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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-170429(P2015-170429A)
(43)【公開日】2015年9月28日
(54)【発明の名称】配電用自動開閉器の操作装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/59 20060101AFI20150901BHJP
   H02H 7/26 20060101ALI20150901BHJP
【FI】
   H01H33/59 K
   H02H7/26 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-43493(P2014-43493)
(22)【出願日】2014年3月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100064469
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100099612
【弁理士】
【氏名又は名称】菊池 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100073450
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】藤本 憲太郎
(72)【発明者】
【氏名】森田 智比古
(72)【発明者】
【氏名】松田 亨
(72)【発明者】
【氏名】園田 誠
(72)【発明者】
【氏名】綾部 浩一
【テーマコード(参考)】
5G028
【Fターム(参考)】
5G028AA03
5G028AA06
5G028AA24
5G028FB01
5G028FD01
(57)【要約】
【課題】系統の短絡事故時に遅延開放時間が短くなるのを防いで、系統の保護リレーとの動作の協調を確実に図ることができる配電用自動開閉器の操作装置を提供する。
【解決手段】投入コイルCCと保持コイルHCが直列に接続された開閉器の駆動コイルと操作電圧入力端子u1,u2との間をオンオフする高速遮断用スイッチSW11、SW12と、操作電圧入力端子間に接続された遅延開放用ダイオードDdと、操作電圧Voが消滅したとき及び高速遮断用スイッチがオフ状態にされたときに一定時間の間常開スイッチRy1aを閉じるタイマリレーTRと、電磁石の駆動電流が遮断されたときに駆動コイルに誘起する電圧により駆動されて常閉スイッチRy2bをオフ状態にする保持コイル開放リレーRy2とを設けて、タイマリレーの常開接点と保持コイル開放リレーの常閉接点との直列回路を保持コイルの両端に並列に接続した。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入コイルと該投入コイルに対して直列に接続された保持コイルとにより駆動コイルが構成された電磁石によって駆動される配電用自動開閉器を操作する操作装置であって、
操作電圧が入力される一対の操作電圧入力端子と、
前記電磁石の駆動コイルと前記操作電圧入力端子との間に設けられて、前記開閉器を高速遮断させる際にオフ状態にされて前記操作電圧が前記駆動コイルに印加されるのを阻止する常閉型の高速遮断用スイッチと、
前記保持コイルに対して並列に接続されて前記開閉器が開路しているときにオン状態を保持し、前記開閉器の投入が完了した後にオフ状態になる保持コイル短絡スイッチと、
前記操作電圧により逆バイアスされる向きに向け、かつ前記高速遮断用スイッチよりも前記操作電圧入力端子側に位置させて、前記操作電圧入力端子間に接続された遅延開放用ダイオードと、
常開スイッチを有して、前記操作電圧入力端子に与えられていた操作電圧が消滅したとき及び前記操作電圧が与えられている状態で前記高速遮断用スイッチがオフ状態にされたときに前記常開スイッチを一定時間の間オン状態にするタイマリレーと、
前記タイマリレーの常開スイッチに対して直列に接続された常閉スイッチを有して、前記駆動コイルを流れていた駆動電流が遮断されたときに該駆動コイルに誘起する電圧により駆動されて前記常閉スイッチをオフ状態にする保持コイル開放リレーと、
を具備し、
前記タイマリレーの常開スイッチと保持コイル開放リレーの常閉スイッチとの直列回路が前記保持コイルに対して並列に接続されていることを特徴とする配電用自動開閉器の操作装置。
【請求項2】
前記タイマリレーは、前記高速遮断用スイッチを通して与えられる前記操作電圧により放電阻止用ダイオードと限流素子とを通して充電されるように設けられたタイマコンデンサと、前記操作電圧が与えられなくなったときに前記タイマコンデンサの放電電流により励磁されて前記常開スイッチをオン状態にするリレーコイルとを備えていること、
を特徴とする請求項1に記載の配電用自動開閉器の操作装置。
【請求項3】
投入コイルと該投入コイルに対して直列に接続された保持コイルとにより駆動コイルが構成された電磁石により駆動される配電用自動開閉器を操作する操作装置であって、
配電線から取り出した交流電圧を整流して得た操作電圧が入力されるプラス側及びマイナス側の操作電圧入力端子と、
前記電磁石の駆動コイルの一端と前記プラス側の操作電圧入力端子との間及び前記電磁石の駆動コイルの他端と前記マイナス側の操作電圧入力端子との間にそれぞれ挿入されて前記開閉器を高速遮断させる際にオフ状態にされて前記操作電圧が前記駆動コイルに印加されるのを阻止する常閉型のプラス側及びマイナス側の高速遮断用スイッチと、
前記保持コイルに対して並列に接続されて前記開閉器が開路しているときにオン状態を保持し、前記開閉器の投入が完了した後にオフ状態になる保持コイル短絡スイッチと、
前記操作電圧が逆方向に印加される向きに向け、かつ前記高速遮断用スイッチよりも前記操作電圧入力端子側に位置させて、前記両操作電圧入力端子間に接続された遅延開放用ダイオードと、
前記駆動コイルの一端に、アノードを該駆動コイルの一端側に向けた放電阻止用ダイオードと限流素子とを通して一端が接続され、他端が前記駆動コイルの他端に接続されたタイマコンデンサと、前記駆動コイルの一端と前記タイマコンデンサの一端との間に接続されて前記タイマコンデンサに前記操作電圧が印加されなくなったときに流れる前記タイマコンデンサの放電電流により励磁される第1のリレーコイルと、該第1のリレーコイルが励磁されているときにオン状態になる常開スイッチとを有するタイマリレーと、
