【解決手段】ビジネス・モードおよびプライベート・モードといったような複数の使用環境で動作することができる。あらかじめスワイプ操作と使用環境を関連付ける。プライベート・モードで動作するときに、タッチスクリーン103aの端部161aに対するエッジ・タッチ操作を検出するとガイド画像351を表示する。エッジ・タッチ操作に続いて行われるスワイプ操作を認識する。スワイプ操作がビジネス・モードに関連付けられていることを認識したことに応じてタッチスクリーン103aをビジネス・モードに切り換える。一連のスワイプ操作がタッチスクリーン103bまで及んだときは、タッチスクリーン103bもビジネス・モードに移行させる。
前記エッジ・タッチ操作の検出に応じて前記タッチスクリーンに前記スワイプ操作が通過する位置を示したガイド画像を表示するステップを有する請求項1に記載のコンピュータ・プログラム。
前記スワイプ操作による前記位置マークに対するタッチ操作を検出するたびに、前記第2の使用環境の画面を前記端部から徐々に拡大するように表示するステップを有する請求項6に記載のコンピュータ・プログラム。
前記スワイプ操作が前記第1のタッチスクリーンから前記第2のタッチスクリーンに向かって境界を通過することを認識したことに応じて、前記第2のタッチスクリーンが前記第2の使用環境に移行するステップを有する請求項11に記載のコンピュータ・プログラム。
前記所定の使用環境で動作するステップにおいて、前記第1のタッチスクリーンと前記第2のタッチスクリーンが同一の使用環境で動作する請求項11に記載のコンピュータ・プログラム。
前記所定の使用環境で動作するステップにおいて、前記第1のタッチスクリーンと前記第2のタッチスクリーンが相互に異なる使用環境で動作する請求項11に記載のコンピュータ・プログラム。
相互に同一または異なる使用環境で動作することが可能な隣接して配置した第1のタッチスクリーンと第2のタッチスクリーンを搭載する携帯式電子機器が使用環境を切り換える方法であって、
スワイプ操作と使用環境を関連付けるステップと、
前記第1のタッチスクリーンと前記第2のタッチスクリーンがそれぞれ所定の使用環境で動作するステップと、
前記第1のタッチスクリーンの端部に対するタッチ操作を検出するステップと、
前記タッチ操作の検出に応じて前記所定の使用環境に対するタッチ操作を無効にするステップと、
前記タッチ操作に続いて行われる前記第1のタッチスクリーンに対するスワイプ操作を識別するステップと、
前記第1のタッチスクリーンが識別した前記スワイプ操作に対応する使用環境に移行するステップと、
前記スワイプ操作が前記第2のタッチスクリーンまで到達したことを認識するステップと、
前記第2のタッチスクリーンが前記第1のタッチスクリーンと同じ使用環境に移行するステップと
を有する方法。
前記携帯式電子機器が、前記第1のタッチスクリーンを搭載する筐体と前記第2のタッチスクリーンを搭載する筐体を結合したヒンジ機構で折り畳むことが可能な折り畳み式である請求項19に記載の携帯式電子機器。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[定義]
本明細書に使用する用語について説明する。タッチスクリーンは待機モードおよび使用モードの2つの動作モードを含む。待機モードは、タッチスクリーンにログオン画面(ロック画面ともいう。)を表示して少なくともログオンのためのタッチ操作が可能な状態をいう。待機モードではタッチスクリーンに対して、誤ったタッチ操作を防いだり、カスタマイズした固定的な画面を表示したり、あるいは時刻、日付、メールの通知などのダイナミックな情報を表示することができる。
【0022】
使用モードは、タッチスクリーンにタッチ操作をして当該使用モードが含むすべてのアプリケーションを実行できる状態をいう。本発明にかかる携帯式電子機器は、
図3を参照して説明するビジネス・モードおよびプライベート・モードのような複数の使用モード(以後、使用環境ともいう。)を実装している。ログオン操作は、システムを待機状態からログオン状態に移行させるために、ユーザが待機モードで表示されているログオン画面に対して行うタッチ操作をいう。ログオン操作は、アンロックのためのタッチ操作とパスコードが設定されている場合のパスコード入力のためのタッチ操作を含む。パスコード入力のためのタッチ操作は、パスコードを入力するためのタッチ操作に加えて、必要に応じてユーザIDを入力するためのタッチ操作を含む。
【0023】
タッチ操作は、タッチスクリーンの表面に指または電子ペン(以後、本明細書においては両者を含めて単に指という。)が接触するか否かに係わらず入力座標をタッチスクリーンが認識できる状態にするすべての入力操作をいう。タッチ操作は、一連の操作においてタッチ操作の位置を変化させないタップ操作と変化させるジェスチャ操作を含む。ジェスチャ操作は、フリック操作、スワイプ操作、ドラッグ操作、および回転操作などのシングルタッチ操作と、ピンチイン、ピンチアウトといったマルチタッチ操作を含む。
