【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0055】
(評価1)
油水界面張力は、水中における油の凝集力を示す指標の1つとなり得る。そこで、種々の油(流動パラフィン、スクワラン、パルミチン酸エチルヘキシル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリエチルヘキサノイン、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジメチコン、ホホバ油、オリブ油及びイソステアリルアルコール)について、油水界面張力の測定を行った。なお、油水界面張力は、20℃にて、DropMaster(協和界面化学(株)製)を用いて測定した。その結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示すとおり、炭化水素油である流動パラフィン及びスクワラン、エステル油であるパルミチン酸エチルヘキシル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリエチルヘキサノイン及びジカプリン酸ネオペンチルグリコール、シリコーン油であるジメチコン、ロウ類であるホホバ油は油水界面張力が大きいことが確認された。一方、油脂類であるオリブ油及び高級アルコールであるイソステアリルアルコールは油水界面張力が小さいことが確認された。
【0058】
(評価2)
実施例1〜5、比較例1のクレンジング組成物の調製を行い、各クレンジング組成物について、メイク汚れに対するなじみと、落とし具合を確認するために、汚れ除去性の評価を行った。また、素肌接触、口紅接触の評価も行った。
【0059】
実施例1のクレンジング組成物の調製について、まず、ヒドロキシプロピルメチルセルロース誘導体の溶液から重縮合ポリマー粒子の分散液を調製した。そこに、流動パラフィン、1,3−ブチレングリコール及びパラオキシ安息香酸エステルを添加し、攪拌して、表2に示す処方のとおりに、クレンジング組成物を調製した。なお、粘度による影響をなくすため、カルボキシビニルポリマーと水酸化ナトリウムを適量添加し、実施例1と、後述する実施例2〜5及び比較例1の粘度が同程度になるように調整した。なお、表2中の数値は、組成物全体の質量に対する各成分の質量%を示す。
【0060】
【表2】
【0061】
実施例2〜5、比較例1については、添加する油をそれぞれ表2で示す油に変更し、最終粘度を統一するためカルボキシビニルポリマーと水酸化ナトリウムを適量添加し、粘度を調整した以外は、実施例1と同様の条件でクレンジング組成物を調製した。実施例1〜5、比較例1の平均粒径は、攪拌効率を調整することにより表3に記載されるとおりに調整した。
【0062】
汚れ除去性の評価は以下の方法で行った。
【0063】
まず、前腕内側にメイクを塗布し、クレンジング組成物をスポイトによりメイクに接触させ、5秒後に延展性(なじみやすさ)を確認した。その後、15分間静置させ、キムワイプにて拭き取り、水洗いにて除去した。
【0064】
「素肌接触」の評価は、以下の基準で行った。
【0065】
− :クレンジング組成物が皮溝(皮膚の表面にある細かい溝)に入り込みにくい。
+ 〜 +++++ :クレンジング組成物が皮溝に入り込み易い。
【0066】
クレンジング組成物が皮溝に入り込み易い場合、入り込み易さの程度を以下のように評価した。
【0067】
+ :皮溝に入り込む量がやや少ない。
++ :ある程度の量が皮溝に入り込むが、やや時間がかかる。
+++ :ある程度の量が皮溝に入り込み、時間もかからない。
++++ :多くの量が皮溝に入り込むが、やや時間がかかる。
+++++ :多くの量が皮溝に入り込み、時間もかからない。
【0068】
「口紅接触」の評価は、肌に口紅を塗布した状態で、クレンジング組成物の皮溝に入り込み易さについて評価した。なお、評価基準については「素肌接触」の評価と同じとした。
【0069】
汚れ除去性は、皮丘(皮溝に囲まれた小さな盛り上がり)、皮溝に残存がない場合「◎」とし、皮丘に残存がなく、皮溝に僅かに残存がある場合「○」とし、皮丘に残存がなく、皮溝に残存がある場合「△」とし、皮丘、皮溝ともに残存がある場合「×」とした。
【0070】
実施例1〜5、比較例1のクレンジング組成物の処方と評価結果を表3に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
