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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-168740(P2015-168740A)
(43)【公開日】2015年9月28日
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/668 20060101AFI20150901BHJP
   C08G 63/78 20060101ALI20150901BHJP
【FI】
   C08G63/668
   C08G63/78
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2014-43711(P2014-43711)
(22)【出願日】2014年3月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081798
【弁理士】
【氏名又は名称】入山 宏正
(72)【発明者】
【氏名】潮谷 和史
(72)【発明者】
【氏名】邑上 祐一郎
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA01
4J029AB01
4J029AB04
4J029AC02
4J029AD01
4J029AD02
4J029AE01
4J029AE02
4J029AE03
4J029BA02
4J029BA03
4J029BA04
4J029BA05
4J029BA10
4J029BF25
4J029CA02
4J029CA04
4J029CA06
4J029CB04A
4J029CB05A
4J029CB06A
4J029CC05A
4J029CC06A
4J029FC35
4J029FC36
4J029HA01
4J029HA03A
4J029HB01
4J029HB03A
4J029JA091
4J029JB131
4J029JB171
4J029JF131
4J029JF321
4J029JF371
4J029JF471
4J029KB02
4J029KB12
4J029KB22
4J029KD02
4J029KD07
4J029KD09
4J029KE02
4J029KE06
4J029KE13
4J029KG01
4J029KG03
4J029LA01
4J029LA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新規のポリエステル樹脂及びその製造方法の提供。
【解決手段】下記の各構成単位A、B、C及びDからポリエステル樹脂を構成し、その数平均分子量を5000〜15000とした。構成単位A:炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸、炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸及び炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体から選ばれる一つ又は二つ以上から形成された構成単位、構成単位B:炭素数9〜20の3価又は4価の芳香族ポリカルボン酸から形成された構成単位、構成単位C:炭素数2〜10のアルカンジオールから形成された構成単位、構成単位D:下記化学式で示されるジオール化合物から形成された構成単位

[Xは分子中に2〜30個のオキシブチレン単位で構成されたポリオキシブチレン基を有するポリブチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構成単位A、構成単位B、構成単位C及び構成単位Dから構成されたポリエステル樹脂であって、その数平均分子量が5000〜15000であることを特徴とするポリエステル樹脂。
構成単位A:炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸、炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸及び炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体から選ばれる一つ又は二つ以上から形成された構成単位
構成単位B:炭素数9〜20の3価又は4価の芳香族ポリカルボン酸から形成された構成単位
構成単位C:炭素数2〜10のアルカンジオールから形成された構成単位
構成単位D:下記の化1で示されるジオール化合物から形成された構成単位
【化1】
(化1において、
:分子中に2〜30個のオキシブチレン単位で構成されたポリオキシブチレン基を有するポリブチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基)
【請求項2】
酸価が10〜20KOHmg/gである請求項1記載のポリエステル樹脂。
【請求項3】
構成単位Aを45〜49.7モル%、構成単位Bを0.3〜5モル%、構成単位Cを45〜49.7モル%及び構成単位Dを0.3〜5モル%(合計100モル%)の割合で有する請求項1又は2記載のポリエステル樹脂。
【請求項4】
構成単位Bが、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸及び/又は1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸から形成された構成単位である請求項1〜3のいずれか一つの項記載のポリエステル樹脂。
【請求項5】
構成単位Dが、化1中のXが分子中に10〜20個のオキシブチレン単位で構成されたポリオキシブチレン基を有するポリブチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基である場合のものである請求項1〜4のいずれか一つの項記載のポリエステル樹脂。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つの項記載のポリエステル樹脂の製造方法であって、下記の工程1−1又は下記の工程1−2と、下記の工程2と、下記の工程3とを経ることを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
工程1−1:構成単位Aを形成することとなる炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体及び炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体から選ばれる一つ又は二つ以上と、構成単位Cを形成することとなる炭素数2〜10のアルカンジオールと、構成単位Dを形成することとなる化1で示されるジオール化合物とを、触媒の存在下でエステル交換反応させる工程
工程1−2:構成単位Aを形成することとなる炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸及び炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸から選ばれる一つ又は二つ以上と、構成単位Cを形成することとなる炭素数2〜10のアルカンジオールと、構成単位Dを形成することとなる化1で示されるジオール化合物とを用いて、触媒の存在下でエステル化反応させる工程
工程2:引き続き触媒の存在下で縮合重合反応させる工程
工程3:構成単位Bを形成することとなる炭素数9〜20の3又は4価の芳香族ポリカルボン酸を加え、引き続き触媒の存在下で解重合反応させる工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステル樹脂及びその製造方法に関する。繊維、不織布、フィルム、シート、ボトル、トレー、機械部品、電子機器部品等に、ポリエステル樹脂が広く利用されている。本発明はかかるポリエステル樹脂であって、特定の四つの構成単位から構成された新規のポリエステル樹脂及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種のポリエステル樹脂が知られており、これらのなかには特定の用途において有用なポリエステル樹脂も知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。かかる従来のポリエステル樹脂には、それぞれに特性があるが、その用途によって近年では、更に高度の要求に応える特性を備えたポリエステル樹脂の出現が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−209835号公報
【特許文献2】特開平02−050835号公報
【特許文献3】特開昭51−056883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、近年の更に高度の要求に応える新規のポリエステル樹脂及びその製造方法を提供する処にあり、具体的には特にアルミ蒸着ポリエステルフィルムの製造において有用な新規のポリエステル樹脂及びその製造方法を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、特定の四つの構成単位から構成されたポリエステル樹脂であって、その数平均分子量が5000〜15000である新規のポリエステル樹脂が正しく好適であることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、下記の構成単位A、構成単位B、構成単位C及び構成単位Dから構成されたポリエステル樹脂であって、その数平均分子量が5000〜15000であることを特徴とするポリエステル樹脂に係り、また本発明はかかるポリエステル樹脂の製造方法に係る。
