(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-173051(P2015-173051A)
(43)【公開日】2015年10月1日
(54)【発明の名称】スイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 13/52 20060101AFI20150904BHJP
【FI】
H01H13/52 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-48534(P2014-48534)
(22)【出願日】2014年3月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097043
【弁理士】
【氏名又は名称】浅川 哲
(72)【発明者】
【氏名】小山田 哲
(72)【発明者】
【氏名】天野 豊彦
(72)【発明者】
【氏名】荻原 聖司
【テーマコード(参考)】
5G206
【Fターム(参考)】
5G206AS33H
5G206AS33K
5G206AS38H
5G206BS02H
5G206BS13H
5G206CS02H
5G206DS02H
5G206ES13H
5G206ES13N
5G206FS32K
5G206FU03
5G206KS15
5G206KS57
(57)【要約】
【課題】 バネに加算される荷重を抑えて、クリック率を向上させたスイッチを提供することにある。
【解決手段】 本発明のスイッチでは、ドーム状のバネ11を覆う保持シート13の厚みを削減することにより、保持シート13がその張りでバネ11を押え付けたり、保持シート13の張りによってバネ11の動作を妨げるような荷重がバネ11に加算されることを抑えている。その結果、保持シート13がバネ11の動作の妨げにならず、クリック率を向上させることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電パターンが形成された基板上にドーム状のバネを配設し、該バネの周囲を固定シートで囲い、該固定シート上に保持シートを固着することで前記バネを覆ったスイッチであって、
前記保持シートの厚みを削減してスティフネス値を低減することで、前記保持シートによる前記バネへの加算荷重を抑えたことを特徴とするスイッチ。
【請求項2】
前記保持シートの厚みを8μ以下に設定し、スティフネス値を0.5mN/cm前後に設定した請求項1記載のスイッチ。
【請求項3】
前記保持シートは、前記固定シートの内側周状部分のみ厚みを薄くした請求項1記載のスイッチ。
【請求項4】
前記保持シートはその内側周状部分に、厚みを薄くするための環状溝が形成されている請求項3記載のスイッチ。
【請求項5】
導電パターンが形成された基板上にドーム状のバネを配設し、該バネの周囲を固定シートで囲い、該固定シート上に保持シートを固着することで前記バネを覆ったスイッチであって、
前記保持シートにおける前記バネに接する部分に、前記バネの形状に対応するドーム状の曲面部を設けることで、前記保持シートによる前記バネへの加算荷重を抑えたことを特徴とするスイッチ。
【請求項6】
前記保持シートの曲面部は、前記保持シートを予め成型するか又は保持シートに熱可塑性樹脂を使用して該保持シートを前記固定シートに熱接着する工程において前記バネの上面に沿った形状に成形することにより形成される請求項5記載のスイッチ。
【請求項7】
導電パターンが形成された基板上にドーム状のバネを配設し、該バネの周囲を固定シートで囲い、該固定シート上に保持シートを固着することで前記バネを覆ったスイッチであって、
前記保持シートが、前記固定シートに固着された外周部と前記バネの中央に対応する中央部との間に保持シートの張りを抑えるための伸縮部を有し、該伸縮部により前記保持シートによる前記バネへの加算荷重を抑えたことを特徴とするスイッチ。
【請求項8】
前記伸縮部は、保持シートの中央部の周りに同心状に設けられる請求項7記載のスイッチ。
【請求項9】
前記伸縮部は蛇腹状に形成される請求項7又は8に記載のスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドーム状のバネを備え、その反転と復元によるクリック操作感を得ることができるスイッチに関するものであり、特に、そのクリック率を向上させたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドーム状のバネを用いたスイッチで良好なクリック操作感を得るスイッチとしては、バネの貼り付けを一部のみにしたものや、バネ等の設定を変更することで操作感の向上を図ったものが提案されていた(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
また、ドーム状のバネを用いたスイッチの構造としては、
図10及び