【0024】
フリック操作は、タッチ操作をしている指を短い距離だけほぼ一定の方向に移動させる操作をいう。スワイプ操作は、タッチ操作をしている指をフリック操作よりも長い距離を移動させる操作をいいスライド操作ともいう。フリック操作はスワイプ操作よりも指の移動速度が速い操作をいう。ドラッグ操作は、特定オブジェクトに対してタッチ操作をした指を所定の位置まで移動させる操作をいう。ワンアクション操作は、1種類のタッチ操作で使用環境の切り換えを行う操作をいう。
【0025】
エッジ・タッチ操作は、スワイプ操作を開始するために矩形状のタッチスクリーンの4方向に存在するいずれかの端部に対して行うタッチ操作をいう。クロス・スワイプ操作は、隣接して配置された2つのタッチスクリーンの隣接する端部を通過して一方のタッチスクリーンから他方のタッチスクリーンまでスワイプする操作をいう。エッジ・タッチ操作とクロス・スワイプ操作は、本実施の形態の特有のタッチ操作であるため、後に
図4、
図5を参照して詳しく説明する。本明細書で使用するその他の特別な用語については、以下において適宜定義する。
【0026】
[携帯式電子機器の概要]
本発明の適用が可能な携帯式電子機器は、スマートフォン、ファブレット端末、またはタブレット端末などといわれ、いずれも1個または複数個のタッチスクリーンを搭載する。
図1は、このような携帯式電子機器の一例として説明する折り畳み式のスマートフォン100の外形を示す平面図および底面図である。スマートフォン100は、タッチスクリーン103aを搭載する筐体101aとタッチスクリーン103bを搭載する筐体101bが、ヒンジ機構105a、105bで結合されて開閉できるように構成している。
【0027】
スマートフォン100は、
図1(A)の収納モードと、
図1(B)の見開きモードの2つの姿勢を有する。
図1(B)は見開きモードのときの平面図で、
図1(C)は見開きモードのときの底面図である。見開きモードでは、タッチスクリーン103a、103bが隣接して配置される。なおスマートフォン100は、それぞれタッチスクリーンを搭載し相互にヒンジ機構で結合された筐体を3つ以上備えていてもよい。
【0028】
[ハードウェア構成]
図2は、スマートフォン100のハードウェア構成の概略的な一例を示す機能ブロック図である。本発明の適用範囲において、スマートフォン100のハードウェアの構成は周知であるため、
図3は一部の要素だけを示すとともに説明は簡略化する。一例として筐体101aは、システム・ハードウェア150および電源回路151とシステム・ハードウェア150に接続されたタッチスクリーン103a、カメラ・モジュール111a、ジャイロセンサ113a、加速度センサ115a、無線モジュール117、およびSSD119などを含む。
【0029】
筐体101bは、システム・ハードウェア150に接続されたタッチスクリーン103b、カメラ・モジュール111b、ジャイロセンサ113b、加速度センサ115b、開閉センサ133、および電源回路151に接続されたパワー・ボタン135を含む。タッチスクリーン103a、103bは、画面の表示機能とタッチ操作機能を含む。タッチスクリーン103a、103bは一例として、フラット・パネル・ディスプレイ(FPD)とタッチパネルを組み合わせた構造として実現できる。タッチスクリーン103a、103bのハードウェア上の構成は、本発明において特に限定しない。
【0030】
たとえばFPDには、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイなどを採用することができる。タッチパネルの検出原理も特に限定する必要はなく、静電容量式、抵抗膜式、電磁誘導式、超音波表面弾性波式、または赤外線操作式などを採用することができる。タッチパネルは、タッチ操作する1本の指の座標だけを検出するシングルタッチ方式または同時に複数の指の座標を検出するマルチタッチ方式のいずれも採用することができる。
図3に示したハードウェアのなかで本発明に必須の要素は特許請求の範囲に記載している。
【0031】
[使用環境]
スマートフォン100は、複数の使用環境を実装しておりタッチスクリーン103a、103bごとにいずれかの使用環境で動作する。使用環境は、動作するアプリケーションおよびハードウェアまたはいずれか一方の範囲の相違またはそれらに対する機能制限の有無または範囲により定義することができる。使用環境は、セキュリティ・レベルの相違によっても定義することができる。一例として使用環境は、セキュリティ・レベルが高いビジネス・モードと、セキュリティ・レベルをユーザが決定できるプライベート・モードとして定義することができる。ビジネス・モードで動作するスマートフォン100は、企業のセキュリティ・ポリシィに従うことが要求される。
【0032】