前記電磁石の駆動コイルの他端側にアノードを向けた逆流阻止ダイオードを通して前記駆動コイルの両端に並列に接続された第2のリレーコイルと、該第2のリレーコイルが励磁されているときにオフ状態になる常閉スイッチとを有して前記常閉スイッチが前記タイマリレーの常開スイッチに対して直列に接続された保持コイル開放リレーと、
を具備し、
前記タイマリレーの常開スイッチと保持コイル開放リレーの常閉スイッチの直列回路が前記保持コイルに対して並列に接続されていること、
を特徴とする配電用自動開閉器の操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配電線の区分点や分岐点に挿入される配電用自動開閉器を操作する操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1や特許文献2に示されているように、配電線の区分点や分岐点に挿入される開閉器として、電磁石を駆動源とした電磁操作機構により操作されて投入動作及び投入保持動作(投入状態を保持する動作)と開路動作とを行う自動開閉器が用いられている。この種の開閉器は、真空開閉器等からなっていて配電線に対して直列に接続される主スイッチと、該主スイッチを操作する操作機構とをケース内に収容することにより構成した開閉器本体と、電力会社の営業所等に設けられた親局との間で通信を行う機能を有する子局とを備えていて、子局内及び開閉器本体内に構成要素が設けられた操作装置により開閉操作される。
【0003】
一般に、配電用自動開閉器の操作装置は、配電線からトランスを通して取り出した交流電圧を整流し、波形整形して矩形波状の操作電圧を発生させる制御電源部と、操作電圧を入力として開閉器の電磁操作機構を制御する開閉器制御部とを備えていて、自動開閉器の設置点の電源側及び負荷側の系統電圧の有無や、親局から与えられる遮断指令等に応じて、電磁操作機構を制御することにより、開閉器の開閉操作(主スイッチの開閉操作)を行うように構成されている。
【0004】
電磁石により駆動される配電用自動開閉器においては、投入する際に大きな電磁力を必要とするが、投入が完了した後、その投入状態を保持する際には、投入時より電磁力を弱めても支障を来さない。そのため、この種の自動開閉器では、特許文献1に示されているように、電磁石の駆動コイルを、インピーダンスが小さい投入コイルと、該投入コイルよりも大きなインピーダンスを有して投入コイルに対して直列に接続された保持コイルとにより構成して、開閉器を投入する際には操作電圧を投入コイルのみに印加して該投入コイルに十分大きな投入電流を流し、開閉器の投入動作が完了した後は、操作電圧を投入コイルと保持コイルとの直列回路の両端に印加して、両コイルに制限された保持電流を流すことにより、主スイッチを投入状態に保持するようにしている。
【0005】
一般に配電用自動開閉器は、地絡電流を遮断することはできるが、短絡電流を遮断することはできない仕様になっている。そのため、この種の開閉器においては、短絡事故発生時に系統電圧が喪失して操作電圧が喪失したときに、直ちに開路動作を行わせるのではなく、操作電圧が喪失した後、一定の遅れ時間が経過した後に(系統の保護リレーが働いて変電所が遮断器を開いた後に)開路動作を行わせるようにしておく必要がある。本明細書では、このように、操作電圧が喪失した後、一定の遅れ時間が経過した後に開閉器を開路させる動作を、「遅延開放動作」と呼ぶ。
【0006】
また、電力会社は、地絡事故発生時に停電する区間を極力少なくするために、変電所の遮断器を遮断する前に、親局から、系統の事故点を含む区間の両端に設置された自動開閉器の子局に遮断指令を与えて、該自動開閉器を直ちに開路させることがある。
【0007】
更に、特許文献2に示されているように、零相電圧及び零相電流を検出する検出部と、この検出部の出力から系統で地絡事故が発生しているか否かを判定する地絡判定部とを自動開閉器内に設けて、自動開閉器内の地絡判定部が系統で地絡事故が発生していると判定したときに、操作装置に遮断指令を与えて、開閉器を直ちに開路させることも知られている。本明細書では、このように、遮断指令が与えられたときに、開閉器を直ちに開路させる動作を,「高速遮断動作」と呼ぶ。
【0008】
配電用自動開閉器に汎用性を持たせるためには、遅延開放動作を行う機能と、高速遮断動作を行う機能との双方の機能を持たせておくことが好ましい。
【0009】
特許文献1に示された自動開閉器の操作装置においては、操作電圧が入力されるプラス側及びマイナス側の操作電圧入力端子が設けられて、互いに直列に接続された投入コイル及び保持コイルの共通接続点とマイナス側の操作電圧入力端子との間に第1のリレーの常開接点が接続されるとともに、保持コイルの投入コイルと反対側の端子がマイナス側の操作電圧入力端子に接続されている。またプラス側操作電圧入力端子と投入コイルの保持コイルと反対側の端子との間に第2のリレーの常開接点が接続され、プラス側操作電圧入力端子と投入コイル及び保持コイルの共通接続点との間に、遅延開放動作を可能にするためのダイオード(遅延開放用ダイオード)が、そのアノードを、投入コイル及び保持コイルの共通接続点側に向けて接続されている。
【0010】
特許文献1に示された自動開閉器の操作装置においては、開閉器を投入する際に第1のリレーと第2のリレーとを同時に励磁することにより、第1のリレーの常開接点と第2のリレーの常開接点とを同時にオン状態にして、保持コイルを第1のリレーの接点を通して短絡すると同時に、操作電圧を投入コイルに印加した状態にする。これにより、投入コイルに大きな駆動電流を流して開閉器を投入する。次いで投入動作が完了した後に第1のリレーを消勢してその接点を開くことにより、保持コイルの短絡を解除して、操作電圧を投入コイルと保持コイルの直列回路の両端に印加した状態にし、両コイルを通して制限された電流を流して、主スイッチを投入された状態に保持する。
【0011】
また系統で短絡事故が発生して系統電圧が喪失したときには、第1のリレーを消勢してその接点を開き、投入コイルと第2のリレーの接点と遅延開放用ダイオードとにより構成される閉回路に電流を流して、時間の経過に伴って減衰していく電流を投入コイルに流すことにより、自動開閉器の開路を遅延させる。
【0012】
