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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-171423(P2015-171423A)
(43)【公開日】2015年10月1日
(54)【発明の名称】経編包帯及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/06 20060101AFI20150904BHJP
【FI】
   A61F13/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】31
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-47872(P2014-47872)
(22)【出願日】2014年3月11日
(71)【出願人】
【識別番号】503328399
【氏名又は名称】竹中繊維株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503126740
【氏名又は名称】小泉ブレード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105809
【弁理士】
【氏名又は名称】木森 有平
(74)【代理人】
【識別番号】100151356
【弁理士】
【氏名又は名称】浅香 小百合
(72)【発明者】
【氏名】竹中 健
(72)【発明者】
【氏名】小泉 悟
(57)【要約】
【課題】 優れた伸縮性を備え、着用が簡便であるとともに付け心地がよく、ふくらはぎに特化して適正な圧迫を与えることで、より効果的にむくみを防止する効果が得易い構成の経編包帯並びにその好適な使用方法を提供する。
【解決手段】 経編包帯1は、経糸にて編目を作りながら伸縮性の挿入糸を経方向に編み込むとともに緯糸をコース方向に編み込んで形成された帯状の経編組織からなり、少なくとも挿入糸の伸長率が200%以上500%未満に設定されて、クロッシェ経編機にて幅寸法が50mm以上150mm以下に編成され、ふくらはぎに巻いて使用する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸にて編目を作りながら伸縮性の挿入糸を経方向に編み込むとともに緯糸をコース方向に編み込んで形成された帯状の経編組織からなり、少なくとも挿入糸の伸長率が200%以上500%未満に設定されて、クロッシェ経編機にて幅寸法が50mm以上150mm以下に編成され、ふくらはぎに巻いて使用することを特徴とする経編包帯。
【請求項2】
伸縮性の経糸にて編目を作りながら伸縮性の挿入糸を経方向に編み込むとともに緯糸をコース方向に編み込んで形成された帯状の経編組織からなり、前記経糸はウーリー加工された非弾性糸を弾性繊維にカバーリングした糸であり、前記挿入糸はウーリー加工された非弾性糸を弾性繊維にカバーリングした糸であり、かつ、前記緯糸はウーリー加工された非弾性糸であり、経糸と挿入糸の伸長率が200%以上500%未満に設定されて、クロッシェ経編機にて幅寸法が50mm以上150mm以下に編成され、ふくらはぎに巻いて使用することを特徴とする経編包帯。
【請求項3】
前記幅寸法が50mm以上100mm以下に設定されているとともに長さが1000mm以上2500mm以下に設定されているか、または、前記幅寸法が100mm以上150mm以下に設定されているとともに長さが500mm以上1500mm以下に設定されていることを特徴とする請求項1または2記載の経編包帯。
【請求項4】
伸長に際しては、長手方向の伸長率が50%のときのパワーをN1とし、長手方向の伸長率が150%のときのパワーをN3としたときに、N3がN1の4.0倍未満であり、かつ、収縮に際しては、長手方向の伸長率が150%のときのパワーをN6とし、長手方向の伸長率が50%のときのパワーをN4としたときに、N6がN4の2.0倍以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の経編包帯。
【請求項5】
前記挿入糸の番手が前記経糸の番手よりも大きいことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の経編包帯。
【請求項6】
前記非弾性糸がナイロンであり、前記弾性繊維がポリウレタンであることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項記載の経編包帯。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項記載の経編包帯を、少なくともその一部を重ねて、ふくらはぎに螺旋状に巻いて使用することを特徴とする経編包帯の使用方法。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項記載の経編包帯を、ふくらはぎに螺旋状に巻いて使用することとし、筋肉のあるエリアは直前に周回した帯状の幅に対してその幅の一部が重なるように引っ張って巻き上げることを特徴とする経編包帯の使用方法。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか一項記載の経編包帯を、ふくらはぎに螺旋状に巻いて使用することとし、少なくとも3周目以後5周目までは直前に周回した帯状の幅に対して1/3以上2/3以下の幅が重なるように螺旋状に巻き上げ、その際に帯状の長手方向に伸長率が50%以上150%以下で引っ張って巻き上げることを特徴とする経編包帯の使用方法。
【請求項10】
請求項1から6のいずれか一項記載の経編包帯を、ふくらはぎに螺旋状に巻いて使用することとし、少なくとも3周目以後5周目までは直前に周回した帯状の幅に対して約半分の幅が重なるように螺旋状に巻き上げ、その際に帯状の長手方向に約2倍に引き伸ばして巻き上げることを特徴とする経編包帯の使用方法。
【請求項11】
前記経編包帯を、先端は足首から巻き始めてダブつきが出ない程度に少しだけ引っ張って周回させ、筋肉のあるエリアは螺旋状に引っ張って巻き上げ、巻き終わりはその引張り力を保ちながら膝下で巻いた帯の下に後端を挟み込んで留めることを特徴とする請求項7から10のいずれか一項記載の経編包帯の使用方法。
【請求項12】
前記経編包帯を、右の脚に対しては自分から見て右回りに巻き、左の脚に対しては自分から見て左回りに巻くことを特徴とする請求項7から11のいずれか一項記載の経編包帯の使用方法。
