特開2015-172377(P2015-172377A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-172377(P2015-172377A)
(43)【公開日】2015年10月1日
(54)【発明の名称】ベルト式無段変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 9/18 20060101AFI20150904BHJP
【FI】
   F16H9/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-47463(P2014-47463)
(22)【出願日】2014年3月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000238360
【氏名又は名称】武蔵精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】岡本 晃尚
(72)【発明者】
【氏名】渥美 隆士
(72)【発明者】
【氏名】西村 学
【テーマコード(参考)】
3J050
【Fターム(参考)】
3J050AA02
3J050BA03
3J050BB04
3J050BB08
3J050CA02
3J050DA03
(57)【要約】
【課題】可動シーブの移動遅れを抑制すると共にアクチュエータの組立作業を容易にするベルト式無段変速機を提供することを課題とする。
【解決手段】出力軸に第1ピン44と第2ピン45とを設け、これら第1ピン44と第2ピン45でアームのフォーク部53を挟み、第1ピン44又は第2ピン45の一方を介して出力軸の移動をアームへ伝えるようにした。すなわち、出力軸とアームとの係合を、第1ピン44又は第2ピン45のみで行い、出力軸とアームとの間に存在する隙間を1箇所に減らした。
【効果】出力軸とアームとの間に存在する隙間を1箇所に減らしたため、可動シーブの移動遅れを大幅に抑制することができる。また、第1ピン44と第2ピン45との間にフォーク部53を挿し込むだけで出力軸とアームとを係合でき、さらに、アームの挿し込み深さが出力軸の移動に与える影響も少ないため、アクチュエータの組立作業を極めて容易にできる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プーリ軸に固定される固定シーブと、前記プーリ軸に支持され前記固定シーブに対して相対移動可能な可動シーブと、この可動シーブと前記固定シーブとの間に巻き掛けられるベルトと、前記可動シーブに取付けられ前記プーリ軸の軸線と交差する方向へ延びるアームと、このアームに係合し前記プーリ軸の軸線に平行に配置される出力軸と、この出力軸を軸方向へ移動させることで前記アームを介して前記可動シーブを移動させるアクチュエータとを備えたベルト式無段変速機において、
前記出力軸は、軸方向に所定の間隔を置いて配置された第1ピン及び第2ピンを備えており、これら第1ピンと第2ピンとで前記アームの先端を挟み、該第1ピン又は第2ピンの一方を介して前記出力軸の移動を前記アームへ伝えるようにしたことを特徴とするベルト式無段変速機。
【請求項2】
前記第1ピン及び前記第2ピンの軸線を、前記出力軸の軸線と交差させたことを特徴とする請求項1記載のベルト式無段変速機。
【請求項3】
前記アームは、内部すきまを有する軸受を介して前記可動シーブに取付けられており、
前記内部すきまに起因して前記軸受の外輪が内輪に対して傾くことで前記アームが最も傾いた状態でも、前記アームと前記第1ピン又は前記第2ピンとの間に隙間が確保されるように、前記第1ピン及び前記第2ピンの間隔を設定したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のベルト式無段変速機。
【請求項4】
前記プーリ軸の軸直角方向から視た場合に、前記第1ピン及び前記第2ピンを前記ベルトの軌跡外に配置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のベルト式無段変速機。
【請求項5】
前記第1ピンは、前記出力軸を貫通して突出する2つの突出部を有すると共に、前記第2ピンは、前記出力軸を貫通して突出する2つの突出部を有し、
前記アームの先端は二股のフォーク部とされ、このフォーク部で前記出力軸を挟むようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のベルト式無段変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動シーブを移動させるアクチュエータを備えたベルト式無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの出力回転を適度に変速して駆動輪に伝える変速機には各種の構造が提案されている。中でも、近年は、ベルト式無段変速機が普及するようになってきた。ベルト式無段変速機は、駆動プーリと従動プーリとベルトを基本要素としており、駆動プーリ及び従動プーリは、各々固定シーブと可動シーブからなっている。このようなベルト式無段変速機の一例として、例えば特許文献1には、可動シーブをアクチュエータで移動させる技術が開示されている(特許文献1(図13)参照。)。
【0003】