特許文献1には明記されていないが、特許文献1に示されたように操作装置を構成した場合には、開閉器を高速遮断することが必要なときに第1のリレー及び第2のリレーの双方を消勢させて両リレーの接点を同時に開くことにより、投入コイル及び保持コイルを操作電圧入力端子から切り離すとともに、遅延開放用ダイオードを投入コイルから切り離して、開閉器を高速遮断させることができる。
【0013】
また特許文献2には、系統電圧が喪失したときに開閉器を遅延開放させる状態と、遮断指令が与えられたときに開閉器を高速遮断させる状態とを適宜に切り換えることができるようにした自動開閉器の操作装置が開示されている。特許文献2に示された操作装置は、投入コイルと保持コイルとの直列回路と、投入時に保持コイルを短絡するスイッチとを有して、開閉器の投入及び保持動作と高速遮断動作とを行わせる操作回路と、該操作回路に接続された際に開閉器を遅延開放させることを可能にする遅延開放回路と、遅延開放回路を操作回路に接続したり、操作回路から切り離したりする常開接点を有する第1の動作特性切換リレーと、操作電圧を発生する制御電源部を操作回路に接続したり、操作回路から切り離したりする接点を有する第2の動作特性切換リレーとを備えて、第1及び第2の動作特性切換リレーの接点を同時にオン状態にすることにより遅延開放回路と制御電源部とを操作回路に接続して開閉器の遅延開放動作を可能にし、第1及び第2の動作特性切換リレーの接点を同時にオフ状態にして遅延開放回路及び制御電源部を操作回路から切り離すことにより、開閉器の高速遮断を可能にするように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平2−234322号公報
【特許文献2】特開2008−181843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1に示された操作装置によった場合には、自動開閉器を高速遮断させる際に、第1のリレーと第2のリレーとを協調動作させて、両リレーの接点を同時にオフ状態にする必要がある。万一第1のリレーの接点を開くタイミングが第2のリレーの接点を開くタイミングよりも遅れると、保持コイルと第1のリレーの接点とにより構成される閉回路に電流が流れるため、開閉器の開路動作が遅れ、高速遮断を実現することができなくなる。
【0016】
このように、特許文献1に示された操作装置では、高速遮断を行う際に、2つのリレーを正確に同時に開くように協調動作させる必要があるため、2つのリレーとして動作特性が揃ったものを用いる必要があり、一般に市販されているリレーをそのまま用いて操作装置を構成することができなかった。従って、特許文献1に示された操作装置によった場合には、操作装置のコストが高くなるのを避けられなかった。また特許文献1に示された操作装置による場合には、2つのリレーの動作特性を揃える必要があるため、リレーの品質管理が難しいという問題があった。また特許文献2に示された操作装置によった場合も、開閉器を高速遮断する際には、2つの動作特性切換リレーの接点を同時に開くように協調動作させる必要があるため、上記と同様の問題が生じるのを避けられなかった。
【0017】
なお開閉器の高速遮断を可能にするために、主スイッチを開路させるための機構を改良することにより、遮断指令が与えられてから主スイッチが開路するまでの時間を短縮することも考えられるが、このように構成した場合には、遅延開放時間も短くなってしまうため、自動開閉器と配電系統の保護リレーとの動作の協調がとれなくなるおそれが生じる。
【0018】
本発明の目的は、安価なリレーを使用することを可能にするとともに、短絡事故発生時に遅延開放動作を行わせる際に、遅延開放時間が短くなるのを防いで、系統の保護リレーとの動作の協調を確実に図ることができるようにした配電用自動開閉器の操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、投入コイルと該投入コイルに対して直列に接続された保持コイルとにより駆動コイルが構成された電磁石によって駆動される配電用自動開閉器を操作する操作装置を対象としたもので、本発明においては、操作電圧が入力される一対の操作電圧入力端子と、電磁石の駆動コイルと操作電圧入力端子との間に設けられて、開閉器を高速遮断させる際にオフ状態にされて操作電圧が駆動コイルに印加されるのを阻止する常閉型の高速遮断用スイッチと、保持コイルに対して並列に接続されて開閉器が開路しているときにオン状態を保持し、開閉器の投入が完了した後にオフ状態になる保持コイル短絡スイッチと、操作電圧により逆バイアスされる向きに向け、かつ高速遮断用スイッチよりも操作電圧入力端子側に位置させて操作電圧入力端子間に接続された遅延開放用ダイオードと、常開スイッチを有して、操作電圧入力端子に与えられていた操作電圧が消滅したとき及び操作電圧が与えられている状態で高速遮断用スイッチがオフ状態にされたときに常開スイッチを一定時間の間オン状態にするタイマリレーと、タイマリレーの常開スイッチに対して直列に接続された常閉スイッチを有して、駆動コイルを流れていた駆動電流が遮断されたときに該駆動コイルに誘起する電圧により駆動されて常閉スイッチをオフ状態にする保持コイル開放リレーとを設けて、タイマリレーの常開スイッチと保持コイル開放リレーの常閉スイッチとの直列回路を保持コイルに対して並列に接続した。
【0020】
上記の操作装置において、開閉器が開路している状態で操作電圧入力端子間に操作電圧が与えられると、該操作電圧が高速遮断用スイッチを通して、電磁石を駆動する保持コイル及び投入コイルの直列回路の両端に印加される。開閉器が開路しているときには、保持コイル短絡スイッチにより保持コイルが短絡されているため、操作電圧は投入コイルの両端にのみ印加され、投入コイルを通して大きな駆動電流が流れる。これにより開閉器が投入される。開閉器の投入が完了すると、保持コイル短絡スイッチが開き、保持コイルの短絡が解除されるため、保持コイルと投入コイルとを通して制限された保持電流が流れ、開閉器が投入状態に保持される。
【0021】