図11に示すように、導電パターン1,2が設けられた基板3上に、タクトバネ等のドーム状のバネ4を配置し、その周囲を囲う固定シート5を基板3上に固着し、この固定シート5上に保持シート6を固着したものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−234889号公報
【特許文献2】特開2012−243554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のスイッチでは、何れも保持シート6による荷重が、バネ4の荷重に加算され、バネ4の反転及び復元動作を阻害し、クリック率を低下させるという問題があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点を解決し、バネに加算される荷重を抑えて、クリック率を向上させたスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスイッチは、導電パターンが形成された基板上にドーム状のバネを配設し、該バネの周囲を固定シートで囲い、該固定シート上に保持シートを固着することで前記バネを覆ったスイッチであって、前記保持シートの厚みを削減してスティフネス値を低減することで、前記保持シートによる前記バネへの加算荷重を抑えたものとなっている。このスイッチにおける前記保持シートの厚みは8μ以下に設定され、スティフネス値が0.5mN/cm前後に設定されている。また、前記保持シートは、前記固定シートの内側周状部分のみ厚みを薄くして、その内側周状部分に、厚みを薄くするための環状溝を形成したものとなっている。
【0008】
また、本発明のスイッチは、導電パターンが形成された基板上にドーム状のバネを配設し、該バネの周囲を固定シートで囲い、該固定シート上に保持シートを固着することで前記バネを覆ったスイッチであって、前記保持シートにおける前記バネに接する部分に、前記バネの形状に対応するドーム状の曲面部を設けることで、前記保持シートによる前記バネへの加算荷重を抑えたものでもある。このスイッチにおける前記保持シートの曲面部は、前記保持シートを予め成型するか又は保持シートに熱可塑性樹脂を使用して該保持シートを前記固定シートに熱接着する工程において前記バネに沿った形状に成形することにより形成されている。
【0009】
また、本発明のスイッチは、導電パターンが形成された基板上にドーム状のバネを配設し、該バネの周囲を固定シートで囲い、該固定シート上に保持シートを固着することで前記バネを覆ったスイッチであって、前記保持シートが、前記固定シートに固着された外周部と前記バネの中央に対応する中央部との間に保持シートの張りを抑えるための伸縮部を有し、該伸縮部により前記保持シートによる前記バネへの加算荷重を抑えたものとなっている。このスイッチにおける前記伸縮部は蛇腹状に形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のスイッチでは、ドーム状のバネを覆う保持シートの厚みを削減するか、又は保持シートにバネの形状に対応するドーム状の曲面部を設けるか、又は保持シートの張りを抑える伸縮部を設けることにより、保持シートがその張りでバネを押え付けたり、その張りによってバネの動作を妨げるような荷重がバネに加算されることを抑えている。これにより、保持シートがバネの動作の妨げにならず、クリック率を向上させることができる。
【0011】
また、スイッチの操作時やバネの反転復元時に、保持シートに無理な力が加わることも防ぐことができるので、経年使用により保持シートを固定シートに固着した部分が剥がれることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るスイッチを示す斜視図である。
【
図3】
図2に示すスイッチの一部変更例を示す要部断面図である。
【
図5】
図3に示すスイッチを更に一部変更した例を示す要部断面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係るスイッチを示す斜視図である。
【
図8】本発明の第3の実施形態に係るスイッチを示す斜視図である。
【
図10】従来のスイッチの構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の実施形態におけるスイッチは、
図1及び
図2に示すように、表面に導電パターン10a,10bが形成された基板10と、この基板10上に配置された金属からなるドーム状のバネ11と、このバネ11の周囲を囲う固定シート12と、この固定シート12上に固着された保持シート13とを備えている。
【0014】
基板10は、絶縁性を有する樹脂等からなり、表面の所定位置に接点となる導電パターン10a,10bが形成されている。
【0015】
固定シート12は、基板10の表面に固着されて基板10の一部をなすように一体化されている。この固定シート12は、その中央にバネ11に適応する円形あるいは楕円形等の孔12aを有し、孔12a内にバネ11が収められることでバネ11を囲うものとなっている。
【0016】
