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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-173002(P2015-173002A)
(43)【公開日】2015年10月1日
(54)【発明の名称】X線管装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 35/10 20060101AFI20150904BHJP
   H01J 35/16 20060101ALI20150904BHJP
   H01J 35/00 20060101ALI20150904BHJP
   H01J 35/14 20060101ALI20150904BHJP
【FI】
   H01J35/10 N
   H01J35/16
   H01J35/00 A
   H01J35/00 Z
   H01J35/10 B
   H01J35/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-47558(P2014-47558)
(22)【出願日】2014年3月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】東芝電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿武 秀郎
(72)【発明者】
【氏名】石原 智成
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 未樹
(57)【要約】      (修正有)
【課題】負荷部の耐食性と電気絶縁特性を長期にわたって維持できるX線管装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】X線管装置は、X線管12、負荷アセンブリ2、ハウジング11及び水系冷却液13とを備えている。負荷アセンブリ2は、ケーブル110、負荷部、樹脂モールド部材70及び隔壁部材80とを備えている。樹脂モールド部材70は、負荷部と負荷部及びケーブル110の接続部とを埋め尽くしている。隔壁部材80及び130は薄板状に形成され、第1表面と第2表面とを有しており、樹脂モールド部材70及び120とともに負荷部の水系冷却液13への接触を遮断する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子を放出する陰極と、前記陰極から放出される電子が衝撃することによりX線を放出する陽極ターゲットと、前記陰極及び陽極ターゲットが収納配置された真空外囲器と、を有したX線管と、
負荷アセンブリと、
前記X線管及び負荷アセンブリを収容したハウジングと、
前記ハウジング、X線管及び負荷アセンブリの間の空間内に充填された水系冷却液と、を備え、
前記負荷アセンブリは、
導線及び前記導線を電気絶縁性の第1樹脂で被覆して形成された被覆材を有したケーブルと、
前記X線管と前記ハウジングとの間の空間に位置し、前記ケーブルの導線が接続され、前記ケーブルを介して電力、電圧又は電流が与えられる負荷部と、
電気絶縁性の第2樹脂を利用して形成され、前記負荷部と前記負荷部及びケーブルの接続部とを埋め尽くした樹脂モールド部材と、
電気絶縁性の第3樹脂を利用し薄板状に形成され、前記負荷部の外面に密着又は前記樹脂モールド部材を介して間接に接着された第1表面と前記第1表面とは反対側に位置し前記真空外囲器に密着し、接触し、又は隙間を置いて対向した第2表面とを有し、前記樹脂モールド部材とともに前記負荷部の前記水系冷却液への接触を遮断する隔壁部材と、を備えているX線管装置。
【請求項2】
前記隔壁部材は、前記水系冷却液と前記負荷部との距離が最短となる位置に設けられている請求項1に記載のX線管装置。
【請求項3】
前記樹脂モールド部材は、前記第2樹脂と、前記第2樹脂より熱伝導率の高い電気絶縁材料と、の混合材料を利用して形成されている請求項1に記載のX線管装置。
【請求項4】
前記水系冷却液は、水とグリコール類との混合液である請求項1に記載のX線管装置。
【請求項5】
前記X線管は、回転陽極型X線管であり、前記陽極ターゲットを回転自在に支持する回転機構をさらに有し、
前記負荷部は、前記陽極ターゲットを回転させるための推進力を前記回転機構に与えるコイルユニットである請求項1に記載のX線管装置。
【請求項6】
前記負荷部は、前記陰極から前記陽極ターゲットに向かう電子ビームを偏向させるコイルユニットである請求項1に記載のX線管装置。
【請求項7】
前記負荷アセンブリは、
前記第3樹脂とは異なる電気絶縁性の第4樹脂を利用して形成され、前記第1表面を覆い、前記樹脂モールド部材の外面に直に接着され、前記樹脂モールド部材に対する接着強度が前記隔壁部材よりも高い被膜をさらに備え、
前記隔壁部材の第1表面は、前記負荷部の外面に前記被膜及び前記樹脂モールド部材を介して間接に接着されている請求項1に記載のX線管装置。
【請求項8】
前記第2樹脂は、エポキシ樹脂であり、
前記第3樹脂は、ポリブチレンテレフタレート樹脂であり、
前記第4樹脂は、ポリウレタン樹脂である請求項7に記載のX線管装置。
【請求項9】
前記隔壁部材は、薄板状の壁部を含む前記樹脂モールド部材の永久型枠である請求項1に記載のX線管装置。
【請求項10】
電子を放出する陰極と前記陰極から放出される電子が衝撃することによりX線を放出する陽極ターゲットと前記陰極及び陽極ターゲットが収納配置された真空外囲器とを有したX線管と、電気絶縁性の第1、第2及び第3樹脂を利用した負荷アセンブリと、を用意し、前記X線管及び負荷アセンブリをハウジング内に収容し、前記ハウジング、X線管及び負荷アセンブリの間の空間内に水系冷却液を充填し、
前記負荷アセンブリを用意する際、
導線及び前記導線を前記第1樹脂で被覆して形成された被覆材を有したケーブルと、前記ケーブルの導線が接続され前記ケーブルを介して電力、電圧又は電流が与えられる負荷部と、前記第3樹脂を利用して薄板状に形成され第1表面と前記第1表面とは反対側に位置した第2表面とを有した隔壁部材と、を用意し、
型枠の内部に前記隔壁部材と前記負荷部と前記負荷部及びケーブルの接続部とを配置し、前記隔壁部材の第2表面は前記型枠の内面に密着され、
前記型枠の内部に前記隔壁部材と前記負荷部と前記接続部とを配置した後、前記型枠の内部に前記第2樹脂を充填し、前記充填した第2樹脂を硬化させ、前記負荷部と前記接続部とを埋め尽くし前記隔壁部材の第1表面が接着された樹脂モールド部材を形成し、
前記ケーブルと、前記負荷部と、前記樹脂モールド部材と、前記隔壁部材とを有する前記負荷アセンブリから、前記型枠を外し、
前記X線管及び負荷アセンブリを前記ハウジング内に収容する際、
前記負荷部を前記X線管と前記ハウジングとの間の空間に配置し、
前記隔壁部材の第2表面を前記真空外囲器に、密着させ、接触させ、又は隙間を置いて対向させる、X線管装置の製造方法。
【請求項11】
電子を放出する陰極と前記陰極から放出される電子が衝撃することによりX線を放出する陽極ターゲットと前記陰極及び陽極ターゲットが収納配置された真空外囲器とを有したX線管と、電気絶縁性の第1、第2、第3及び第4樹脂を利用した負荷アセンブリと、を用意し、前記X線管及び負荷アセンブリをハウジング内に収容し、前記ハウジング、X線管及び負荷アセンブリの間の空間内に水系冷却液を充填し、
前記負荷アセンブリを用意する際、
導線及び前記導線を前記第1樹脂で被覆して形成された被覆材を有したケーブルと、前記ケーブルの導線が接続され前記ケーブルを介して電力、電圧又は電流が与えられる負荷部と、前記第3樹脂を利用して薄板状に形成され第1表面と前記第1表面とは反対側に位置した第2表面とを有した隔壁部材と、を用意し、
前記第3樹脂とは異なる第4樹脂を、前記隔壁部材の第1表面に塗布し、前記塗布した第4樹脂を硬化させ、前記第1表面に密着し、前記第2樹脂に対する接着強度が前記隔壁部材よりも高い被膜を形成し、
型枠の内部に前記被膜が形成された前記隔壁部材と前記負荷部と前記負荷部及びケーブルの接続部とを配置し、前記隔壁部材の第2表面は前記型枠の内面に密着され、
前記型枠の内部に前記被膜が形成された前記隔壁部材と前記負荷部と前記接続部とを配置した後、前記型枠の内部に前記第2樹脂を充填し、前記充填した第2樹脂を硬化させ、前記負荷部と前記接続部とを埋め尽くし前記被膜が接着された樹脂モールド部材を形成し、
前記ケーブルと、前記負荷部と、前記樹脂モールド部材と、前記隔壁部材と、前記被膜とを有する前記負荷アセンブリから、前記型枠を外し、
前記X線管及び負荷アセンブリを前記ハウジング内に収容する際、
前記負荷部を前記X線管と前記ハウジングとの間の空間に配置し、
前記隔壁部材の第2表面を前記真空外囲器に、密着させ、接触させ、又は隙間を置いて対向させる、X線管装置の製造方法。
【請求項12】
電子を放出する陰極と前記陰極から放出される電子が衝撃することによりX線を放出する陽極ターゲットと前記陰極及び陽極ターゲットが収納配置された真空外囲器とを有したX線管と、電気絶縁性の第1、第2及び第3樹脂を利用した負荷アセンブリと、を用意し、前記X線管及び負荷アセンブリをハウジング内に収容し、前記ハウジング、X線管及び負荷アセンブリの間の空間内に水系冷却液を充填し、
前記負荷アセンブリを用意する際、
導線及び前記導線を前記第1樹脂で被覆して形成された被覆材を有したケーブルと、前記ケーブルの導線が接続され前記ケーブルを介して電力、電圧又は電流が与えられる負荷部と、前記第3樹脂を利用して形成され第1表面と前記第1表面とは反対側に位置した第2表面とを有した薄板状の壁部を含む前記第2樹脂の永久型枠である隔壁部材であって前記第1表面を含む内面を有している前記隔壁部材と、を用意し、
前記隔壁部材の内部に前記負荷部と前記負荷部及びケーブルの接続部とを配置し、