ビジネス・モードではたとえば、インストールするアプリケーションの種類や、カメラや記憶装置などの情報漏洩に関連するハードウェアの使用に制限をかけることができる。ビジネス・モードでは、ログオンのためのパスコードの設定を義務づけたり、紛失対策としてリモート・ロック機能やリモート・ワイプ機能の設定を義務づけたりすることができる。これに対してプライベート・モードで動作するスマートフォン100は、そのようなセキュリティ・ポリシィの制約を受けない。
【0033】
使用環境の他の例では、子供が使用するためのキッズ・モードを定義することができる。キッズ・モードでは、有害サイトへのアクセスの制限や課金が発生するサイトへのアクセスの制限をかけることができる。使用環境のさらに他の例では、一時的に他人にスマートフォン100を渡して保存している写真の閲覧やWebサイトへのアクセスを許可するゲスト・モードを定義することができる。ゲスト・モードでは、他人に閲覧されたくないメールやアドレス帳などの閲覧に制限をかけることができる。
【0034】
使用環境のさらに他の例では、旅行や健康などに関する用途モードを定義することができる。旅行の用途モードでは、スマートフォン100を旅行で使用するのに便利なように、旅行に関連するアプリケーションのアイコンだけをホーム画面に表示したり、旅行中に撮影した写真だけを分類して保存したりすることができる。健康の用途モードでは、血圧、心拍、歩行数などのデータを自動的に記録したり、ネットワークを通じて当該データを医療機関に転送したりすることができる。
【0035】
[ソフトウェア構成]
図3は、スマートフォン100が実装するソフトウェアの構造の一例を説明するための図である。複数の使用環境は一例として、実環境で動作するOS上で動作するアプリケーションで実現することができる。本実施の形態では複数の使用環境を、仮想環境を利用して実現する場合について説明する。ハードウェア群180は、
図2に示したハードウェアで構成される。
【0036】
ハードウェア群180上ではハイパーバイザといわれる仮想化プログラム201が動作する。仮想化プログラム201のレイヤの上では、仮想マシーン203a〜203c、253が時分割で動作することができる。仮想マシーン203a〜203cは、アプリケーション205a〜205c、ゲストOS207a〜207c、および仮想ハードゥエア209a〜209cといったソフトウェアで構成され、それぞれが異なる使用環境を構築する。
【0037】
アプリケーション205a〜205cは、各使用環境において少なくとも、Webブラウザ、メーラー、SNSプログラム、または文書ブログラムのような作業用のアプリケーションのいずれかを実行する。したがって各使用環境は、ソフトウェア・キーボードの画面、起動アイコンを表示するホーム画面、またはログオン操作のためのログオン画面のように作業用のアプリケーションの実行を補助するプログラムだけを実行している状態とは異なる。
【0038】
仮想マシーン253は、アプリケーション255、管理OS257、および仮想ハードゥエア259といったソフトウェアで構成され、実行する仮想マシーン203a〜203cのコンテキストを切り換えて各タッチスクリーン103a、103bに所定の使用環境を実現する。アプリケーション255は、使用モードを切り換えるための識別処理、および切換処理を行うためのアプリケーションを含む。仮想化プログラム201は、ハードウェア群180をエミュレートして、仮想マシーン203a〜203c、253にハードウェア群180の各要素に対応した仮想ハードウェア209a〜209cを構築する。
【0039】
たとえば、仮想マシーン203aがビジネス・モードを実現し、仮想マシーン203bがプライベート・モードを実現するときに、仮想ハードゥエア209aはカメラ・モジュール111a、111bを含まない場合がある。また、アプリケーション205aはインターネットに接続するWebブラウザやSNSプログラムなどを含まない場合がある。また、アプリケーション205aは、認証やリモート・ロックなどのセキュリティ・ポリシーを実現するためのモジュールを含む場合がある。
【0040】
ゲストOS207a〜207c、管理OS257は特に限定する必要はなくたとえば、iOS(登録商標)、Android(登録商標)、Windows phone(登録商標)、Windows RT(登録商標)、またはWindows8(登録商標)などから選択することができる。仮想化プログラム201および仮想マシーン203a〜203c、253は、パワー・ボタン135を押してスマートフォン100をオフ状態から待機状態またはオン状態に移行させる際に、システム・メモリにブート・イメージがロードされる。アプリケーション255は、仮想マシーン203a〜203cのCPU、システム・メモリなどの仮想ハードウェア209a〜209cが保持するコンテキストを切り換えることによってタッチスクリーン103a、103bごとに使用環境を切り換える。
