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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-169462(P2015-169462A)
(43)【公開日】2015年9月28日
(54)【発明の名称】リミット型変位検出器
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/00 20060101AFI20150901BHJP
【FI】
   G01B7/00 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-42607(P2014-42607)
(22)【出願日】2014年3月5日
(71)【出願人】
【識別番号】306024148
【氏名又は名称】公立大学法人秋田県立大学
(71)【出願人】
【識別番号】000121844
【氏名又は名称】応用地質株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096862
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 千春
(72)【発明者】
【氏名】下井 信浩
(72)【発明者】
【氏名】佐野 康
(72)【発明者】
【氏名】西條 雅博
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA02
2F063AA25
2F063EC03
2F063EC04
2F063EC13
2F063EC14
2F063EC16
(57)【要約】
【課題】安価かつ簡易な構造で、各種土木・建築構造物等の様々な検査対象に用いることができ、しかも異常な荷重が作用した際に初めて動的な変化を出力することにより、異常個所のみを即座に客観的に把握することができるリミット型変位検出器を提供する。
【解決手段】被検出部に取り付けられる支持部材1と、この支持部材1に、その形状を保持している状態において変形不能に、かつ支持部材1が破損した際に変形可能に取り付けられた圧電素子8とを備えてなり、支持部材1は、予め設定した荷重以上の荷重が上記被検出部から作用した際に上記破損を生じる強度に形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出部に取り付けられる支持部材と、この支持部材に、当該支持部材がその形状を保持している状態において変形不能に、かつ当該支持部材が破損した際に変形可能に取り付けられた圧電素子とを備えてなり、
上記支持部材は、予め設定した荷重以上の荷重が上記被検出部から作用した際に上記破損を生じる強度に形成されていることを特徴とするリミット型変位検出器。
【請求項2】
上記支持部材は、平板状に形成され、その両端部に上記被検出部への取付部が形成されるとともに、上記圧電素子は、上記支持部材に沿って配設され、両端部が当該支持部材に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のリミット型変位検出器。
【請求項3】
上記支持部材は、管状に形成され、その両端部に上記被検出部への取付部が形成されるとともに、上記圧電素子は、上記支持部材内において軸線方向に配設されて一端部が当該支持部材に固定され、他端部が引っ張りばねの一端部に固定されるとともに、当該引っ張りばねの他端部が上記支持部材に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のリミット型変位検出器。
【請求項4】
上記支持部材は、管状に形成され、その内部に上記圧電素子が取り付けられるとともに、上記支持部材は、上記被検出部内に挿入される金属管内に密に挿入されていることを特徴とする請求項1に記載のリミット型変位検出器。
【請求項5】
上記被検出部に固定される取付部と、この取付部に固定された管状の上記支持部材と、上記取付部に対して移動自在に設けられ、上記被検出部の変位量に応じて上記支持部材に荷重を付与する作動部材とを備え、上記支持部材の内部に上記圧電素子が取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のリミット型変位検出器。
【請求項6】
上記支持部材の内部には、着色剤が封入されていることを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載のリミット型変位検出器。