開閉器が投入されている状態で操作電圧が喪失すると、電磁石の駆動コイルには、それまで流れていた電流を流し続けようとする極性の電圧が誘起する。このときタイマリレーの常開スイッチが一定時間の間オン状態になるため、投入コイルに誘起した電圧により、投入コイル−遅延開放用ダイオード−タイマリレーの常開スイッチ−保持コイル開放リレーの常閉スイッチ−投入コイルの閉回路を保持コイルの短絡電流が流れる。また保持コイルに誘起した電圧により、保持コイル−保持コイル開放リレーの常閉スイッチ−タイマリレーの常開スイッチ−保持コイルの閉回路を電流が流れる。このように、操作電圧が喪失したときには、タイマリレーの常開スイッチがオン状態にある間に、投入コイル及び保持コイルに電流が流れるため、開閉器の開路が遅れる。操作電圧が喪失した後、一定時間が経過してタイマリレーの常開スイッチがオフ状態になると、投入コイル及び保持コイルを通して流れていた電流が消滅するため、開閉器が開路する。これらの動作により、操作電圧が喪失した際の開閉器の遅延開放動作が実現される。
【0022】
また操作電圧入力端子間に操作電圧が与えられている状態で、高速遮断用スイッチをオフ状態にすると、開閉器を駆動する電磁石の駆動コイルに印加されていた電流が遮断され、投入コイル及び保持コイルにそれまで流れていた電流を流し続けようとする極性の電圧が誘起する。このとき、高速遮断用スイッチがオフ状態になっていることにより、遅延開放用ダイオードが駆動コイルから切り離されているため、遅延開放用ダイオードが駆動コイルに電流を流す閉回路を形成して開閉器の開路を遅延させる作用をすることはない。また高速遮断用スイッチがオフ状態にされることにより、タイマリレーが働いてその常開スイッチをオン状態にするが、高速遮断用スイッチがオフ状態にされた際に投入コイル及び保持コイルに誘起する電圧により保持コイル開放リレーが駆動されて、その常閉スイッチが瞬時にオフ状態になるため、タイマリレーの常開スイッチがオン状態になることにより保持コイルに電流を流す回路が形成されることもない。このとき投入コイル及び保持コイルに誘起する電圧により保持コイル開放リレーの駆動部を通して電流が流れるが、この電流は微小であって、開閉器を投入状態に保持するために必要な保持電流以上になることはない。従って、高速遮断用スイッチがオフ状態にされたときには、開閉器を駆動する電磁石の駆動コイルを流れる電流が瞬時に保持電流(開閉器を投入状態に保持するために必要な電流)未満になり、開閉器が開路する。これにより、高速遮断用スイッチがオフ状態にされた際の開閉器の高速遮断が実現される。
【0023】
また上記のように、高速遮断用スイッチがオフ状態にされたときにオン状態になるタイマリレーの常開スイッチに、高速遮断用スイッチがオフ状態にされたときにオフ状態になる保持コイル開放リレーの常閉スイッチを直列に接続しておくと、開閉器を高速遮断する過程で、保持コイルを短絡する回路が形成されるのを防ぐことができるため、保持コイルを通して流れる電流により開閉器の開路が遅れるのを防いで、開閉器の高速遮断を支障なく行わせることができる。
【0024】
上記の構成において、高速遮断を行わせる際には、タイマリレーの常開スイッチのオン動作と、保持コイル開放リレーのオフ動作とを同時に行わせるが、このときタイマリレーの常開スイッチのオン動作が行われるタイミングと、保持コイル開放リレーの常閉スイッチがオフ動作を行うタイミングとの間に多少のずれがあっても、保持コイルに電流を流さないという目的は達成できるため、タイマリレーの常開スイッチ及び保持コイル開放リレーの常閉スイッチを正確に協調動作させる必要はない。従って、これらのリレーは、特に動作特性が揃ったリレー素子を用いて構成する必要が無く、安価なリレー素子を用いて構成することができる。また両リレーの動作特性を正確に揃える必要がないため、リレーの品質管理を容易にすることができる。
【0025】
本発明の一態様では、上記タイマリレーが、高速遮断用スイッチを通して与えられる操作電圧により放電阻止用ダイオードと限流素子とを通して充電されるように設けられたタイマコンデンサと、操作電圧が与えられなくなったときにタイマコンデンサの放電電流により励磁されて常開スイッチをオン状態にするリレーコイルとを備えている。
【0026】
本発明の他の態様では、配電線から取り出した交流電圧を整流して得た操作電圧がプラス側及びマイナス側の操作電圧入力端子に入力される。
また開閉器を駆動する電磁石の駆動コイルの一端とプラス側の操作電圧入力端子との間及び電磁石の駆動コイルの他端とマイナス側の操作電圧入力端子との間にそれぞれ常閉型のプラス側及びマイナス側の高速遮断用スイッチが挿入されて、開閉器を高速遮断させる際にこれらのスイッチがオフ状態にされる。
この場合も、遅延開放用ダイオードは、操作電圧が逆方向に印加される向きに向け、かつ高速遮断用スイッチよりも操作電圧入力端子側に位置させて、両操作電圧入力端子間に接続される。
また、タイマリレーは、駆動コイルの一端に、アノードを該駆動コイルの一端側に向けた放電阻止用ダイオードと限流素子とを通して一端が接続され、他端が駆動コイルの他端に接続されたタイマコンデンサと、駆動コイルの一端とタイマコンデンサの一端との間に接続されてタイマコンデンサに操作電圧が印加されなくなったときに流れるタイマコンデンサの放電電流により励磁される第1のリレーコイルと、該第1のリレーコイルが励磁されているときにオン状態になる常開スイッチとを備えた構成とし、保持コイル開放リレーは、電磁石の駆動コイルの他端側にアノードを向けた逆流阻止ダイオードを通して駆動コイルの両端に並列に接続された第2のリレーコイルと、該第2のリレーコイルが励磁されているときにオフ状態になる常閉スイッチとを備えた構成として、該常閉スイッチをタイマリレーの常開スイッチに対して直列に接続する。
【0027】
本発明で用いるタイマリレー及び保持コイル開放リレーは、有接点リレーを用いて構成してもよく、無接点リレー(ソリッドステート・リレー)を用いて構成してもよい。従って、「常閉スイッチ」及び「常開スイッチ」の「スイッチ」には、接点により構成されるスイッチと、半導体スイッチ素子により構成されるスイッチの双方が含まれる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、操作電圧が喪失したときに、タイマリレーの常開スイッチがオン状態にある間に、投入コイル及び保持コイルを通して保持電流を流して、開閉器の開路を遅延させることができる。タイマリレーの常開スイッチをオン状態に保つ時間を十分に長くしておくことにより、操作電圧が喪失してから開閉器が開路するまでの遅延開放時間が短縮されるのを防ぐことができるため、開閉器の遅延開放時間が短くなるのを防いで、系統の保護リレーとの動作の協調を確実に図ることができる。
【0029】
