【実施例】
【0049】
次に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0050】
(ポリプロピレン系樹脂の製造)
〔合成例1:ポリプロピレン系樹脂(以降、プロピレン系樹脂ということもある。)(A2)の製造〕
(1)固体触媒成分の調製
無水塩化マグネシウム95.2g、デカン442mlおよび2‐エチルヘキシルアルコール390.6gを用いて130℃で2時間加熱反応を行って均一溶液とした後、この溶液中に無水フタル酸21.3gを添加し、さらに130℃にて1時間攪拌混合を行い、無水フタル酸を溶解させた。このようにして得られた均一溶液を室温に冷却した後、−20℃に保持した四塩化チタン200ml中に、この均一溶液の75mlを1時間にわたって滴下装入した。装入終了後、この混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)5.22gを添加し、これより2時間同温度にて攪拌保持した。2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を275mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間加熱した。反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンにて溶液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。洗浄後の固体部を、固体状チタン触媒成分(A)とした。固体状チタン触媒成分(A)は、デカンスラリーとして保存したが、この内の一部を触媒組成を調べる目的で乾燥した。前記固体状チタン触媒成分(A)の組成は、チタン2.3質量%、塩素61質量%、マグネシウム19質量%、DIBP 12.5質量%であった。なお、前記遊離チタン化合物の検出は次の方法で行った。予め窒素置換した100mlの枝付きシュレンクに上記固体触媒成分の上澄み液10mlを注射器で採取し装入した。次に、窒素気流にて溶媒ヘキサンを乾燥し、さらに30分間真空乾燥した。これに、イオン交換水40ml、50容量%硫酸10mlを装入し30分間攪拌した。この水溶液をろ紙を通して100mlメスフラスコに移し、続いて鉄(II)イオンのマスキング剤としてconc.H3PO4 1mlとチタンの発色試薬として3%H
2O
2水溶液 5mlを加え、さらにイオン交換水で100mlにメスアップした。このメスフラスコを振り混ぜ、20分後にUVを用い420nmの吸光度を観測し遊離チタンの検出を行った。この吸収が観測されなくなるまで遊離チタンの洗浄除去および遊離チタンの検出を行った。
(2)予備重合触媒成分の調製
内容積500mlの攪拌機付きの三つ口フラスコを窒素ガスで置換した後、脱水処理したヘプタンを400ml、トリエチルアルミニウム19.2mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン3.8mmol、固体状チタン触媒成分(A)4gを加えた。内温を20℃に保持し、攪拌しながらプロピレンガスを8g/hrの速度で連続的に導入した。1時間後、攪拌を停止し結果的に固体状チタン触媒成分(A)1g当たり2gのプロピレンが重合した予備重合触媒成分(B)を得た。
(3)重合
内容積10Lの攪拌機付きステンレス製オートクレーブを充分乾燥し、窒素置換の後、脱水処理したヘプタン6L、トリエチルアルミニウム12.5mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.6mmolを加えた。系内の窒素をプロピレンで置換した後に、水素を0.55MPa−G装入し(※1)、続いて攪拌しながらプロピレンおよびエチレンを導入した。なお、導入量は、重合槽内の気相部のエチレン濃度(※2)が1.4mol%となるように調整した。内温80℃、全圧1.1MPa−Gに系内が安定した後(※3)、予備重合触媒成分(B)をTi原子換算で0.10mmol含んだヘプタンスラリー20.8mlを加え、全圧とエチレン濃度とを保つようにプロピレンおよびエチレンを連続的に供給しながら80℃で3時間重合をおこなった。所定時間経過したところで50mlのメタノールを添加し反応を停止し、降温、脱圧した。内容物を全量フィルター付きろ過槽へ移し60℃に昇温し固液分離した。さらに、60℃のヘプタン6Lで固体部を2回洗浄した。このようにして得られたプロピレン・エチレン共重合体(プロピレン系樹脂(A2))を真空乾燥した。得られたプロピレン系樹脂(A2)の、メルトフローレート(MFR)(ASTM D−1238、測定温度230℃、荷重2.16kg)は30.0g/10分、13C−NMRより算出した、プロピレン由来の構成単位とエチレン由来の構成単位との合計を100質量%とした際のエチレン由来の構成単位の質量が3.4質量%、DSC融点(JIS−K7121:1987に準拠、DSCで測定した結晶融点)が142℃であった。
【0051】
〔合成例2〜7〕
合成例1において、重合条件である、※1:重合槽への水素の装入量、※2:重合槽内の気相部のエチレン濃度、および※3:安定後の系内の内温・全圧を表1に記載したとおりに変更したこと以外は合成例1と同様にして、プロピレン系樹脂(A1、A3、A4およびプロピレン系樹脂B1、B2、B3を得た。
