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特開2015-170605半導体装置および半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-170605(P2015-170605A)
(43)【公開日】2015年9月28日
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20150901BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20150901BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20150901BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20150901BHJP
【FI】
   H01L21/52 B
   H01L25/04 C
   H01L23/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-41862(P2014-41862)
(22)【出願日】2014年3月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149766
【弁理士】
【氏名又は名称】京村 順二
(72)【発明者】
【氏名】林 健二
(72)【発明者】
【氏名】須崎 哲広
【テーマコード(参考)】
5F047
5F136
【Fターム(参考)】
5F047AA03
5F047AB01
5F047BA05
5F047BA06
5F136BA30
5F136DA07
5F136DA27
5F136EA13
5F136FA03
(57)【要約】
【課題】低コストで、半田引けを防止すると共に、半田漏れが生じても耐圧の低下を抑制することができる半導体装置およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】ハイサイドIGBT7と、ハイサイドIGBT7を支持するハイサイド放熱ブロック6と、ハイサイドIGBT7とハイサイド放熱ブロック6との間に設けられた半田材23と、一端および他端が、それぞれハイサイド放熱ブロック6の端面14において開放された逃がし溝13とを含む、パワー半導体モジュール1を製造する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、
前記半導体チップを支持する導電部材と、
前記導電部材と前記半導体チップとの間に設けられた接合材と、
一端および他端が、それぞれ前記導電部材の周端に繋がるように前記導電部材の表面に形成され、前記半導体チップから離れて配置された逃がし溝とを含む、半導体装置。
【請求項2】
前記逃がし溝が、前記導電部材の表面に複数形成されており、
前記半導体チップは、前記複数の逃がし溝で挟まれたチップ領域に配置されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記複数の逃がし溝は、互いに平行なストライプ状に形成されている、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記逃がし溝の側面に形成された段差構造をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記段差構造は、前記逃がし溝が深さ方向に複数段に区分されることによって形成された構造であり、前記逃がし溝の前記一端から前記他端にわたって形成されている、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記導電部材は、その周端を形成する端面を有しており、
前記逃がし溝の前記一端および前記他端は、それぞれ、当該端面において開放されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記導電部材の前記表面が長方形状に形成されており、
前記逃がし溝は、長方形状の前記導電部材の一対の短辺に沿って形成されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体チップ上に配置され、間隔を空けて前記導電部材に対向する第2導電部材と、
前記導電部材と前記第2導電部材との間の空間に入り込むように、前記半導体チップ、前記導電部材および前記第2導電部材を封止する樹脂パッケージとをさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記導電部材は、裏面が前記樹脂パッケージから露出していて、ヒートシンクの役割を果たしている、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記半導体装置は、
前記導電部材としてのハイサイドベース部材、およびその上に配置された前記半導体チップとしてのハイサイドスイッチング素子を含むハイサイドアセンブリと、
前記ハイサイドアセンブリから離れて配置され、前記導電部材としてのローサイドベース部材、およびその上に配置された前記半導体チップとしてのローサイドスイッチング素子を含むローサイドアセンブリと、
前記ハイサイドアセンブリおよび前記ローサイドアセンブリを封止する樹脂パッケージとを含む、パワー半導体モジュールである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記ハイサイドベース部材および前記ローサイドベース部材は、それぞれ、裏面が前記樹脂パッケージから露出していて、ヒートシンクの役割を果たしている、請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記樹脂パッケージから突出するように前記ハイサイドベース部材と一体的に形成されたハイサイド端子と、
