【解決手段】本発明の配線板化学処理装置10では、各吸引ダクト20の長手方向の複数位置に配管接続部29を設けてベンチュリポンプ32から延びた吸引用配管35を接続したので、吸引ダクト20の長手方向における位置に応じた吸引力の差が緩和される。これにより、吸引ダクト20により従来より均一に配線板90から化学薬液を排除した部分に、新たに噴出ノズル14からの化学薬液を吹き付けることができ、配線板90に対する化学薬液による化学処理が従来より均一になる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
以下、本発明の一実施形態を
図1〜
図6に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の配線板化学処理装置10は、配線板90にエッチング処理を行うエッチング処理装置であって、配線板90を水平方向に搬送する搬送機構11を備えている。その搬送機構11には、複数の搬送ローラペア12が配線板90の搬送方向に並べて備えられている。各搬送ローラペア12は、搬送方向と直交する水平方向に延びた1対の搬送ローラ12R,12Rを上下に並べてなり、それら各搬送ローラペア12の両搬送ローラ12R,12Rの間に配線板90が挟まれて水平方向に搬送される。
【0009】
配線板化学処理装置10は、搬送機構11を収容するケース13を備えている。ケース13は、直方体形状をなし、その長手方向で対向する1対の側壁に基板挿入口13Aと基板排出口13Bとを有している。そして、配線板90が、基板挿入口13Aからケース13内に挿入され、搬送機構11により基板排出口13Bへと搬送されてケース13外へと排出される。
【0010】
ケース13内には、配線板90に対して上方から本発明の化学薬液に相当するエッチング液を噴出する複数の噴出ノズル14と、配線板90に対して下方からエッチング液を噴出する複数の噴出ノズル15とが備えられている。それら噴出ノズル14,15群は、それぞれが上下に延びたパイプ状をなしている。また、
図2に示すように、噴出ノズル14群を上方から見ると、複数行、複数列に並べられて、搬送方向と直交する直線上に等間隔に並んだ複数の横列グループに分けることができ、本実施形態では、上側の各横列グループの噴出ノズル14群が本発明の薬液噴出部になっている。また、図示しないが、噴出ノズル15群も同様に複数行、複数列に並べられ、各横列グループの噴出ノズル15群が、各横列グループの噴出ノズル14群と上下方向で対称になるように配置されている。そして、噴出ノズル14,15の先端からエッチング液が拡散させるように噴出されて、横列グループ毎に配線板90における幅方向全体にエッチング液が吹き付けられる。なお、
図1に示すように、本実施形態では、隣り合った搬送ローラペア12,12同士の間に、横列グループの噴出ノズル14,15群が1組ずつ配置されている。
【0011】
図1及び
図2に示すように、搬送方向の前端と後端の上下の横列グループの噴出ノズル14,15群は、それぞれ搬送ローラ12Rと平行に延びた横中継パイプ14A,15Aに接続されている。これに対し、残りの上下の噴出ノズル14,15群は、搬送ローラ12Rと交差する方向に延びかつ搬送ローラ12Rの軸方向に等間隔に並んだ上下の縦中継パイプ14B,15Bに接続されている。
【0012】
なお、
図2には縦中継パイプ14B群が搬送方向と平行に延びた構成が示されているが、上下の縦中継パイプ14B,15B群が搬送方向に対して傾斜していて、それら縦中継パイプ14B,15Bに接続された噴出ノズル14,15群が搬送方向に対して傾斜した方向に等間隔に並んだ構成にしてもよい。また、全ての横列グループの噴出ノズル14,15群が、横中継パイプ14A,15Aに接続されていてもよい。
【0013】
図1に示すように、ケース13の下端部は、エッチング液を貯留する液貯留部13Cになっている。そして、図示しない噴出用ポンプが液貯留部13Cからエッチング液を吸い上げて、縦横の中継パイプ14A,14B,15A,15Bへと供給し、上下の噴出ノズル14,15群からエッチング液が噴出される。また、縦横の各中継パイプ14A,14B,15A,15Bには図示しない流量調整弁及び圧力計が備えられていて、別個に上下の噴出ノズル14,15群の噴出圧力及び噴出量を調整することができる。
