形回帰から算出することができる。具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0031】
保護シートに用いられるシート状基材としては、公知のフィルム状やシート状等の基材を適宜選択して使用することができる。シート状基材の材質は特に限定されない。例えば金属材料(アルミニウム等)から形成されたシート状基材、樹脂材料から形成されたシート状基材(樹脂シート基材)、これらの複合材料から形成されたシート状基材(例えば、片面に金属を蒸着したプラスチックシート)等を使用し得る。なお、本明細書において「樹脂シート」とは、典型的には非多孔質の樹脂膜を指し、織布や不織布とは区別される概念である。ここに開示される樹脂シートとしては、無延伸樹脂シートおよび延伸(一軸延伸または二軸延伸)樹脂シートのいずれも使用可能である。
【0032】
ここに開示されるシート状基材に用いられ得る樹脂成分としては、ポリオレフィン系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC)系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリフェニレンサルファイド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリウレタン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素含有樹脂;アクリル系樹脂;等の樹脂成分が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
シート状基材に用いられ得る樹脂成分の好適例として、ポリオレフィン系樹脂およびポリエステル系樹脂が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂は、適度な可撓性を有するので、表面形状追従性に優れる傾向がある。そのため、ここに開示される保護シートを薬液処理用保護シートとして用いる場合には、保護シートの粘着剤と被着体との間に薬液の浸入経路(空隙)を作り難いという利点が得られる。
【0034】
好ましい一態様では、被着体表面への追従性の観点から、シート状基材に用いられ得る樹脂として、ポリオレフィン系樹脂が用いられる。ポリオレフィン系樹脂は、耐酸性にも優れ、酸性薬液の浸入を阻止するうえで有利な材料である。上記酸性薬液としては、例えば、ガラスのエッチングに用いられるフッ酸溶液や、クロムめっき液、硫酸銅めっき液、ニッケルめっき液、酸性無電解ニッケルめっき液、酸性錫めっき液等の酸性のめっき液が挙げられる。
【0035】
ポリオレフィン系樹脂は、例えばα−オレフィンのホモポリマー、2種以上のα−オレフィンの共重合体、1種または2種以上のα−オレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体等であり得る。具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレンプロピレンゴム(EPR)等のエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等を使用することができる。より具体的には、2軸延伸ポリプロピレン、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、2種以上のPEをブレンドしたPE樹脂、PEとPPとをブレンドしたPE/PPブレンド樹脂、各種軟質ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
ポリオレフィン系樹脂の好適例としては、PE系樹脂が挙げられる。PE系樹脂は、可撓性に優れ、段差を有する被着体表面への追従性に優れる傾向がある。上記PE系樹脂は、エチレンを成分とする種々のポリマー(エチレン系ポリマー)を主成分とするものであり得る。1種または2種以上のエチレン系ポリマーから実質的に構成されるPE系樹脂であってもよい。上記エチレン系ポリマーは、エチレンのホモポリマーであってもよく、主モノマーとしてのエチレンに、副モノマーとして他のα−オレフィンを共重合(ランダム共重合、ブロック共重合等)させたものであってもよい。上記α−オレフィンの好適例としては、プロピレン、1−ブテン(分岐1−ブテンであり得る。)、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等の、炭素原子数3〜10のα−オレフィンが挙げられる。例えば、上記副モノマーとしてのα−オレフィンが10重量%以下(典型的には5重量%以下)の割合で共重合されたエチレン系ポリマーを主成分とするPE系樹脂を好ましく採用し得る。
【0037】
また、重合性官能基に加えて別の官能基を有するモノマー(官能基含有モノマー)とエチレンとのコポリマーを含むPE系樹脂や、かかる官能基含有モノマーをエチレン系ポリマーに共重合させたPE系樹脂等であってもよい。エチレンと官能基含有モノマーとのコポリマーとしては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸(すなわち、アクリル酸および/またはメタクリル酸)共重合体が金属イオンで架橋されたもの等が挙げられる。
【0038】
PE系樹脂の密度は特に限定されず、表面追従性等の観点から、例えば0.90〜0.94g/cm
3程度であり得る。好ましいPE系樹脂として、LDPEおよびLLDPEが挙げられる。上記PE系樹脂は、1種または2種以上のLDPEと、1種または2種以上のLLDPEとを含むものであってもよい。
【0039】
ポリオレフィン系樹脂の他の好適例として、PP系樹脂が挙げられる。上記PP系樹脂は、プロピレンを主モノマー(主構成単量体、すなわち単量体全体の50重量%を超える成分)とする種々のポリマー(プロピレン系ポリマー)であり得る。ここでいうプロピレン系ポリマーの概念には、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン等のホモポリプロピレン;プロピレンと他のα−オレフィン(典型的には、エチレンおよび炭素原子数4〜10のα−オレフィンから選択される1種または2種以上)とのランダム共重合体(ランダムポリプロピレン);プロピレンに他のα−オレフィン(典型的には、エチレンおよび炭素原子数4〜10のα−オレフィンから選択される1種または2種以上)をブロック共重合した共重合体(ブロックポリプロピレン);等が含まれる。
【0040】