【0007】
構成単位A:炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸、炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸及び炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体から選ばれる一つ又は二つ以上から形成された構成単位
【0008】
構成単位B:炭素数9〜20の3価又は4価の芳香族ポリカルボン酸から形成された構成単位
【0009】
構成単位C:炭素数2〜10のアルカンジオールから形成された構成単位
【0010】
構成単位D:下記の化1で示されるジオール化合物から形成された構成単位
【0011】
【化1】
【0012】
化1において、
:分子中に2〜30個のオキシブチレン単位で構成されたポリオキシブチレン基を有するポリブチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基
【0013】
先ず、本発明に係るポリエステル樹脂(以下、本発明の樹脂という)について説明する。本発明の樹脂は、前記の構成単位A、構成単位B、構成単位C及び構成単位Dから構成された数平均分子量5000〜15000のポリエステル樹脂である。かかる本発明の樹脂は、構成単位Aを形成することとなる化合物と、構成単位Bを形成することとなる化合物と、構成単位Cを形成することとなる化合物と、構成単位Dを形成することとなる化合物とを用いて縮合重合反応等を行なうことにより得られる。
【0014】
構成単位Aを形成することとなる化合物としては、1)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸等の炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸、2)フタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、1,4−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、ビス−2−ヒドロキシエチルフタレート、ビス−2−ヒドロキシエチルイソフタレート、ビス−2−ヒドロキシエチルテレフタラート、ビス−2−ヒドロキシエチル−2,6−ナフタレート、ビス−2−ヒドロキシエチル−1,4−ナフタレート等の炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、3)コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、α、ω−ドデカンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、オクタデセニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸、4)コハク酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、アゼライン酸ジメチル、セバシン酸ジメチル、α、ω−ドデカンジカルボン酸ジメチル、ドデセニルコハク酸ジメチル、オクタデセニルジカルボン酸ジメチル、シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル、コハク酸ビス−2−ヒドロキシエチル、アジピン酸ビス−2−ヒドロキシエチル、アゼライン酸ビス−2−ヒドロキシエチル、セバシン酸ビス−2−ヒドロキシエチル、α、ω−ドデカンジカルボン酸ビス−2−ヒドロキシエチル、ドデセニルコハク酸ビス−2−ヒドロキシエチル、オクタデセニルジカルボン酸ビス−2−ヒドロキシエチル、シクロヘキサンジカルボン酸ビス−2−ヒドロキシエチル等の炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0015】
構成単位Bを形成することとなる化合物としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等の炭素数9〜20の3又は4価の芳香族ポリカルボン酸が挙げられるが、なかでも1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸が好ましい。
【0016】
構成単位Cを形成することとなる化合物としては、1,2−エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール等の炭素数2〜10のアルカンジオールが挙げられる。
【0017】
構成単位Dを形成することとなる化合物は、前記の化1で示されるジオール化合物である。化1中のXは、分子中に2〜30個のオキシブチレン単位で構成されたポリオキシブチレン基を有するポリブチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基であるが、なかでも分子中に10〜20個のオキシブチレン単位で構成されたポリオキシブチレン基を有するポリブチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基が好ましい。
【0018】
本発明の樹脂は、以上説明した構成単位A〜Dで構成されたものであり、その構成比率には特に制限はないが、構成単位Aを45〜49.7モル%、構成単位Bを0.3〜5モル%、構成単位Cを45〜49.7モル%及び構成単位Dを0.3〜5モル%(合計100モル%)の割合で有するものが好ましい。
【0019】
本発明の樹脂は、その数平均分子量が5000〜15000のもの、好ましくは7000〜10000のものである。本発明において数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によるポリスチレン換算の数平均分子量である。また本発明の樹脂は、その酸価に特に制限はないが、酸価が10〜20KOHmg/gのものが好ましい。
【0020】
本発明の樹脂は、その用途に特に制限はないが、アルミ蒸着ポリエステルフィルムの製造に用いた場合に、その効果の発現が高い。
【0021】
次に、本発明に係るポリエステル樹脂の製造方法(以下、本発明の製造方法という)について説明する。本発明の製造方法は、下記の工程1−1又は下記の工程1−2と、下記の工程2と、下記の工程3とを経る方法である。
【0022】
工程1−1:構成単位Aを形成することとなる炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体及び炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体から選ばれる一つ又は二つ以上と、構成単位Cを形成することとなる炭素数2〜10のアルカンジオールと、構成単位Dを形成することとなる化1で示されるジオール化合物とを、触媒の存在下でエステル交換反応させる工程
【0023】
工程1−2:構成単位Aを形成することとなる炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸及び炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸から選ばれる一つ又は二つ以上と、構成単位Cを形成することとなる炭素数2〜10のアルカンジオールと、構成単位Dを形成することとなる化1で示されるジオール化合物とを、触媒の存在下でエステル化反応させる工程
【0024】
工程2:引き続き触媒の存在下で縮合重合反応させる工程
【0025】
工程3:構成単位Bを形成することとなる炭素数9〜20の3又は4価の芳香族ポリカルボン酸を加え、引き続き触媒の存在下で解重合反応させる工程
【0026】
工程1−1のエステル交換反応、工程1−2のエステル化反応、工程2の縮合重合反応及び工程3の解重合反応には触媒を用いる。かかる触媒としては、エステル交換反応においてはエステル交換触媒として、またエステル化反応においてはエステル化触媒として、更に縮合重合反応においては縮合重合触媒として、更にまた解重合反応においては解重合触媒として機能するものを用いるのが好ましく、具体的には、テトラブチルチタネート等のチタン化合物、酢酸亜鉛、酢酸マグネシウム等の金属の酢酸塩、三酸化アンチモン、ヒドロキシブチルスズオキサイド、オクチル酸スズ等の有機スズ化合物等を用いるのが好ましい。これらの触媒は、工程1−1又は工程1−2で用いたものを、そのまま工程2及び工程3でも引き続き利用することができる。
【0027】
工程1−1のエステル交換反応や工程1−2のエステル化反応の条件に特に制限はないが、窒素雰囲気下に170〜250℃の温度条件下で行なうことが好ましく、また反応時間は、原料の反応性や反応速度の観点から、3〜8時間とすることが好ましい。
【0028】
工程2の縮合重合反応の条件にも特に制限はないが、高温高真空下にジオール成分や低分子量化合物を留去しながら、所望の分子量に達するまで縮合重合反応を行なう観点から、反応温度は230〜280℃とすることが好ましく、また圧力は100PKa以下とすることが好ましく、更に大気圧から100PKa以下に到達するまでの減圧操作は30〜180分かけて徐々に行なうことが好ましい。
【0029】
工程3の解重合反応の条件にも特に制限はないが、窒素雰囲気下に150〜250℃の温度条件下で行なうことが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