前記樹脂パッケージから突出するように前記ローサイドスイッチング素子上に配置され、間隔を空けて前記ローサイドベース部材に対向するローサイド端子とを含む、請求項10または11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記ハイサイドスイッチング素子上に配置され、前記ローサイドベース部材と電気的に接続された中継部材をさらに含む、請求項10〜12のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項14】
表面に逃がし溝が形成された導電部材であって、当該逃がし溝の一端および他端が前記導電部材の周端に繋がることによって所定のチップ領域が区画された導電部材を準備する工程と、
前記チップ領域に接合材を配置する工程と、
前記接合材上に半導体チップを配置する工程と、
前記半導体チップに荷重をかけつつ、前記接合材を溶融させることによって前記半導体チップを前記導電部材に接合する工程とを含み、
前記半導体チップと前記接合材との面積比(チップ面積/接合材面積)が、1.0以下である、半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記半導体チップと前記接合材との面積比(チップ面積/接合材面積)が、0.6〜0.8である、請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記半導体チップよりも平面面積が小さい開口が形成された治具を、当該開口の周縁が前記半導体チップの周縁に接するように設置する工程と、
前記開口から露出する前記半導体チップの上面に第2接合材を設置する工程と、
前記第2接合材上に導電ブロックを配置する工程とをさらに含み、
前記接合工程は、前記治具によって前記半導体チップの周縁に荷重をかける工程を含む、請求項14または15に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記治具は、その裏面の一部を前記半導体チップに対する接地面に対して選択的に高めることによって形成され、前記半導体チップを取り囲むガイド部を有する、請求項16に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、特にインバータ回路等に広く採用されるパワー半導体モジュールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1および2は、それぞれ、ダイパッド等のアイランドと、当該アイランド上に配置された半導体チップとを備える半導体装置を開示している。半導体チップは、溶融半田を用いてアイランドに接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−155286号公報
【特許文献2】特開平6−37122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、半導体チップの接合は、溶融した板状半田や半田ペーストを半導体チップで押し潰して、半導体チップとアイランドとの間の空間に広く行き渡らせることによって達成されていた。しかしながら、従来の方法は、半田漏れおよび半田引けという問題を含んでいる。
半田漏れは、溶融半田が半導体チップの外側へ漏れ出す現象である。漏れ出した半田が半導体チップの表面に乗り上げ、これが、半導体チップへの裏面コンタクトの末端と半導体チップの表面との距離を短くして、半導体チップの耐圧を、チップの厚さに依存した本来の耐圧未満に低下させる。
【0005】
一方、半田引けは、半導体チップとアイランドとの間に半田が存在しない空間(欠損領域)が生じる現象である。欠損領域は、最終的に熱伝導性が高くない樹脂で満たされるか、空領域のままボイド(void)として残るため、半導体チップの放熱性が低下するおそれがある。また、半導体チップの一部が半田で支持されず、当該一部が半田よりも外側に張り出した構造が形成されるため、当該構造の付け根部分にストレスが集中しやすくなる。そのため、高温と低温を繰り返す熱サイクルによって、クラックが発生しやすいというおそれがある。
【0006】
そこで、このような半田漏れおよび半田引けの両方を、低コストで解決したいという要求がある。
本発明の目的は、低コストで、半田引けを防止すると共に、半田漏れが生じても耐圧の低下を抑制することができる半導体装置およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の半導体装置は、半導体チップと、前記半導体チップを支持する導電部材と、前記導電部材と前記半導体チップとの間に設けられた接合材と、一端および他端が、それぞれ前記導電部材の周端に繋がるように前記導電部材の表面に形成され、前記半導体チップから離れて配置された逃がし溝とを含む(請求項1)。
この半導体装置は、表面に逃がし溝が形成された導電部材であって、当該逃がし溝の一端および他端が前記導電部材の周端に繋がることによって所定のチップ領域が区画された導電部材を準備する工程と、前記チップ領域に接合材を配置する工程と、前記接合材上に半導体チップを配置する工程と、前記半導体チップに荷重をかけつつ、前記接合材を溶融させることによって前記半導体チップを前記導電部材に接合する工程とを含み、前記半導体チップと前記接合材との面積比(チップ面積/接合材面積)が、1.0以下である、本発明の半導体装置の製造方法(請求項14)によって製造することができる。
【0008】
この方法によれば、チップ面積/接合材面積が1.0以下である構成においても、半導体チップにかかる荷重の大きさに関係なく、半田引けを防止することができる。半導体チップの面積に対して接合材の面積が比較的大きいので、半田漏れは発生する場合がある。しかしながら、たとえ半田が漏れ出しても、その半田を逃がし溝に導くことができる。これにより、半導体チップの表面への半田の乗り上げを防止でき、耐圧の低下を抑制することができる。
【0009】
