特開2015-172629(P2015-172629A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2015172629-光変調器 図000003
  • 特開2015172629-光変調器 図000004
  • 特開2015172629-光変調器 図000005
  • 特開2015172629-光変調器 図000006
  • 特開2015172629-光変調器 図000007
  • 特開2015172629-光変調器 図000008
  • 特開2015172629-光変調器 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-172629(P2015-172629A)
(43)【公開日】2015年10月1日
(54)【発明の名称】光変調器
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/03 20060101AFI20150904BHJP
   G02F 1/05 20060101ALI20150904BHJP
【FI】
   G02F1/03 505
   G02F1/05 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-47912(P2014-47912)
(22)【出願日】2014年3月11日
(71)【出願人】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】吉田 寛彦
(72)【発明者】
【氏名】土居 正治
(72)【発明者】
【氏名】久保田 嘉伸
(72)【発明者】
【氏名】杉山 昌樹
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA22
2K102BA02
2K102BB01
2K102BB04
2K102BC04
2K102CA00
2K102DA05
2K102DB04
2K102DC03
2K102DD04
2K102DD05
2K102EA02
(57)【要約】
【課題】変調効率を向上しつつ、光の伝播損失を抑制すること。
【解決手段】光変調器は、基板と、電極と、光導波路とを備える。基板は、平坦部と、該平坦部から突出する凸部とを有する。電極は、凸部によって支持される。光導波路は、凸部の内部に形成され、電極に印加される電圧を用いて変調される光を導波する。凸部は、光導波路により導波される光が分布する光分布領域のうち電極側に存在する一部の領域を収容する。平坦部を基準とした凸部の先端の高さは、凸部の突出方向に沿った光分布領域の幅よりも小さい。凸部の先端の幅は、凸部の突出方向に直交する方向に沿った光分布領域の幅よりも小さい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦部と、該平坦部から突出する凸部とを有する基板と、
前記凸部によって支持される電極と、
前記凸部の内部に形成され、前記電極に印加される電圧を用いて変調される光を導波する光導波路とを備え、
前記凸部は、前記光導波路により導波される光が分布する光分布領域のうち前記電極側に存在する一部の領域を収容し、
前記平坦部を基準とした前記凸部の先端の高さは、前記凸部の突出方向に沿った前記光分布領域の幅よりも小さく、
前記凸部の先端の幅は、前記凸部の突出方向に直交する方向に沿った前記光分布領域の幅よりも小さい
ことを特徴とする光変調器。
【請求項2】
前記凸部の先端の高さは、前記凸部の突出方向に沿った前記光分布領域の幅の0.6倍よりも小さい
ことを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項3】
前記基板は、LiNbO3、LiTaO3及びPLZTのうちいずれか一つにより形成される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光変調器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の光通信システムの高速化及び大容量化に伴って、光変調器の変調効率を向上することが検討されている。光変調器の変調効率を向上するための構造として、基板の平坦部から電極を支持するための凸部を突出させ、かつ、変調対象となる光を導波する光導波路を凸部の内部に形成する構造が知られている。この構造では、光導波路により導波される光のモードフィールドが凸部の内部に閉じ込められる。このため、凸部上の電極に電圧が印加されると、凸部の内部に閉じ込められた光が電圧によって効率的に変調される。なお、光のモードフィールドとは、光導波路により導波される光が分布する領域を指す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/095333号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構造では、変調効率を向上しつつ、光の伝播損失を抑制することまでは考慮されていない。
【0005】
