特開2015-169909(P2015-169909A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-169909赤外線用カメラの後側焦点調整システム
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  • 特開2015169909-赤外線用カメラの後側焦点調整システム 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-169909(P2015-169909A)
(43)【公開日】2015年9月28日
(54)【発明の名称】赤外線用カメラの後側焦点調整システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20060101AFI20150901BHJP
   G03B 17/14 20060101ALI20150901BHJP
   G03B 17/02 20060101ALI20150901BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20150901BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20150901BHJP
【FI】
   G02B7/02 C
   G03B17/14
   G02B7/02 F
   G03B17/02
   H04N5/225 D
   H04N5/232 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-46776(P2014-46776)
(22)【出願日】2014年3月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】100124327
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】上山 雄一
【テーマコード(参考)】
2H044
2H100
2H101
5C122
【Fターム(参考)】
2H044AC00
2H044AH01
2H100CC02
2H101EE08
5C122DA03
5C122DA04
5C122DA16
5C122EA42
5C122FB04
5C122FD00
5C122GA24
5C122GC76
5C122HA71
5C122HA88
(57)【要約】
【課題】赤外線用カメラにおいて、赤外センサの検知面の位置が未知であっても後側焦点の調整が可能な赤外線用カメラの後側焦点調整システムを提供することを目的とする。
【解決手段】赤外光を赤外センサで検知して画像信号に変換処理するカメラ本体と、カメラ本体に着脱可能に取り付けられるレンズユニットとを備え、カメラ本体は、赤外光を検知する検知面を有する赤外センサを備え、レンズユニットは、焦点調整用レンズと焦点調整用レンズの位置を制御するための制御手段とを備え、制御手段は、特定の被写体距離にある被写体に対する焦点調整用レンズの実測合焦位置と、被写体距離に基づき算出された焦点調整用レンズの理論合焦位置との誤差に基づいて、後側焦点位置を検知面に合致させるための後側焦点調整量を算出し、後側焦点調整量に基づき焦点調整用レンズの位置を制御することを特徴とする赤外線用カメラの後側焦点調整システムを採用した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外光を赤外センサで検知して画像信号に変換処理するカメラ本体と、当該カメラ本体に着脱可能に取り付けられるレンズユニットとを備えた赤外線用カメラの後側焦点調整システムであって、
当該カメラ本体は、赤外光を検知する検知面を有する赤外センサを備え、
当該レンズユニットは、焦点調整用レンズと、当該焦点調整用レンズの位置を制御するための制御手段とを備え、
当該制御手段は、特定の被写体距離にある被写体に対する当該焦点調整用レンズの実測合焦位置と、当該被写体距離に基づき算出された当該焦点調整用レンズの理論合焦位置との誤差に基づいて、後側焦点位置を当該検知面に合致させるための後側焦点調整量を算出し、当該後側焦点調整量に基づき当該焦点調整用レンズの位置を制御することを特徴とする赤外線用カメラの後側焦点調整システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記後側焦点調整量を記憶し、起動時に当該後側焦点調整量に基づき前記焦点調整用レンズの位置を制御する請求項1に記載の赤外線用カメラの後側焦点調整システム。
【請求項3】