前記隔壁部材の内部に前記負荷部と前記接続部とを配置した後、前記隔壁部材の内部に前記第2樹脂を充填し、前記充填した第2樹脂を硬化させ、前記負荷部と前記接続部とを埋め尽くし前記第1表面を含む前記隔壁部材の内面が接着された樹脂モールド部材を形成し、
前記ケーブルと、前記負荷部と、前記樹脂モールド部材と、前記隔壁部材とを有する前記負荷アセンブリを形成し、
前記X線管及び負荷アセンブリを前記ハウジング内に収容する際、
前記負荷部を前記X線管と前記ハウジングとの間の空間に配置し、
前記隔壁部材の第2表面を前記真空外囲器に、密着させ、接触させ、又は隙間を置いて対向させる、X線管装置の製造方法。
【請求項13】
電子を放出する陰極と前記陰極から放出される電子が衝撃することによりX線を放出する陽極ターゲットと前記陰極及び陽極ターゲットが収納配置された真空外囲器とを有したX線管と、電気絶縁性の第1、第2、第3及び第4樹脂を利用した負荷アセンブリと、を用意し、前記X線管及び負荷アセンブリをハウジング内に収容し、前記ハウジング、X線管及び負荷アセンブリの間の空間内に水系冷却液を充填し、
前記負荷アセンブリを用意する際、
導線及び前記導線を前記第1樹脂で被覆して形成された被覆材を有したケーブルと、前記ケーブルの導線が接続され前記ケーブルを介して電力、電圧又は電流が与えられる負荷部と、前記第3樹脂を利用して形成され第1表面と前記第1表面とは反対側に位置した第2表面とを有した薄板状の壁部を含む前記第2樹脂の永久型枠である隔壁部材であって前記第1表面を含む内面を有している前記隔壁部材と、を用意し、
前記第3樹脂とは異なる第4樹脂を、前記第1表面を含む前記隔壁部材の内面に塗布し、前記塗布した第4樹脂を硬化させ、前記内面に密着し、前記第2樹脂に対する接着強度が前記隔壁部材よりも高い被膜を形成し、
前記被膜が形成された前記隔壁部材の内部に前記負荷部と前記負荷部及びケーブルの接続部とを配置し、
前記隔壁部材の内部に前記負荷部と前記接続部とを配置した後、前記隔壁部材の内部に前記第2樹脂を充填し、前記充填した第2樹脂を硬化させ、前記負荷部と前記接続部とを埋め尽くし前記被膜が接着された樹脂モールド部材を形成し、
前記ケーブルと、前記負荷部と、前記樹脂モールド部材と、前記隔壁部材と、前記被膜とを有する前記負荷アセンブリを形成し、
前記X線管及び負荷アセンブリを前記ハウジング内に収容する際、
前記負荷部を前記X線管と前記ハウジングとの間の空間に配置し、
前記隔壁部材の第2表面を前記真空外囲器に、密着させ、接触させ、又は隙間を置いて対向させる、X線管装置の製造方法。
【請求項14】
電子を放出する陰極と前記陰極から放出される電子が衝撃することによりX線を放出する陽極ターゲットと前記陰極及び陽極ターゲットが収納配置された真空外囲器とを有したX線管と、電気絶縁性の第1、第2及び第3樹脂を利用した負荷アセンブリと、を用意し、前記X線管及び負荷アセンブリをハウジング内に収容し、前記ハウジング、X線管及び負荷アセンブリの間の空間内に水系冷却液を充填し、
前記負荷アセンブリを用意する際、
導線及び前記導線を前記第1樹脂で被覆して形成された被覆材を有したケーブルと、前記ケーブルの導線が接続され前記ケーブルを介して電力、電圧又は電流が与えられる負荷部と、前記第3樹脂を利用して薄板状に形成され第1表面と前記第1表面とは反対側に位置した第2表面とを有した隔壁部材と、を用意し、
底枠及び外枠を有した型枠の内部に前記隔壁部材と前記負荷部と前記負荷部及びケーブルの接続部とを配置し、前記隔壁部材は前記型枠の内枠を形成し、
前記型枠の内部に前記隔壁部材と前記負荷部と前記接続部とを配置した後、前記型枠及び前記隔壁部材の第1表面で囲まれた空間の内部に前記第2樹脂を充填し、前記充填した第2樹脂を硬化させ、前記負荷部と前記接続部とを埋め尽くし前記隔壁部材の第1表面が接着された樹脂モールド部材を形成し、
前記ケーブルと、前記負荷部と、前記樹脂モールド部材と、前記隔壁部材とを有する前記負荷アセンブリから、前記型枠を外し、
前記X線管及び負荷アセンブリを前記ハウジング内に収容する際、
前記負荷部を前記X線管と前記ハウジングとの間の空間に配置し、
前記隔壁部材の第2表面を前記真空外囲器に、密着させ、接触させ、又は隙間を置いて対向させる、X線管装置の製造方法。
【請求項15】
前記型枠の内部に前記隔壁部材と前記負荷部と前記接続部とを配置した際、前記隔壁部材の第1表面は前記負荷部の外面に密着されている請求項14に記載のX線管装置の製造方法。
【請求項16】
電子を放出する陰極と前記陰極から放出される電子が衝撃することによりX線を放出する陽極ターゲットと前記陰極及び陽極ターゲットが収納配置された真空外囲器とを有したX線管と、電気絶縁性の第1、第2、第3及び第4樹脂を利用した負荷アセンブリと、を用意し、前記X線管及び負荷アセンブリをハウジング内に収容し、前記ハウジング、X線管及び負荷アセンブリの間の空間内に水系冷却液を充填し、
前記負荷アセンブリを用意する際、
導線及び前記導線を前記第1樹脂で被覆して形成された被覆材を有したケーブルと、前記ケーブルの導線が接続され前記ケーブルを介して電力、電圧又は電流が与えられる負荷部と、前記第3樹脂を利用して薄板状に形成され第1表面と前記第1表面とは反対側に位置した第2表面とを有した隔壁部材と、を用意し、
前記第3樹脂とは異なる第4樹脂を、前記第1表面を含む前記隔壁部材の内面に塗布し、前記塗布した第4樹脂を硬化させ、前記内面に密着し、前記第2樹脂に対する接着強度が前記隔壁部材よりも高い被膜を形成し、
底枠及び外枠を有した型枠の内部に前記被膜が形成された隔壁部材と前記負荷部と前記負荷部及びケーブルの接続部とを配置し、前記隔壁部材は前記型枠の内枠を形成し、
前記型枠の内部に前記隔壁部材と前記負荷部と前記接続部とを配置した後、前記型枠及び前記被膜で囲まれた空間の内部に前記第2樹脂を充填し、前記充填した第2樹脂を硬化させ、前記負荷部と前記接続部とを埋め尽くし前記被膜が接着された樹脂モールド部材を形成し、
前記ケーブルと、前記負荷部と、前記樹脂モールド部材と、前記隔壁部材と、前記被膜とを有する前記負荷アセンブリから、前記型枠を外し、
前記X線管及び負荷アセンブリを前記ハウジング内に収容する際、
前記負荷部を前記X線管と前記ハウジングとの間の空間に配置し、
前記隔壁部材の第2表面を前記真空外囲器に、密着させ、接触させ、又は隙間を置いて対向させる、X線管装置の製造方法。
【請求項17】
前記第2樹脂は、エポキシ樹脂であり、
前記第3樹脂は、ポリブチレンテレフタレート樹脂であり、
前記第4樹脂は、湿気硬化型ポリウレタン樹脂である請求項11、13及び16の何れか1項に記載のX線管装置の製造方法。
【請求項18】
前記湿気硬化型ポリウレタン樹脂は、一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂である請求項17に記載のX線管装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線管装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線管装置は、X線管と、負荷部と、X線管及び負荷部を収容したハウジングと、ハウジング内に収容された冷却液と、ケーブルとを備えている。負荷部は、ハウジングで取り囲まれ、冷却液に浸っている。負荷部に電力を供給するため、ケーブルの端部の導線は負荷部に接続されている。ここで、負荷部としては、例えば、回転駆動用コイルユニット、電子ビーム偏向コイルユニットその他のX線管制御ユニットが挙げられる。
【0003】
従来、冷却液としては絶縁油が選ばれ、ケーブルと負荷部との接続部は絶縁油に接している。これにより、上記接続部と導電部(例えば、ハウジング)との間の電気絶縁特性を維持することができる。
【0004】
しかし、冷却液の冷却性能を高めるためには、絶縁油に替えて不凍液のような水系冷却液を使用する必要がある。その場合には、水系冷却液の導電率が比較的高いため、上記接続部が水系冷却液に接していると、水系冷却液を通じて漏電するという問題が生じる。そこで、上記したような水系冷却液を通じての漏電を防ぐために、上記接続部を樹脂モールド部材で覆うことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−244709号公報
【特許文献2】特開平11−204167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記接続部だけでなく、上記接続部を含む負荷部全体を樹脂モールド部材で覆う場合がある。この場合、負荷部の効率を上げるためには、負荷部をX線管の真空外囲器に近接させる必要がある。そこで、樹脂モールド部材における、負荷部とX線管との間の厚みを小さくすることにより、負荷部をX線管に近接させることができる。ここで、負荷部をできるだけX線管に近接させるためには、樹脂モールド部材の上記厚みをできるだけ小さくする必要がある。
【0007】
しかしながら、樹脂モールド部材の厚みが小さくなり過ぎると、樹脂モールド部材中のボイドなどの欠陥を通して水系冷却液が負荷部に接し、負荷部が水系冷却液を通じて漏電(不良)し易くなってしまう。また、負荷部は水系冷却液に接するため、負荷部の腐食が促進されることになってしまう。
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、長期にわたって安定した負荷部の耐食性と電気絶縁特性を維持することができるX線管装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係るX線管装置は、
電子を放出する陰極と、前記陰極から放出される電子が衝撃することによりX線を放出する陽極ターゲットと、前記陰極及び陽極ターゲットが収納配置された真空外囲器と、を有したX線管と、
負荷アセンブリと、
前記X線管及び負荷アセンブリを収容したハウジングと、
前記ハウジング、X線管及び負荷アセンブリの間の空間内に充填された水系冷却液と、を備え、
前記負荷アセンブリは、
