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特開2015-17228扁平繊維強化プラスチック板、繊維強化プラスチックシート及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-17228(P2015-17228A)
(43)【公開日】2015年1月29日
(54)【発明の名称】扁平繊維強化プラスチック板、繊維強化プラスチックシート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/24 20060101AFI20141226BHJP
【FI】
   C08J5/24CER
   C08J5/24CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-146870(P2013-146870)
(22)【出願日】2013年7月12日
(71)【出願人】
【識別番号】306032316
【氏名又は名称】新日鉄住金マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075638
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 暎
(74)【代理人】
【識別番号】100169155
【弁理士】
【氏名又は名称】倉橋 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 巻治
(72)【発明者】
【氏名】小林 朗
(72)【発明者】
【氏名】荒添 正棋
(72)【発明者】
【氏名】立石 晶洋
【テーマコード(参考)】
4F072
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA07
4F072AA08
4F072AB05
4F072AB06
4F072AB09
4F072AB10
4F072AB22
4F072AB34
4F072AD09
4F072AD13
4F072AD23
4F072AD34
4F072AD38
4F072AG03
4F072AG12
4F072AH02
4F072AH22
(57)【要約】
【課題】撚りの入った樹脂含浸ストランドを硬化して作製された繊維配向乱れの無い扁平繊維強化プラスチック線材を複数本一体化した扁平繊維強化プラスチック板及び斯かる扁平繊維強化プラスチック板にて形成される、RTM成型等に適した高強度の繊維強化プラスチックシート、並びに、その製造方法を提供する。
【解決手段】多数本の強化繊維fを含む撚りの入った樹脂含浸ストランドf2を成形硬化して断面形状が扁平形状とされる少なくとも2本以上の扁平繊維強化プラスチック線材2を、長手方向に沿って実質的に隙間の無いように密着して形成した断面形状が扁平形状の扁平繊維強化プラスチック板2Aであって、扁平繊維強化プラスチック線材2は、厚さ(t)が0.2〜3.0mm、幅(w)が1.0〜5.0mmである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数本の強化繊維を含む撚りの入った樹脂含浸ストランドを成形硬化して断面形状が扁平形状とされる少なくとも2本以上の扁平繊維強化プラスチック線材を、長手方向に沿って実質的に隙間の無いように密着して形成した断面形状が扁平形状の扁平繊維強化プラスチック板であって、
前記扁平繊維強化プラスチック線材は、厚さ(t)が0.2〜3.0mm、幅(w)が1.0〜5.0mmであることを特徴とする扁平繊維強化プラスチック板。
【請求項2】
前記樹脂含浸ストランドは、6000〜60000本の強化繊維を収束し、樹脂を含浸したものであることを特徴とする請求項1に記載の扁平繊維強化プラスチック板。
【請求項3】
前記樹脂含浸ストランドにおける前記強化繊維の含有量は、体積比率(Vf)で30%〜70%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の扁平繊維強化プラスチック板。
【請求項4】
前記ストランドの撚り回数は、5回/m〜30回/mであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の扁平繊維強化プラスチック板。
【請求項5】
前記強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維などの無機繊維、又は、アラミド繊維、PBO繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアリレート繊維などの有機繊維の一種又は複数種を混入して使用し、
前記マトリックス樹脂は、エポキシ樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はフェノール樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の扁平繊維強化プラスチック板。
【請求項6】
前記扁平繊維強化プラスチック板は、2〜50本の前記扁平繊維強化プラスチック線材にて構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載の扁平繊維強化プラスチック板。
【請求項7】
前記扁平繊維強化プラスチック線材の長手方向に沿って前記扁平繊維強化プラスチック線材同士の間に形成される隙間の総面積は、前記扁平繊維強化プラスチック板の1m2当たり0.1m2以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかの項に記載の扁平繊維強化プラスチック板。
【請求項8】
少なくとも2枚以上から成る複数枚の請求項1〜7のいずれかの項に記載の扁平繊維強化プラスチック板を有し、
前記複数枚の扁平繊維強化プラスチック板を長手方向に揃えて配列して固定部材にて一体に保持してシート状とし、隣り合った前記各扁平繊維強化プラスチック板の間には長手方向に沿って所定の間隙(g)が設けられることを特徴とする繊維強化プラスチックシート。
【請求項9】
前記所定の間隙(g)は、0.1mm〜3.0mmであることを特徴とする請求項8に記載の繊維強化プラスチックシート。
【請求項10】
(a)多数本の強化繊維を含む未硬化状態の撚りの入った樹脂含浸ストランドを少なくとも2本以上、長手方向に沿って一方向に引き揃えて平面状に並べ、
(b)前記平面状に並べられた前記ストランドを加熱すると共に、前記平面状に並べられた前記ストランドの両面側から加圧して前記ストランドの断面形状を扁平形状に成形し、同時に、少なくとも2本以上の前記扁平ストランドが互いに長手方向に沿って実質的に隙間の無いように密着して形成された断面形状が扁平形状の扁平ストランド板を作製し、前記扁平ストランド板に含浸された樹脂を硬化して扁平繊維強化プラスチック板とする、
ことを特徴とする扁平繊維強化プラスチック板の製造方法。
【請求項11】
前記樹脂含浸ストランドは、6000〜60000本の強化繊維を収束し、樹脂を含浸したものであることを特徴とする請求項10に記載の扁平繊維強化プラスチック板の製造方法。
【請求項12】
前記樹脂含浸ストランドにおける前記強化繊維の含有量は、体積比率(Vf)で30%〜70%であることを特徴とする請求項10又は11に記載の扁平繊維強化プラスチック板の製造方法。