【0052】
(実施例1)
(ポリプロピレン系樹脂組成物の製造)
ポリプロピレン系樹脂(D1)は、プロピレンとエチレンとの共重合体で、JIS−K7121:1987に準拠して示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶融点が142℃のプロピレン系樹脂(A2)95質量部と、プロピレンとエチレンとの共重合体で、JIS−K7121:1987に準拠して示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶融点が162℃のポリプロピレン系樹脂(B2)5質量部との混合物で構成した。ここで、ポリプロピレン系樹脂(D1)に対しては、リン酸化防止剤としてトリス(2、4‐ジ‐t‐ブチルフェニル)フォスフェートを0.10質量部、中和剤としてハイドロタルサイトを0.04質量部加えた。このようなポリプロピレン系樹脂(D1)100質量部に対し、核剤(C1)として、アデカスタブNA−71(ADEKA社製)を0.15質量部加えて混合した後、スクリュー直径30mm、L/D(スクリュー径/スクリュー長さ)=42の二軸押出機に供給し、回転数250rpm、設定温度200〜220℃の条件で溶融混錬し、ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。ここで、ポリプロピレン系樹脂(D1)の配合樹脂及び酸化物、MFR、結晶融点、Wp1及びWp2、核剤の配合を表2に示す。
【0053】
(ボトルの製造)
得られたポリプロピレン系樹脂組成物を用いて、コールドパリソン法によって、質量18.4gで500ml用ボトルを成形した。なお、胴部における平均肉厚は360μmであった。
【0054】
(薄膜の形成)
特開平8−53117号公報に開示されたボトル内面にDLC膜を成膜する方法と同様の方法を用いて、ボトルの内面に対する除去工程及びDLC膜の成膜工程を行った。このとき、DLC成膜装置(PNS‐1、ユーテック社製)を用いて、ボトル内外を5Paまで真空引きした後、除去工程として、空気流量80sccmによるプラズマ1秒、次いで、成膜工程として、アセチレンガス流量80sccmによるプラズマ3秒を発生させた。プラズマ発生には、13.56MHzの高周波出力2000Wを用いた。DLC膜の膜厚は全て30nmとなるようにした。除去工程の種類を、表2に記載した。
【0055】
(実施例2〜16)
除去工程のプラズマ処理に用いるガスの種類及び/又は薄膜の種類を変更した以外は、実施例1と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。ガスの種類及び/又は薄膜の種類を表2に示す。SiOx膜、AlOx膜、SiOC膜は、特開2008−127053号公報に開示された容器の内表面へ成膜する方法と同様の方法を用いて、ボトルの内面に各薄膜を形成した。薄膜がSiOx膜であるとき、ワイヤーとしてイリジウムワイヤーを用い、原料ガスとしてトリメチルシランを1.5sccmを供給した。オゾンを酸素で10%に希釈して混合ガスとし、この混合ガスを100sccm供給した。ワイヤーとボトルの内側の底面との距離を30mmとした。ワイヤーとボトルの内側の側面との距離は約30mmとした。イリジウムワイヤーに直流電流を印加し、800℃のホットワイヤーとした。成膜時の真空チャンバ内の圧力を20Paとした。成膜時間は15秒とした。薄膜がAlOx膜であるとき、原料ガスをジメチルアルミイソプロポキシドに変更した以外は、SiOx膜と同様に成膜した。薄膜がSiOC膜であるとき、原料ガスをビニルシランに変更した以外は、SiOx膜と同様に成膜した。
【0056】
(実施例17)
除去工程を、発熱CVD法によって生じた水素ラジカルを用いる工程に変更し、薄膜の種類を変更した以外は、実施例1と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。薄膜の種類を表2に示す。
【0057】
(実施例18)
(ポリプロピレン系樹脂組成物の製造)
ポリプロピレン系樹脂(D1)100質量部と、核剤(C1)0.15質量部と、変性低分子オレフィン系改質剤(X)1.0質量部と、を混合した後、スクリュー直径30mm、L/D(スクリュー径/スクリュー長さ)=42の二軸押出機に供給し、回転数250rpm、設定温度200〜220℃の条件で溶融混錬し、ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。このポリプロピレン系樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。変性低分子オレフィン系改質剤(X)として、90モル%のプロピレン、5モル%のエチレン及び5モル%の1‐ブテンを構成単位とするポリオレフィン(オレフィン部分が数平均分子量:4500)を無水マレイン酸でグラフト化した樹脂材料を製造した。ポリオレフィンと無水マレイン酸のモル比は、99/1とした。改質剤の配合量を、表2に記載した。
【0058】
(実施例19〜24)
除去工程のプラズマ処理に用いるガスの種類及び/又は薄膜の種類を変更した以外は、実施例18と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。成膜方法は、実施例1〜17と同様とした。