導線及び前記導線を電気絶縁性の第1樹脂で被覆して形成された被覆材を有したケーブルと、
前記X線管と前記ハウジングとの間の空間に位置し、前記ケーブルの導線が接続され、前記ケーブルを介して電力、電圧又は電流が与えられる負荷部と、
電気絶縁性の第2樹脂を利用して形成され、前記負荷部と前記負荷部及びケーブルの接続部とを埋め尽くした樹脂モールド部材と、
電気絶縁性の第3樹脂を利用し薄板状に形成され、前記負荷部の外面に密着又は前記樹脂モールド部材を介して間接に接着された第1表面と前記第1表面とは反対側に位置し前記真空外囲器に密着し、接触し、又は隙間を置いて対向した第2表面とを有し、前記樹脂モールド部材とともに前記負荷部の前記水系冷却液への接触を遮断する隔壁部材と、を備えている。
【0009】
また、一実施形態に係るX線管装置の製造方法は、
電子を放出する陰極と前記陰極から放出される電子が衝撃することによりX線を放出する陽極ターゲットと前記陰極及び陽極ターゲットが収納配置された真空外囲器とを有したX線管と、電気絶縁性の第1、第2及び第3樹脂を利用した負荷アセンブリと、を用意し、前記X線管及び負荷アセンブリをハウジング内に収容し、前記ハウジング、X線管及び負荷アセンブリの間の空間内に水系冷却液を充填し、
前記負荷アセンブリを用意する際、
導線及び前記導線を前記第1樹脂で被覆して形成された被覆材を有したケーブルと、前記ケーブルの導線が接続され前記ケーブルを介して電力、電圧又は電流が与えられる負荷部と、前記第3樹脂を利用して薄板状に形成され第1表面と前記第1表面とは反対側に位置した第2表面とを有した隔壁部材と、を用意し、
型枠の内部に前記隔壁部材と前記負荷部と前記負荷部及びケーブルの接続部とを配置し、前記隔壁部材の第2表面は前記型枠の内面に密着され、
前記型枠の内部に前記隔壁部材と前記負荷部と前記接続部とを配置した後、前記型枠の内部に前記第2樹脂を充填し、前記充填した第2樹脂を硬化させ、前記負荷部と前記接続部とを埋め尽くし前記隔壁部材の第1表面が接着された樹脂モールド部材を形成し、
前記ケーブルと、前記負荷部と、前記樹脂モールド部材と、前記隔壁部材とを有する前記負荷アセンブリから、前記型枠を外し、
前記X線管及び負荷アセンブリを前記ハウジング内に収容する際、
前記負荷部を前記X線管と前記ハウジングとの間の空間に配置し、
前記隔壁部材の第2表面を前記真空外囲器に、密着させ、接触させ、又は隙間を置いて対向させる。
【0010】
また、一実施形態に係るX線管装置の製造方法は、
電子を放出する陰極と前記陰極から放出される電子が衝撃することによりX線を放出する陽極ターゲットと前記陰極及び陽極ターゲットが収納配置された真空外囲器とを有したX線管と、電気絶縁性の第1、第2及び第3樹脂を利用した負荷アセンブリと、を用意し、前記X線管及び負荷アセンブリをハウジング内に収容し、前記ハウジング、X線管及び負荷アセンブリの間の空間内に水系冷却液を充填し、
前記負荷アセンブリを用意する際、
導線及び前記導線を前記第1樹脂で被覆して形成された被覆材を有したケーブルと、前記ケーブルの導線が接続され前記ケーブルを介して電力、電圧又は電流が与えられる負荷部と、前記第3樹脂を利用して形成され第1表面と前記第1表面とは反対側に位置した第2表面とを有した薄板状の壁部を含む前記第2樹脂の永久型枠である隔壁部材であって前記第1表面を含む内面を有している前記隔壁部材と、を用意し、
前記隔壁部材の内部に前記負荷部と前記負荷部及びケーブルの接続部とを配置し、
前記隔壁部材の内部に前記負荷部と前記接続部とを配置した後、前記隔壁部材の内部に前記第2樹脂を充填し、前記充填した第2樹脂を硬化させ、前記負荷部と前記接続部とを埋め尽くし前記第1表面を含む前記隔壁部材の内面が接着された樹脂モールド部材を形成し、
前記ケーブルと、前記負荷部と、前記樹脂モールド部材と、前記隔壁部材とを有する前記負荷アセンブリを形成し、
前記X線管及び負荷アセンブリを前記ハウジング内に収容する際、
前記負荷部を前記X線管と前記ハウジングとの間の空間に配置し、
前記隔壁部材の第2表面を前記真空外囲器に、密着させ、接触させ、又は隙間を置いて対向させる。
【0011】
また、一実施形態に係るX線管装置の製造方法は、
電子を放出する陰極と前記陰極から放出される電子が衝撃することによりX線を放出する陽極ターゲットと前記陰極及び陽極ターゲットが収納配置された真空外囲器とを有したX線管と、電気絶縁性の第1、第2及び第3樹脂を利用した負荷アセンブリと、を用意し、前記X線管及び負荷アセンブリをハウジング内に収容し、前記ハウジング、X線管及び負荷アセンブリの間の空間内に水系冷却液を充填し、
前記負荷アセンブリを用意する際、
導線及び前記導線を前記第1樹脂で被覆して形成された被覆材を有したケーブルと、前記ケーブルの導線が接続され前記ケーブルを介して電力、電圧又は電流が与えられる負荷部と、前記第3樹脂を利用して薄板状に形成され第1表面と前記第1表面とは反対側に位置した第2表面とを有した隔壁部材と、を用意し、
底枠及び外枠を有した型枠の内部に前記隔壁部材と前記負荷部と前記負荷部及びケーブルの接続部とを配置し、前記隔壁部材は前記型枠の内枠を形成し、
前記型枠の内部に前記隔壁部材と前記負荷部と前記接続部とを配置した後、前記型枠及び前記隔壁部材の第1表面で囲まれた空間の内部に前記第2樹脂を充填し、前記充填した第2樹脂を硬化させ、前記負荷部と前記接続部とを埋め尽くし前記隔壁部材の第1表面が接着された樹脂モールド部材を形成し、
前記ケーブルと、前記負荷部と、前記樹脂モールド部材と、前記隔壁部材とを有する前記負荷アセンブリから、前記型枠を外し、
前記X線管及び負荷アセンブリを前記ハウジング内に収容する際、
前記負荷部を前記X線管と前記ハウジングとの間の空間に配置し、
前記隔壁部材の第2表面を前記真空外囲器に、密着させ、接触させ、又は隙間を置いて対向させる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1の実施形態に係るX線管装置を示す断面図である。
図2図2は、図1の線II−IIに沿ったX線管装置を示す他の断面図である。
図3図3は、上記X線管装置の負荷アセンブリ1を示す断面図である。
図4図4は、図3の線IV−IVに沿った負荷アセンブリ1を示す他の断面図である。
図5図5は、上記X線管装置の負荷アセンブリ2を示す断面図である。
図6図6は、上記第1の実施形態に係るX線管装置を製造している状態を示す断面図であり、型枠100を利用して上記負荷アセンブリ1を形成している状態を示す図である。
図7図7は、図6の線VII−VIIに沿った上記型枠100及び負荷アセンブリ1を示す断面図であり、第2樹脂を充填している状態を示す図である。
図8図8は、上記型枠100を示す背面図であり、上記負荷アセンブリ1のケーブルを併せて示す図である。
図9図9は、上記第1の実施形態に係るX線管装置を製造している状態を示す断面図であり、第6樹脂を充填し、型枠200を利用して上記負荷アセンブリ2を形成している状態を示す図である。
図10図10は、上記型枠200を利用して上記負荷アセンブリ2を形成している状態を示す平面図である。
図11図11は、上記型枠200を示す背面図であり、上記負荷アセンブリ2のケーブルを併せて示す図である。
図12図12は、第2の実施形態に係るX線管装置の負荷アセンブリ1を示す断面図である。
図13図13は、上記第2の実施形態に係るX線管装置の負荷アセンブリ2を示す断面図である。
図14図14は、第3の実施形態に係るX線管装置の負荷アセンブリ1を示す断面図である。
図15図15は、図14の線XV−XVに沿った負荷アセンブリ1を示す他の断面図である。
図16図16は、上記第3の実施形態に係るX線管装置の負荷アセンブリ2を示す断面図である。
図17図17は、第4の実施形態に係るX線管装置の負荷アセンブリ1を示す断面図である。
図18図18は、上記第4の実施形態に係るX線管装置の負荷アセンブリ2を示す断面図である。
図19図19は、第5の実施形態に係るX線管装置を製造している状態を示す断面図であり、第6樹脂を充填し、隔壁部材130を含む型枠200を利用して負荷アセンブリ2を形成している状態を示す図である。
図20図20は、図19に示した隔壁部材130を含む型枠200を利用して上記負荷アセンブリ2を形成している状態を示す平面図である。
図21図21は、上記第5の実施形態の変形例1に係る負荷アセンブリ2を用意している状態を示す平面図である。
図22図22は、上記第5の実施形態の変形例2に係る負荷アセンブリ2を用意している状態を示す平面図である。
図23図23は、上記第5の実施形態の変形例3に係る負荷アセンブリ2を用意している状態を示す平面図である。
図24図24は、上記第5の実施形態の変形例4に係る負荷アセンブリ2を用意している状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら第1の実施形態に係るX線管装置及びその製造方法について詳細に説明する。この実施形態において、X線管装置は、回転陽極型のX線管装置である。
図1及び図2に示すように、X線管装置は、負荷アセンブリ1,2と、ハウジング11と、回転陽極型のX線管12と、水系冷却液13と、を備えている。
【0014】
X線管12は、真空外囲器15と、陽極ターゲット26と、陰極31と、を備えている。真空外囲器15は、円筒状の径大部16と、径大部16より径の小さい円筒状の径小部17及び径小部18とを有している。径大部16及び径小部17は、円環部16aを介して気密に接続されている。径大部16及び径小部18は、円環部16bを介して気密に接続されている。径小部17の一端は、円環部17aで閉塞されている。径小部18の一端は、円環部18aで閉塞されている。円環部16aの中心から外れた開口部には、後述する反跳電子トラップ構造体39が気密に取り付けられている。径大部16の外周面には、反跳電子トラップ構造体39の位置に対応して、X線が透過するX線透過窓20が取り付けられている。
【0015】