また本発明によれば、操作電圧が喪失したときに遅延開放動作を行わせるために保持コイルに対して並列に接続されて、操作電圧が喪失したときに一定時間の間オン状態になるタイマリレーの常開スイッチに対して直列に、開閉器の駆動コイルを流れていた駆動電流が遮断されたときに該駆動コイルに誘起する電圧により駆動されてオフ状態になる常閉スイッチを接続したので、開閉器を高速遮断する過程で、保持コイルを短絡する回路が形成されて、開閉器の開路が遅れるのを防ぐことができ、開閉器の高速遮断を支障なく行わせることができる。
【0030】
また本発明で用いるタイマリレー及び保持コイル開放リレーは正確に同時に動作するように協調動作する必要はないため、これらのリレーは、特に動作特性が揃ったリレー素子を用いて構成する必要が無く、安価なリレー素子を用いて構成することができる。また両リレーの動作特性を正確に揃える必要がないため、リレーの品質管理を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明に係る操作装置の一実施形態の要部の構成を示した回路図である。
図2図1に示した実施形態において、操作装置が開閉器を投入する際に流れる電流の経路を示した動作説明図である。
図3図1に示した実施形態において、操作装置が開閉器の投入を完了した後開閉器を投入状態に保持する際に流れる電流の経路を示した動作説明図である。
図4図1に示した実施形態において、高速遮断用スイッチが閉じている状態で操作電圧が喪失した際に流れる電流の経路を示した動作説明図である。
図5図1に示した実施形態において、操作電圧が与えられている状態で高速遮断用スイッチが開いた際に流れる電流の経路を示した動作説明図である。
図6】(A)ないし(F)は、図1に示した操作装置の動作を説明するために開閉器の主スイッチやリレーのスイッチのオンオフ動作と、各部の電圧、電流波形とを示したタイムチャートである。
図7】本発明に係る操作装置の他の実施形態の要部の構成を示した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明に係る操作装置の一実施形態の要部の構成を示したもので、同図において1は配電用自動開閉器の開閉器本体、2は開閉器本体1に付属させて設けられた配電用自動開閉器の子局であり、開閉器本体1及び子局2内に設けられた所定の構成要素により開閉器の操作装置が構成される。
【0033】
開閉器本体1は、配電線を複数の区間に区分する等の目的で配電線に直列に挿入される真空バルブ等からなる主スイッチ(図示せず。)と、駆動コイルLsを有する電磁石と、該電磁石を駆動源として主スイッチをオンオフ操作する操作機構(図示せず。)と、主スイッチのオンオフを制御するために電磁石の駆動コイルLsへの通電を制御する制御回路CCTと、主スイッチを手動操作する手動操作機構(図示せず。)と、これらを収容したケース101とにより構成されている。ケース101には、開閉器本体1と子局2との間を接続するケーブルの芯線3a、3b の一端が接続されるコネクタ102が取り付けられている。電磁石の駆動コイルLsは、インピーダンスが小さく,大きい電流を流すことができる投入コイルCCと、該投入コイルに対して直列に接続されたインピーダンスが高い保持コイルHCとからなっている。
【0034】
子局2は、電力会社の営業所等に設けられた制御指令所に設置された親局との間で通信を行う手段(図示せず。)と、配電線からトランスを通して取り出した交流電圧を整流し、波形整形して矩形波状の操作電圧Voを発生する操作電圧発生部(図示せず。)と、操作電圧Voが入力されるプラス側操作電圧入力端子u1及マイナス側操作電圧入力端子u2と、自動開閉器の主スイッチを高速遮断する際に開かれるプラス側及びマイナス側の常閉型の高速遮断用スイッチSW11及びSW12と、操作電圧Voにより逆バイアスされる向きに向け、かつ高速遮断用スイッチSW11及びSW12よりも操作電圧入力端子u1,u2側に位置させて、操作電圧入力端子u1,u2間に接続された遅延開放用ダイオードDdとをケース201内に収容したものである。子局のケース201には、開閉器本体1と子局2との間を接続するケーブルの芯線3a、3bの他端が接続されるコネクタ202が取り付けられている。高速遮断用スイッチSW11及びSW12は、親局から子局2に与えられる指令により制御されるリレーの接点からなっていて、親局から子局2に遮断指令が与えられたときにオフ状態にされ、親局から子局2に投入指令が与えられたときにオン状態にされる。
【0035】
なお操作電圧入力端子u1,u2は、操作電圧Voが印加される導体部分であればよく、端子金具(ターミナル)を備えた端子である必要はない。例えば、操作電圧を発生する整流器のプラス側出力端子及びマイナス側出力端子とプラス側及びマイナス側の高速遮断用スイッチSW11及びSW12との間がそれぞれプラス側及びマイナス側の配線で直結される場合には、該プラス側及びマイナス側の配線がプラス側及びマイナス側の操作電圧入力端子となる。
【0036】
開閉器本体1内に設けられた制御回路CCTは、保持コイルHCに対して並列に接続されて開閉器が開路しているときに(開閉器の主スイッチが開路しているときに)オン状態を保持し、開閉器の投入が完了した後に(開閉器の主スイッチの投入が完了した後に)オフ状態になる保持コイル短絡スイッチSWbと、常開スイッチRy1a を有して、操作電圧入力端子u1,u2に与えられていた操作電圧Voが消滅したとき及び操作電圧Voが与えられている状態で高速遮断用スイッチSW11及びSW12がオフ状態にされたときに常開スイッチRy1aを一定時間の間オン状態にするタイマリレーTRと、タイマリレーTRの常開スイッチRy1aに対して直列に接続された常閉スイッチRy2bを有して、駆動コイルLsを流れていた駆動電流が遮断されたときに該駆動コイルに誘起する電圧により駆動されて常閉スイッチをオフ状態にする保持コイル開放リレーRy2とを備えていて、タイマリレーTRの常開スイッチRy1aと保持コイル開放リレーRy2の常閉スイッチRy2bとの直列回路が保持コイルHCに対して並列に接続されている。
【0037】
本実施形態では、駆動コイルLsの保持コイルHC側の端部Ls1を駆動コイルLsの一端とし、駆動コイルLsの投入コイルCC側の端部Ls2を駆動コイルLsの他端とする。図示の例では、電磁石の駆動コイルLsの一端Ls1が、コネクタ102と芯線3aとコネクタ202とプラス側高速遮断用スイッチSW11とを通してプラス側操作電圧入力端子u1に接続され、電磁石の駆動コイルLsの他端Ls2が、コネクタ102と芯線3bとコネクタ202とマイナス側高速遮断用スイッチSW12とを通してマイナス側操作電圧入力端子u2に接続されている。
