(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-170603(P2015-170603A)
(43)【公開日】2015年9月28日
(54)【発明の名称】ワイヤを接続するための電気端子
(51)【国際特許分類】
H01R 4/18 20060101AFI20150901BHJP
H01R 4/62 20060101ALI20150901BHJP
H01R 43/048 20060101ALI20150901BHJP
【FI】
H01R4/18 A
H01R4/62 A
H01R43/048 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-46537(P2015-46537)
(22)【出願日】2015年3月10日
(31)【優先権主張番号】14290059.6
(32)【優先日】2014年3月10日
(33)【優先権主張国】EP
(71)【出願人】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】タイコ エレクトロニクス アンプ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハウツンク
(71)【出願人】
【識別番号】502168334
【氏名又は名称】タイコ エレクトロニクス フランス エス アー エス
(74)【代理人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、ヘルゲ
(72)【発明者】
【氏名】ロシ、アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ルイヤール、サヴィエール
(72)【発明者】
【氏名】ピカー、ジャン ピエール
(72)【発明者】
【氏名】サルガド、カーロス
(72)【発明者】
【氏名】チン、テファイ
(72)【発明者】
【氏名】ブリューメル、ウヴェ
【テーマコード(参考)】
5E063
5E085
【Fターム(参考)】
5E063CC05
5E085BB01
5E085BB12
5E085CC03
5E085DD14
5E085EE03
5E085FF01
5E085HH34
5E085JJ06
5E085JJ13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水分からの保護を改善するための電気端子及びワイヤを含むコネクタと、それに対応するかかるコネクタを製造する方法に関する。
【解決手段】電気端子は、基部と、基部から延出する対向側壁とを有し、ワイヤの剥き出し導体を受容するための第1の領域73と、絶縁体を備えるワイヤ部分を受容するための第2の領域とを備える圧着バレル5を備え、第1の領域73における対向側壁は、圧着された時F型圧着部を形成するように構成及び配列される。圧着バレル5は、第1領域73と第2の領域との間に移行領域75を更に含み、移行領域75における側壁は、圧着時に側壁の端部領域が円周方向に互いに重なる状態でワイヤを包囲するように構成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤを接続するための電気端子であって、基部(17)と、前記基部(17)から延出する対向側壁(19a/b,21a/b,23a/b)とを有し、前記ワイヤの剥き出し導体を受容するための第1の領域(9)と、絶縁体を有するワイヤ部分を受容するための第2の領域(11)とを備える圧着バレルを備え、前記第1の領域(9)における前記対向側壁(19a/b)は、圧着時にF型圧着部を形成するように構成される電気端子であって、
前記圧着バレル(5)は、前記第1の領域(9)と第2の領域(11)との間に移行領域(13)を更に備え、前記移行領域における前記側壁(23a,23b)は、圧着時に前記側壁(23a/b)の端部領域(45a/b)が円周方向(47)において互いに重なる状態で、前記ワイヤを包囲しているように構成されることを特徴とする電気端子。
【請求項2】