【請求項7】
上記支持部材は、ガラスまたはプラスチックからなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のリミット型変位検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物や当該構造物への固定部材における異常な変位を検知することにより、大きな破損や事故を未然に防ぐことを可能にするリミット型変位検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高度経済成長期に建設された多数の建物・橋梁・トンネル等の各種構造物の耐用年数が近づくにつれて、それらの安全性に懸念が生じている。また、上記構造物の劣化や腐食に伴って、当該構造物に固定したジェットファンや大型照明器具等の機器類の固定状況に対しても、その点検や必要な修理等が強く要請されている。さらには、甚大化している自然災害に対する防災対策として、崩壊や落石の恐れのある岩等に対するきめ細かな監視対策も必要となってきている。
【0003】
一方、これまで上記構造物の劣化や機器類における締結部の緩み等を検知する場合には、もっぱら目視や打音検査等の人的検知に依存しているのが実情である。しかしながら、この種の人的検知による検査方法にあっては、経験による判断となるために、検知結果に個人差によるバラつきが出易く、異常個所の検出漏れを生じるおそれがあった。加えて、検査を必要とする構造物や機器類の数が膨大であるために、限られた数の検査官によっては、検査対象となる構造物の範囲や、その点検スパンにも制約があった。
【0004】
そこで従来、光ファイバーやレーザー変位計等を用いた計測システムにより、構造物の変状をモニタリングするシステムが導入されている。
しかしながら、上記システムにあっては、システム全体が複雑かつ高価であるとともに、光ファイバー中に光を伝搬させるための電源設備も必要とするため、運用のための費用も高く、特に比較的小規模な構造物に対するモニタリングに対しては、システム自体が大き過ぎ、しかも経費が嵩んで経済的にも合致し得ないという問題点があった。
【0005】
このような問題点を解決すべく、本発明者等は、先に下記特許文献1において、頭部と軸部を備え軸方向に貫通する軸孔が形成されている頭部側部材と、軸部のみからなり基端から先端に向かう軸孔が形成されている先端側部材とが、軸方向で間隔をあけた状態で配置され、それら頭部側部材と先端側部材の軸孔にピエゾケーブルを内蔵するセンサロッドが挿通され、前記頭部側部材と前記先端側部材とが前記センサロッドの両端部で結合されて、全体がボルト形状に一体化されており、前記ピエゾケーブルのリード部を頭部側から外部へ引き出すようにしたボルト型歪み検出器を提案した。
【0006】
上記ボルト型歪み検出器は、既存の構造物のボルト挿入孔を利用して、容易に且つ長期間にわたって安定的に取り付けることができ、かつ頭部側部材と先端側部材とが離間し、中間部にはセンサロッドが存在するだけの構造なので変形しやすく、構造物の撓みや捩れなどの変形を高感度で検出することができるとともに、ピエゾケーブルを用いた簡単な構造なので、安価でありセンサ電源を必要としないことから、容易に多点に設置でき、長期間にわたって安定的に測定し続けることができることと相俟って、各種土木・建築構造物のヘルスモニタリングシステムに好適なものとなる。
【0007】
ところが、上記ボルト型歪み検出器は、構造物の動的な変動を検出するものであるために、当該構造物に小さな撓みや捩れ等の変形が生じた場合にも、ピエゾケーブルからは対応した電圧が出力されてくる。このため、上記ボルト型歪み検出器を構造物の広い範囲に数多く設置した場合に、本来異常とまでは言えない変形のデータが数多く出力されることになり、上記データ中から異常個所を抽出ために手間を要する。
【0008】