以上説明した本発明によると、近年の高度の要求に応える新規のポリエステル樹脂を提供でき、具体的には特にアルミ蒸着ポリエステルフィルムの製造において有用な新規のポリエステル樹脂を提供できるという効果がある。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例等において、部は質量部を示し、また%は質量%を示す。
【0032】
試験区分1(ポリエステル樹脂の合成)
・実施例1{ポリエステル樹脂(P−1)の合成}
構成単位Aを形成することとなる化合物としてテレフタル酸(A−1)100.6g、イソフタル酸(A−2)83.9g及びセバシン酸(A−3)25.5g、また構成単位Cを形成することとなる化合物としてネオペンチルグリコール(C−1)63.1g及びエチレングリコール(C−2)39.2g、更に構成単位Dを形成することとなる化合物としてポリテトラメチレンエーテルグリコール27.8g、そして触媒として酢酸亜鉛(II)・二水和物0.0645gを反応容器に仕込み、反応容器内を窒素置換した後、反応容器を密閉し、180℃まで2時間かけて昇温した。更に、反応容器内に副生する水を系外に除きながら240℃まで3時間かけて昇温した。その後、徐々に反応容器の圧力を常圧に戻し、250℃まで昇温して1時間エステル化反応を行なって、エステル化物を得た。次に270℃まで昇温後、徐々に反応容器内を減圧して30分後に100Paとし、同減圧下で2時間重縮合反応を行ったところで、窒素にて常圧に戻し、250℃まで冷却した。冷却後、構成単位Bを形成することとなる化合物として1,2,5−ベンゼントリカルボン酸(B−1)5.3gを加え、反応容器を密閉して、窒素で0.3MPaまで加圧後、攪拌しながら1時間解重合反応を行ない、ポリエステル樹脂300gを得た。このポリエステル樹脂を分析したところ、テレフタル酸、イソフタル酸及びセバシン酸から形成された構成単位Aを49.0モル%、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸から形成された構成単位Bを1.0モル%、ネオペンチルグリコール及びエチレングリコールから形成された構成単位Cを49モル%及びポリテトラメチレンエーテルグリコールから形成された構成単位Dを1.0モル%(合計100モル%)の割合で有していて、数平均分子量が8000、酸価が16KOHmg/gのものであった。これをポリエステル樹脂(P−1)とした。
【0033】
・実施例2〜12及び比較例1〜4{ポリエステル樹脂(P−2)〜(P−12)及び(rp−1)〜(rp−4)の合成}
実施例1のポリエステル樹脂(P−1)の合成と同様にして、実施例2〜12のポリエステル樹脂(P−2)〜(P−12)及び比較例1〜4のポリエステル樹脂(rp−1)〜(rp−4)を合成した。以上の各例で用いた化合物の内容を表1〜表4に、また以上の各例で合成したポリエステル樹脂の内容を表5にまとめて示した。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】









【0037】
【表4】






































【0038】
【表5】
【0039】
表5において、
構成単位A〜Dの種類:各構成単位を形成することとなる表1〜表4に記載の化合物の名称で記載した。
【0040】
試験区分2(アルミ蒸着ポリエステルフィルム製造用の処理剤の調製)
・処理剤(S−1)の調製
試験区分1で合成したポリエステル樹脂(P−1)54質量部、該ポリエステル樹脂(P−1)の酸価16KOHmg/gの1.5等量に相当する25質量%アンモニア水1.6質量部、2−プロパノール54質量部、水154質量部及びテトラデシルアルコールのエチレンオキサイド付加物(数平均分子量600)(N−1)6.0質量部を反応容器に仕込み、撹拌しながら80℃に加温して溶液を得た。攪拌しながらこの溶液から常圧下で水と2−プロパノール93.6質量部を留去した後、オキサゾリン系架橋剤水溶液(日本触媒社製の商品名エポクロスWS−700)(K−1)24質量部を加え、ポリエステル樹脂(P−1)を27.0質量%、架橋剤(K−1)を3.0質量%及びテトラデシルアルコールのエチレンオキサイド付加物(N−1)を3.0質量%の割合で含有する処理剤(S−1)を得た。
【0041】
・処理剤(S−2)〜(S−13)及び(rs−1)〜(rs−6)の調製
処理剤(S−1)の調製と同様にして、処理剤(S−2)〜(S−13)及び処理剤(rs−1)〜(rs−6)を調製した。以上の内容を表6にまとめて示した。
【0042】
【表6】
【0043】
表6において、
K−1:オキサゾリン系架橋剤(日本触媒社製の商品名エポクロスWS−700)
rk−1:エポキシ系架橋剤(ナガセケムテックス社製の商品名デナコールEM−160)
rk−2:メラミン系架橋剤(三和ケミカル社製の商品名ニカラックMX−035)
N−1:テトレデシルアルコールのエチレンオキサイド付加物(数平均分子量600)
N−2:ドデシルアルコールのエチレンオキサイド付加物(数平均分子量450)
N−3:オクタデシルアルコールのエチレンオキサイド付加物(数平均分子量700)
N−4:ヘキサデシルアルコールのエチレンオキサイド付加物(数平均分子量500)
【0044】
試験区分3(フィルムの作製及び評価)
・フィルム(F−1)の作製及び評価
厚さ200μmの無延伸ポリエステルフィルムを縦方向に3.5倍延伸した後、試験区分2で調製した処理剤(S−1)をポリエステル樹脂固形分が50mg/mとなるように塗布した。95℃で10秒乾燥した後、横方向に4倍延伸し、220℃で10秒熱固定した。処理剤を塗布した面に厚さ500オングストロームとなるようアルミ蒸着を行ない、その上にウレタン系接着剤(三井化学社製の商品名タケラックA−626/三井化学社製の商品名タケネートA−65=8/1(質量比)の混合物)を固形分が3g/mとなるように塗布し、60℃で1分乾燥した後、接着剤を介して厚さ50μmのエチレン・プロピレン共重合体製フィルム(密度0.900g/cm、MFR8.0g/10分)(H−1)を貼り合せ、40℃で50時間保管し、接着剤を硬化させて、フィルム(F−1)を得た。得られたフィルム(F−1)について、フィルム外観及び易接着性を下記の方法で評価した。
【0045】
・フィルム外観
フィルムの外観を目視にて観察し、熱水処理前の外観を下記の基準で評価した。更にフィルムを100℃の水に30分又は1時間浸漬し、室温で24時間乾燥した後、熱水処理後の外観を同様の基準で評価した。
◎:1時間浸漬しても変化はなし
○:30分浸漬しても変化はなかったが、1時間浸漬すると干渉縞が発生した
×:30分浸漬して干渉縞が発生した
【0046】
・易接着性
フィルムを幅1.5cmの短冊状に切り取り、剥離試験機(島津製作所社製の商品名オートグラフAG−G型)に供して処理剤塗布面とアルミ蒸着面の間で180℃剥離し、剥離に要する力を測定して、熱水処理前の易接着性を下記の基準で評価した。またフィルムを100℃の水に30分浸漬し、室温で24時間乾燥した後、熱水処理後の易接着性を同様の基準で評価した。
◎:剥離に要する力が5N/1.5cm以上
○:剥離に要する力が3.5N/1.5cm以上、5N/1.5cm未満
△:剥離に要する力が2N/1.5cm以上、3.5N/1.5cm未満
×:剥離に要する力が2N/1.5cm未満
【0047】
・フィルム(F−2)〜(F−13)及び(rf−1)〜(rf−6)の作製及び評価
フィルム(F−1)の作製及び評価と同様にして、フィルム(F−2)〜(F−13)及び(rf−1)〜(rf−6)を作製し、評価した。以上で作製したフィルムの内容及び評価した結果を表7にまとめて示した。












【0048】
【表7】
【0049】
表7において、
H−1:エチレン・プロピレン共重合体製フィルム(密度0.900g/cm、MFR8.0g/10分)
H−2:エチレン・1−ヘキセン共重合体製フィルム(密度0.930g/cm、MFR1.0g/10分)
H−3:エチレン・1−ブテン共重合体製フィルム(密度0.920g/cm、MFR2.1g/10分)
H−4:ポリエチレン製フィルム(密度0.927g/cm、MFR4.0g/10分)
*1:処理剤中にポリエステル樹脂が分散せず、フィルムに塗布できなかった
【手続補正書】
【提出日】2015年1月28日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステル樹脂及びその製造方法に関する。繊維、不織布、フィルム、シート、ボトル、トレー、機械部品、電子機器部品等に、ポリエステル樹脂が広く利用されている。本発明はかかるポリエステル樹脂であって、特定の四つの構成単位から構成された新規のポリエステル樹脂及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種のポリエステル樹脂が知られており、これらのなかには特定の用途において有用なポリエステル樹脂も知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。かかる従来のポリエステル樹脂には、それぞれに特性があるが、その用途によって近年では、更に高度の要求に応える特性を備えたポリエステル樹脂の出現が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−209835号公報