【請求項13】
前記経編包帯をふくらはぎに巻いた後、ミルキングアクションを行うことを特徴とする請求項7から12のいずれか一項記載の経編包帯の使用方法。
【請求項14】
前記経編包帯をふくらはぎに巻いた後、化粧水を含有させてから、ミルキングアクションを行うことを特徴とする請求項7から12のいずれか一項記載の経編包帯の使用方法。
【請求項15】
経糸にて編目を作りながら伸縮性の挿入糸を経方向に編み込むとともに緯糸をコース方向に編み込んで形成された帯状の経編組織からなり、少なくとも挿入糸はウーリー加工された非弾性糸を弾性繊維にカバーリングした糸であり、少なくとも挿入糸の伸長率が200%以上500%未満に設定されて、クロッシェ経編機にて編成され、幅寸法が50mm以上150mm以下に設定されている経編包帯を、ふくらはぎに螺旋状に巻いて使用することとし、筋肉のあるエリアは直前に周回した帯状の幅に対してその幅の一部が重なるように引っ張って巻き上げることを特徴とする経編包帯の使用方法。
【請求項16】
伸縮性の経糸にて編目を作りながら伸縮性の挿入糸を経方向に編み込むとともに緯糸をコース方向に編み込んで形成された帯状の経編組織からなり、前記経糸はウーリー加工された非弾性糸を弾性繊維にカバーリングした糸であり、前記挿入糸はウーリー加工された非弾性糸を弾性繊維にカバーリングした糸であり、かつ、前記緯糸はウーリー加工された非弾性糸であり、経糸と挿入糸の伸長率が200%以上500%未満に設定されて、クロッシェ経編機にて編成され、幅寸法が50mm以上150mm以下に設定されている経編包帯を、ふくらはぎに螺旋状に巻いて使用することとし、筋肉のあるエリアは直前に周回した帯状の幅に対してその幅の一部が重なるように引っ張って巻き上げることを特徴とする経編包帯の使用方法。
【請求項17】
前記経編包帯は、前記幅寸法が50mm以上100mm以下に設定されているとともに長さが1000mm以上2500mm以下に設定されているか、または、前記幅寸法が100mm以上150mm以下に設定されているとともに長さが500mm以上1500mm以下に設定されていることを特徴とする請求項15または16記載の経編包帯の使用方法。
【請求項18】
前記経編包帯は、伸長に際しては、長手方向の伸長率が50%のときのパワーをN1とし、長手方向の伸長率が150%のときのパワーをN3としたときに、N3がN1の4.0倍未満であり、かつ、収縮に際しては、長手方向の伸長率が150%のときのパワーをN6とし、長手方向の伸長率が50%のときのパワーをN4としたときに、N6がN4の2.0倍以上であることを特徴とする請求項15から17のいずれか一項記載の経編包帯の使用方法。
【請求項19】
前記経編包帯は、前記挿入糸の番手が前記経糸の番手よりも大きいことを特徴とする請求項15から18のいずれか一項記載の経編包帯の使用方法。
【請求項20】
前記経編包帯は、前記非弾性糸がナイロンであり、前記弾性繊維がポリウレタンであることを特徴とする請求項15から19のいずれか一項記載の経編包帯の使用方法。
【請求項21】
前記経編包帯を、ふくらはぎに螺旋状に巻いて使用することとし、少なくとも3周目以後5周目までは直前に周回した帯状の幅に対して1/3以上2/3以下の幅が重なるように螺旋状に巻き上げ、その際に帯状の長手方向に伸長率が50%以上150%以下で引っ張って巻き上げることを特徴とする請求項15から20のいずれか一項記載の経編包帯の使用方法。
【請求項22】
前記経編包帯を、ふくらはぎに螺旋状に巻いて使用することとし、少なくとも3周目以後5周目までは直前に周回した帯状の幅に対して約半分の幅が重なるように螺旋状に巻き上げ、その際に帯状の長手方向に約2倍に引き伸ばして巻き上げることを特徴とする請求項15から20のいずれか一項記載の経編包帯の使用方法。
【請求項23】
前記経編包帯を、先端は足首から巻き始めてダブつきが出ない程度に少しだけ引っ張って周回させ、筋肉のあるエリアは螺旋状に引っ張って巻き上げ、巻き終わりはその引張り力を保ちながら膝下で巻いた帯の下に後端を挟み込んで留めることを特徴とする請求項15から22のいずれか一項記載の経編包帯の使用方法。
【請求項24】
前記経編包帯を、右の脚に対しては自分から見て右回りに巻き、左の脚に対しては自分から見て左回りに巻くことを特徴とする請求項15から23のいずれか一項記載の経編包帯の使用方法。
【請求項25】
前記経編包帯をふくらはぎに巻いた後、ミルキングアクションを行うことを特徴とする請求項15から24のいずれか一項記載の経編包帯の使用方法。
【請求項26】
前記経編包帯をふくらはぎに巻いた後、化粧水を含有させてから、ミルキングアクションを行うことを特徴とする請求項15から24のいずれか一項記載の経編包帯の使用方法。
【請求項27】
経糸にて編目を作りながら伸縮性の挿入糸を経方向に編み込むとともに緯糸をコース方向に編み込んで形成された帯状の経編組織からなり、少なくとも挿入糸はウーリー加工された非弾性糸を弾性繊維にカバーリングした糸であり、少なくとも挿入糸の伸長率が200%以上500%未満に設定されて、クロッシェ経編機にて編成され、幅寸法が50mm以上100mm以下に設定されているとともに長さが1000mm以上2500mm以下に設定されているか、または、幅寸法が100mm以上150mm以下に設定されているとともに長さが500mm以上1500mm以下に設定されており、少なくともその一部を重ねて、ふくらはぎに螺旋状に巻いて使用することを特徴とする経編包帯。
【請求項28】
伸縮性の経糸にて編目を作りながら伸縮性の挿入糸を経方向に編み込むとともに緯糸をコース方向に編み込んで形成された帯状の経編組織からなり、前記経糸はウーリー加工された非弾性糸を弾性繊維にカバーリングした糸であり、前記挿入糸はウーリー加工された非弾性糸を弾性繊維にカバーリングした糸であり、かつ、前記緯糸はウーリー加工された非弾性糸であり、経糸と挿入糸の伸長率が200%以上500%未満に設定されて、クロッシェ経編機にて編成され、幅寸法が50mm以上100mm以下に設定されているとともに長さが1000mm以上2500mm以下に設定されているか、または、幅寸法が100mm以上150mm以下に設定されているとともに長さが500mm以上1500mm以下に設定されており、少なくともその一部を重ねて、ふくらはぎに螺旋状に巻いて使用することを特徴とする経編包帯。
【請求項29】