外部から被写体距離に関する情報を前記制御手段に送信する管理側制御手段を備えた請求項1又は請求項2に記載の赤外線用カメラの後側焦点調整システム。
【請求項4】
前記レンズユニットの内部温度を測定する温度測定手段を備え、
前記制御手段は、当該温度測定手段が測定した温度に基づき前記焦点調整用レンズの位置ずれ量を算出し、当該位置ずれ量に基づき当該焦点調整用レンズの位置を制御する請求項1〜請求項3のいずれかに記載の赤外線用カメラの後側焦点調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、赤外線用カメラの後側焦点調整システムに関し、特に、赤外線用カメラにおいて、赤外センサの検知面の位置が未知であっても後側焦点調整を行うことが可能な赤外線用カメラの後側焦点調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、暗闇におけるセキュリティ用途として、被写体から放射される赤外線を検出して物体認識を行う赤外線用カメラが広く利用されている。ところで、赤外線用カメラをセキュリティ用途として用いるにあたっては鮮明な画像を得る必要があり、そのためにレンズユニット内のレンズ群を透過した赤外光を赤外センサの検知面に正確に結像させる必要がある。しかしながら、赤外線用カメラに用いられる赤外センサには、低コスト化を図ることが出来ることから、ボロメータ型と呼ばれるものが多く用いられている。このボロメータ型の赤外センサは、検知精度の低下を招く熱対流等の影響を受けにくくすべく金属等からなる容器内に真空封止されるため、製造段階で当該検知面の位置にずれが生じやすいことに加え、当該容器の内部状態を外部から確認することが出来ない。仮に、赤外センサの検知面の位置ずれが僅かであっても生じた場合には、レンズユニットの後側焦点位置が当該検知面に合わなくなるため、焦点調整用レンズの位置の制御を自動的に行うことが困難となり、鮮明な画像を得ることが出来なくなる。
【0003】
以上の問題に対して、例えば、特許文献1には、赤外線用カメラにおいて、赤外センサの真空処理によるセンサの検知面の位置の個体差があっても、合焦可能な赤外線用カメラの後側焦点調整システム及び赤外線用カメラの後側焦点調整方法が開示されている。具体的には、特許文献1に開示の赤外線用カメラの後側焦点調整システムは、レンズユニットの受信手段において受信した外部からの検知面位置情報に応じ、赤外センサの検知面の位置を後側焦点としてレンズ群の光軸方向の基準位置を調整するものである(特許文献1の請求項1等を参照のこと。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−173546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示の赤外線用カメラの後側焦点調整システム及び赤外線用カメラの後側焦点調整方法は、後側焦点の調整を行う際に用いられる赤外センサの検知面位置情報が設計上の検知面の位置(フランジバックの位置)に関するものであり、当該設計上の検知面の位置が既知でなければならない。また、最近では、赤外線用カメラに関しても、可視光カメラのように望遠や広角等、用途に応じてレンズユニットを取り替えることが行われている。このときに、特許文献1に開示の赤外線用カメラの後側焦点調整システム及び赤外線用カメラの後側焦点調整方法では、赤外センサの設計上の検知面の位置を基準として後側焦点の調整を行うため、鮮明な画像を得るににあたってレンズユニットとカメラ本体との取り付け位置に高い精度が要求される。
【0006】
以上のことから、本件発明は、赤外線用カメラにおいて、赤外センサの検知面の位置が未知であっても後側焦点の調整が可能な赤外線用カメラの後側焦点調整システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意研究を行った結果、以下の赤外線用カメラの後側焦点調整システムを採用することで上記課題を達成するに到った。
【0008】
本件発明に係る赤外線用カメラの後側焦点調整システムは、赤外光を赤外センサで検知して画像信号に変換処理するカメラ本体と、当該カメラ本体に着脱可能に取り付けられるレンズユニットとを備えた赤外線用カメラの後側焦点調整システムであって、当該カメラ本体は、赤外光を検知する検知面を有する赤外センサを備え、当該レンズユニットは、焦点調整用レンズと、当該焦点調整用レンズの位置を制御するための制御手段とを備え、当該制御手段は、特定の被写体距離にある被写体に対する当該焦点調整用レンズの実測合焦位置と、当該被写体距離に基づき算出された当該焦点調整用レンズの理論合焦位置との誤差に基づいて、後側焦点位置を当該検知面に合致させるための後側焦点調整量を算出し、当該後側焦点調整量に基づき当該焦点調整用レンズの位置を制御することを特徴とする。