【0038】
本実施形態において、保持コイル短絡スイッチSWbは、開閉器を投入する際に駆動コイルLsの両端に操作電圧Voを印加した際に、保持コイルHCを短絡して、投入コイルCCのみを通して駆動電流を流すために設けられている。本実施形態で用いている保持コイル短絡スイッチSWbは、開閉器の主スイッチと連動するように設けられていて、主スイッチが開路しているときにオン状態を保持し、主スイッチの投入が完了している状態にあるときにオフ状態を保持するようになっている。
【0039】
図示の例では、投入コイルCC及び保持コイルHCに流れていた電流が遮断されたときにこれらのコイルに誘起する電圧が過大になるのを防ぐために、投入コイルCCの両端及び保持コイルHCの両端にそれぞれ並列に過電圧保護素子であるバリスタVR1及びVR2が接続されている。投入コイルCC及び保持コイルHCに誘起する電圧が印加される素子を保護するために、図示のようにバリスタVR1及びVR2を設けることが好ましいが、投入コイルCC及び保持コイルHCに誘起する電圧が印加される素子の耐電圧が十分に高い場合には、これらのバリスタは省略することもできる。
【0040】
図示のタイマリレーTRは、高速遮断用スイッチSW11.SW12を通して与えられる操作電圧Voにより放電阻止用ダイオードD1と限流素子R1を通して充電されるように設けられたタイマコンデンサC1と、操作電圧Voが与えられなくなったときにタイマコンデンサC1の放電電流により励磁されて常開接点をオン状態にする第1のリレーRy1とを備えており、第1のリレーRy1のリレーコイル103が駆動コイルLsの一端とタイマコンデンサC1の一端との間に接続されている。第1のリレーRy1の常開接点が常開スイッチRy1aを構成している。
【0041】
図示の例では、タイマ回路TRのダイオードD1のアノードがコネクタ102と、該コネクタに接続されたケーブルの芯線3aと、該芯線に接続されたコネクタ202と、プラス側高速遮断用スイッチSW11とを通してプラス側操作電圧入力端子u1に接続されるとともに、保持コイルHCと投入コイルCCの直列回路からなる電磁石の駆動コイルLsの一端Ls1に接続されている。ダイオードD1のカソードは、限流素子としての抵抗器R1を通して、タイマコンデンサC1の一端に接続され、タイマコンデンサC1の他端は、コネクタ102と、該コネクタに接続されたケーブルの他の芯線3bと、該芯線に接続されたコネクタ202とマイナス側高速遮断用スイッチSW12とを通してマイナス側操作電圧入力端子u2に接続されるとともに、電磁石の駆動コイルLsの他端Ls2に接続されている。
【0042】
高速遮断用スイッチSW11及びSW12がオンの状態で操作電圧入力端子u1,u2間に操作電圧Voが印加されると、操作電圧Vo がダイオードD1と抵抗器R1とを通してタイマコンデンサC1に印加されるため、タイマコンデンサC1が操作電圧Voまで充電される。操作電圧入力端子u1,u2間に操作電圧Voが印加されたときに第1のリレーRy1のリレーコイル103に電圧が印加されるが、このときリレーコイル103に電流が流れないように、抵抗器R1の抵抗値が十分に小さく設定されている。操作電圧入力端子間に操作電圧が印加され、高速遮断用スイッチSW11,SW12がオン状態にあってタイマコンデンサC1の充電が完了している状態では、リレーコイル103を通してタイマコンデンサC1に充電電流が流れることはなく、またタイマコンデンサC1がリレーコイル103を通して放電することもない。従って、リレーコイル103は励磁されることがなく、常開スイッチRy1aは閉じることがない。
【0043】
操作電圧Voが喪失するか、または高速遮断用スイッチSW11,SW12がオフ状態にされて、タイマ回路TRに印加されていた操作電圧が喪失すると、タイマコンデンサC1に蓄積されていた電荷がリレーコイル103と保持コイルHCと投入コイルCCとを通して放電するため、リレーコイル103が励磁されて常開スイッチRy1aがオン状態になる。保持コイルHCのインピーダンスが高いため、タイマコンデンサC1の放電は時間をかけて行われる。リレーコイル103に流れている電流がしきい値以上である間、常開スイッチRy1aがオン状態を保持し、リレーコイル103に流れている電流がしきい値未満になると常開スイッチRy1aがオフ状態になる。従って常開スイッチRy1aは、操作電圧Voが喪失するか、または高速遮断用スイッチSW11,SW12がオフ状態にされた後、一定の時間の間だけオン状態を保持する。
【0044】
本実施形態では、保持コイル開放リレーRy2も有接点リレーからなっていて、その励磁コイル104が駆動コイルLsの両端に、アノードを駆動コイルLsの他端Ls2側に向けたダイオードD2を通して並列に接続されている。
【0045】
操作電圧Voが喪失するか、または高速遮断用スイッチSW11、SW12がオフ状態にされると、駆動コイルLsを流れていた電流が遮断されるため、駆動コイルLsの両端にそれまで流れていた電流を流し続けようとする極性の電圧が誘起し、この誘起電圧によりダイオードD2を通してリレーコイル104に励磁電流が流れる。この励磁電流がしきい値レベル以上である間常閉スイッチRy2bがオフ態を保持する。開閉器が投入されていて、保持コイル短絡スイッチSWbがオフ状態にあり、かつ保持コイル開放リレーRy2の常閉スイッチRy2bがオフ状態にあるときには、常閉スイッチRy1aがオン状態にあっても、保持コイルHCが短絡されることはなく、保持コイルHCは短絡から開放された状態に保持される。
【0046】
以下、図2乃至図6を参照して図1に示した操作装置の動作を説明する。図6は本実施形態の操作装置の動作を説明するために、開閉器の主スイッチやリレーのスイッチのオンオフ動作と、各部の電圧及び電流波形とを示したタイムチャートで、同図(A)は本実施形態の操作装置により操作される開閉器の主スイッチSWmのオンオフ動作を示し、(B)は電磁石の駆動コイルLsを流れる駆動電流Iの波形を示している。また図6(C)は操作電圧Vo の波形を示し、同図(D)はタイマコンデンサの両端の電圧Vcの波形を示している。また図6(E)は常開スイッチRy1aのオンオフ動作を示し、同図(F)は保持コイル開放リレーRy2の常閉スイッチRy2bのオンオフ動作を示している。
【0047】
