【解決手段】フィルター回路11、全波整流器21、スイッチング回路41、マイコン81で構成されたワンコンバーター型のLED電源であって、スイッチング回路41は、全波整流電圧V1を受けて、フライバックトランスT1、スイッチング素子Q1、ダイオードD1および電解コンデンサC2の連動により、LED61へ順方向電流を供給する。ママイコン81は、全光用の電流指令値に、電圧V1の検出値に応じた係数、負荷電圧Vfの検出値に応じた係数および調光率を掛けて、調光状態用の負荷電流値を算出し、それに応じたオン幅でスイッチング素子Q1に矩形波電圧信号を出力するように構成されている。
【背景技術】
【0002】
照明用の発光ダイオード(LED)の電源装置は、LEDの順方向電圧と順方向電流の特性上、基本的には定電流制御を要する。この定電流制御において、連続電流をLEDに供給するために、インダクタンス素子、スイッチング素子および電解コンデンサなどの蓄電素子を内蔵するスイッチング回路が広く用いられてきた。
【0003】
スイッチング素子を駆動するための従来の制御回路は、アナログ回路で構成されていた。例えば、
図16のアナログ式の制御回路では、LEDの順方向電流を検出し、この順方向電流と目標電流との差分をコンパレータなどで得て、差分に応じたPWM信号を作成して、スイッチング素子を駆動している。
【0004】
特許文献1には、LEDの順方向電流の検出値をフィードバック制御するアナログ回路を使って、外部からの調光信号に応じた調光制御を実行することが開示されている。特許文献1の調光制御は、振幅制御方式であり、順方向電流のフィードバック制御によって電流の振幅が調整されるので、順方向電流は調光信号に応じた連続電流になる。しかし、0%近辺の深い調光では、順方向電流の検出が困難になるという理由で、順方向電流の検出を停止し、目標電流値のみに応じた振幅制御に切り換えている。
【0005】
しかし、アナログ式制御回路には、入力電圧の変動に対する応答性が悪いといった問題があり、特に、電流の僅かな変動に敏感に反応してしまう照明用LEDでは、その問題が顕著になるため、改善の余地があった。
【0006】
一方、特許文献2には、マイクロコンピュータ(以下、マイコンと呼ぶ)による調光制御が開示されている。特許文献2の調光制御では、浅い領域の調光では、振幅制御によってLEDに調光信号に応じた連続電流を供給する。しかし、深い領域の調光では、振幅制御を停止し、LEDに直列に接続されたスイッチング素子を100Hz〜数kHz程度の低周波で駆動する。これにより順方向電流は低周波で断続的に休止し、その電流休止期間の長さを調光率によって調整している(断続電流制御方式)。LEDは低周波で点滅することになるので、その光出力の平均値が調光率に応じて調整されるというわけである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2では、調光の浅い深いに関わらず、順方向電流のフィードバックを実行するが、特許文献1においても説明されているように、0%近辺の深い調光の場合、順方向電流の検出が困難になるという課題があった。その理由を簡単に説明する。
【0009】
LEDの電源装置は、漏れ磁束の発生源を多く含み、周囲に磁場や電場が飛び交うことになる。磁場や電場によって回路素子に起電力が生じ、これがフィードバック信号のような制御信号のノイズになる。特に、調光の深い領域では、フィードバック信号が小さくなり、ノイズと信号のレベル差(SN比)がほとんどなくなるのでノイズの影響を受け易い。この背景には、電源装置の小型化、高効率化を図るため、回路素子を非常に狭い空間に密集させていることや、これ伴って制御信号のレベルも小さく設計しなければならないという事情がある。このような環境下で、フィードバック制御を行うと、ノイズの影響で正確なフィードバック信号が得られなくなり、LEDの順方向電流が乱れ、チラツキが生じてしまう。
【0010】