また、逃がし溝は、一端および他端が、それぞれ導電部材の周端に繋がっている。つまり、逃がし溝の一端および他端は、それぞれ、導電部材の周端において開放されている。したがって、たとえば、導電部材をプレス加工して逃がし溝を形成する際に、押し出される余分な導電材料を、逃がし溝の開放端へ逃がすことができる。これにより、当該押し出された導電材料が逃がし溝周辺で隆起物として残ることを抑制できるので、プレス加工後、当該隆起物を除去するための加工作業が不要になる。その結果、逃がし溝を形成するために必要なコスト上昇を比較的低く抑えることができる。
【0010】
なお、本発明の半導体装置の製造方法では、前記半導体チップと前記接合材との面積比(チップ面積/接合材面積)が、0.6〜0.8であるとよい(請求項15)。また、本発明の半導体装置では、接合材の一部が逃がし溝に入っていてもよいし、入っていなくてもよい。
本発明の半導体装置では、前記逃がし溝が、前記導電部材の表面に複数形成されており、前記半導体チップは、前記複数の逃がし溝で挟まれたチップ領域に配置されていてもよい(請求項2)。
【0011】
この構成では、半導体チップの左右どちらに接合材が漏れ出しても、その近傍には必ず逃がし溝が形成されているので、半導体チップの表面への半田の乗り上げを確実に防止することができる。
本発明の半導体装置では、前記複数の逃がし溝は、互いに平行なストライプ状に形成されていてもよい(請求項3)。
【0012】
本発明の半導体装置は、前記逃がし溝の側面に形成された段差構造をさらに含んでいてもよい(請求項4)。
この構成では、逃がし溝に一旦入った接合材が逆流することを抑制することができる。そのため、半導体装置の耐圧信頼性を向上させることができる。
本発明の半導体装置では、前記段差構造は、前記逃がし溝が深さ方向に複数段に区分されることによって形成された構造であり、前記逃がし溝の前記一端から前記他端にわたって形成されていてもよい(請求項5)。
【0013】
本発明の半導体装置では、前記導電部材は、その周端を形成する端面を有しており、前記逃がし溝の前記一端および前記他端は、それぞれ、当該端面において開放されていてもよい(請求項6)。
本発明の半導体装置では、前記導電部材の前記表面が長方形状に形成されており、前記逃がし溝は、長方形状の前記導電部材の一対の短辺に沿って形成されていてもよい(請求項7)。
【0014】
この構成では、逃がし溝を一対の長辺に沿って形成する場合に比べて、逃がし溝を形成するための導電部材の加工寸法を短くすることができる。その結果、逃がし溝の形成に伴うコスト上昇を一層抑えることができる。
本発明の半導体装置は、前記半導体チップ上に配置され、間隔を空けて前記導電部材に対向する第2導電部材と、前記導電部材と前記第2導電部材との間の空間に入り込むように、前記半導体チップ、前記導電部材および前記第2導電部材を封止する樹脂パッケージとをさらに含んでいてもよい(請求項8)。
【0015】
この構成では、樹脂パッケージの一部を導電部材と第2導電部材とで挟むことによって、当該一部が保持される。これにより、半導体チップ、導電部材および第2導電部材に対する樹脂パッケージの密着性を向上させることができる。
本発明の半導体装置では、前記導電部材は、裏面が前記樹脂パッケージから露出していて、ヒートシンクの役割を果たしていてもよい(請求項9)。
【0016】
本発明の半導体装置は、前記導電部材としてのハイサイドベース部材、およびその上に配置された前記半導体チップとしてのハイサイドスイッチング素子を含むハイサイドアセンブリと、前記ハイサイドアセンブリから離れて配置され、前記導電部材としてのローサイドベース部材、およびその上に配置された前記半導体チップとしてのローサイドスイッチング素子を含むローサイドアセンブリと、前記ハイサイドアセンブリおよび前記ローサイドアセンブリを封止する樹脂パッケージとを含む、パワー半導体モジュールであってもよい(請求項10)。
【0017】
本発明の半導体装置では、前記ハイサイドベース部材および前記ローサイドベース部材は、それぞれ、裏面が前記樹脂パッケージから露出していて、ヒートシンクの役割を果たしていてもよい(請求項11)。
本発明の半導体装置は、前記樹脂パッケージから突出するように前記ハイサイドベース部材と一体的に形成されたハイサイド端子と、前記樹脂パッケージから突出するように前記ローサイドスイッチング素子上に配置され、間隔を空けて前記ローサイドベース部材に対向するローサイド端子とを含んでいてもよい(請求項12)。
【0018】
本発明の半導体装置は、前記ハイサイドスイッチング素子上に配置され、前記ローサイドベース部材と電気的に接続された中継部材をさらに含んでいてもよい(請求項13)。
本発明の半導体装置の製造方法は、前記半導体チップよりも平面面積が小さい開口が形成された治具を、当該開口の周縁が前記半導体チップの周縁に接するように設置する工程と、前記開口から露出する前記半導体チップの上面に第2接合材を設置する工程と、前記第2接合材上に導電ブロックを配置する工程とをさらに含み、前記接合工程は、前記治具によって前記半導体チップの周縁に荷重をかける工程を含んでいてもよい(請求項16)。
【0019】
この方法では、半導体チップに均等に荷重をかけることができるので、接合材が特定の方向に偏って漏れ出すことを防止することができる。これにより、接合材が漏れ出したときの漏れ出し量を半導体チップの周縁に沿って分散できるので、半導体チップの表面への半田の乗り上げをより良好に防止することができる。
本発明の半導体装置の製造方法では、前記治具は、その裏面の一部を前記半導体チップに対する接地面に対して選択的に高めることによって形成され、前記半導体チップを取り囲むガイド部を有していてもよい(請求項17)。
【0020】
この方法では、接合材の漏れ出し量が多くても、その接合材を、治具のガイド部によって、確実に逃がし溝に導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の一実施形態を示すパワー半導体モジュールの模式的な平面図である。
図2図2は、図1のパワー半導体モジュールをII−II切断線で切断したときに表れる断面図である。
図3図3は、図1のパワー半導体モジュールをIII−III切断線で切断したときに表れる断面図である。