【請求項13】
前記樹脂含浸ストランドの撚り回数は、5回/m〜30回/mであることを特徴とする請求項10〜12のいずれかの項に記載の扁平繊維強化プラスチック板の製造方法。
【請求項14】
前記(b)工程にて、前記樹脂含浸ストランドは、500g/本〜10kg/本の強さにて緊張されることを特徴とする請求項10〜13のいずれかの項に記載の扁平繊維強化プラスチック板の製造方法。
【請求項15】
前記(b)工程は、前記平面状に並べられた前記ストランドを加熱したスチールベルトにて挟持して加熱すると共に、前記平面状に並べられた前記ストランドの両面側から加圧して前記ストランドの断面形状を扁平形状に成形することにより行うことを特徴とする請求項10〜14のいずれかの項に記載の扁平繊維強化プラスチック板の製造方法。
【請求項16】
前記(b)工程にて、前記スチールベルトに離型剤を塗布し、前記平面状に並べられた前記ストランドを挟持することを特徴とする請求項15に記載の扁平繊維強化プラスチック板の製造方法。
【請求項17】
前記(b)工程にて作製された前記扁平繊維強化プラスチック板の表面を研磨するか、又は、溶剤で洗浄して、表面に付着した離型剤を除去することを特徴とする請求項16に記載の扁平繊維強化プラスチック板の製造方法。
【請求項18】
請求項10〜17のいずれかの項に記載の製造方法にて作製された扁平繊維強化プラスチック板を平面状に並べ、固定部材にて一体に保持することを特徴とする繊維強化プラスチックシートの製造方法。
【請求項19】
前記隣り合った扁平繊維強化プラスチック板の間には長手方向に沿って所定の間隙(g)を設けることを特徴とする請求項18に記載の繊維強化プラスチックシートの製造方法。
【請求項20】
前記所定の間隙(g)は、0.1mm〜3.0mmであることを特徴とする請求項19に記載の繊維強化プラスチックシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平の繊維強化プラスチック線材を複数、長手方向に沿って密着接合して作製された扁平繊維強化プラスチック板及びその製造方法に関し、更には、斯かる扁平繊維強化プラスチック板を複数、長手方向に沿って一方向に配列してシート状に作製された繊維強化プラスチックシート及びその製造方法に関するものである。扁平繊維強化プラスチック板及び繊維強化プラスチックシートは、例えば、風車用ブレード、車両、船舶等に使用する大型のFRP(繊維強化プラスチック材)としてRTM成型等において広く使用することができ、また、土木建築構造物であるコンクリート構造物、鋼構造物、繊維強化プラスチック構造物を補強する補強材としても使用することができる。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば炭素繊維などの強化繊維を使用して作製された繊維強化プラスチックシートは、例えば、土木建築構造物であるコンクリート構造物、鋼構造物、繊維強化プラスチック構造物に接着して補強する補強材として使用されている。また、繊維強化プラスチックシートは、風車用ブレード、車両、船舶等に使用する大型のFRP(繊維強化プラスチック材)としてRTM成型等においても広く使用されている。
【0003】
例えば炭素繊維を使用した炭素繊維強化プラスチックシートは、従来、数万本のフィラメントを集合して作製された炭素繊維ストランド(繊維束)を平面状に多数本並べて樹脂含浸させ、必要に応じて金型にて所定横断面形状の板状部材に成形し、その後、硬化することにより作製されている。
【0004】
一般に、樹脂含浸した炭素繊維ストランドを金型等を通して成形板を作製すると、特に繊維目付の大きな成形板を作製する場合には、炭素繊維ストランドが成形される過程において、金型内において炭素繊維ストランドの進行方向に対して交差する方向に移動し、炭素繊維ストランド(即ち、炭素繊維フィラメント)の配向が乱れることがある。特に、例えば1000g/m2以上といった高い繊維目付の繊維強化プラスチックシートを作製するために多数本の炭素繊維ストランドを使用した場合には、このような問題が頻繁に生じる。
【0005】
そのため、金型へのストランド送入側にコウム(櫛状ガイド部材)を配置して、炭素繊維ストランドの供給が一定位置となり、炭素繊維ストランドの配向乱れをなくすように工夫されてはいるが、特に、炭素繊維ストランドの量が大となると、一部のストランドが蛇行して上下左右に移動しているのが実情である。炭素繊維ストランドが蛇行するとミクロに見て繊維長さがバラつき所望の引張強度や弾性係数等が発現し難くなる。
【0006】
そこで、各炭素繊維ストランドに撚りを入れることが考えられる。炭素繊維ストランドに撚りを入れることで、炭素繊維ストランド(即ち、炭素繊維フィラメント)が蛇行することが防止される。
【0007】
本件特許出願人は、特許文献1に記載するように、炭素繊維束(炭素繊維ストランド)にかける撚りの回数を特定することにより、強度低下しないことを確認し、所定回数の撚りをかけた多数本の炭素繊維フィラメントから成る繊維束にて作製される炭素繊維シートを提案した。この炭素繊維シートは、樹脂含浸性にも優れたものであるが、上述のように、繊維強化プラスチックシートを作製するには、その後、樹脂含浸が必要となる。特に、繊維目付が大とされる繊維強化プラスチックシートを作製する場合には、樹脂含浸作業が煩雑となる。
【0008】
また、本件特許出願人は、特許文献2に記載するように、連続的に送給される炭素繊維ストランドに撚りをかけながら樹脂含浸させるか、或いは、樹脂含浸させた炭素繊維ストランドに撚りをかけて樹脂含浸させ、その後、所定の大きさの緊張力を付与することによって、横断面が円形状の繊維強化プラスチック線材を作製することを提案した。特許文献2に記載する線材製造方法は、金型を用いることがなく、一度に多数の線材製造を可能とするなどの多くの利点を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4667069号公報
【特許文献2】特開2008−222846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、上記特許文献1、2に記載される技術を基にして、更に研究実験を行い、撚りの入った樹脂含浸された、例えば60K(炭素繊維フィラメントの数が60000本とされる繊維束)の炭素繊維ストランドを複数本一体化して扁平炭素繊維プラスチック板を形成し、この炭素繊維プラスチック板を使用して、炭素繊維強化プラスチックシートを極めて効率よく製造し得ることを見出した。
【0011】
本発明は、斯かる本発明者らの新規な知見に基づくものである。
【0012】