上記PP系樹脂は、樹脂成分のうちの主成分が上述のようなプロピレン系ポリマーであり、副成分として他のポリマーがブレンドされた樹脂(PP樹脂)であり得る。上記他のポリマーは、プロピレン以外のα−オレフィン、例えば炭素原子数2または4〜10のα−オレフィンを主モノマー(主構成単量体、すなわち単量体全体の50重量%を超える成分)とするポリオレフィンの1種または2種以上であり得る。上記PP樹脂は、上記副成分として少なくともPEを含む組成であり得る。PEの含有量は、例えばPP100重量部当たり3〜50重量部(典型的には5〜30重量部)とすることができる。樹脂成分が実質的にPPとPEとからなるPP樹脂であってもよい。また、副成分として少なくともPEとEPRとを含むPP樹脂(例えば樹脂成分が実質的にPPとPEとEPRとからなるPP樹脂)であってもよい。この場合、EPRの含有量は例えばPP100重量部当たり3〜50重量部(典型的には5〜30重量部)とすることができる。
【0041】
また、保護シート(例えば薬液処理用保護シート)に好適な可撓性とコシを付与する観点から、シート状基材に用いられ得る樹脂として、ポリエステル系樹脂を用いることが好ましい。ポリエステル系樹脂を使用することにより、所定の引張弾性率を示すシート状基材が好適に実現される。ポリエステル系樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、PET系樹脂が好ましい。
【0042】
シート状基材を構成する層の少なくとも一層は、樹脂材料から構成された樹脂層であることが好ましい。シート状基材を構成する複数の層(例えば2層または3層以上、典型的には第一層や第二層、A層、B層、中間層)が樹脂層であることがより好ましく、シート状基材を構成する全ての層が樹脂層であることがさらに好ましい。樹脂材料としては、目的に応じて、上述したもののなかの1種または2種以上を適宜選択して使用することができる。
【0043】
ここに開示されるシート状基材は、上記ポリオレフィン系樹脂(例えばPE系樹脂)を主成分として含む樹脂材料から形成されたポリオレフィン系樹脂層(例えばPE系樹脂)を含むことが好ましい。上記樹脂材料におけるポリオレフィン系樹脂(例えばPE系樹脂)の割合は、好ましくは70重量%以上(例えば90重量%以上、典型的には95〜100重量%)である。なお、ポリオレフィン系樹脂層は、当該樹脂層の作用を著しく損なわない範囲でポリオレフィン系樹脂以外の樹脂成分を含有してもよく、上記ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂成分を実質的に含まなくてもよい。
【0044】
ここに開示されるシート状基材は、ポリエステル系樹脂(例えばPET系樹脂)を主成分として含む樹脂材料から形成されたポリエステル系樹脂層(例えばPET系樹脂)を含むことが好ましい。これにより、所定の引張弾性率を示すシート状基材が好適に実現される。上記樹脂材料におけるポリエステル系樹脂の割合は、好ましくは70重量%以上(例えば90重量%以上、典型的には95〜100重量%)である。なお、ポリエステル系樹脂層は、当該樹脂層の作用を著しく損なわない範囲でポリエステル系樹脂以外の樹脂成分を含有してもよく、上記ポリエステル系樹脂以外の樹脂成分を実質的に含まなくてもよい。
【0045】
ここに開示されるシート状基材は、段差追従性を向上する観点から、樹脂成分(ポリマー成分)の主成分がPVCである樹脂材料から形成されたPVC系樹脂層を含んでもよい。
【0046】
また、ここに開示されるシート状基材は、例えばオレフィン系ポリマーアロイと、分子骨格中にカルボニル(C=O)単位を含む熱可塑性樹脂(カルボニル単位含有熱可塑性樹脂)とを含有する層を含んでもよい。上記ポリマーアロイは、例えば2段以上の多段重合により重合された多段重合オレフィン共重合体(好ましくはエチレン/プロピレン共重合体)であり得る。上記カルボニル単位含有熱可塑性樹脂は、例えばエチレン/ビニルエステル系共重合体(例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体)、エチレン/不飽和カルボン酸系共重合体(例えばエチレン−アクリル酸共重合体)およびそれらの金属塩であり得る。上記樹脂材料は、無機系難燃剤を含有するものであり得る。
【0047】
シート状基材(典型的には、シート状基材の各層)には、保護シート(例えば薬液処理用保護シート)の基材に用いられ得る公知の添加剤を必要に応じて含有させることができる。例えば、ラジカル捕捉剤や紫外線吸収剤等の光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色剤(染料、顔料等)、充填材、可塑剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤等の添加剤を適宜配合することができる。これら添加剤は、それぞれ1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。添加剤の配合量は、保護シートの用途(例えば薬液処理用途)に応じて、当該用途においてシート状基材に用いられる樹脂材料における通常の配合量と同程度とすることができる。
【0048】
ここに開示される技術は、例えば、シート状基材を構成する第一層がポリオレフィン系樹脂(例えばPE系樹脂)を含む樹脂材料からなる層であり、第二層がポリエステル系樹脂(例えばPET樹脂)を含む樹脂材料からなる層である態様で好ましく実施され得る。
【0049】
好ましい一態様では、シート状基材は、A層と、B層と、A層とB層とのあいだに配置された中間層と、を備える構成を有する。A層、B層および中間層は、それぞれ上述した樹脂材料から形成された層であり得る。
【0050】
A層を構成する樹脂材料は、被着体表面への追従性や保護特性(典型的には薬液浸入防止性)の観点から、ポリオレフィン系樹脂(より好ましくはPE系樹脂)を含むことが好ましい。典型的には、A層はポリオレフィン系樹脂層(より好ましくはPE系樹脂層)であり得る。また、被着体表面への追従性等を好適に発揮する観点から、上記A層は、シート状基材の第一表面を構成する層(第一表面層)であることが好ましい。その場合、上記A層の表面には、粘着剤層が配置され得る。
【0051】
A層(例えば第一表面層)の引張弾性率は、特に限定されないが、凡そ50MPa以上(例えば100MPa以上、典型的には150MPa以上)であり、凡そ5000MPa以下(例えば4200MPa以下、典型的には4000MPa以下)であることが適当である。A層の引張弾性率は、表面形状追従性の観点から、凡そ1000MPa以下(例えば600MPa以下、典型的には300MPa以下)であってもよい。A層の引張弾性率は、A層から任意の一方向(好ましくはMD)に沿って所定幅の試験片を切り出し、JIS K7161:1994に準拠して、室温(23℃)にて試験片を引張速度300mm/分の条件で上記一方向に延伸して得られた応力−ひずみ曲線の線形回帰から算出することができる。具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定される。後述のB層および中間層についても同様である。