圧着時に、前記第1の領域(9)の前記基部(17)及び前記側壁(19a/b)と前記移行領域(13)の前記側壁(23a/b)は、トンネルを形成し、前記トンネルの前記側壁は、閉鎖容積を形成する請求項1に記載の電気端子。
【請求項3】
前記第2の領域(11)の前記基部(17)及び前記側壁(21a/b)は、圧着された時に重複しない開放した又は閉鎖した環形状を形成する請求項1又は2に記載の電気端子。
【請求項4】
圧着時に、前記第2の領域(11)の前記側壁(21a/b)も、前記移行領域(13)に隣接する部位において少なくとも部分的にトンネルを形成する請求項3に記載の電気端子。
【請求項5】
前記移行領域(13)は圧着時に漏斗形状を有する請求項1乃至4のいずれかに記載の電気端子。
【請求項6】
前記移行領域(13)に隣接する前記第1の領域(9)の先端とは反対側の前記第1の領域(9)の先端(67)は、該先端(67)において前記トンネルを閉鎖するために1つ以上の屈曲可能な前部カバー端部(25a/b,79a/b)を備える請求項1乃至5のいずれかに記載の電気端子。
【請求項7】
圧着時に前記前部カバー端部(79a/b)の端部が重なる請求項6に記載の電気端子。
【請求項8】
前記第1の領域(73)の前記側壁(77a)の一方は、特に前記前部カバー端部(79b)の厚み(d)だけ、前記他方の側壁(77b)よりも長い請求項6又は7に記載の電気端子。
【請求項9】
前記第1の領域(9)の前記側壁(19a/b)と前記移行領域(13)の前記側壁(23a/b)との交差箇所は、前記圧着バレルの少なくとも1つの側において縁領域(53a/b)に切り込み(51a/b)を提供する請求項1乃至8のいずれかに記載の電気端子。
【請求項10】
前記移行領域(13)の前記側壁(23a/b)と前記第2の領域(11)の前記側壁(21a/b)の交差箇所は、前記圧着バレルの少なくとも1つの側において縁領域に切り込み(65)を提供する請求項1乃至9のいずれかに記載の電気端子。
【請求項11】
前記圧着状態における請求項1乃至10に記載の電気端子とワイヤ(33)とを含むコネクタ。
【請求項12】
前記圧着バレル(5)の少なくとも前記第1の領域(9)と前記移行領域(13)の内側の空隙に充填するための腐食防止手段を更に含む請求項11に記載のコネクタ。
【請求項13】
前記ワイヤ(33)はアルミニウムワイヤであり、前記圧着バレル(5)は銅圧着バレル(5)である請求項11又は12に記載のコネクタ。
【請求項14】
請求項11乃至13のいずれかに記載のコネクタを作製する方法であって、
a.裸導体(35)が、前記第1の領域(9)に配置され、その絶縁体(37)を備える前記ワイヤ部分が、前記第2の領域(11)に配置され、前記2つの間の移行箇所が前記移行領域(13)内になるように、前記圧着バレル(5)にワイヤ(33)を導入する工程と、
b.前記第1の領域(9)の前記側壁(19a/19b)を巻き付けることによりF型圧着部を得る工程と、
c.前記移行領域(13)の前記側壁(23a/b)を巻き付けることにより前記ワイヤ(33)の前記円周方向に前記重なり圧着を得る工程と、
d.前記第2の領域(11)の前記側壁(21a/b)を巻き付けることにより閉鎖した又は開放した重ならない環形状を得る工程とを含む方法。
【請求項15】
e.前記前部カバー端部(25a/b,79a/b)を巻き付けることにより、前記第1の領域(9)及び前記移行領域(13)の前記側壁(19a/b,23a/b)によって形成された前記トンネル内の前記導体(37)を封止する工程を更に含む請求項14に記載方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤを接続するための電気端子に関する。この電気端子は、基部と、この基部から延出する対向側壁とを有する圧着バレルを備える。この圧着バレルは、更に、ワイヤの剥き出し導体を受容するための第1の領域と、絶縁体を有するワイヤ部分を受容するための第2の領域とを備える。本発明は、更に、特定の電気端子と、ワイヤと、圧着状態とを備えるコネクタ、及びかかるコネクタを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる電気端子は、当該技術分野において知られ、例えば、自動車産業におけるコネクタに用いられている。従来技術では、圧着された電気端子は、圧着バレルとワイヤの導体とが同一の導電材料を使用して製造されている場合が多い。その良好な導電性及び機械的強度から、銅が使用されている。しかしながら、銅にも欠点がある。まず、近年、銅の価格が急激に上昇している。次に、自動車の重量を減少しようとする試みから、開発エンジニアは、少々重い銅を、より軽量な物質と取り換えたいと考えている。