X線管12は、固定軸23、回転体24及び陽極ターゲット26を備えている。固定軸23は、真空外囲器15内に配置され、真空外囲器15の中心に位置している。回転体24は、真空外囲器15内に配置され、固定軸23により回転自在に支持されている。回転体24は、径小部18内に位置したロータ部25を有している。なお、X線管12は、すべり軸受けを使用しており、固定軸23及び回転体24間には、潤滑剤としての液体金属が充填されている。上記固定軸23、回転体24及び液体金属は、回転機構を形成している。上記回転機構は、陽極ターゲット26を回転自在に支持する。
【0016】
陽極ターゲット26は、円環状に形成され、回転体24の外周面に固定されている。ここでは、陽極ターゲット26は、同一材料を利用して回転体24と一体に形成されている。
【0017】
反跳電子トラップ構造体39と対向した側の陽極ターゲット26には、所定の角度で傾斜が形成されている。陽極ターゲット26の傾斜部上には、ターゲット層27が形成されている。ターゲット層27に後述する陰極31から放出される電子が衝撃することにより焦点が形成され、焦点からX線が放出される。
【0018】
陰極31は、ターゲット層27に対向配置されている。陰極31は、電子を放出する電子発生源としてのフィラメント32と、フィラメント32を支持する陰極支持体33とを備えている。ここでは、フィラメント32は、長手方向が陽極ターゲット26の径方向に沿うように配置されている。
【0019】
陰極支持体33は、絶縁体35に固定されている。周壁部38は、セラミックもしくは金属にて筒状に形成され、反跳電子トラップ構造体39及び絶縁体35に気密に接続されている。また、周壁部38は、ハウジング11に液密に接続されている。反跳電子トラップ構造体39、絶縁体35及び周壁部38は、陰極収納部19を形成し、陰極収納部19は真空外囲器15の一部を形成している。このため、真空外囲器15内には、陰極31及び陽極ターゲット26が収納配置されている。
【0020】
高電圧電源に接続された高電圧ケーブルは、絶縁体35の個所を利用して陰極31に接続され、陰極31に負の高電圧を供給することができる。
反跳電子トラップ構造体39は、中心部にフィラメント32から放出される電子を通過させる円形状の開口部41を有し、環状に形成されている。反跳電子トラップ構造体39は、フィラメント32から放出される電子がターゲット層27へ移動する軌道(電子ビームの軌道)を取り囲むように配置されている。反跳電子トラップ構造体39において、陰極31に対向する面は、平坦面であり、ターゲット層27に対向する面はテーパ面であり、外周面は円筒状に形成されている。反跳電子トラップ構造体39は、ターゲット層27(陽極ターゲット26)からの反跳電子を捕獲するものである。
【0021】
反跳電子トラップ構造体39は、熱伝導性の高い材料で形成されることが好ましい。反跳電子トラップ構造体39は、銅、銅合金、GLID−COPなどの強化銅、モリブデン、モリブデン合金などの金属材料を利用して形成する他、熱伝導率の大きいSiC、AlN、BeOなどのセラミックス表面を金属薄膜でコーティングしたものを利用して形成することができる。
【0022】
なお、図示しないが、反跳電子トラップ構造体39は、冷却構造を備えている。冷却構造としては、例えば、反跳電子トラップ構造体39の内部に水系冷却液13が循環する冷却液流路を形成することが挙げられる。この場合、冷却液流路の水系冷却液13を冷却器に循環させることにより、反跳電子トラップ構造体39を冷却することができる。
なお、本実施形態において、陽極ターゲット26の電位が接地電位となるため、X線管12は陽極接地型のX線管であるが、陽極ターゲット26のみならず、反跳電子トラップ構造体39や真空外囲器15の金属部分も接地電位に設定されている。
【0023】
ハウジング11は、X線管12及び負荷アセンブリ1,2を収容している。ハウジング11は、X線が透過するX線透過窓11wを有している。X線透過窓11wは、X線透過窓20に対向している。
なお、X線管装置は、取付部10を有している。取付部10は、ハウジング11の外面から突出して形成されている。図示しないが、X線管装置をCT装置に搭載する場合、CT装置の回転架台に取付部10を取り付けることができる。
【0024】
水系冷却液13は、ハウジング11内に収容されている。水系冷却液13は、X線管12、負荷アセンブリ1及び負荷アセンブリ2の間の空間内に充填されている。水系冷却液13としては、グリコール水などの不凍液を含む水系冷却液を利用することができる。グリコール水は、水とグリコール類との混合液であり、水を主成分としている。
【0025】
ここで、上記ハウジング11は、図示しないホースを介して冷却器に接続されていてもよい。この場合、水系冷却液13は、ハウジング11と冷却器との間で循環され、冷却器にて冷却される。
【0026】
図1図2図3及び図4に示しように、負荷アセンブリ1は、ケーブル60と、負荷部と、樹脂モールド部材70と、隔壁部材80と、を備えている。
ケーブル60は、ハウジング11の図示しない開口部を通ってハウジング11の内側及び外側に位置している。ケーブル60は、ハウジング11の内部で水系冷却液13中に浸漬されている。ケーブル60は、少なくとも1つの導線61と、導線61を電気絶縁性の第1樹脂で被覆して形成された被覆材62と、を有している。ここでは、負荷アセンブリ1は、2本のケーブル60を備えている。
【0027】
負荷アセンブリ1の負荷部は、陰極31から陽極ターゲット26に向かう電子ビームを偏向させるコイルユニット50である。コイルユニット50は、ハウジング11内に収容され、X線管12とハウジング11との間の空間に位置している。コイルユニット50(電力受給部、受電部)には、ケーブル60の導線61の一端部が接続されている。コイルユニット50には、ケーブル60を介して電力、電圧又は電流が与えられる。
【0028】
コイルユニット50は、真空外囲器15(周壁部38)の外側で、電子ビームの軌道を取り囲む位置に設けられている。コイルユニット50は、電子ビームの軌道に偏向磁場を作用させる。上記コイルユニット50は、X線透過窓20を通り管軸に垂直な方向に上記偏向磁場を作用させる。コイルユニット50は、フィラメント32からターゲット層27に向かう電子ビームを陽極ターゲット26の略回転方向に偏向させ、焦点の位置をターゲット層27上で移動させる。
【0029】
コイルユニット50は、2個の磁極51と、磁極を接続したヨーク52と、ヨーク52に巻かれたコイル53とを有している。この実施形態において、コイルユニット50は、電磁石を利用している。コイルユニット50は磁気偏向コイルユニットであり、コイルユニット50のコイル53にはケーブル60を介して電力(主に電流)が与えられる。
【0030】
樹脂モールド部材70は、電気絶縁性の第2樹脂を利用して形成されている。樹脂モールド部材70は、コイルユニット50と、コイルユニット50及びケーブル60の接続部と、を埋め尽くしている。樹脂モールド部材70は、水系冷却液13に浸っている。
【0031】
隔壁部材80は、電気絶縁性の第3樹脂を利用し、薄板状に形成されている。隔壁部材80は平坦な板状に形成されている。隔壁部材80は、板材、シート材からの切削加工または射出成型などにより作製することができる。隔壁部材80は、第1表面Sa1と、第2表面Sa2とを有している。第1表面Sa1は、コイルユニット50の外面に、密着又は樹脂モールド部材70を介して間接に接着されている。本実施形態において、第1表面Sa1は、コイルユニット50の外面に、樹脂モールド部材70を介して間接に接着されている。負荷アセンブリ1において、第2表面Sa2は露出面である。第2表面Sa2は、第1表面Sa1とは反対側に位置している。第2表面Sa2は、真空外囲器15(周壁部38)に密着し、接触し、又は隙間を置いて対向している。本実施形態において、第2表面Sa2は、真空外囲器15(周壁部38)に隙間を置いて対向し、真空外囲器15との間に水系冷却液13を介在させている。
【0032】
隔壁部材80は、樹脂モールド部材70とともにコイルユニット50の水系冷却液13への接触を遮断する。隔壁部材80は、水系冷却液13とコイルユニット50との距離が短い位置に設けられている。隔壁部材80の厚みは、0.2乃至1.0mm程度である。
【0033】
図1図2及び図5に示しように、負荷アセンブリ2は、ケーブル110と、負荷部と、樹脂モールド部材120と、隔壁部材130と、を備えている。
ケーブル110は、ハウジング11の図示しない開口部を通ってハウジング11の内側及び外側に位置している。ケーブル110は、ハウジング11の内部で水系冷却液13中に浸漬されている。ケーブル110は、少なくとも1つの導線111と、導線111を電気絶縁性の第5樹脂で被覆して形成された被覆材112と、を有している。ここでは、負荷アセンブリ2は、2本のケーブル110を備えている。また、第5樹脂は、上記第1樹脂と同一である。
【0034】
負荷アセンブリ2の負荷部は、陽極ターゲット26を回転させるための推進力を上記回転機構(ロータ部25)に与えるコイルユニット28である。コイルユニット28は、ハウジング11内に収容され、X線管12とハウジング11との間の空間に位置している。コイルユニット28(電力受給部、受電部)には、ケーブル110の導線111の一端部が接続されている。コイルユニット28には、ケーブル110を介して電力、電圧又は電流が与えられる。
【0035】
コイルユニット28は、真空外囲器15(径小部18)の外側で、ロータ部25を取り囲む位置に設けられている。コイルユニット28は、ロータ部25に与える誘導電磁界を発生する。これにより、ロータ部25、すなわち回転体24及び陽極ターゲット26を回転させることができる。
【0036】
樹脂モールド部材120は、電気絶縁性の第6樹脂を利用して形成されている。ここでは、第6樹脂は、上記第2樹脂と同一である。樹脂モールド部材120は、コイルユニット28と、コイルユニット28及びケーブル110の接続部と、を埋め尽くしている。樹脂モールド部材120は、水系冷却液13に浸っている。