なお、特許文献1では、深い調光の場合に、順方向電流のフィードバック制御を停止するという方法をとっている。このフィードバック制御は、スイッチング回路の入力電圧やLEDの順方向電圧(ここでは負荷電圧とも呼ぶ。)の変動が生じた場合の対策になっているため、これを停止すると、順方向電流が電圧変動の影響をそのまま受けてしまい、チラツキの原因になる。また、特許文献1では、調光の浅い領域から深い領域へ移行する場合と、深い領域から浅い領域へ移行する場合にも、チラツキが発生しやすいという問題もある。
【0011】
また、特許文献2では、深い調光の場合に上述の断続電流制御が開始されると、電源装置が断続的(100Hz〜数kHz程度)に動作するので、インダクタやトランスにうなりが発生するという問題もある。
【0012】
本発明は上記課題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、順方向電流の検出およびそのフィードバック制御を不要とし、かつ、調光の浅い領域から深い領域までの全ての調光領域において、チラツキのないスムーズな調光制御を可能とする照明用LED電源を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、発明者は、スイッチング回路の入力電圧やLED負荷電圧がノイズの影響を受けにくいことに着目し、さらに、マイコンを使ってこれらの電圧の検出値を瞬時に処理して補正したオン幅でスイッチング素子を駆動すれば、順方向電流のフィードバック制御によらなくても、順方向電流の変動を抑制でき、良好な調光制御を実現できることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明の照明用LED電源は、
全波整流電圧または一定レベル以上の直流電圧を生じる電圧発生回路と、
前記電圧発生回路の出力電圧を受けて、内蔵するインダクタンス素子、スイッチング素子および蓄電素子の連動により、前記蓄電素子の端子間に接続される照明用のLEDへの連続電流を生成するスイッチング回路と、
前記電圧発生回路の出力電圧を入力電圧 (Vin) として検出する入力電圧検出回路と、
前記LEDの負荷電圧 (Vf) を検出する負荷電圧検出回路と、
前記LEDに流す連続電流の大きさを決定するマイクロコンピュータと、を備える。
前記マイクロコンピュータは、
全光状態にするための前記LEDへの連続電流の大きさを示す電流指令値 (A) に、
前記入力電圧 (Vin) の検出信号に応じた入力電圧係数 (B) と、
前記負荷電圧 (Vf) の検出信号に応じた負荷係数 (C) と、
外部からの調光信号に応じた調光率 (D) と、を掛けて、調光状態にするための前記LEDへの連続電流の大きさを算出し (A×B×C×D)、算出された該連続電流の大きさに応じたオン幅で、前記スイッチング素子に矩形波電圧信号を出力することを特徴とする。
【0015】
前記マイクロコンピュータは、前記負荷係数 (C) のデータテーブルを有し、該データテーブルは、前記負荷電圧 (Vf) の変化に対して前記LEDの定格電流が維持されるように設定された補正値の数列であることが好ましい。
【0016】
ここで、前記マイクロコンピュータは、前記負荷係数のデータテーブルを、既に検出された信号を含む前記負荷電圧 (Vf) の検出信号の平均値によって索引して、該平均値に応じた負荷係数 (C) を取り出すことが好ましい。
【0017】
前記マイクロコンピュータは、前記入力電圧係数 (B) のデータテーブルを有し、該データテーブルは、前記入力電圧 (Vin) の変化に対して前記LEDの定格電流が維持されるように設定された補正値の数列であることが好ましい。
【0018】
ここで、前記電圧発生回路の出力電圧が全波整流波形の場合、前記マイクロコンピュータは、前記入力電圧係数のデータテーブルを、前記入力電圧 (Vin) の検出信号のうちの全波整流波形のピーク値によって索引し、若しくは、前記入力電圧 (Vin) の検出信号を全波整流波形のピーク値に換算した値によって索引して、該ピーク値若しくは該換算値に応じた入力電圧係数 (B) を取り出すことが好ましい。
【0019】