上記実施例で示したとおり、実施例1〜5において、汚れを落とす効果が高いことが確認された。これらの結果より、オリブ油より、流動パラフィン、パルミチン酸エチルヘキシル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、スクワランが、オリブ油より汚れを落とす効果が高いことが示された。また、流動パラフィン(実施例1)、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(実施例3)、スクワラン(実施例4)、流動パラフィンとトリエチルヘキサノインとパルミチン酸エチルヘキシルとの混合油(実施例5)は、口紅接触の評価も高いことが確認され、特に流動パラフィンとトリエチルヘキサノインとパルミチン酸エチルヘキシルとの混合油は、素肌接触の評価も高いことが示された。
【0073】
(評価3)
実施例6〜13、比較例2及び3のクレンジング組成物の調製を行い、各クレンジング組成物について、上記評価1と同様の方法で、汚れ除去性の評価を行った。また、指滑り性、汚れなじみ、保湿性について評価を行った。
【0074】
実施例6のクレンジング組成物の調製について、まず、ヒドロキシプロピルメチルセルロース誘導体の溶液から重縮合ポリマー粒子の分散液を調製した。そこに、流動パラフィン、1,3−ブチレングリコール及びパラオキシ安息香酸エステルを添加し、攪拌して、表4に示す処方のとおりに、クレンジング組成物を調製した。なお、実施例6と、後述する実施例7〜13及び比較例2〜3については、粘度が同程度であったため、カルボキシビニルポリマー及び水酸化ナトリウム添加による粘度調整は行わなかった。なお、表4中の数値は、組成物全体の質量に対する各成分の質量%を示す。
【0075】
実施例7〜13、比較例2及び3については、添加する油をそれぞれ表4で示す油に変更した点以外は、実施例6と同様の条件でクレンジング組成物を調製した。なお、実施例6〜13、比較例2〜3のクレンジング組成物は、油相の平均粒径を攪拌効率を調整することによって、それぞれ20μmの範囲に調整した。
【0076】
【表4】
【0077】
指滑り性の評価は、とても良い場合「◎」とし、良い場合「○」とし、やや引っかかる場合「△」とし、悪い場合「×」とした。また、汚れなじみは、とても良い場合「◎」とし、良い場合「○」とし、ふつうの場合「△」とし、悪い場合「×」とした。保湿性は、各クレンジング組成物を塗布する前と比較して、しっとり感がある場合「◎」とし、ややしっとり感がある場合「○」とし、変化がない場合「△」とし、かさかさ(乾燥)感がある場合「×」とした。
【0078】
実施例6〜13、比較例2及び3のクレンジング組成物の評価結果を表5に示す。なお、油水界面張力は、20℃にてDropMaster(協和界面化学(株)製)で測定した。
【0079】
【表5】
【0080】
上記表5に示したとおり、実施例6〜13において、比較例2、3と比較して、汚れを落とす効果が高いことが確認された。汚れを落とす効果が高いことが確認されたのは、いずれも炭化水素油、エステル油、シリコーン油又はロウ類であり、油水界面張力が20以上のものであった。実施例6〜13のクレンジング組成物において、ナノ粒子の付着したO/W型エマルションがエマルションの状態を保ったまま、油性の汚れに付着すると考えられる。この際に、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、ロウ類が油相に含まれる場合、これら油は油水界面張力が高く、凝集力が強いため、指等の外圧により油と汚れが混合された後、その混合物は肌表面から分離して再乳化しやすいと考えられる。そのため、肌表面をすすぐことにより汚れを除去することができたと推定される。また、油の凝集力が強いため、汚れを取込んで再乳化しやすく、肌表面に残存しにくい。さらに、本発明のクレンジング組成物は、再乳化後の油と汚れの混合物が閉鎖小胞体又は重縮合ポリマー粒子により囲まれることにより安定な乳化状態となる。この閉鎖小胞体又は重縮合ポリマー粒子は水和力が高いため、水で流した際に肌に再付着しにくく洗い落としやすい。これにより、実施例6〜13のクレンジング組成物は、クレンジング効果が高かったものと推定される。
【0081】
また、実施例6〜11、13で保湿効果が高かったのはエマルションの油量が60質量%と多いため、凝集力が強いにもかかわらず、その一部が肌に付着し、肌に保湿性を与えるためであると考えられる。なお、油がジメチコンである実施例12において、評価が他と比べて低いのは、ジメチコン自体が元来の保湿効果が低いためであり、保湿性等の使用感は油相元来の性質に依存すると推定される。
【0082】