【0037】
隔壁部材130は、電気絶縁性の第7樹脂を利用し、薄板状に形成されている。ここでは、第7樹脂は、上記第3樹脂と同一である。隔壁部材130は円筒状に形成されている。隔壁部材130は、板材、シート材からの切削加工または射出成型などにより作製することができる。隔壁部材130は、第1表面Sb1と、第2表面Sb2とを有している。第1表面Sb1は、コイルユニット28の外面に、密着又は樹脂モールド部材120を介して間接に接着されている。本実施形態において、第1表面Sb1は、コイルユニット28の外面に、樹脂モールド部材120を介して間接に接着されている。第2表面Sb2は、第1表面Sb1とは反対側に位置している。負荷アセンブリ2において、第2表面Sb2は露出面である。第2表面Sb2は、真空外囲器15(径小部18)に密着し、接触し、又は隙間を置いて対向している。本実施形態において、第2表面Sb2は、真空外囲器15(径小部18)に隙間を置いて対向し、真空外囲器15との間に水系冷却液13を介在させている。
【0038】
隔壁部材130は、樹脂モールド部材120とともにコイルユニット28の水系冷却液13への接触を遮断する。隔壁部材130は、水系冷却液13とコイルユニット28との距離が最短となる位置に設けられている。隔壁部材130の厚みは、0.2乃至0.5mm程度である。
【0039】
上記のように構成されたX線管装置において、X線撮影時には、コイルユニット28が発生する誘導電磁界がロータ部25に与えられ、回転体24及び陽極ターゲット26が回転する。陰極31のフィラメント32から放出される電子は陽極ターゲット26に衝突し、フィラメント32の形状に対応したX線焦点がターゲット層27に形成される。この際、コイルユニット50が偏向磁場を作用させることにより、電子ビームを陽極ターゲット26の略回転方向に偏向させることができる。ターゲット層27のX線焦点から発生したX線は、真空外囲器15のX線透過窓20及びハウジング11のX線透過窓11wを透過して外部へ出射される。
【0040】
次に、上記第2樹脂及び第6樹脂について説明する。
上記第2樹脂及び第6樹脂は、耐水系冷却液性、耐熱性及び絶縁性を有する樹脂であり、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、又はこれらの樹脂を主成分とする材料を利用することができる。
【0041】
上記のように水系冷却液13に浸る樹脂モールド部材70,120に利用する第2及び第6樹脂としてはエポキシ樹脂が性能上優れている。上記エポキシ樹脂としては、例えば、ノガワケミカル製のダイアボンド2310A(常温硬化型)、ナガセケミテックス製のAV138/HV998(常温硬化型)、ペルノックス製のビスタックNM-103A/NM-103B(70℃硬化型)、ペルノックス製のME-105/HY-680(常温硬化型)などの各種2液性エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0042】
次に、上記第3樹脂及び第7樹脂について説明する。
上記第3樹脂及び第7樹脂は、樹脂モールド部材70,120に対する接着性に優れ、耐水系冷却液性、電気絶縁性及び耐熱性を有する樹脂であり、例えば、エポキシ(EP)樹脂、ジアリルフタレート(DAP)樹脂、不飽和ポリエステル(UP)樹脂を利用することができる。
【0043】
次に、本実施形態に係るX線管装置の製造方法について説明する。
図1及び図2に示すように、X線管装置の製造が開始すると、まず、陰極31と陽極ターゲット26と真空外囲器15とを有したX線管12と、電気絶縁性の第1、第2及び第3樹脂を利用した負荷アセンブリ1と、電気絶縁性の第5、第6及び第7樹脂を利用した負荷アセンブリ2と、を用意する。次いで、X線管12及び負荷アセンブリ1,2をハウジング内に収容する。その後、ハウジング11、X線管12及び負荷アセンブリ1,2の間の空間内に水系冷却液13を充填する。これにより、X線管装置の製造は終了する。
【0044】
次に、上記負荷アセンブリ1を用意する方法について説明する。
図6図7及び図8に示すように、負荷アセンブリ1の用意を開始すると、まず、ケーブル60と、ケーブル60の導線61が接続されたコイルユニット50と、隔壁部材80と、を用意する。
【0045】
続いて、型枠100(冶具)を用意する。ここで用意した型枠100は、П字状の底枠101と、底枠101の縁に沿った枠状の外枠102と、蓋103とを有している。ここでは、底枠101及び外枠102は別個に形成され、外枠102は底枠101上に載置されている。型枠100の内面にはテフロン(登録商標)加工が成されている。型枠100に対して第2樹脂を接着し難くし、樹脂モールド部材70を型枠100から剥がし易くするためである。そして、用意した型枠100の内部に、隔壁部材80と、コイルユニット50と、コイルユニット50及びケーブル60の接続部と、を配置する。外枠102には蓋103が取付けられる。ここで、外枠102に形成された円弧状の凹部と、蓋103に形成された円弧状の凹部とは、円形の開口を形成している。このため、ケーブル60は、上記開口を通って型枠100の外側に引き出されている。隔壁部材80の第2表面Sa2は型枠100の内面に密着している。
【0046】
次いで、型枠100の内部に第2樹脂を充填する。上記充填は、真空排気された真空槽の内部など、真空雰囲気中で行った方が望ましい。第2樹脂中に残る恐れのある空気等の泡が残らないようにすることができるためであり、樹脂モールド部材70中にボイドを生じ難くすることができるためである。続いて、充填した第2樹脂を硬化させる。これにより、第2樹脂を利用し、コイルユニット50と上記接続部とを埋め尽くし隔壁部材80の第1表面Sa1が接着された樹脂モールド部材70を形成することができる。
【0047】
その後、ケーブル60と、コイルユニット50と、樹脂モールド部材70と、隔壁部材80とを有する負荷アセンブリ1から、型枠100を外す。これにより、負荷アセンブリ1の用意は終了する。
【0048】
次に、上記負荷アセンブリ2を用意する方法について説明する。
図9図10及び図11に示すように、負荷アセンブリ2の用意を開始すると、まず、ケーブル110と、ケーブル110の導線111が接続されたコイルユニット28と、隔壁部材130と、を用意する。
【0049】
続いて、型枠200(冶具)を用意する。ここで用意した型枠200は、円板状の底枠201と、円筒状の外枠202と、円筒状の内枠203と、蓋204を有している。ここでは、底枠201、外枠202及び内枠203は別個に形成され、外枠202及び内枠203は底枠201上に載置されている。型枠200の内面にはテフロン加工が成されている。型枠200に対して第6樹脂を接着し難くし、樹脂モールド部材120を型枠200から剥がし易くするためである。そして、用意した型枠200の内部に、隔壁部材130と、コイルユニット28と、コイルユニット28及びケーブル110の接続部と、を配置する。外枠202には蓋204が取付けられる。ここで、外枠202に形成された円弧状の凹部と、蓋204に形成された円弧状の凹部とは、円形の開口を形成している。このため、ケーブル110は、上記開口を通って型枠200の外側に引き出されている。隔壁部材130の第2表面Sb2は内枠203(型枠200)の内面に密着している。
【0050】
次いで、型枠200の内部に第6樹脂を充填する。上記充填は、真空排気された真空槽の内部など、真空雰囲気中で行った方が望ましい。続いて、充填した第6樹脂を硬化させる。これにより、第6樹脂を利用し、コイルユニット28と上記接続部とを埋め尽くし隔壁部材130の第1表面Sb1が接着された樹脂モールド部材120を形成することができる。
【0051】
その後、ケーブル110と、コイルユニット28と、樹脂モールド部材120と、隔壁部材130とを有する負荷アセンブリ2から、型枠200を外す。これにより、負荷アセンブリ2の用意は終了する。
【0052】
次に、上記X線管12及び負荷アセンブリ1,2をハウジング11内に収容する方法について説明する。
図1及び図2に示すように、X線管12及び負荷アセンブリ1,2のハウジング11内への収容を開始すると、負荷アセンブリ1のコイルユニット50をX線管12とハウジング11との間の空間に配置し、負荷アセンブリ2のコイルユニット28をX線管12とハウジング11との間の空間に配置する。
【0053】
そして、隔壁部材80の第2表面Sa2を真空外囲器15(周壁部38)に、密着させ、接触させ、又は隙間を置いて対向させる。また、隔壁部材130の第2表面Sb2を真空外囲器15(径小部18)に、密着させ、接触させ、又は隙間を置いて対向させる。ここでは、第2表面Sa2を周壁部38に隙間を置いて対向させ、第2表面Sb2を径小部18に隙間を置いて対向させる。これにより、X線管12及び負荷アセンブリ1,2のハウジング11内への収容は終了する。
【0054】
上記のように構成された第1の実施形態に係るX線管装置及びその製造方法によれば、X線管装置は、X線管12と、負荷アセンブリ1,2と、ハウジング11と、水系冷却液13と、を備えている。負荷アセンブリ1は、ケーブル60と、コイルユニット50と、樹脂モールド部材70と、隔壁部材80と、を備えている。負荷アセンブリ2は、ケーブル110と、コイルユニット28と、樹脂モールド部材120と、隔壁部材130と、を備えている。
【0055】
隔壁部材80,130を利用しない場合、樹脂モールド部材70,120のそれぞれの厚みは2乃至3mm以上必要である。樹脂モールド部材70,120のボイドなどの欠陥を通して水系冷却液13がコイルユニット50,28に接する恐れがあるためである。
【0056】