【0059】
(実施例25)
ポリプロピレン系樹脂(D1)100質量部と、核剤(C1)0.05質量部とを混合した以外は、実施例1と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。
【0060】
(実施例26)
ポリプロピレン系樹脂(D1)100質量部と、核剤(C1)0.5質量部とを混合した以外は、実施例1と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。
【0061】
(実施例27)
ポリプロピレン系樹脂(D2)を、プロピレンとエチレンとの共重合体で、JIS−K7121:1987に準拠して示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶融点が142℃のプロピレン系樹脂(A2)98質量部と、プロピレンとエチレンとの共重合体で、JIS−K7121:1987に準拠して示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶融点が162℃のポリプロピレン系樹脂(B2)2質量部との混合物で構成した。ポリプロピレン系樹脂(D2)に対して、核剤(C2)として、アデカスタブNA−21(ADEKA社製)0.15質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。
【0062】
(実施例28)
ポリプロピレン系樹脂(D3)を、プロピレンとエチレンと1‐ヘキセンとの共重合体で、JIS−K7121:1987に準拠して示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶融点が150℃のプロピレン系樹脂(A1)60質量部と、プロピレン単体からなり、JIS−K7121:1987に準拠して示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶融点が165℃のプロピレン系樹脂(B1)40質量部との混合物で構成し、核剤の配合量を0.5質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。
【0063】
(実施例29)
ポリプロピレン系樹脂(D4)を、プロピレンとエチレンとの共重合体で、JIS−K7121:1987に準拠して示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶融点が136℃のプロピレン系樹脂(A3)60質量部と、プロピレンとエチレンとの共重合体で、JIS−K7121:1987に準拠して示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶融点が151℃のプロピレン系樹脂(B3)40質量部との混合物で構成した以外は、実施例1と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。
【0064】
(実施例30)
ポリプロピレン系樹脂(D1)100質量部に対し、有機過酸化物として2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンを0.005質量部添加した以外には、実施例1と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。
【0065】
(実施例31)
ポリプロピレン系樹脂(D1)100質量部に対し、有機過酸化物として2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンを0.04質量部添加した以外には、実施例1と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。
【0066】
(実施例32)
ポリプロピレン系樹脂(D1)100質量部に対し、核剤(C1)0.15質量部とともに、改質剤としてアイマーブP−125(出光興産社製)を5.0質量部加えて混合した後、二軸押出機に供給した以外は、実施例7と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン成形体を得た。
【0067】
(比較例1)
ポリプロピレン系樹脂(D5)を、プロピレンとエチレンとの共重合体で、JIS−K7121:1987に準拠して示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶融点が162℃のプロピレン系樹脂(B2)100質量部に変更し、除去工程のプラズマ処理に用いるガスの種類をN
2に変更した以外は、実施例1と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。
【0068】
(比較例2)
除去工程のプラズマ処理に用いるガスの種類をO
2に変更した以外は、比較例1と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。
【0069】
(比較例3)
除去工程を行わなかった以外は、比較例1と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。
【0070】