【0014】
図1に示すように、ケース13内には、配線板90上に溜まったエッチング液を吸引するために複数の吸引ダクト20が設けられている。吸引ダクト20は、例えば各横列グループの噴出ノズル14群に対して搬送ローラペア12を挟んで搬送方向の前側となる位置にそれぞれ配置されて、
図2に示すように搬送方向と直交する方向に延びている。
【0015】
図3に示すように、吸引ダクト20は、第1角筒部21と第2角筒部22とを上下に並べて備えている。第1角筒部21の断面形状は、上下に扁平な長方形をなしている。第2角筒部22は、第1角筒部21より幅狭になっていて第1角筒部21の下面の幅方向中央に配置されている。また、第2角筒部22の外面下端部には、その幅方向の両側の側面と下面との角部を、所謂、R面取りして円弧面22B,22Bが形成されている。
【0016】
第1角筒部21の下面壁の一部は、第2角筒部22の上面壁に兼用されて、第1角筒部21内の第1吸引部屋21Aと第2角筒部22内の第2吸引部屋22Aとを区画する区画壁23になっている。その区画壁23には、複数の連通孔24が形成され、第1と第2の吸引部屋21A,22Aの間を連絡している。また、
図4(B)に示すように、複数の連通孔24は、吸引ダクト20の長手方向に沿って一列に並べられている。
【0017】
第2角筒部22の下面壁でもある吸引ダクト20の下面壁25には、複数の吸引口26が形成されている。
図4(C)に示すように、各吸引口26は、吸引ダクト20の長手方向に延びたスリット状をなして2列に並べられ、両列の間では吸引口26,26が相互にずれて、所謂、千鳥状に配置されている。また、各列で隣り合った吸引口26,26同士の間隔は、各吸引口26の全長に比べると極めて小さくなっている。
【0018】
第1角筒部21の上面壁でもある吸引ダクト20の上面壁28には、複数の配管接続部29が設けられている。配管接続部29は、吸引ダクト20の長手方向の中央と、吸引ダクト20の長手方向の両端寄りの中間位置との3箇所に配置されている。また、配管接続部29は、上面壁28から上方に突出した円筒状をなし、内側が第1吸引部屋21Aに連通している。そして、各配管接続部29に後述する吸引用配管35が接続されている(
図5参照)。なお、
図4(A)に示すように、区画壁23のうち中央の配管接続部29と対向する部分には連通孔24が形成されておらず、両端寄り位置の配管接続部29との対向位置には連通孔24,24が形成されている。
【0019】
図2に示すように、液貯留部13Cには、本発明に係る吸引用ポンプとしての複数のベンチュリポンプ32が取り付けられている。具体的には、液貯留部13Cの外側に電動ポンプ30が備えられ、その電動ポンプ30の吸引口に接続された導入管37が液貯留部13Cの下端部に接続されている。また、電動ポンプ30の排出口には、分配管31が取り付けられている。分配管31は、液貯留部13Cの外側面下端部に沿って延びている。さらに、その分配管31から液貯留部13Cに向かって複数の分岐管38が延びて液貯留部13Cに接続されている。そして、電動ポンプ30が、導入管37を通して液貯留部13C内からエッチング液を吸引し、そのエッチング液を複数の分岐管38を通して液貯留部13C内に戻す。
【0020】
複数のベンチュリポンプ32は、液貯留部13Cの内側面に取り付けられて分岐管38に接続されている。各ベンチュリポンプ32には、分岐管38に連通しかつ途中で絞られたメイン流路(図示せず)と、メイン流路の絞られた部分に側方から連通するサイド流路(図示せず)と、サイド流路の端部に吸引用配管35を接続するための配管接続部(図示せず)とが備えられている。そして、電動ポンプ30の駆動により各ベンチュリポンプ32のメイン流路にエッチング液が流され、その際のベンチュリ効果によりサイド流路が負圧状態になって吸引用配管35から流体を吸引する。また、
図6に示すように、分岐管38には、流量調整弁33と圧力計34とが備えられていて、各ベンチュリポンプ32の吸引圧力を調整することができる。
【0021】
