【実施例1】
【0025】
以下に、本発明の第1実施例である非接触式浮上搬送装置100について、
図1乃至
図5に基づいて説明する。
ここで、
図1は、本発明の第1実施例の非接触式浮上搬送装置100を示す斜視図であり、
図2は、
図1の符号2の箇所の旋回流形成部130Aを示す拡大斜視図であり、
図3は、本発明の旋回流形成部130A、130Bによる旋回流Rおよび下方へ引き寄せようとする力Dが発生する原理を示す図であり、
図4は、参考として気体受入凹部を設けていない構成の旋回流作用力を示す参考図であり、
図5は、
図1の符号5から視た拡大平面図であって第1実施例において搬送力が発生する原理を示す図である。
【0026】
本発明の第1実施例である非接触式浮上搬送装置100は、
図1乃至
図5に示すように、気体からなる旋回流Rを発生させる旋回流形成部130A、130Bが、例えば、0.3mm程度のディスプレイ用ガラス基板からなる薄板状の被搬送物Cを搬送する平坦な搬送路面111に配設され、旋回流形成部130A、130Bから順次溢出してくる旋回流Rを被搬送物Cの底面と搬送路面111との間隙に介在させて被搬送物Cを浮上させるとともに旋回流Rの旋回力によって生じる搬送力で被搬送物Cを搬送するように構成されている。
具体的に、非接触式浮上搬送装置100は、ベース部110と、このベース部110と支持する機台フレーム120とを備えている。
そして、ベース部110における被搬送物Cと対向する搬送路面111には、樹脂成型加工してなる鍔付きの円形カップ状の旋回流形成部130A、130Bが、搬送路面111の路幅方向Sで左右相互に離間して一対、すなわち、一組のみ配設されている。
本実施例では、旋回流形成部130A、130Bが、搬送路面下に設けられて搬送路面上に開口する有底の案内凹所131の周側壁131aと、この周側壁131aの接線方向から周側壁131aで囲繞される旋回形成空間領域内へ気体としての空気を噴射して旋回流Rを発生させる気体噴射口132とを備えている。
図2に示すように、旋回流形成部130A(130B)は、空気を旋回方向へ案内する案内凹所131と、この案内凹所131を囲繞する円筒状の周側壁131aに沿って空気をそれぞれ噴射する2つの気体噴射口132とを有している。
本実施例の場合には、これら2つの気体噴射口132が、案内凹所131を囲繞する円筒状の周側壁131aを2分する位置に設けられており、旋回流Rを確実かつ安定して発生させるようになっている。
【0027】
そして、このように構成された旋回流形成部130A、130Bが、旋回流Rを搬送路面111と被搬送物Cとの間に溢出することにより、被搬送物Cを、例えば0.05mm程度浮上させている。
ここで、旋回流形成部130Aの構造と、旋回流形成部130Bの構造との関係は、旋回流形成部130Aおよび130B間のT軸方向(被搬送物Cの搬送方向)の仮想中心線を基準とした線対称の関係であり、旋回流形成部130A、130Bでそれぞれ発生する旋回流Ra、Rbの旋回方向(
図4、
図5参照)が、搬送路面111の路幅方向Sで相互に逆方向に設定されている。
なお、本実施例では、旋回流形成部130A、130Bを構成する樹脂成型加工してなる鍔付きの円形カップ状の部材は、ベース部110と別部材で形成されてベース部110に嵌め込まれているが、ベース部110自体に一体的に形成されていてもよい。
【0028】
さらに、気体受入凹部140は、左右一対の旋回流形成部130A、130Bの相互間で搬送方向Tに延在する気体合流領域A内に設けられている。
そして、気体受入凹部140は、左右一対の旋回流形成部130A、130Bからそれぞれ旋回流Ra、Rbとして溢出して合流する空気を受け入れるために、搬送方向Tに向かって細長の矩形状凹部を呈するように構成されている。
また、機台フレーム120は、水平方向に対するベース部110の姿勢を調整自在に設けられ、本実施例では、ベース部110の搬送路面111の設置姿勢が水平となるように調整されている。
【0029】
ここで、先ず、
図3を用いて、旋回流形成部130A(130B)から溢出される旋回流R、および、被搬送物Cを下方の旋回流形成部130A(130B)側へ引き寄せようとする力Dが発生する原理について説明する。
前述した旋回流形成部130A(130B)の気体噴射口132から空気が噴射されると、噴射された空気が案内凹所131の周側壁131aに沿って流れ、案内凹所131内で旋回流Rが連続的に継続して形成される。
