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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-171072(P2015-171072A)
(43)【公開日】2015年9月28日
(54)【発明の名称】カメラシステムの通信制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/225 20060101AFI20150901BHJP
   G03B 17/14 20060101ALI20150901BHJP
   G03B 17/02 20060101ALI20150901BHJP
   H04L 29/08 20060101ALI20150901BHJP
【FI】
   H04N5/225 F
   H04N5/225 D
   G03B17/14
   G03B17/02
   H04L13/00 307C
   H04L13/00 307A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-46222(P2014-46222)
(22)【出願日】2014年3月10日
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】100124327
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】上山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】藤波 研次
【テーマコード(参考)】
2H100
2H101
5C122
5K034
【Fターム(参考)】
2H100FF01
2H101EE08
2H101EE13
5C122DA03
5C122DA04
5C122EA42
5C122EA68
5C122FB04
5C122GC46
5C122GC76
5C122GC86
5C122HB01
5C122HB02
5K034AA17
5K034CC02
5K034LL01
5K034MM08
(57)【要約】
【課題】レンズユニットとカメラ本体との間において、複雑なコマンドの送受信等を行うことなく、迅速により高速な通信速度での通信を確立することを可能とする交換式レンズユニットを備えたカメラシステムの通信制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】この目的を達成するため、レンズユニット側制御手段は、電源投入時に、当該上位側制御手段からの起動信号の検出に基づいて、任意の通信速度でハンドシェイク用信号を送信し、上位側制御手段は、自ら設定可能な通信速度の範囲内において通信速度を変更してレンズユニット側制御手段から送信されるハンドシェイク用信号を受信し、レンズユニット側制御手段との間で用いる通信速度を確立するハンドシェイク動作を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換可能に取り付けられるレンズユニットを備えるカメラシステムの通信制御方法であって、
当該カメラシステムは、当該レンズユニットが備えたレンズユニット側制御手段と、当該レンズユニット側制御手段との間でデータ信号の授受を行う上位側制御手段とを備え、
当該レンズユニット側制御手段は、電源投入時に、当該上位側制御手段からの起動信号の検出に基づいて、任意の通信速度でハンドシェイク用信号を送信し、
当該上位側制御手段は、自ら設定可能な通信速度の範囲内において通信速度を変更して当該レンズユニット側制御手段から送信されるハンドシェイク用信号を受信し、当該レンズユニット側制御手段との間で用いる通信速度を確立するハンドシェイク動作を行うことを特徴とするカメラシステムの通信制御方法。
【請求項2】
前記上位側制御手段は、自ら設定可能な通信速度の範囲内のすべての通信速度に変更しても前記レンズユニット側制御手段から送信される前記ハンドシェイク用信号を受信できない場合に、前記レンズユニット側制御手段に通信速度の変更要求を行う請求項1に記載のカメラシステムの通信制御方法。
【請求項3】