本発明の目的は、撚りの入った樹脂含浸ストランドを硬化して作製された繊維配向乱れの無い扁平繊維強化プラスチック線材を複数本一体化した扁平繊維強化プラスチック板及び斯かる扁平繊維強化プラスチック板にて形成される、RTM成型等に適した高強度の繊維強化プラスチックシート、並びに、その製造方法を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、撚りの入った樹脂含浸の、例えば60Kのストランドを使用して、繊維目付1000g/m2以上の、繊維配向乱れの無い扁平繊維強化プラスチック線材を複数本一体化した扁平繊維強化プラスチック板及び斯かる扁平繊維強化プラスチック板にて形成される、RTM成型等に適した高強度の且つ変形性能の良い繊維強化プラスチックシート、並びに、その製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は本発明に係る扁平繊維強化プラスチック板、繊維強化プラスチックシート及びその製造方法にて達成される。要約すれば、第1の本発明によれば、多数本の強化繊維を含む撚りの入った樹脂含浸ストランドを成形硬化して断面形状が扁平形状とされる少なくとも2本以上の扁平繊維強化プラスチック線材を、長手方向に沿って実質的に隙間の無いように密着して形成した断面形状が扁平形状の扁平繊維強化プラスチック板であって、
前記扁平繊維強化プラスチック線材は、厚さ(t)が0.2〜3.0mm、幅(w)が1.0〜5.0mmであることを特徴とする扁平繊維強化プラスチック板が提供される。
【0015】
第1の本発明の一実施態様によれば、前記樹脂含浸ストランドは、6000〜60000本の強化繊維を収束し、樹脂を含浸したものである。
【0016】
第1の本発明の他の実施態様によれば、前記樹脂含浸ストランドにおける前記強化繊維の含有量は、体積比率(Vf)で30%〜70%である。
【0017】
第1の本発明の他の実施態様によれば、前記ストランドの撚り回数は、5回/m〜30回/mである。
【0018】
第1の本発明の他の実施態様によれば、前記強化繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維などの無機繊維、又は、アラミド繊維、PBO繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアリレート繊維などの有機繊維の一種又は複数種を混入して使用し、
前記マトリックス樹脂は、エポキシ樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はフェノール樹脂のいずれかである。
【0019】
第1の本発明の他の実施態様によれば、前記扁平繊維強化プラスチック板は、2〜50本の前記扁平繊維強化プラスチック線材にて構成される。
【0020】
第1の本発明の他の実施態様によれば、前記扁平繊維強化プラスチック線材の長手方向に沿って前記扁平繊維強化プラスチック線材同士の間に形成される隙間の総面積は、前記扁平繊維強化プラスチック板の1m2当たり0.1m2以下である。
【0021】
第2の本発明によれば、少なくとも2枚以上から成る複数枚の上記いずれかの構成の扁平繊維強化プラスチック板を有し、
前記複数枚の扁平繊維強化プラスチック板を長手方向に揃えて配列して固定部材にて一体に保持してシート状とし、隣り合った前記各扁平繊維強化プラスチック板の間には長手方向に沿って所定の間隙(g)が設けられることを特徴とする繊維強化プラスチックシートが提供される。
【0022】
第2の本発明の一実施態様によれば、前記所定の間隙(g)は、0.1mm〜3.0mmである。
【0023】
第3の本発明によれば、
(a)多数本の強化繊維を含む未硬化状態の撚りの入った樹脂含浸ストランドを少なくとも2本以上、長手方向に沿って一方向に引き揃えて平面状に並べ、
(b)前記平面状に並べられた前記ストランドを加熱すると共に、前記平面状に並べられた前記ストランドの両面側から加圧して前記ストランドの断面形状を扁平形状に成形し、同時に、少なくとも2本以上の前記扁平ストランドが互いに長手方向に沿って実質的に隙間の無いように密着して形成された断面形状が扁平形状の扁平ストランド板を作製し、前記扁平ストランド板に含浸された樹脂を硬化して扁平繊維強化プラスチック板とする、
ことを特徴とする扁平繊維強化プラスチック板の製造方法が提供される。
【0024】
第3の本発明の一実施態様によれば、前記樹脂含浸ストランドは、6000〜60000本の強化繊維を収束し、樹脂を含浸したものである。
【0025】
第3の本発明の他の実施態様によれば、前記樹脂含浸ストランドにおける前記強化繊維の含有量は、体積比率(Vf)で30%〜70%である。
【0026】
第3の本発明の他の実施態様によれば、前記樹脂含浸ストランドの撚り回数は、5回/m〜30回/mである。
【0027】
第3の本発明の他の実施態様によれば、前記(b)工程にて、前記樹脂含浸ストランドは、500g/本〜10kg/本の強さにて緊張される。
【0028】
第3の本発明の他の実施態様によれば、前記(b)工程は、前記平面状に並べられた前記ストランドを加熱したスチールベルトにて挟持して加熱すると共に、前記平面状に並べられた前記ストランドの両面側から加圧して前記ストランドの断面形状を扁平形状に成形することにより行う。
【0029】
第3の本発明の他の実施態様によれば、前記(b)工程にて、前記スチールベルトに離型剤を塗布し、前記平面状に並べられた前記ストランドを挟持する。好ましくは、前記(b)工程にて作製された前記扁平繊維強化プラスチック板の表面を研磨するか、又は、溶剤で洗浄して、表面に付着した離型剤を除去する。
【0030】
第4の本発明によれば、上記いずれかの製造方法にて作製された扁平繊維強化プラスチック板を平面状に並べ、固定部材にて一体に保持することを特徴とする繊維強化プラスチックシートの製造方法が提供される。
【0031】
第4の本発明の一実施態様によれば、前記隣り合った扁平繊維強化プラスチック板の間には長手方向に沿って所定の間隙(g)を設ける。好ましくは、前記所定の間隙(g)は、0.1mm〜3.0mmである。
【発明の効果】
【0032】
本発明の扁平繊維強化プラスチック板及び繊維強化プラスチックシートは、例えば繊維目付1000g/m2以上の繊維配向乱れが無く、高強度とされ、大型のFRPとしてRTM成型等に、或いは、土木建築構造物であるコンクリート構造物、鋼構造物、繊維強化プラスチック構造物を補強する補強材としても使用することができ、特に、繊維強化プラスチックシートは変形性能が良く、RTM成型等に好適に使用することができる。また、本発明の製造方法によれば、50Kといった大径のストランドを用いて繊維目付の大きい、例えば、厚み(t)1.0mm〜2mm(繊維目付900〜1800g/m2の)、幅(W)が5mm〜500mmの、繊維強化プラスチックシートを効率よく、即ち、大幅に成形歩留まりを増大して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1(a)〜(d)は、本発明に係る扁平繊維強化プラスチック板の実施例を説明する図である。
図2図2(a)、(b)は、本発明に係る繊維強化プラスチックシートの実施例を説明する図である。
図3図3(a)は、本発明に係る扁平繊維強化プラスチック板及び繊維強化プラスチックシートの製造に使用する樹脂含浸ストランドの一実施例の斜視図であり、図3(b)は、加熱・加圧される前の樹脂含浸ストランドの配列状態を示す断面図であり、図3(c)は、加熱・加圧・硬化される前後の扁平ストランド板、扁平繊維強化プラスチック板の配列状態を示す断面図である。また、図3(d)は、本発明の特徴を説明するための樹脂含浸ストランドの配列状態を示す断面図である。
図4】本発明に係る扁平繊維強化プラスチック板及び繊維強化プラスチックシートの製造に使用する樹脂含浸ストランドの製造方法の一実施例を説明するための製造装置の概略構成図である。