すなわち、従来の構造では、変調効率をさらに向上するために、基板の平坦部を基準とした凸部の先端の高さを増大することが考えられる。しかしながら、凸部の先端の高さを増大するほど、凸部上の電極から延びる電気力線の長さが長くなる。凸部上の電極から延びる電気力線の長さが長くなるほど、凸部の内部に形成された光導波路において発生する電界が弱くなる。その結果、変調効率が低下する恐れがある。
【0006】
一方で、凸部の先端の高さが減少するほど、凸部上の電極から延びる電気力線の長さは、短くなる。しかしながら、凸部の先端の高さが減少するほど、凸部の内部に形成された光導波路に直交する方向の電界成分が弱くなる。その結果、変調効率が低下する恐れがある。
【0007】
さらに、従来の構造では、変調効率をさらに向上するために、凸部の先端の幅を小さくすることも考えられる。しかしながら、凸部の先端の幅を過度に小さくした場合には、凸部の内部に形成された光導波路から凸部の側面へ向かう光が、凸部の側面の表面荒れによって散乱する。結果として、凸部の先端の幅を過度に小さくした場合には、光の伝播損失が増大する恐れがある。
【0008】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、変調効率を向上しつつ、光の伝播損失を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の開示する光変調器は、一つの態様において、基板と、電極と、光導波路とを備える。基板は、平坦部と、該平坦部から突出する凸部とを有する。電極は、前記凸部によって支持される。光導波路は、前記凸部の内部に形成され、前記電極に印加される電圧を用いて変調される光を導波する。前記凸部は、前記光導波路により導波される光が分布する光分布領域のうち前記電極側に存在する一部の領域を収容する。前記平坦部を基準とした前記凸部の先端の高さは、前記凸部の突出方向に沿った前記光分布領域の幅よりも小さい。前記凸部の先端の幅は、前記凸部の突出方向に直交する方向に沿った前記光分布領域の幅よりも小さい。
【発明の効果】
【0010】
本願の開示する光変調器の一つの態様によれば、変調効率を向上しつつ、光の伝播損失を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施例に係る光変調器を含む光送信装置の構成例を示す図である。
図2図2は、図1に示した光変調器のA−A線における断面図である。
図3図3は、凸部高さHと、変調効率との関係を示す図である。
図4図4は、凸部高さHが増大するほど、変調効率が低下する現象を説明するための図である。
図5図5は、凸部高さHが減少するほど、変調効率が低下する現象を説明するための図である。
図6図6は、凸部幅Wと、変調効率との関係を示す図である。
図7図7は、凸部の形状と、光の伝播損失との関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本願の開示する光変調器の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例により開示技術が限定されるものではない。
【実施例】
【0013】
図1は、本実施例に係る光変調器を含む光送信装置の構成例を示す図である。図1に示すように、本実施例に係る光送信装置1は、光ファイバ2、光変調装置10及び光ファイバ3を有する。
【0014】
光ファイバ2は、図示しない光源から発される光を光変調装置10に入力する。
【0015】
光変調装置10は、筐体11と、光変調器12、接続部材13及び接続部材14を有する。筐体11は、光変調器12、接続部材13及び接続部材14を収容する筐体である。光変調器12は、接続部材13を介して光ファイバ2から入力される光を変調することによって、変調光を生成し、生成した変調光を接続部材14を介して光ファイバ3に出力する。光変調器12の構成の詳細は、後述される。接続部材13は、光ファイバ2と光変調器12とを光学的に接続する部材である。接続部材14は、光変調器12と光ファイバ3とを光学的に接続する部材である。
【0016】
光ファイバ3は、光変調装置10から入力される変調光を後段側へ伝送する。
【0017】
次に、図2を参照して、図1に示した光変調器12の構成の詳細を説明する。図2は、図1に示した光変調器のA−A線における断面図である。図2に示すように、光変調器12は、基板121、電極122及び光導波路123を有する。
【0018】
基板121は、LiNbO3、LiTaO3及びPLZTのうちいずれか一つにより形成される基板である。基板121は、平坦部121aと、平坦部121aから突出する凸部121bと、平坦部121a及び凸部121bを覆うバッファ層121cとを有する。バッファ層121cは、例えば、SiO2により形成され、光導波路123から電極122へ向かう光を遮断する。以下では、平坦部121a及びバッファ層121cを併せて「平坦部121a」と表記し、凸部121b及びバッファ層121cを併せて「凸部121b」と表記するものとする。
【0019】