また、構造物のボルト挿入孔を利用するものであるために、例えばトンネル内壁や岩盤の崩壊予知等の用途には用いることは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013−181819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、安価かつ簡易な構造で、各種土木・建築構造物等の様々な検査対象に用いることができ、しかも異常な荷重が作用した際に初めて動的な変化を出力することにより、異常個所のみを即座に客観的に把握することができるリミット型変位検出器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、被検出部に取り付けられる支持部材と、この支持部材に、当該支持部材がその形状を保持している状態において変形不能に、かつ当該支持部材が破損した際に変形可能に取り付けられた圧電素子とを備えてなり、上記支持部材は、予め設定した荷重以上の荷重が上記被検出部から作用した際に上記破損を生じる強度に形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記支持部材は、平板状に形成され、その両端部に上記被検出部への取付部が形成されるとともに、上記圧電素子は、上記支持部材に沿って配設され、両端部が当該支持部材に固定されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記支持部材は、管状に形成され、その両端部に上記被検出部への取付部が形成されるとともに、上記圧電素子は、上記支持部材内において軸線方向に配設されて一端部が当該支持部材に固定され、他端部が引っ張りばねの一端部に固定されるとともに、当該引っ張りばねの他端部が上記支持部材に固定されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記支持部材は、管状に形成され、その内部に上記圧電素子が取り付けられるとともに、上記支持部材は、上記被検出部内に挿入される金属管内に密に挿入されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記被検出部に固定される取付部と、この取付部に固定された管状の上記支持部材と、上記取付部に対して移動自在に設けられ、上記被検出部の変位量に応じて上記支持部材に荷重を付与する作動部材とを備え、上記支持部材の内部に上記圧電素子が取り付けられていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項3〜5のいずかに記載の発明において、上記支持部材の内部には、着色剤が封入されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の発明において、上記支持部材は、ガラスまたはプラスチックからなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1〜7のいずれかに記載の発明においては、先ず支持部材を形成するに際して、このリミット型変位検出器を取り付ける被検出部において検出すべき異常な変位が生じた際に、当該変位によって上記支持部材にどの程度の荷重が作用するかを算出して、上記支持部材の強度を、算出された荷重が作用した際に破損する強度に形成しておく。
【0019】
そして、上記圧電素子を備えた支持部材を被検出部に取り付けておくと、被検出部に平常時に生じる歪みや変位に対しては、支持部材は十分な強度を有しているために、破損することなく、当該支持部材に取り付けた圧電素子に変形が生じない。このため、圧電素子においても出力を生じることがない。これに対して、上記被検出部に、異常を示す大きな歪みや変位が生じて、これに起因する荷重が支持部材に作用すると、当該支持部材の強度がこれに耐えられなくなり破損する。これにより、圧電素子に変形が与えられて電圧を出力することにより、上記被検出部に異常変位を生じたことが検知される。
【0020】
以上のように、上記リミット型変位検出器によれば、簡易な構造であるとともに、支持部材を、被検出部に取り付け可能な適宜の形状に形成することにより、各種土木・建築構造物等の様々な検査対象に用いることができ、しかも異常な荷重が作用した際に初めて動的な変化を出力することにより、異常個所のみを即座に客観的に把握することができる。
【0021】
ここで、圧電素子としては、圧電効果を有するものであれば様々な形態のものを用いることができるが、特にプラスチックPVDFからなるピエゾフィルムは、優れた柔軟性、耐衝撃性、耐水性および化学的安定性を有し、かつ薄肉化により曲げた際に大きな出力を生じるものであり、また圧電セラミックスは、特性の安定性に優れ、しかも特性や形状の自由度が高く加工性良いことなどから、本発明において用いる上記圧電素子として好適である。また、支持部材としては、請求項7に記載の発明のように、汎用のガラスまたはプラスチックが好適である。これらの汎用材料を用いることにより、製造コストの低減も図ることができる。
【0022】