【0052】
A層(例えば第一表面層)の厚さは、取扱い性や保護特性(例えば薬液浸入防止性)、被着体表面への追従性等の観点から、5〜300μm(例えば10〜150μm、典型的には15〜80μm)程度であることが好ましい。
【0053】
B層を構成する樹脂材料も、被着体表面への追従性や保護特性(典型的には薬液浸入防止性)の観点から、ポリオレフィン系樹脂(より好ましくはPE系樹脂)を含むことが好ましい。典型的には、B層はポリオレフィン系樹脂層(より好ましくはPE系樹脂層)であり得る。また、薬液浸入防止性等の保護特性を好適に発揮する観点から、上記B層は、シート状基材の第二面(第一表面の反対側の表面)を構成する層(第二表面層)であることが好ましい。その場合、シート状基材の第二表面は保護シートの外表面を構成し得る。例えば、保護シートを薬液処理用保護シートとして利用する場合には、上記第二表面層をポリオレフィン系樹脂(例えばPE系樹脂)を含む樹脂材料から構成することで、薬液(典型的には酸性薬液)の浸入を保護シートの外表面で好適に阻止することができる。
【0054】
B層(例えば第二表面層)を構成する樹脂は、A層(例えば第一表面層)を構成する樹脂と同種であることが好ましい。これにより、作業性(典型的には貼り合わせ作業性)がより向上する。被着体表面への追従性や保護特性(典型的には薬液浸入防止性)の観点から、A層(例えば第一表面層)およびB層(例えば第二表面層)を構成する樹脂は、ポリオレフィン系樹脂であることが好ましく、PE系樹脂であることがさらに好ましい。また、優れた作業性(典型的には貼り合わせ作業性)をより好適に実現する観点から、A層(例えば第一表面層)を構成する樹脂材料は、B層(例えば第二表面層)を構成する樹脂材料と同種(典型的には同一組成)であることが好ましい。
【0055】
B層(例えば第二表面層)の引張弾性率は、特に限定されないが、凡そ50MPa以上(例えば100MPa以上、典型的には150MPa以上)であり、凡そ5000MPa以下(例えば4200MPa以下、典型的には4000MPa以下)であることが適当である。上記引張弾性率は、表面形状追従性の観点から、凡そ1000MPa以下(例えば600MPa以下、典型的には300MPa以下)であってもよい。
【0056】
B層(例えば第二表面層)の厚さは、取扱い性や保護特性(例えば薬液浸入防止性)、被着体表面への追従性等の観点から、5〜300μm(例えば10〜150μm、典型的には15〜80μm)程度であることが好ましい。B層が保護シートの外表面を構成する第二表面層である場合、B層による保護特性(例えば薬液浸入防止性)を好適に発揮させる観点から、上記厚さは20μm以上(例えば35μm以上、典型的には50μm以上)であることがより好ましい。
【0057】
好ましい一態様では、作業性(典型的には貼り合わせ作業性)の観点から、A層(例えば第一表面層)の引張弾性率E
1LとB層(例えば第二表面層)の引張弾性率E
2Lとの比(E
1L:E
2L)は、1:0.5〜1:2の範囲内である。上記比(E
1L:E
2L)は、好ましくは1:0.7〜1:1.4(例えば1:0.9〜1:1.1、典型的には1:0.95〜1:1.05)の範囲内である。
【0058】
好ましい一態様では、作業性(典型的には貼り合わせ作業性)の観点から、B層(例えば第二表面層)の厚さT
2Lに対するA層(例えば第一表面層)の厚さT
1Lの比(T
1L/T
2L)は、0.5〜2の範囲内である。比(T
1L/T
2L)は、好ましくは0.7〜1.3(例えば0.9〜1.1、典型的には0.95〜1.05)の範囲内である。B層が保護シートの外表面を構成する第二表面層である場合、B層による保護特性(例えば薬液浸入防止性)を好適に発揮させる観点から、上記比(T
1L/T
2L)を0.8以下(例えば0.7以下)とすることも好ましい。
【0059】
中間層を構成する樹脂材料は、所定の引張弾性率を示す保護シートを得る観点から、ポリエステル系樹脂を含むことが好ましく、PET系樹脂を含むことがさらに好ましい。好ましい一態様では、中間層はポリエステル系樹脂層(例えばPET系樹脂層)である。
【0060】
中間層の引張弾性率は、特に限定されないが、凡そ50MPa以上(例えば100MPa以上、典型的には150MPa以上)であり、凡そ5000MPa以下(例えば4200MPa以下、典型的には4000MPa以下)であることが適当である。引張弾性率は、貼り合わせ性等の観点から、凡そ500MPa以上(例えば1200MPa以上、典型的には2200MPa以上)であってもよい。好ましい一態様では、中間層の引張弾性率は、凡そ2500MPa以上(より好ましくは2800MPa以上、例えば3200MPa以上、典型的には3500MPa以上)である。中間層の引張弾性率を上記の範囲とすることで、シート状基材の引張弾性率も好適な範囲となり得る。
【0061】
また、中間層の引張弾性率を調整(典型的には高める)ことでシート状基材の引張弾性率を所定の範囲とする場合には、中間層の引張弾性率と他の層(例えばA層やB層)の引張弾性率との差は100MPa以上(例えば800MPa以上、典型的には2200MPa以上)であってもよい。これにより、中間層以外の他の層(例えばA層やB層)に、例えば、低引張弾性率ではあるが他の特性(例えば薬液浸入防止性)に優れる材料を採用しやすくなる。
【0062】
中間層の厚さは、貼り合わせ性や取扱い性等の観点から、3〜300μm(例えば10〜150μm、典型的には30〜80μm)程度であることが好ましい。
【0063】
ここに開示されるシート状基材は、上記A層、B層、中間層に加えて、それらとは異なる追加の層をさらに含んでもよい。上記追加の層は、特に限定されず、シート状基材に採用され得る上述の材料の1種または2種以上から構成された層であり得る。上記追加の層の配置箇所も特に限定されず、例えば、A層(例えば第一表面層)と中間層との密着性や、B層(例えば第二表面層)と中間層との密着性、さらにはシート状基材への粘着剤層の投錨性、を高めるために、それらの間に配置される層(例えば下塗り層、接着剤層)であり得る。さらには、例えば薬液浸入防止性等の表面保護の目的で、シート状基材の外表面に配置される層も追加の層となり得る。
【0064】