【0009】
本件発明に係る赤外線用カメラの後側焦点調整システムにおいて、前記制御手段は、前記後側焦点調整量を記憶し、起動時に当該後側焦点調整量に基づき前記焦点調整用レンズの位置を制御することが好ましい。
【0010】
本件発明に係る赤外線用カメラの後側焦点調整システムは、外部から被写体距離に関する情報を前記制御手段に送信する管理側制御手段を備えたことが好ましい。
【0011】
本件発明に係る赤外線用カメラの後側焦点調整システムは、前記レンズユニットの内部温度を測定する温度測定手段を備え、前記制御手段は、当該温度測定手段が測定した温度に基づき前記焦点調整用レンズの位置ずれ量を算出し、当該位置ずれ量に基づき当該焦点調整用レンズの位置を制御するすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本件発明に係る赤外線用カメラの後側焦点調整システムは、赤外線用カメラにおいて、赤外センサの検知面の位置が未知であっても後側焦点の調整を行うことが出来る。よって、本件発明に係る赤外線用カメラの後側焦点調整システムによれば、例えレンズユニットとカメラ本体との取り付けが高い精度で行われていなくとも、赤外線用カメラの撮像性能を常に高性能に保つことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本件発明に係る赤外線用カメラの後側焦点調整システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る赤外線用カメラの後側焦点調整システムの好ましい実施の形態について、図1を参照して説明する。
【0015】
図1は、本件発明に係る赤外線用カメラの後側焦点調整システムの構成を示すブロック図である。本件発明に係る赤外線用カメラの後側焦点調整システムは、赤外光を赤外センサ11で検知して画像信号に変換処理するカメラ本体10と、当該カメラ本体10に着脱可能に取り付けられるレンズユニット1とを備えた赤外線用カメラの後側焦点調整システムである。ここで、当該カメラ本体10は、赤外光を検知する検知面を有する赤外センサ11を備えている。また、当該レンズユニット1は、焦点調整用レンズ2と、当該焦点調整用レンズ2の位置を制御するための制御手段4とを備えている。そして、当該制御手段4は、特定の被写体距離にある被写体に対する当該焦点調整用レンズ2の実測合焦位置と、当該被写体距離に基づき算出された当該焦点調整用レンズ2の理論合焦位置との誤差に基づいて、後側焦点位置を当該検知面に合致させるための後側焦点調整量を算出し、当該後側焦点調整量に基づき当該焦点調整用レンズ2の位置を制御することを特徴とする。
【0016】
本件発明の赤外線用カメラは、少なくとも焦点調整レンズ2を有するレンズユニット1と、カメラ本体10とからなる。そして、本件発明のレンズユニット1は、当該焦点調整用レンズ2が、当該レンズユニット1の内部に光軸方向に移動可能に備えられる。そして、本件発明のレンズユニット11は、その像面側の端部にレンズマウントを備え、カメラ本体10に備えるカメラマウントと係合してカメラ本体10に取り付けられる。また、本件発明のカメラ本体10は、赤外センサ11の検知面で結像させた赤外線量を温度変化量として検知し、これを検知信号として画像処理手段(不図示)に伝達して画像処理を行う。
【0017】
また、本件発明のレンズユニット11は、焦点調整用レンズ2の位置を制御するための制御手段4を備え、当該制御手段4が後側焦点位置を赤外センサ11の検知面に合致させるための後側焦点調整量を算出する算出部5を備える。このときに、当該算出部5は、当該制御手段4より与えられた被写体距離に関する情報に基づき、焦点調整用レンズ2の理論合焦位置を算出する。そして、当該算出部5は、当該制御手段4より与えられた当該被写体距離にある被写体に対する当該焦点調整用レンズ2の実測合焦位置と、算出した当該焦点調整用レンズ2の理論合焦位置との差分として、後側焦点位置を当該検知面に合致させるための後側焦点調整量を算出する。なお、本件発明に係る赤外線用カメラの後側焦点調整システムにおいては、当該被写体に関して、被写体距離が既知であり且つ合焦可能である限り任意に設定することができ、コリメータ等の特別な設備を用いる必要がない。また、特定の被写体距離にある被写体に対する当該焦点調整用レンズ2の実測合焦位置を求める際には、目視や自動判定等、任意の手段を用いることが出来る。
【0018】