さらに、上記ガラスやプラスチックからなる支持部材は、その形状、材質、厚さ(断面積)を変更したり、あるいは外面に応力集中用の溝等を加工したりすることにより、容易に上述した設定荷重において破損するように形成することが可能である。
【0023】
また、請求項3〜5のいずれかに記載の発明のように、支持部材を管状に形成するとともに、この支持部材の内部に圧電素子を配置すれば、直接風雨等に晒される屋外に設置された場合においても、上記支持部材によって内部の圧電素子を保護することにより、長期にわたり安定した性能を保持して検知を行うことができる。
【0024】
このように、支持部材として管状のものを用いた場合には、請求項6に記載の発明のように、内部に着色剤を封入しておけば、異常変位発生時に支持部材が破損した際に、上記着色剤が周囲に飛散することにより、上記事象の発生を容易に目視によって知らせることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1の実施形態を示す斜視図である。
図2図1の縦断面図である。
図3】本発明の第2の実施形態を示す斜視図である。
図4図3の縦断面図である。
図5】本発明の第3の実施形態を示す斜視図である。
図6図5の縦断面図である。
図7図5の左側面図である。
図8】本発明の第4の実施形態を示す斜視図である。
図9図8の縦断面図である。
図10】第4の実施形態の作動を説明するための縦断面図で、(a)は取付時の状態、(b)は割ピンを抜いた状態、(c)は受圧板に荷重が作用した状態を示すものである。
図11】同じく、(a)はスパイクピンが支持部材を貫通した状態、(b)はガラスピンが破損してスプリングが伸長した状態、(c)は底蓋が脱離した状態を示すものである。
図12】同じく、(a)は支持部材が破壊した状態、(b)は支持部材内の部材が脱離した状態、(c)はピエゾフィルムが自由変形をする状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1の実施形態)
図1および図2は、本発明に係るリミット型変位検出器の第1の実施形態を示すものである。このリミット型変位検出器は、構造物等における2点間や構造物とこれに取り付けられた機器類との間における異常な変位をモニタリングするためのもので、図中符号1が支持部材である。
この支持部材1は、ガラス板を長方形に形成したもので、その長手方向両端部に、それぞれ取付部材(取付部)2が設けられている。この取付部材2は、ステンレス鋼等の金属によって形成されたもので、被検出部に取り付けられる基台部3と、この基台部3の一端部に形成された壁部4と、この壁部4の先端部に形成されて支持部材1が固定さえる天板部5とから構成されたものである。
【0027】
ここで、基台部3には、この取付部材2を被検出部の所定の個所に図示されないボルト等によって取り付けるための長穴3aが穿設されている。また、天板部5の支持部材1が載置される部分には、支持部材1の厚さ寸法に対応して切り欠かれた段部5aが形成されている。そして、この天板部5上には、段部5aに載置された支持部材1の端部を段部5aとの間で挟持する押え板6がボルト7によって取り付けられている。
【0028】
他方、支持部材1の上面には、ピエゾフィルム(圧電素子)8が取り付けられている。ちなみに、このピエゾフィルム8は、その両端部において支持部材1の上面に貼着されており、一端部8aには、当該ピエゾフィルム8が変形した際に内部で発生した電圧を出力するためのケーブル(図示を略す。)が外部に向けて引き出されている。
【0029】
そして、支持部材1は、その面積および厚さ寸法等の緒元が、被検出部において平常時に生じる歪みや変位が取付部材2間に作用した際には破損しない強度であって、かつ上記被検出部において平常時には通常観測されない程の歪みや変位が取付部材2間に生じた際には、破損する強度に設定されている。
【0030】
例えば、このリミット型変位検出器の一方の取付部材2を構造物の基台に固定し、他方の取付部材2を上記基台に固定したジェットファン等の機器類に取り付けて、上記機器類の固定状況をモニタリングする場合に、支持部材1は、平常時の振動等によって取付部材2間に作用する相対変位によっては破損することなく、上記機器類の取付ボルトの緩み等によって基台と機器類との間に過度の隙間が生じた際に、取付部材2間に作用する引張力によって破損する強度に設定されている。
【0031】
(第2の実施形態)