一方、前記電圧発生回路の出力電圧が一定レベル以上の直流波形の場合、前記マイクロコンピュータは、前記入力電圧係数のデータテーブルを、前記入力電圧 (Vin) の検出信号の平均値によって索引して、該平均値に応じた入力電圧係数(B)を取り出すことが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、インダクタンス素子、スイッチング素子および蓄電素子を含むスイッチング回路において、スイッチング素子がマイコンから出力される矩形波信号に基づいて駆動し、各素子の連動によって、調光率に応じた連続電流がLEDに供給される。つまり、LEDの振幅制御が可能になる。マイコンには、ノイズの影響を受けにくい入力電圧 (Vin) および負荷電圧 (Vf) の各検出値が入力される。そして、マイコンが、全光状態(100%点灯)にするための電流指令値 (A) に、入力電圧 (Vin) に応じた入力電圧係数 (B) と、負荷電圧 (Vf) に応じた負荷係数 (C) と、調光率 (D) とを掛けて、調光状態にするための前記LEDへの連続電流の大きさを算出する (A×B×C×D)。さらに、マイコンは、算出された連続電流の大きさに応じたオン幅で、スイッチング素子に矩形波電圧信号を出力する。
【0021】
このようにマイコンを使えば、入力電圧および負荷電圧の検出値を瞬時に処理することができ、これらの電圧が変動した際には、検出値に基づいて瞬時に補正されたオン幅でスイッチング素子を駆動することができるので、順方向電流のフィードバック制御によらなくても、順方向電流の変動を抑制することができる。従って、本発明によれば、順方向電流の検出およびそのフィードバック制御を行なわなくても、調光の浅い領域から深い領域までの全ての領域において、チラツキのないスムーズな調光制御を良好に行えるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態1の構成を示すブロック回路図である。
【
図2】本発明の実施形態1の動作を示す演算フロー図である。
【
図3】本発明の実施形態2の構成(ワンコンバーター方式)を示すブロック回路図。
【
図4】本発明の実施形態3の構成(ツーコンバーター方式)を示すブロック回路図。
【
図5】前記実施形態2のLED順方向電圧のサンプリング方法を示す図である。
【
図6】前記実施形態2の全波整流波形の入力電圧のサンプリング方法を示す図である。
【
図7】前記実施形態3の一定レベル以上の直流波形の入力電圧のサンプリング方法を示す図である。
【
図8】前記実施形態2のLED順方向電圧の別のサンプリング方法を示す図である。
【
図9】前記実施形態2の全波整流波形の入力電圧の別のサンプリング方法を示す図である。
【
図10】本発明のスイッチング回路の動作例を説明するための図である。
【
図11】本発明のスイッチング回路の動作シミュレーション例を示す波形図である。
【
図12】100V用電源装置の入力電圧に変動が生じた場合の順方向電流の動作シミュレーション例を示す波形図である。
【
図13】100V用電源装置の入力電圧に変動が生じた場合の順方向電流の動作シミュレーション例を示す波形図である。
【
図14】200V用電源装置の入力電圧に変動が生じた場合の順方向電流の動作シミュレーション例を示す波形図である。
【
図15】200V用電源装置の入力電圧に変動が生じた場合の順方向電流の動作シミュレーション例を示す波形図である。
【
図16】従来のアナログ式制御回路を備えた電源装置の構成を示すブロック回路図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る照明用LED電源の回路構成を
図1に示す。照明用LED電源10は、電圧発生回路2と、スイッチング回路4と、LED負荷6と、マイコン8と、入力電圧検出回路12と、負荷電圧検出回路14とから構成される。
【0024】
電圧発生回路2は、外部交流電源ACからの交流電圧を所定の直流電圧に変換してスイッチング回路4に直流電圧を供給する。スイッチング回路4への入力電圧Vinは、入力電圧検出回路12によって検出され、検出値がマイコン8に入力される。
【0025】
スイッチング回路4は、インダクタンス素子L1と、スイッチング素子Q1と、電解コンデンサC1とから構成されている。電解コンデンサC1は、本発明の蓄電素子に相当する。スイッチング回路4は、入力電圧Vinを受けると、インダクタンス素子L1、スイッチング素子Q1および電解コンデンサC1が連動して、電解コンデンサC1に所定の電荷を蓄積して、この電解コンデンサC1の端子間に接続されたLED負荷6に所定の連続電流を供給する。