図4図4は、図1のパワー半導体モジュールをIV−IV切断線で切断したときに表れる断面図である。
図5図5は、図3の破線Vで囲まれた領域の拡大図である。
図6図6は、半導体チップへの荷重と半田の漏れ量との関係を示す折れ線グラフである。
図7図7は、半導体チップへの荷重と半田の引け量との関係を示す折れ線グラフである。
図8図8は、半導体チップへの荷重およびチップ面積/半田面積を変化させたときの半田の漏れ量の分布を示す等高線グラフである。
図9図9は、半導体チップへの荷重およびチップ面積/半田面積を変化させたときの半田の引け量の分布を示す等高線グラフである。
図10図10(a)(b)は、図1のパワー半導体モジュールの製造工程の一部を示す図であって、図10(a)が平面図、図10(b)が断面図を示す。
図11図11(a)(b)は、図10(a)(b)の次の工程を示す図であって、図11(a)が平面図、図11(b)が断面図を示す。
図12図12(a)(b)は、図11(a)(b)の次の工程を示す図であって、図12(a)が平面図、図12(b)が断面図を示す。
図13図13(a)(b)は、図12(a)(b)の次の工程を示す図であって、図13(a)が平面図、図13(b)が断面図を示す。
図14図14(a)(b)は、図13(a)(b)の次の工程を示す図であって、図14(a)が平面図、図14(b)が断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
<本発明の実施形態に係るモジュールの構成>
図1は、本発明の一実施形態を示すパワー半導体モジュール1の模式的な平面図である。図2は、図1のパワー半導体モジュール1をII−II切断線で切断したときに表れる断面図である。図3は、図1のパワー半導体モジュール1をIII−III切断線で切断したときに表れる断面図である。図4は、図1のパワー半導体モジュール1をIV−IV切断線で切断したときに表れる断面図である。図5は、図3の破線Vで囲まれた領域の拡大図である。
【0023】
パワー半導体モジュール1は、ハイサイドアセンブリ2と、ローサイドアセンブリ3と、本発明の第2導電部材および中継部材の一例としての中継端子4と、樹脂パッケージ5とを含む。ハイサイドアセンブリ2およびローサイドアセンブリ3は、図1および図2に示すように、隙間62を隔てて互いに隣り合って配置されている。
ハイサイドアセンブリ2は、本発明の導電部材およびハイサイドベース部材の一例としてのハイサイド放熱ブロック6と、本発明の半導体チップおよびハイサイドスイッチング素子の一例としてのハイサイドIGBT7(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)およびハイサイドFRD8(FRD:Fast Recovery Diode)と、ハイサイドコンタクトブロック9と、ハイサイドエミッタ端子10と、ハイサイドゲート端子11とを含む。以下では、ハイサイドIGBT7およびハイサイドFRD8を、単にチップ7およびチップ8ということがある(後述するローサイドIGBT30およびローサイドFRD31についても同じ)。
【0024】
ハイサイド放熱ブロック6は、たとえば銅(Cu)からなる。ハイサイド放熱ブロック6は、この実施形態では、やや扁平な直方体形状(平面視長方形状)に形成されている。
ハイサイド放熱ブロック6の表面12には、逃がし溝13が複数本形成されている。ここで、逃がし溝13は、ハイサイド放熱ブロック6の表面12近傍の領域(表面部)に浅く形成されたものである。言い換えれば、ハイサイド放熱ブロック6において、比較的浅い逃がし溝13の下方には、金属部分が厚く残っている。この構造は、熱や応力等によって、ハイサイド放熱ブロック6が、逃がし溝13を境に折れ曲がることを防止する。たとえば、ハイサイド放熱ブロック6の厚さが1mm〜20mmである場合に、逃がし溝13の深さは0.01mm〜2mm程度であってよい。
【0025】
各逃がし溝13は、この実施形態では、図1に示すように、ハイサイド放熱ブロック6の一対の長辺の端面14同士を繋ぐように、ハイサイド放熱ブロック6の一対の短辺に沿って形成されている。これにより、各逃がし溝13の一端および他端は、それぞれ、ハイサイド放熱ブロック6の端面14において開放されている。
また、各逃がし溝13の側面には、段差構造15が形成されている。段差構造15は、この実施形態では、図5に示すように、逃がし溝13が深さ方向に二段に区分されることによって形成された構造である。これにより、段差構造15は、第1の溝16と、第1の溝16の底部がさらに窪むことによって形成され、第1の溝16よりも幅狭な第2の溝17とを含む。段差構造15は、図1に示すように、逃がし溝13の長手方向に沿ってハイサイド放熱ブロック6の一方の端面14から他方の端面14に至るまで連続して形成されている。
【0026】
なお、段差構造15の段数は、二段に限らず、三段、四段およびそれ以上であってもよい。また、複数の溝(この実施形態では、第1および第2の溝16,17)の深さは、互いに同じであっても異なっていてもよい。さらに、段差構造15は、逃がし溝13の長手方向に選択的に形成されていてもよい。たとえば、第2の溝17が、逃がし溝13の長手方向に沿って間隔を空けて複数形成されていてもよい。さらに言えば、段差構造15は、形成されていなくてもよい。
【0027】
このような逃がし溝13がハイサイド放熱ブロック6の長辺に沿って互いに間隔を空けて形成されることによって、ハイサイド放熱ブロック6の表面12は、複数の領域に分割されている。この実施形態では、図1に示すように、逃がし溝13は、互いに平行に4本形成されている。これにより、ハイサイド放熱ブロック6の表面12には、隣り合う逃がし溝13で挟まれた平面視四角形状のチップ領域18が3つ形成されている。
【0028】
各チップ領域18には、ハイサイドIGBT7およびハイサイドFRD8が1つずつ配置されている。具体的には、ハイサイドIGBT7およびハイサイドFRD8は、ローサイドアセンブリ3に遠い側からこの順に、逃がし溝13に沿って間隔を空けて配置されている。ハイサイドIGBT7およびハイサイドFRD8と、逃がし溝13との間には、所定の間隔が空けられている。