図5】本発明に係る繊維強化プラスチックシートの製造方法の一実施例を説明するための製造装置における巻き出しボビンの作動を説明する概略構成図である。
図6】本発明に係る扁平繊維強化プラスチック板を製造する製造装置の一実施例を説明する概略構成図である。
図7図6に示す製造装置における成形硬化装置の概略構成斜視図である。
図8図7の成形硬化装置の概略横断面図であり、図8(a)は、図7の略線A−Aに取った断面図であり、図8(b)は、図7の略線B−Bに取った断面図である。
図9】本発明に係る繊維強化プラスチックシートを製造する製造装置の一実施例を説明する概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る扁平繊維強化プラスチック板及びその製造方法、並びに、繊維強化プラスチックシート及びその製造方法について、図面に即して詳しく説明する。
【0035】
実施例1
(扁平繊維強化プラスチック板及び繊維強化プラスチックシートの構成)
図1(a)〜(d)に、本発明に係る扁平繊維強化プラスチック板(以下、「扁平FRP板」という。)2Aの実施例を示し、図2(a)、(b)に、本発明に係る繊維強化プラスチックシート(以下、「FRPシート」という。)1の実施例を示す。
【0036】
先ず、扁平FRP板2Aについて説明すると、扁平FRP板2Aは、一実施例によると、図1(a)に示すように、互いに長手方向に沿って一体に密着接合された2本の扁平繊維強化プラスチック線材(以下、「扁平FRP線材」という。)2にて構成される。
【0037】
図3(a)〜(c)をも参照して更に説明すれば、各扁平FRP線材2は、加熱硬化された撚りの入った厚さ(t)、幅(w)とされる扁平形状、即ち、厚さ(t)が幅(w)より小とされる(t<w)略矩形状の、繊維強化プラスチック(FRP)線材である。この扁平FRP線材2の厚さ方向側面を線材の長手方向に沿って互いに密着接合することによって扁平FRP板2Aは作製される。
【0038】
扁平FRP線材2は、図3(a)〜(c)に示すように、特に、6000〜60000本の強化繊維fを収束したストランド(繊維束)を5回/m〜30回/mにて撚ったものに、マトリクス樹脂Rを含浸させて樹脂含浸ストランドf2を形成し、この樹脂含浸ストランドf2を断面形状が扁平形状になるように成形し硬化して作製することができる。ストランドf2における強化繊維fの含有量は、体積比率(Vf)で30%〜70%である。
【0039】
強化繊維としては、炭素繊維が最も好適に使用し得るが、これに限定されるものではなく、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維などの無機繊維、又は、アラミド繊維、PBO繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアリレート繊維などの有機繊維とされ、その中のいずれか一種又は複数種を混入して使用することができる。
【0040】
マトリックス樹脂は、エポキシ樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、又はフェノール樹脂のいずれかとされる。
【0041】
上記構成にて、扁平FRP線材2は、厚さ(t)が0.2mm〜3.0mm、幅(w)が1.0mm〜5.0mmの矩形状とされる。この範囲を外れた形状では、高目付が不可能であったり、作製された扁平FRP板2Aが曲げ難いといった問題が生じる。
【0042】
図1(a)に示す実施例では、扁平FRP板2Aは、2本の扁平FRP線材2を平面状に並べ、互いに長手方向に沿って一体に密着接合することによって構成されるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、2本以上の、例えば、図1(b)、(c)に示すように、3、4本とすることもできる。更には、図1(d)に示すように、5本以上(最大50本程度)といった複数本の扁平FRP線材2を平面状に並べることによって構成することができる。
【0043】
扁平FRP板2Aは、長手方向の反り、捻じれ等を最小限とするために、図1(a)に示すように、2本のFRP線材2、2で構成する場合には、2本のFRP線材2、2は、S撚りとZ撚りとし、また、図1(b)に示すように、3本のFRP線材2、2、2で構成する場合には、3本のFRP線材2、2、2は、それぞれ、S撚り、Z撚り、Z撚り、或いは、S撚り、S撚り、Z撚りとし、また、図1(c)に示すように、4本のFRP線材2、2、2、2で構成する場合には、4本のFRP線材2、2、2、2は、それぞれ、S撚り、S撚り、Z撚り、Z撚りとするのが好ましい。
【0044】
なお、図1(a)〜(c)に示す扁平FRP板2Aは、扁平FRP線材2、2同士の間には、実質的に隙間は形成されていないが、ただ、扁平FRP板2Aは、隙間を完全になくした、所謂、完全な薄板状とされていなくとも、性能的には全く問題はない。例えば、扁平FRP板2Aを、補強材として、コンクリート構造物表面などに樹脂接着する場合などには、例えば、図1(d)を参照して説明すれば、各線材間の隙間S(S1、S2、S3、・・・・Sn−1、Sn)が存在することでコンクリート構造物表面と扁平FRP板2Aとの間に存在する空気がこの隙間Sを通って抜け易くなり、また、扁平FRP板2Aの隙間Sに樹脂が入り込むため樹脂との接着性が向上するといった利点もある。
【0045】
しかしながら、強度及び外観上の問題をも考慮すると、図1(d)にて、一体化させた扁平FRP板2Aの1m2当たり、隙間Sの総面積St(S1、S2、S3、・・・・Sn−1、Sn)は、0.1m2以下とするのが好ましい。本願明細書で「実質的に隙間は形成されていない」とは、このように、1m2あたりの隙間総面積Stが0.1m2以下とされる状態を意味するものとする。1m2あたりの隙間総面積Stが0.1m2を超えると、部分的に扁平FRP線材2同士が剥離し、FRP板としての一体性が損なわれる。また、同目付として厚みが厚くなり、Vfが低下することになる。
【0046】
次に、FRPシート1について説明する。図2(a)に示すように、本発明に係るFRPシート1は、加熱硬化された複数本の扁平FRP板2A(2A1、2A2、2A3・・・・・・・2An−1、2An)を隙間gを設けて、平面状に多数本並べ、且つ、互いに固定部材3により連結することによって一体とされ、幅(W)、長さ(L)とされる。
【0047】
固定部材3としては、図2(a)に示すように、扁平FRP板2A(2A1〜2An)の長手方向に直交する方向にピッチPa(Pa=0.1〜100mm)にて配置された、例えば融着樹脂線材などにて作製された横糸のみから成る固定繊維材、或いは、図1(b)に示すように、ピッチPa、Pb(Pa、Pb=0.1〜100mm)にて配置された、例えば融着樹脂線材などで作製された横糸3a、縦糸3bにより形成されたメッシュ状固定繊維材、又は、不織布状材料(図示せず)とすることができる。
【0048】
従って、本発明のFRPシート1は、各扁平FRP板2A(2A1〜2An)の長手方向に沿って弾性を有しており、そのために、例えば、所定の半径にて変形、即ち、曲げることが可能であり、更には、扁平FRP板2Aの長手方向に平行に、間隙(g)に沿って極めて簡単に変形させることができ、変形性能において優れている。
【0049】