多層構造のシート状基材(例えば樹脂シート)は、従来公知の一般的なシート成形方法(押出成形、インフレーション成形等)および積層方法(共押出し法、ドライラミネート法、ホットメルト法)を適宜採用して製造することができる。好ましい一態様では、ドライラミネート法によって多層構造のシート状基材は作製され得る。ドライラミネート法によってシート状基材を積層する場合には、ドライラミネート用接着剤として、ポリエステル系やウレタン系、ゴム系の接着剤を用いることができる。上記接着剤の具体例としては、例えば、東洋モートン社製の商品名「TM−250HV/CAT−RT86−L60」、商品名「TM−569/CAT−RT37−0.8K」、三井化学社製の商品名「タケラックシリーズ」や「タケネートシリーズ」、大日精化工業社製の商品名「セイカボンドシリーズ」等の二液硬化型のドライラミネート用接着剤が挙げられる。あるいは、耐薬液性を有する粘着テープと各層(例えばA層、B層、中間層)とを貼りあわせることによっても、多層構造のシート状基材を得ることができる。上記粘着テープは、耐薬液性を有するものであれば特に限定されないが、支持基材の少なくとも一方の面(好ましくは片面)に粘着剤層を有するものが好適である。支持基材としては、上述のシート状基材に用いられ得る材料(典型的には樹脂成分)から形成されたものを用いることができる。この支持基材は、シート状基材を構成する層(例えばA層、B層、中間層)ともなり得る。また、粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に限定されないが、例えば後述のアクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が好ましく用いられ得る。
【0065】
シート状基材のうち粘着剤層が設けられる側の表面(粘着剤層側表面、粘着剤を塗付する面)には、該粘着剤層との接着性を向上させるための処理(粘着剤の投錨性を得るための処理)として、例えばコロナ放電処理、酸処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、下塗剤(プライマー)塗付等の表面処理が施されていてもよい。シート状基材のうち上記粘着剤層側表面とは反対側の面(背面)には、必要に応じて帯電防止処理、剥離処理等の表面処理が施されていてもよい。剥離処理としては、例えば基材の粘着剤と接しない面(粘着剤層側表面の反対側表面)に長鎖アルキル系、シリコーン系の剥離処理層を設けることで、保護シートの巻戻し力を軽くすることができる。例えば、粘着剤層の表面(粘着面)をシート状基材の背面に当接させることで保護シートの使用時まで粘着面を保護する形態の保護シートでは、上記シート状基材の背面の算術平均表面粗さは0.05〜0.75μm(例えば凡そ0.05〜0.5μm、典型的には凡そ0.1〜0.3μm)であることが好ましい。これによって、保護シートの使用時まで粘着剤表面(粘着面)の平滑性を高く維持することができ、粘着剤と被着体との界面からの薬液浸入を好適に防止することができる。
【0066】
また、シート状基材のうち粘着剤層が設けられる側の表面は、粘着剤層の表面状態(粘着面の表面粗さ)に影響を及ぼさない程度(すなわち、粘着面の算術平均表面粗さを上昇させる要因とならない程度)の平滑性を有することが好ましい。例えば、シート状基材の粘着剤層側表面の算術平均表面粗さは1μm以下であることが好ましく、0.05〜0.75μm(例えば凡そ0.05〜0.5μm、典型的には凡そ0.1〜0.3μm)であることがより好ましい。これにより、粘着面の平滑性も高くなり、当該粘着面と被着体との界面から薬液が浸入するような不具合の発生が防止される。
【0067】
シート状基材の総厚さは、使用する樹脂シートの可撓性(硬度)等に応じて適宜選択することができる。被着体表面への追従性等の観点から、通常は、シート状基材の総厚さは500μm以下が適当であり、好ましくは300μm以下であり、より好ましくは200μm以下である。また、剥離作業性その他の取扱い性(ハンドリング性)の観点から、上記総厚さは、10μm以上が適当であり、好ましくは50μm以上であり、より好ましくは90μm以上(例えば100μm以上、典型的には130μm以上)である。シート状基材の総厚さが大きくなると、保護シート表面からの薬液の浸入を防ぎやすくなる傾向にある。
【0068】
<粘着剤層>
シート状基材上に設けられる粘着剤層を構成する粘着剤の種類は特に限定されない。例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤(天然ゴム系、合成ゴム系、これらの混合系等)、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤等の公知の各種粘着剤から選択される1種または2種以上の粘着剤であり得る。なかでも、粘着特性や薬液浸入防止性等の観点から、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤が好ましい。
【0069】
好ましい一態様では、粘着剤層を構成する粘着剤は、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを含有するアクリル系粘着剤である。なお、粘着剤の「ベースポリマー」とは、該粘着剤に含まれるゴム状ポリマーの主成分をいう。上記ゴム状ポリマーとは、室温付近の温度域においてゴム弾性を示すポリマーをいう。上記アクリル系ポリマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含み、該主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含み得るモノマー成分の重合物が好ましい。ここで主モノマーとは、上記モノマー成分におけるモノマー組成の50重量%超を占める成分をいう。
【0070】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば下記式(1)で表される化合物を好ましく用いることができる。
CH
2=C(R
1)COOR
2 (1)
ここで、上記式(1)中のR
1は水素原子またはメチル基である。また、R
2は炭素原子数1〜20の鎖状アルキル基(以下、このような炭素原子数の範囲を「C
1−20」と表すことがある。)である。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、R
2がC
1−14(例えばC
2−12、典型的にはC
4−8)の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、R
1が水素原子でR
2がC