【特許文献2】特開平02−050835号公報
【特許文献3】特開昭51−056883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、近年の更に高度の要求に応える新規のポリエステル樹脂及びその製造方法を提供する処にあり、具体的には特にアルミ蒸着ポリエステルフィルムの製造において有用な新規のポリエステル樹脂及びその製造方法を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、特定の四つの構成単位が特定割合で構成されたポリエステル樹脂であって、数平均分子量が7000〜9000且つ酸価が14〜20KOHmg/gである新規のポリエステル樹脂が正しく好適であることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、下記の構成単位A、構成単位B、構成単位C及び構成単位Dから構成されたポリエステル樹脂であって、構成単位Aを45〜49.7モル%、構成単位Bを0.3〜5モル%、構成単位Cを45〜49.7モル%及び構成単位Dを0.3〜5モル%(合計100モル%)の割合で有し、数平均分子量が7000〜9000且つ酸価が14〜20KOHmg/gであることを特徴とするポリエステル樹脂に係り、また本発明はかかるポリエステル樹脂の製造方法に係る。
【0007】
構成単位A:炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸、炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸及び炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体から選ばれる一つ又は二つ以上から形成された構成単位
【0008】
構成単位B:炭素数9〜20の3価又は4価の芳香族ポリカルボン酸から形成された構成単位
【0009】
構成単位C:炭素数2〜10のアルカンジオールから形成された構成単位
【0010】
構成単位D:下記の化1で示されるジオール化合物から形成された構成単位
【0011】
【化1】
【0012】
化1において、
:分子中に2〜30個のオキシブチレン単位で構成されたポリオキシブチレン基を有するポリブチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基
【0013】
先ず、本発明に係るポリエステル樹脂(以下、本発明の樹脂という)について説明する。本発明の樹脂は、前記の構成単位A、構成単位B、構成単位C及び構成単位Dから構成されたポリエステル樹脂である。かかる本発明の樹脂は、構成単位Aを形成することとなる化合物と、構成単位Bを形成することとなる化合物と、構成単位Cを形成することとなる化合物と、構成単位Dを形成することとなる化合物とを用いて縮合重合反応等を行なうことにより得られる。
【0014】
構成単位Aを形成することとなる化合物としては、1)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸等の炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸、2)フタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、1,4−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、ビス−2−ヒドロキシエチルフタレート、ビス−2−ヒドロキシエチルイソフタレート、ビス−2−ヒドロキシエチルテレフタラート、ビス−2−ヒドロキシエチル−2,6−ナフタレート、ビス−2−ヒドロキシエチル−1,4−ナフタレート等の炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、3)コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、α、ω−ドデカンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、オクタデセニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸、4)コハク酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、アゼライン酸ジメチル、セバシン酸ジメチル、α、ω−ドデカンジカルボン酸ジメチル、ドデセニルコハク酸ジメチル、オクタデセニルジカルボン酸ジメチル、シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル、コハク酸ビス−2−ヒドロキシエチル、アジピン酸ビス−2−ヒドロキシエチル、アゼライン酸ビス−2−ヒドロキシエチル、セバシン酸ビス−2−ヒドロキシエチル、α、ω−ドデカンジカルボン酸ビス−2−ヒドロキシエチル、ドデセニルコハク酸ビス−2−ヒドロキシエチル、オクタデセニルジカルボン酸ビス−2−ヒドロキシエチル、シクロヘキサンジカルボン酸ビス−2−ヒドロキシエチル等の炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体が挙げられる。尚、エステル形成性誘導体というのはエステルを形成することとなる誘導体である。
【0015】
構成単位Bを形成することとなる化合物としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等の炭素数9〜20の3又は4価の芳香族ポリカルボン酸が挙げられるが、なかでも1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸が好ましい。
【0016】
構成単位Cを形成することとなる化合物としては、1,2−エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール等の炭素数2〜10のアルカンジオールが挙げられる。
【0017】
構成単位Dを形成することとなる化合物は、前記の化1で示されるジオール化合物である。化1中のXは、分子中に2〜30個のオキシブチレン単位で構成されたポリオキシブチレン基を有するポリブチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基であるが、なかでも分子中に10〜20個のオキシブチレン単位で構成されたポリオキシブチレン基を有するポリブチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基が好ましい。
【0018】
本発明の樹脂は、以上説明した構成単位A〜Dで構成されたものであり、その構成比率が、構成単位Aを45〜49.7モル%、構成単位Bを0.3〜5モル%、構成単位Cを45〜49.7モル%及び構成単位Dを0.3〜5モル%(合計100モル%)の割合で有するものである。
【0019】
また本発明の樹脂は、その数平均分子量が7000〜9000のものである。本発明において数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によるポリスチレン換算の数平均分子量である。更に本発明の樹脂は、その酸価が14〜20KOHmg/gのものである。
【0020】
本発明の樹脂は、その用途に特に制限はないが、アルミ蒸着ポリエステルフィルムの製造に用いた場合に、その効果の発現が高い。
【0021】
次に、本発明に係るポリエステル樹脂の製造方法(以下、本発明の製造方法という)について説明する。本発明の製造方法は、下記の工程1−1又は下記の工程1−2と、下記の工程2と、下記の工程3とを経る方法である。
【0022】
工程1−1:構成単位Aを形成することとなる炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体及び炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体から選ばれる一つ又は二つ以上と、構成単位Cを形成することとなる炭素数2〜10のアルカンジオールと、構成単位Dを形成することとなる化1で示されるジオール化合物とを、触媒の存在下でエステル交換反応させる工程
【0023】
工程1−2:構成単位Aを形成することとなる炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸及び炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸から選ばれる一つ又は二つ以上と、構成単位Cを形成することとなる炭素数2〜10のアルカンジオールと、構成単位Dを形成することとなる化1で示されるジオール化合物とを、触媒の存在下でエステル化反応させる工程
【0024】
工程2:引き続き触媒の存在下で縮合重合反応させる工程
【0025】
工程3:構成単位Bを形成することとなる炭素数9〜20の3又は4価の芳香族ポリカルボン酸を加え、引き続き触媒の存在下で解重合反応させる工程
【0026】
工程1−1のエステル交換反応、工程1−2のエステル化反応、工程2の縮合重合反応及び工程3の解重合反応には触媒を用いる。かかる触媒としては、エステル交換反応においてはエステル交換触媒として、またエステル化反応においてはエステル化触媒として、更に縮合重合反応においては縮合重合触媒として、更にまた解重合反応においては解重合触媒として機能するものを用いるのが好ましく、具体的には、テトラブチルチタネート等のチタン化合物、酢酸亜鉛、酢酸マグネシウム等の金属の酢酸塩、三酸化アンチモン、ヒドロキシブチルスズオキサイド、オクチル酸スズ等の有機スズ化合物等を用いるのが好ましい。これらの触媒は、工程1−1又は工程1−2で用いたものを、そのまま工程2及び工程3でも引き続き利用することができる。