しかしながら、本実施形態において、X線管装置は、薄板状の隔壁部材80,130を利用している。隔壁部材80、130は部品として精度良い薄板厚み寸法を得ることができるとともに、樹脂モールド部材70、120によりモールド成形する前に、隔壁部材80、130が所定の薄板厚み寸法であることやボイドなどの欠陥がないことを検査することもできる。コイルユニット50の外面から隔壁部材80の第2表面Sa2までの距離や、コイルユニット28の外面から隔壁部材130の第2表面Sb2までの距離を2mm未満にすることができ、0.2mmに近づけることができ得る。
【0057】
X線管装置が隔壁部材80,130を利用することにより、コイルユニット50,28を真空外囲器15に近接させることができる。このため、コイルユニット50,28の効率の向上を図ることができる。
隔壁部材80,130は、樹脂モールド部材70,120とともにコイルユニット50,28の水系冷却液13への接触を遮断することができる。特に、隔壁部材80,130は、水系冷却液13が浸透しないように形成されている。樹脂モールド部材70,120中にボイドなどの欠陥が生じていても水系冷却液13がコイルユニット50,28に接することはない。このため、コイルユニット50,28が水系冷却液13を通じて漏電してしまう事態を回避することができる。また、コイルユニット50,28の腐食を防止することができる。これにより、製品信頼性の高いX線管装置を得ることができる。
【0058】
また、コイルユニット50,28の電気絶縁特性を維持することができるため、X線管装置の冷却液に熱伝達率の高い水系冷却液13を利用することができる。コイルユニット50,28などの発熱部を、水系冷却液13により効率よく冷却することができる。
上記のことから、長期にわたって安定したコイルユニット50,28の耐食性と電気絶縁特性を維持することができるX線管装置及びその製造方法を得ることができる。
【0059】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るX線管装置及びその製造方法について詳細に説明する。この実施形態において、上記第1の実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。本実施形態に係るX線管装置は、負荷アセンブリ1,2がそれぞれ被膜を備えている点を除き、上記第1の実施形態に係るX線管装置と同様に形成されている。
【0060】
図12に示すように、負荷アセンブリ1は、被膜90をさらに備えている。被膜90は、上記第3樹脂とは異なる電気絶縁性の第4樹脂を利用して隔壁部材80の第1表面Sa1上に形成されている。被膜90は第1表面Sa1の少なくとも一部を覆っている。被膜90は樹脂モールド部材70の外面に直に接着されている。樹脂モールド部材70に対する被膜90の接着強度は、樹脂モールド部材70に対する隔壁部材80の接着強度より高い。隔壁部材80の第1表面Sa1は、コイルユニット50の外面に被膜90及び樹脂モールド部材70を介して間接に接着されている。
【0061】
図13に示すように、負荷アセンブリ2は、被膜140をさらに備えている。被膜140は、上記第7樹脂とは異なる電気絶縁性の第8樹脂を利用して隔壁部材130の第1表面Sb1上に形成されている。ここでは、第8樹脂は、上記第4樹脂と同一である。被膜140は第1表面Sb1の少なくとも一部を覆っている。被膜140は樹脂モールド部材120の外面に直に接着されている。樹脂モールド部材120に対する被膜140の接着強度は、樹脂モールド部材120に対する隔壁部材130の接着強度より高い。隔壁部材130の第1表面Sb1は、コイルユニット28の外面に被膜140及び樹脂モールド部材120を介して間接に接着されている。
【0062】
また、本実施形態において、第2樹脂及び第6樹脂はエポキシ樹脂であり、第3樹脂及び第7樹脂はポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂であり、第4樹脂及び第8樹脂はポリウレタン樹脂である。
【0063】
次に、本実施形態に係る第3樹脂及び第7樹脂、並びに第4樹脂及び第8樹脂について説明する。
上述した第1の実施形態において、第3樹脂及び第7樹脂に、EP樹脂、DAP樹脂、又はUP樹脂を利用している。但し、これらの樹脂は、熱硬化性樹脂であるため、成形性が悪く、高価である。そこで、本実施形態において、第3樹脂及び第7樹脂にPBT樹脂を利用している。
【0064】
PBT樹脂は、熱可塑性の樹脂で、耐熱性、耐水系冷却液性に優れているとともに、容易にリサイクル可能であるため環境性能が優れている。また、PBT樹脂は、材料コストが低く、射出成形がやり易い材料であるため、隔壁部材80,130を安価に製作することができ得る。隔壁部材80,130の製造コストの低減を図ることができる。このため、PBT樹脂は、隔壁部材80,130の材料として最適な材料である。
【0065】
しかしながら、本願発明者らの経験によれば、エポキシ樹脂はPBT樹脂に対する接着性が悪いという結果が得られた。すなわち、樹脂モールド部材70,120を隔壁部材80,130に接着させるべく、樹脂モールド部材70,120としてエポキシ樹脂を利用してモールド成形しても、樹脂モールド部材70,120は、隔壁部材80,130に対する接着性が悪い結果となった。この場合、樹脂モールド部材70,120と、隔壁部材80,130との接着界面に水系冷却液13侵入し、さらには樹脂モールド部材70,120のボイドなどの欠陥を通して水系冷却液13がコイルユニット50,28に接し、漏電不良が発生する恐れがある。
【0066】
そこで、隔壁部材80,130に対する樹脂モールド部材70,120の接着性を改善するため、隔壁部材80,130の第1表面Sa1,Sb1に、プラズマ処理や紫外線照射処理を施すことが考えられる。これにより、上記接着性の改善効果を高くすることができる。しかしながら、上記処理は、高コストであり処理後直ちにエポキシ樹脂と接着しないと効果が薄れると言うデメリットがある。また、第1表面Sa1,Sb1に、SiOやTiOを含む様々な市販のプライマを塗布する処理を施しても、上記接着性の改善効果を安定して得ることが困難であった。
【0067】
そこで、本実施形態において、第4樹脂及び第8樹脂にポリウレタン樹脂を利用している。上記ポリウレタン樹脂としては、湿気硬化型ポリウレタン樹脂を挙げることができる。さらに、湿気硬化型ポリウレタン樹脂としては、一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂を挙げることができる。
【0068】
被膜90,140は、低粘度の一液性塗料を、常温で塗布し、空気中の湿気の作用で硬化させて形成できるため、安価である。上記のように、ポリウレタン樹脂を利用した被膜90,140は、PBT樹脂への密着性が高いとともに、エポキシ樹脂を利用した樹脂モールド部材70,120に対する隔壁部材80,130のプライマとして望ましい。上記接着力の改善効果が高いためである。上記のことは、本願発明者らによって初めて見出されたものである。
【0069】
一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂としては、(1)主成分がイソシアネート基末端のウレタンプレポリマである溶質と有機溶剤からなる溶媒とから構成された樹脂、(2)主成分がポリイソシアネートである溶質と有機溶剤からなる溶媒とから構成された樹脂、を利用することができ、上記樹脂について上記接着性の改善効果が得られることを確認することができた。
【0070】
上記(1)の樹脂としては、株式会社ソテックのファンデーション#129とファンデーション#129LLE、大日本塗料(株)のMC−PUR、(株)デュプレックスジャパンのセプター101Pを挙げることができる。
【0071】
上記(2)の樹脂としては、株式会社ソテックのファンデーション#123LLとファンデーション#123LLEを挙げることができる。ファンデーション#123LLの一般名は、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)プレポリマである。
【0072】
次に、本実施形態に係るX線管装置の製造方法について説明する。
本実施形態に係るX線管装置の製造方法は、負荷アセンブリ1,2を用意する方法以外、上述した第1の実施形態に係るX線管装置の製造方法と同様である。このため、ここでは、負荷アセンブリ1,2を用意する方法についてのみ説明する。
【0073】
まず、第1、第2、第3及び第4樹脂を利用した負荷アセンブリ1を用意する方法について説明する。
図12に示すように、負荷アセンブリ1の用意を開始すると、まず、ケーブル60と、ケーブル60の導線61が接続されたコイルユニット50と、隔壁部材80と、を用意する。
【0074】
次いで、第4樹脂を、隔壁部材80の第1表面Sa1に塗布し、塗布した第4樹脂を硬化させる。これにより、第1表面Sa1の少なくとも一部に第4樹脂を利用した被膜90が形成される。被膜90は第1表面Sa1を覆っている。また、被膜90は、第2樹脂に対する接着強度が隔壁部材80よりも高い。
【0075】
続いて、図6乃至図8に示した型枠100を用意する。そして、用意した型枠100の内部に、被膜90が形成された隔壁部材80と、コイルユニット50と、コイルユニット50及びケーブル60の接続部と、を配置する。隔壁部材80の第2表面Sa2は型枠100の内面に密着している。
【0076】
次いで、型枠100の内部に第2樹脂を充填する。上記充填は真空雰囲気中で行った方が望ましい。続いて、充填した第2樹脂を硬化させる。これにより、第2樹脂を利用し、コイルユニット50と上記接続部とを埋め尽くし被膜90が接着された樹脂モールド部材70を形成することができる。
【0077】
その後、ケーブル60と、コイルユニット50と、樹脂モールド部材70と、隔壁部材80と、被膜90とを有する負荷アセンブリ1から、型枠100を外す。これにより、負荷アセンブリ1の用意は終了する。
【0078】
次に、第5、第6、第7及び第8樹脂を利用した負荷アセンブリ2を用意する方法について説明する。