前記レンズユニット側制御手段は、前記上位側制御手段から送信された通信速度の変更要求に対して、自ら設定可能な通信速度の範囲のうち、当該ハンドシェイク動作においてハンドシェイク用信号の送信に用いていない最も速い通信速度に変更してハンドシェイク用信号を送信する請求項2に記載のカメラシステムの通信制御方法。
【請求項4】
前記起動信号は、当該上位側制御手段の起動状態を示すレベルに変化させた信号である請求項1〜請求項3のいずれかに記載のカメラシステムの通信制御方法。
【請求項5】
前記通信速度の変更要求は、当該上位側制御手段の起動状態を示すレベルから変化させた信号である請求項4に記載のカメラシステムの通信制御方法。
【請求項6】
前記レンズユニット側制御手段は、電源投入時に送信するハンドシェイク用信号を、直前の電源切断時において設定されていた通信速度で送信する請求項1〜請求項5のいずれかに記載のカメラシステムの通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、レンズユニットをカメラ本体に交換可能に取り付けたカメラシステムの通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レンズユニットを交換可能にカメラ本体に取り付けてなるカメラシステムでは、カメラ本体とレンズユニットとの間で通信を行い、カメラ本体とレンズユニットとを連動させている。これらカメラ本体とレンズユニット間では、一般に同期シリアル通信を採用して、データやコマンドを送受信している。ゆえに、使用者は、レンズユニット若しくはカメラ本体を任意に入れ替えることで、多数のバリエーションのカメラシステムを構成することができる。
【0003】
これらカメラ本体やレンズユニットは、構成する機能の違いによって、動作可能な通信速度が異なる。カメラユニットを構築するレンズユニットとカメラ本体との通信速度が異なる場合、通信不可能な状態となり、データの授受ができない。そこで、どのようなカメラ本体とレンズユニットとの組合せが採用された場合でも通信可能とするため、低速の通信速度を採用して通信を行うことが多い。しかしながら、低速の通信速度が設定された場合、データ量が大きくなると通信に多大な時間がかかる問題がある。そこで、従来よりカメラ本体とレンズユニットとの間でより高速な通信速度を設定し、通信を行う方法が開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されたカメラシステムでは、カメラ本体と、該カメラ本体に着脱自在に構成されたレンズとにより成り、複数の通信速度より選択される同一の通信速度にてこれらの間で非同期のシリアル通信を行うものであって、前記カメラ本体と前記レンズ間で確実に通信可能な、予め決められた初期値の通信速度で通信を開始し、前記初期値の通信速度での通信中に、前記レンズから該レンズが設定可能な、前記初期値よりも速い最高通信速度の情報を前記カメラ本体へ通信し、前記カメラ本体から該カメラ本体で設定可能な、前記初期値よりも速い最高通信速度の情報を前記レンズへ通信し、それぞれにおいて設定可能な最高通信速度のうち、遅い方の最高通信速度を前記同一の通信速度として前記カメラ本体及び前記レンズ側にて選択していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−152576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に記載のカメラシステムでは、予め設定された低速の通信速度で通信を開始し、その後、通信速度を変更するためのコマンドの送受信、最高通信速度に関するデータの送受信を行う必要がある。ゆえに、速い通信速度を設定可能な機器同士が組み合わされた場合であっても、通信開始当初から、速い通信速度での通信を行うことができず、コマンド送受信等の所定のデータ量の信号を送受信しなければならないため、通信を確立するために、時間を要する問題があった。
【0007】