【0026】
LED負荷6の順方向電圧Vfは、負荷電圧検出回路14によって検出され、その検出値がマイコン8に入力される。また、外部の調光器などからの調光信号がマイコン8に入力される。マイコン8は、メモリなどに記憶された電流指令値と、入力電圧係数と、負荷係数と、調光信号に応じた調光率とに基づいて、LED負荷に流す連続電流の大きさを算出し、その連続電流の大きさに応じたオン幅で、スイッチング素子Q1に矩形波信号を出力するために設けられている。マイコン8の具体的な動作例を
図2に基づいて説明する。
【0027】
マイコン8は、
図2のような複数のデータテーブルを持っている。
【0028】
電流指令値データテーブルAは、電流指令値の数列であり、この電流指令値は、全光状態(100%調光)にするための必要な順方向電流(LEDへの連続電流)の大きさを示す。通常、300mA〜2000mAの範囲の数列にする。例えば、ソフトスタート機能に対応した電流指令値の数列としてもよい。定格電流が600mAの場合、点灯スタートから数百ミリ秒を掛けて緩やかに順方向電流を600mAまで増加させるように、点灯スタートからの経過時間に応じた電流指令値の数列をデータテーブルとして設けてもよい。
その他、LED負荷の経時変化に対応した電流指令値の数列としてもよい。
なお、データテーブルを設けず、電流指令値として固定された値がマイコンに書き込まれていてもよい。
【0029】
入力電圧係数データテーブルBは、入力電圧Vinの検出信号に応じた入力電圧係数の数列である。通常、0.6〜1.4の範囲の数列にする。例えば、入力電圧Vinが変動した場合でもLEDの定格電流が維持されるように設定された補正値の数列とすることができる。これによって、交流電源ACなどからの入力電圧Vinの変動によるLEDの順方向電流の変動を除去することができる。
【0030】
負荷係数データテーブルCは、負荷電圧Vfの検出信号に応じた負荷係数の数列である。通常、0.6〜1.4の範囲で数列を設定する。例えば、負荷電圧Vfが変動した場合でもLEDの定格電流が維持されるように設定された補正値の数列とすることができる。
【0031】
なお、調光信号は、0%調光〜100%調光の範囲でマイコンに入力される。
【0032】
マイコン8でのオン幅算出ルーチンは以下のようになる。まず、現時点での電流指令値を電流指令値データテーブルAから読み出す。例えば、LED負荷の定格電流の600mAを読み出す。負荷係数データテーブルCからは、負荷電圧Vfの検出信号に応じた負荷係数を読み出す。ここでは、LED素子の一つが破損して負荷電圧Vfが変動した場合を想定して、例えば0.9を読み出す。0.9とするのは、供給電流を抑えるためである。入力電圧係数データテーブルBからは、入力電圧Vinの検出信号に応じた入力電圧係数を読み出す。ここでは、交流電源ACが変動して、入力電圧Vinが低下した場合を想定して、例えば1.2を読み出す。また、現時点でマイコン8に入力されている調光信号Dは、5%の調光率を示しているとする。このような場合に、マイコン8は、電流指令値(600mA)に、負荷係数(0.9)と、入力電圧係数(1.2)と、調光率(0.05)とを掛け合わせて(600×0.9×1.2×0.05=32.4)、調光状態にするための順方向電流の大きさとして32.4mAを算出する。このように定格電流が600mAであれば5%調光の順方向電流は30mAになるが、電圧変動に基づく補正の結果、電圧変動がない場合に32.4mAの順方向電流を流すことができるオン幅でスイッチング素子Q1が駆動し、負荷に電圧変動がなかった場合と同じ30mAが流れことになる。そのオン幅でスイッチング素子Q1に矩形波電圧信号(例えば、0−5V信号)を出力する。以上で、オン幅算出ルーチンが1回終了する。
【0033】
この算出ルーチンは、電圧のサンプリングピッチ毎に実行される。マイコン(MPU)の処理能力によるが、およそ100〜1000μ秒毎に算出ルーチンが実行されるのが好ましい。なお、スイッチング素子の駆動電圧が12Vである場合は、