図1に示した操作装置において、開閉器が開路している(図示しない主スイッチが開路している)状態で図6に示した時刻t1で配電線の電圧が回復し、操作電圧入力端子u1,u2間に操作電圧Vo(図6C)が与えられると、図2に示したように、操作電圧Voが高速遮断用スイッチSW11,SW12を通して、投入コイルCCと保持コイルHCとからなる電磁石の駆動コイルLsの両端に印加される。開閉器が開路しているときには、オン状態にある保持コイル短絡スイッチSWbにより保持コイルHCが短絡されていて、操作電圧は投入コイルCCの両端にのみ印加されるため、投入コイルCCを通して大きな投入電流Isc(図6B)が駆動電流Iとして流れ、開閉器が投入される。
【0048】
時刻t1で操作電圧Vo が与えられると、ダイオードD1と抵抗器R1とタイマコンデンサC1とを通して充電電流Icが流れてタイマコンデンサC1が充電されるため、タイマコンデンサC1の両端の電圧Vcが図6(D)に示すように操作電圧Voまで上昇する。
【0049】
開閉器の投入が完了し、投入時間Tonが経過して時刻t2になると、図3に示したように保持コイル短絡スイッチSWbが開き、保持コイルHCの短絡が解除されるため、保持コイルHCと投入コイルCCとを通して制限された保持電流Ish(図6B)が駆動電流Iとして流れるようになり、開閉器が投入状態に保持される。
【0050】
開閉器が投入されている状態で配電系統に短絡事故が発生し、時刻t3で配電線の電圧が喪失して操作電圧Voが喪失すると、図4に示したようにタイマコンデンサC1の電荷がリレーコイル103と保持コイルHCと投入コイルCCとを通して放電して、リレーコイル103に電流I1が流れるため、図6(E)に示すように常開スイッチRy1aがオン状態になる。また操作電圧Voが喪失した際に、電磁石の駆動コイルLsには、それまで流れていた電流を流し続けようとする極性の電圧が誘起する。このときタイマリレーTRの常開スイッチRy1aがオン状態になっているため、投入コイルCCに誘起した電圧により、投入コイルCC−遅延開放用ダイオードDd−タイマリレーの常開スイッチRy1a−保持コイル開放リレーの常閉スイッチRy2b−投入コイルCCの閉回路を電流が流れる。また保持コイルHCに誘起した電圧により、保持コイルHC−保持コイル開放リレーの常閉スイッチRy2b−タイマリレーの常開スイッチRy1a−保持コイルHCの閉回路を電流が流れる。
【0051】
このように、系統で短絡事故が発生し、操作電圧が喪失したときには、操作電圧が喪失した後も投入コイル及び保持コイルを通して保持電流Ishが流れるため開閉器が投入状態に保持される。時刻t3で操作電圧が喪失した後、一定の遅延開放時間Tdが経過して上記保持電流が開閉器を投入状態に保持するために必要な値未満になると開閉器が開路する。従って、系統で短絡事故が発生し、操作電圧が喪失したときには、操作電圧が喪失した後、一定の遅延開放時間Tdが経過するまで自動開閉器の開路が遅れる。これらの動作により、操作電圧が喪失した際の開閉器の遅延開放動作が実現される。
【0052】
操作電圧が喪失した時点から開閉器の主スイッチが開路するまでの時間(遅延開放時間)Tdは、系統で短絡事故が発生した後保護リレーが働いて変電所の遮断器が開くまでの時間よりも長く設定しておく。従って、本実施形態の操作装置により操作される自動開閉器は、系統で短絡事故が発生したときに、系統の保護リレーが働いて変電所の遮断器が開かれるまでの間投入状態に保持される。操作電圧が喪失した後遅延開放時間Tdが経過すると、図6(A)に示すように開閉器の主スイッチSWmが開路するが、このとき系統に流れていた短絡電流は遮断されているため、開閉器の主スイッチが短絡電流を遮断することはなく、該主スイッチの接点が損傷することはない。
【0053】
本実施形態において、タイマコンデンサC1の放電は、インピーダンスが大きい保持コイルを通して行われるため、遅延開放用スイッチRy1aがオン状態を保持する時間を十分に長くすることができる。従って、遅延開放時間Tdが短縮されるのを防ぐことができ、配電用自動開閉器の遅延開放動作と、系統の保護リレーの保護動作との協調がとれなくなる事態が生じるのを確実に防ぐことができる。
【0054】
系統で短絡事故が発生した後、時刻t5で系統電圧が回復すると、操作電圧Voが与えられるため、投入コイルCCに投入電流Iscが流れ、開閉器が投入される。時刻t5で操作電圧Vo が与えられた後、投入時間Tonが経過した時刻t6になると、保持コイル短絡スイッチSWbがオフ状態になるため、操作電圧が保持コイルHCと投入コイルCCの直列回路の両端に印加されるようになり、電磁石の駆動コイルに流れる駆動電流Iは保持電流Ishまで低下する。また時刻t5で操作電圧Vo が与えられたときにタイマコンデンサC1が充電され、その両端の電圧Vcが操作電圧Vo まで上昇する。
【0055】
また系統で地絡事故が発生したときに、操作電圧入力端子u1,u2間に操作電圧が与えられている状態で、親局から与えられる指令により,時刻t7で高速遮断用スイッチSW11,SW12がオフ状態にされると、開閉器を駆動する電磁石の駆動コイルLsに印加されていた電流が遮断され、投入コイルCC及び保持コイルHCにそれまで流れていた電流を流し続けようとする極性の電圧が誘起する。このとき、高速遮断用スイッチSW11,SW12がオフ状態であることにより、遅延開放用ダイオードDdは駆動コイルLsから切り離されているため、遅延開放用ダイオードDdが駆動コイルLsに電流を流す閉回路を形成することはなく、遅延開放用ダイオードDdが開閉器の開路動作を遅らせることはない。
【0056】
ここで、図1に示した操作装置において、保持コイル開放用スイッチRy2bが設けられていないとすると、操作電圧が与えられている状態で高速遮断用スイッチSW11,SW12がオフ状態にされたときに、タイマ回路TRに印加されていた操作電圧が喪失することにより、タイマコンデンサC1が放電して常開スイッチRy1aがオン状態になるため、保持コイルHCが常開スイッチRy1aにより短絡される。このように高速遮断用スイッチSW11,SW12がオフ状態にされたときに保持コイルHCを短絡する回路が形成されると、高速遮断用スイッチSW11,SW12がオフ状態にされて駆動コイルを流れていた駆動電流が遮断された際に保持コイルHCに誘起した電圧により保持コイルに電流が流れて保持電流Ishがしきい値以下になるのが遅れるため、開閉器の開路が遅れ、高速遮断を速やかに行うことができない。