そして、空気が、気体噴射口132から順次噴射されるので、案内凹所131内から連続的に発生してくる旋回流Rは、被搬送物C側に向かって上方へ移動し溢出する。
この際、旋回流Rが案内凹所131の周側壁131aから上方へ移動し、案内凹所131の周側壁131aから離れるため、溢出した旋回流Rの遠心力により旋回流Rの旋回半径が旋回流Rの旋回中心を基準に拡大する。
つまり、旋回流Rが放射方向へ広がりながら旋回する。
そして、旋回流Rの旋回中心近傍の空気が放射方向へ引っ張られるようにして、旋回流Rの旋回中心近傍の気圧が下がり旋回流Rの旋回部分に生じる気圧と比べて相対的に低くなる。
そのため、被搬送物Cに対して負圧が作用して被搬送物Cを下方の旋回流形成部130A(130B)側へ吸引して引き寄せようとする力Dが発生する。
この引き寄せようとする力Dと被搬送物Cを溢出した旋回流Rで浮上させようとする力とが釣り合って、被搬送物の浮上位置に被搬送物Cが保持される。
【0030】
続いて、本発明についての理解を容易にするために、
図4を用いて、参考として気体受入凹部を設けていない構成の旋回流作用力を説明する。
図4の参考図では、旋回流形成部130A、130Bが、搬送路面111の路幅方向Sで左右相互に離間して一対配設されている。
なお、U軸が示すのは、浮上方向(鉛直方向)である。
さらに、旋回流形成部130A、130Bでそれぞれ発生する旋回流Ra、Rbの旋回方向が、搬送路面111の路幅方向Sで相互に逆方向に設定されている。
【0031】
ここで、
図4中の左側の旋回流形成部130Aの旋回流Raが案内凹所131外に出た際、T軸矢印の方向と逆方向に作用する旋回流Raの旋回流作用力をfa1、T軸矢印の方向に作用する旋回流Raの旋回流作用力をfa2とする。
同様に、
図4中の右側の旋回流形成部130Bの旋回流Rbが案内凹所131外に出た際、T軸矢印の方向と逆方向に作用する旋回流Rbの旋回流作用力をfb1、T軸矢印の方向に作用する旋回流Rbの旋回流作用力をfb2とする。
そして、fa1、fb1の和であり、搬送方向Tの後方域(T軸矢印の方向と逆方向域)へ作用する旋回流作用力をF1とし、fa2、fb2の和であり、搬送方向Tの前方域(T軸矢印の方向域)へ作用する旋回流作用力をF2とする。
【0032】
このとき、配置された左右一対の旋回流形成部130A、130Bに挟まれた搬送路面111の搬送方向Tに沿った中央部分側111aでは、双方の旋回流Ra、Rbが逃げ場を失って相互に干渉したり乱れたりしてそれぞれ旋回流Ra、Rbの旋回力、すなわち、旋回流作用力fa1、fb1が減殺される。
他方、左右一対の旋回流形成部130A、130Bにおける路幅方向の両外側111bでは、双方の旋回流Ra、Rbが相互に干渉したりしないため、旋回流Ra、Rbの旋回力、すなわち、旋回流作用力fa2、fb2が減殺されない。
その結果、左右一対の旋回流形成部130A、130Bの相互間で搬送方向Tの後方域(T軸矢印の方向と逆方向)へ作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F1に対して、左右一対の旋回流形成部130A、130Bの路幅方向の両外側で搬送方向Tの前方域(T軸矢印の方向)へ作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F2が相対的に大きくなる。
さらに、被搬送物Cを吸引して下方の旋回流形成部130A、130B側へそれぞれ引き寄せようとする力Dに起因して生じる面摩擦によって被搬送物Cに伝わる力は、搬送方向Tの後方域(T軸矢印の方向と逆方向)へ向かって作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F1よりも搬送方向Tの前方域(T軸矢印の方向)へ向かって作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F2の方が大きくなる。
【0033】
したがって、搬送力を受けて被搬送物Cは、T軸の矢印方向へ移動する。
つまり、左右一対の旋回流形成部130A、130Bが、旋回流Ra、Rbの旋回力を活用して被搬送物Cを非接触で浮上させつつ搬送する。
この際、ただ単に、搬送する方向へ空気の力を被搬送物Cに対して付加しているのではなく、上述した負圧による引き寄せようとする力Dが被搬送物Cに対して作用した状態で、搬送する方向への旋回流作用力F1、F2を付加しているため、旋回流作用力F1、F2の相対的な差として搬送力が被搬送物Cへ確実に伝えられる。
【0034】
続いて、