伸長に際しては、長手方向の伸長率が50%のときのパワーをN1とし、長手方向の伸長率が150%のときのパワーをN3としたときに、N3がN1の4.0倍未満であり、かつ、収縮に際しては、長手方向の伸長率が150%のときのパワーをN6とし、長手方向の伸長率が50%のときのパワーをN4としたときに、N6がN4の2.0倍以上であることを特徴とする請求項27または28記載の経編包帯。
【請求項30】
前記非弾性糸がナイロンであり、前記弾性繊維がポリウレタンであることを特徴とする請求項27から29のいずれか一項記載の経編包帯。
【請求項31】
前記挿入糸の番手が前記経糸の番手よりも大きいことを特徴とする請求項27から30のいずれか一項記載の経編包帯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経編包帯及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
包帯(バンデージ)は、身体患部等の所定箇所に巻き付ける帯状の布帛である。旧来、包帯は綿の紡績糸が主に用いられている。綿の特徴としては、吸湿性がよいこと、肌触りがよいことなどが挙げられる。しかし、綿の紡績糸は、非伸縮性であることから一度巻いた包帯が緩み易いという難点があった。そこで、緩み防止のために、綿の紡績糸を製造する工程で芯部にスパンデックス繊維を挿入した伸縮性コア・スパンデックス糸が開発され、伸縮性の包帯として市販されるようになった。
経編生地は、長手方向の伸縮性に富んでいるとともに、吸湿性と通気性に優れていることから、包帯生地として好ましい。
【0003】
一方、下腿における、むくみを防止するものとして、着圧ストッキング(着圧タイツ)が知られている。市販の着圧ストッキングは、シームレス編成編機やトリコット編機などによって編成される。着圧ストッキングは、スパンデックス糸が混入されたサポートストッキングの一種であり、伸縮性が乏しい生地を最大限伸ばして着用するため、着用の際には圧迫感がある。そして、生地を最大限伸ばして着用するため生地に無理がかかり、すぐにへたって緩くなるなどの問題点がある。
【0004】
ここで、脚とは、上腿、膝、下腿、足までの範囲を指している。下腿とは、膝よりも下であり、足よりも上の部分を指しており、筋肉としてのふくらはぎがある。本願明細書では、筋肉であるか否かによらず、外観上、膝よりも下であり、足よりも上の部分を、ふくらはぎとして説明する。
【0005】
特許文献1は、伸縮性包帯に関し、ラッセル編機を用いた経編で鎖編みとするとの記述がある。特許文献1には、従来技術として、スパンデックス繊維をナイロンフィラメントまたはポリエステルフィラメントで被覆した伸縮性カバーリング糸や、綿の紡績糸を製造する工程で芯部にスパンデックス繊維を挿入した伸縮性コア・スパンデックス糸が用いられている、との記述がある(その段落0003)。
【0006】
特許文献2は、伸縮性包帯に関し、非弾性糸の弾性糸に対する比率が1:1〜12:1であり、20〜60%の伸張度で2.7〜9.3kPa(20〜70mmHg)の有効圧縮力を示しさらに100%伸張時の応力が60%伸長時の応力より大きくかつ両応力の差が0.5MPa以下である弾性包帯が記載されている(その請求項1)。特許文献2には、ラッセル編機を用いた経編で鎖編みとするとの記述がある。
【0007】
特許文献3は、経編生地に関し、伸縮性の経糸にて編目を作りながら伸縮性の挿入糸を経方向に編み込むとともに緯糸をコース方向に編み込んで形成された帯状の経編組織を有し、経糸と挿入糸がポリウレタン、ラテックス、エラストマー、天然ゴムのいずれかないしはいずれか2種以上を用いた弾性糸からなり、経糸と挿入糸の伸長率が200%以上500%未満に設定されてクロッシェ経編機にて編成され、長手方向の伸び率が50%のときのパワーをN1とし、長手方向の伸び率が150%のときのパワーをN2としたときに、N2がN1の3倍未満であることを特徴とする経編生地、が記載されている(その請求項6)。
【0008】
特許文献4は、経編生地に関し、非伸縮性の経糸にて編目を作りながら伸縮性の挿入糸を経方向に編み込むとともに緯糸をコース方向に編み込んで形成された帯状の経編組織を有し、前記経糸が、レーヨン、ポリエステル、ナイロン、アクリル、天然繊維のいずれか1種ないしはいずれか2種以上を用いた非弾性糸からなるとともに、前記挿入糸がポリウレタンを用いた弾性糸からなり、前記挿入糸の伸長率が200%以上500%未満に設定されてクロッシェ経編機にて編成され、長手方向の伸び率が50%のときのパワーをN1とし、長手方向の伸び率が100%のときのパワーをN2としたときに、N2がN1の2倍未満であるとともに、長手方向の伸び率が150%のときのパワーをN3としたときに、N3がN1の3倍未満であることを特徴とする経編生地、が記載されている(その請求項1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−080960号公報
【特許文献2】特許第3025007号公報
【特許文献3】特許第5038525号公報
【特許文献4】特許第5340464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
人間は、立ったままや座ったままの姿勢が長く続くと、足の筋ポンプの機能が低下し、そのために血液が心臓に向かって流れる血流が停滞する。また、血液自体の重量が静脈内にかかるため、静脈圧が上昇し、静脈が拡張した状態となり、静脈の拡張により、静脈内の血液が下肢に溜まりやすくなる。下肢で静脈還流が滞ると、下肢静脈内の圧力が上昇するため、血管内から血管外へ血液の血漿成分(水分)がしみ出て、細胞外に水分が貯留し、これが、下肢に浮腫(むくみ)が起こる原因となる。
【0011】
上述のように、下腿における、むくみを防止するものとして、着圧ストッキングが市販されているが、これら着圧ストッキングは、伸縮性が乏しい生地を最大限伸ばして着用するため、着用の際には圧迫感があり、そして、すぐに生地がへたって緩くなるという問題点がある。また、着圧ストッキングの着用範囲は上腿、膝、下腿、足首、足までの範囲をカバーするものが大半である。つまり、外観上、膝よりも下であり、足首よりも上の部分、すなわち本願におけるふくらはぎを効果的にケアするには不十分な点があった。
【0012】
特許文献1〜4記載の経編生地及び伸縮性包帯は、身体の圧迫は考慮されているが、ふくらはぎのむくみを防止するとの着想には至らなかった。
【0013】