図3および図4は、本発明に係るリミット型変位検出器の第2の実施形態を示すもので、第1の実施形態に示したものと同様の用途に用いられるものである。
このリミット型変位検出器においては、支持部材10が、ガラス管からなる円筒部11と、この円筒部11の両端部に取り付けられてその開口を塞ぐステンレス鋼等の金属製の蓋部12a、12bとから構成されている。
【0032】
この支持部材10における円筒部11は、第1の実施形態に示したものと同様に、蓋体12a、12b間に、被検出部において平常時に生じる歪みや変位が作用した際には破損しない強度であって、かつ上記被検出部において平常時には通常観測されない程の歪みや変位が生じた際には、破損する強度に設定されている。
【0033】
そして、この支持部材10内に、ピエゾフィルム(圧電素子)13が軸線方向に沿って収納され、その一端部13aが一方の蓋体12aに固定されている。また、このピエゾフィルム13の他端部13bは、引っ張りばね14の一端部に固定されるとともに、引っ張りばね14の他端部が他方の蓋部12bに固定されている。
【0034】
他方、蓋体12a、12bの外端面には、それぞれ取付部材(取付部)15が設けられている。この取付部材15は、ステンレス鋼等の金属によって形成されたもので、蓋体12a、12bの外端面にボルト16によって固定される壁部17と、この壁部17の端部が90°屈曲されて被検出部に取り付けられる基台部18とからなるL字状に形成されたものである。そして、このリミット型変位検出器においても、ピエゾフィルム13の一端部13aに接続された出力用ケーブル(図示を略す。)が、支持部材10の外部に引き出されている。
【0035】
以上の構成からなる第1および第2の実施形態に示したリミット型変位検出器は、2点間(被検出部)における異常な変位、例えばトンネル内壁におけるコンクリートのひび割れの成長や、上述した機器類の固定状況をモニタリングするために、一方の取付部材2、15を、上記ひび割れを跨いだ一方の側または構造物に固定した機器類に固定するとともに、他方の取付部材2、15を、上記ひび割れを跨いだ他方の側または上記構造物側に固定しておく。
【0036】
すると、周囲からの振動の伝搬等に起因してコンクリートや機器類から両取付部材2、15間に生じる平常時の相対変位に対しては、支持部材1、10が十分な強度を有しているために、破損することがない。したがって、支持部材1、10に取り付けたピエゾフィルム8、13から電圧が出力されることもない。
【0037】
これに対して、例えば上記ひび割れが急速に成長したり、機器類の固定部が緩んで構造物との間に大きな隙間が生じたりすることにより、取付部材2、15間に異常を示す大きな相対変位が生じると、これに起因する引っ張り荷重が支持部材1、10に作用する。この結果、支持部材1、10の強度がこれに耐えられなくなって破損し、ピエゾフィルム8、13が、単なる両端支持に状態になって変形自在となった中央部分に変形が与えられ、電圧を出力することにより、上記2点間に異常変位を生じたことが検知される。
【0038】
以上のように、上記第1および第2の実施形態に示したリミット型変位検出器によれば、簡易な構造であるとともに、取付部材2、15の形状を、相対変位をモニタリングすべき箇所(被検出部)の形状に合わせて取り付け可能に形成することにより、各種土木・建築構造物等の様々な検査対象に用いることができる。
【0039】
しかも、平常時においては、何らの出力データも蓄積されずに、異常な荷重が作用した際に初めて動的な変化を出力するために、モニタリング中における出力データの取り扱いが簡易であるとともに、異常発生時に、当該個所のみを即座に、かつ客観的に把握することができる。
【0040】
加えて、第2の実施形態に示したリミット型変位検出器にあっては、支持部材10を管状に形成して、その内部にピエゾフィルム13を配置しているために、直接風雨等に晒される屋外に設置された場合においても、支持部材10によって内部のピエゾフィルム13を保護することにより、長期にわたり安定した性能を保持して検知を行うことができる。
【0041】
しかも、支持部材10の内部に着色剤を封入しておけば、異常変位発生時に支持部材10のガラス管からなる円筒部11が破損した際に、上記着色剤が周囲に飛散することにより、上記異常変位の発生を容易に目視によって知らせることもできる。
【0042】
(第3の実施形態)