扁平FRP板2A、及び、FRPシート1などの更に詳しい構成は、以下に説明する扁平FRP板及びFRPシート1の製造方法の説明においてより明らかとなるであろう。
【0050】
(扁平FRP板の製造方法及び装置)
図4図6などを参照して、扁平FRP板2Aの製造方法について説明する。
【0051】
図4図6に、本発明に係るFRPシート1を製造するための製造装置100(100A、100B)の一実施例を示す。
【0052】
本実施例にて、FRPシート1の製造装置100(100A、100B)は、繊維送給、樹脂含浸、巻取セクション100A(図4)と、扁平成形(加熱・加圧・硬化)、冷却、及び引き取りセクション100B(100B1、100B2、100B3)(図6)とにて構成される。
【0053】
図4は、製造装置100における繊維送給、樹脂含浸、巻取セクション100Aを示しており、図面上、左側から右側に複数本の強化繊維fから成るストランド(繊維束)f1が移動し、その間に撚り加工と樹脂含浸を行う。
【0054】
図6は、製造装置100の扁平成形(加熱・加圧・硬化)、冷却及び引き取りセクション100Bを示しており、撚り加工と樹脂含浸工程を施されたストランドf2が図面上、左側から右側に移動し、ストランドの扁平形状成形と樹脂硬化を行い、扁平FRP板2Aを作製する。
【0055】
更に説明すると、図4に示す繊維送給、樹脂含浸、巻取セクション100Aでは、複数(通常、3〜18個)の、本実施例では図面を簡単とするために2つの繊維供給用の巻き出しボビン(筒状の糸巻き)11(11a、11b)が用意され、各ボビン11には、樹脂未含浸の強化繊維fを所定本数収束したストランドf1が巻回されている。
【0056】
各ボビン11に巻回されたストランドf1は、樹脂含浸槽17が配置された樹脂含浸工程へと連続的に送給される。同時に、ストランドf1には撚りが入れられる(繊維束供給、撚り加工工程)。
【0057】
つまり、樹脂含浸工程へと送給されたストランドf1は、樹脂含浸槽17にて樹脂含浸され、樹脂含浸されたストランドf2は、撚りが入った状態で巻き取り用ボビン22(22a、22b)に巻き取られる(樹脂含浸、撚り加工工程)。
【0058】
図6に示す扁平成形(加熱・加圧・硬化)、冷却及び引き取りセクション100Bでは、樹脂含浸され、且つ、撚りが入れられたストランドf2は、複数(通常、50〜300個)の、本実施例では図面を分かり易くするために対応して2つとされるボビン22(22a、22b)から巻き出され、扁平成形(加熱・加圧・硬化)セクション100B1及び冷却セクション100B2を構成する加熱・加圧・硬化、冷却装置(以下、「成形硬化装置」という。)40へと導入される。樹脂含浸ストランドf2は、加熱・加圧されることにより横断面が丸形状のストランドf2が扁平形状に成形され、引き続いて、硬化され、冷却されることにより扁平FRP線材2となる。と同時に、各線材2、2は、互いに一体に密着接合されて扁平FRP板2Aが作製される。
【0059】
次に、上記各工程を、更に詳しく説明する。
【0060】
・繊維束供給、撚り加工工程
本実施例では、図4図5を参照すると理解されるように、繊維送給、樹脂含浸、巻取セクション100Aでは、ボビン11(11a、11b)は、巻き出し装置51に設けられた回転軸12(12a、12b)に取り付けられ、さらに、この回転軸12は、巻き出し装置の回転主軸13(13a、13b)に回転自在に取り付けられている。
【0061】
各ボビン11(11a、11b)は、駆動モータM及び歯車伝達機構Gにより、各ボビン11(11a、11b)の回転軸12(12a、12b)の回りに回転して、ボビン11(11a、11b)に巻回されたストランドf1を巻き出す。同時に、各ボビン11(11a、11b)は、それぞれ、上述のように、回転軸12(12a、12b)の回りに回転しながら、回転軸12(12a、12b)と共に回転主軸13(13a、13b)の回りに回転される。
【0062】
つまり、ボビン11は、回転軸12の回りに回転し、同時に回転主軸13の回りにも回転して、ストランドf1を巻き出す。
【0063】
ボビン11から巻き出されたストランドf1は、ガイド14に形成したガイド穴15(15a、15b)により案内され、入口ガイドロール16により樹脂含浸槽17内へと導入される。
【0064】
上記構成により、樹脂含浸槽17を設けた含浸工程へと供給されるストランドf1には撚りが入ったものが供給される。
【0065】
ボビン11の回転主軸13の回りの回転数と、ストランドf1の巻き出しスピードとを調節することにより、1m当たりに入れる撚り回数を制御することができる。
【0066】
本実施例によると、詳しくは後述するように、例えば、厚さ(t)1.0〜2.0mm(即ち、繊維目付900〜1800g/m2)の扁平FRP板2A(更にはFRPシート1)を作製するために、扁平成形(加熱・加圧・硬化)セクション100B1に送入される前の撚りの入った樹脂含浸ストランドf2の線径は、直径(d)(図3(a))が0.4〜1.5mmであることが好ましい。従って、含浸工程へと供給されるストランドf1は、例えば強化繊維が炭素繊維とされる場合などには、線径6〜10μmの炭素繊維(フィラメント)fを6000〜60000(60K)本を収束した炭素繊維ストランド(炭素繊維束)f1を使用することとなる。
【0067】
更に説明すると、本実施例の製造法で製造されるストランドf2(即ち、扁平FRP板2AにおけるFRP線材2)には、撚りが1m当り5回から30回(5回/m〜30回/m)の範囲のいずれかで入れられている。特に50K〜60K程度の大径のストランドf2においては、5回/m未満であると樹脂硬化前にテンションをいれても安定した円形状(丸形状)を確保するのが難しく、撚りが30回/mを越えると扁平形状への成形が難しくなり、30回/mを越えることは好ましくない。特に、撚りは、10回/mから25回/mの範囲が最適である。
【0068】
・樹脂含浸工程
樹脂含浸槽17には、マトリックス樹脂Rが収容されており、含浸槽17の入口部には、上述のように、ストランドf1を案内する入口ガイドローラ16が配置されている。また、含浸槽17内には、含浸ローラ18が配置されており、含浸槽17の出口部には出口ガイドローラ対19が配置されている。
【0069】
入口ガイドローラ16は、ストランドf1に樹脂を含浸させる工程において、含浸槽17に供給されるストランドf1を構成する複数の強化繊維fを、含浸前に揃える役目である。
【0070】
含浸ローラ18は、ストランドf1を強制的に樹脂Rに浸ける役目で、含浸槽17に溜められた樹脂Rの中に、少しでも浸かった状態で使用される。
【0071】
出口ガイドローラ対19(19a、19b)は、樹脂が含浸されたストランドf2をしごく役目で、ここで樹脂付着量が制御される。
【0072】
つまり、上下のローラ19a、19bのすき間及び押し付け圧力を制御することにより、樹脂含浸ストランドf2の含浸樹脂量が制御される。
【0073】
本実施例では、強化繊維fに対するマトリックス樹脂の含浸量は、強化繊維の体積比率(Vf)で30%〜70%であることが好ましい。
【0074】
更に説明すると、強化繊維含有量が体積比率(Vf)で30%未満であると繊維量が少ないため強度等の物性が低下する。一方、70%を越えると樹脂不足となり、特に、強化繊維の体積比率は、40%〜60%の範囲が最適である。