そこで、本件発明の課題は、レンズユニットとカメラ本体との間において、複雑なコマンドの送受信等を行うことなく、迅速により高速な通信速度での通信を確立することを可能とする交換式レンズユニットを備えたカメラシステムの通信制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本件発明者等は、鋭意研究を行った結果、以下の構成を採用することにより、上述の課題を解決するに至った。
【0009】
本件発明に係るカメラシステムの通信制御方法は、交換可能に取り付けられるレンズユニットを備えるカメラシステムにおいて、当該レンズユニットが備えたレンズユニット側制御手段と、当該レンズユニット側制御手段との間でデータ信号の授受を行う上位側制御手段とを備え、当該レンズユニット側制御手段は、電源投入時に、当該上位側制御手段からの起動信号の検出に基づいて、任意の通信速度でハンドシェイク用信号を送信し、当該上位側制御手段は、自ら設定可能な通信速度の範囲内において通信速度を変更して当該レンズユニット側制御手段から送信されるハンドシェイク用信号を受信し、当該レンズユニット側制御手段との間で用いる通信速度を確立するハンドシェイク動作を行うことを特徴とする。
【0010】
本件発明に係るカメラシステムの通信制御方法は、前記上位側制御手段が、自ら設定可能な通信速度の範囲内のすべての通信速度に変更しても前記レンズユニット側制御手段から送信される前記ハンドシェイク用信号を受信できない場合に、前記レンズユニット側制御手段に通信速度の変更要求を行うことが好ましい。
【0011】
また、本件発明に係るカメラシステムの通信制御方法は、前記レンズユニット側制御手段が、前記上位側制御手段から送信された通信速度の変更要求に対して、自ら設定可能な通信速度の範囲のうち、当該ハンドシェイク動作においてハンドシェイク用信号の送信に用いていない最も速い通信速度に変更してハンドシェイク用信号を送信することが好ましい。
【0012】
さらに、本件発明に係るカメラシステムの通信制御方法は、前記起動信号が、当該上位側制御手段の起動状態を示すレベルに変化させた信号であることが好ましい。
【0013】
また、本件発明に係るカメラシステムの通信制御方法は、前記通信速度の変更要求が、当該上位側制御手段の起動状態を示すレベルから変化させた信号であることが好ましい。
【0014】
さらに、本件発明に係るカメラシステムの通信制御方法は、前記レンズユニット側制御手段は、電源投入時に送信するハンドシェイク用信号を、直前の電源切断時において設定されていた通信速度で送信することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本件発明のカメラシステムの通信制御方法によれば、レンズユニットが備えたレンズユニット側制御手段が、電源投入時に、上位側制御手段が起動状態であることを検出して、任意の通信速度でハンドシェイク用信号を送信し、上位側制御手段が、設定可能な通信速度を自動的に判断し、レンズユニット側制御手段から送信されたハンドシェイク用信号を受信して通信速度の確立を行うことができる。よって、本件発明では、設定可能な通信速度に関してコマンドやレスポンス等のデータ信号の授受を行う動作を行うことなく、レンズユニット側制御手段と上位側制御手段との間で迅速に通信速度の確立を行うことができる。
【0016】
また、本件発明によれば、レンズユニット側制御手段は、自らが起動状態である場合に、上位側制御手段の起動状態を検出してハンドシェイク用信号の送信を行うため、接続先の通信準備が整うまでの間に無駄に通信を行う必要がなくなる。
【0017】
さらに、本件発明によれば、レンズユニット側制御手段から送信されるハンドシェイク用信号に基づいて、通信速度の確立を行うため、機種の選定により、レンズユニット側制御手段の設定可能な通信速度が、上位側制御手段の設定可能な通信速度よりも速い場合には、より早期に、相互に設定可能な最速の通信速度で通信を確立させることが可能となる。
【0018】
そして、本件発明では、レンズユニット側制御手段から送信されたハンドシェイク用信号を上位側制御手段が受信できない場合には、上位側制御手段が、起動信号のレベルを変化させることによって、レンズユニット側制御手段にハンドシェイク用信号を受信できない旨を通知することができる。よって、本件発明によれば、コマンドやレスポンス等の複雑なデータ信号の授受を行うことなく、上位側制御手段は、レンズユニット側制御手段に異なる通信速度でのハンドシェイク用信号の送信を要求することが可能となる。