図5図7は、本発明に係るリミット型変位検出器の第3の実施形態を示すものである。このリミット型変位検出器は、木造の建物における柱、梁、桁等の仕口に形成されたドリフトピンの打ち込み孔と同様の孔部に、上記ドリフトピンと同様にして打ち込まれて建物の健全性をモニタリングする際に用いられるものであり、図中符号20が支持部材である。
【0043】
この支持部材20は、ガラス管を試験管状に形成したもので、内部にピエゾフィルム(圧電素子)21が全長にわたって配置されている。そして、このピエゾフィルム21は、支持部材20の内部に、当該支持部材20と密着または接触した状態で保持されている。また、ピエゾフィルム21の一端部21aには、出力用ケーブル(図示を略す。)が接続され、支持部材20の開口部から外部に引き出されている。
【0044】
そして、この支持部材20は、ドリフトピンを模した形状の打ち込み金属管23の内部に、ほぼ密着状態で挿入されている。ここで、打ち込み金属管23の先端部外周には、この金属管23を上記仕口に形成された孔部24に打ち込む際に、縮径して支持部材20に密着させるためのスリット25が形成されている。
【0045】
そして、このリミット型変位検出器において、支持部材20は、図6に示すように柱26および梁27の仕口に形成した孔部24に打ち込んだ状態において、平常時に建物に近隣振動や風等による僅かな変形が生じて、これが金属管23に作用しても破損することがない強度であって、かつ地震等の災害によって上記建物の架構が大きく変形して柱26および梁27間に損傷となる大きな変形が生じた際に、金属管23の変形によって破損する強度に設定されている。
【0046】
したがって、上記構成からなるリミット型変位検出器によっても、第1および第2の実施形態に示したものと同様の作用効果を得ることができる。
加えて、通常、地震等の災害によって建物が被害を受けても、近年の建物においては構造軸組が露出していないために、柱梁架構の仕口部分が補修を必要とするほどの損傷を受けているか否かを判定することができないのに対して、上記リミット型変位検出器を上記仕口に挿入しておくことにより、地震等の災害を受けた際にも、建物の安全性を容易に確認することが可能になる。
【0047】
(第4の実施形態)
図8図12は、本発明に係るリミット型変位検出器の第4の実施形態を示すものである。このリミット型変位検出器は、例えば老朽化した構造物の天井部分等(被検出部)において、局部的な剥落等による落下または降下の危険性がある個所に設置して、その状態をモニタリングする際に用いられるものであり、図中符号30が、第1の取付部材(取付部)である。
【0048】
この第1の取付部材30は、金属製の帯板からなるもので、両端部に上記被検出部にボルトによって固定される固定部30aが形成され、これら固定部30a間に下方に凹状をなす支持部30bが屈曲形成されたものである。そして、この支持部30bの中央に穴部30cが穿設され、当該穴部30c内に第2の取付部材(取付部)31が挿入されている。
【0049】
この第2の取付部材31は、穴部30cの内径よりも外径寸法が大きい円板状の天板部31aと、この天板31aの下面に垂設されて穴部30c内に挿入された円筒部31bと、この円筒部31bの下端部開口を塞ぐ底板部31cとがステンレス鋼等の金属によって一体的に形成されたものである。そして、この第2の取付部材31に、上記剥落等が生じた際の落下物または降下物によって作動する作動部材が移動自在に設けられている。
【0050】
図中符号32は、この作動部材の受圧板である。この受圧板32は、円板状に形成されるとともにその下面に接合された作動軸33が第2の取付部材31の天板部31aに穿設された孔部に挿入されることにより、上下移動自在に設けられている。また、この作動軸33の下端部には、円板状の作動板34が接合され、この作動板34と天板部31aの下面との間に、この作動部材を下方に向けて付勢する圧縮ばね35が介装されている。
【0051】
さらに、この作動板34の下面には、先端が尖った複数本のスパイクピン36が垂設されており、これらスパイクピン36は、第2の取付部材31の底板部31cに穿設された孔部に挿入されている。また、作動軸33には、上記スパイクピン36の先端が底板部31cの下面に臨む位置において作動部材を仮固定するための割ピン37が設けられている。
【0052】