そこで、本願発明者は、ふくらはぎに特化して適正な圧迫を与えることで、より効果的にむくみを防止することを目的とした、コンプレッション機能を有するストレッチバンデージとしての経編包帯が実用化できないか鋭意検討している。より具体的には、経編み生地の弾性包帯をふくらはぎに巻いた後、つま先の上下動で筋肉運動をすると、収縮期血圧と拡張期血圧が共に上昇し、特に、拡張期血圧の上昇が見られ、脈圧(「収縮期血圧」−「拡張期血圧」)の数値が低い状態となることが確認された。これは、末梢での血流が増進していることを示しており、脚のむくみを防止する効果があると認められる。
【0014】
上述の課題に鑑みて、本発明の目的は、優れた伸縮性を備え、着用が簡便であるとともに付け心地がよく、ふくらはぎに特化して適正な圧迫を与えることで、より効果的にむくみを防止する効果が得易い構成の経編包帯並びにその好適な使用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の経編包帯は、経糸にて編目を作りながら伸縮性の挿入糸を経方向に編み込むとともに緯糸をコース方向に編み込んで形成された帯状の経編組織からなり、少なくとも挿入糸の伸長率が200%以上500%未満に設定されて、クロッシェ経編機にて幅寸法が50mm以上150mm以下に編成され、ふくらはぎに巻いて使用することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、クロッシェ経編機を用いることで、ラッセル機やトリコット機に比べて挿入糸に高い張力をかけることが容易となるうえ、生地の両端には耳部が形成された形状で幅寸法が50mm以上150mm以下に編成され、ふくらはぎに巻いて使用するのに適したサイズとなる。
【0017】
前記経糸は、伸縮性の経糸とする場合と、非伸縮性の経糸とする場合がある。伸縮性の経糸とする場合には、経糸と挿入糸の伸長率が200%以上500%未満に設定されてクロッシェ経編機にて編成される。伸縮性の経糸とする場合は非伸縮性の経糸とする場合と比較して、より優れた伸縮性を備えることとなる。非伸縮性の経糸とする場合は伸縮性の経糸とする場合と比較して、より丈夫な生地となる。
【0018】
本発明の経編包帯は、伸縮性の経糸にて編目を作りながら伸縮性の挿入糸を経方向に編み込むとともに緯糸をコース方向に編み込んで形成された帯状の経編組織からなり、前記経糸はウーリー加工された非弾性糸を弾性繊維にカバーリングした糸であり、前記挿入糸はウーリー加工された非弾性糸を弾性繊維にカバーリングした糸であり、かつ、前記緯糸はウーリー加工された非弾性糸であり、経糸と挿入糸の伸長率が200%以上500%未満に設定されて、クロッシェ経編機にて幅寸法が50mm以上150mm以下に編成され、ふくらはぎに巻いて使用することを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、弾性繊維によって優れた伸縮性を有するとともに、ウーリー加工が施されている糸を用いることで付け心地がよく、保水性に優れているため肌のトリートメントのための化粧水などを必要量含有させることが容易となる。
【0020】
本発明は、前記幅寸法が50mm以上100mm以下に設定されているとともに長さが1000mm以上2500mm以下に設定されているか、または、前記幅寸法が100mm以上150mm以下に設定されているとともに長さが500mm以上1500mm以下に設定されていることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、成人が前記経編包帯を適度に引っ張ってふくらはぎに巻くと、丁度よいサイズとなるため、巻き余りや巻き不足が生じ難く、着用が簡便である。
【0022】
本発明は、伸長に際しては、長手方向の伸長率が50%のときのパワーをN1とし、長手方向の伸長率が150%のときのパワーをN3としたときに、N3がN1の4.0倍未満であり、かつ、収縮に際しては、長手方向の伸長率が150%のときのパワーをN6とし、長手方向の伸長率が50%のときのパワーをN4としたときに、N6がN4の2.0倍以上であることを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、大きな伸び率を得るためのパワーが小さくて済むうえ、ゴム紐やゴム生地のような優れたキックバック効果が得られるので、ふくらはぎに巻き易く、かつ、ふくらはぎに巻いたときに優れた圧迫効果が得られる。
【0024】
前記非弾性糸としては、ナイロン、ポリエステル、レーヨン、アクリルなどの合成繊維や、綿、リンネルなどの天然繊維が挙げられる。
【0025】
前記弾性繊維としては、ポリウレタン、ラテックス、エラストマー、天然ゴムが挙げられる。
【0026】
本発明は、前記非弾性糸がナイロンであり、前記弾性繊維がポリウレタンであることを特徴とする。
【0027】
本発明によれば、前記非弾性糸がナイロンであることで、吸水性と耐薬品性に優れた糸となる。また、前記弾性繊維がポリウレタンであることで、身体との馴染みがよく、アレルギー反応が生じ難い。前記ポリウレタンとしては親水性ポリウレタンが好ましい。親水性の材料を用いることで保水性がより高まるからである。
【0028】
本発明は、前記挿入糸の番手が前記経糸の番手よりも大きいことを特徴とする。
【0029】
本発明によれば、ウーリー加工された非弾性糸が弾性繊維にカバーリングされた糸において、挿入糸の番手を経糸の番手よりも大きくすることで、ウーリー加工された非弾性糸の割合をより一層高めることとなり、その結果、保水性を最大限まで高めた構成となる。
【0030】
本発明は、前記経編組織を形成した後、浸水、蒸気加熱、洗浄、乾燥を行い、その後、前記編組織の長手方向を所定間隔で押さえながら加熱して熱収縮させることが好ましい。本発明によれば、従来よりも伸び率が大きくて、かつ、大きな伸び率を得るためのパワーが小さくて済む経編生地を形成することが容易に出来る。
【0031】
本発明の経編包帯の使用方法は、前記経編包帯を、少なくともその一部を重ねて、ふくらはぎに螺旋状に巻いて使用することを特徴とする。
【0032】
本発明によれば、伸縮性に優れた生地を適度に伸ばして着用するため、着用し易く、ふくらはぎに特化して適正な圧迫を与えることで、より効果的にむくみを防止する効果が得易い。
【0033】
本発明は、ふくらはぎの筋肉のあるエリアは前記経編包帯を巻き上げることが好ましい。ふくらはぎから心臓に向けて血液が環流する静脈還流効果をより高めることとなるからである。
【0034】