図5に示すように、ベンチュリポンプ32は、各吸引ダクト20の1つにつき1つずつ設けられている。そして、各ベンチュリポンプ32の配管接続部に接続された吸引用配管35が、途中で3つに分岐して各吸引ダクト20の3つの配管接続部29に接続されている。具体的には、吸引用配管35は、ベンチュリポンプ32から延びた1つの基幹配管35Aと、その基幹配管35Aから分岐した3つの分岐配管35Bと、それら基幹配管35Aと分岐配管35Bとを連結する例えばワンタッチ式の四つ股ジョイント35Jとからなる。また、ベンチュリポンプ32の配管接続部及び吸引ダクト20の配管接続部29にも、例えば、図示しないワンタッチ式のジョイントが接続されている。さらに、吸引ダクト20の配管接続部29に取り付けられているジョイントは、前記した縦中継パイプ14B(
図2参照)との干渉を回避するために例えばエルボ構造になっている。そして、基幹配管35Aの一端部と他端部とが、ベンチュリポンプ32の配管接続部と四つ股ジョイント35Jの1つの接続口に接続されている。また、四つ股ジョイント35Jの残り3つの接続口に分岐配管35Bの各一端部がそれぞれ接続されている。そして、基幹配管35Aの同軸上に位置した分岐配管35Bの他端部が吸引ダクト20の中央の配管接続部29に接続されると共に、残り2つの分岐配管35Bの各他端部が、吸引ダクト20の両端寄り位置の配管接続部29,29に接続されている。
【0022】
本実施形態の配線板化学処理装置10の構成に関する説明は以上である。次に、この配線板化学処理装置10を使用した配線板化学処理方法(具体的には、エッチング処理方法)について説明する。
【0023】
配線板化学処理装置10によるエッチング処理を行う前の配線板90の表裏の両面には、例えば、めっき処理にて形成された導電層上に所定の回路パターンのエッチングレジスト層が積層されている。そのような配線板90のうちエッチングレジスト層から露出している導電層をエッチング液で溶かして除去するために配線板化学処理装置10によりエッチング処理を行う。そのために複数の配線板90が、順次、配線板化学処理装置10の基板挿入口13Aを通してケース13内の搬送機構11へと送給される。
【0024】
すると、配線板90は、まずは、第1の吸引ダクト20により上面上の水滴等の異物を除去される。そして、配線板90は、第1の横列グループの噴出ノズル14,15群、第2の吸引ダクト20、第2の横列グループの噴出ノズル14,15群、第3の吸引ダクト20、・・・の順番で通過していく。そして、配線板90が、各噴出ノズル14,15群から受けるエッチング液によってエッチングされる。
【0025】
詳細には、配線板90の下面においては、各横列グループの噴出ノズル15群によって吹き付けられたエッチング液が、そのエッチング液を吹き付けられた部位が次の横列グループの噴出ノズル15群に到達する前には、重力により下方に引っ張られて除去される。これに対し、配線板90の上面においては、各横列グループの噴出ノズル14群によって吹き付けられたエッチング液が、そのエッチング液を吹き付けられた部位が次の横列グループの噴出ノズル15群に到達する前には、吸引ダクト20により上方に引っ張られるように吸引されて除去される。これらにより、配線板90の導電層を溶解し難くなったエッチング液が配線板90に留まることが防がれ、効率よくエッチング処理を行うことができる。
【0026】
ここで、吸引ダクト20の長手方向の位置によって吸引力が大きく相違すると、エッチング処理が不均一になり得るが、本実施形態の配線板化学処理装置10では、各吸引ダクト20の長手方向の複数位置に配管接続部29を設けてベンチュリポンプ32から延びた吸引用配管35を接続したので、吸引ダクト20の長手方向における位置に応じた吸引力の差が緩和される。これにより、吸引ダクト20により従来より均一に配線板90から化学薬液を排除した部分に、新たに噴出ノズル14からの化学薬液を吹き付けることができ、配線板90に対する化学薬液による化学処理が従来より均一になる。また、本実施形態では、共通の吸引ダクト20に接続されている複数の吸引用配管35(詳細には、吸引用配管35の分岐配管35B)が、全て同じベンチュリポンプ32に接続されているので、このことによっても、吸引ダクト20の長手方向における位置に応じた吸引力の差異が緩和される。
【0027】
なお、吸引口のうち配管接続部から最も近い吸引位置と最も遠い吸引位置との流量差は、0.15[L/分]以下であることが好ましく、そのためには、隣り合う配管接続部同士の間隔は、100[mm]以上、400[mm]以下とすることが好ましい。