図1のようにマイコン8の出力電圧5Vを12Vに変換するレベル変換回路16をマイコン8とスイッチング素子Q1の中間に設けるとよい。
【0034】
特許文献1,2では、順方向電流のフィードバック制御によって、入力電圧の変動に対応していた。しかし、本実施形態では、特許文献1,2のような順方向電流のフィードバック制御は無く、代わりに本実施形態のマイコン8には、ノイズの影響を受けにくい入力電圧Vinと負荷電圧Vfの各検出値が入力される。マイコン8は、入力電圧Vinおよび負荷電圧Vfの検出値を瞬時に処理することができ、これらの電圧が変動した際には、検出値に基づいて瞬時に補正されたオン幅でスイッチング素子Q1を駆動することができるので、順方向電流の変動を抑制することができる。従って、順方向電流の検出およびそのフィードバック制御を行なわなくても、調光の浅い領域から深い領域までの全ての領域において、チラツキのないスムーズな調光制御を良好に行える。
【0035】
また、この算出ルーチンを用いれば、調光率の大小によっても調光制御方式は変わらない。よって、特許文献1のような制御方式の移行に伴う「チラツキ」は生じず、特許文献2のような制御方式の移行に伴う「うなり」も生じないで済む。
【0036】
(実施形態2)
本発明の実施形態2に係る照明用LED電源の回路構成を
図3に示す。照明用LED電源110は、本発明を絶縁型のワンコンバーターに採用した場合の回路構成になる。
【0037】
図3に示すように、11はEMI対策のフィルター回路、21は全波整流器、41はスイッチング回路、81は制御回路でMPU(マイクロ・プロセッサー・ユニット)を内蔵している。スイッチング回路41はフライバックコンバータであり、抵抗R11および抵抗R12の分圧回路と、フライバックトランスT1と、スイッチング素子Q1と、ダイオードD1と、電解コンデンサC2と、抵抗R21および抵抗R22の分圧回路とから構成されている。トランスT1は本発明のインダクタンス素子に相当する。MPUは、スイッチング素子Q1を駆動する矩形波信号のオン幅を算出する。51は調光信号を絶縁して制御回路81内のMPUが認識し易い形式の信号に加工するインターフェイス回路である。
【0038】
全波整流器21の後段にコンデンサC1が設けられている。コンデンサC1の端子間に接続された抵抗R11および抵抗R12の分圧回路によって、入力電圧係数を算出するための全波整流電圧V1(入力電圧Vinに相当する。)の分圧が、制御回路81内部のMPUのA/Dコンバーターに供給される。
【0039】
コンデンサC1の端子間には、さらに、トランスT1の一次コイルとスイッチング素子Q1の直列回路が接続されている。スイッチング素子Q1のドレイン、ソース間には、スイッチング周期の変動を伴ったオンオフ駆動(疑似共振方式)を実行するために、コンデンサC3が接続されている。
【0040】
フライバックトランスT1の2次コイルには、ダイオードD1と電解コンデンサC2の直列回路が接続されている。電解コンデンサC2の端子間に接続された抵抗R21と抵抗R22の分圧回路によって、負荷係数を算出するためのLED負荷の順方向電圧Vfの分圧が、絶縁アンプ31を介して制御回路81内のMPUのA/Dコンバーターに供給される。
このようにして本実施形態のMPUに、全波整流電圧V1と順方向電圧Vfの各検出値が入力され、MPUはこれらの検出値を瞬時に処理し、検出値に基づいて瞬時に補正されたオン幅でスイッチング素子Q1を駆動する。その結果、LED負荷61の順方向電流の変動を抑制することができる。従って、絶縁型のワンコンバーターにおいて、チラツキのないスムーズな調光制御を良好に行うことができる。
【0041】
(実施形態3)
本発明の実施形態3に係る照明用LED電源の回路構成を
図4に示す。照明用LED電源210は、本発明を非絶縁型のツーコンバーターに採用した場合の回路構成になる。
【0042】