電極122は、凸部121bによって支持される。電極122には、図示しない電圧源が接続される。電圧源は、電極122に所定の電圧を印加する。電極122に電圧が印加されると、光導波路123によって導波される光が変調されて変調光が得られる。
【0020】
光導波路123は、凸部121bの内部に形成される。光導波路123は、変調対象となる光を導波する。光導波路123によって導波される光は、所定の領域において分布する。光導波路123によって導波される光が分布する領域は、モードフィールドと呼ばれる。光のモードフィールドは、光分布領域の一例である。図2の例では、光導波路123によって導波される光のモードフィールドMが示されている。
【0021】
ここで、本実施例における光のモードフィールドMと、凸部121bの形状との関係を説明する。図2において、凸部121bの突出方向がy軸方向に相当し、凸部121bの突出方向に直交する方向がx軸方向に相当するものとする。
【0022】
凸部121bは、図2に示すように、光導波路123により導波される光のモードフィールドMのうち電極122側に存在する一部の領域を収容する。言い換えると、凸部121bは、光導波路123により導波される光のモードフィールドMのうち電極122側に存在する一部の領域のみを収容し、かつ、光のモードフィールドMのうち該一部の領域以外の他の領域を基板121の内部側へ染み出させる。このような凸部121bの形状によって、凸部121bの内部に形成された光導波路123から凸部121bの側面へ向かう光が減少する。その結果、凸部121bの側面の表面荒れに起因した光の散乱が抑制される。
【0023】
また、平坦部121aを基準とした凸部121bの先端の高さ(以下「凸部高さ」という)Hは、y軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wyよりも小さい。好ましくは、凸部高さHは、y軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wyの0.6倍よりも小さい。より好ましくは、凸部高さHは、y軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wyの0.6倍よりも小さく、かつ、0よりも大きい。凸部高さHをy軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wyよりも小さくする理由について、以下図3図5を用いて説明する。
【0024】
図3は、凸部高さHと、変調効率との関係を示す図である。図3において、横軸は、凸部高さH[μm]を示し、縦軸は、光変調器12の変調効率[n.u.]を示している。なお、図3に示す光変調器12の変調効率は、凸部高さHが3[μm]である場合の値を用いて規格化された値である。また、図3の説明では、y軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wyが、7[μm]であるものとする。
【0025】
図3に示すように、光変調器12の変調効率は、凸部高さHに応じて変動する。図3に示す例では、凸部高さHが、y軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wの0.6倍よりも小さい3[mm]である場合に、光変調器12の変調効率が最大となる。また、凸部高さHが増大するほど、変調効率が低下し、凸部高さHが減少するほど、変調効率が低下する。
【0026】
図4は、凸部高さHが増大するほど、変調効率が低下する現象を説明するための図である。図4に示すように、凸部高さHが増大するほど、電極122から他の電極122まで延びる電気力線200の長さが長くなる。電極122から他の電極122まで延びる電気力線200の長さが過度に長くなると、凸部121bの内部に形成された光導波路123において発生する電界が弱くなる。すると、変調効率が低下する。
【0027】
図5は、凸部高さHが減少するほど、変調効率が低下する現象を説明するための図である。図5に示すように、凸部高さHが0まで減少した場合、すなわち、凸部121bが存在しない場合には、電極122から他の電極122まで延びる電気力線300の長さが短くなる。しかしながら、凸部121bが存在しない場合には、凸部121bの内部に形成された光導波路123に直交する方向の電界成分が弱くなる。すると、変調効率が低下する。
【0028】
図4及び図5に示した現象を基に本発明者らが鋭意検討したところ、凸部高さHが、y軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wyよりも小さい場合に、変調効率が向上することが判明した。そこで、本実施例の光変調器12では、凸部高さHが、y軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wyよりも小さく、かつ、0よりも大きい値に設定される。
【0029】
また、凸部121bの先端の幅(以下「凸部幅」という)Wは、図2に示すように、x軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wxよりも小さい。凸部幅Wをx軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wxよりも小さくする理由について、以下図6を用いて説明する。