図13に示すように、負荷アセンブリ2の用意を開始すると、まず、ケーブル110と、ケーブル110の導線111が接続されたコイルユニット28と、隔壁部材130と、を用意する。
【0079】
次いで、第8樹脂を、隔壁部材130の第1表面Sb1に塗布し、塗布した第8樹脂を硬化させる。これにより、第1表面Sb1の少なくとも一部に第8樹脂を利用した被膜140が形成される。被膜140は第1表面Sb1を覆っている。また、被膜140は、第6樹脂に対する接着強度が隔壁部材130よりも高い。
【0080】
続いて、図9乃至図11に示した型枠200を用意する。そして、用意した型枠200の内部に、被膜140が形成された隔壁部材130と、コイルユニット28と、コイルユニット28及びケーブル110の接続部と、を配置する。隔壁部材130の第2表面Sb2は内枠203(型枠200)の内面に密着している。
【0081】
次いで、型枠200の内部に第6樹脂を充填する。上記充填は真空雰囲気中で行った方が望ましい。続いて、充填した第6樹脂を硬化させる。これにより、第6樹脂を利用し、コイルユニット28と上記接続部とを埋め尽くし被膜140が接着された樹脂モールド部材120を形成することができる。
【0082】
その後、ケーブル110と、コイルユニット28と、樹脂モールド部材120と、隔壁部材130と、被膜140とを有する負荷アセンブリ2から、型枠200を外す。これにより、負荷アセンブリ2の用意は終了する。
【0083】
上記のように構成された第2の実施形態に係るX線管装置及びその製造方法によれば、X線管装置は、X線管12と、負荷アセンブリ1,2と、ハウジング11と、水系冷却液13と、を備えている。負荷アセンブリ1は、ケーブル60と、コイルユニット50と、樹脂モールド部材70と、隔壁部材80と、を備えている。負荷アセンブリ2は、ケーブル110と、コイルユニット28と、樹脂モールド部材120と、隔壁部材130と、を備えている。このため、本実施形態に係るX線管装置は、上記第1の実施形態に係るX線管装置と同様の効果を得ることができる。
【0084】
負荷アセンブリ1は被膜90をさらに有し、負荷アセンブリ2は被膜140をさらに有している。被膜90,140は、ポリウレタン樹脂を利用して形成されている。樹脂モールド部材70,120は被膜90,140に良好に接着するため、PBT樹脂を利用して隔壁部材80,130を形成することができる。
上記のことから、長期にわたって安定したコイルユニット50,28の耐食性と電気絶縁特性を維持することができるX線管装置及びその製造方法を得ることができる。
【0085】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係るX線管装置及びその製造方法について詳細に説明する。この実施形態において、上記第1の実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。本実施形態に係るX線管装置は、隔壁部材80,130が樹脂モールド部材70,120の永久型枠である点を除き、上記第1の実施形態に係るX線管装置と同様に形成されている。
【0086】
図14及び図15に示すように、隔壁部材80は、樹脂モールド部材70の永久型枠である。隔壁部材80は、П字状の底枠と、底枠の縁に沿った枠状の外枠とを有する薄肉シェル形状である。底枠及び外枠は一体に形成されている。隔壁部材80は、0.2乃至0.5mm程度の厚みを有した薄板状の壁部を含んでいる。ここでは、隔壁部材80のうち、少なくとも磁極51間に位置した隔壁部材80の外枠の一部が上記薄板状の壁部である。
【0087】
図16に示すように、隔壁部材130は、樹脂モールド部材120の永久型枠である。隔壁部材130は、円板状の底枠と、円筒状の外枠と、円筒状の内枠とを有する薄肉シェル形状である。底枠、外枠及び内枠は一体に形成されている。隔壁部材130は、0.2乃至0.5mm程度の厚みを有した薄板状の壁部を含んでいる。ここでは、隔壁部材130のうち、少なくとも内枠が上記薄板状の壁部である。
【0088】
本実施形態において、上記第2樹脂及び第6樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、又はこれらの樹脂を主成分とする材料を利用することができる。また、上記第3樹脂及び第7樹脂は、例えば、EP樹脂、DAP樹脂、UP樹脂を利用することができる。
【0089】
次に、本実施形態に係るX線管装置の製造方法について説明する。
本実施形態に係るX線管装置の製造方法は、負荷アセンブリ1,2を用意する方法以外、上述した第1の実施形態に係るX線管装置の製造方法と同様である。このため、ここでは、負荷アセンブリ1,2を用意する方法についてのみ説明する。
【0090】
まず、第1、第2及び第3樹脂を利用した負荷アセンブリ1を用意する方法について説明する。
図14及び図15に示すように、負荷アセンブリ1の用意を開始すると、まず、ケーブル60と、ケーブル60の導線61が接続されたコイルユニット50と、隔壁部材80と、を用意する。上記のように、隔壁部材80は永久型枠であり、第1表面Sa1を含む内面を有している。
【0091】
続いて、隔壁部材80の内部に、コイルユニット50と、コイルユニット50及びケーブル60の接続部と、を配置する。ケーブル60は、隔壁部材80の外枠に形成された開口を通って隔壁部材80の外側に引き出されている。
【0092】
次いで、隔壁部材80の内部に第2樹脂を充填する。上記充填は真空雰囲気中で行った方が望ましい。続いて、充填した第2樹脂を硬化させる。これにより、第2樹脂を利用し、コイルユニット50と上記接続部とを埋め尽くし隔壁部材80の内面(第1表面Sa1)が接着された樹脂モールド部材70を形成することができる。
これにより、ケーブル60と、コイルユニット50と、樹脂モールド部材70と、隔壁部材80とを有する負荷アセンブリ1が完成し、負荷アセンブリ1の用意は終了する。
【0093】
次に、第5、第6及び第7樹脂を利用した負荷アセンブリ2を用意する方法について説明する。
図16に示すように、負荷アセンブリ2の用意を開始すると、まず、ケーブル110と、ケーブル110の導線111が接続されたコイルユニット28と、隔壁部材130と、を用意する。上記のように、隔壁部材130は永久型枠であり、第1表面Sb1を含む内面を有している。
【0094】
続いて、隔壁部材130の内部に、コイルユニット28と、コイルユニット28及びケーブル110の接続部と、を配置する。ケーブル110は、隔壁部材130の外枠に形成された開口を通って隔壁部材130の外側に引き出されている。
【0095】
次いで、隔壁部材130の内部に第6樹脂を充填する。上記充填は真空雰囲気中で行った方が望ましい。続いて、充填した第6樹脂を硬化させる。これにより、第6樹脂を利用し、コイルユニット28と上記接続部とを埋め尽くし隔壁部材130の内面(第1表面Sb1)が接着された樹脂モールド部材120を形成することができる。
これにより、ケーブル110と、コイルユニット28と、樹脂モールド部材120と、隔壁部材130とを有する負荷アセンブリ2が完成し、負荷アセンブリ2の用意は終了する。
【0096】
上記のように構成された第3の実施形態に係るX線管装置及びその製造方法によれば、X線管装置は、X線管12と、負荷アセンブリ1,2と、ハウジング11と、水系冷却液13と、を備えている。負荷アセンブリ1は、ケーブル60と、コイルユニット50と、樹脂モールド部材70と、隔壁部材80と、を備えている。負荷アセンブリ2は、ケーブル110と、コイルユニット28と、樹脂モールド部材120と、隔壁部材130と、を備えている。このため、本実施形態に係るX線管装置は、上記第1の実施形態に係るX線管装置と同様の効果を得ることができる。
【0097】
隔壁部材80は、樹脂モールド部材70の永久型枠として利用することができる。また、隔壁部材130は、樹脂モールド部材120の永久型枠として利用することができる。
上記のことから、長期にわたって安定したコイルユニット50,28の耐食性と電気絶縁特性を維持することができるX線管装置及びその製造方法を得ることができる。
【0098】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係るX線管装置及びその製造方法について詳細に説明する。この実施形態において、上記第3の実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。本実施形態に係るX線管装置は、負荷アセンブリ1,2がそれぞれ被膜を備えている点を除き、上記第3の実施形態に係るX線管装置と同様に形成されている。
【0099】
図17に示すように、負荷アセンブリ1は、被膜90をさらに備えている。被膜90は、第4樹脂を利用して隔壁部材80の第1表面Sa1を含む内面上に形成されている。被膜90は第1表面Sa1の少なくとも一部を覆っている。被膜90は樹脂モールド部材70の外面に直に接着されている。
【0100】
図18に示すように、負荷アセンブリ2は、被膜140をさらに備えている。被膜140は、第8樹脂を利用して隔壁部材130の第1表面Sb1を含む内面上に形成されている。被膜140は第1表面Sb1の少なくとも一部を覆っている。被膜140は樹脂モールド部材120の外面に直に接着されている。
また、本実施形態において、第2樹脂及び第6樹脂はエポキシ樹脂であり、第3樹脂及び第7樹脂はPBT樹脂であり、第4樹脂及び第8樹脂はポリウレタン樹脂である。
【0101】
次に、本実施形態に係るX線管装置の製造方法について説明する。
本実施形態に係るX線管装置の製造方法は、隔壁部材80,130に被膜90,140を形成する以外、上述した第3の実施形態に係るX線管装置の製造方法と同様である。このため、ここでは、隔壁部材80,130に被膜90,140を形成する方法についてのみ説明する。
【0102】