図4に示すように、11はEMI対策のフィルター回路、21は全波整流器、43はスイッチング回路、83は制御回路でMPUを内蔵している。スイッチング回路43は、降圧チョッパ回路であり、抵抗R11および抵抗R12の分圧回路と、ダイオードD1と、電解コンデンサC2と、コイルなどのインダクタンス素子L1と、スイッチング素子Q1と、抵抗R21および抵抗R22の分圧回路とから構成されている。MPUは、スイッチング素子Q1を駆動する矩形波のオン幅を算出する。51は調光信号を絶縁して制御回路83内のMPUが認識し易い形式の信号に加工するインターフェイス回路である。71は昇圧ショッパ回路などで構成された力率改善回路であり、全波整流器21と力率改善回路71の間にコンデンサC1が設けられ、力率改善回路71とスイッチング回路43の間に電解コンデンサC3が設けられている。
【0043】
電解コンデンサC3の端子間に接続された抵抗R11と抵抗R12の分圧回路によって、入力電圧係数を算出するための力率改善回路の出力電圧V2(入力電圧Vinに相当する。)の分圧が、制御回路83内部のMPUのA/Dコンバーターに供給される。
【0044】
電解コンデンサC3の端子間には、さらに、電解コンデンサC2と、インダクタンス素子L1と、スイッチング素子Q1との直列回路が接続されている。なお、電解コンデンサC2とインダクタンス素子L1の直列回路の端子間にはダイオードD1が接続されており、スイッチング素子Q1のオフ期間にインダクタンス素子L1からの回生電流がダイオードD1を通って電解コンデンサC2の正極側に流れるようになっている。また、インダクタンス素子L1とスイッチング素子Q1の直列回路の端子間には、抵抗R21および抵抗R22の分圧回路が接続されている。
【0045】
この抵抗R21と抵抗R22の分圧回路によって、電解コンデンサC2の負極側電圧V3の分圧が制御回路83内のMPUのA/Dコンバーターに供給される。MPUの内部プログラムにより、V2−V3=Vfの演算が実行され、LED負荷の順方向電圧Vfが得られる。
このようにして本実施形態のMPUに、力率改善回路の出力電圧V2と順方向電圧Vfの各検出値が入力され、MPUはこれらの検出値を瞬時に処理し、検出値に基づいて瞬時に補正されたオン幅でスイッチング素子Q1を駆動する。その結果、LED負荷61の順方向電流の変動を抑制することができる。従って、非絶縁型のツーコンバーターにおいて、チラツキのないスムーズな調光制御を良好に行うことができる。
【0046】
図5は、実施形態2、3での負荷係数の読み出し方法を示す。LED負荷の順方向電圧Vfの平均値から負荷係数データテーブルCを索引して負荷係数を読み出す。検出値の最大値と最小値を平均した値を使って索引してもよい。このデータテーブルCは、LED負荷の順方向電圧Vfが変化した場合にも、定格電流(全光時)が流れるようにするための補正値の数列である。
【0047】
図6は、実施形態2のワンコンバーター方式における入力電圧係数の読み出し方法を示す。脈動する全波整流電圧V1のピーク値をキーとして入力電圧係数データテーブルBを索引し、入力交流電圧係数を読み出す。このデータテーブルBは、全波整流電圧V1が変化した場合にも、定格電流(全光時)が流れるようにするための補正値の数列である。
【0048】
図7は、実施形態3のツーコンバーター方式における入力電圧係数の読み出し方法を示す。力率改善回路71の出力電圧V2の平均値によりデータテーブルB’を索引して入力電圧係数を読み出す。電圧発生回路としての力率改善回路71の出力電圧V2は一定レベル以上の直流波形になっている。検出値の最大値と最小値を平均した値を使って索引してもよい。このデータテーブルB’は、交流電圧の変動などの影響を受けて力率改善回路71の出力電圧V2が変化した場合にも、定格電流(全光時)が流れるようにするための補正値の数列である。
【0049】
図8は、実施形態2、3での負荷係数の別の読み出し方法を示す。この例で、制御回路81、83内のMPUは、負荷係数データテーブルを、既に検出された信号を含む負荷電圧Vfの検出信号の平均値によって索引して、この平均値に応じた負荷係数を取り出す。この例で特徴的なことは、脈動する負荷電圧Vfの検出値をそのまま加算平均するのではなく、交流電源の一周期に対応する期間での特定のタイミングで、負荷電圧Vfをサンプリングすることである。そのサンプリングは交流電源の周期に合わせて実行される。取得した検出値を平均化した値をテーブルデータの索引用のキーとして使用する。