図5を用いて、本発明の第1実施例において搬送力が発生する原理について説明する。
ここで、
図4の参考図と同様、
図5中の左側の旋回流形成部130Aの旋回流Raが案内凹所131外に出た際、T軸矢印の方向と逆方向に作用する旋回流Raの旋回流作用力をfa1、T軸矢印の方向に作用する旋回流Raの旋回流作用力をfa2とする。
また、
図5中の右側の旋回流形成部130Bの旋回流Rbが案内凹所131外に出た際、T軸矢印の方向と逆方向に作用する旋回流Rbの旋回流作用力をfb1、T軸矢印の方向に作用する旋回流Rbの旋回流作用力をfb2とする。
そして、fa1、fb1の和であり、搬送方向Tの前方域(T軸矢印の方向と逆方向域)へ作用する旋回流作用力をF1とし、fa2、fb2の和であり、搬送方向Tの後方域(T軸矢印の方向域)へ作用する旋回流作用力をF2とする。
【0035】
このとき、左右一対の旋回流形成部130A、130Bの路幅方向外側111bにおける旋回流Ra、Rbは放射方向へ分散されて旋回流Ra、Rbの旋回流作用力fa2、fb2が小さくなる。
他方、左右一対の旋回流形成部130A、130Bの間で旋回流Ra、Rbが気体受入凹部140に流れ込んで搬送方向Tの前方域(T軸矢印の方向と逆方向域)への流路が形成されて気体受入凹部140の大きさによっては気体受入凹部140における旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F1が路幅方向Sで隣り合う二つの旋回流形成部130A、130Bの路幅方向外側111bにおける旋回流Rの旋回流作用力F2より大きな関係となる。
【0036】
さらに、引き寄せようとする力Dに起因して生じる面摩擦によって被搬送物Cに伝わる力は搬送方向Tの後方域(T軸矢印の方向域)へ向かって作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F2よりも搬送方向Tの前方域(T軸矢印の方向と逆方向域)へ向かって作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F1の方が大きくなる。
したがって、搬送力を受けて被搬送物Cは、T軸矢印の方向と逆方向へ移動する。
つまり、気体受入凹部140を設けていない構成(
図4参照)と比べて搬送時の移動方向が逆向きの関係となる。
【0037】
なお、技術的思想として、搬送時の移動方向が逆向きの関係となるためには、気体受入凹部140の大きさ、特に、搬送方向Tから視た断面積を、ある程度大きくする必要がある。
本実施例の気体受入凹部140の大きさは、この関係を満たす十分な大きさであるものとする。
つまり、気体受入凹部140を設けても必ず搬送時の移動方向が
図4の参考図の例と逆向きの関係になるわけではなく、例えば、搬送方向Tから視た断面積を徐々に大きくすると、旋回流作用力F1と旋回流作用力F2とが釣り合うときがある。
そして、釣り合ったときよりも搬送方向Tから視た断面積が大きければ、
図4の参考図の例と逆向きの関係になる。
【0038】
また、搬送路面111より低位置に存在する気体受入凹部140の底面部分が、搬送路面111の裏面側に向けて開放されているように構成してもよい。
この場合、気体受入凹部140に入ってきた旋回流Ra、Rbの空気の十分な逃げ場ができて空気の流れが妨げられない。
つまり、気体受入凹部140が開放されていないときと比べて搬送方向Tの前方域(T軸矢印の方向と逆方向域)へ向かって作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F1が大きくなり搬送力が増加する。
【0039】
また、旋回流作用力F1と旋回流作用力F2とが釣り合うときの搬送方向Tから視た気体受入凹部(140)の断面積よりも小さい場合であっても、気体受入凹部140の搬送路面111より底側が開放されていることにより、旋回流作用力F1と旋回流作用力F2とが釣り合うときの搬送方向Tから視た気体受入凹部(140)の断面積よりも大きい場合と効果が得られる。
【0040】
さらに、本実施例では、旋回流形成部130A、130Bから搬送路面111と被搬送物Cとの間隙に溢出して過剰に滞留する空気を逃す気体解放孔150が、搬送路面111に分散して配設されている。
これにより、気体解放孔150が過剰に滞留する空気の逃げ場となり、旋回流形成部130A、130Bから順次溢出してくる空気の流れが妨げられない。