【0027】
工程1−1のエステル交換反応や工程1−2のエステル化反応の条件に特に制限はないが、窒素雰囲気下に170〜250℃の温度条件下で行なうことが好ましく、また反応時間は、原料の反応性や反応速度の観点から、3〜8時間とすることが好ましい。
【0028】
工程2の縮合重合反応の条件にも特に制限はないが、高温高真空下にジオール成分や低分子量化合物を留去しながら、所望の分子量に達するまで縮合重合反応を行なう観点から、反応温度は230〜280℃とすることが好ましく、また圧力は100PKa以下とすることが好ましく、更に大気圧から100PKa以下に到達するまでの減圧操作は30〜180分かけて徐々に行なうことが好ましい。
【0029】
工程3の解重合反応の条件にも特に制限はないが、窒素雰囲気下に150〜250℃の温度条件下で行なうことが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
以上説明した本発明によると、近年の高度の要求に応える新規のポリエステル樹脂を提供でき、具体的には特にアルミ蒸着ポリエステルフィルムの製造において有用な新規のポリエステル樹脂を提供できるという効果がある。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例等において、部は質量部を示し、また%は質量%を示す。
【0032】
試験区分1(ポリエステル樹脂の合成)
・実施例1{ポリエステル樹脂(P−1)の合成}
構成単位Aを形成することとなる化合物としてテレフタル酸(A−1)100.6g、イソフタル酸(A−2)83.9g及びセバシン酸(A−3)25.5g、また構成単位Cを形成することとなる化合物としてネオペンチルグリコール(C−1)63.1g及びエチレングリコール(C−2)39.2g、更に構成単位Dを形成することとなる化合物としてポリテトラメチレンエーテルグリコール27.8g、そして触媒として酢酸亜鉛(II)・二水和物0.0645gを反応容器に仕込み、反応容器内を窒素置換した後、反応容器を密閉し、180℃まで2時間かけて昇温した。更に、反応容器内に副生する水を系外に除きながら240℃まで3時間かけて昇温した。その後、徐々に反応容器の圧力を常圧に戻し、250℃まで昇温して1時間エステル化反応を行なって、エステル化物を得た。次に270℃まで昇温後、徐々に反応容器内を減圧して30分後に100Paとし、同減圧下で2時間重縮合反応を行ったところで、窒素にて常圧に戻し、250℃まで冷却した。冷却後、構成単位Bを形成することとなる化合物として1,2,5−ベンゼントリカルボン酸(B−1)5.3gを加え、反応容器を密閉して、窒素で0.3MPaまで加圧後、攪拌しながら1時間解重合反応を行ない、ポリエステル樹脂300gを得た。このポリエステル樹脂を分析したところ、テレフタル酸、イソフタル酸及びセバシン酸から形成された構成単位Aを49.0モル%、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸から形成された構成単位Bを1.0モル%、ネオペンチルグリコール及びエチレングリコールから形成された構成単位Cを49モル%及びポリテトラメチレンエーテルグリコールから形成された構成単位Dを1.0モル%(合計100モル%)の割合で有していて、数平均分子量が8000、酸価が16KOHmg/gのものであった。これをポリエステル樹脂(P−1)とした。
【0033】
・実施例又は参考例2〜12及び比較例1〜4{ポリエステル樹脂(P−2)〜(P−12)及び(rp−1)〜(rp−4)の合成}
実施例1のポリエステル樹脂(P−1)の合成と同様にして、実施例又は参考例2〜12のポリエステル樹脂(P−2)〜(P−12)及び比較例1〜4のポリエステル樹脂(rp−1)〜(rp−4)を合成した。以上の各例で用いた化合物の内容を表1〜表4に、また以上の各例で合成したポリエステル樹脂の内容を表5にまとめて示した。
【0034】
【表1】






【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】

















【0038】
【表5】
【0039】
表5において、
構成単位A〜Dの種類:各構成単位を形成することとなる表1〜表4に記載の化合物の名称で記載した。
【0040】
試験区分2(アルミ蒸着ポリエステルフィルム製造用の処理剤の調製)
・処理剤(S−1)の調製
試験区分1で合成したポリエステル樹脂(P−1)54質量部、該ポリエステル樹脂(P−1)の酸価16KOHmg/gの1.5等量に相当する25質量%アンモニア水1.6質量部、2−プロパノール54質量部、水154質量部及びテトラデシルアルコールのエチレンオキサイド付加物(数平均分子量600)(N−1)6.0質量部を反応容器に仕込み、撹拌しながら80℃に加温して溶液を得た。攪拌しながらこの溶液から常圧下で水と2−プロパノール93.6質量部を留去した後、オキサゾリン系架橋剤水溶液(日本触媒社製の商品名エポクロスWS−700)(K−1)24質量部を加え、ポリエステル樹脂(P−1)を27.0質量%、架橋剤(K−1)を3.0質量%及びテトラデシルアルコールのエチレンオキサイド付加物(N−1)を3.0質量%の割合で含有する処理剤(S−1)を得た。
【0041】
・処理剤(S−2)〜(S−13)及び(rs−1)〜(rs−6)の調製
処理剤(S−1)の調製と同様にして、処理剤(S−2)〜(S−13)及び処理剤(rs−1)〜(rs−6)を調製した。以上の内容を表6にまとめて示した。
【0042】
【表6】
【0043】
表6において、
K−1:オキサゾリン系架橋剤(日本触媒社製の商品名エポクロスWS−700)
rk−1:エポキシ系架橋剤(ナガセケムテックス社製の商品名デナコールEM−160)
rk−2:メラミン系架橋剤(三和ケミカル社製の商品名ニカラックMX−035)
N−1:テトレデシルアルコールのエチレンオキサイド付加物(数平均分子量600)
N−2:ドデシルアルコールのエチレンオキサイド付加物(数平均分子量450)
N−3:オクタデシルアルコールのエチレンオキサイド付加物(数平均分子量700)
N−4:ヘキサデシルアルコールのエチレンオキサイド付加物(数平均分子量500)
【0044】
試験区分3(フィルムの作製及び評価)
・フィルム(F−1)の作製及び評価
厚さ200μmの無延伸ポリエステルフィルムを縦方向に3.5倍延伸した後、試験区分2で調製した処理剤(S−1)をポリエステル樹脂固形分が50mg/mとなるように塗布した。95℃で10秒乾燥した後、横方向に4倍延伸し、220℃で10秒熱固定した。処理剤を塗布した面に厚さ500オングストロームとなるようアルミ蒸着を行ない、その上にウレタン系接着剤(三井化学社製の商品名タケラックA−626/三井化学社製の商品名タケネートA−65=8/1(質量比)の混合物)を固形分が3g/mとなるように塗布し、60℃で1分乾燥した後、接着剤を介して厚さ50μmのエチレン・プロピレン共重合体製フィルム(密度0.900g/cm、MFR8.0g/10分)(H−1)を貼り合せ、40℃で50時間保管し、接着剤を硬化させて、フィルム(F−1)を得た。得られたフィルム(F−1)について、フィルム外観及び易接着性を下記の方法で評価した。
【0045】
・フィルム外観
フィルムの外観を目視にて観察し、熱水処理前の外観を下記の基準で評価した。更にフィルムを100℃の水に30分又は1時間浸漬し、室温で24時間乾燥した後、熱水処理後の外観を同様の基準で評価した。
◎:1時間浸漬しても変化はなし
○:30分浸漬しても変化はなかったが、1時間浸漬すると干渉縞が発生した
×:30分浸漬して干渉縞が発生した
【0046】
・易接着性
フィルムを幅1.5cmの短冊状に切り取り、剥離試験機(島津製作所社製の商品名オートグラフAG−G型)に供して処理剤塗布面とアルミ蒸着面の間で180℃剥離し、剥離に要する力を測定して、熱水処理前の易接着性を下記の基準で評価した。またフィルムを100℃の水に30分浸漬し、室温で24時間乾燥した後、熱水処理後の易接着性を同様の基準で評価した。
◎:剥離に要する力が5N/1.5cm以上
○:剥離に要する力が3.5N/1.5cm以上、5N/1.5cm未満
△:剥離に要する力が2N/1.5cm以上、3.5N/1.5cm未満
×:剥離に要する力が2N/1.5cm未満
【0047】
・フィルム(F−2)〜(F−13)及び(rf−1)〜(rf−6)の作製及び評価
フィルム(F−1)の作製及び評価と同様にして、フィルム(F−2)〜(F−13)及び(rf−1)〜(rf−6)を作製し、評価した。以上で作製したフィルムの内容及び評価した結果を表7にまとめて示した。












【0048】
【表7】
【0049】
表7において、
H−1:エチレン・プロピレン共重合体製フィルム(密度0.900g/cm、MFR8.0g/10分)
H−2:エチレン・1−ヘキセン共重合体製フィルム(密度0.930g/cm、MFR1.0g/10分)
H−3:エチレン・1−ブテン共重合体製フィルム(密度0.920g/cm、MFR2.1g/10分)
H−4:ポリエチレン製フィルム(密度0.927g/cm、MFR4.0g/10分)
*1:処理剤中にポリエステル樹脂が分散せず、フィルムに塗布できなかった