図3のプログラムは、SSD119に格納される。
【0041】
[エッジ・タッチ操作およびクロス・スワイプ操作]
図4は、エッジ・タッチ操作およびクロス・スワイプ操作を説明するための図である。
図5は、エッジ・タッチ操作のタッチ位置を説明するための図である。タッチスクリーン103a、103b操作面が矩形でそれぞれ左長辺の端部161a、163a、右長辺の端部161b、163b、上短辺の端部161c、163c、および下短辺の端部161d、163dが縁枠165、167で囲まれている。
【0042】
エッジ・タッチ操作は、使用モードを切り換えるために行うスワイプ操作の起点となるタッチ位置(
図5参照)に対するタッチ操作に相当する。エッジ・タッチ操作は、そのときの使用環境が表示する画面を操作するためのタッチ操作とは異なる操作であることをシステムに認識させるための操作でもある。使用環境が表示する画面に対してスワイプ操作をすると、多くの場合は画面がスライドするが、システムはエッジ・タッチ操作を認識すると識別モードに移行して、続いて行われるスワイプ操作に対して使用モードを判断するための識別処理を行うことができる。
【0043】
エッジ・タッチ操作は、使用環境が表示する画面に対するタッチ操作と区別できるほど端のタッチスクリーンの位置だけに対するタッチ操作とすることができる。しかし、エッジ・タッチ操作を、指が縁枠165、167とタッチスクリーン103a、103bの両方に同時にタッチする操作とすれば、システムおよびユーザに対して使用環境が表示する画面に対するタッチ操作とは異なる操作であることを明確にできる。このときシステムは、縁枠165、167に接するタッチスクリーン103a、103bの座標や、検出した座標の輪郭から指が縁枠165、167とタッチスクリーン103a、103bの両方に同時にタッチしていることを認識することができる。
【0044】
同時にタッチするときのエッジ・タッチ操作は、
図5に示したようにタッチスクリーン103a、103bのいずれかの端部161a〜161d、163a〜163dに存在するタッチ位置171a〜171d、173a〜173dに対して行うことができる。本実施の形態では、エッジ・タッチ操作に続いて行われる所定のスワイプ操作のジェスチャを識別する。スワイプ操作は、エッジ・タッチ操作をタップ操作にして、タップ操作の後の所定時間以内に開始するようにしてもよい。
【0045】
この場合はツーアクション操作になるが、従来のようにフリック操作でホーム画面をシフトして起動アイコンを探す操作が不要になる。また、エッジ・タッチ操作によりシステムに対して使用モードの切換操作を行うことを通知することができる。しかし、スワイプ操作がエッジ・タッチ操作を起点とした連続する操作とする場合は、使用モードの切り換えの表明とジェスチャの識別を1回のスワイプ操作で行うワンアクション操作を実現することができる。
【0046】
図5に示した矢印は対応するタッチ位置171a〜171d、173a〜173dに続くスワイプ操作の概略の方向を示している。
図4(A)は、タッチスクリーン103aのタッチ位置171aにエッジ・タッチ操作をしてから矢印の方向にスワイプ操作をする様子を示している。タッチ位置171a〜171d、173a〜173dは対応する端部161a〜161d、163a〜163dの長さ方向におけるいずれの場所でもよい。たとえば、右方向のスワイプが得意なユーザは端部161a、163aの上下方向のいずれかの場所をタッチ位置171a、173aに選択し、左方向のスワイプの得意なユーザは端部161b、163bの上下方向のいずれかの場所をタッチ位置171b、173bに選択することができる。
【0047】
エッジ・タッチ操作は使用モードを識別するための1つのタッチスクリーンに関する操作概念であるが、クロス・スワイプ操作は識別済みの使用モードを隣接するタッチスクリーンまで拡大するか否かを判断するための2つのタッチスクリーンに関する操作概念である。
図4(B)は、端部161bを越えて端部163aを通過するようにタッチスクリーン103aから103bまでクロス・スワイプ操作をする様子を示している。このとき見開きモードで隣接して配置しているタッチスクリーン103a、103bの操作面と縁枠165、167が同一平面上に存在するようにすれば、クロス・スワイプ操作がし易くなる。
【0048】
クロス・スワイプ操作は、
図4(B)とは逆方向に端部163aを越えて端部161bを通過するようにタッチスクリーン103bから103aまで行うようにしてもよい。クロス・スワイプ操作の一例は、一方のタッチスクリーン103a、103bから他方のタッチスクリーン103b、103aまで、タッチ位置171a、173bを起点とする連続的なスワイプ操作が2つの端部161b、163aを越えて行うタッチ操作とすることができる。
【0049】