【0003】
軽量且つ低コストであるとともに良好な導電性を考慮すると、銅導体の使用を減少するのに適した材料として、アルミニウムが挙げられている。従って、銅コネクタに圧着されるアルミニウム導体を有する電気端子を提供することにより、アルミニウム導体の軽量さと、銅の良好なばね特性を組み合わせることが提案されている。しかしながら、銅と組み合わせてアルミニウムを使用することは困難である。水分が存在すると、銅とアルミニウムの電位差により、アルミニウムと銅の接点でアルミニウムが溶解し、この2つの物質同士の電気的接続に悪影響がある。この問題を克服するために、接触部位に水分が存在しないようにする対策を取らなければならない。
【0004】
銅とアルミニウムの組み合わせを使用する電気端子は、国際公開第2012/054072号で知られている。この既知の電気端子は、ワイヤの剥き出し導体から、導体が絶縁体層によって包囲されるワイヤの部分まで延出するF型圧着部を使用する。更に、この従来技術文献における圧着バレルは、アルミニウム導体と銅圧着バレルとの接触箇所に水分が達しないように、剥き出し導体の先端の隙間を閉鎖するための更なる前部封止部分を含む。この既知の設計は、幾つかの欠点を示す。
【0005】
まず、圧着バレルのその他の部分と同様にF型圧着部によって圧着される更なる前部封止部分により、ワイヤと圧着バレルの両方に銅のみを使用する端子よりも電気端子全体が長くなる。これにより、銅端子を有する既存の銅系のケーブルハーネスが、銅アルミニウム端子を有するアルミニウムケーブルハーネスと交換されなければならない場合に互換性がない可能性がある。
【0006】
更に、銅よりも相対的に低いアルミニウムの導電性により、アルミニウムワイヤの導体の直径は、銅ワイヤの直径よりも大きくなければならない。従って、ワイヤの総直径を増加しないために、一般的には、絶縁層の厚みがより小さくなる。しかしながら、これにより、圧着処理中に導体周囲の絶縁層が意図せず切れてしまった領域において接触部位に水分が浸入する恐れが増大する。従って、アルミニウム導体が銅との接触部位において水分に曝されるようになるという恐れが高くなる。これは、コネクタの耐用年数に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0007】
米国特許第4,641,911号明細書により他の電気コネクタが知られている。このコネクタでは、圧着バレルは、裸の剥き出し導体と絶縁体も圧着されるように構成される。圧着バレルの側壁を部分的に重ねることにより、軸方向に漏斗形状が得られる。しかしながら、この圧着バレルは、ワイヤの剥き出し導体と絶縁体層との間の移行領域において、圧着バレルが閉鎖されず、水分が接触部位に容易に浸入することができるので、銅アルミニウムコネクタには適さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このことから、本発明の目的は、接触部位の水分への曝露の恐れを減少するために改良された圧着バレルを有する電気端子を提供することである。更なる目的は、かかる電気端子を有するコネクタと、かかるコネクタを製造する方法とを提供することである。本発明の他の目的は、従来技術と比べて長さを短くした圧着バレルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1に記載のワイヤを接続するための電気端子によって達成される。
【0010】