【0019】
また、レンズユニット側制御手段は、上位側制御手段からの通信速度の変更要求に対して、自ら設定可能な通信速度の範囲のうち、当該ハンドシェイク動作においてまだ用いられていない最も速い通信速度に変更してハンドシェイク用信号を送信することにより、より迅速に、相互に設定可能な最速の通信速度で通信を確立させることが可能となる。
【0020】
さらに、レンズユニット側制御手段は、電源投入時に送信するハンドシェイク用信号を、直前の電源切断時において設定されていた通信速度で送信することにより、レンズユニット側制御手段と、上位側制御手段との組み合わせが前回の電源切断時から変更されていない場合には、レンズユニット側制御手段が既に確立されている通信速度でハンドシェイク用信号を上位側制御手段に送信することができ、迅速に最速の通信速度での通信を確立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施の形態に係るカメラシステム全体を示す構成図である。
図2】ハンドシェイク動作に関するカメラ本体側制御装置のフローチャートである。
図3】ハンドシェイク動作に関するレンズユニット側制御装置のフローチャートである。
図4】ハンドシェイク動作に関する基本シーケンスである。
図5】ハンドシェイク動作に関する通信速度の変更要求を伴うシーケンスである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本件発明に係るカメラシステムの通信制御方法の実施の形態について説明する。図1は本実施の形態に係るカメラシステム1全体を示す構成図である。本実施の形態におけるカメラシステム1は、監視等に用いられる中赤外や遠赤外の撮像を可能とする赤外線カメラシステムであり、カメラ本体10と、当該カメラ本体10に交換可能に取り付けられるレンズユニット20とを備えている。
【0023】
本実施の形態におけるレンズユニット20は、鏡筒21にズームレンズ22、フォーカスレンズ23等を含むレンズ群が光軸に沿って保持されている。ズームレンズ22及びフォーカスレンズ23は、それぞれ位置調整手段としての駆動装置22M、23Mによって光軸方向に移動可能に設けられている。また、当該レンズユニット20は、像振れ補正機構24が組み込まれていてもよい。図中24Mは、像振れ補正機構24の駆動装置である。そして、当該レンズユニット20の像面側の端部には、レンズマウント25が設けられており、カメラ本体10に設けられるカメラマウント13と係合してカメラ本体10に着脱自在に取り付けられる。
【0024】
当該レンズユニット20は、レンズユニット側制御装置(レンズユニット側制御手段)20Cを備えている。当該レンズユニット側制御装置20Cは、汎用のマイクロコンピュータにより構成されている。当該レンズユニット側制御装置20Cには、上述したズームレンズ22の駆動装置22M、フォーカスレンズ23の駆動装置23M、像振れ補正機構の駆動装置24Mが接続されている他に、鏡筒21内部及び又は表面の温度を検出する温度測定部26や、ジャイロユニット27などが接続されている。
【0025】
本実施の形態におけるカメラ本体10は、レンズユニット20のレンズ群を透過した中赤外線領域及び遠赤外線領域の赤外光を検出し、画像信号に変換処理する撮像素子(イメージセンサ)11を備えている。また、当該カメラ本体10は、レンズユニット20と撮像素子11との間に駆動装置12Mにより駆動するシャッタ12が設けられている。当該シャッタ12とレンズユニット20との間に上述したレンズマウント25と係合可能とするカメラマウント13が設けられている。
【0026】
また、上述したカメラ本体10は、カメラ本体側制御装置(上位側制御手段)10Cを備えている。当該カメラ本体側制御装置10Cは、上述のレンズユニット側制御装置20Cと同様に、汎用のマイクロコンピュータにより構成されている。当該カメラ本体側制御装置10Cには、上述した撮像素子11や、シャッタ12の駆動装置12Mなどが接続されている。
【0027】