本発明の経編包帯の使用方法は、前記経編包帯を、ふくらはぎに螺旋状に巻いて使用し、筋肉のあるエリアは直前に周回した帯状の幅に対してその幅の一部が重なるように引っ張って巻き上げることを特徴とする。
【0035】
本発明によれば、前記帯状の幅に対してその幅の一部が重なるように引っ張って巻き上げることで、巻くときの引っ張り力が少なくて済むとともに、重なり度合いと重なりの回数に応じて必要な圧迫力を与えることが容易となる。
【0036】
本発明の経編包帯の使用方法は、前記経編包帯を、ふくらはぎに螺旋状に巻いて使用し、少なくとも3周目以後5周目までは直前に周回した帯状の幅に対して1/3以上2/3以下の幅が重なるように螺旋状に巻き上げ、その際に帯状の長手方向に伸長率が50%以上150%以下で引っ張って巻き上げることを特徴とする。
【0037】
本発明によれば、設定条件の巻き方をすることによって、より効果的に必要な圧迫力を与えることとなり、窮屈感なく動き易いうえ、圧迫効果が長時間に亘って持続することとなる。
【0038】
本発明の経編包帯の使用方法は、前記経編包帯を、ふくらはぎに螺旋状に巻いて使用し、少なくとも3周目以後5周目までは直前に周回した帯状の幅に対して約半分の幅が重なるように螺旋状に巻き上げ、その際に帯状の長手方向に約2倍に引き伸ばして巻き上げることを特徴とする。
【0039】
本発明によれば、最良条件の巻き方をすることによって、最も効果的に必要な圧迫力を与えることとなり、窮屈感なく動き易いうえ、圧迫効果が長時間に亘って持続することとなる。
【0040】
本発明は、前記経編包帯を、先端は足首から巻き始めてダブつきが出ない程度に少しだけ引っ張って周回させ、筋肉のあるエリアは螺旋状に引っ張って巻き上げ、巻き終わりはその引張り力を保ちながら膝下で巻いた帯の下に後端を挟み込んで留めることを特徴とする。
【0041】
本発明によれば、前記経編包帯のみで、ふくらはぎへの着用が簡便であるとともに付け心地がよく、取付け金具等は不要である。例えば、前記経編包帯を取付けた状態で入浴することができ、プールに入ることもできる。
【0042】
本発明は、前記経編包帯を、右の脚に対しては自分から見て右回りに巻き、左の脚に対しては自分から見て左回りに巻くことを特徴とする。
【0043】
本発明によれば、血液の循環経路に沿って前記包帯をふくらはぎに巻き上げることとなり、ふくらはぎから心臓に向けて血液が環流する静脈還流効果をより高めることとなる。
【0044】
本発明は、前記経編包帯をふくらはぎに巻いた後、ミルキングアクションを行うことを特徴とする。
【0045】
本発明によれば、ふくらはぎから心臓に向けて血液が環流する静脈還流をより積極的に行うことで、美脚効果が期待できる。
【0046】
本発明は、前記経編包帯をふくらはぎに巻いた後、化粧水を含有させてから、ミルキングアクションを行うことを特徴とする。
【0047】
本発明によれば、ふくらはぎから心臓に向けて血液が環流する静脈還流をより積極的に行うとともに、化粧水の有効成分が身体に摂取されることで、美脚効果とともにリラクゼーション効果が期待できる。
【0048】
本発明は、ミルキングアクションを行った後、リンパマッサージを行うことが好ましい。
【0049】
本発明によれば、リンパ液の流れを活性化して人の身体にとって不必要な異物や老廃物を集め、排出するマッサージテクニックとしてのリンパマッサージ(リンパドレナージュ)を行うことで、血流改善によって身体が温まり、美脚効果とともに、より一層のリラクゼーション効果が期待できる。
【0050】
本発明の経編包帯の使用方法は、経糸にて編目を作りながら伸縮性の挿入糸を経方向に編み込むとともに緯糸をコース方向に編み込んで形成された帯状の経編組織からなり、少なくとも挿入糸はウーリー加工された非弾性糸を弾性繊維にカバーリングした糸であり、少なくとも挿入糸の伸長率が200%以上500%未満に設定されて、クロッシェ経編機にて編成され、幅寸法が50mm以上150mm以下に設定されている経編包帯を、ふくらはぎに螺旋状に巻いて使用することとし、筋肉のあるエリアは直前に周回した帯状の幅に対してその幅の一部が重なるように引っ張って巻き上げることを特徴とする。
【0051】
本発明によれば、弾性繊維によって優れた伸縮性を有するとともに、ウーリー加工が施されている糸を用いることで付け心地がよく、保水性に優れているため肌のトリートメントのための化粧水などを必要量含有させることが容易となるうえ、着用が簡便である。
【0052】
本発明の経編包帯の使用方法は、伸縮性の経糸にて編目を作りながら伸縮性の挿入糸を経方向に編み込むとともに緯糸をコース方向に編み込んで形成された帯状の経編組織からなり、前記経糸はウーリー加工された非弾性糸を弾性繊維にカバーリングした糸であり、前記挿入糸はウーリー加工された非弾性糸を弾性繊維にカバーリングした糸であり、かつ、前記緯糸はウーリー加工された非弾性糸であり、経糸と挿入糸の伸長率が200%以上500%未満に設定されて、クロッシェ経編機にて編成され、幅寸法が50mm以上150mm以下に設定されている経編包帯を、ふくらはぎに螺旋状に巻いて使用することとし、筋肉のあるエリアは直前に周回した帯状の幅に対してその幅の一部が重なるように引っ張って巻き上げることを特徴とする。
【0053】
本発明によれば、弾性繊維によって優れた伸縮性を有するとともに、ウーリー加工が施されている糸を用いることで付け心地がよく、保水性に優れているため肌のトリートメントのための化粧水などを必要量含有させることが容易となるうえ、着用が簡便である。尚且つ、前記帯状の幅に対してその幅の一部が重なるように引っ張って巻き上げることで、巻くときの引っ張り力が少なくて済むとともに、重なり度合いと重なりの回数に応じて必要な圧迫力を与えることが容易となる。
【0054】
本発明の経編包帯は、経糸にて編目を作りながら伸縮性の挿入糸を経方向に編み込むとともに緯糸をコース方向に編み込んで形成された帯状の経編組織からなり、少なくとも挿入糸はウーリー加工された非弾性糸を弾性繊維にカバーリングした糸であり、少なくとも挿入糸の伸長率が200%以上500%未満に設定されて、クロッシェ経編機にて編成され、幅寸法が50mm以上100mm以下に設定されているとともに長さが1000mm以上2500mm以下に設定されているか、または、幅寸法が100mm以上150mm以下に設定されているとともに長さが500mm以上1500mm以下に設定されており、少なくともその一部を重ねて、ふくらはぎに螺旋状に巻いて使用することを特徴とする。