4−8の鎖状アルキル基であるアルキルアクリレート(以下、単にC
4−8アルキルアクリレートともいう。)がより好ましい。上記R
2がC
1−20の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましいアルキル(メタ)アクリレートとして、n−ブチルアクリレート(BA)および2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が挙げられる。
【0071】
より好ましい一態様では、上記式(1)中のR
2が炭素原子数6以上(例えば7以上、典型的には8以上)のアルキル基であるモノマーを用いることができる。このモノマーは、アルキル基の炭素原子数が比較的多いので疎水性が高く、薬液(特に、フッ酸溶液等の酸性溶液)浸入防止性に優れる。例えば、R
2がヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、2−エチルヘキシル基、プロピルヘキシル基、ラウリル等であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。特に好ましいアルキル(メタ)アクリレートとして2EHAが挙げられる。
【0072】
全モノマー成分中における主モノマーの配合割合は70重量%以上(例えば85重量%以上、典型的には90重量%以上)であることが好ましい。主モノマーの配合割合の上限は特に限定されないが、99.5重量%以下(例えば99重量%以下)とすることが好ましい。ここに開示される技術は、アルキル(メタ)アクリレートとして、上記式(1)で表されるアルキル(メタ)アクリレートのうち、炭素原子数7以下のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの割合が15重量%以下(例えば10重量%以下、典型的には5重量%以下)である態様でも好ましく実施され得る。アクリル系ポリマーのモノマー組成は、上記R
2がC
1−7のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートを実質的に含まない組成であってもよい。
【0073】
主モノマーであるアルキル(メタ)アクリレートと共重合性を有する副モノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入したり、アクリル系ポリマーの凝集力を高めたりするために役立ち得る。副モノマーとして、例えばカルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、ケト基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー、アルコキシシリル基含有モノマー、イミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等の官能基含有モノマーの1種または2種以上を使用することができる。例えば、凝集力向上の観点から、上記副モノマーとしてカルボキシ基含有モノマーおよび/または水酸基含有モノマーが共重合されたアクリル系ポリマーが好ましい。上記カルボキシ基含有モノマーの好適例としては、アクリル酸、メタクリル酸等が例示される。上記水酸基含有モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類や不飽和アルコール類等が挙げられる。なかでも、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)がより好ましい。
【0074】
上記副モノマーの量は、所望の凝集力が実現されるように適宜選択すればよく、特に限定されない。通常は、凝集力と他の粘着特性(例えば粘着力)とをバランス良く両立させる観点から、副モノマーの量は、アクリル系ポリマーの全モノマー成分中の0.5重量%以上とすることが適当であり、好ましくは1重量%以上である。また、副モノマーの量は、全モノマー成分中の30重量%以下が適当であり、好ましくは10重量%以下(例えば5重量%以下)である。
【0075】
ここに開示されるアクリル系ポリマーには、本発明の効果を顕著に損なわない範囲で、上記以外のモノマー(共重合可能なその他のモノマー)が共重合されていてもよい。上記その他のモノマーは、例えば、アクリル系ポリマーのガラス転移温度の調整、粘着性能(例えば剥離性)の調整等の目的で使用することができる。例えば、粘着剤の凝集力や耐熱性を向上させ得るモノマーとして、酢酸ビニル等のビニルエステル類、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、芳香族ビニル化合物等が挙げられる。また、アクリル系ポリマーの架橋処理等を目的として、多官能性モノマーを共重合性成分として用いてもよい。これらその他のモノマーは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記その他のモノマーの量は、目的および用途に応じて適宜選択すればよく特に限定されないが、例えば、アクリル系ポリマーの全モノマー成分中の30重量%以下(例えば20重量%以下、典型的には10重量%以下)とすることが適当である。
【0076】
アクリル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法等の、アクリル系ポリマーの合成手法として知られている各種の重合方法を適宜採用することができる。なかでも、耐水性および薬液浸入防止性の観点から、溶液重合法を好ましく用いることができる。溶液重合を行う際のモノマー供給方法や重合温度は、目的や使用材料等に応じて適宜選択すればよい。溶液重合に用いる溶媒(重合溶媒)の好適例としては、トルエン等の芳香族化合物類(典型的には芳香族炭化水素類)や、酢酸エチル等の脂肪族または脂環式炭化水素類、アセチルアセトン等のケトン類等が挙げられる。重合に用いる開始剤は、重合方法の種類に応じて、従来公知の重合開始剤から適宜選択することができる。例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−2−メチルプロピオニトリル等のアゾ系重合開始剤の1種または2種以上を好ましく使用し得る。重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、全モノマー成分100重量部に対して0.005〜1重量部程度の範囲から選択することができる。
【0077】