【0050】
図9は、実施形態2での入力電圧係数の別の読み出し方法を示す。全波整流電圧V1の変動の検出タイミングは、この例では交流電源の一周期当り10ポイントある。制御回路81内のMPUは、入力電圧係数データテーブルBを、全波整流電圧V1のサンプル点1〜10のうちの全波整流波形のピーク値(サンプル点3、8)によって索引し、若しくは、3、8以外のサンプル点を全波整流波形のピーク値に換算した値によって索引して、ピーク値若しくはピーク値への換算値に応じた入力電圧係数を取り出す。
【0051】
この例で特徴的なことは、瞬時入力交流電圧の低下が生じた際に、どのサンプル点であっても、全波整流電圧V1の検出値に基づいて瞬時に索引キーが変わり、入力電圧係数データテーブルBの索引する位置が瞬時に移動することにある。これによって、新しい入力電圧係数によってスイッチング素子Q1のオン幅が算出され、瞬時入力交流電圧の低下に瞬時に対応できるようになった。なお、一周期当りのサンプル点は、5ポイントから100ポイントの範囲で設定することが好ましい。
【0052】
図10に実施形態2のワンコンバーター方式の電源回路の動作例を示す。横方向に左から調光率100%、60%、20%におけるそれぞれの全波整流電圧V1,矩形波信号、順方向電流Ifの各波形を並べた。
【0053】
調光率100%における矩形波信号のオン幅を1.0で表すと、調光率60%でのオン幅は0.6、調光率20%でのオン幅は0.2と表すことができる。ただし、入力電圧V1や負荷電圧Vfに変動がない場合のオン幅を示す。ワンコンバーター方式ではフライバック回路を用いるため、矩形波信号のオフ時にトランスT1の2次側の電流が増加し、オン時には減少する。三角波形で示されるトランス2次側電流波形の平均値が、LEDの順方向電流Ifになる。ここでは、疑似共振方式を採用しているため、オン幅の変化に伴ってスイッチング周期も変化する。
【0054】
調光率を100%から60%にすると、電圧変動が無い条件では、オン幅が単純に0.6になる。調光率を60%から20%まで下げる場合も、電圧変動が無い条件では、オン幅が単純に0.2になる。しかし、調光率が60%のときに、
図10に示すように全波整流電圧V1が瞬時に低下(A→B)したとすると、直後のサンプル点での検出値に応じてオン幅がすぐに0.6から0.8に変更される。これによって、順方向電流Ifが変動前のレベルを維持されて、全波整流電圧V1の低下の影響をカバーすることができる。更に、電圧V1の低下が進んだ場合は、続くサンプル点での検出値に応じて、更にオン幅が0.8から0.85に変更される。
【0055】
図11に、実施形態2のワンコンバーター方式の電源回路の動作シミュレーションの例を示す。浅い領域の調光と深い領域の調光との間を自在に変化させた場合の、スイッチング素子Q1のゲート電圧波形を下段に、ドレイン電圧波形を上段に並べた。右側の波形になるほど、ゲート波形のオン期間T1が狭くなっていく。スイッチング周期は疑似共振方式を採用しているために変動していることが分かる。また、オン幅T1の変化に伴って、ドレイン電圧波形の零電圧の期間T2も徐々に狭くなっていく様子が分かる。
【0056】
図12〜15に、実施形態2のワンコンバーター方式の電源回路における電源電圧降下応答特性の動作シミュレーションの例を示す。
入力交流電源電圧が30ミリ秒間、30%だけ電圧降下した時のLEDの順方向電流Ifの応答波形を示す。交流電源の周波数は60ヘルツである。各波形に付した角度は、電圧降下の開始時の電圧波形の位相角度を示す。
図中、上段の波形は、LEDの順方向電流Ifの波形であり、下段の波形は、全波整流電圧V1の波形である。中段の波形において電圧が立っている期間は、マイコンが認識した入力交流電源電圧の降下期間を示す。
なお、
図12、13はLEDの定格電圧が100Vである場合を示し、
図13、14はLEDの定格電圧が200Vである場合を示した。
どの位相角(5°、20°、45°、70°、90°、110°、135°、150°、175°)で電圧降下が起きたとしても、LEDの出力波形に乱れは生じず、整然とした出力波形が得られることが分かる。