【0055】
本発明によれば、優れた伸縮性を有するとともに、ウーリー加工が施されている糸を用いることで付け心地がよく、保水性に優れているため肌のトリートメントのための化粧水などを必要量含有させることが容易となる。尚且つ、成人が前記経編包帯を適度に引っ張ってふくらはぎに巻くと、丁度よいサイズとなるため、巻き余りや巻き不足が生じ難く、着用が簡便である。
【0056】
本発明の経編包帯は、伸縮性の経糸にて編目を作りながら伸縮性の挿入糸を経方向に編み込むとともに緯糸をコース方向に編み込んで形成された帯状の経編組織からなり、前記経糸はウーリー加工された非弾性糸を弾性繊維にカバーリングした糸であり、前記挿入糸はウーリー加工された非弾性糸を弾性繊維にカバーリングした糸であり、かつ、前記緯糸はウーリー加工された非弾性糸であり、経糸と挿入糸の伸長率が200%以上500%未満に設定されて、クロッシェ経編機にて編成され、幅寸法が50mm以上100mm以下に設定されているとともに長さが1000mm以上2500mm以下に設定されているか、または、幅寸法が100mm以上150mm以下に設定されているとともに長さが500mm以上1500mm以下に設定されており、少なくともその一部を重ねて、ふくらはぎに螺旋状に巻いて使用することを特徴とする経編包帯。
【0057】
本発明によれば、弾性繊維によって優れた伸縮性を有するとともに、ウーリー加工が施されている糸を用いることで付け心地がよく、保水性に優れているため肌のトリートメントのための化粧水などを必要量含有させることが容易となる。尚且つ、成人が前記経編包帯を適度に引っ張ってふくらはぎに巻くと、丁度よいサイズとなるため、巻き余りや巻き不足が生じ難く、着用が簡便である。
【発明の効果】
【0058】
本発明の経編包帯によれば、経糸及び挿入糸は弾性繊維によって優れた伸縮性を有する。尚且つ、経糸、挿入糸及び緯糸にはウーリー加工が施されているので優れた保水性を有する。そして、前記経編機としてクロッシェ経編機を用いることで、ラッセル機やトリコット機に比べて挿入糸に高い張力をかけることが容易となるうえ、生地の両端が耳部が形成された形状で製編される。よって、取り扱いが容易である。本発明によれば、優れた伸縮性を備え、着用が簡便であるとともに付け心地がよく、ふくらはぎに特化して適正な圧迫を与えることで、より効果的にむくみを防止する効果が得易い構成の経編包帯となる。
【0059】
本発明の経編包帯の使用方法によれば、優れた伸縮性と保水性を備えた前記経編包帯を、ふくらはぎに巻き上げることで必要な圧迫力を与えることができ、窮屈感なく動き易いうえ、圧迫効果が長時間に亘って持続することとなる。本発明によれば、ふくらはぎから心臓に向けて血液が環流する静脈還流をより積極的に行うとともに、化粧水の有効成分が身体に摂取されることで、美脚効果とともにリラクゼーション効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本発明の経編包帯の編組織を例示する組織図である。
図2】本発明の経編包帯を巻いた状態を示す図である。
図3】本発明の経編包帯の使用態様を示す図である。
図4】本発明の経編包帯の伸長率とパワーの関係を示すグラフ図である。
図5】本発明の経編包帯を重ねたときの伸長率とパワーの関係を示すグラフ図である。
図6】本発明の経編包帯をふくらはぎに巻くときの手順を示す図である。
図7】本発明の経編包帯をふくらはぎに巻いて、ミルキングアクションを行ったときの効果をサーモグラフで示す図であり、図7(a)は通常状態であり、図7(b)はミルキングアクションのみを行った比較例であり、図7(c)は本発明の経編包帯1を巻いてミルキングアクションを行った実施例である。
図8】本発明の経編包帯をふくらはぎに巻いて、ミルキングアクションを行ったときの効果を写真で示す図であり、図8(a)は通常状態であり、図8(b)はミルキングアクションのみを行った比較例であり、図8(c)は本発明の経編包帯1を巻いてミルキングアクションを行った実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、本発明を実施するための形態を図面を引用しながら説明する。
【0062】
(本発明の実施の形態)
図1は本発明の経編包帯の編組織を例示する組織図である。本実施形態の経編包帯1は帯状であり、その長手方向には高い伸縮性を示し、その幅方向にはその長手方向における伸縮性の1/10以下の低い伸縮性を示す。符号2は編目を形成した伸縮性の経糸であり、符号3は経方向に編み込まれた伸縮性の挿入糸であり、符号4はコース方向に編み込まれた緯糸であり、これらの糸によって帯状の経編組織が形成されている。
【0063】
本実施形態では、経糸2はウーリー加工された非弾性糸を弾性繊維にカバーリングした糸であり、挿入糸3はウーリー加工された非弾性糸を弾性繊維にカバーリングした糸であり、かつ、緯糸4はウーリー加工された非弾性糸である。より具体的には、前記非弾性糸がナイロンであり、前記弾性繊維がポリウレタンである。そして、経糸2と挿入糸3の伸長率が200%以上500%未満に設定されてクロッシェ経編機にて編成されている。これによって、長手方向への伸縮が一様となり、ほつれ難くストレッチ性の高い経編包帯1となっている。
【0064】
本実施形態では、挿入糸3の番手が経糸2の番手よりも大きくなっている。これは、ウーリー加工された非弾性糸の割合をより一層高めることで、保水性を最大限まで高めた構成とするためである。
【0065】
図2は、本実施形態の経編包帯1を巻いた状態を示す図である。本実施形態では生地がしっかりしているので既知の包帯よりも巻き易くなっている。
【0066】
本実施形態の経編包帯1の製造手順は、製経、製編、浸水と蒸気加熱、洗浄と乾燥、加熱、巻き取りの各工程からなる。前記製経は、製編の準備工程であり、経糸2と挿入糸3のそれぞれについて、芯糸の弾性糸を伸長した状態で側糸を巻き付ける。カバーリングする際の伸長率設定の目安は、経糸2が350%〜450%であり、挿入糸が400%〜600%である。使用する経糸2の番手(太さ)の目安は、芯糸が20〜40デニールであり、側糸が30〜100デニールである。また、使用する挿入糸3の番手(太さ)の目安は、芯糸が140〜1680デニールであり、側糸が30〜300デニールである。なお、カバーリングした糸を購入する場合もある。次に、上記糸の供給量のばらつきを軽減するため、複数本揃えてビームに巻き取るビーム製経を行なう。
【0067】