つまり、気体解放孔150が設けられていないときと比べて搬送方向Tの前方域および後方域へ向かって作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力を大きくするとともにその相対的な差も大きくして搬送力を増加させる。
【0041】
また、本実施例では、旋回流形成部130A、130Bが、空気の噴射力を択一的に選択可能な別部品として搬送路面111に着脱自在に取り付けられている。
これにより、旋回流形成部130A、130Bを付け替えるだけで旋回流Rによる旋回力の強さが変更可能となる。
例えば、気体噴射口132の孔の大きさが変わることにより旋回流Rによる旋回力の強さが変わり、被搬送物Cの搬送速度を自在に調整することが可能となる。
【0042】
このようにして得られた本発明の第1実施例である非接触式浮上搬送装置100は、旋回流形成部130A、130Bが、搬送路面111の路幅方向Sで左右相互に離間して一対配設され、旋回流形成部130A、130Bでそれぞれ発生する旋回流Ra、Rbの旋回方向が、搬送路面111の路幅方向Sで相互に逆方向に設定され、左右一対の旋回流形成部130A、130Bからそれぞれ旋回流Ra、Rbとして溢出して合流する空気を受け入れる気体受入凹部140が、左右一対の旋回流形成部130A、130Bの相互間で搬送方向Tに延在する気体合流領域A内に設けられていることにより、一対の旋回流形成部130A、130Bが、旋回流Ra、Rbの旋回力を活用して接触式の駆動機構を付設することなく簡便な装置構成で、被搬送物Cを非接触状態で浮上させながら円滑に搬送することができ、搬送方向Tの前方域(T軸矢印の方向と逆方向)への搬送力(F1とF2との相対的な差)を調整することができる。
【0043】
また、旋回流形成部130A、130Bが、搬送路面下に設けられて搬送路面上に開口する有底の周側壁131aと、この周側壁131aの接線方向から周側壁131aで囲繞される旋回形成空間領域内へ空気を噴射して旋回流Ra、Rbを発生させる気体噴射口132とを備えていることにより、モータなどの回転構造を不要として非接触式浮上搬送装置100を簡素化することができる。
【0044】
さらに、本実施例では、搬送路面111より低位置に存在する気体受入凹部140の底面部分が、搬送路面111の裏面側に向けて開放されていることにより、気体受入凹部140が開放されていないときと比べて搬送方向Tの前方域(T軸矢印の方向と逆方向域)へ向かって作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F1を大きくして搬送力を増加させることができる。
【0045】
さらに、旋回流形成部130A、130Bから搬送路面111と被搬送物Cとの間隙に溢出して過剰に滞留する空気を逃す気体解放孔150が、搬送路面111に分散して配設されていることにより、気体解放孔150が設けられていないときと比べて搬送方向Tの前方域および後方域へ向かって作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F1、F2を大きくするとともにその相対的な差も大きくして搬送力を増加させることができる。
【0046】
また、旋回流形成部130A、130Bが、空気の噴射力を択一的に選択可能な別部品として搬送路面111に着脱自在に取り付けられていることにより、バルブなどの噴射力調整手段を用いることなく搬送方向Tへの旋回流作用力F1、F2を調整して搬送力を調整することができるなど、その効果は甚大である。
【実施例3】
【0050】
続いて、本発明の第3実施例である非接触式浮上搬送装置300について、
図8(A)および
図8(B)に基づいて説明する。
ここで、
図8(A)は、本発明の第3実施例において気体受入凹部340の搬送路面311より底側が閉塞しているときに搬送力が発生する原理を示す図であり、
図8(B)は、気体受入凹部340の搬送路面311より底側が開放しているときに搬送力が発生する原理を示す図である。
【0051】
第3実施例の非接触式浮上搬送装置300は、第1実施例の非接触式浮上搬送装置100の搬送路面111より低位置に存在する気体受入凹部140の底面部分を開閉自在に形成したものであり、多くの要素について第1実施例の非接触式浮上搬送装置100と共通するので、共通する事項については詳しい説明を省略し、下2桁が共通する300番台の符号を付すのみとする。
【0052】
本発明の第3実施例である非接触式浮上搬送装置300では、
図8(A)および