クロス・スワイプ操作の他の例は、一方のタッチスクリーン103a、103bから他方のタッチスクリーン103b、103aまで、タッチ位置171c、171dまたはタッチ位置173c、173dを起点とする連続的なスワイプ操作が2つの端部161b、163aを越えて行うタッチ操作とすることができる。端部161b、163aに隣接する縁枠165、167はタッチ操作の座標を検出しないが、クロス・スワイプ操作のときは縁枠165、167を通過する際も操作面から指を離さないで行うようにすればワンアクション操作で切り換えにかかる使用モードを隣接するタッチスクリーンまで拡張することができる。
【0050】
縁枠165、167でも指が離れないことでシステムは、指が移動先のタッチスクリーンの端部163a、161bにタッチした瞬間に認識したエッジ・タッチ操作からクロス・スワイプ操作を認識することができる。システムは、端部163aに対するエッジ・タッチ操作を検出したときに、直前にタッチスクリーン103aに対してタッチ位置171aから始まるスワイプ操作が行われていること、または、端部161bにエッジ・タッチ操作が発生したことを認識する。
【0051】
したがって、システムは使用モードを切り換えるスワイプ操作のためのエッジ・タッチ操作とクロス・スワイプ操作の際に発生するエッジ・タッチ操作を区別することができる。システムはエッジ・タッチ操作を検出したタイミングでクロス・タッチ操作の認識をすることができるが、スワイプ操作をする指が縁枠165、167を越えて完全に相手方のタッチスクリーンまで移動したタイミングで行うようにしてもよい。
【0052】
[制御システム]
図6は、使用環境を切り換える制御システム300の構成の一例を説明するための機能ブロック図である。制御システム300は、それぞれ
図2、
図3で説明したハードウェアとソフトウェアとの協働により構成した、使用環境切換部301、座標データ生成部303、画像データ生成部305、アプリケーション実行部307および登録部309を含む。使用環境切換部301、座標データ生成部303、および画像データ生成部305は、仮想マシーン253で構成することができる。
【0053】
使用環境切換部301は、座標データ生成部303から受け取ったタッチ位置を起点とするスワイプ操作の座標データに基づいて使用モードを識別する。使用環境切換部301は一例において、座標データ生成部303からエッジ・タッチ操作によるタッチ位置の座標データを受け取ったときに画像データ生成部305を通じてタッチスクリーン103aまたはタッチスクリーン103bに
図7、
図8で説明するいずれかのガイド画像351、381を表示する。
【0054】
使用環境切換部301は、ガイド画像351、381に対するスワイプ操作が行われたときに、登録部309に登録しておいた識別データを参照して使用環境を判断する。使用環境切換部301は、ガイド画像351、381に対するいずれかの使用環境のタッチ操作が成功したと判断したときに当該使用環境に関連付けた識別イベントと、当該使用環境の画面を表示するタッチスクリーンを示すスクリーン・イベントをアプリケーション実行部307に送る。
【0055】
使用環境切換部301は、クロス・スワイプ操作を検出したときにクロス・エッジ・イベントをアプリケーション実行部307に送る。使用環境切換部301は、切り換えにかかる使用環境の画像が識別のためのスワイプ操作の進行に応じて、端部から徐々にタッチスクリーンに引き出されるように表示するための制御イベントをアプリケーション実行部307に送ることができる。
【0056】
アプリケーション実行部307は、座標データ生成部303から受け取った座標データまたは他のハードウェアからの信号に基づいていずれかの仮想マシーン203a〜203cのアプリケーション205a〜205cを実行し、画像データ生成部305に画像データを出力する。アプリケーション実行部307は、使用環境切換部301から受け取った識別イベント、スクリーン・イベント、およびクロス・エッジ・イベントに基づいて動作環境のコンテキストを切り換えて、タッチスクリーン103a、103bごとに所定の仮想マシーン203a〜203cの使用環境に移行させる。
【0057】
座標データ生成部303は、タッチ操作が行われたときにタッチスクリーン103a、103bが検出した座標のデータを生成してアプリケーション実行部307または使用環境切換部301に送る。画像データ生成部305は、アプリケーション実行部309または使用環境切換部307から受け取った画像データを表示形式に変換してタッチスクリーン103a、103bに出力する。登録部309には、使用環境に関連付けたスワイプ操作から作成した識別データをあらかじめユーザが登録する。
【0058】
[第1の識別方式]
つぎに、
図7を参照して所定の使用環境に移行するために制御システム300が行う第1の識別方式について説明する。第1の識別方式は、セキュリティが問題にならないプライベート・モードや用途モードでの使用環境の切り換えに適している。使用環境切換部301は、たとえばタッチ位置171aに対するエッジ・タッチ操作を検出すると、エッジ・タッチ操作が行われた端部161aを有するタッチスクリーン103aにガイド画像351を表示する。