バネ11は、上方から中央を押圧することにより弾性的に反転するタクトバネ等からなるものであり、可動接点を構成している。
【0017】
保持シート13は、バネ11を上方から保持し、水、埃等の浸入を防ぐため、バネ11を覆うように固定シート12の上面に固着されている。本実施形態における保持シート13は、ポリイミドフィルム等からなり、従前、厚みを25μに設定することでスティフネス値8〜11mN/cmであったものを、厚みを削減することで8μ以下に設定し、スティフネス値0.5mN/cm前後に設定したものとなっている。
【0018】
本実施形態においては、上記のように薄く柔らかい材質の保持シート13を用いることにより、バネ11への加算荷重を抑えることができ、その結果、クリック率を向上させることができる。
【0019】
また、
図2に示す保持シート13のように、保持シート13全体を同じ厚みで薄くする場合だけでなく、
図3に示すように、従来と同様の厚さの保持シート14の一部の厚みを薄くすることでバネ11への加算荷重を抑えることも可能である。
図3及び
図4に示す保持シート14では、固定シート12に固着されている外周部14aの内側周状部分の下面側に環状溝14bを設けている。この環状溝14bを設けることで、保持シート14を押圧したときの保持シート14の張りが抑えられ、バネ11の動作に保持シート14が良く追従するようになる。その結果、バネ11への加算荷重を抑えて、クリック率を向上させることができる。この場合の環状溝14bの底部分の厚みは、外周部14aの半分の12.5μに設定することで、強度を保ちつつ加算荷重を抑えている。
【0020】
また、保持シート14に環状溝14bを設けた場合、上述したようにバネ11の動作に保持シート14が良く追従するため、
図5に示すように、固定シート12の高さを、基板10上のバネ11の中央の高さよりも低くなるように設定し、保持シート14がバネ11の上面に沿ってその上に載るように構成しても良い。この場合、保持シート14そのものの荷重はバネ11に加わるが、保持シート14がバネ11の動作に良く追従するので、保持シート14の張りによってバネ11の動作が阻害されることはなく、従前のスイッチに比べてクリック率を向上させることができる。
【0021】
また、上記のように保持シート14がバネ11に沿ってその上に載るように構成する場合、
図6及び
図7に示す第2の実施形態のように、保持シート14の中央にバネ11と同じドーム状の曲面部14cを予め成型して、保持シート14が基板10上のバネ11に沿うように形成しても良い。このように予め曲面部14cを成型しておくことで、保持シート14がバネ11に載って荷重が加算されることがなくなり、また、保持シート14の張りがバネ11の動作に影響することもなくなる。更に、曲面部14cがその形状によってバネ性を有することになり、バネ11の動作を補助することになる。その結果、バネ11への加算荷重が大幅に抑えられることになる。
【0022】
この第2の実施形態の場合、保持シート14に熱可塑性樹脂を使用し、その保持シート14の外周部14aを固定シート12に熱接着し、その工程においてバネ11に沿った形状に成形することにより曲面部14cを形成しても良い。なお、この場合でも、保持シート14の曲面部14cはバネ11に接着されることなく成形のみされている。それにより、保持シート14によってバネ11へ荷重が加算されることはなくなり、クリック率を向上させることができる。
【0023】
第3の実施形態におけるスイッチは、
図8及び
図9に示すように、保持シート15の一部に伸縮部15dを設けたものを用いている。この保持シート15には、固定シート12に固着される外周部15aと、バネ11の中央に対応する中央部15eとの間に伸縮部15dが設けられている。この伸縮部15dは、保持シート15の中央部15eの周りに同心状に設けられる。また、伸縮部15dは、外周部15aから中央部15eに向かって徐々に径が小さくなる複数の畝(うね)が連なった蛇腹状に形成され、径方向に伸縮することで中央部15eを上下に動き易くしている。その結果、バネ11の反転復元動作に保持シート15の荷重や張りによる荷重が加算されることを抑えることができ、クリック率を向上させることができる。
【0024】
なお、第3の実施形態においては、伸縮部15dが十分作用するように、伸縮部15dの下方頂点がバネ11に載らないようにすることが好ましい。このため、本実施例では、外周部15aから中央部15eに向かうにつれて上下方向の頂点の高さが小さくなるように設定している。また、固定シート12の高さを適宜調整して、伸縮部15dがバネ11に載らないようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0025】
10 基板
10a,10b 導電パターン
11 バネ
11a バネの上面
12 固定シート
12a 孔
13,14,15 保持シート
14a,15a 外周部
14b 環状溝
14c 曲面部
15d 伸縮部
15e 中央部