図8(B)に示すように、左右一対の旋回流形成部330A、330Bからそれぞれ旋回流Ra、Rbとして溢出して合流する空気を受け入れる気体受入凹部340が、左右一対の旋回流形成部330A、330Bの相互間で搬送方向Tに延在する気体合流領域A内に設けられている。
【0053】
そして、気体受入凹部340の大きさ、特に、搬送方向Tから視た断面積は、旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F1と旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F2とが釣り合うときの搬送方向Tから視た気体受入凹部(340)の断面積よりも小さく設けられている。
図8(A)に示すように、開閉切り替え手段360によって搬送路面311より低位置に存在する気体受入凹部340の底面部分が閉塞された状態になっている。
【0054】
このとき、左右一対の旋回流形成部330A、330Bの間の中央部分側311aでは、旋回流Ra、Rbが気体受入凹部340に流れ込んでT軸の矢印と逆方向への流路が形成されるが気体受入凹部340の大きさが十分ではないため、左右一対の旋回流形成部330A、330Bの間の中央部分側311aでは旋回流Ra、Rbが逃げ場を失って旋回流Rの旋回流作用力fa1、fb1が減殺される。
他方、左右一対の旋回流形成部330A、330Bの路幅方向外側311bでは、双方の旋回流Ra、Rbが相互に干渉したりしないため、旋回流Ra、Rbの旋回流作用力fa2、fb2は減殺されない。
【0055】
そして、左右一対の旋回流形成部330A、330Bの間の中央部分側311aでT軸の矢印と逆方向へ作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F1に対して相対的に左右一対の旋回流形成部330A、330Bの路幅方向外側311bでT軸の矢印方向へ作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F2が大きな関係となる。
さらに、前述した引き寄せようとする力Dに起因して生じる面摩擦によって被搬送物Cに伝わる力はT軸の矢印と逆方向へ向かって作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F1よりもT軸の矢印方向へ向かって作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F2の方が大きくなる。
したがって、搬送力を受けて被搬送物Cは、T軸の矢印方向へ移動する。
【0056】
そして、
図8(B)に示すように、開閉切り替え手段360によって搬送路面311より低位置に存在する気体受入凹部340の底面部分が開放された状態に切り替えられる。
すると、左右一対の旋回流形成部330A、330Bの間の中央部分側311aでは、気体受入凹部340に入ってきた旋回流Ra、Rbの空気の十分な逃げ場ができて空気の流れが妨げられなくなり、気体受入凹部340が閉塞されたときと比べて、T軸の矢印と逆方向へ向かって作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F1が大きくなり搬送力が増加する。
つまり、旋回流Ra、Rbの旋回流作用力fa1、fb1が減殺されない、または、減殺される程度が小さい。
【0057】
そして、左右一対の旋回流形成部330A、330Bの間の中央部分側311aの気体受入凹部340における旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F1が左右一対の旋回流形成部330A、330Bの路幅方向外側311bにおける旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F2より大きな関係となる。
さらに、前述した引き寄せようとする力Dに起因して生じる面摩擦によって被搬送物Cに伝わる力はT軸の矢印方向へ向かって作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F2よりもT軸の矢印と逆方向へ向かって作用する旋回流Ra、Rbの旋回流作用力F1の方が大きくなる。
したがって、搬送力を受けて被搬送物Cは、T軸の矢印と逆方向へ移動する。
【0058】
このようにして得られた本発明の第3実施例である非接触式浮上搬送装置300は、搬送路面311より低位置に存在する気体受入凹部340の底面部分が、開閉自在に形成されていることにより、被搬送物Cの搬送時の移動方向を切り替えることができるなど、その効果は甚大である。