特許文献1のベルト式無段変速機では、アクチュエータ(90)(括弧付き数字は、特許文献1に記載された符号を示す。以下同様)の出力ロッド(91)と可動シーブ(62)とが、ベアリング(64)とアーム部(82)と連結部材(130)とで機械的に連結されている。
【0004】
詳細には、アーム部(82)がベアリング(64)の外輪に取付けられており、連結部材(130)がピン(84)を介してアーム部(82)に連結され、出力ロッド(91)がピン(132)を介して連結部材(130)に連結されている。
【0005】
ここで、出力ロッド(91)と連結部材(130)との係合には、U溝(131)にピン(132)を嵌め込む構造を採用しているため、U溝(131)へのピン(132)の嵌め込み位置が深くなりすぎると、出力ロッド(91)に無理な力が加わり、出力ロッド(91)の円滑な移動が妨げられる。そのため、アクチュエータ(90)の組立作業に注意を要する。
【0006】
また、ピン(84)と連結部材(130)との間には、僅かではあるがピン(84)を挿入するための隙間が存在する。同様に、ピン(132)とU溝(131)との間にも僅かではあるが隙間が存在する。そのため、出力ロッド(91)が移動を開始すると、ピン(132)とU溝(131)との間の隙間がゼロになってから連結部材(130)が移動を開始し、次に、ピン(84)と連結部材(130)との間の隙間がゼロになってからアーム部(82)が移動を開始する。すなわち、特許文献1の構造では複数箇所の隙間が存在するため、アクチュエータ(90)を作動させてから可動シーブ(62)が移動を開始するまでに遅れが発生する。
【0007】
さらには、特許文献1の構造では、ベルト(53)とピン(132)とが図面表裏方向で重なっているため、ベルト(53)の巻き掛け半径が変化してベルト(53)が図面表裏方向へ移動した場合でも、ピン(132)とベルト(53)が接触しないような構造を採る必要がある。しかしながら、そうした構造では変速機の小型化が難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012−47292公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、可動シーブの移動遅れを抑制すると共にアクチュエータの組立作業を容易にするベルト式無段変速機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、プーリ軸に固定される固定シーブと、前記プーリ軸に支持され前記固定シーブに対して相対移動可能な可動シーブと、この可動シーブと前記固定シーブとの間に巻き掛けられるベルトと、前記可動シーブに取付けられ前記プーリ軸の軸線と交差する方向へ延びるアームと、このアームに係合し前記プーリ軸の軸線に平行に配置される出力軸と、この出力軸を軸方向へ移動させることで前記アームを介して前記可動シーブを移動させるアクチュエータとを備えたベルト式無段変速機において、
前記出力軸は、軸方向に所定の間隔を置いて配置された第1ピン及び第2ピンを備えており、これら第1ピンと第2ピンとで前記アームの先端を挟み、該第1ピン又は第2ピンの一方を介して前記出力軸の移動を前記アームへ伝えるようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明では、第1ピン及び第2ピンの軸線を、出力軸の軸線と交差させたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る発明では、アームは、内部すきまを有する軸受を介して可動シーブに取付けられており、内部すきまに起因して軸受の外輪が内輪に対して傾くことでアームが最も傾いた状態でも、アームと第1ピン又は第2ピンとの間に隙間が確保されるように、第1ピン及び第2ピンの間隔を設定したことを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る発明では、プーリ軸の軸直角方向から視た場合に、第1ピン及び第2ピンをベルトの軌跡外に配置したことを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る発明では、第1ピンは、出力軸を貫通して突出する2つの突出部を有すると共に、第2ピンは、出力軸を貫通して突出する2つの突出部を有し、アームの先端は二股のフォーク部とされ、このフォーク部で出力軸を挟むようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、出力軸は、軸方向に所定の間隔を置いて配置された第1ピン及び第2ピンを備えており、これら第1ピンと第2ピンとでアームの先端を挟み、第1ピン又は第2ピンの一方を介して出力軸の移動をアームへ伝えるようにした。すなわち、出力軸とアームとの係合を、第1ピン又は第2ピンのみで行い、出力軸とアームとの間に存在する隙間を1箇所に減らした。結果、従来の構造では、複数個所の隙間が存在したが、本発明では隙間を1箇所に減らしたため、可動シーブの移動遅れを大幅に抑制することができる。
また、第1ピンと第2ピンとの間にアームの先端を挿し込むだけで出力軸とアームとを係合でき、さらに、アームの挿し込み深さが出力軸の移動に与える影響も少ないため、アクチュエータの組立作業を極めて容易にできる。
【0016】