【0029】
ハイサイドIGBT7は、その上面にエミッタパッド19およびゲートパッド20を有し、その裏面にコレクタパッド21を有している。一方、ハイサイドFRD8は、その上面にアノードパッド22を有し、その裏面にカソードパッド(図示せず)を有している。ハイサイドIGBT7およびハイサイドFRD8は、それぞれ、本発明の接合材の一例としての半田材23を使用して、裏面でハイサイド放熱ブロック6に接合されている。これにより、ハイサイドIGBT7のコレクタおよびハイサイドFRD8のカソードは、それぞれ、ハイサイド放熱ブロック6に電気的に接続されている。なお、図2および図3では、明瞭化のため、エミッタパッド19、ゲートパッド20およびコレクタパッド21の図示を省略している。
【0030】
半田材23は、ハイサイドIGBT7およびハイサイドFRD8と、ハイサイド放熱ブロック6との間に設けられている。また、半田材23は、ハイサイドIGBT7およびハイサイドFRD8の周縁から外側に漏れ出した部分26を有していてもよい。漏れ出し部分26は、たとえば、図5に破線で示すように、逃がし溝13に入っていてもよい。
また、ハイサイド放熱ブロック6には、本発明のハイサイド端子の一例としてのP(Positive)端子25が一体的に接続されている。P端子25は、回路電源の正極側(Positive side)に接続されるものである。P端子25から供給される電源電圧は、ハイサイド放熱ブロック6を介して、ハイサイドIGBT7のコレクタおよびハイサイドFRD8のカソードに印加される。この実施形態では、P端子25は、図3に示すようにハイサイド放熱ブロック6と同じ厚さで、樹脂パッケージ5の内外に跨るように、ハイサイド放熱ブロック6の短辺の端面24から突出している。つまり、P端子25は、ハイサイド放熱ブロック6の逃がし溝13が開放している端面14とは異なる端面24に接続されている。P端子25の露出部分には、貫通孔54が形成されている。
【0031】
ハイサイドコンタクトブロック9は、たとえば銅(Cu)からなる。ハイサイドコンタクトブロック9は、半田材27を使用して、ハイサイドIGBT7のエミッタパッド19およびハイサイドFRD8のアノードパッド22上に1つずつ配置されている。これにより、ハイサイドコンタクトブロック9は、ハイサイドIGBT7のエミッタパッド19およびハイサイドFRD8のアノードパッド22に電気的に接続されている。
【0032】
ハイサイドエミッタ端子10およびハイサイドゲート端子11は、ハイサイド放熱ブロック6に対してローサイドアセンブリ3の反対側に配置され、樹脂パッケージ5の内外に跨っている。ハイサイドエミッタ端子10およびハイサイドゲート端子11は、それぞれ、エミッタパッド19およびゲートパッド20に、ボンディングワイヤ28を使用して電気的に接続されている。
【0033】
ローサイドアセンブリ3は、本発明の導電部材およびローサイドベース部材の一例としてのローサイド放熱ブロック29と、本発明の半導体チップおよびローサイドスイッチング素子の一例としてのローサイドIGBT30およびローサイドFRD31と、ローサイドコンタクトブロック32と、ローサイドエミッタ端子33と、ローサイドゲート端子34と、本発明のローサイド端子の一例としてのN(Negative)端子50とを含む。
【0034】
ローサイド放熱ブロック29は、たとえば銅(Cu)からなる。ローサイド放熱ブロック29は、この実施形態では、ハイサイド放熱ブロック6と同じ、やや扁平な直方体形状(平面視長方形状)に形成されている。ハイサイド放熱ブロック6およびローサイド放熱ブロック29は、それらの長辺の端面14,37が互いに対向するように、隣り合って配置されている。
【0035】
ローサイド放熱ブロック29の表面35には、逃がし溝36が複数本形成されている。ここで、逃がし溝36は、ローサイド放熱ブロック29の表面35近傍の領域(表面部)に浅く形成されたものである。言い換えれば、ローサイド放熱ブロック29において、比較的浅い逃がし溝36の下方には、金属部分が厚く残っている。この構造は、熱や応力等によって、ローサイド放熱ブロック29が、逃がし溝36を境に折れ曲がることを防止する。たとえば、ローサイド放熱ブロック29の厚さが1mm〜20mmである場合に、逃がし溝36の深さは0.01mm〜2mm程度であってよい。
【0036】
各逃がし溝36は、この実施形態では、図1に示すように、ローサイド放熱ブロック29の一対の長辺の端面37同士を繋ぐように、ローサイド放熱ブロック29の一対の短辺に沿って形成されている。これにより、各逃がし溝36の一端および他端は、それぞれ、ローサイド放熱ブロック29の端面37において開放されている。
また、各逃がし溝36の側面には、段差構造38が形成されている。段差構造38は、この実施形態では、図5の段差構造15と同様に、逃がし溝36が深さ方向に二段に区分されることによって形成された構造である。つまり、段差構造38は、図5の第1の溝16および第2の溝17と同じ構造の、第1の溝および第2の溝(いずれも図示せず)を含む。段差構造38は、図1に示すように、逃がし溝36の長手方向に沿ってローサイド放熱ブロック29の一方の端面37から他方の端面37に至るまで連続して形成されている。
【0037】
このような逃がし溝36がローサイド放熱ブロック29の長辺に沿って互いに間隔を空けて形成されることによって、ローサイド放熱ブロック29の表面35は、複数の領域に分割されている。この実施形態では、逃がし溝36は、互いに平行に4本形成されている。これにより、ローサイド放熱ブロック29の表面35には、隣り合う逃がし溝36で挟まれた平面視四角形状のチップ領域41が3つ形成されている。なお、逃がし溝36は、図1に示すように、ハイサイド放熱ブロック6の逃がし溝13の長手方向に沿って形成されていてもよいし、逃がし溝13の長手方向に直交する方向に沿って形成されていてもよい。
【0038】