【0028】
[実施例]
汎用流体シミュレータを使用して、前記実施形態で説明した吸引ダクト20と同じ構造で下記寸法に設定した3ポート吸引ダクトにおける吸引流量のばらつきと、実施品吸引ダクトの両端寄り位置の両配管接続部29を廃止して中央の配管接続部29のみとした1ポート吸引ダクトにおける吸引流量のばらつきとを比較するシミュレーション実験を行った。なお、3ポート吸引ダクトについては吸引ダクト全体の吸引流量及び配管接続部29の吸引流量を相違させた3パターンの実験方法を用意した。
【0029】
<実験条件>
(1)汎用流体シミュレータ :Ansys CFX ver14.5
(2)実施品吸引ダクトの寸法
【表1】
(3)エッチング液
【表2】
(塩化第2銅水溶液などの水溶液状のものを想定し、20℃の水の物性値を使用)
(4)実験方法
下記表3に示すように、実験2及び実験3では吸引ダクト全体の吸引流量を3つの配管接続部に3等分している。また、実験4では吸引用配管を四つ股ジョイントで3つに分岐した場合の、それぞれの分岐された配管の吸引流量の実測割合に基づいて、配管接続部の吸引流量に相違を設けている。
【表3】
(5)その他
吸引ダクト下部はエッチング液層に10[mm]沈んだ状態とする。
【0030】
<実験結果>
上記実験条件における、シミュレーション実験の結果を
図7〜
図8に示す。
【0031】
図7には吸引ダクトの中央からの距離を横軸に、吸引口26直下(吸引ダクト20から0.2[mm]の位置)での吸引流量を縦軸にしたグラフが示されている。このグラフによると、1ポート吸引ノズルを用いた実験1では、吸引口26直下の吸引流量は吸引ダクト中央から離れるのに従って低下している。これに対して、3ポート吸引ノズルを用いた実験2〜4では、吸引口26直下の吸引流量は吸引ダクト中央から離れるのに従って低下しているものの、その低下は実験1に比べて緩やかなものになっている。また、実験3と4のグラフはほぼ重なり、実測割合に基づいた配管接続部の吸引流量の相違は、吸引口26直下の吸引流量にはほとんど影響を与えていないことがわかる。
【0032】
図8(A)には、実験1〜4それぞれの吸引流量の最大値と最小値の差(
図7のそれぞれのグラフの上下幅)を流量差として表したグラフが示されている。実験1での流量差が約0.18[L/分]であるのに対して、実験2の流量差は約0.05[L/分]であり、流量差は3分の1以下になっている。また、吸引ダクトの吸引流量を増大させた実験3と実験4の流量差は、それぞれ約0.08[L/分]と約0.09[L/分]であり、吸引ダクト全体の吸引流量を増大させた場合でも実験1に比べて大幅に小さな値となっている。
【0033】
これらの実験結果から、3ポート吸引ダクトでは、1ポート吸引ダクトに比べてそれぞれの吸引口26での吸引流量のばらつきを小さくすることができ、その吸引流量の差は本実施例の実験条件において、0.15[L/分]以下になることが確認できた。
【0034】
図8(B)には、実験1〜4における圧力損失が示されている。実験1に比べて実験2での圧力損失は4分の1以下で、実験3及び実験4においても実験1よりも圧力損失は大幅に小さくなっている。このことから、3ポート吸引ダクトを用いることで、1ポート吸引ダクトより吸引に必要な動力を小さくできることがわかる。
【0035】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0036】
(1)本実施形態では、本発明に係る化学薬液としてエッチング液を使用した配線板化学処理装置10を例示したが、化学薬液は、例えば、配線板に塗布したエッチングレジストを除去するための溶媒や、配線板上の異物を除去するための洗浄剤であってもよい。
【0037】
(2)前記実施形態では、吸引ダクト20の複数の配管接続部29に接続された吸引用配管35の複数の分岐配管35Bが、同じベンチュリポンプ32に接続されていたが、
図9に示すように、吸引ダクト20の複数の配管接続部29をそれぞれ別々のベンチュリポンプ32に接続した構成としてもよい。
【0038】
(3)また、本発明に係る吸引ポンプは、ベンチュリポンプ32に限定されるものではなく、例えば、遠心ポンプ、渦巻きポンプ、ギヤポンプであってもよい。