本発明の電気端子は、基部と、前記基部から延出する対向側壁とを備え、ワイヤの撚り線とも呼ばれる剥き出し導体を受容するための第1の領域と、絶縁体を有するワイヤ部分を受容するための第2の領域とを含む圧着バレルを備え、前記第1の領域における前記対向側壁は、圧着時にF型圧着部を形成するように構成される。本電気端子は、前記圧着バレルが、前記第1の領域と前記第2の領域との間に移行領域を更に含み、前記移行領域における前記側壁が、圧着時に前記側壁の端部領域が円周方向に互いに重なる状態で前記ワイヤを包囲しているように構成されるということを特徴とする。
【0011】
前記第1の領域におけるF型圧着部と、前記移行領域における重なり圧着とを組み合わせることにより、望ましくない水分の浸入に対する所望の改善が達成される。実際、F型圧着部が、特に跳ね返り現象による接続の緩みの恐れを減少することによって、前記圧着バレルと前記ワイヤの前記導体との良好な機械的及び電気的性質を有する確実な接続を保証する一方で、前記移行領域における前記側壁の前記重なりにより、前記ワイヤ周囲の前記絶縁体層に対する損傷の恐れを招くことなく、外部環境に対して前記側壁によって生成された容積を確実に閉鎖する。
【0012】
好ましくは、圧着時に、前記第1の領域及び前記移行領域の前記基部及び側壁は、トンネルを形成し、前記トンネルの側壁は、閉鎖容積を形成する。従って、外部環境からの水分の浸入に対する所望の保護を達成することができる。
【0013】
更に好ましい実施形態では、前記第2の領域の前記基部及び前記側壁は、圧着された時に、重ならない開放した又は閉鎖したリング形状を形成することができる。前記移行領域における前記導体と前記圧着バレルとの間の接触部位の封止を保証することによって、前記第2の領域において前記側壁が重ならないことにより、本電気端子の総直径を可能な限り小さく抑えることができる。
【0014】
他の有利な実施形態によれば、前記第2の領域の前記側壁も、前記移行領域に隣接する部位において少なくとも部分的にトンネルを形成することができる。それにより、前記圧着バレルの前記側壁が前記絶縁体を完全に包囲する部位が拡大される。従って、水分への曝露からの保護が更に改善される。
【0015】
圧着時に前記移行領域が漏斗形状を有することができると有利である。漏斗形状の形成を可能にする設計を提供することにより、前記裸の剥き出し導体から絶縁体を有する前記ワイヤへの直径の変化が考慮され、それにより、前記圧着バレル内に存在する可能性のある空隙の合計容積を減少することができる。
【0016】
好ましくは、前記移行領域に隣接する前記第1の領域の先端とは反対側の前記第1の領域の先端は、その先端において前記トンネルを閉鎖するために1つ以上の屈曲可能な前部カバー端部を含む。前部カバー端部を設けることにより、前記圧着バレルの内側を、外部に対して封止することができ、圧着バレルとワイヤの導体との接触部位への水分の浸入を防止することができる。
【0017】
好適な一実施形態によれば、前記前部カバー端部は、端子軸に垂直な軸に沿って屈曲される。従って、従来技術とは対照的に、前記カバー端部は、前記側壁と同一の方向に屈曲されない。その結果、本端子は、従来技術の端子よりも短くすることができる。この利点は、圧着バレルが前記移行領域に重なり圧着を有さずに得ることもできる。
【0018】
前記カバー端部の端部が重なると有利である。前記カバー端部の重なりを設けることにより、その封止効果は更に改善される。
【0019】
有利な一実施形態によれば、前記第1の領域の前記側壁の一方は、特に前記前部カバー端部の厚みだけ、他方の側壁よりも長い。これにより、前記圧着バレルの封止は、単純化され、圧着処理の自動化及び圧着工具の設計を容易にする。前記第1の領域の前記側壁と前記移行領域の前記側壁との間の交差箇所は、前記圧着バレルの少なくとも1つの側において縁領域に切り込みを提供する。かかる切込みすなわちスリットにより、前記第1の領域におけるF型圧着部から前記移行領域における重なり圧着への転換が容易になると同時に、閉鎖容積を有する圧着バレルを得ることができる。
【0020】
好ましくは、前記移行領域の前記側壁と前記第2の領域の前記側壁との交差箇所は、前記圧着バレルの少なくとも1つの側において縁領域に切り込みを提供する。このように、重複圧着から環状圧着への転換も容易になる。