本件発明のレンズユニット11は、上述した構成を備えることで、赤外センサの検知面の位置が未知であっても、制御手段4が当該後側焦点調整量に基づき当該焦点調整用レンズの位置を高い精度で制御することが可能となる。よって、本件発明に係る赤外線用カメラの後側焦点調整システムによれば、レンズユニット1とカメラ本体10とを高い精度で取り付ける必要がないため、当該レンズユニット1と当該カメラ本体10との取り付けの際にバヨネット式やねじ込み式等の任意の方法を用いることが出来る。
【0019】
そして、本件発明に係る赤外線用カメラの後側焦点調整システムにおける制御手段4は、上述した後側焦点調整量を記憶し、起動時に当該後側焦点調整量に基づき焦点調整用レンズ2の位置を制御することが好ましい。
【0020】
本件発明のレンズユニット1は、当該レンズユニット1が備える制御手段4により、赤外センサ11で検知された後側焦点調整量を記憶する記憶部6を備えることが出来る。本件発明に係るレンズユニット1は、少なくともこのような構成を備えることで、起動時に当該後側焦点調整量に基づき、引き続き焦点調整用レンズ2の位置を制御することが可能となる。従って、本件発明の赤外線用カメラは、停電時等により意図せず再起動した場合であっても、短時間で再び鮮明な画像を得ることが出来る。
【0021】
また、本件発明に係る赤外線用カメラの後側焦点調整システムは、外部から被写体距離に関する情報を制御手段4に送信する管理側制御手段20を備えたことが好ましい。
【0022】
本件発明に係る赤外線用カメラの後側焦点調整システムは、その外部から被写体距離に関する情報を制御手段4に送信する管理側制御手段20を備えることで、当該管理側制御手段20が被写体距離に関する情報を当該制御手段4に備わる受信部7に送信することが出来る。また、当該管理側制御手段20は、レンズユニット1の制御手段4の受信部7に、被写体距離に関する情報以外にも、例えば後側焦点の調整指示や焦点調整用レンズ2を合焦位置に合わせる指示に関する情報を送信することもでき、自動的に当該焦点調整用レンズ2を合焦位置に合わせることが出来る。ちなみに、本件発明では、管理側制御手段10が被写体距離の情報等を送信するにあたり、当該管理側制御手段10から制御手段4への送信態様としては有線、無線は問わない。
【0023】
また、本件発明に係る赤外線用カメラの後側焦点調整システムは、レンズユニット1の内部温度を測定する温度測定手段3を備え、制御手段4は、当該温度測定手段3が測定した温度に基づき焦点調整用レンズ2の位置ずれ量を算出し、当該位置ずれ量に基づき当該焦点調整用レンズ2の位置を制御することが好ましい。
【0024】
本件発明に係る赤外線用カメラの後側焦点調整システムは、制御手段4が温度測定手段3が測定したレンズユニット1の内部温度に基づき、焦点調整用レンズ2の位置ずれ量を算出し、この算出された位置ずれ量を、既に決定した後側焦点調整量に反映させて焦点調整用レンズ2の位置の調整を行うことが出来る。このように、本件発明の制御手段4は、当該位置ずれ量を加味して当該焦点調整用レンズ2の位置を制御することで、レンズユニット1の内部温度の変化に伴い鏡筒等が伸縮することによる焦点位置のばらつき等の影響を極力低減させることが出来る。なお、本件発明に係るレンズユニット1は、当該レンズユニット1の内部に温度測定手段3として温度センサーを備えることができ、備える温度センサーの数や配置は限定されない。
【0025】
本件発明に係る赤外線用カメラの後側焦点調整システムは、レンズユニット1が上述した構成を備えることで、赤外線用カメラの設置場所における温度環境に左右されずに、焦点調整用レンズ2の位置ずれ量を短時間で正確に算出することが出来るため、安定して鮮明な画像を得ることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本件発明に係る赤外線用カメラの後側焦点調整システムによれば、赤外センサの検知面の位置が未知であっても後側焦点の調整が可能である。また、本件発明に係る赤外線用カメラの後側焦点調整システムは、赤外線レンズユニット1自身が、後側焦点調整調整量を算出する機能や、後側焦点調整に必要な情報を記憶する機能を有することで、従来よりスピーディに後側焦点調整調整を行うことが可能となる。よって、本件発明に係る赤外線用カメラの後側焦点調整システムによれば、焦点調整用レンズの位置制御を正確に行うことができ、鮮明な画像を安定して得ることの可能な赤外線用カメラ装置を提供することが出来るため、セキュリティ用途として好適に用いることが出来る。
【符号の説明】
【0027】
1・・・レンズユニット
2・・・焦点調整用レンズ
3・・・温度測定手段
4・・・制御手段
5・・・算出部
6・・・記憶部
7・・・受信部
10・・カメラ本体
11・・赤外センサ
12・・管理制御手段
図1