【0059】
ガイド画像351は、現在タッチスクリーン103aが表示する所定の使用モードの画像に重ねて表示してもよいし、使用モードの画像を完全に置き換えるように表示してもよい。重ねて表示する場合は、ガイド画像351を半透明の画像にすることもできる。使用環境切換部301は、タッチスクリーン103bのいずれかの端部163a〜163dにエッジ・タッチ操作を検出したときは、タッチスクリーン103bにガイド画像351を表示することができる。
【0060】
ガイド画像351を、タッチ位置171aが行われた端部161aからスワイプ操作の方向に引き出されるようにまたは飛び出るように表示すると、ユーザに続いて行うスワイプ操作の方向をイメージさせることができるためより直感的な操作を実現できる。ガイド画像351は、一例として4×4の合計16個の位置マーク352を成分に含むマトリクス画像として構成している。
【0061】
マトリクスのサイズは特に限定する必要はなく、タッチスクリーン103a、103bのサイズに応じて定めることができる。また、行と列の数は一致している必要もない。各位置マーク352はマトリクス成分の行と列の位置に対応する位置情報353を有している。スワイプ操作が順番に通過した複数の位置マーク352に対応する位置情報353のシーケンスは識別データを構成する。
【0062】
たとえば、登録部309に位置情報(4,1)、(1,2)、(3,3)、(2,4)が順番に並んだ識別データがプライベート・モードに関連付けられて登録されていると仮定する。このときユーザが
図7に示すような順番で4つの位置マーク352を通過する連続したスワイプ操作をすると、登録部309を参照した使用環境切換部301はスワイプ操作を識別して、使用環境を現在の使用モードからプライベート・モードに切り換えることができる。
【0063】
使用環境切換部301は、正しい位置マーク352に対するタッチ操作があるたびにアプリケーション実行部307に制御イベントを送ることができる。タッチ位置171aを起点とするスワイプ操作が、一列目の正しい位置マーク(4,1)を通過したときに制御イベントを受け取ったアプリケーション実行部307はプライベート・モードの画面の右側の一部を端部161aからエッジ355aまで飛び出した状態で表示することができる。これによりユーザは、一列目の位置マーク352を正しく選択したことを認識することができるとともに、切換操作の進行を実感することができる。
【0064】
連続するスワイプ操作が、二列目の正しい位置マーク(1,2)を通過したときに、制御イベントを受け取ったアプリケーション実行部307はプライベート・モードの画面をエッジ355bまで拡大して表示することができる。さらにアプリケーション実行部307は連続するスワイプ操作が三列目の正しい位置マーク(3,3)を通過したときは、プライベート・モードの画面をエッジ355cまで拡大し、四列目の正しい位置マーク(2,4)を通過したときは、画面全体を表示してタッチスクリーン103aをプライベート・モードで動作させる。
【0065】
スワイプ操作がいずれかの列で誤った位置マーク352を通過したときに、使用環境切換部301は、エッジ355a〜355cを1つ前に戻すか、または、ガイド画像351の表示を消して最初から識別を行うようにユーザに促すことができる。連続するスワイプ操作が四列目の位置マーク352を通過したあとに端部161bを越えてタッチスクリーン103bまで到達する。タッチ位置361に対するエッジ・タッチ操作を検出した使用環境切換部301はクロス・スワイプ操作が行われたと判断してアプリケーション実行部307にクロス・エッジ・イベントを送る。
【0066】
クロス・エッジ・イベントを受け取ったアプリケーション実行部307は、プライベート・モードの画面の右側のエッジ355dを端部163bまで徐々にスライドするように拡大して、タッチスクリーン103aに加えてタッチスクリーン103bもプライベート・モードの使用環境で動作させることができる。タッチスクリーン103a、103bがともにプライベート・モードの使用環境で動作すると、タッチスクリーン103a、103bのそれぞれにプライベート・モードで実行が可能なアプリケーション205bを同時に表示したり、2つのタッチスクリーン103a、103bを1画面のように使用して2画面用のアプリケーション205bを実行したりすることができる。
【0067】