そして、当該カメラ本体10は、電源が設けられており、当該カメラ本体10は、レンズユニットにおける各レンズ22、23の駆動や像振れ補正機構24の動作に要する電源を供給する。すなわち、カメラマウント13とレンズマウント25とは、係合により当該カメラ本体10と、レンズユニット20とを電気的に接続する接点群が設けられており、当該接点群を介してカメラ本体10からレンズユニット20への電源供給が行われる。
【0028】
さらに、当該接点群では、レンズユニット20側のレンズユニット側制御装置20Cと、カメラ本体10側のカメラ本体側制御装置10Cとの間でコマンド信号、状態信号等のデータ信号の授受により通信が行われる。
【0029】
本実施の形態における通信は、全二重調歩同期式のシリアル伝送方式を採用する。すなわち、本実施の形態では、カメラ本体側制御装置10Cへデータ信号とレンズユニット側制御装置20Cとは、カメラ本体側制御装置10Cからレンズユニット側制御装置20Cへデータ信号を送信するためのDCLライン(第1通信線)2と、レンズユニット側制御装置20Cからカメラ本体側制御装置10Cへデータ信号を送信するためのDLCライン(第2通信線)3とにより電気的に接続されている。よって、本実施の形態では、これらDCLライン2とDLCライン3を介してデータ信号の送信と受信とを同時に行うことが可能であり、かつ、同期のためのクロック信号等を特に用いずに、スタートビット及びストップビットを用いて受信データ信号の同期を取ることが可能である。
【0030】
上述の構成により、本実施の形態におけるカメラシステム1は、カメラ本体側制御装置10Cと、レンズユニット側制御装置20Cとの間でデータ信号の授受を行い、各レンズ22、23の位置制御やシャッタ12の開閉制御、像振れ補正機構24の駆動制御等が行われる。
【0031】
次に、本件発明の特徴とするレンズユニット側制御装置20Cとカメラ本体側制御装置10Cとの間で用いる通信速度を確立するためのハンドシェイク動作について説明する。すなわち、本件発明に係るカメラシステム1の通信制御方法は、レンズユニット側制御装置20Cが、電源投入時に、カメラ本体側制御装置10Cからの起動信号の検出に基づいて、任意の通信速度でハンドシェイク用信号を送信し、カメラ本体側制御装置10Cが、自ら設定可能な通信速度の範囲内において通信速度を変更してレンズユニット側制御装置20Cから送信されるハンドシェイク用信号を受信し、レンズユニット側制御装置20Cとの間で用いる通信速度を確立するハンドシェイク動作を行うことを特徴とする。
【0032】
以下に、具体的なハンドシェイク動作について、図2及び図3のフローチャートと、図4及び図5の通信シーケンスを参照して説明する。図2はカメラ本体側制御装置10Cのフローチャートであり、図3はレンズユニット側制御装置20Cのフローチャート、図4は基本シーケンス、図5は通信速度の変更要求を伴うシーケンスを示している。
【0033】
まずはじめに、カメラ本体側制御装置10Cは、電源が投入されると、ステップSC1において、カメラ本体側制御装置10Cの起動状態を示すレベルに変化させた信号からなる起動信号をレンズユニット側制御装置20Cに送信する。具体的に、本実施の形態において、カメラ本体側制御装置10Cの起動状態を示すレベルに変化させた信号とは、DCLライン2の信号レベルをHigh状態とする信号である。さらに、ステップSC1において、カメラ本体側制御装置10Cは、当該カメラ本体側制御装置10Cの通信速度を、設定可能な最高速度の通信速度に設定し、ステップSC2に進む。
【0034】
一方、レンズユニット側制御装置20Cは、電源が投入されると、ステップSL1において、カメラ本体側制御装置10Cからの起動信号が検出できたか否かを判断する。具体的には、レンズユニット側制御装置20Cは、DCLライン2の信号レベルがHigh状態となっているか否かを判断する。レンズユニット側制御装置20Cは、起動信号を検出すると、すなわち、DCLライン2の信号レベルのHigh状態を検出するとステップSL2に進む。
【0035】