また、油が炭化水素油である実施例6及び7は、汚れなじみ(速さと量)の評価が高かった。これは、炭化水素油との親和性が高く、また炭化水素油の凝集力が強かったためであると考えられる。また、エステル油のうち、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(実施例9)、トリエチルヘキサノイン(実施例10)は、皮脂等の油汚れになじみやすい性質を元来もち、速さは△だが量の評価が高かった。また、シリコーン油を含む実施例12においては、汚れなじみの速さの評価が高かった。これは、汚れとのなじみが良かったためであると考えられる。
【0083】
また、実施例6〜12の全てにおいて、指滑り性の評価が高かったことが確認された。
【0084】
(評価4)
実施例14〜16のクレンジング組成物の調製を行った。具体的には、まず、ジラウロイルグルタミン酸リシンNaを用いて閉鎖小胞体の分散液を調製した。そこに、流動パラフィン、トリエチルヘキサノイン、エチルヘキサン酸セチル、1,3−ブチレングリコール及びパラオキシ安息香酸エステルを添加し、攪拌して、表6に示す処方のとおりに、クレンジング組成物を調製した。なお、粘度による影響をなくすため、カルボキシビニルポリマーと水酸化ナトリウムを適量添加し、実施例14〜16の粘度が同程度になるように調整した。また、攪拌効率を調整することによって、油相の平均粒径を表7に示すように調整した。
【0085】
【表6】
【0086】
【表7】
【0087】
表7に示すとおり、実施例16、15、14と油相の平均粒径が大きくなる毎に、汚れを落とす効果が高くなったことが確認された。
【0088】
実施例17〜19のクレンジング組成物を調製し、平均粒径を変えて汚れ残存、汚れ除去性の評価、素肌接触、口紅接触の評価を行った。
【0089】
実施例17のクレンジング組成物の調製について、まず、ヒドロキシプロピルメチルセルロース誘導体の溶液から重縮合ポリマー粒子の分散液を調製した。そこに、スクワラン、1,3−ブチレングリコール及びパラオキシ安息香酸エステルを添加し、攪拌して、表8に示す処方のとおりに、クレンジング組成物を調製した。なお、実施例17〜19については、粘度が同程度であったため、カルボキシビニルポリマー及び水酸化ナトリウム添加による粘度調整は行わなかった。実施例17のクレンジング組成物の油相の平均粒径は、攪拌効率を調整することによって、表9に示すとおりに調整した。
【0090】
【表8】
【0091】
実施例18、19については、攪拌効率を調整することによって、油相の平均粒径を表9に示すとおりに変更した以外は、実施例17と同様の条件でクレンジング組成物を調製した。
【0092】
実施例17〜19のクレンジング組成物の汚れ除去性の評価、素肌接触、口紅接触の評価の結果を表9に示す。
【0093】
【表9】
【0094】
表9に示すとおり、実施例19、18、17と油相の平均粒径が大きくなる毎に、汚れを落とす効果が高くなったことが確認された。
【0095】
表7、表9に示すように、油相の平均粒径の大きいものが汚れを落とす効果が高かったのは、油相の平均粒径が大きくなると、油相の汚れに対する溶媒としての性質が強くなるため、汚れを落とす効果が向上したからであると考えられる。また、表9から、素肌接触、口紅接触の評価も、油相の平均粒径が大きくなるにつれて高くなることが観察された。
【0096】
(評価5)
油相の平均粒径が大きくなると、容器に衝突しやすくなり、安定性が低くなることが推測された。そこで、ガラス、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PE)の素材にクレンジング組成物を充填し、安定性の試験を行った(実施例20〜23)。なお、クレンジング組成物は、実施例20〜23の全てにおいて、上記実施例16のクレンジング組成物を用いた。
【0097】
安定性試験は、クレンジング組成物を、それぞれの容器に充填し、約2時間の空輸を4回行った後に、官能評価を行った。評価基準は、変化がなかった場合「◎」とし、ほとんど変化がないが、ごく僅かに油浮きが認められる場合「○」とし、やや油浮きが認められる場合「△」とし、油浮きが認められる場合「×」とした。
【0098】
表10に、安定性試験の結果を示す。
【0099】
【表10】
【0100】
表10に示すとおり、ポリエチレンテレフタラート容器に充填したものの方が、ポリプロピレン容器、ポリエステル容器に充填したものと比較して、安定性が高かったことが示された。また、ガラス容器に充填したものが、ポリエチレンテレフタラート容器に充填したものより、さらに安定性が高かったことが示された。これにより、本発明のクレンジング組成物は、ガラス容器又はポリエチレンテレフタラート容器に充填することにより安定性が向上することが示された。
【0101】
(評価6)
実施例24〜27、比較例4〜6のクレンジング組成物の調製を行い、各クレンジング組成物について、汚れ除去性、汚れなじみ、指滑り性、肌なじみ、クレンジング性についての評価を行った。なお、「汚れ除去性」の評価は、評価1と同様の手順で行った。