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構成単位A、構成単位B、構成単位C及び構成単位Dから構成されたポリエステル樹脂であって、構成単位Aを45〜49.7モル%、構成単位Bを0.3〜5モル%、構成単位Cを45〜49.7モル%及び構成単位Dを0.3〜5モル%(合計100モル%)の割合で有し、数平均分子量が7000〜9000且つ酸価が14〜20KOHmg/gであることを特徴とするポリエステル樹脂。
構成単位A:炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸、炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体、炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸及び炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体から選ばれる一つ又は二つ以上から形成された構成単位
構成単位B:炭素数9〜20の3価又は4価の芳香族ポリカルボン酸から形成された構成単位
構成単位C:炭素数2〜10のアルカンジオールから形成された構成単位
構成単位D:下記の化1で示されるジオール化合物から形成された構成単位
【化1】
(化1において、
:分子中に2〜30個のオキシブチレン単位で構成されたポリオキシブチレン基を有するポリブチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基)
【請求項2】
構成単位Bが、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸及び/又は1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸から形成された構成単位である請求項1記載のポリエステル樹脂。
【請求項3】
構成単位Dが、化1中のXが分子中に10〜20個のオキシブチレン単位で構成されたポリオキシブチレン基を有するポリブチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基である場合のものである請求項1又は2記載のポリエステル樹脂。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一つの項記載のポリエステル樹脂の製造方法であって、下記の工程1−1又は下記の工程1−2と、下記の工程2と、下記の工程3とを経ることを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
工程1−1:構成単位Aを形成することとなる炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体及び炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体から選ばれる一つ又は二つ以上と、構成単位Cを形成することとなる炭素数2〜10のアルカンジオールと、構成単位Dを形成することとなる化1で示されるジオール化合物とを、触媒の存在下でエステル交換反応させる工程
工程1−2:構成単位Aを形成することとなる炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸及び炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸から選ばれる一つ又は二つ以上と、構成単位Cを形成することとなる炭素数2〜10のアルカンジオールと、構成単位Dを形成することとなる化1で示されるジオール化合物とを用いて、触媒の存在下でエステル化反応させる工程
工程2:引き続き触媒の存在下で縮合重合反応させる工程
工程3:構成単位Bを形成することとなる炭素数9〜20の3又は4価の芳香族ポリカルボン酸を加え、引き続き触媒の存在下で解重合反応させる工程
【手続補正書】
【提出日】2015年6月15日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステル樹脂及びその製造方法に関する。繊維、不織布、フィルム、シート、ボトル、トレー、機械部品、電子機器部品等に、ポリエステル樹脂が広く利用されている。本発明はかかるポリエステル樹脂であって、特定の四つの構成単位から構成された新規のポリエステル樹脂及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種のポリエステル樹脂が知られており、これらのなかには特定の用途において有用なポリエステル樹脂も知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。かかる従来のポリエステル樹脂には、それぞれに特性があるが、その用途によって近年では、更に高度の要求に応える特性を備えたポリエステル樹脂の出現が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−209835号公報
【特許文献2】特開平02−050835号公報
【特許文献3】特開昭51−056883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、近年の更に高度の要求に応える新規のポリエステル樹脂及びその製造方法を提供する処にあり、具体的には特にアルミ蒸着ポリエステルフィルムの製造において有用な新規のポリエステル樹脂及びその製造方法を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、特定の四つの構成単位が特定割合で構成されたポリエステル樹脂であって、数平均分子量が7000〜9000且つ酸価が14〜20KOHmg/gである新規のポリエステル樹脂が正しく好適であることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、下記の構成単位A、構成単位B、構成単位C及び構成単位Dから構成されたポリエステル樹脂であって、構成単位Aを45〜49.7モル%、構成単位Bを0.3〜5モル%、構成単位Cを45〜49.7モル%及び構成単位Dを0.3〜5モル%(合計100モル%)の割合で有し、数平均分子量が7000〜9000且つ酸価が14〜20KOHmg/gであることを特徴とするポリエステル樹脂に係り、また本発明はかかるポリエステル樹脂の製造方法に係る。
【0007】
構成単位A:炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸、炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸から得られるエステル形成性誘導体、炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸及び炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸から得られるエステル形成性誘導体から選ばれる一つ又は二つ以上から形成された構成単位
【0008】
構成単位B:炭素数9〜20の3価又は4価の芳香族ポリカルボン酸から形成された構成単位
【0009】
構成単位C:炭素数2〜10のアルカンジオールから形成された構成単位
【0010】
構成単位D:下記の化1で示されるジオール化合物から形成された構成単位
【0011】
【化1】
【0012】
化1において、
:分子中に2〜30個のオキシブチレン単位で構成されたポリオキシブチレン基を有するポリブチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基
【0013】
先ず、本発明に係るポリエステル樹脂(以下、本発明の樹脂という)について説明する。本発明の樹脂は、前記の構成単位A、構成単位B、構成単位C及び構成単位Dから構成されたポリエステル樹脂である。かかる本発明の樹脂は、構成単位Aを形成することとなる化合物と、構成単位Bを形成することとなる化合物と、構成単位Cを形成することとなる化合物と、構成単位Dを形成することとなる化合物とを用いて縮合重合反応等を行なうことにより得られる。
【0014】
構成単位Aを形成することとなる化合物としては、1)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸等の炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸、2)フタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、1,4−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、ビス−2−ヒドロキシエチルフタレート、ビス−2−ヒドロキシエチルイソフタレート、ビス−2−ヒドロキシエチルテレフタラート、ビス−2−ヒドロキシエチル−2,6−ナフタレート、ビス−2−ヒドロキシエチル−1,4−ナフタレート等の炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸から得られるエステル形成性誘導体、3)コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、α、ω−ドデカンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、オクタデセニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸、4)コハク酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、アゼライン酸ジメチル、セバシン酸ジメチル、α、ω−ドデカンジカルボン酸ジメチル、ドデセニルコハク酸ジメチル、オクタデセニルジカルボン酸ジメチル、シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル、コハク酸ビス−2−ヒドロキシエチル、アジピン酸ビス−2−ヒドロキシエチル、アゼライン酸ビス−2−ヒドロキシエチル、セバシン酸ビス−2−ヒドロキシエチル、α、ω−ドデカンジカルボン酸ビス−2−ヒドロキシエチル、ドデセニルコハク酸ビス−2−ヒドロキシエチル、オクタデセニルジカルボン酸ビス−2−ヒドロキシエチル、シクロヘキサンジカルボン酸ビス−2−ヒドロキシエチル等の炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸から得られるエステル形成性誘導体が挙げられる。尚、エステル形成性誘導体というのはエステルを形成することとなる誘導体である。