レンズユニット側制御装置20Cは、ステップSL2において、任意の通信速度のハンドシェイク用信号(図中、WUPとして示す。)をDLCライン3を介してカメラ本体側制御装置10Cに所定間隔で繰り返し送信する。当該ハンドシェイク用信号は、状態信号を伴わない、非常に短い伝文信号であることが好ましく、本実施の形態では、1バイトオーダーのデータID信号からなる。レンズユニット側制御装置20Cは、カメラ本体側制御装置10Cへの当該ハンドシェイク用信号を、例えば、約33msec間隔で送信する。以後、ハンドシェイク用信号の送信は、所定の間隔をおいて継続して行う。
【0036】
また、当該ステップSL2においてレンズユニット側制御装置20Cが送信するハンドシェイク用信号は、電源投入直後に送信されるハンドシェイク用信号である。そのため、直前の電源切断時において設定されていた通信速度を採用して、ハンドシェイク用信号を送信することが好ましい。レンズユニット側制御装置20Cは、ステップSL2でハンドシェイク用信号を送信した後、ステップSL3に進む。
【0037】
カメラ本体側制御装置10Cは、ステップSC2において、レンズユニット側制御装置20Cからハンドシェイク用信号が受信できたか否かを判断する。当該カメラ本体側制御装置10Cは、この時点で、ステップSC1において、自ら設定可能な通信速度のうち、最高速度の通信速度に設定されている。ここで、レンズユニット側制御装置20から送信されたハンドシェイク用信号の通信速度が、カメラ本体側制御装置10Cの最高速度と合致する場合には、カメラ本体側制御装置10Cは、ハンドシェイク用信号を受信することができるため、ステップSC2からステップSC3に進む。
【0038】
ステップSC3では、カメラ本体側制御装置10Cは、DCLライン2を介してハンドシェイク用信号を受信できた旨の信号(肯定応答信号。図中、ACKとして示す。)をレンズユニット側制御装置20Cに送信し、ステップSC4に進み、ハンドシェイク動作を終了して、通常状態に移行する。
【0039】
これに対し、レンズユニット側制御装置20Cは、ステップSL3において、カメラ本体側制御装置10Cからの肯定応答信号が受信できたか否かを判断する。ステップSC3において、カメラ本体側制御装置10Cから肯定応答信号が送信されている場合には、レンズユニット側制御装置20Cは、ステップSL3において、肯定応答信号が受信でき、ステップSL4に進む。ステップSL4では、レンズユニット側制御装置20Cは、ここまで所定間隔で送信していたハンドシェイク用信号の送信を中止し、ステップSL5に進み、通常状態に移行する。上述したように、当該肯定応答信号の送受信が行われることによって、カメラ本体側制御装置10Cと、レンズユニット側制御装置20Cとの間で用いられる通信速度を確立させることができる。
【0040】
一方、カメラ本体側制御装置10Cが、上述したステップSC2において、所定時間、レンズユニット側制御装置20Cからハンドシェイク用信号が受信できなかった場合には、レンズユニット側制御装置20Cから送信される用信号の通信速度と、当該カメラ本体側制御装置10Cにおいて現在設定されている通信速度とが異なるものと判断して、ステップSC5に進む。
【0041】
ステップSC5において、カメラ本体側制御装置10Cは、現在設定されている通信速度が、当該カメラ本体側制御装置10Cの設定可能な通信速度範囲のうち最低速度であるか否かを判断する。現在設定されている通信速度が、設定可能な通信速度の範囲のうち最低速度ではない場合には、カメラ本体側制御装置10Cは、ステップSC6に進み、当該カメラ本体側制御装置10C側の使用通信速度を1段階下げ、ステップSC2に戻る。以後、カメラ本体側制御装置10Cは、レンズユニット側制御装置20Cからハンドシェイク用信号が受信できるまで、ステップSC2、ステップSC5、ステップSC6を繰り返し実行する。カメラ本体側制御装置10C側で設定する通信速度を下げることで、レンズユニット側制御装置20Cから送信されたハンドシェイク用信号が受信できた場合には、上述したようにステップSC2からステップSC3に進み、肯定応答信号をレンズユニット側制御装置20Cに送信し、通信速度の確立を行って、ハンドシェイク動作を終了する。
【0042】