【0102】
実施例24のクレンジング組成物の調製について、まず、ヒドロキシプロピルメチルセルロース誘導体の溶液から重縮合ポリマー粒子の分散液を調製した。そこに、流動パラフィンを添加し、攪拌して、表11に示す処方のとおりに、クレンジング組成物を調製した。なお、粘度による影響をなくすため、カルボキシビニルポリマーと水酸化ナトリウムを適量添加し、実施例24と、後述する実施例25〜27、比較例4〜6のクレンジング組成物の粘度が同程度になるように調整した。なお、表11中の数値は、組成物全体の質量に対する各成分の質量%を示す。
【0103】
実施例25〜27、比較例4については、添加する油をそれぞれ表11で示す油に変更した点以外は、実施例6と同様の条件でクレンジング組成物を調製した。
【0104】
比較例5のクレンジング組成物の調製について、まず、ヒドロキシプロピルメチルセルロース誘導体の溶液から重縮合ポリマー粒子の分散液を調製した。そこに、表11に示す処方のとおりに、セタノールを加えた。この液を、ホモミキサーにより6000rpm、80℃、10分間に亘って撹拌し、乳化を行った。その後、15分間かけて放冷し、更に35℃まで水冷することで、比較例5のクレンジング組成物を調製した。
【0105】
比較例6については、添加する油を表11で示す油に変更した点以外は、比較例5と同様の条件でクレンジング組成物を調製した。
【0106】
なお、実施例25〜27、比較例4〜6のクレンジング組成物は、油相の平均粒径を、攪拌効率を調整することによって、それぞれ10μmの範囲に調整した。
【0107】
「指滑り性」の評価基準は、とても良い場合を「◎」とし、良い場合を「○」とし、やや引っかかる場合を「△」とし、悪い場合を「×」とした。「汚れなじみ」の評価基準は、とても良い場合を「◎」とし、良い場合を「○」とし、ふつうの場合を「△」とし、悪い場合を「×」とした。「肌なじみ」の評価基準は、各クレンジング組成物の肌への親和性がある場合を「◎」とし、やや親和性がある場合を「○」とし、親和性が悪い場合を「△」とし、全く親和しない場合を「×」とした。「汚れ除去性」の評価基準は、すすぎ後の肌への汚れ残存性が、よい又はふつうの場合を「○」とし、悪い場合を「×」とした。「汚れ除去性」、「指滑り性」、「汚れなじみ」、及び「肌なじみ」のこれら全ての項目の評価から総合的にクレンジング適性を判断し、ふさわしい場合を「◎」とし、ややふさわしいを「○」とし、どちらとも言えない場合を「△」とし、ややふさわしくない場合を「×」とし、全くふさわしくない場合を「××」とした。表12に、その評価結果を示す。
【0108】
【表11】
【0109】
【表12】
【0110】
評価の結果、表12に示すとおり、実施例24〜27のクレンジング組成物が、比較例4〜6のクレンジング組成物より、クレンジング性の評価が高いことが確認された。特に実施例24〜26と比較例5〜6との対比から、油として抱水性油剤(高級アルコール)のみしか含まないクレンジング組成物は、クレンジング性の観点で好ましくないことが分かった。
【0111】
また、実施例24、実施例27のクレンジング組成物は、実施例25、実施例26のクレンジング組成物より、汚れなじみ(速さ)に優れ、クレンジング性において優れていることが確認され、20℃における水に対する界面張力が高いことがクレンジング性の更なる向上に寄与し得ることが分かった。
【0112】
(処方例1)
ジラウロイルグルタミン酸リシンNaの代わりにレシチンを用いた以外は、実施例16と同様の条件で実施例28のクレンジング組成物を調製した。
【0113】
(処方例2)
ジラウロイルグルタミン酸リシンNaの代わりにジステアリン酸デカグリセリルを用いた以外は、実施例16と同様の条件で実施例29のクレンジング組成物を調製した。
【0114】
(処方例3)
ジラウロイルグルタミン酸リシンNaの代わりにポリオキシエチレン硬化ひまし油(PEG−100水添ひまし油)を用いた以外は、実施例16と同様の条件で実施例30のクレンジング組成物を調製した。なお、PEG−100水添ひまし油は、配合量が0.1w/w%になるように調製した。
【0115】
(処方例4)
ジラウロイルグルタミン酸リシンNaを用いて閉鎖小胞体の分散液を調製した代わりに、スルホン化セルロース誘導体の溶液から重縮合ポリマー粒子の分散液を調製した以外は、実施例16と同様の条件で実施例31のクレンジング組成物を調製した。なお、スルホン化セルロース誘導体は、配合量が0.05w/w%になるように調製した。
【0116】
(処方例5)
スルホン化セルロース誘導体の代わりに、シロキクラゲ多糖類を用いた以外は、実施例31と同様の条件で実施例32のクレンジング組成物を調製した。