【0030】
図6は、凸部幅Wと、変調効率との関係を示す図である。図6において、横軸は、凸部幅W[μm]を示し、縦軸は、光変調器12の変調効率[n.u.]を示している。なお、図6に示す光変調器12の変調効率は、凸部幅Wが9[μm]である場合の値を用いて規格化された値である。また、図6の説明では、x軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wxが、9[μm]であるものとする。また、図6の説明では、凸部高さHが、y軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wyの0.6倍よりも小さい3[mm]であるものとする。
【0031】
図6に示すように、凸部幅Wが、x軸方向に沿ったモードフィールドMの幅W、すなわち、9[μm]よりも小さい場合、変調効率が向上する。これは、凸部幅Wが、x軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wxよりも小さい場合、モードフィールドMが凸部121bによって効率的に閉じ込められ、圧縮されるためであると考えられる。そこで、本実施例の光変調器12では、凸部幅Wが、x軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wxよりも小さい値に設定される。
【0032】
次いで、凸部121bの形状と、光の伝播損失との関係を説明する。図7は、凸部の形状と、光の伝播損失との関係を説明するための図である。図7において、横軸は、凸部高さH[μm]を示し、縦軸は、光導波路123における光の伝播損失[dB/cm]を示している。また、図7において、グラフ501は、凸部幅Wが7[μm]である場合の光の伝播損失を表すグラフである。グラフ502は、凸部幅Wが8[μm]である場合の光の伝播損失を表すグラフである。グラフ503は、凸部幅Wが9[μm]である場合の光の伝播損失を表すグラフである。図6の説明では、x軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wxが、9[μm]であり、y軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wyが、7[μm]であるものとする。
【0033】
図7に示すように、凸部高さHがy軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wyの0.6倍の値、すなわち、4.2[μm]よりも小さい場合、凸部幅Wがx軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wxよりも小さい場合であっても、光の伝播損失は、抑制される。ここで、光の伝播損失は、凸部121bの内部に形成された光導波路123から凸部121bの側面へ向かう光が凸部121bの側面の表面荒れに起因して散乱することによって、発生する。このため、凸部幅Wがx軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wxよりも小さい場合、凸部121bの側面の表面荒れに起因した光の散乱が促進される可能性がある。これに対して、本実施例の光変調器12では、凸部高さHが、y軸方向に沿ったモードフィールドMyの幅よりも小さく、かつ、凸部幅Wが、x軸方向に沿ったモードフィールドMxの幅よりも小さい。この凸部121bの形状によって、光のモードフィールドMと凸部121bとの重合部分が減少するので、凸部121bの側面の表面荒れに起因した光の散乱が発生し難くなる。このため、本実施例の光変調器12によれば、光の伝播損失が抑制される。
【0034】
上述してきたように、本実施例の光変調器12では、基板121の凸部121bが、光導波路123により導波される光のモードフィールドMのうち凸部121b上の電極122側に存在する一部の領域を収容する。そして、本実施例の光変調器12では、凸部高さHが、y軸方向に沿ったモードフィールドMyの幅よりも小さく、かつ、凸部幅Wが、x軸方向に沿ったモードフィールドMxの幅よりも小さい。このため、本実施例の光変調器12によれば、光のモードフィールドMのうち該一部の領域以外の他の領域を基板121の内部側へ染み出させることができ、かつ、凸部121bの側面の表面荒れに起因した光の散乱を抑制することができる。その結果、本実施例の光変調器12によれば、変調効率を向上しつつ、光の伝播損失を抑制することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 光送信装置
10 光変調装置
12 光変調器
121 基板
121a 平坦部
121b 凸部
121c バッファ層
122 電極
123 光導波路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7