(比較例4)
成膜時間を10秒とし、薄膜の膜厚を100nmとした以外は、比較例1と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。
【0071】
(比較例5)
除去工程及び成膜工程を行わなかった以外は、比較例1と同様にして、ボトルを得た。
【0072】
(比較例6)
ポリプロピレン系樹脂(D5)に、変性低分子オレフィン系改質剤(X)を1.0質量部添加し、除去工程を行わなかった以外は、比較例1と同様にして、ボトルを得た。
【0073】
(比較例7)
核剤(C1)に替えて、核剤(C3)として、一般式(化1)で表される有機リン酸エステル化合物には該当しない1,3,2,4‐ジ‐(p‐メチルベンジルデン)ソルビトールを主成分とするゲルオールMD(新日本理化社製)0.20質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。
【0074】
(比較例8)
ポリプロピレン系樹脂(D1)に、変性低分子オレフィン系改質剤(X)1.0質量部添加した以外は、比較例7と同様にして、ボトルを得た。
【0075】
(比較例9)
薄膜の種類をSiOx膜に変更した以外は、比較例3と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。
【0076】
(比較例10)
薄膜の種類をSiOx膜に変更した以外は、比較例1と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。
【0077】
(比較例11)
薄膜の種類をSiOx膜に変更した以外は、比較例2と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。
【0078】
(比較例12)
薄膜の種類をSiOx膜に変更した以外は、比較例6と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。
【0079】
(比較例13)
薄膜の種類をSiOx膜に変更した以外は、比較例7と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。
【0080】
(比較例14)
薄膜の種類をAlOx膜に変更した以外は、比較例3と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。
【0081】
(比較例15)
薄膜の種類をAlOx膜に変更した以外は、比較例6と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。
【0082】
(比較例16)
薄膜の種類をAlOx膜に変更した以外は、比較例7と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。
【0083】
(比較例17)
薄膜の種類をSiOC膜に変更した以外は、比較例6と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。
【0084】
(比較例18)
薄膜の種類をSiOC膜に変更した以外は、比較例7と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。
【0085】
(比較例19)
薄膜の種類をSiOC膜に変更した以外は、比較例8と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。
【0086】
(比較例20)
ポリプロピレン系樹脂(D6)を、プロピレンとエチレンとの共重合体で、JIS−K7121:1987に準拠して示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶融点が128℃のプロピレン系樹脂(A4)95質量部と、プロピレンとエチレンとの共重合体で、JIS−K7121:1987に準拠して示差走査熱量計(DSC)で測定した結晶融点が162℃のプロピレン系樹脂(B2)5質量部との混合物で構成した以外は、実施例1と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。
【0087】
(比較例21)
ポリプロピレン系樹脂(D1)100質量部に対し、有機過酸化物として2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンを0.003質量部添加した以外には、実施例1と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。
【0088】
(比較例22)
ポリプロピレン系樹脂(D1)100質量部に対し、有機過酸化物として2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンを0.045質量部添加した以外には、実施例1と同様にして、ボトル状の被覆ポリプロピレン系成形体を得た。
【0089】
(評価方法)
ポリプロピレン系樹脂(D1)〜(D6)のMFR、結晶融点、構成単位の含有量、Wp1及びWp2は、次の通り測定した。
【0090】
(MFR)
MFRは、ASTM D−1238に準拠して、測定温度230℃、2.16kg荷重で測定した。有機過酸化物を添加した場合は、ポリプロピレン系樹脂(D1)〜(D6)に有機過酸化物が添加された混合物についてMFRを測定した。
