【実施例】
【0013】
図1は、本実施例に係る光変調器を含む光送信装置の構成例を示す図である。
図1に示すように、本実施例に係る光送信装置1は、光ファイバ2、光変調装置10及び光ファイバ3を有する。
【0014】
光ファイバ2は、図示しない光源から発される光を光変調装置10に入力する。
【0015】
光変調装置10は、筐体11と、光変調器12、接続部材13及び接続部材14を有する。筐体11は、光変調器12、接続部材13及び接続部材14を収容する筐体である。光変調器12は、接続部材13を介して光ファイバ2から入力される光を変調することによって、変調光を生成し、生成した変調光を接続部材14を介して光ファイバ3に出力する。光変調器12の構成の詳細は、後述される。接続部材13は、光ファイバ2と光変調器12とを光学的に接続する部材である。接続部材14は、光変調器12と光ファイバ3とを光学的に接続する部材である。
【0016】
光ファイバ3は、光変調装置10から入力される変調光を後段側へ伝送する。
【0017】
次に、
図2を参照して、
図1に示した光変調器12の構成の詳細を説明する。
図2は、
図1に示した光変調器のA−A線における断面図である。
図2に示すように、光変調器12は、基板121、電極122及び光導波路123を有する。
【0018】
基板121は、LiNbO3、LiTaO3及びPLZTのうちいずれか一つにより形成される基板である。基板121は、平坦部121aと、平坦部121aから突出する凸部121bと、平坦部121a及び凸部121bを覆うバッファ層121cとを有する。バッファ層121cは、例えば、SiO2により形成され、光導波路123から電極122へ向かう光を遮断する。以下では、平坦部121a及びバッファ層121cを併せて「平坦部121a」と表記し、凸部121b及びバッファ層121cを併せて「凸部121b」と表記するものとする。
【0019】
電極122は、凸部121bによって支持される。電極122には、図示しない電圧源が接続される。電圧源は、電極122に所定の電圧を印加する。電極122に電圧が印加されると、光導波路123によって導波される光が変調されて変調光が得られる。
【0020】
光導波路123は、凸部121bの内部に形成される。光導波路123は、変調対象となる光を導波する。光導波路123によって導波される光は、所定の領域において分布する。光導波路123によって導波される光が分布する領域は、モードフィールドと呼ばれる。光のモードフィールドは、光分布領域の一例である。
図2の例では、光導波路123によって導波される光のモードフィールドMが示されている。
【0021】
ここで、本実施例における光のモードフィールドMと、凸部121bの形状との関係を説明する。
図2において、凸部121bの突出方向がy軸方向に相当し、凸部121bの突出方向に直交する方向がx軸方向に相当するものとする。
【0022】
凸部121bは、
図2に示すように、光導波路123により導波される光のモードフィールドMのうち電極122側に存在する一部の領域を収容する。言い換えると、凸部121bは、光導波路123により導波される光のモードフィールドMのうち電極122側に存在する一部の領域のみを収容し、かつ、光のモードフィールドMのうち該一部の領域以外の他の領域を基板121の内部側へ染み出させる。このような凸部121bの形状によって、凸部121bの内部に形成された光導波路123から凸部121bの側面へ向かう光が減少する。その結果、凸部121bの側面の表面荒れに起因した光の散乱が抑制される。
【0023】
また、平坦部121aを基準とした凸部121bの先端の高さ(以下「凸部高さ」という)Hは、y軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wyよりも小さい。好ましくは、凸部高さHは、y軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wyの0.6倍よりも小さい。より好ましくは、凸部高さHは、y軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wyの0.6倍よりも小さく、かつ、0よりも大きい。凸部高さHをy軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wyよりも小さくする理由について、以下
図3〜
図5を用いて説明する。
【0024】
図3は、凸部高さHと、変調効率との関係を示す図である。
図3において、横軸は、凸部高さH[μm]を示し、縦軸は、光変調器12の変調効率[n.u.]を示している。なお、
図3に示す光変調器12の変調効率は、凸部高さHが3[μm]である場合の値を用いて規格化された値である。また、
図3の説明では、y軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wyが、7[μm]であるものとする。
【0025】
図3に示すように、光変調器12の変調効率は、凸部高さHに応じて変動する。
図3に示す例では、凸部高さHが、y軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wの0.6倍よりも小さい3[mm]である場合に、光変調器12の変調効率が最大となる。また、凸部高さHが増大するほど、変調効率が低下し、凸部高さHが減少するほど、変調効率が低下する。
【0026】
図4は、凸部高さHが増大するほど、変調効率が低下する現象を説明するための図である。
図4に示すように、凸部高さHが増大するほど、電極122から他の電極122まで延びる電気力線200の長さが長くなる。電極122から他の電極122まで延びる電気力線200の長さが過度に長くなると、凸部121bの内部に形成された光導波路123において発生する電界が弱くなる。すると、変調効率が低下する。
【0027】