【0015】
構成単位Bを形成することとなる化合物としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等の炭素数9〜20の3又は4価の芳香族ポリカルボン酸が挙げられるが、なかでも1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸が好ましい。
【0016】
構成単位Cを形成することとなる化合物としては、1,2−エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール等の炭素数2〜10のアルカンジオールが挙げられる。
【0017】
構成単位Dを形成することとなる化合物は、前記の化1で示されるジオール化合物である。化1中のXは、分子中に2〜30個のオキシブチレン単位で構成されたポリオキシブチレン基を有するポリブチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基であるが、なかでも分子中に10〜20個のオキシブチレン単位で構成されたポリオキシブチレン基を有するポリブチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基が好ましい。
【0018】
本発明の樹脂は、以上説明した構成単位A〜Dで構成されたものであり、その構成比率が、構成単位Aを45〜49.7モル%、構成単位Bを0.3〜5モル%、構成単位Cを45〜49.7モル%及び構成単位Dを0.3〜5モル%(合計100モル%)の割合で有するものである。
【0019】
また本発明の樹脂は、その数平均分子量が7000〜9000のものである。本発明において数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によるポリスチレン換算の数平均分子量である。更に本発明の樹脂は、その酸価が14〜20KOHmg/gのものである。
【0020】
本発明の樹脂は、その用途に特に制限はないが、アルミ蒸着ポリエステルフィルムの製造に用いた場合に、その効果の発現が高い。
【0021】
次に、本発明に係るポリエステル樹脂の製造方法(以下、本発明の製造方法という)について説明する。本発明の製造方法は、下記の工程1−1又は下記の工程1−2と、下記の工程2と、下記の工程3とを経る方法である。
【0022】
工程1−1:構成単位Aを形成することとなる炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸から得られるエステル形成性誘導体及び炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸から得られるエステル形成性誘導体から選ばれる一つ又は二つ以上と、構成単位Cを形成することとなる炭素数2〜10のアルカンジオールと、構成単位Dを形成することとなる化1で示されるジオール化合物とを、触媒の存在下でエステル交換反応させる工程
【0023】
工程1−2:構成単位Aを形成することとなる炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸及び炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸から選ばれる一つ又は二つ以上と、構成単位Cを形成することとなる炭素数2〜10のアルカンジオールと、構成単位Dを形成することとなる化1で示されるジオール化合物とを、触媒の存在下でエステル化反応させる工程
【0024】
工程2:引き続き触媒の存在下で縮合重合反応させる工程
【0025】
工程3:構成単位Bを形成することとなる炭素数9〜20の3又は4価の芳香族ポリカルボン酸を加え、引き続き触媒の存在下で解重合反応させる工程
【0026】
工程1−1のエステル交換反応、工程1−2のエステル化反応、工程2の縮合重合反応及び工程3の解重合反応には触媒を用いる。かかる触媒としては、エステル交換反応においてはエステル交換触媒として、またエステル化反応においてはエステル化触媒として、更に縮合重合反応においては縮合重合触媒として、更にまた解重合反応においては解重合触媒として機能するものを用いるのが好ましく、具体的には、テトラブチルチタネート等のチタン化合物、酢酸亜鉛、酢酸マグネシウム等の金属の酢酸塩、三酸化アンチモン、ヒドロキシブチルスズオキサイド、オクチル酸スズ等の有機スズ化合物等を用いるのが好ましい。これらの触媒は、工程1−1又は工程1−2で用いたものを、そのまま工程2及び工程3でも引き続き利用することができる。
【0027】
工程1−1のエステル交換反応や工程1−2のエステル化反応の条件に特に制限はないが、窒素雰囲気下に170〜250℃の温度条件下で行なうことが好ましく、また反応時間は、原料の反応性や反応速度の観点から、3〜8時間とすることが好ましい。
【0028】
工程2の縮合重合反応の条件にも特に制限はないが、高温高真空下にジオール成分や低分子量化合物を留去しながら、所望の分子量に達するまで縮合重合反応を行なう観点から、反応温度は230〜280℃とすることが好ましく、また圧力は100PKa以下とすることが好ましく、更に大気圧から100PKa以下に到達するまでの減圧操作は30〜180分かけて徐々に行なうことが好ましい。
【0029】
工程3の解重合反応の条件にも特に制限はないが、窒素雰囲気下に150〜250℃の温度条件下で行なうことが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
以上説明した本発明によると、近年の高度の要求に応える新規のポリエステル樹脂を提供でき、具体的には特にアルミ蒸着ポリエステルフィルムの製造において有用な新規のポリエステル樹脂を提供できるという効果がある。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例等において、部は質量部を示し、また%は質量%を示す。
【0032】
試験区分1(ポリエステル樹脂の合成)
・実施例1{ポリエステル樹脂(P−1)の合成}
構成単位Aを形成することとなる化合物としてテレフタル酸(A−1)100.6g、イソフタル酸(A−2)83.9g及びセバシン酸(A−3)25.5g、また構成単位Cを形成することとなる化合物としてネオペンチルグリコール(C−1)63.1g及びエチレングリコール(C−2)39.2g、更に構成単位Dを形成することとなる化合物としてポリテトラメチレンエーテルグリコール27.8g、そして触媒として酢酸亜鉛(II)・二水和物0.0645gを反応容器に仕込み、反応容器内を窒素置換した後、反応容器を密閉し、180℃まで2時間かけて昇温した。更に、反応容器内に副生する水を系外に除きながら240℃まで3時間かけて昇温した。その後、徐々に反応容器の圧力を常圧に戻し、250℃まで昇温して1時間エステル化反応を行なって、エステル化物を得た。次に270℃まで昇温後、徐々に反応容器内を減圧して30分後に100Paとし、同減圧下で2時間重縮合反応を行ったところで、窒素にて常圧に戻し、250℃まで冷却した。冷却後、構成単位Bを形成することとなる化合物として1,2,5−ベンゼントリカルボン酸(B−1)5.3gを加え、反応容器を密閉して、窒素で0.3MPaまで加圧後、攪拌しながら1時間解重合反応を行ない、ポリエステル樹脂300gを得た。このポリエステル樹脂を分析したところ、テレフタル酸、イソフタル酸及びセバシン酸から形成された構成単位Aを49.0モル%、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸から形成された構成単位Bを1.0モル%、ネオペンチルグリコール及びエチレングリコールから形成された構成単位Cを49モル%及びポリテトラメチレンエーテルグリコールから形成された構成単位Dを1.0モル%(合計100モル%)の割合で有していて、数平均分子量が8000、酸価が16KOHmg/gのものであった。これをポリエステル樹脂(P−1)とした。
【0033】
・実施例又は参考例2〜5、7〜12及び比較例1〜4{ポリエステル樹脂(P−2)(P−5)、(P−7)〜(P−12)及び(rp−1)〜(rp−4)の合成}
実施例1のポリエステル樹脂(P−1)の合成と同様にして、実施例又は参考例2〜5、7〜12のポリエステル樹脂(P−2)〜(P−5)、(P−7)〜(P−12)及び比較例1〜4のポリエステル樹脂(rp−1)〜(rp−4)を合成した。以上の各例で用いた化合物の内容を表1〜表4に、また以上の各例で合成したポリエステル樹脂の内容を表5にまとめて示した。