【0075】
又、本実施例の製造法においては、上述したように、強化繊維としては、炭素繊維が最も好適に使用し得るが、これに限定されるものではなく、炭素繊維、ガラス繊維、バサルト繊維などの無機繊維、又は、アラミド繊維、PBO繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアリレート繊維などの有機繊維の一種又は複数種を混入して使用することができる。
【0076】
マトリックス樹脂としては、エポキシ樹脂、ビニールエステル樹脂、MMA樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂が使用可能であるが、中でもエポキシ樹脂が好適に使用される。高温で使用されるマーケット、特殊耐食性の要求されるマーケット等の特殊用途向けに他の樹脂が用いられる。
【0077】
樹脂含浸されたストランドf2は、ガイド20に形成したガイド穴21(21a、21b)により案内され、巻き取り装置52における巻き取りボビン22(22a、22b)により巻き取られる。図3(a)に撚りが入った且つ樹脂Rが含浸されたストランドf2を示す。
【0078】
各巻き取りボビン22は、それぞれ、回転軸23(23a、23b)の回りに回転駆動されている。
【0079】
樹脂含浸されたストランドf2を巻きつけたボビン22は、図6に示す扁平成形(加熱・加圧・硬化)、冷却セクション100B1、100B2における加熱・加圧・硬化、冷却工程を経て引き取りセクション100B3へと供給される。
【0080】
・加熱・加圧・硬化成形、冷却工程及び引き取り工程
図6を参照すると、加熱・加圧・硬化成形、冷却セクション(以下の説明では、単に「成形硬化セクション」と記載することもある。)100B1及び100B2では、上記巻き取り装置52にて樹脂含浸ストランドf2を巻き取ったボビン22(22a、22b)が、巻き出し装置53の回転軸24(24a、24b)に設置される。即ち、巻き取りボビン22は、加熱・加圧・硬化及び冷却硬化工程における巻き出しボビンとして機能する。
【0081】
巻き出しボビン22(22a、22b)に巻かれた樹脂含浸した、撚り加工済みの樹脂含浸未硬化ストランドf2は、ボビン22より巻き出される。ストランドf2は、巻き出し装置53と、成形硬化セクション100B1、100B2を構成する成形硬化装置40との間、及び、成形硬化装置40と後述の引き取り装置80との間にて所定の緊張力が付与された状態にて、成形硬化装置40を通され、扁平FRP板2Aとされる。扁平FRP板2Aは、その後引き取りセクション100B3へと緊張下に送給される。
【0082】
更に説明すると、成形硬化セクション100B1、100B2のこの巻き出し装置53には、電磁ブレーキ等の機能が付与されており、ボビン22から巻き出される未硬化樹脂含浸ストランドf2に適切な緊張力を与えることができる。
【0083】
つまり、巻き出し装置53と成形硬化装置40との間で、撚りが入れられた、且つ、未硬化樹脂含浸のストランドf2に適切な緊張力を与えることにより、束となっている強化繊維fを一様に緊張し、成形硬化セクション100B1、100B2に送入される前のストランドf2の横断面形状を円形断面、即ち、丸形状とすることができる(図3(b))。
【0084】
なお、本実施例にて、緊張力としては、樹脂含浸されたストランドf2に500g/本から10kg/本の強さを付与するのが好ましい。500g/本未満だと、丸形状を確保するのが難しくなり、10kg/本を越えると製造途中で繊維fが破断するというトラブルが発生し、安定した製造ができなくなるという問題がでてくる。テンション力は、特に、2kg/本から8kg/本の範囲が最適である。
【0085】
尚、本願明細書にて、「円形」とは、断面における縦方向、横方向における直径比が1.0〜1.5の範囲内とされる「略円形」をも含めて意味するものとする。
【0086】
本実施例によると、上記構成の製造装置100にて、巻き出しボビン22から巻き出される撚り加工済みの、且つ、未硬化の樹脂含浸ストランドf2は、必要に応じて、ガイド部材25により案内され、図3(b)に示すように、所定間隔(P1、P2)に並べた状態で、加熱・加圧・硬化セクション100B1へと連続的に供給される。即ち、複数のストランドf2は、各対をなす2本のストランドf2、f2は間隔P1で整列され、この対をなす隣り合ったストランド対同志は間隔P2(P1<P2)となるように設定して配列されている。
【0087】
本実施例にて、上述のように、加熱・加圧・硬化セクション100B1及び冷却セクション100B2は、図6に示す成形硬化装置40にて実施される。成形硬化装置40は、本実施例では、上下方向に対称配置された上、下ベルト装置40A、40Bとされる。上、下ベルト装置40A、40Bは、本実施例では同じ構造とされるので、上ベルト装置40Aについて説明する。
【0088】
図6図8(a)、(b)を参照して説明すると、上ベルト装置40Aは、スチールベルトとされるベルト本体41Aと、該ベルト本体41Aを巻回して回転移動させるための加熱加圧ローラ42Aと、冷却ローラ43Aと、加圧ローラ44Aとを備えている。ベルト本体41Aは、厚さt41が0.5〜1.5mmの無端状の鋼製のベルトなどを好適に使用し得る。本実施例では、厚さt41が1.0mm、幅w41(図8(a)参照)が500mm、周長が5530mmのステンレススチールベルトを使用した。
【0089】
また、加熱加圧ローラ42Aは、図6図8(a)に示すように、本実施例では、外径D42が500mm、胴長L42が600mmとされる円筒状の鋼製ドラムを使用し、ドラム内部に加熱源としての電気ヒータ(図示せず)を備えた構成とした。加熱加圧ローラ42Aは、加熱・加圧・硬化セクション100B1に位置し、樹脂含浸ストランドf2を加熱加圧するベルト本体41Aを所定温度、例えば、130℃〜180℃にまで加熱する。
【0090】
冷却ローラ43Aは、本実施例では、上記加熱加圧ローラ42Aと同様の鋼製ドラムを使用した。即ち、図6図8(b)に示すように、外径D43が500mm、胴長L43が600mmの円筒状の鋼製ドラムを使用し、ドラムの内部に冷却系統(冷却水配管など)(図示せず)を配置した。冷却ローラ43Aは、冷却セクション100B2に位置したベルト本体41Aを所定温度に、例えば、5℃〜20℃程度にまで冷却する。
【0091】
上記本実施例の構成のベルト装置40Aでは、加熱加圧ローラ42Aと冷却ローラ43Aの離間距離、即ち、各ローラの回転軸線間の距離L40は1980mmであった。
【0092】
本実施例によると、加熱加圧ローラ42Aと冷却ローラ43Aとの間に位置して複数個の、本実施例では6個の加圧ローラ44Aが配置されている。加圧ローラ44Aは、本実施例では、直径D44が85mm、胴長L44(図8(b)参照)は600mmとした。勿論、加圧ローラ44Aは、このような本実施例の形状、寸法構成に限定されるものではない。また、加圧ローラ44A自体も加熱源を有した加熱加圧ローラとしても良い。
【0093】
上述のように、本実施例では、下ベルト装置40Bも又、上記上ベルト装置40Aと同様の構成とした。従って、下ベルト装置40Bにて、上ベルト装置40Aと同様の構成及び機能をなす部材には、同じ参照番号に添え字「B]を付して示し、詳しい説明は省略する。