請求項2に係る発明では、第1ピン及び第2ピンの軸線を出力軸の軸線と交差させたため、アームから出力軸に反力が加わっても、出力軸に曲げモーメントが作用しない。結果、軸力のみを考慮して出力軸の強度を設計すれば良く、出力軸の小径化が可能となる。また、出力軸に曲げモーメントが作用しないため、出力軸の円滑な移動が保証される。
【0017】
請求項3に係る発明では、アームが最も傾いた状態でも、アームと第1ピン又は第2ピンとの間に隙間が確保されるため、アームがどのような傾き状態にあっても第1ピン及び第2ピンの両方に同時に接触することはなく、それによって出力軸に無理な力が加わることがない。結果、出力軸の円滑な移動が保証される。
【0018】
請求項4に係る発明では、プーリ軸の軸直角方向から視た場合に、第1ピン及び第2ピンをベルトの軌跡外に配置したため、ベルトが第1ピン及び第2ピンに接触する心配がない。結果、ベルトを出力軸に接近させることができ、変速機のコンパクト化が可能となる。また、ベルトが第1ピン及び第2ピンに接触する心配がないため、ベルトの損傷を防ぐことができる。
【0019】
請求項5に係る発明では、アームの先端は二股のフォーク部とされ、このフォーク部で出力軸を挟むようにしたため、出力軸の回り止めとアームの回り止めとを行うことができる。結果、係合だけでなく複数の回り止めの機能も兼用させて、構造の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係るベルト式無段変速機の要部断面図である。
図2図1の2矢視図である。
図3図2の3−3線断面図である。
図4】軸受の作用図である。
図5】第1ピンと第2ピンとの間の間隔を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0022】
図1に示すように、ベルト式無段変速機10は、クランク軸11の一端に形成されるプーリ軸12と、このプーリ軸12に支持される駆動プーリ13と、この駆動プーリ13と図示しない従動プーリとに掛け渡されるベルト14とを基本要素としている。さらに、駆動プーリ13は、プーリ軸12に固定される固定シーブ15と、プーリ軸12に支持され固定シーブ15に対して相対移動可能な可動シーブ16からなり、これら固定シーブ15と可動シーブ16との間にベルト14が巻き掛けられている。
【0023】
可動シーブ16の背後には、ランププレート17がプーリ軸12に固定されており、これら可動シーブ16とランププレート17との間に複数の遠心ウエイト19が保持されている。プーリ軸12が回転し、その回転速度に応じた遠心力が遠心ウエイト19に作用すると、遠心ウエイト19が可動シーブ16のカム面21に沿って径外方へ移動し、可動シーブ16を固定シーブ15側へ移動させる。結果、固定シーブ15と可動シーブ16との間隔が狭くなり、ベルト14の巻き掛け半径が大きくなる。
【0024】
また、可動シーブ16は、ベルト14の摺動面とカム面21とが別部品で構成されており、両面間のボス部23には、軸受24を介してアーム26が取付けられている。さらに、アーム26の先端には、遠心ウエイト19と協働して可動シーブ16を移動させるアクチュエータ30の出力軸31が係合されている。
【0025】
アクチュエータ30は、モータ32の動力を伝達するギヤ群33と、このギヤ群33を介して回転駆動されるナット部材34と、このナット部材34の回転を直線運動に変えて出力する出力軸31とを有している。ギヤ群33は複数個のギヤで構成されており、最終段のギヤ36は、ナット部材34と一体に形成されている。これらギヤ群33及びナット部材34は、アクチュエータケース38に収容されている。
【0026】
アクチュエータケース38は、ギヤ群33の各回転軸およびナット部材34を両端でそれぞれ支持する構造となっており、いずれも金属製の第1ケース41と第2ケース42とからなっている。
【0027】
図2に示すように、出力軸31の先端には、第1ピン44が取付けられると共に、さらに、この第1ピン44から所定の間隔Lを置いた位置に第1ピン44と同径の第2ピン45が取付けられている。そして、これら第1ピン44と第2ピン45とでアーム26の先端を挟み、第1ピン44又は第2ピン45の一方を介して出力軸31の移動をアーム26へ伝えるようになっている。すなわち、本例では、出力軸31とアーム26との係合を、第1ピン44又は第2ピン45のみで行い、出力軸31とアーム26との間に存在する隙間を1箇所に減らした。結果、隙間に起因する可動シーブ16の移動遅れを大幅に抑制することができる。
【0028】
さらに、プーリ軸12の軸直角方向から視た場合に、第1ピン44及び第2ピン45をベルト14の軌跡外に配置した(図1参照。)。これにより、ベルト14が第1ピン44及び第2ピン45に接触する心配がなく、ベルト14を出力軸31に接近させることができるため、変速機のコンパクト化が可能となる。また、ベルト14が第1ピン44及び第2ピン45に接触する心配がないため、ベルト14の損傷を防ぐことができる。
【0029】
なお、第1ピン44及び第2ピン45は、嵌め合いによって出力軸31に固定されている。ただし、出力軸31への第1ピン44及び第2ピン45の固定方法は、嵌め合いに限られず、ねじ等による機械的な方法や、接着剤等による化学的な方法であっても良い。
【0030】