図5は、凸部高さHが減少するほど、変調効率が低下する現象を説明するための図である。
図5に示すように、凸部高さHが0まで減少した場合、すなわち、凸部121bが存在しない場合には、電極122から他の電極122まで延びる電気力線300の長さが短くなる。しかしながら、凸部121bが存在しない場合には、凸部121bの内部に形成された光導波路123に直交する方向の電界成分が弱くなる。すると、変調効率が低下する。
【0028】
図4及び
図5に示した現象を基に本発明者らが鋭意検討したところ、凸部高さHが、y軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wyよりも小さい場合に、変調効率が向上することが判明した。そこで、本実施例の光変調器12では、凸部高さHが、y軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wyよりも小さく、かつ、0よりも大きい値に設定される。
【0029】
また、凸部121bの先端の幅(以下「凸部幅」という)Wは、
図2に示すように、x軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wxよりも小さい。凸部幅Wをx軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wxよりも小さくする理由について、以下
図6を用いて説明する。
【0030】
図6は、凸部幅Wと、変調効率との関係を示す図である。
図6において、横軸は、凸部幅W[μm]を示し、縦軸は、光変調器12の変調効率[n.u.]を示している。なお、
図6に示す光変調器12の変調効率は、凸部幅Wが9[μm]である場合の値を用いて規格化された値である。また、
図6の説明では、x軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wxが、9[μm]であるものとする。また、
図6の説明では、凸部高さHが、y軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wyの0.6倍よりも小さい3[mm]であるものとする。
【0031】
図6に示すように、凸部幅Wが、x軸方向に沿ったモードフィールドMの幅W、すなわち、9[μm]よりも小さい場合、変調効率が向上する。これは、凸部幅Wが、x軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wxよりも小さい場合、モードフィールドMが凸部121bによって効率的に閉じ込められ、圧縮されるためであると考えられる。そこで、本実施例の光変調器12では、凸部幅Wが、x軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wxよりも小さい値に設定される。
【0032】
次いで、凸部121bの形状と、光の伝播損失との関係を説明する。
図7は、凸部の形状と、光の伝播損失との関係を説明するための図である。
図7において、横軸は、凸部高さH[μm]を示し、縦軸は、光導波路123における光の伝播損失[dB/cm]を示している。また、
図7において、グラフ501は、凸部幅Wが7[μm]である場合の光の伝播損失を表すグラフである。グラフ502は、凸部幅Wが8[μm]である場合の光の伝播損失を表すグラフである。グラフ503は、凸部幅Wが9[μm]である場合の光の伝播損失を表すグラフである。
図6の説明では、x軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wxが、9[μm]であり、y軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wyが、7[μm]であるものとする。
【0033】
図7に示すように、凸部高さHがy軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wyの0.6倍の値、すなわち、4.2[μm]よりも小さい場合、凸部幅Wがx軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wxよりも小さい場合であっても、光の伝播損失は、抑制される。ここで、光の伝播損失は、凸部121bの内部に形成された光導波路123から凸部121bの側面へ向かう光が凸部121bの側面の表面荒れに起因して散乱することによって、発生する。このため、凸部幅Wがx軸方向に沿ったモードフィールドMの幅Wxよりも小さい場合、凸部121bの側面の表面荒れに起因した光の散乱が促進される可能性がある。これに対して、本実施例の光変調器12では、凸部高さHが、y軸方向に沿ったモードフィールドMyの幅よりも小さく、かつ、凸部幅Wが、x軸方向に沿ったモードフィールドMxの幅よりも小さい。この凸部121bの形状によって、光のモードフィールドMと凸部121bとの重合部分が減少するので、凸部121bの側面の表面荒れに起因した光の散乱が発生し難くなる。このため、本実施例の光変調器12によれば、光の伝播損失が抑制される。
【0034】
上述してきたように、本実施例の光変調器12では、基板121の凸部121bが、光導波路123により導波される光のモードフィールドMのうち凸部121b上の電極122側に存在する一部の領域を収容する。そして、本実施例の光変調器12では、凸部高さHが、y軸方向に沿ったモードフィールドMyの幅よりも小さく、かつ、凸部幅Wが、x軸方向に沿ったモードフィールドMxの幅よりも小さい。このため、本実施例の光変調器12によれば、光のモードフィールドMのうち該一部の領域以外の他の領域を基板121の内部側へ染み出させることができ、かつ、凸部121bの側面の表面荒れに起因した光の散乱を抑制することができる。その結果、本実施例の光変調器12によれば、変調効率を向上しつつ、光の伝播損失を抑制することができる。