【0021】
また、本発明の目的は、上述した実施形態のいずれか一つに係る電気端子と、圧着状態におけるワイヤとを含むコネクタによって達成される。本発明の電気端子により、前記ワイヤと前記圧着バレルとの接触領域は、環境に対して封止される。
【0022】
本コネクタは、前記圧着バレルの少なくとも前記第1の領域と前記移行領域の内側の空隙に充填するための腐食防止手段を更に含むことができると有利である。特に、グリース又はその他の適した防止剤を使用して前記空隙を埋めることにより、水分への曝露からの前記ワイヤの前記導体と前記圧着バレルとの接触領域の保護が更に改善する。
【0023】
好適な一実施形態によれば、前記ワイヤはアルミニウムワイヤとし、前記圧着バレルは銅圧着バレルとすることができる。環境に対して内側を効果的に封止する本発明の圧着バレルにより、長持ちする確実な銅アルミニウム接続を維持することができる。
【0024】
また、本発明の目的は、上述のコネクタを製造するための請求項14に記載の方法であって、a)裸導体が、前記第1の領域に配置され、その絶縁体を有する前記ワイヤが、前記第2の領域に配置され、前記2つの間の移行箇所が前記移行領域にあるように、前記圧着バレルにワイヤを導入する工程と、b)前記第1の領域の前記側壁を巻き付けることにより、F型圧着部を得る工程と、c)前記移行領域の前記側壁を巻き付けることにより、前記ワイヤの前記円周方向に前記重複圧着を得る工程と、d)前記第2の領域の前記側壁を巻き付けることにより閉鎖した又は開放した重ならないリング形状を得る工程とを含む方法によって達成される。
【0025】
本発明の方法により、前記ワイヤと前記圧着バレルとの間の前記接続領域が水分への曝露から保護されるコネクタが得られる。
【0026】
本方法は、前部カバー端部を巻き付けることにより、前記側壁によって形成される前記トンネル内の前記導体を封止する工程を更に含むことができると有利である。これにより、前記圧着バレルの内部容積が水分から保護される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の実施形態は、以下の図面を参照して記述される。
【
図1】圧着処理を始める前の本発明に係る電気端子の第1の実施形態を示す。
【
図2A】第1の実施形態に係るコネクタを形成する圧着状態におけるワイヤを有する本発明の電気端子の側面図である。
【
図2B】圧着された状態における
図2Aの電気端子を示す平面図である。
【
図5】電気端子の製造方法に関する概略的なブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、ワイヤを接続するための本発明の電気端子の第1の実施形態に係る電気端子1の平面図である。電気端子1は、電気接触部3と、電気接触部3に隣接する圧着部5とを備える。電気接触部3は、任意の形状とすることができ且つ相手コンタクトを受容するように構成される電気コンタクト7を備える。従って、電気コンタクトは、例えば、ばねコンタクトや、ねじ山又はメカニカルファスナのような締結手段を有する又は有さない梁コンタクトといった様々な形状の雄又は雌コンタクトのうち任意のものとすることができる。
【0029】
圧着部5は、ワイヤの剥き出し導体を受容するための第1の領域9と、絶縁体を有するワイヤ部分を受容する第2の領域11とを備える。圧着部5は、第1の領域9と第2の領域11との間に移行領域13を更に備える。
【0030】
電気接触部3とは反対側の先端では、この実施形態における電気端子1は、領域15において電気ピン又はソケットコンタクト部材を更に備える。
【0031】
ワイヤ周囲に巻き付けられると、圧着部5の第1の領域、第2の領域、及び移行領域9,11,13は、圧着バレルを形成する。
【0032】
圧着部5は、電気接触部3から領域15の端部まで延在する連続基部17を備える。第1の領域9は、基部17から延出する対向側壁19a,19bを有する。第2の領域11は、基部17から延出する対向側壁21a,21bを有する。移行領域13は、基部17から延出する対向側壁23a,23bを有する。