【0057】
これに対し、本実施形態のように、時刻t7で高速遮断用スイッチSW11,SW12がオフ状態にされた際に駆動コイルLsに誘起する電圧で駆動される保持コイル開放リレーRy2を設けて、その常閉スイッチRy2bをタイマリレーの常開スイッチRy1aに対して直列に接続しておくと、図6(F)に示すように、時刻t7で高速遮断用スイッチSW11,SW12がオフ状態にされた際に、図5に示すように、保持コイル開放リレーの常閉スイッチRy2bをオフ状態にして、保持コイルHCを短絡する回路が形成されるのを阻止することができる。
【0058】
高速遮断用スイッチSW11,SW12がオフ状態にされたときに投入コイルCC及び保持コイルHCに誘起する電圧で保持コイル開放リレーRy2を駆動する際に、該保持コイル開放リレーRy2の駆動部(本実施形態ではリレーコイル104)を通して保持コイルHCに電流が流れるが、保持コイルHCのインピーダンスが高いため、この電流は微小であり、この電流が開閉器を投入状態に保持するために必要な保持電流以上になることはない。従って、高速遮断用スイッチがオフ状態にされたときには、開閉器を駆動する電磁石の駆動コイルLsを流れる電流が短い時間で保持電流(開閉器を投入状態に保持するために必要な電流)未満になり、開閉器は瞬時に開路する。これにより、高速遮断用スイッチがオフ状態にされた際の開閉器の高速遮断が実現される。
【0059】
上記のように、高速遮断用スイッチがオフ状態にされたときにオン状態になるタイマリレーTRの常開スイッチRy1aに、高速遮断用スイッチがオフ状態にされたときにオフ状態になる保持コイル開放リレーRy2の常閉スイッチRy2bを直列に接続しておくと、開閉器を高速遮断する過程で、保持コイルHCを短絡する回路が形成されるのを防ぐことができるため、保持コイルHCを通して流れる短絡電流により開閉器の開路が遅れるのを防いで、時刻t7で高速遮断用スイッチがオフ状態にされた後、開閉器が開路するまでの時間(高速開放時間)Tqを短くすることができ、開閉器の高速遮断を支障なく行わせることができる。
【0060】
上記の実施形態において、開閉器の高速遮断を行わせる際には、タイマリレーTRの常開スイッチRy1aのオン動作と、保持コイル開放リレーRy2の常閉スイッチRy2bのオフ動作とを行わせるが、このときタイマリレーの常開スイッチRy1aのオン動作が行われるタイミングと、保持コイル開放リレーの常閉スイッチRy2bがオフ動作を行うタイミングとの間に多少のずれがあっても、保持コイルHCに電流を流さないという目的は達成できるため、タイマリレーの常開スイッチ及び保持コイル開放リレーの常閉スイッチを正確に協調動作させる必要はない。従って、これらのリレーは、特に動作特性が揃ったリレー素子を用いて構成する必要が無く、安価なリレー素子を用いて構成することができる。また両リレーの動作特性を正確に揃える必要がないため、リレーの品質管理を容易にすることができる。
【0061】
本実施形態において、タイマリレーTRの常開スイッチRy1aを駆動するリレーコイル103及び保持コイル開放リレーRy2の常閉スイッチRy2bを駆動するリレーコイル104は、開閉器を開路させる際に短時間の間励磁されるだけであり、通常は非励磁状態に保持されるため、タイマリレー及び保持コイル開放リレーの寿命を長くすることができる。タイマリレーを構成するリレー素子及び保持コイル開放リレーを構成するリレー素子として無接点リレーを用いる場合も、両リレーが駆動されるのは開閉器の開路時のみであるため、両リレーの寿命を長くすることができる。
【0062】
上記の実施形態では、操作電圧が与えられなくなったときにタイマコンデンサC1をリレーRy1のコイル103と電磁石の駆動コイルLsを通して放電させるようにしたが、本発明はこのように構成する場合に限定されない。例えば、図7に示すように、駆動コイルLsの一端とダイオードD1のアノードとの間に逆流阻止ダイオードD4を挿入するとともに、リレーコイル103とタイマコンデンサC1との直列回路に対して並列に放電用抵抗器R2を接続して、操作電圧が与えられなくなったときにタイマコンデンサC1をリレーコイル(リレーの駆動部)103と放電用抵抗器R2とを通して放電させることにより、常開スイッチRy1aを一定時間の間オン状態に保持するようにしてもよい。
【0063】
上記の実施形態では、タイマリレーTRをタイマコンデンサを充電する回路と、タイマコンデンサの放電電流により駆動されるリレーRy1とにより構成したが、タイマリレーTRとして、時限回路と該時限回路が時限動作を行っている間オン状態を保持する常開スイッチとを内蔵してユニット化した市販のタイマを用いて、操作電圧が喪失したときに該タイマに駆動信号を与えて時限動作を行わせることにより、タイマに設けられた常開スイッチを一定時間の間オン状態にするようにてもよい。
【0064】
上記の実施形態では、保持コイル短絡スイッチSWbを開閉器の主スイッチと連動させて動作させるようにしたが、保持コイル短絡スイッチSWbは開閉器を投入する際に一定時間(投入時間)Tonの間オン状態を保持した後、オフ状態になるように設けられたリレーの常開スイッチ(開閉器を投入する際に短時間だけ駆動されるスイッチ)であってもよい。
【0065】
上記の実施形態では、自動開閉器の主スイッチを高速遮断する際に開かれる高速遮断用スイッチとして、プラス側及びマイナス側の高速遮断用スイッチSW11及びSW12を設けたが、これらの一方を省略することもできる。例えば、高速遮断用スイッチとしてスイッチSW11のみを設けて、マイナス側操作電圧入力端子u2をコネクタ202の芯線3bにつながる端子に直接接続するようにしても良い。
【符号の説明】
【0066】
1 開閉器本体
101 ケース
102 コネクタ
103 リレーコイル
104 リレーコイル
SWb 保持コイル短絡スイッチ
Ls 電磁石の駆動コイル
HC 保持コイル
CC 投入コイル
D1 放電阻止ダイオード
D2 逆流阻止ダイオード
TR タイマリレー
Ry1a タイマリレーの常開スイッチ
Ry2b 保持コイル開放リレーの常閉スイッチ
R1 抵抗器
R2 放電用抵抗器
2 子局
201 ケース
202 コネクタ
SW11,SW12 高速遮断用スイッチ
Dd 遅延開放用ダイオード
u1,u2 操作電圧入力端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7