上述したように、カメラ本体側制御装置10C側で設定する通信速度を下げていっても、レンズユニット側制御装置20Cからのハンドシェイク用信号が受信できない場合、すなわち、カメラ本体側制御装置10Cが、自ら設定可能な通信速度の範囲内のすべての通信速度に変更してもレンズユニット側制御装置20Cから送信されるハンドシェイク用信号を受信できない場合には、当該カメラ本体側制御装置10Cは、ステップSC7に進み、レンズユニット側制御装置20Cに対して通信速度の変更要求を行う。
【0043】
本実施の形態では、レンズユニット側制御装置20Cに対する通信速度の変更要求は、図5に示すように、カメラ本体側制御装置10Cが、当該カメラ本体側制御装置10Cの起動状態を示すレベルから変化させた信号をDCLライン2を介してレンズユニット側制御装置20Cに送信することにより行う。通信速度の変更要求を行う前の状態で、DCLライン2の信号レベルは、High状態となっている。通信速度の変更要求は、まず、ステップSC7において、カメラ本体側制御装置10CがDCLライン2の信号レベルを当該High状態からLow状態に変化させる。そして、ステップSC8において、カメラ本体側制御装置10C側は、当該Low状態を所定時間維持したか否かを判断し、Low状態を所定時間維持した後、ステップSC9に移行し、DCLライン2の信号レベルをHigh状態に復帰させる。本実施の形態では、上述したハンドシェイク用信号の送信間隔、例えば、約33msecよりも長い時間当該Low状態を維持する。カメラ本体側制御装置10Cは、DCLライン2の信号レベルをステップSC9でHigh状態に復帰させた後、すなわち、起動信号の送信を再開した後、ステップSC2に戻り、再び、レンズユニット側制御装置20Cからのハンドシェイク用信号の受信の有無を判断する。
【0044】
これに対し、レンズユニット側制御装置20Cは、上述のステップSL3において、カメラ本体側制御装置10Cからの肯定応答信号を所定時間、受信することができなかった場合には、ステップSL6に進む。ステップSL6において、レンズユニット側制御装置20Cは、カメラ本体側制御装置10Cから通信速度の変更要求があったか否かを判断する。具体的には、レンズユニット側制御装置20Cは、DCLライン2の信号レベルが所定時間Low状態となったか否かを判断する。レンズユニット側制御装置20Cは、通信速度の変更要求があったことを検出すると、すなわち、DCLライン2の信号レベルのLow状態が所定時間継続したことを検出するとステップSL7に進む。
【0045】
そして、レンズユニット側制御装置20Cは、ステップSL7において、自らが設定可能な通信速度の範囲のうち、当該ハンドシェイク動作においてハンドシェイク用信号の送信に用いていない最も速い通信速度に変更してハンドシェイク用信号を送信する。この状態で、レンズユニット側制御装置20Cが使用している通信速度が、自らが設定可能な通信速度の範囲のうち最高速度である場合には、当該通信速度よりも1段階下げて、DLCライン3を介してハンドシェイク用信号を送信する。以後、レンズユニット側制御装置20Cは、カメラ本体側制御装置10Cから通信速度の変更要求がある度に、現在設定されている通信速度よりも1段階下げて、DLCライン3を介してハンドシェイク用信号を送信する。
【0046】
本実施の形態では、レンズユニット側制御装置20Cが、カメラ本体側制御装置10Cからの通信速度の変更要求に対して、レンズユニット側制御装置20Cから送信するハンドシェイク用信号の通信速度を徐々に下げていき、下げられた通信速度のハンドシェイク用信号を受信すべく、カメラ本体側制御装置10Cが、通信可能な通信速度を自動的に判断して、レンズユニット側制御装置20Cから送信されたハンドシェイク用信号を受信して通信速度の確立を行うことができる。
【0047】
よって、本件発明に係るカメラシステム1の通信制御方法によれば、設定可能な通信速度に関してコマンドやレスポンス等のデータ信号の授受を行う動作を行うことなく、レンズユニット側制御装置20Cとカメラ本体側制御装置10Cとの間で迅速に通信速度の確立を行うことができる。
【0048】
また、レンズユニット側制御装置20Cは、自らが起動状態である場合に、カメラ本体側制御装置10Cの起動状態を検出してハンドシェイク用信号の送信を行うため、接続先の通信準備が整うまでの間に無駄に通信を行う必要がなくなる。