【0033】
第1の領域9の側壁19a、19bは夫々、電気接触部3に向かう夫々の先端に前部カバー端部25a,25bを備える。
【0034】
図2A及び
図2Bは、電気接触部3で圧着バレルを介してワイヤ33を電気コンタクト7に機械的及び電気的に接続するために圧着部5がワイヤ33周りに圧着された状態の電気コネクタ31の側面図及び平面図を示す。電気ワイヤ33は、後でより詳細に説明されるように、導体35と、導体35周りの電気絶縁体37とを備える。第1の実施形態に係る本発明の電気端子1は、アルミニウム導体35を有するワイヤ33が、第1の実施形態の変形を形成する銅電気端子1に圧着されるコネクタ31にとって特に有利である。この圧着は、第1の領域9における裸導体35から、絶縁体37が存在する第2の領域11まで延在し、従って、アルミニウムが導体材料として使用される場合であっても、必要な機械的強度、特に引張強度を提供する。
【0035】
第1の領域9、移行領域13、及び第2の領域11の側壁が圧着処理時にワイヤ33に巻き付けられる方法を、
図2A及び
図2Bに示す大文字A,B,及びCで特定される断面図を表す
図3A乃至
図3Cに示す。
【0036】
図3Aに示すように、第1の領域9の側壁19a,19bは、基部17から延出し、絶縁体37(
図2Aに示す)を剥き取られた導体35の周囲に屈曲される。そうすることにより、導体35に対する電気的及び機械的接触が得られる。
図3Aの断面図では、基部及び巻き付けられた側壁17,19a,19bは、B字形状すなわち所謂F型圧着部を形成する。この実施形態では、導体35は、全容積に充填されるが、幾つかの空隙が存在する状況が発生する可能性がある。側壁19a,19bは、部位39において互いに接触することにより、側壁19a,19bと基部17とによって画定された容積41を外部環境に対して閉鎖する。
【0037】
図2A及び
図2Bと共に
図3Aから分かるように、第1の領域は、導体35と電気端子1の電気的接触を生じる。
【0038】
アルミニウム導体35及び銅圧着部を使用する第1の実施形態の変形例では、第1の領域9は、第1の実施形態の第2の変形例によれば、1つ以上のセレーション43(
図1の点線)、特に鋭い刃のセレーションを更に備えることができる。セレーション43は、ワイヤから絶縁体を取り外した時に存在している可能性のある又は形成される可能性のある非導電性の表面酸化層を破壊するために導電体35の表面に切り込むために使用される。従って、セレーション43により、かかる酸化層が存在していても、圧着部5の銅と導体35のアルミニウムとの間で確実な電気的接触が得られることが保証される。
【0039】
セレーション43の代わりとして、或いはそれに加えて、アルミニウム導体35の表面上の非導電性の表面層を、銅‐銅圧着と比較して圧着中により高い圧縮度を使用して割ることもできる。
【0040】
図3Bは、移行領域13の部位における断面図である。ワイヤ33は、裸の剥き出し導体35を備える領域から、導体35周囲に絶縁体37が配置されたワイヤの部分への移行箇所が移行領域13内になるように、圧着部5上に配置される。
【0041】
当該断面図は、導体35が絶縁体37によって包囲される部位を示す。更に、当該断面図は、
図3AにおけるようなB字形状のF型圧着部を示さなくなり、側壁23a,23bは、円周方向に沿って夫々の端部領域45a,45bによって重なるように、絶縁体37の周囲に巻き付けられる。
図3Bでは、円周方向を両方向の矢印47によって示す。基部17及び側壁23a,23bは、ワイヤ33周りに閉鎖容積49を形成する。B字形状を形成することなくワイヤの周囲に側壁23a,23bを巻き付けることにより、F型圧着部を使用した場合に意図せず発生する可能性のある絶縁体37への損傷を防止することができる。またこれは、圧着バレルの外側の外部環境に対する導体35の望ましくない露出であって、導体35と側壁23a,23bとの接触箇所において水分が存在することにつながる可能性のある露出が防止されることを意味する。特に、銅アルミニウム圧着の場合、水分が存在するところでのアルミニウムの溶解の恐れを減少することができる。