ここに開示される粘着剤層(粘着剤からなる層)は、水系粘着剤組成物、溶剤型粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物から形成された粘着剤層であり得る。水系粘着剤組成物とは、水を主成分とする溶媒(水系溶媒)中に粘着剤(粘着剤層形成成分)を含む形態の粘着剤組成物のことをいい、典型的には、水分散型粘着剤組成物(粘着剤の少なくとも一部が水に分散した形態の組成物)等と称されるものが含まれる。また、溶剤型粘着剤組成物とは、有機溶媒中に粘着剤を含む形態の粘着剤組成物のことをいう。ここに開示される技術は、粘着特性等の観点から、溶剤型粘着剤組成物から形成された粘着剤層を備える態様で好ましく実施され得る。
【0078】
好ましい一態様では、粘着剤層を形成するために用いられる粘着剤組成物は架橋剤を含む。架橋剤の種類は特に制限されず、従来公知の架橋剤から適宜選択して用いることができる。そのような架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。密着性と軽剥離性とを高度に両立し得ることから、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤が好ましい。イソシアネート系架橋剤は、水酸基と好適に架橋することができ、また貯蔵性に優れるため取扱いがしやすく、耐酸性にも優れるという利点がある。上記粘着剤組成物に含まれる架橋剤の量は特に限定されないが、上記アクリル系ポリマー100重量部に対し、凡そ0.01〜10重量部程度(例えば0.1〜7重量部、典型的には0.5〜5重量部)とすることが適当である。
【0079】
上記粘着剤組成物は架橋促進剤をさらに含んでもよい。架橋促進剤の種類は、使用する架橋剤の種類に応じて適宜選択することができる。なお、本明細書において架橋促進剤とは、架橋剤による架橋反応の速度を高める触媒を指す。かかる架橋促進剤としては、例えばジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、テトラ−n−ブチル錫、トリメチル錫ヒドロキシド等の錫(Sn)含有化合物;N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミンやトリエチルアミン等のアミン類、イミダゾール類等の窒素(N)含有化合物;が例示される。なかでも、Sn含有化合物が好ましい。上記粘着剤組成物に含まれる架橋促進剤の量は、上記アクリル系ポリマー100重量部に対し、例えば0.001〜0.5重量部程度(好ましくは0.001〜0.1重量部程度)とすることができる。
【0080】
また、保護時(例えば薬液処理時)のシール性と保護後(例えば薬液処理後)の剥離性とを両立するため、保護シートを貼り付けた後、放射線・熱等の処理(粘着力低下処理)により粘着剤の粘着力が低下する粘着剤組成物を用いてもよい。そのような粘着剤組成物としては、例えばアクリル系ポリマーの側鎖、主鎖中または主鎖末端に炭素−炭素二重結合を導入した内在型の放射線・熱硬化型粘着剤組成物が挙げられる。上記放射線・熱硬化型粘着剤組成物は、該組成物を用いて形成した粘着剤層を備える保護シートを被着体に貼り付け、その後、放射線照射・加熱により硬化させることで粘着力を低下させることができる。また、紫外線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した添加型の放射線硬化型粘着剤組成物を使用することも可能である。当該放射線硬化型(典型的には紫外線硬化型)の粘着剤組成物には、光重合開始剤を含有させることが好ましい。
【0081】
さらに、加熱により発泡または膨張する成分を含有させ、所定の温度で粘着剤を膨張させ粘着力を低下させるような粘着剤組成物も好適例として挙げられる。そのような粘着剤組成物としては、例えばイソブタン、プロパン等の加熱により容易にガス化する物質を、弾性を有する殻内に内包させた熱膨張性微小球(例えば、商品名「マイクロスフィア」、松本油脂製薬社製等)を配合したものが挙げられる。さらに、アクリル系ポリマーの主鎖を構成する主モノマーとして炭素数12以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを使用することにより、粘着剤を結晶化させて加熱により粘着力を低減するような構成を採用することも可能である。
【0082】
上記粘着剤組成物は、必要に応じて、ロジン系樹脂等の粘着付与剤、剥離調整剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、レベリング剤、可塑剤、充填材、着色剤(顔料、染料等)、pH調整剤、分散剤、安定剤、防腐剤、老化防止剤等の、粘着剤の分野において一般的に使用される各種添加剤を必要に応じてさらに含有してもよい。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用すればよい。
【0083】
ここに開示される粘着剤層は、従来公知の方法によって形成することができる。粘着剤組成物の塗付は、例えばグラビアロールコーター等の慣用のコーターを用いて行うことができる。架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、粘着剤組成物の乾燥は加熱下で行うことが好ましい。粘着剤組成物が塗付される支持体の種類にもよるが、例えば凡そ40℃〜150℃程度の乾燥温度を採用することができる。乾燥後、架橋反応がさらに進むようにエージング処理を施してもよい。なお、ここに開示される粘着剤層は典型的には連続的に形成されるが、このような形態に限定されるものではなく、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。
【0084】
粘着剤層の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜調整することができる。粘着剤層の厚さは、例えば1〜100μm程度であり得る。被着体表面との密着性の観点から好適な厚さは3μm以上(例えば5μm以上、典型的には10μm以上)である。また、剥離作業性の観点から、粘着剤層の厚さは40μm以下(典型的には30μm以下)が好ましい。粘着剤層の厚さが大きすぎないことは、粘着剤の膨潤による薬液浸入を抑制する観点からも好ましい。
【0085】
保護シートを構成する粘着剤のゲル分率は特に限定されず、例えば20重量%以上(例えば25重量%以上、典型的には30重量%以上)であり得る。これにより、保護シートの外縁からの薬液浸入防止性が向上する。また、粘着剤の凝集力が高まり、保護シートを剥離する際に糊残り等の汚染が発生しにくくなる。ゲル分率の上限は特に限定されないが、凡そ80重量%以下(例えば70重量%以下、典型的には60重量%未満)であり得る。ゲル分率が高すぎると、粘着剤の構成によっては被着体表面との密着性が低下しやすくなり、粘着剤と被着体との界面からの薬液浸入が起こりやすくなることがあり得る。ゲル分率は、アクリル系ポリマーの共重合組成(例えば、官能基含有モノマーや多官能性モノマーの使用)や分子量、架橋剤その他の添加剤等により調節することができる。