【0091】
(結晶融点)
結晶融点は、JIS−K7121:1987に準拠して示差走査熱量計(DSC)(パーキンエルマー社製 Diamond DSC)で測定した。ここで測定した第3stepにおける吸熱ピークの頂点を結晶融点(Tm[℃])と定義した。吸熱ピークが複数ある場合はピーク高さが最大となる吸熱ピーク頂点を結晶融点(Tm[℃])と定義する。
(測定条件)
測定環境:窒素ガス雰囲気
サンプル量:5mg
サンプル形状:プレスフィルム(230℃成形、厚み200〜400μm)
第1step:30℃より10℃/minで240℃まで昇温し、10min間保持する。
第2step:10℃/minで60℃まで降温する。
第3step:10℃/minで240℃まで昇温する。
【0092】
(構成単位の含有量)
プロピレン系樹脂(A1)〜(A4)およびプロピレン系樹脂(B1)〜(B3)中の各構成単位の含有量は
13C−NMRにより以下の条件で測定して求めた。
(
13C−NMR測定条件)
測定装置:日本電子製LA400型核磁気共鳴装置
測定モード:BCM(Bilevel Complete decoupling)
観測周波数:100.4MHz
観測範囲:17006.8Hz
パルス幅:C核45°(7.8μ秒)
パルス繰り返し時間:5秒
試料管:5mmφ
試料管回転数:12Hz
積算回数:20000回
測定温度:125℃
溶媒:1,2,4‐トリクロロベンゼン:0.35ml/重ベンゼン:0.2ml
試料量:約40mg
【0093】
(昇温分別クロマトグラフ(TREF))
プロピレン系樹脂組成物の昇温分別クロマトグラフ(TREF)による溶出曲線は、以下のようにして得た。温度160℃に調整したTREFカラムに試料溶液を導入し、60分間溶解させたのち95℃まで降温させて45分静置する。次いで速度0.5℃/分にて徐々に0℃まで降温し、試料を充填剤に吸着させる。その後カラムを1.0℃/分にて140℃まで昇温し、溶出曲線を得た。以下に測定装置および測定条件を示す。得られた溶出曲線において、主溶出ピーク温度をTpとしたき、0〜135℃における全溶出量に対して、Tpより高い温度範囲における溶出量をWp1(質量%)とし、10℃以下の温度範囲における溶出量をWp2(質量%)とした。
1)測定装置
・測定装置:Polymer ChAR 社製 TREF200+
・TREFカラム:ステンレスカラム (3/8’’ o.d. x 15cm)
・フローセル:GLサイエンス社製 光路長 1mm KBrセル
・送液ポンプ:Agilent Technologies 1200 Series
・バルブオーブン:GLサイエンス社製 MODEL554オーブン
・メインオーブン:Agilent Technologies 7890A GC System
・二系列温調器:理学工業社製 REX−C100温調器
・検出器:Polymer ChAR 社製 IR4
・FOXBORO社製 MIRAN 1A CVF
・10方バルブ:バルコ社製 電動バルブ
・ループ:バルコ社製 500μリットルループ
2)測定条件
・溶媒:オルトジクロロベンゼン(300ppm BHT含有)
・試料濃度:0.40%(w/v)
・注入量:0.3ml
・ポンプ流量:0.5lmL/分
・検出波数:3.41μm
・カラム充填剤:ステンレス球
・カラム温度分布:±2.0℃以内
【0094】
表1に、プロピレン系樹脂(A1)〜(A4)、(B1)〜(B3)の重合条件、MFR、エチレン含量、結晶化融点を示す。表2又は表3に、各実施例又は各比較例について、それぞれ、ポリプロピレン系樹脂(D1)〜(D6)に配合したプロピレン系樹脂(A1)〜(A4)、(B1)〜(B3)の種類及び配合量、有機過酸化物の配合量、ポリプロピレン系樹脂(D1)〜(D6)のMFR、結晶融点、Wp1及びWp2、核剤の成分、配合量、除去工程のプラズマ処理に用いるガスの種類及び薄膜の種類を示す。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】
(BIF)
各ボトルについて、薄膜形成前後の酸素透過度を、酸素透過率測定装置(MODERNCONTROL社製 型式OX‐TRAN2/21)を使用して、23℃で測定した。薄膜形成前の酸素透過度を、薄膜形成後の酸素透過度で除して、向上倍率(BIF)を求めた。薄膜形成前後の酸素透過度及びBIFを表4に示す。
【0099】
【表4】
【0100】
各実施例は、いずれも、被覆ポリプロピレン系成形体の酸素透過率が、薄膜を被覆していないポリプロピレン系成形体の酸素透過率の10分の1以下であり、ガスバリア性に優れていた。一方、比較例1〜4、6、9〜15、17は、要件(D−2)(D−3)(D−4)を満たさないため、表面平滑性が不足し、又はブリード物の影響が大きくなって、ガスバリア性が劣った。比較例7、8、16、18、19は、要件(C−2)を満たさないため、表面平滑性が不足し、又はブリード物の影響が大きくなって、ガスバリア性が劣った。比較例20は、要件(D−2)(D−4)を満たさないため、表面平滑性が不足し、又はブリード物の影響が大きくなって、ガスバリア性が劣った。比較例21、22は、要件(D−1)を満たさないため、表面平滑性が不足し、ガスバリア性が劣った。