【0042】
また、
図2A及び
図2Bは、第1の領域9と移行領域13との交差箇所において、第1の領域9の側壁19a,19bと移行領域の側壁23a,23bとによって形成されるトンネルが、圧着バレルが閉鎖容積を備えるトンネルを形成するように互いに配置及び配列されることを示す。このように、水分への曝露の恐れが減少される。互いに直接隣接する第1の領域9におけるF型圧着部と移行領域13における重なり圧着を有することができるように、
図1に示すように、切り込み51a,51bすなわち細いスリットが、側壁19a,19bの縁53a,53bに略垂直に設けられる。この実施形態では、切り込み51a,51bは両側に存在するが、更なる変形例によれば、かかる切込みは、片側のみに存在することができる。更に、圧着処理中の側壁23a/23bの重なり及び先細りする漏斗形状57の形成を容易にするために、第1の領域9から移行領域13への移行箇所における側壁19a/b及び23a/bには、斜角を付けたすなわち角を取った縁54a,54b,54c,54dが設けられる。これらの斜角を付けた縁の形状は、所望の最終形状によって変えることができる。
【0043】
側壁23a,23bの寸法及び切り込み51a/bの長さは、コネクタ軸55(
図1を参照)に沿って見た場合に、移行領域13において漏斗形状57が得られるように選択される。小さい方の直径は裸の剥き出し導体35の直径に対応し、漏斗57の大きい方の直径はその絶縁体37を備えるワイヤ33に対応する。
【0044】
図3Cは、第2の領域11におけるC−Cに沿う断面図を示す。見て分かるように、側壁21a,21bは、基部17と共に絶縁体37を有するワイヤ33を囲繞するが、移行領域13におけるような重なる端部領域59a,59bを有しない。従って、側壁21a/b及び基部17は、ワイヤ33の周囲にリングを実質的に形成する。このリングは、僅かに開放させることによって、
図2Bに示すように検査穴61a,61bを提供することができる。検査穴は、電気端子1におけるワイヤ33の誤整列を防止するために絶縁体37が第2の領域11に存在することを確認するために使用することができる。検査穴61a/bを有する代わりに、
図3Cに示すように端部領域59a,59bが接触するように、第2の領域の側壁21a,21bをワイヤ33に巻き付けることもできる。
【0045】
図1に示すように、第2の領域11の側壁21a,21bは、少なくとも部分的にワイヤ33の円周の上方に延在する結合領域63が観察されるように互いに対して寸法を設定されて配置された三角形状を有し、それによって圧着接続の安定性を向上する。当然のことながら、側壁21a,21bの形状は、必ずしも三角形である必要はなく、ワイヤ33の周囲をリング形状に包囲することを可能にする任意のその他の適した形状も可能である。
【0046】
重なる端部領域45a/45bを有する移行領域13と第2の領域11との境界面では、側壁23aの端部領域45aに切り込み65が存在する。この切り込みは、端部領域45aの縁に略垂直であり、重なり圧着からリング形状圧着への転換を可能にする。また、ここでは、側壁23a/23bは、重なりを容易にするために、斜角を付けたすなわち角を取った縁66a/66bを有する。これらの斜角を付けた縁の形状は所望の最終形状によって変えることができる。
【0047】
図2A及び
図2Bから分かるように、圧着状態において、基部17と側壁19a,19bによって画定されるトンネルの先端67における開口も、水分の進入を防止するために環境に対してトンネルの内部を封止するために閉鎖されるように、前部カバー端部25a,25bが屈曲される。
【0048】
コネクタ1の全長を銅圧着コネクタと同程度に抑えるために、前部カバー端部25a,25bは、コネクタ軸55に垂直な軸69周りに屈曲される一方、側壁19a,19b,21a/b及び23a/bは全て、コネクタ軸55に平行な方向の周りに屈曲される。
【0049】
図4は、本発明に係る電気端子71の第2の実施形態を示す。第1の実施形態及び
図1、
図2A、
図2B、及び
図3A乃至