本実施形態では、経糸2と挿入糸3の伸長率がそれぞれ200%以上500%未満に設定されてクロッシェ経編機にて編成されている。クロッシェ経編機を用いることで、弾性糸である経糸2と挿入糸3の両方の糸に高い張力をかけることが容易となるからである。本実施形態では、経糸2と挿入糸3の伸長率をそれぞれ大きくしながら経編機に送り出すため、経糸2と挿入糸3の経路に、積極的送り手段をそれぞれ配置し、これら積極的送り手段によって経糸2と挿入糸3の送り量をそれぞれ一定に保ちながら経編機に送り出す構成となっている。尚且つ、挿入糸3の伸長率が経糸2の伸長率よりも大きく設定されている。
【0068】
前記製編工程で製編された経編生地は、水タンクにて浸水され、スチーミングボックスにて高温蒸気で蒸して生地を熱収縮させる。水タンク内の水温は10〜30℃の常温である。スチーミングボックス内の高温蒸気の温度は104〜106℃である。ここで、水タンク内の水を染色液とすれば、上記と同じ工程にて、染色された経編生地とすることができる。本実施形態によれば、カラー包帯とすることが容易である。経編包帯1の色は、白色、自然色、ローズピンク、チャコール、ヌードベージュー、その他任意のカラーとすることができる。
【0069】
前記浸水と蒸気加熱で蒸気加熱された経編生地は、複数のソーピングタンクにて洗浄液に浸漬されて、乾燥ドラムにて乾燥される。前記ソーピングは、経編生地を構成する糸に付着している油分や汚れを既知の洗浄液で洗浄する工程であり、それら洗浄液の温度は40〜60℃である。そして、洗浄された経編生地は、乾燥温度が100〜120℃の温度で乾燥ドラムによって乾燥される。
【0070】
前記洗浄と乾燥工程で洗浄され乾燥された経編生地は、タンブラーボックスにて加熱収縮され、自然冷却又は送風ファン等で強制冷却されて経編生地となる。前記タンブラーボックスは、トンネル形状で、加熱ヒータが備わったベルトコンベヤが配されている。前記タンブラーボックスの入口側には送り出し側ローラが配置されており、タンブラーボックスの出口側には巻き取り側ローラが配置されている。経編生地は、送り出し側ローラと巻き取り側ローラとで張力がほぼゼロの状態で狭持されてベルトコンベヤで加熱されながら送り出される。つまり、経編生地は、ある程度緩んだ状態を維持しつつ加熱収縮される。前記ベルトコンベヤによる加熱温度は190〜195℃であり、加熱時間は60〜90秒である。
【0071】
(実施例)
本実施形態の経編包帯1の実施例を以下に説明する。経糸2と挿入糸3として、ウーリー加工されたナイロン糸をポリウレタン繊維にカバーリングした糸を用いた。また、緯糸4として、ウーリー加工されたナイロン糸を用いた。そして、クロッシェ編機にて製編し、経編包帯1を作製した。
【0072】
そして、伸長時と収縮時のパワー試験を行なった。パワー試験は、一般財団法人日本繊維製品品質技術センターにて行い、試験方法は、定速伸長引張試験機を使用して、つかみ間隔10cmで全幅について、引張速度が30cm/分とした。結果を次の表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
図4は、表1に示す経編包帯1の伸長率とパワーの関係を示したグラフである。グラフの横軸は伸長率[%]であり、グラフの縦軸はパワー[N]である。グラフ中のヒステリシス曲線は、ピーク点を境目として、上側の線が伸長曲線であり、下側の線が収縮曲線(回復曲線)である。前記ピーク点は、試験機による設定伸長率が最大となる測定点であり、経編包帯1の最大伸長率は、前記ピーク点よりも高い位置にある。図4より、本発明に係る経編包帯1は、キックバック性能に優れた経編生地となっていることがわかる。
【0075】
表1と図4によれば、経編包帯1は、生地が伸長する際に、伸長率(長手方向の伸長率)が50%のときのパワーが5.95[N]であり、伸長率が100%のときのパワーが11.48[N]であるから、伸長率を2倍とするために、必要なパワーが1.93倍と小さい。また、伸長率(長手方向の伸長率)が50%のときのパワーが5.95[N]であり、伸長率が150%のときのパワーが18.63[N]であるから、伸長率を3倍とするのに対して、必要なパワーが3.13倍で済んでいる。すなわち、生地が伸長する際に、伸長率が50%のときのパワーをN1とし、伸長率が150%のときのパワーをN3としたときに、N3がN1の3.5倍未満となっている。そして、伸長率が50%のときのパワーをN1とし、伸長率が100%のときのパワーをN2としたときに、N2がN1の2倍未満となっている。
【0076】
表1と図4によれば、経編包帯1は、生地が伸長してから収縮する際に、伸長率(長手方向の伸長率)が100%のときのパワーが5.33[N]であり、伸長率が50%のときのパワーが3.40[N]であるから、伸長率が1/2となる際のパワーが1.57倍となり、1.5倍以上ある。また、伸長率が150%のときのパワーが8.38[N]であり、伸長率が50%のときのパワーが3.40[N]であるから、伸長率が1/3となる際のパワーが約2.46倍となり、2倍以上ある。生地が伸長してから収縮する際に、長手方向の伸長率が150%のときのパワーをN6とし、長手方向の伸長率が50%のときのパワーをN4としたときに、N6がN4の2倍以上である。そして、長手方向の伸長率が100%のときのパワーをN5とし、長手方向の伸長率が50%のときのパワーをN4としたときに、N5がN4の1.5倍以上である。よって、本発明に係る経編包帯1は、キックバック性能に優れた経編生地といえる。
【0077】
図5は、上記実施形態の経編包帯1において、幅寸法が100mmに編成された包帯を重ねたときの伸長率とパワーの関係を示すグラフ図である。グラフの横軸は伸長率[%]であり、グラフの縦軸はパワー[N]である。グラフ中のヒステリシス曲線は、ピーク点を境目として、上側の線が伸長曲線であり、下側の線が収縮曲線(回復曲線)である。図5に示す通り、例えば、伸長率100%において、1枚(1重巻き)のときのパワーは約8.0[N]であり、2枚(2重巻き)のときのパワーは約16.0[N]であり、3枚(3重巻き)のときのパワーは約24.0[N]である。また例えば、伸長率150%において、1枚(1重巻き)のときのパワーは約18.0[N]であり、2枚(2重巻き)のときのパワーは約36.0[N]であり、3枚(3重巻き)のときのパワーは約54.0[N]である。図5からも明らかなように、経編包帯1を重ねて巻くと、巻くときは少ないパワーで巻くことができ、経編包帯1の重なり枚数や重なり度合いに応じて大きなパワーで圧迫を与えることができる。そして、経編包帯1の重なり枚数や重なり度合いを調整することで、ふくらはぎに適正な圧迫を与えることができる。