【0086】
ゲル分率は、重さW1の測定サンプルをテトラフルオロエチレン樹脂製多孔質シートに包んで室温で1週間酢酸エチルに浸漬した後、その測定サンプルを乾燥させて酢酸エチル不溶解分の重さW2を計測し、W1およびW2を次式:ゲル分率[%]=W2/W1×100;に代入することにより求められる。上記テトラフルオロエチレン樹脂製多孔質シートとしては、日東電工社製の商品名「ニトフロン(登録商標)NTF1122」を使用することができる。
【0087】
<剥離ライナー>
保護シートは、その使用前(被着体への貼付け前)には、粘着剤層の表面上に剥離ライナーが配置された剥離ライナー付き保護シートの形態であり得る。剥離ライナーとしては、慣用の剥離紙等を使用することができ、特に限定されない。例えば、PET等の樹脂シートや紙等のライナー基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナーや、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。上記剥離処理層は、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により上記ライナー基材を表面処理して形成されたものであり得る。剥離ライナーの厚さは特に限定されず、凡そ5〜500μm(例えば凡そ10〜200μm、典型的には凡そ30〜200μm)であり得る。
【0088】
また、剥離ライナーの表面のうち粘着剤層上に配置される側の表面の算術平均表面粗さは、0.05〜0.75μm(例えば凡そ0.05〜0.5μm、典型的には凡そ0.1〜0.3μm)であることが好ましい。これによって、保護シートの使用時まで粘着剤表面(粘着面)の平滑性を高く維持することができる。粘着面の平滑性が高いことは、粘着剤と被着体との界面からの薬液浸入を防止するうえで有利である。
【0089】
ここに開示される保護シート(粘着剤層とシート状基材とを含むが、剥離ライナーは含まない。)の総厚さは特に限定されず、保護特性(例えば薬液浸入防止性)や取扱い性等の観点から、凡そ10〜1000μm(例えば30〜300μm、典型的には60〜180μm)の範囲とすることが適当である。
【0090】
<用途>
ここに開示される保護シートは、被着体(例えばガラス基板)の所望の部位に貼り付け、その部位を保護するための保護シートとして使用することができる。特に、真空吸着台に吸着させてから被着体への貼り合わせる態様で使用される保護シートとして好ましい。このような貼り合わせ方法を採用する場合に、ここに開示される技術による優れた貼り合わせ作業性が好適に実現される。
【0091】
ここに開示される保護シートは、上述したような特長を活かして、例えば、被着体(典型的にはガラス基板)の表面を薬液処理(例えばエッチング処理)する際に、当該薬液(例えばフッ酸溶液等のエッチング液)の影響を排除したい部分をマスクする薬液処理用保護シートとして好ましく使用され得る。具体的には例えば、ガラスの厚さ調整やガラスの切断端面に形成されたバリやマイクロクラックを除去するためにガラスを薬液(エッチング液)で溶解するエッチング処理、金属の表面を薬液(エッチング液)で部分的に腐食させるエッチング処理、回路基板(プリント基板、フレキシブルプリント基板(FPC)等)の接続端子部等を薬液(めっき液)で部分的にめっきするめっき処理等において好適に利用され得る。なかでも、フッ酸溶液等の酸性薬液を用いてエッチング処理を行う用途に特に好ましく適用され得る。上記被着体としてのガラス基板は、例えば、タブレット型パソコンや携帯電話、有機LED(発光ダイオード)等に用いられるような、透明導電膜(例えばITO(酸化インジウムスズ)膜)やFPCが部分的に設けられた表面を有するガラス基板であり得る。
【0092】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明中の「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0093】
<例1>
[シート状基材の作製]
低密度ポリエチレン(LDPE、商品名「ペトロセン180」、東ソー社製)をインフレーション成形機によりダイス温度160℃の条件で成形し、厚さ55μmのLDPEシートと、厚さ40μmのLDPEシートとを得た。また、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シート(商品名「ルミラーS10 #50」、東レ社製)を用意した。
上記のLDPEシート、PETシートを用いて、第一表面層としてのLDPE層(厚さ40μm)、中間層としてのPET層(厚さ50μm)および第二表面層としてのLDPE層(厚さ55μm)が順に積層された樹脂シート基材をドライラミネート法により作製した。具体的には、第二表面層となるLDPEシートの片面にコロナ放電処理を施し、当該LDPEシートのコロナ処理面を、接着剤を用いて中間層となるPETシートの一方の表面にラミネートした。また、第一表面層となるLDPEシートの片面にコロナ放電処理を施し、当該LDPEシートのコロナ処理面を接着剤を用いてPETシートの他方の表面(第二表面層となるLDPEシートがラミネートされた面とは反対側の表面)にラミネートした。このようにして、例1に係るシート状基材を作製した。
【0094】
[粘着剤組成物の調製]
冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートおよび撹拌装置を備えた反応容器に、重合溶媒としてのトルエン、2−エチルヘキシルアクリレート100部および2−ヒドロキシエチルアクリレート4部、アゾ系重合開始剤としての2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.2部を入れ、トルエン中で重合を行い、アクリル系ポリマーのトルエン溶液を得た。このようにして得たアクリル系ポリマーのトルエン溶液の固形分100部に対し、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン工業社製)2部、架橋促進剤としてジオクチルスズジラウレート(商品名「エンビライザーOL−1」、東京ファインケミカル社製)0.02部を配合し、溶剤としてアセチルアセトンを全溶剤量の4%となるように加え、さらに固形分を調整するためトルエンを加えて粘着剤組成物を得た。