タッチ位置171aから一列目の位置マーク352までのスワイプ操作は識別には無関係であるため、その距離は短い方が操作し易い。位置情報はタッチスクリーン103a、103bの座標とは無関係であるため、ガイド画像351の表示位置は端部161a上のタッチ位置に応じて上下方向および左右方向に変更することができる。タッチ位置171aを起点とする場合は、スワイプ操作を左から右に一方向で戻らないようにできるため円滑に操作することができる。また、スワイプ操作の進行に伴って切り換え後の使用モードの画面が拡大していくため、ユーザは識別操作の進行を画面の拡大として視覚で認識することができる。
【0068】
[第2の識別方式]
第1の識別方式は、登録した識別データをエッジ305a〜305cの変化の様子から容易に推定できるため、ビジネス・モードのようなMDMの制約を受ける使用環境には適当でない。つぎに同じガイド画像351を使って、セキュリティを向上させた識別方式を説明する。この方式では、4個の正しい位置マークを通過するスワイプ操作が行われるまで、切り換え後の使用モードの画面を表示しないようにする。
【0069】
このとき使用環境切換部301は、スワイプ操作により各列が含むいずれかの位置マーク352へのタッチ操作を認識したときは、音声または画面を通じてユーザに通知するようにすることができる。こうすることで、ユーザは最終的に切り換え操作が失敗したときに、位置マーク352にタッチしなかったことが原因ではないことを知ることができる。各列に対するスワイプ操作が完了して4個の位置マーク352の位置情報を認識した使用環境切換部301は、正しい識別データが入力されたと判断したときに、タッチスクリーン103aにビジネス・モードの画面を表示することができる。さらに使用環境切換部301は、タッチ位置361に対するクロス・スワイプ操作を検出したときにタッチスクリーン103bもビジネス・モードの動作環境に移行させることができる。
【0070】
使用環境切換部301は、各列の位置マーク352を含む4個の位置マークを通過する前にスワイプ操作をする指がタッチスクリーン103aから離れたとき、または、通過した4個の位置マーク352の識別情報353が登録した識別データに合致しないときは識別が失敗したと判断してガイド画像351の表示を消すことができる。第2の識別方式では、4個の位置情報を入力するまで、入力した識別データの正否が不明なため、第3者が簡単にビジネス・モードに移行させることは困難になる。所定回数の操作でも識別が成功しない場合には、ビジネス・モードへの移行をロックして、ログオン画面に対するパスコード入力を要求するようにしてもよい。
【0071】
[第3の識別方式]
第2の識別方式は、スワイプ操作の方向を一方向にしているため、識別データの桁数がタッチスクリーン103a、103bに表示できるマトリクス成分の列の数で制限される。したがって、ビジネス・モードへの切り換えまたはログオンに適した十分な桁数の識別データを作成できない場合がある。
図8は、識別データの桁数を増加させる第3の識別方式を説明する図である。
図8では、タッチ位置171aに対するエッジ・タッチ操作で
図7と同様にタッチスクリーン103aにガイド画像381が表示される。
【0072】
ガイド画像381のマトリクス画像はガイド画像351と同様に、4×4の16個の位置マーク382で構成しているが、各位置マーク382には英数字を割り当てて位置マーク382に画像として表示している。使用環境切換部301は、登録部309に位置マーク382の位置情報と英数字の関係を登録しておくことができる。ガイド画像381に対するスワイプ操作は、左から右に一方向に移動するのではなく、右から左方向に戻ったり、列方向(垂直方向)に移動したりすることができる。その結果、同じサイズのマトリクス画像であっても、識別データの桁数の制限をなくすことができる。
【0073】
図7のマトリクス画像では、識別データが4桁であったが、
図8のマトリクス画像では、識別データが、一例として[c21aefb7]の8桁の英数字で構成することができる。ガイド画像381に対して連続するスワイプ操作をすると、意図する位置マーク以外の位置マークに対してもタッチ操作をすることになる。
【0074】
このときの誤入力を防ぐために、ユーザは意図する位置マークにタッチしたときは使用環境切換部301の識別時間に相当する短い時間だけ当該位置マークで指の移動を一旦停止したり通過速度を遅くしたりすることができる。なお、ユーザはこのときタッチしている指を操作面から離さないようにしてガイド画像381の表示が消えないようにすることができる。第3の識別方式では、ユーザが識別データを英数字の文字列として記憶することができるため、使用環境切換部301は、乱数を使って位置マーク382の配置が毎回異なるようなガイド画像を表示するようにしてもよい。
【0075】
[その他の識別方式]
第1〜第3の識別方式は、いずれも位置マークの位置情報を利用しているが、本発明は、タッチスクリーン103a、103bの座標を利用して識別データを構成することもできる。このときガイド画像351は、常にタッチスクリーン103a、103b上の固定した位置に表示することができる。ただし、タッチスクリーン103a、103bにおける位置マークの座標にユーザが慣れてくれば必ずしもガイド画像351を表示する必要はない。