【0078】
(使用例1)
本実施形態の経編包帯1の使用例を図6を参照して以下に説明する。本使用例では、前記経編包帯1を、身体100のふくらはぎに螺旋状に巻き上げる。
【0079】
先ず足首の外側から巻き始める(図6(a))。巻き始める位置は、足首の外側のくるぶしの指3本上方が好ましい。図6(a)に示すように、足首の後ろ側から経編包帯1を通して、前側に巻いて行く。そして、1周目、2周目は足首の同じ位置で経編包帯1を転がしながら重ねる(図6(b))。経編包帯1が肌に密着するように、経編包帯1の下側(足先側)に浮きやダブつきがでない程度の弱い力で少しだけ引っ張ることが好ましい(図6(b))。次に、3周目は、2周目に対して半分重なるように上方へ移動させながら巻く(図6(c))。筋肉のないエリアは経編包帯1を優しく巻く感覚で巻き付けることが好ましい。
【0080】
次に、ふくらはぎに対しては、経編包帯1を引っ張り、そのままの状態でふくらはぎに押し当てるように巻く(図6(d))。左脚に巻く場合は、膝裏から右手で経編包帯1を持って引っ張ると、張力を保ったままの状態でふくらはぎに巻き易くなり好ましい(図6(d))。そして、ふくらはぎに巻いた後、肌に一度押さえてから反対の手に持ち替えて巻く(図6(e))。そのまま、5周、6周と同じ要領で螺旋状に巻き上げる(図6(f))。経編包帯1が幅の半分ずつが重なるように、少しずつ上方に巻き上げることが好ましい。
【0081】
膝まで残り10〜15cmほどになったら、経編包帯1の先(後端)をタテに山折りする(図6(g))。このとき、経編包帯1が緩まないように空いている方の手で経編包帯1を上から軽く押さえる(図6(g))。そして、山折りにした先(後端)を斜め上方向に引っ張る(図6(h))。張力を保ちながら作業する。そのまま山折りにした先(後端)を巻いた経編包帯1の下に挟み込む(図6(i))。張力を保ちながら挟み込む。山折りにした先(後端)が挟み込んだ包帯から少し頭がでるくらいの十分な長さで挟むと外れ難いので好ましい。最後にふくらはぎ全体を両手でまんべんなく握るようにして巻かれた経編包帯1全体の張力を均一にする。
【0082】
図6に示す通り、経編包帯1をふくらはぎに巻いて、その後、肌のトリートメントのための化粧水を経編包帯1に含有させて、ミルキングアクションを行うとより効果的である。
本発明によれば、ふくらはぎから心臓に向けて血液が環流する静脈還流をより積極的に行うとともに、化粧水の有効成分が身体に摂取されることで、美脚効果とともにリラクゼーション効果が期待できる。
【0083】
(使用例2)
本実施形態の経編包帯1の使用例を表2、図7及び図8を参照して以下に説明する。本使用例では、前記経編包帯1を、身体100のふくらはぎに螺旋状に巻き上げて、ミルキングアクションを行った。ミルキングアクションは、両手で30回、左右のふくらはぎを揉む作業を行った。
【0084】
そして、市販の血圧計にて、血圧と心拍数を測定した。また、サーモグラフ測定機にて上半身の温度分布状態を観察した。結果を次の表2に示す。
【0085】
【表2】
【0086】
表2から、通常(基準値)に対して、ミルキングアクションのみを行なった場合、血圧の上値(収縮期血圧)、及び血圧の下値(収縮期血圧)はいずれも数値の上昇が見られた。そして、本発明の経編包帯1をふくらはぎに巻いて、ミルキングアクションを行うことで、血圧の上値(収縮期血圧)、及び血圧の下値(収縮期血圧)は、さらに数値の上昇が見られた。このことから、本発明によれば、ミルキングアクションのみを行なった場合と比較して、さらに血液の循環を良くする効果があるといえる。そして、本発明の経編包帯1をふくらはぎに巻いて、ミルキングアクションを行うことを3回繰り返すと、血圧の上値(収縮期血圧)、血圧の下値(収縮期血圧)、及び心拍数は、いずれも元の数値(基準値)に近づきつつあり、血液の循環が良くなってリラックスした状態になっていることがわかる。
【0087】
図7は、本発明の経編包帯1をふくらはぎに巻いて、ミルキングアクションを行ったときの効果をサーモグラフで示す図であり、図7(a)は通常状態であり、図7(b)はミルキングアクションのみを行った比較例であり、図7(c)は本発明の経編包帯1を巻いてミルキングアクションを行った実施例である。
図8は、本発明の経編包帯1をふくらはぎに巻いて、ミルキングアクションを行ったときの効果を写真で示す図であり、図8(a)は通常状態であり、図8(b)はミルキングアクションのみを行った比較例であり、図8(c)は本発明の経編包帯1を巻いてミルキングアクションを行った実施例である。
【0088】
図7のサーモグラフから、本発明によれば、ミルキングアクションのみを行なった場合と比較して、さらに血液の循環が良くなり、上半身が温まっていることがわかる。
【0089】
図8の写真から、本発明によれば、ミルキングアクションのみを行なった場合と比較して、さらに血液の循環が良くなり、足の血行が良くなって肌が明るい色になっていることがわかる。
【0090】
そして本発明では、ミルキングアクションを行った後、リンパマッサージを行うことが好ましい。
本発明によれば、リンパ液の流れを活性化して人の身体にとって不必要な異物や老廃物を集め、排出するマッサージテクニックとしてのリンパマッサージ(リンパドレナージュ)を行うことで、血流改善によって身体が温まり、美脚効果とともに、より一層のリラクゼーション効果が期待できる。
【0091】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。前記経編包帯1を、水溶性の薬液に浸して使用することもできる。
【0092】
前記経編包帯1は、前記経糸2と挿入糸3とは同じ材質の糸でもよいし、異なる材質、径、色合いの糸とすることができる。前記挿入糸3と緯糸4との位置関係は実施例に限定されない。経編の編み方は、上述の実施例に限定されず、いわゆるシングル・デンピー、ヴァンダイク、シングル・コードが適用できる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0093】
1 本発明の経編包帯、
2 経糸、
3 挿入糸、
4 緯糸、
100 身体(ふくらはぎ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8