各チップ領域41には、ローサイドIGBT30およびローサイドFRD31が1つずつ配置されている。具体的には、ローサイドIGBT30およびローサイドFRD31は、ハイサイドアセンブリ2に遠い側からこの順に、逃がし溝36に沿って間隔を空けて配置されている。ローサイドIGBT30およびローサイドFRD31と、逃がし溝36との間には、所定の間隔が空けられている。
【0039】
ローサイドIGBT30は、その上面にエミッタパッド42およびゲートパッド43を有し、その裏面にコレクタパッド(図示せず)を有している。一方、ローサイドFRD31は、その上面にアノードパッド44を有し、その裏面にカソードパッド(図示せず)を有している。ローサイドIGBT30およびローサイドFRD31は、それぞれ、本発明の接合材の一例としての半田材45を使用して、裏面でローサイド放熱ブロック29に接合されている。これにより、ローサイドIGBT30のコレクタおよびローサイドFRD31のカソードは、それぞれ、ローサイド放熱ブロック29に電気的に接続されている。
【0040】
半田材45は、ローサイドIGBT30およびローサイドFRD31と、ローサイド放熱ブロック29との間に設けられている。半田材45は、半田材23と同様に、ローサイドIGBT30およびローサイドFRD31の周縁から外側に漏れ出した部分39を有していてもよい。漏れ出し部分39は、図5の漏れ出し部分26と同様に、逃がし溝36に入っていてもよい。
【0041】
また、ローサイド放熱ブロック29には、出力端子46が一体的に接続されている。出力端子46は、回路の負荷に接続されるものである。この実施形態では、出力端子46は、図4に示すようにローサイド放熱ブロック29と同じ厚さで、樹脂パッケージ5の内外に跨るように、ローサイド放熱ブロック29の短辺の端面47から突出している。つまり、出力端子46は、ローサイド放熱ブロック29の逃がし溝36が開放している端面37とは異なる端面47に接続されている。また、この実施形態では、出力端子46が接続される端面47は、P端子25と隣り合う端面47の反対側の端面47である。これにより、出力端子46は、P端子25とは反対方向に延びている。出力端子46の露出部分には、貫通孔55が形成されている。
【0042】
ローサイドコンタクトブロック32は、たとえば銅(Cu)からなる。ローサイドコンタクトブロック32は、半田材45を使用して、ローサイドIGBT30のエミッタパッド42およびローサイドFRD31のアノードパッド44上に1つずつ配置されている。これにより、ローサイドコンタクトブロック32は、ローサイドIGBT30のエミッタパッド42およびローサイドFRD31のアノードパッド44に電気的に接続されている。
【0043】
ローサイドエミッタ端子33およびローサイドゲート端子34は、ローサイド放熱ブロック29に対してハイサイドアセンブリ2の反対側に配置され、樹脂パッケージ5の内外に跨っている。ローサイドエミッタ端子33およびローサイドゲート端子34は、それぞれ、エミッタパッド42およびゲートパッド43に、ボンディングワイヤ49を使用して電気的に接続されている。
【0044】
N端子50は、たとえば銅(Cu)からなり、ハイサイド放熱ブロック6およびローサイド放熱ブロック29と同じ厚さのブロック状に形成されている。N端子50は、半田材51を使用して、ローサイドIGBT30およびローサイドFRD31上のローサイドコンタクトブロック32に一括して接合されている。
具体的には、N端子50は、平面視において、ローサイド放熱ブロック29の長辺に沿って、複数のチップ領域41を横切るように延びている。N端子50の長手方向の敷設領域は、たとえば、ローサイド放熱ブロック29の一方の端面47から樹脂パッケージ5の外側に至っている。これにより、N端子50は、樹脂パッケージ5から突出すると共に、樹脂パッケージ5の内側において、ローサイド放熱ブロック29との間に空間52を区画している。N端子50の露出部分には、貫通孔56が形成されている。なお、この実施形態では、N端子50の突出方向は、P端子25の突出方向と同じであり、つまり、同じローサイドアセンブリ3に含まれる出力端子46の突出方向とは反対である。これにより、N端子50と出力端子46とは、互いに重ならないので干渉し合うことがない。
【0045】
一方、幅方向に関して、N端子50は、ローサイド放熱ブロック29よりも狭く形成されている。この両者の幅の差は、ローサイド放熱ブロック29に、N端子50から横側に引き出され、チップ領域41の一部からなるコンタクト領域53が形成されることを許容する。
このN端子50は、回路電源の負極側(Negative side)に接続されるものである。N端子50から供給される電源電圧は、ローサイドコンタクトブロック32を介して、ローサイドIGBT30のエミッタおよびローサイドFRD31のアノードに印加される。
【0046】
中継端子4は、たとえば銅(Cu)からなり、ハイサイド放熱ブロック6およびローサイド放熱ブロック29と同じ厚さで形成されている。中継端子4は、ハイサイド放熱ブロック6およびローサイド放熱ブロック29の上方で、これらに跨って配置されている。これにより、中継端子4は、ハイサイド放熱ブロック6およびローサイド放熱ブロック29との間に空間57を区画している。具体的には、中継端子4は、平面視において、ハイサイド放熱ブロック6およびローサイド放熱ブロック29の長辺に沿って、複数のチップ領域18,41を横切るように延びている。中継端子4の長手方向の敷設領域は、たとえば、各放熱ブロック6,29の一方の端面24,47から他方の端面24,47に至っている。
【0047】
中継端子4は、ハイサイドアセンブリ2において、半田材58を使用して、ハイサイドIGBT7およびハイサイドFRD8上のハイサイドコンタクトブロック9に一括して接合されている。一方、中継端子4は、ローサイドアセンブリ3において、中継ブロック59を使用して、ローサイド放熱ブロック29に接合されている。