【0095】
[保護シートの作製]
上記で得たシート状基材の片面(第一表面)にコロナ放電処理を施し、当該シート状基材のコロナ処理面に粘着剤組成物を塗付し、80℃で1分間乾燥させて、厚さ約20μmの粘着剤層を形成した。この粘着剤層に、片面がシリコーン系剥離剤で処理された厚さ38μmのPETシート(商品名「ダイアホイルMRF38」、三菱化学ポリエステルフィルム社製)のシリコーン処理面を貼り合わせ、25℃で4日間エージングして本例に係る保護シートを得た。
【0096】
<例2>
LDPE(商品名「ペトロセン180」、東ソー社製)をインフレーション成形機によりダイス温度160℃の条件で成形し、厚さ20μmのLDPEシートを2枚作製した。また、厚さ50μmのPETシート(商品名「ルミラーS10 #50」、東レ社製)を用意した。上記のLDPEシート、PETシートを用いて、例1と同様にして、第一表面層としてのLDPE層(厚さ20μm)、中間層としてのPET層(厚さ50μm)および第二表面層としてのLDPE層(厚さ20μm)が順に積層された樹脂シート基材を作製した。
上記で得たシート状基材を用いた他は例1と同様にして本例に係る保護シートを得た。
【0097】
<例3>
LDPE(商品名「ペトロセン180」、東ソー社製)をインフレーション成形機によりダイス温度160℃の条件で成形し、厚さ40μmのLDPEシートを2枚作製した。また、厚さ75μmのPETシート(商品名「ルミラーS10 #75」、東レ社製)を用意した。上記のLDPEシート、PETシートを用いて、例1と同様にして、第一表面層としてのLDPE層(厚さ40μm)、中間層としてのPET層(厚さ75μm)および第二表面層としてのLDPE層(厚さ40μm)が順に積層された樹脂シート基材を作製した。
上記で得たシート状基材を用いた他は例1と同様にして本例に係る保護シートを得た。
【0098】
<例4>
LDPE(商品名「ペトロセン180」、東ソー社製)をインフレーション成形機によりダイス温度160℃の条件で成形し、厚さ65μmのLDPEシートを得た。また、厚さ50μmのPETシート(商品名「ルミラーS10 #50」、東レ社製)を用意した。上記のLDPEシート、PETシートを用いて、第一表面層としてのPET層(厚さ50μm)と、第二表面層としてのLDPE層(厚さ65μm)とが積層された樹脂シート基材をドライラミネート法により作製した。
上記で得たシート状基材を用いた他は例1と同様にして本例に係る保護シートを得た。
【0099】
<例5>
LDPE(商品名「ペトロセン180」、東ソー社製)をインフレーション成形機によりダイス温度160℃の条件で成形し、厚さ80μmのLDPEシートを得た。また、厚さ100μmのPETシート(商品名「ルミラーS10 #100」、東レ社製)を用意した。上記のLDPEシート、PETシートを用いて、例4と同様にして、第一表面層としてのPET層(厚さ100μm)と、第二表面層としてのLDPE層(厚さ80μm)とが積層された樹脂シート基材を作製した。
上記で得たシート状基材を用いた他は例1と同様にして本例に係る保護シートを得た。
【0100】
<例6>
高密度ポリエチレン(HDPE、商品名「ハイゼックス3300F」、プライムポリマー社製)をインフレーション成形機によりダイス温度200℃の条件で成形し、厚さ50μmのHDPEシートを得た。また、厚さ75μmのPETシート(商品名「ルミラーS10 #75」、東レ社製)を用意した。上記のHDPEシート、PETシートを用いて、例4と同様にして、第一表面層としてのPET層(厚さ75μm)と、第二表面層としてのHDPE層(厚さ50μm)とが積層された樹脂シート基材を作製した。
上記で得たシート状基材を用いた他は例1と同様にして本例に係る保護シートを得た。
【0101】
[引張弾性率]
各例に係るシート状基材および該シート状基材を構成する各層を、MDを長手方向として幅10mmの短冊状にカットして試験片を作製した。この試験片を、JIS K7161:1994に準拠して、下記条件で延伸することにより応力−ひずみ曲線を得た。
延伸条件:
測定温度 23℃;
引張速度 300mm/分;
チャック間距離 50mm;
引張弾性率は、規定された2点のひずみε1およびε2の間の曲線の線形回帰によって求めた。異なる箇所から切り出した3つの試験片を用いて上記測定を行い、それらの平均値をMDへの引張弾性率(MPa)とした。結果を表1に示す。
【0102】
[カール高さ]
各例に係る保護シートにつき、剥離ライナーがついた状態のものと、剥離ライナーを剥がした状態のものの両方のカール高さを測定した。具体的には、保護シートまたは剥離ライナー付き保護シートを60mm×60mmの正方形サイズにカットして試験片を得た。この試験片を水平面を有する台の該水平面上に載置し、23℃で10分間放置した後、最大カール高さ(mm)を測定した。試験片がカールしている場合は、端部が反り上がるように載置して測定した。結果を表1に示す。
【0103】
[貼り合わせ作業性]
保護シートを真空吸着台に吸着固定した後、該固定された状態で被着体への貼り合わせを行う使用態様を想定して、真空吸着台への吸着固定が円滑になされるものは貼り合わせ作業性に優れるものとみなして下記の評価を行った。すなわち、各例に係る保護シートを125mm×65mmの矩形状にカットして試験片を得た。この試験片から剥離ライナーを剥がし、シート状基材側が下方となるように真空吸着台上に載置した。そして、約30kPaの吸引力で試験片を吸引させた。このときの試験片の状態を観察し、下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
○:真空吸着台に吸着した。
×:真空吸着台に吸着しなかった。
【0105】
表1に示されるように、例1〜3に係る保護シートのカール高さは、剥離ライナー付きの場合で3mm未満、剥離ライナーなしの場合で10mm以下であり、真空吸着台に良好に吸着した。これらの結果から、カール高さが所定値以下の保護シートは貼り合わせ作業性に優れることがわかる。また、例1〜3に係る保護シートの引張弾性率は1000〜4000MPaの範囲内であるので、貼り付け時における縒れや皺の発生が防止され得ると考えられる。一方、例4〜6に係る保護シートは、引張弾性率が1000〜4000MPaの範囲内であったが、カール高さが剥離ライナー付きの場合で3mm以上、剥離ライナーなしの場合で10mmを超え、良好な貼り合わせ作業性を実現できなかった。これらは作業性に劣ると推察される。
【0106】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。