【0049】
さらに、本件発明に係るカメラシステム1の通信制御方法によれば、レンズユニット側制御装置20Cから送信されるハンドシェイク用信号に基づいて、通信速度の確立を行うため、機種の選定により、レンズユニット側制御装置20Cの設定可能な通信速度が、カメラ本体側制御装置10Cの設定可能な通信速度よりも速い場合には、より早期に、相互に設定可能な最速の通信速度で通信を確立させることが可能となる。
【0050】
特に、本実施の形態では、レンズユニット側制御装置20Cは、電源投入直後に送信するハンドシェイク用信号を、直前の電源切断時において設定されていた通信速度で送信する。よって、レンズユニット側制御装置20Cと、カメラ本体側制御装置10Cとの組み合わせが前回の電源切断時から変更されていない場合には、レンズユニット側制御装置20Cが既に確立されている通信速度でハンドシェイク用信号をカメラ本体側制御装置10Cに送信することができ、迅速に最速の通信速度での通信を確立させることが可能となる。
【0051】
また、上述したように、本件発明に係るハンドシェイク動作では、レンズユニット側制御装置20Cから送信されたハンドシェイク用信号をカメラ本体側制御装置10Cが受信できない場合には、カメラ本体側制御装置10Cが、起動信号のレベルを変化させて、レンズユニット側制御装置20Cに対して通信速度の変更要求を行うことによって、レンズユニット側制御装置20Cにハンドシェイク用信号を受信できない旨を通知することができる。よって、コマンドやレスポンス等の複雑なデータ信号の授受を行うことなく、カメラ本体側制御装置10Cは、レンズユニット側制御装置20Cに異なる通信速度でのハンドシェイク用信号の送信を要求することが可能となる。
【0052】
そして、レンズユニット側制御装置20Cは、カメラ本体側制御装置10Cからの通信速度の変更要求に対して、自ら設定可能な通信速度の範囲のうち、当該ハンドシェイク動作においてまだ用いられていない最も速い通信速度に変更してハンドシェイク用信号を送信することにより、より迅速に、相互に設定可能な最速の通信速度で通信を確立させることが可能となる。
【0053】
なお、上述した如き本実施の形態では、中赤外や遠赤外の撮像を可能とする赤外線カメラシステム1を例に挙げて説明したが、本件発明に係るカメラシステムは、当該遠赤外線カメラシステム1に限定されるものではない。また、本実施の形態では、レンズユニット20が備えるレンズユニット側制御装置20Cと通信を確立させる制御装置として、カメラ本体10が備えるカメラ本体側制御装置10Cを例に挙げて説明したが、本件発明はこれに限定されるものではなく、例えば、外部の監視用制御装置の上位側制御装置を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本件発明に係るカメラシステムの通信制御方法は、レンズユニットが備えたレンズユニット側制御手段が、電源投入時に、上位側制御手段が起動状態であることを検出して、任意の通信速度でハンドシェイク用信号を送信し、上位側制御手段が、設定可能な通信速度を自動的に判断し、レンズユニット側制御手段から送信されたハンドシェイク用信号を受信して通信速度の確立を行うことができる。よって、例えば、通信速度が比較的低い範囲で設定されている上位側制御手段が接続されたカメラ本体に対し、通信速度が比較的高い範囲まで設定可能とされるレンズユニット側制御手段を備えたレンズユニットが取り付けられた場合に、より迅速に、相互に使用可能な最速の通信速度での通信確立を実現することができる点において有効である。
【符号の説明】
【0055】
1 カメラシステム
2 DCLライン(第1通信線)
3 DLCライン(第2通信線)
10 カメラ本体
10C カメラ本体側制御装置(上位側制御手段)
11 撮像素子(イメージセンサ)
12 シャッタ
12M 駆動装置
13 カメラマウント
20 レンズユニット
20C レンズユニット側制御装置(レンズユニット側制御手段)
21 鏡筒
22 ズームレンズ
22M〜24M 駆動装置
23 フォーカスレンズ
25 レンズマウント
図1
図2
図3
図4
図5