【0076】
また、本発明は、マトリクス成分の位置情報やタッチスクリーンの座標で識別するだけでなく、エッジ・タッチ操作を起点とする連続するスワイプ操作またはエッジ・タッチ操作に続くスワイプ操作が形成するジェスチャで識別することもできる。このときエッジ・タッチ操作からジェスチャを開始してもよいし、エッジ・タッチ操作をしてから所定の時間以内に任意の位置からジェスチャを開始してもよい。
【0077】
[スマートフォンの動作モード]
図9は、スマートフォン100の動作モードを説明するための図である。スマートフォン100は、タッチスクリーン103a、103bがそれぞれ独自に動作するため、一例としてビジネス・モードとプライベート・モードの2つに使用環境に対して9つの動作モードA〜Iのいずれかに遷移する。動作モードA〜Eは、タッチスクリーン103a、103bの一方または双方が待機モードに遷移している。
【0078】
動作モードF〜Iは、タッチスクリーン103a、103bの双方が同一または異なる使用環境に遷移している。制御システム300は、エッジ・タッチ操作およびクロス・スワイプ操作を含むスワイプ操作を識別して、任意の動作モードA〜Iから他の動作モードに移行させることができる。待機モードから所定の動作環境への移行のためのスワイプ操作はログオン操作に相当する。
【0079】
[使用環境の制御手順]
つぎに、制御システム300が
図9の動作モードA〜Iを制御する手順の一例を
図10のフローチャートを参照して説明する。ブロック401でスマートフォン100は、動作状態A〜Iのいずれかに遷移している。ブロック403で使用環境切換部301は、タッチスクリーン103a、103bのいずれかの端部161a〜161d、163a〜163dに対するエッジ・タッチ操作を検出する。エッジ・タッチ操作を検出した使用環境切換部301はブロック405で、アプリケーション実行部307にエッジ・タッチ・イベントを送って識別モードに移行する。以後アプリケーション実行部307は、座標データ生成部303から受け取った座標データを無視する。
【0080】
識別モードでは、座標データ生成部303が生成した座標データを使用環境切換部301だけが利用する。第1〜第3の識別方式を採用する場合は、ブロック407で使用環境切換部301が、エッジ・タッチ操作が行われたいずれかのタッチスクリーン103a、103bにいずれかのガイド画像351、381を表示する。ブロック409でユーザがガイド画像351、381に対してスワイプ操作をすると、ブロック411で使用環境切換部301は認識した位置マークの位置情報または英数字のシーケンスからビジネス・モードまたはプライベート・モードに対する識別の可否を判断する。
【0081】
識別が失敗したと判断した使用環境切換部301は、ブロック403に戻ってガイド画像351、381の表示を消してから、再度ユーザにエッジ・タッチ操作から開始するように求める。いずれかの使用モードに関する識別が成功したと判断した使用環境切換部301がアプリケーション実行部307に識別イベントとスクリーン・イベントを送る。ブロック413でアプリケーション実行部307はエッジ・タッチ操作が行われたタッチスクリーンを識別イベントに対応する使用環境に移行させることができる。使用環境切換部301は、識別が成功したときにガイド画像351、381の表示を消すことができる。
【0082】
たとえば、ブロック301で動作モードAであったときは、スマートフォン100は動作モードB〜Eのいずれかに移行することができる。また、ブロック301で動作モードH、Iであったときは、スマートフォン100は動作モードF、Gのいずれかに移行することができる。さらに、ブロック301で動作モードF、Gであったときは、スマートフォン100は動作モードH、Iのいずれかに移行することができる。
【0083】
ブロック417で使用環境切換部301が、ブロック403のエッジ・タッチ操作を起点とするスワイプ操作からクロス・スワイプ操作を検出したときはブロック417に移行する。ブロック417で使用環境切換部301はアプリケーション実行部307にクロス・エッジ・イベントを送って、クロス・スワイプ操作を検出したタッチスクリーンを、ブロック411で識別した使用モードと同じ使用モードに移行させる。このとき動作モードA〜Gのいずれからでも動作モードH、Iのいずれかに移行することができる。クロス・スワイプ操作を検出しないときは、ブロック419で処理が終了する。1つのタッチスクリーンを搭載するスマートフォンについては、クロス・スワイプ操作による使用環境の拡大を除いて、同様にエッジ・タッチ操作とスワイプ操作で使用環境の切り換え操作またはログオン操作をすることができる。
【0084】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。