【0034】
【表1】





【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】

















【0038】
【表5】
【0039】
表5において、
構成単位A〜Dの種類:各構成単位を形成することとなる表1〜表4に記載の化合物の名称で記載した。
【0040】
試験区分2(アルミ蒸着ポリエステルフィルム製造用の処理剤の調製)
・処理剤(S−1)の調製
試験区分1で合成したポリエステル樹脂(P−1)54質量部、該ポリエステル樹脂(P−1)の酸価16KOHmg/gの1.5等量に相当する25質量%アンモニア水1.6質量部、2−プロパノール54質量部、水154質量部及びテトラデシルアルコールのエチレンオキサイド付加物(数平均分子量600)(N−1)6.0質量部を反応容器に仕込み、撹拌しながら80℃に加温して溶液を得た。攪拌しながらこの溶液から常圧下で水と2−プロパノール93.6質量部を留去した後、オキサゾリン系架橋剤水溶液(日本触媒社製の商品名エポクロスWS−700)(K−1)24質量部を加え、ポリエステル樹脂(P−1)を27.0質量%、架橋剤(K−1)を3.0質量%及びテトラデシルアルコールのエチレンオキサイド付加物(N−1)を3.0質量%の割合で含有する処理剤(S−1)を得た。
【0041】
・処理剤(S−2)〜(S−5)、(S−7)〜(S−13)及び(rs−1)〜(rs−6)の調製
処理剤(S−1)の調製と同様にして、処理剤(S−2)〜(S−5)、(S−7)〜(S−13)及び処理剤(rs−1)〜(rs−6)を調製した。以上の内容を表6にまとめて示した。
【0042】
【表6】
【0043】
表6において、
K−1:オキサゾリン系架橋剤(日本触媒社製の商品名エポクロスWS−700)
rk−1:エポキシ系架橋剤(ナガセケムテックス社製の商品名デナコールEM−160)
rk−2:メラミン系架橋剤(三和ケミカル社製の商品名ニカラックMX−035)
N−1:テトレデシルアルコールのエチレンオキサイド付加物(数平均分子量600)
N−2:ドデシルアルコールのエチレンオキサイド付加物(数平均分子量450)
N−3:オクタデシルアルコールのエチレンオキサイド付加物(数平均分子量700)
N−4:ヘキサデシルアルコールのエチレンオキサイド付加物(数平均分子量500)
【0044】
試験区分3(フィルムの作製及び評価)
・フィルム(F−1)の作製及び評価
厚さ200μmの無延伸ポリエステルフィルムを縦方向に3.5倍延伸した後、試験区分2で調製した処理剤(S−1)をポリエステル樹脂固形分が50mg/mとなるように塗布した。95℃で10秒乾燥した後、横方向に4倍延伸し、220℃で10秒熱固定した。処理剤を塗布した面に厚さ500オングストロームとなるようアルミ蒸着を行ない、その上にウレタン系接着剤(三井化学社製の商品名タケラックA−626/三井化学社製の商品名タケネートA−65=8/1(質量比)の混合物)を固形分が3g/mとなるように塗布し、60℃で1分乾燥した後、接着剤を介して厚さ50μmのエチレン・プロピレン共重合体製フィルム(密度0.900g/cm、MFR8.0g/10分)(H−1)を貼り合せ、40℃で50時間保管し、接着剤を硬化させて、フィルム(F−1)を得た。得られたフィルム(F−1)について、フィルム外観及び易接着性を下記の方法で評価した。
【0045】
・フィルム外観
フィルムの外観を目視にて観察し、熱水処理前の外観を下記の基準で評価した。更にフィルムを100℃の水に30分又は1時間浸漬し、室温で24時間乾燥した後、熱水処理後の外観を同様の基準で評価した。
◎:1時間浸漬しても変化はなし
○:30分浸漬しても変化はなかったが、1時間浸漬すると干渉縞が発生した
×:30分浸漬して干渉縞が発生した
【0046】
・易接着性
フィルムを幅1.5cmの短冊状に切り取り、剥離試験機(島津製作所社製の商品名オートグラフAG−G型)に供して処理剤塗布面とアルミ蒸着面の間で180℃剥離し、剥離に要する力を測定して、熱水処理前の易接着性を下記の基準で評価した。またフィルムを100℃の水に30分浸漬し、室温で24時間乾燥した後、熱水処理後の易接着性を同様の基準で評価した。
◎:剥離に要する力が5N/1.5cm以上
○:剥離に要する力が3.5N/1.5cm以上、5N/1.5cm未満
△:剥離に要する力が2N/1.5cm以上、3.5N/1.5cm未満
×:剥離に要する力が2N/1.5cm未満
【0047】
・フィルム(F−2)〜(F−5)、(F−7)〜(F−13)及び(rf−1)〜(rf−6)の作製及び評価
フィルム(F−1)の作製及び評価と同様にして、フィルム(F−2)〜(F−5)、(F−7)〜(F−13)及び(rf−1)〜(rf−6)を作製し、評価した。以上で作製したフィルムの内容及び評価した結果を表7にまとめて示した。













【0048】
【表7】
【0049】
表7において、
H−1:エチレン・プロピレン共重合体製フィルム(密度0.900g/cm、MFR8.0g/10分)
H−2:エチレン・1−ヘキセン共重合体製フィルム(密度0.930g/cm、MFR1.0g/10分)
H−3:エチレン・1−ブテン共重合体製フィルム(密度0.920g/cm、MFR2.1g/10分)
H−4:ポリエチレン製フィルム(密度0.927g/cm、MFR4.0g/10分)
*1:処理剤中にポリエステル樹脂が分散せず、フィルムに塗布できなかった
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構成単位A、構成単位B、構成単位C及び構成単位Dから構成されたポリエステル樹脂であって、構成単位Aを45〜49.7モル%、構成単位Bを0.3〜5モル%、構成単位Cを45〜49.7モル%及び構成単位Dを0.3〜5モル%(合計100モル%)の割合で有し、数平均分子量が7000〜9000且つ酸価が14〜20KOHmg/gであることを特徴とするポリエステル樹脂。
構成単位A:炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸、炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸から得られるエステル形成性誘導体、炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸及び炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸から得られるエステル形成性誘導体から選ばれる一つ又は二つ以上から形成された構成単位
構成単位B:炭素数9〜20の3価又は4価の芳香族ポリカルボン酸から形成された構成単位
構成単位C:炭素数2〜10のアルカンジオールから形成された構成単位
構成単位D:下記の化1で示されるジオール化合物から形成された構成単位
【化1】
(化1において、
:分子中に2〜30個のオキシブチレン単位で構成されたポリオキシブチレン基を有するポリブチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基)
【請求項2】
構成単位Bが、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸及び/又は1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸から形成された構成単位である請求項1記載のポリエステル樹脂。
【請求項3】
構成単位Dが、化1中のXが分子中に10〜20個のオキシブチレン単位で構成されたポリオキシブチレン基を有するポリブチレングリコールから全ての水酸基を除いた残基である場合のものである請求項1又は2記載のポリエステル樹脂。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つの項記載のポリエステル樹脂の製造方法であって、下記の工程1−1又は下記の工程1−2と、下記の工程2と、下記の工程3とを経ることを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
工程1−1:構成単位Aを形成することとなる炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸から得られるエステル形成性誘導体及び炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸から得られるエステル形成性誘導体から選ばれる一つ又は二つ以上と、構成単位Cを形成することとなる炭素数2〜10のアルカンジオールと、構成単位Dを形成することとなる化1で示されるジオール化合物とを、触媒の存在下でエステル交換反応させる工程
工程1−2:構成単位Aを形成することとなる炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸及び炭素数4〜22の脂肪族ジカルボン酸から選ばれる一つ又は二つ以上と、構成単位Cを形成することとなる炭素数2〜10のアルカンジオールと、構成単位Dを形成することとなる化1で示されるジオール化合物とを用いて、触媒の存在下でエステル化反応させる工程
工程2:引き続き触媒の存在下で縮合重合反応させる工程
工程3:構成単位Bを形成することとなる炭素数9〜20の3又は4価の芳香族ポリカルボン酸を加え、引き続き触媒の存在下で解重合反応させる工程