【0094】
ここで、特に、図7及び図8(a)、(b)をも参照して、成型硬化装置40の全体構成について更に説明する。
【0095】
成形硬化装置40は、上下方向に対称配置された上、下ベルト装置40A、40Bを支持するための筐体である、上ベルト装置40Aのための上フレーム70Aと、下ベルト装置40Bのための下フレーム70Bとを備えている。
【0096】
上フレーム70Aには、上ベルト装置40Aの加熱加圧ローラ42A、冷却ローラ43A、加圧ローラ44A、が回転自在に担持されており、これらローラ42A、43A、44Aにてスチールベルト41Aを回動自在に巻回している。同様に、下フレーム70Bには、下ベルト装置40Bの加熱加圧ローラ42B、冷却ローラ43B、加圧ローラ44Bが回転自在に担持されており、これらローラ42B、43B、44Bにてスチールベルト41Bを回動自在に巻回している。
【0097】
上記構成にて、本実施例によれば、上フレーム70Aは、例えば油圧装置とされる上下間隔調整手段(昇降装置)71(71a〜71d)を介して下フレーム70Bに上下動自在に支持されている。昇降装置71(71a〜71d)は、本実施例では各ベルト装置40A、40Bの各ローラ42(42A、42B)、43(43A、43B)、44(44A、44B)を回転自在に保持している上、下フレーム70A、70Bの両側部に対称配置にて合計4個配置されている。
【0098】
従って、上下間隔調整手段71(71a〜71d)を駆動することにより、上ベルト装置40Aが下ベルト装置40Bに対して上下方向に可動とされ、両スチールベルト41A、41Bの間隔G41(図6)が所定の値に設定される。
【0099】
又、本実施例では、上、下ベルト装置40A、40Bの加熱加圧ローラ42A、42Bの回転軸に取付けた駆動プーリ72A、72Bと、下フレーム70Bに設置した駆動モータ73の駆動プーリ74と、張力調整ローラ75との間に張設された駆動ベルト76により、駆動モータ73が駆動されることにより加熱加圧ローラ42A、42Bが回転駆動され、それにより、上、下ベルト装置40A、40Bのスチールベルト41A、41Bが回転駆動される。従って、冷却ローラ43A、43B及び加圧ローラ44A、44Bも回転駆動される。スチールベルト41A、41Bは、例えば、0.1〜5m/分の範囲で一定の速度で移動される。
【0100】
従って、本実施例では、未硬化状態の撚りの入った樹脂含浸ストランドf2が、少なくとも2本以上、通常、50〜300本のストランドf2が緊張状態にて、互いに対向して回転移動する対をなす加熱されたスチールベルト41A、41Bの間に送給される。スチールベルト41A、41Bは、加熱加圧ローラ42A、42Bを介して所定の温度に加熱されており、従って、樹脂含浸ストランドf2はスチールベルト41A、41Bにて挟持されることにより加熱される。更に、スチールベルト41A、41Bは、加熱加圧ローラ42A、42B及び加圧ローラ44A、44Bにより所定の距離G41に設定されているために、樹脂含浸ストランドf2は、スチールベルト41A、41Bによりその両面側から加圧され、ストランドf2の断面形状を丸形状から扁平形状に成形し、その形状にて樹脂を硬化させ、その形状のまま冷却ローラ43A、43Bにて冷却される。
【0101】
本発明によると、樹脂含浸ストランドf2は撚りが入っているので、スチールベルト加圧部で扁平に成形されたときに幅方向にも拘束されるため、一定幅の扁平ストランドが製造される。
【0102】
このように、上記本実施例で説明した具体的構成のベルト装置40A、40Bを備えた成形硬化装置40へと送給された樹脂含浸ストランドf2は、加熱・加圧・硬化セクション100B1にて所定の圧力及び温度にて加熱・加圧されて扁平形状へと成形され、そして硬化されて扁平線材2とされると同時に互いに密着接合して扁平FRP板2Aとされる。本実施例では、所望の厚さ(t)の扁平繊維強化プラスチックストランド2を得るためにストランドf2を挟持しているベルト本体41A、41Bの間隔G41は、上述のように、上下ベルト装置間隔調整手段(昇降手段)71(71a〜71d)により適宜調整される。
【0103】
通常、成形硬化セクション100B1、100B2を移動するストランドf2の移動速度、並びに、加熱・加圧・硬化セクション100B1の加熱温度、加圧力、及び冷却セクション100B2の冷却温度は、含浸されている樹脂の種類、製品としての扁平繊維強化プラスチックストランド2の樹脂含浸量、などによって適宜決められる。加熱・加圧・硬化セクション100B1及び冷却セクション100B2の長さLB1、LB2を長くすることにより、扁平繊維強化プラスチックストランド2の製造スピードが上げられる。
【0104】
以上説明した本実施例の製造方法により、図1図3(b)、(c)に示すように、丸形状断面を有する間隔P1にて整列された2本のストランドf2、f2は、加熱・加圧・硬化セクション100B1にて、横断面が矩形とされる扁平のストランド2sに成形されると共に、2本の扁平ストランド2s、2sは隣り合った両側面が密着接合され、扁平ストランド板2Asを形成する。従って、本実施例によれば、丸形状断面のストランドf2、f2を単に密着接合した場合(図3(d)(d−1))に比べ、扁平形状断面の扁平ストランド2s、2sを密着接合するために、図3(d)(d−2)に示すように、密着した両ストランドf2、f2間に生じる強化繊維が存在しない空間(v)をなくすことができ、目付け量を増やすことができる。
【0105】
一方、間隔P2で離間配置されていた円型断面のストランドf2、f2間は狭められて、各扁平ストランド板2As、2As間には空隙(g)が形成される。その後、各扁平ストランド板2Asは、硬化されて扁平FRP板2Aとされる。
【0106】
引き続いて、冷却セクション100B2にて冷却されてベルト41A、41Bから剥離された複数の扁平FRP板2Aは、引き取りセクション100B3へと送給され、ストランド表面研磨装置50を経てリール80に巻き取られる。表面研磨装置50については、後で詳しく説明する。
【0107】
なお、成形硬化装置40のベルト41(41A、41B)に未硬化状態の扁平ストランド2s及び扁平ストランド板2Asが粘着し、硬化された状態の扁平FRP板2Aのベルト41A、41Bからの良好な剥離が阻害されるのを防止するために、ベルト41A、41Bの外表面は平滑に維持しておくことが好ましい。そのために、図6に示すように、例えば磨き布などとされる研磨手段45(45A、45B)を設け、常時に、或いは、定期的に当接させて、スチールベルト表面を研磨するのが良い。また、必要に応じて、上記スチールベルト研磨手段45と共に、或いは、研磨手段45に代えて、離型剤塗布手段46(46A、46B)を設けることができる。離型剤塗布手段46を設け、ベルト表面に離型剤を薄く塗布し、更にスチールベルトを加熱することで離型剤を焼き付けることで、継続して良好な剥離が可能となる。離型剤としては、フッ素系離型剤、シリコン系離型剤が好適に使用される。
【0108】
なお、スチールベルト表面に離型剤を塗布した場合には、成形した扁平繊維強化プラスチックストランド2の表面に離型剤が付くため、その後の使い方によっては必要な接着性能が出ないといった問題がある。
【0109】