他方、第2の取付部材31の底板部31cの下面に、支持部材38が固定されている。この支持部材38は、天板部が上記底板部31cの下面に固定された円筒状のガラス管からなるもので、底部には底蓋39が取り付けられている。ここで、支持部材38は、割ピン37を取り外した状態において、圧縮ばね35の付勢力によってスパイクピン36が上面に押し付けられる荷重によっては破損することなく、受圧板32に、それ以上の荷重が作用してスパイクピン36からその荷重が作用した際に破損する強度に形成されている。そして、この支持部材38の内部に、ピエゾフィルム(圧電素子)40が配置されている。
【0053】
このピエゾフィルム40は、上端部40aが支持部材38の天板部に固定されて鉛直方向に垂下されるとともに、下端部に錘41が取り付けられている。また、支持部材38の中央部には、当該支持部材38を径方向に貫通するガラスピン42が横架され、このガラスピン42と底蓋39との間に圧縮ばね43が介装されている。さらに、ガラスピン42の上部には、スパイクピン36の下方に位置するように円筒状のピンカッターパイプ44が設けられている。そして、第2の取付部材31の底板部31cの下部には、支持部材38および底蓋39を周囲から覆うとともに、内部が目視可能であって、かつ作動時に落下する支持部材38や底蓋39等の部品を捕集可能な網袋状の保護カバー45が設けられている。
【0054】
次に、図10図12に基づいて、以上の構成からなるリミット型変位検出器の作用について説明する。なお、これらの図においては、説明の便宜上、保護カバー45の図示を省略する。
先ず、図10(a)に示すように、作動軸33に割ピン37を挿入して、作動軸33を固定した状態で、このリミット型変位検出器をトンネルの天井部等における落下あるいは降下の可能性がある被検出部に固定する。この際に、上記被検出部の下方に作動部材の受圧板32を位置させて、第1の取付部材30の固定部30aにおいてボルト等により上記天井部等に固定する。そして、上記固定が完了した後に、図10(b)に示すように、割ピン37を取り外す。
【0055】
これにより、支持部材38の上面には、圧縮ばね35の付勢力によってスパイクピン36が押し付けられた状態になる。この状態においては、支持部材38は破損することがないために、内部のピエゾフィルム40も出力することなく上記被検出部のモニタリングが進行する。
【0056】
そして、上記被検出部において、天井部の一部落下あるいは降下が発生すると、図10(c)に示すように、当該落下物または降下物から作動部材の受圧板32に鉛直荷重が作用し、図11(a)に示すように、スパイクピン36が支持部材38の上部を破壊して内部に貫通する。なお、スパイクピン36が支持部材38の上部を貫通する際に、支持部材38のガラス管部分の全体が破壊された場合には、即座に後述する図12(c)の状態になる。
【0057】
次いで、図11(b)に示すように、支持部材38の上部を貫通したスパイクピン36が、ピンカッターパイプ44を押圧することにより、支持部材38の中央部に差し込まれているガラスピン42が破損し、圧縮ばね43が支持部材38内において伸長して、激しく上下して衝撃を与えることにより、図11(c)に示すように底蓋39が外れて落下するとともに、図12(a)に示すように、支持部材38も破壊されて落下する。
【0058】
これに続いて、図12(b)に示すように、支持部材38の内部に収納されていた圧縮ばね43やピンカッターパイプ44も落下することにより、最終的に図12(c)に示すように、第2の取付部材31の底板部31cにピエゾフィルム40が吊り下げられた状態になる。これにより、ピエゾフィルム40が変形して電圧を出力するとともに、以降は下部の錘41の振れにより継続的に振動を検出する。
なお、これらの工程において、落下物は、図8および図9に示した保護カバー45によって捕集される。
【0059】
以上のように、上記構成からなるリミット型変位検出器によっても、平常時においては、ピエゾフィルム40からは何らの出力もない状態でモニタリングが行われるとともに、被検出部において異常な落下や降下が生じた場合に、初めて支持部材38が破損して、変形が自由となったピエゾフィルム40から出力されるために、第1および第2の実施形態に示したものと同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0060】
1、10、20、38 支持部材
2、15 取付部材(取付部)
8、13、21、40 ピエゾフィルム(圧電素子)
11 円筒部
14 引っ張りばね
22 充填材
23 金属管
30 第1の取付部材(取付部)
31 第2の取付部材(取付部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12