図3Cにおいて既に使用されているものと同一の参照番号を示す部材は、再度詳細に記述されることはなく、上述の記述が参照される。
【0050】
第2の実施形態は、第1の実施形態におけるコネクタと比べると、圧着部5に、変更した第1の領域73を有する。
図4から分かるように、第1の領域73における一方の側壁77aは、反対側の側壁77bよりも電気接触部3に向かう方向に長くなっている。
【0051】
第1の実施形態のように、2つの前部カバー79a,79bは、圧着状態において、第1の領域73の巻き付けた側壁77a,77bによって生成されるトンネルの開口を閉鎖するために使用される。側壁77aは前部カバー79bの厚みdに略対応する量Δだけ長くなっている。
図4から分かるように、前部カバー端部79aは、外部環境に対してトンネルの内部容積を確実に封止するために前部カバー端部79bと重なる。
【0052】
第1及び第2の実施形態の一変形例によれば、第1の領域9又は第1の領域73及び移行領域13又は移行領域75に形成されるトンネル内の空隙には、接触部位の水分への曝露の恐れを更に減少するグリース又は類似の防止剤のような腐食防止手段を充填することができる。
【0053】
図5は上述の電気コネクタを製造するためのブロック図を概略的に示す。この方法は完全に自動化して実現することができる。
【0054】
工程81は、第1又は第2の実施形態の電気端子1又は電気端子71上にワイヤ33を載置することからなる。裸の剥き出し導体35は、第1の領域9又は第1の領域73に配置され、絶縁体37を備えるワイヤ33の部分は、第2の領域11に配置され、ワイヤ33のこの2つの部分の間の移行箇所が、移行領域13又は移行領域75に配置されるようにする。
【0055】
次の工程83は、第1の領域9又は第1の領域73及び移行領域13又は移行領域75において、腐食防止手段、特にグリースを設けることに存する。
【0056】
次に、第3の工程85は、第1の領域9又は第1の領域73、移行領域13又は移行領域75、及び第2の領域11における側壁19a/b,21a/b,23a/bを圧着することによって、電気端子においてワイヤを囲繞することに存する。第1の領域9における圧着は、F型圧着部が得られるように行われる。移行領域13又は75の圧着は、側壁23a/bの端部領域45a/bが、円周方向47に互いに重なるように行われる。最後に、第2の領域11の圧着は、側壁が絶縁体37を包囲しているが、重なる端部を有しないように行われる。
【0057】
最後に、工程87によれば、前部カバー25a/bは、圧着された側壁によって生成されるトンネルを閉鎖するためにコネクタ軸55に垂直な軸69に沿って巻き付けられる。
【符号の説明】
【0058】
1 電気端子
3 電気接触部
5 圧着部/圧着バレル
7 電気コンタクト
9 第1の領域
11 第2の領域
13 移行領域
15 電気ピン又はソケットコンタクト部材
17 基部
19a/b 第1領域の側壁
21a/b 第2領域の側壁
23a/b 移行領域の側壁
25a/b 前部カバー端部
31 電気コネクタ
33 ワイヤ
35 導体
37 電気絶縁体
39 圧着された側壁19a/bの接触領域
41 17,19a,19bによって画定される容積
43 セレーション
45a/b 側壁23a/bの端部領域
47 円周方向
49 17,23a,23bによって画定される閉鎖容積
51a/b 切り込み
53a/b 側壁19a/bの縁
54a/b/c/d 斜角を付けたすなわち角を取った縁
55 コネクタの軸
57 漏斗形状
59a/b 側壁21a/21bの端部領域
61a/b 検査穴
63 結合領域
65 移行領域13と第2の領域11との間の切り込み
66a/b 斜角を付けたすなわち角を取った縁
67 第1の領域9と移行領域13との間の境界面とは反対側の先端
69 コネクタ軸55に垂直な軸
71 電気コネクタの第2の実施形態
73 第1の領域
75 移行領域
77a/b 第1の領域の側壁
79a/b 前部カバー端部
81 端子にワイヤを載置する工程
83 腐食防止手段を設ける工程
85 第1の領域、移行領域及び第2の領域を圧着する工程
87 前部カバー端部を巻き付ける
【外国語明細書】