そこで、本実施例では、必要に応じて離型剤を使用した場合には、上述したように、成形硬化装置40の後に離型剤除去手段50としての表面研磨装置が設置される。表面研磨装置50としては、成形硬化された扁平FRP板2Aの上下面を軽く、サンドペーパ、鉄ヤスリ、ブラスト処理によりストランド表面を研磨する装置とされる。このような簡単な研磨装置50により扁平FRP板2Aの表面から離型剤が取れ、更には研磨の凹凸がアンカー効果によって、離型剤のない扁平FRP板以上に接着性が向上することが実験の結果分かった。扁平FRP板2Aの離型剤除去は、上記表面研磨の他、溶剤、例えばトルエンなどを使用した薬剤洗浄装置なども採用可能である。
【0110】
上述のように、成形硬化装置40から送出される扁平FRP板2Aは、引き取りセクション100B3にて表面研磨装置50により、各扁平FRP板2Aの表面が研磨された後、直径1m以上の大径の巻取リール80により所定の速度で巻き取られる。
【0111】
(FRPシートの製造方法及び装置)
次に、FRPシート1の製造方法について説明する。
【0112】
FRPシート1を作製するための扁平FRP板2Aは、図4図8(a)、(b)などを参照して説明した扁平FRP板2Aの製造方法と同様にして製造され、従って、同様の製造装置100(100A、100B)を使用することができる。ただ、扁平成形、冷却及び引き取りセクション100Bにおける引き取りセクション100B3は、図9に示すように、表面研磨装置50の後にシート化装置60が配置される点で異なるだけである。
【0113】
つまり、本発明に係るFRPシート1を製造するための製造装置100(100A、100B)は、図4に示す繊維送給、樹脂含浸、巻取セクション100A(図4)と、図9に示す扁平成形(加熱・加圧・硬化)、冷却、及び引き取りセクション100B(100B1、100B2、100B3)とにて構成される。
【0114】
本実施例によると、図4に示す製造装置100Aにて、上述したようにして、撚り加工と樹脂含浸工程を施された樹脂含浸ストランドf2が製造される。
【0115】
次いで、撚り加工と樹脂含浸工程を施されたストランドf2は、図9に示す製造装置100Bの扁平成形(加熱・加圧・硬化)、冷却及び引き取りセクション100B1、100B2、100B3にて、ストランドf2の扁平形状成形と樹脂硬化を行い、扁平FRP板2Aを作製し、次いで、FRPシート1が作製される。
【0116】
更に説明すれば、本実施例によれば、図9に示すように、加熱・加圧・硬化セクション100B1及び冷却セクション100B2にて冷却されてベルトから剥離された複数の扁平FRP板2Aは、表面研磨装置50及びシート化装置60を経てFRPシート1とされ、リール80に巻き取られる。
【0117】
上述したように、加熱・加圧・硬化及び冷却装置40から剥離された扁平FRP板2Aの表面は極めて平滑性が高く、また、場合によっては、離型剤が付着している場合もある。扁平FRP板2Aの表面平滑性が良いこと、或いは、表面に付着した離型剤は、製品としてのFRPシート1を補強材として構造物に接着する際に、或いは、RTM成型用FRP材として使用する場合には好ましくない。
【0118】
従って、成形硬化装置40の出口に、上述したように、例えば表面研磨装置50のような離型剤除去手段を設け、成形硬化装置40からの扁平FRP板2Aの表面を粗面化すること、また、扁平FRP板2Aの表面から離型剤を除去することが好ましい。
【0119】
表面研磨装置50により、その表面が所望の粗さに粗面化され、また、離型剤が除去された扁平FRP板2Aは、図3(c)に示すように、互いに間隔(g)を持って長手方向に引き揃えられた状態でシート化装置60に送給される。各扁平繊維強化プラスチックストランド2は、シート化装置60にて固定部材3が接着され、図2に示すようなFRPシート1とされる。シート化装置60には、固定部材3を供給する固定部材供給手段61、及び、固定部材3を扁平繊維強化プラスチックストランド2に接着し、複数の扁平繊維強化プラスチックストランド2を一体化し、シート状とする加熱接着冷却加圧手段62が配置されている。
【0120】
つまり、本実施例にて、固定部材供給手段61は、上述したように、緯糸、メッシュ状部材などとされる固定部材3を、整列された扁平FRP板2Aの両側或いは一側に供給し、次いで、加熱接着冷却加圧手段62にて一体とする。
【0121】
上記説明では、FRPシート1は、図9に示す製造装置100Bにて、樹脂含浸未硬化ストランドf2から扁平FRP板2Aを作製し、引き続いて、これら扁平FRP板2Aにシート化装置60にて固定部材3を供給して連続的に作製されるものとして説明した。しかし、図6に示す製造装置100Bにて作製され巻取リール80に巻き取られた扁平FRP板2Aを使用して作製することもできる。つまり、所定本数の扁平FRP板2Aを巻取リール80から巻き出し、図2に示すように、平面状に並べ、図9を参照して説明したと同様の構成とされるシート化装置60へと供給して固定部材3にて一体に保持することにより製造することもできる。
【0122】
いずれの方法にて作製しようと、本発明に従ったFRPシート1は、上述したように、隣り合った扁平繊維強化プラスチック板2A、2Aの間には長手方向に沿って所定の間隙(g)を設ける。この間隙(g)は、0.1mm〜3.0mmとすることができる。
【0123】
上記説明した本発明に従った扁平FRP板2A及びFRPシート1の製造方法によれば、次のような特長を有している。
【0124】
本実施例の製造方法では、所定の撚りをいれた樹脂含浸したストランドに適切な緊張力を付与することにより丸形状とされた樹脂含浸のストランドf2を、加熱したスチールベルト41A、41Bの間に挟んで加圧することにより、例えば50Kといった大径のストランドを用いて繊維目付の大きい、厚み(t)1.0mm〜2mm(繊維目付900〜1800g/m2)、幅(W)が5mm〜500mmとされる扁平FRP板2A(或いは、FRPシート1)を効率よく、即ち、大幅に成形歩留まりを増大して製造することができる。また、本実施例の製造方法によれば、樹脂含浸のストランドf2へのダメージが少なく、製造中の糸切れの頻度が殆どないことが分かった。従って、本発明の扁平FRP板2A、特に、FRPシート1は、高目付、高強度であるにも拘らず、変形性能が良く、RTM成型等に好適使用することができ、高強度の大型成型体を製造することができる。
【符号の説明】
【0125】
1 FRPシート(繊維強化プラスチックシート)
2(2a、2b) 扁平FRP線材(扁平繊維強化プラスチック線材)
2s 扁平ストランド
2A(2A1〜2An) 扁平FRP板(扁平繊維強化プラスチック板)
2As 扁平ストランド板
3 固定部材
17 樹脂含浸槽
40(40A、40B) 成形硬化装置(加熱・加圧・硬化及び冷却装置)
41(41A、41B) スチールベルト(ベルト本体)
42(42A、42B) 加熱・加圧ローラ
43(43A、43B) 冷却ローラ
44(44A、44B) 加圧ローラ
45 スチールベルト研磨手段
50 ストランド表面研磨装置(離型剤除去手段)
60 シート化装置
80 巻取リール
f 強化繊維フィラメント
f1 強化繊維束(ストランド)
f2 樹脂含浸未硬化ストランド
R マトリックス樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9