図3に示すように、出力軸31の先端は、互いに平行な2つの平面部47、48となっている。第2ピン45は、平面部47から平面部48へ貫通しており、第2ピン45の両端が平面部47、48から突出している。すなわち、第2ピン45は上下に突出部51、52を有している。同様に、第1ピン44も突出部51、52を有している(図2参照。)。
【0031】
なお、本例のように第1ピン44及び第2ピン45を貫通させる他、第1ピン44及び第2ピン45を上ピースと下ピースとに分割し、上ピースを平面部47に固定すると共に下ピースを平面部48に固定して、突出部51、52としても良い。
【0032】
アーム26の先端は二股のフォーク部53とされており、このフォーク部53で平面部47と平面部48を挟むようになっている。すなわち、フォーク部53で出力軸31を挟むようにしたため、出力軸31の回り止めとアーム26の回り止めとを行うことができる。結果、係合だけでなく複数の回り止めの機能も兼用させて、構造の簡素化を図ることができる。
【0033】
さらに、第2ピン45の軸線45aは、出力軸31の軸線31a(この軸線31aは図面表裏方向に延びている。)と交差している。出力軸31が移動して第2ピン45でフォーク部53が図面表側へ押されると、アーム26から出力軸31に図面奥側への反力が加わる。しかしながら、第2ピン45の軸線45aが出力軸31の軸線31aと交差しているため、出力軸31には曲げモーメントが作用しない。結果、軸力のみを考慮して出力軸31の強度を設計すれば良く、出力軸31の小径化が可能となる。また、出力軸31に曲げモーメントが作用しないため、出力軸31の円滑な移動が保証される。
【0034】
これと同様に、第1ピン(図2、符号44)の軸線も出力軸31の軸線31aと交差しており、第1ピン44でフォーク部53が押されても、出力軸31に曲げモーメントが作用しないようになっている。
【0035】
図4(a)に示すように、軸受24は、主に内輪54と転動体55と外輪56とからなる。軸受24は、転動体55が内輪54と外輪56との間を転動するため、転動時のフリクションや発熱を下げるべく数十μm程度の内部すきまが設けられている。
【0036】
この内部すきまの存在により、図4(b)に示すように、内輪54を固定して外輪56にモーメントを作用させると、内部すきまの分だけ遊びが詰まり、外輪56が内輪54に対してθだけ傾く。
【0037】
ベルト式無段変速機10においては、出力ロッド31が移動することでアーム26を介して外輪56にモーメントが作用するため、外輪56に取付けられたアーム26が傾き、結果、図5(a)に示すように、フォーク部53が傾く。
ここで、第1ピン44及び第2ピン45の間隔Lは、フォーク部53の傾きが最大のθmaxの状態(内部すきまの遊びが完全に詰まった状態)であっても、フォーク部53と第1ピン44との間にδ1の隙間が確保されるように設定した。すなわち、フォーク部53の厚さをtとすると、L=(t/cosθmax)+δ1とした。
【0038】
なお、図5(a)では、図1において出力軸31が右側へ移動し、その移動が第2ピン45を介してフォーク部53へ伝えられる状態を図示しているが、図1において出力軸31が左側へ移動する場合には、その移動が第1ピン44を介してフォーク部53へ伝えられ、図5(a)に示す状態とは反対側にフォーク部53がθmaxだけ傾く。この場合、フォーク部53と第2ピン45との間にδ1の隙間が確保される。
【0039】
すなわち、フォーク部53と第1ピン44又は第2ピン45との間には、常に隙間δ1が確保され、フォーク部53がどのような傾き状態にあっても第1ピン44及び第2ピン45の両方に同時に接触することはなく、それによって出力軸31に無理な力が加わることがない。結果、出力軸31の円滑な移動が保証される。なお、δ1は数μm程度に設定される。
【0040】
また、アクチュエータ30の組立て時には、図5(b)に示すように、1/2δ1より大きな隙間δ2、δ2が確保された状態で、第1ピン44と第2ピン45との間にフォーク部53を挿し込むことができる。このように、第1ピン44と第2ピン45との間にフォーク部53を挿し込むだけで出力軸31とアーム26とを係合でき、さらに、フォーク部53の挿し込み深さが出力軸31の移動に与える影響も少ないため、アクチュエータ30の組立作業を極めて容易にできる。
【0041】
なお、本例では第1ピン44と第2ピン45とを同径としたが、図1において出力軸31が右側へ移動する場合と左側へ移動する場合とで、アーム26から出力軸31に加わる反力が異なるため、反力の大きさに応じて第1ピン44及び第2ピン45の径を設定しても良い。これにより、第1ピン44及び第2ピン45の強度を最適に確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、自動二輪車に搭載されるベルト式無段変速機に好適である。
【符号の説明】
【0043】
10…ベルト式無段変速機、12…プーリ軸、14…ベルト、15…固定シーブ、16…可動シーブ、24…軸受、26…アーム、30…アクチュエータ、31…出力軸、31a…出力軸の軸線、44…第1ピン、45…第2ピン、45a…第2ピンの軸線、51、52…突出部、53…フォーク部、54…内輪、55…外輪、L…第1ピン及び第2ピン間の間隔、δ1…隙間。
図1
図2
図3
図4
図5