まず、負荷アセンブリ1を用意する際に、隔壁部材80に被膜90を形成する方法について説明する。
図17に示すように、永久型枠である隔壁部材80を用意する。この実施形態において、隔壁部材80はPBT樹脂を利用して形成されているため、隔壁部材80を射出成形にて安価に成形することができる。なお、上記射出成形は、作業性のよい手法である。
【0103】
次いで、第4樹脂を、第1表面Sa1を含む隔壁部材80の内面に塗布し、塗布した第4樹脂を硬化させる。これにより、隔壁部材80の内面の少なくとも一部に第4樹脂を利用した被膜90が形成される。被膜90は第1表面Sa1を覆っている。また、被膜90は、第2樹脂に対する接着強度が隔壁部材80よりも高い。
【0104】
次に、負荷アセンブリ2を用意する際に、隔壁部材130に被膜140を形成する方法について説明する。
図18に示すように、永久型枠である隔壁部材130を用意する。この実施形態において、隔壁部材130はPBT樹脂を利用して形成されているため、隔壁部材130を射出成形にて成形することができる。
【0105】
次いで、第8樹脂を、第1表面Sb1を含む隔壁部材130の内面に塗布し、塗布した第8樹脂を硬化させる。これにより、隔壁部材130の内面の少なくとも一部に第8樹脂を利用した被膜140が形成される。被膜140は第1表面Sb1を覆っている。また、被膜140は、第6樹脂に対する接着強度が隔壁部材130よりも高い。
【0106】
上記のように構成された第4の実施形態に係るX線管装置及びその製造方法によれば、X線管装置は、X線管12と、負荷アセンブリ1,2と、ハウジング11と、水系冷却液13と、を備えている。負荷アセンブリ1は、ケーブル60と、コイルユニット50と、樹脂モールド部材70と、隔壁部材80と、を備えている。負荷アセンブリ2は、ケーブル110と、コイルユニット28と、樹脂モールド部材120と、隔壁部材130と、を備えている。このため、本実施形態に係るX線管装置は、上記第3の実施形態に係るX線管装置と同様の効果を得ることができる。
【0107】
負荷アセンブリ1は被膜90をさらに有し、負荷アセンブリ2は被膜140をさらに有している。被膜90,140は、ポリウレタン樹脂を利用して形成されている。樹脂モールド部材70,120は被膜90,140に良好に接着するため、PBT樹脂を利用して隔壁部材80,130を形成することができる。
上記のことから、長期にわたって安定したコイルユニット50,28の耐食性と電気絶縁特性を維持することができるX線管装置及びその製造方法を得ることができる。
【0108】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態に係るX線管装置及びその製造方法について詳細に説明する。この実施形態において、上記第1の実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。本実施形態のX線管装置は、上記第1の実施形態のX線管装置と同様に形成されている。本実施形態のX線管装置の製造方法は、負荷アセンブリ2を用意する方法を除き、上記第1の実施形態に係るX線管装置の製造方法と同様である。
【0109】
図19及び図20に示すように、負荷アセンブリ2を用意するための型枠200は、内枠203を有していない。その替わりに、隔壁部材130は型枠200の内枠を形成している。隔壁部材130は、円筒状に形成されている。第6樹脂を充填する際、型枠200及び隔壁部材130の第1表面Sb1で囲まれた空間の内部に第6樹脂を充填する。その他、負荷アセンブリ2を用意する方法は、上記第1の実施形態と同様である。
【0110】
本実施形態において、上記第6樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、又はこれらの樹脂を主成分とする材料を利用することができる。また、上記第7樹脂は、例えば、EP樹脂、DAP樹脂、UP樹脂を利用することができる。
【0111】
上記のように構成された第5の実施形態に係るX線管装置及びその製造方法によれば、X線管装置は、X線管12と、負荷アセンブリ1,2と、ハウジング11と、水系冷却液13と、を備えている。負荷アセンブリ1は、ケーブル60と、コイルユニット50と、樹脂モールド部材70と、隔壁部材80と、を備えている。負荷アセンブリ2は、ケーブル110と、コイルユニット28と、樹脂モールド部材120と、隔壁部材130と、を備えている。このため、本実施形態に係るX線管装置は、上記第1の実施形態に係るX線管装置と同様の効果を得ることができる。
【0112】
隔壁部材130を型枠200の内枠として利用してもよい。この場合でも、上記第1の実施形態に係る負荷アセンブリ2と同様の負荷アセンブリ2を形成することができる。
上記のことから、長期にわたって安定したコイルユニット50,28の耐食性と電気絶縁特性を維持することができるX線管装置及びその製造方法を得ることができる。
【0113】
(第5の実施形態の変形例1)
次に、第5の実施形態の変形例1に係る負荷アセンブリ2及びその製造方法について説明する。
図21に示すように、隔壁部材130の第1表面Sb1は、コイルユニット28の外面に密着していてもよい。隔壁部材130は筒状に形成されている。型枠200の内部に隔壁部材130及びコイルユニット28等を配置した際、隔壁部材130の第1表面Sb1はコイルユニット28の外面(内周面)に密着されていればよい。これにより、コイルユニット28の外面から隔壁部材130の第2表面Sb2までの距離を一層短くすることができ、コイルユニット28の効率の向上を図ることができる。
【0114】
(第5の実施形態の変形例2)
次に、第5の実施形態の変形例2に係る負荷アセンブリ2及びその製造方法について説明する。
図22に示すように、隔壁部材130の第1表面Sb1は、コイルユニット28の外面に密着していてもよい。隔壁部材130はC字状に形成されている。隔壁部材130は、第7樹脂で形成された薄板をコイルユニット28の外面(内周面)に這わせることで形成されている。上記薄板の端部同士は、離間している。型枠200の内部に隔壁部材130及びコイルユニット28等を配置した際、隔壁部材130の第1表面Sb1はコイルユニット28の外面(内周面)に密着されていればよい。そして、隔壁部材130の隙間(薄板の端部同士の隙間)をテープ150等で閉塞することにより、第6樹脂を上記隙間にも充填することができ、隔壁部材130はテープ150とともに第6樹脂の漏れを防止することができる。この場合も、コイルユニット28の外面から隔壁部材130の第2表面Sb2までの距離を一層短くすることができ、コイルユニット28の効率の向上を図ることができる。
【0115】
(第5の実施形態の変形例3)
次に、第5の実施形態の変形例3に係る負荷アセンブリ2及びその製造方法について説明する。
図23に示すように、隔壁部材130の第1表面Sb1は、コイルユニット28の外面に密着していてもよい。隔壁部材130は、第7樹脂で形成された薄板をコイルユニット28の外面(内周面)に這わせることで形成されている。そして、上記薄板の端部同士が重畳することにより、隔壁部材130は筒状に形成されている。この場合も、コイルユニット28の外面から隔壁部材130の第2表面Sb2までの距離を一層短くすることができ、コイルユニット28の効率の向上を図ることができる。隔壁部材130の厚みが小さい場合に効果的である。
【0116】
(第5の実施形態の変形例4)
次に、第5の実施形態の変形例4に係る負荷アセンブリ2及びその製造方法について説明する。
図24に示すように、隔壁部材130の第1表面Sb1には、被膜140が形成されていてもよい。型枠200の内部に隔壁部材130等を配置する際、被膜140が形成された隔壁部材130等を配置すればよい。これにより、被膜140が形成された隔壁部材130を、型枠200の内枠として利用することができる。なお、本変形例4において、第6樹脂はエポキシ樹脂であり、第7樹脂はPBT樹脂であり、第8樹脂はポリウレタン樹脂である。
【0117】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0118】
例えば、樹脂モールド部材70は、第2樹脂と、第2樹脂より熱伝導率の高い電気絶縁材料と、の混合材料を利用して形成されていてもよい。同様に、樹脂モールド部材120は、第6樹脂と、第6樹脂より熱伝導率の高い電気絶縁材料と、の混合材料を利用して形成されていてもよい。
【0119】
X線管装置は、負荷アセンブリ1,2等の少なくとも1個の負荷アセンブリを備えていればよい。また、負荷アセンブリとしては、上述した負荷アセンブリ1,2に限定されるものではなく、種々変形可能である。負荷アセンブリの負荷部も種々変形可能であり、ハウジング11の内部に配置され、ケーブルが接続され、ケーブルを介して電力、電圧又は電流が与えられるものであればよい。また、ケーブル被覆材62、112と樹脂モールド部材70、120との接着強度、密着強度を高めるために、ケーブル被覆材62、112の表面に各種のプライマ被膜を予め形成しておいてもよい。
【0120】
上述した実施形態は、上述したX線管装置及びその製造方法に限定されるものではなく、各種のX線管装置及びその製造方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0121】
1,2…負荷アセンブリ、11…ハウジング、12…X線管、13…水系冷却液、15…真空外囲器、23…固定軸、24…回転体、26…陽極ターゲット、31…陰極、28,50…コイルユニット、60,110…ケーブル、61,111…導線、62,112…被覆材、70,120…樹脂モールド部材、80,130…隔壁部材、Sa1,Sb1…第1表面、Sa2,Sb2…第2表面、90,140…被膜、100,200…型枠、101,201…底枠、102,202…外枠、203…内枠。
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