中継ブロック59は、ローサイド放熱ブロック29の各コンタクト領域53に、半田材60を挟んで一つずつ配置されている。また、各中継ブロック59と中継端子4との間にも、それぞれ、半田材61が設けられている。
【0048】
ハイサイドIGBT7のエミッタおよびハイサイドFRD8のアノードからの電流は、図2に示すように、中継端子4、中継ブロック59およびローサイド放熱ブロック29と順に通り、ローサイドIGBT30のコレクタおよびローサイドFRD31のカソードに流れる。
樹脂パッケージ5は、たとえば、エポキシ樹脂からなる。樹脂パッケージ5は、ハイサイド放熱ブロック6およびローサイド放熱ブロック29の各裏面63,64を露出させるように、ハイサイドアセンブリ2、ローサイドアセンブリ3および中継端子4等を覆っている。各チップ7,8,30,31で発生した熱は、ハイサイド放熱ブロック6およびローサイド放熱ブロック29の裏面63,64から放散される。また、この実施形態では、樹脂パッケージ5の一部が空間52,57に入り込む。これにより、樹脂パッケージ5の当該一部が、下側の導電部材(ハイサイド放熱ブロック6およびローサイド放熱ブロック29)と、上側の導電部材(中継端子4およびN端子50)とで挟まれて保持される。その結果、ハイサイドアセンブリ2、ローサイドアセンブリ3および中継端子4等に対する樹脂パッケージ5の密着性を向上させることができる。
<本発明に至るまでの前評価>
本願発明者らは、半導体チップの接合時における半田漏れおよび半田引けの原因を探るべく、半田漏れ量(半田引け量)と、半導体チップ(IGBT)への荷重との関係を実験によって評価した。その結果を図6図9に示す。図6および図7は、半導体チップへの荷重と半田の漏れ量(半田の引け量)との関係を示す折れ線グラフである。ここでは、半導体チップに対する半田の漏れ量(半田の引け量)を考えており、後述する逃がし溝は考慮していない。図8および図9は、半導体チップへの荷重およびチップ面積/半田面積を変化させたときの半田の漏れ量(半田の引け量)の分布を示す等高線グラフである。実験を行った範囲について、等高線を記入した。なお、図8および図9では、各引き出し線に付された数値が、それぞれ、当該引き出し線が示す領域における半田漏れ量(mm)および半田引け量(mm)を示している。
【0049】
図6図9によると、半田漏れ量は、チップ面積/半田面積の大きさに関わらず、荷重を小さくすればするほど、概ね抑制できることが分かった。しかしながら、半田引け量については、従来、半導体チップへの荷重不足や半田量不足が原因と考えられていたが、荷重や半田量だけでは完全に制御できないことが分かった。たとえば、図7のデータ(IGBT)によれば、荷重を40gから160gに増加しているにも関わらず、半田引け量が約1.6mmから約2.2mmまで増加している。つまり、従来、半田漏れと半田引けは、背反の関係にあると考えられていたが、この背反は、図6図9によって、必ずしも正しいとは限らないことが分かった。
【0050】
そこで、本願発明者らは、前述のようにハイサイド放熱ブロック6やローサイド放熱ブロック29に、両端が開放した逃がし溝13,36を形成すると共に、製造工程におけるチップ面積/半田面積を適切な範囲に設定することを見出した。これにより、低コストで、半田引けを防止すると共に、半田漏れが生じても耐圧の低下を抑制することができる半導体装置を提供できることが分かった。
<本発明の実施形態に係るモジュールの製造工程>
以下では、図6図9を検証した結果、半導体装置の製造工程における半導体チップの接合を、具体的にどのような形態で実施すればよいかについて、前述のハイサイドアセンブリ2を例に挙げて説明する。
【0051】
図10(a)(b)〜図14(a)(b)は、図1のパワー半導体モジュール1の製造工程の一部(ハイサイドアセンブリ2の作製工程)を工程順に示す図である。図10(a)が図1に対応する平面図であり、図10(b)が図5に対応する断面図である。なお、図10(a)(b)〜図14(a)(b)では、明瞭化のため、図1および図5で示した参照符号を省略している場合がある。
【0052】
ハイサイドアセンブリ2を作製するには、まず、図10(a)(b)に示すように、逃がし溝13が形成されたハイサイド放熱ブロック6が用意される。逃がし溝13は、たとえば、ハイサイド放熱ブロック6を金型で成形した後、表面12にプレス加工を施すことによって形成することができる。
次に、図11(a)(b)に示すように、チップ領域18の所定の位置に、本発明の接合材の一例としての板状半田65が配置される。板状半田65のサイズは、ハイサイドIGBT7およびハイサイドFRD8のチップサイズ(面積)との比(チップ面積/半田面積)が、1以下となるように設定される。この実施形態では、上記範囲内において、各チップ7,8よりも小さなサイズの板状半田65が使用される。なお、板状半田65に代えて、半田ペーストを用いてもよい。
【0053】
次に、図12(a)(b)に示すように、各板状半田65上に、それぞれ、ハイサイドIGBT7およびハイサイドFRD8が配置される。
次に、図13(a)(b)に示すように、ハイサイド放熱ブロック6上に、荷重をかけるための治具66が設置される。
治具66は、ハイサイドIGBT7およびハイサイドFRD8の配置パターンに応じた複数の開口67を有している。各開口67は、それぞれ、ハイサイドIGBT7およびハイサイドFRD8よりも小さな面積を有している。また、治具66は、逃がし溝13に対向する部分に、開口67の周縁68よりも選択的に隆起したガイド部69を有している。ガイド部69は、逃がし溝13と同様にストライプ状に形成されていてもよいし、開口67の周辺に選択的に形成されていてもよい。
【0054】
そして、治具66は、各開口67と各チップ7,8とを位置合わせし、各開口67の周縁68が各チップ7,8の周縁に接するように設置される。この状態から、さらに、開口67から露出した各チップ7,8上に、本発明の第2接合材の一例としての板状半田70および本発明の導電ブロックの一例としてのハイサイドコンタクトブロック9が設置される。
【0055】
次に、図14(a)(b)に示すように、加熱と共に、ハイサイドコンタクトブロック9および治具66に荷重がかけられる。これにより、溶融した板状半田65が各チップ7,8に押し潰されて広がり、半田材23が形成される。また、板状半田70も溶融して半田材27が形成される。この際、各チップ7,8の周縁が、治具66の開口周縁68で押圧されるので、チップ7,8に均等に荷重をかけることができる。その結果、溶融した半田が特定の方向に偏って漏れ出すことを防止することができる。これにより、半田材23が漏れ出したときの漏れ出し量をチップ7,8の周縁に沿って分散することができる。以上の工程を経ることによって、ハイサイドアセンブリ2が得られる。
【0056】
そして、パワー半導体モジュール1を製造するには、ハイサイドアセンブリ2と同様の方法によってローサイドアセンブリ3を作製した後、両アセンブリ2,3を中継端子4で接続し、その後、これらを樹脂パッケージ5で封止すればよい。
以上の製造方法によれば、ハイサイドIGBT7およびハイサイドFRD8の接合に当たって、チップ7,8と板状半田65との面積比(チップ面積/半田面積)が、1以下と設定される。これにより、ハイサイドIGBT7およびハイサイドFRD8にかかる荷重の大きさに関係なく、半田引けを抑制することができる。特に、面積比を0.8以下にして半田を多めにすれば、半田引けを防止することができる。
【0057】
一方、チップ7,8の面積に対して板状半田65の面積が比較的大きいので、図14に示すように、チップ7,8に対する半田漏れは発生する場合がある。しかしながら、たとえ半田が漏れ出しても、その半田を逃がし溝13に導くことができる。特に、この実施形態では、各チップ領域18の両側に逃がし溝13が形成されていると共に、治具66にガイド部69が形成されている。そのため、漏れ出した半田を、逃がし溝13に導くことができる。すなわち、ここで新たに、逃がし溝13まで含めた領域外への半田漏れ(領域外半田漏れ)を考えた場合、面積比が1以下で、領域外半田漏れを0(ゼロ)にすることができる。その結果、半田材23の一部がチップ7,8の表面へ乗り上げることを防止できるので、耐圧の低下を抑制することができる。一方、面積比が0.6未満であれば、余分な半田が逃がし溝13の開放端から溢れるため、面積比は0.6以上であるとよい。
【0058】
また、各逃がし溝13の一端および他端が、それぞれ、ハイサイド放熱ブロック6の端面14において開放されている。したがって、たとえば、ハイサイド放熱ブロック6をプレス加工して逃がし溝13を形成する際に、押し出される余分な銅材料を、逃がし溝13の開放端へ逃がすことができる。これにより、当該押し出された銅材料が逃がし溝13の周辺で隆起物として残ることを抑制できるので、プレス加工後、当該隆起物を除去するための加工作業が不要になる。その結果、逃がし溝13を形成するために必要なコスト上昇を比較的低く抑えることができる。しかも、この実施形態では、逃がし溝13がハイサイド放熱ブロック6の短辺に沿って形成されている。そのため、逃がし溝13を長辺に沿って形成する場合に比べて、逃がし溝13を形成するためのハイサイド放熱ブロック6の加工寸法を短くすることができる。その結果、逃がし溝13の形成に伴うコスト上昇を一層抑えることができる。
【0059】
そして、逃がし溝13に半田が一旦入ると、その自重によって、相対的に深い位置にある第2の溝17に導くことができる。そのため、第2の溝17の容積程度の半田漏れ量であれば、漏れ出た半田の全部を、逃がし溝13の深い領域(第2の溝17)に留めることができる。これにより、逃がし溝13内の半田が逆流することを抑制できるので、パワー半導体モジュール1の耐圧信頼性を向上させることができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、ヒートシンクとして使用されるハイサイド放熱ブロック6およびローサイド放熱ブロック29に逃がし溝13,36が形成された例が示されている。しかしながら、逃がし溝13,36のような構造は、たとえば、リードフレームのアイランド等に形成することもできる。
【0061】
また、ハイサイド放熱ブロック6およびローサイド放熱ブロック29は、平面視四角形状である必要はない。たとえば、平面視において、他の多角形(たとえば三角形、五角形等)、円形等であってもよい。
また、逃がし溝13,36は、ストライプ状に形成されている必要はなく、たとえば、蛇行状に形成されていてもよい。
【0062】
また、本発明は、パワー半導体モジュールに限らず、その他のモジュール製品、ディスクリート製品等に適用することもできる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 パワー半導体モジュール
2 ハイサイドアセンブリ
3 ローサイドアセンブリ
4 中継端子
5 樹脂パッケージ
6 ハイサイド放熱ブロック
7 ハイサイドIGBT
8 ハイサイドFRD
9 ハイサイドコンタクトブロック
12 (ハイサイド放熱ブロック)表面
13 逃がし溝
14 (ハイサイド放熱ブロックの長辺)端面
15 段差構造
16 第1の溝
17 第2の溝
18 チップ領域
23 半田材
24 (ハイサイド放熱ブロックの短辺)端面
25 P端子
26 漏れ出し部分
27 半田材
29 ローサイド放熱ブロック
30 ローサイドIGBT
31 ローサイドFRD
32 ローサイドコンタクトブロック
35 (ローサイド放熱ブロック)表面
36 逃がし溝
37 (ローサイド放熱ブロックの長辺)端面
38 段差構造
39 漏れ出し部分
41 チップ領域
45 半田材
46 出力端子
47 (ローサイド放熱ブロックの短辺)端面
50 N端子
51 半田材
52 空間
53 コンタクト領域
57 空間
59 中継ブロック
63 (ハイサイド放熱ブロック)裏面
64 (ローサイド放熱ブロック)裏面
65 板状半田
66 治具
67 (治具)開口
68 (治具の開口)周縁
69 ガイド部
70 板状半田
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14