特開2015-173617(P2015-173617A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-173617(P2015-173617A)
(43)【公開日】2015年10月5日
(54)【発明の名称】びわ種茶の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/38 20060101AFI20150908BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20150908BHJP
【FI】
   A23L2/38 C
   A23L2/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-51612(P2014-51612)
(22)【出願日】2014年3月14日
(71)【出願人】
【識別番号】598094713
【氏名又は名称】株式会社王樹製薬
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117798
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(72)【発明者】
【氏名】島田 修
【テーマコード(参考)】
4B017
【Fターム(参考)】
4B017LC03
4B017LG15
4B017LP01
4B017LP03
(57)【要約】
【課題】アミグダリン・タンニンなどの有効成分を損なうことなく、びわ種茶を製造することができるびわ種茶の製造方法を提供する。
【解決手段】びわの種を乾燥させた後に焙煎する乾燥・焙煎工程S1と、前記第1の乾燥焙煎工程を経た後のびわの種を切断または破砕して複数の細片または粒片とする刻み工程と、前記刻み工程で生成された複数の細片を乾燥させた後に焙煎する乾燥・殺菌焙煎工程を含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
びわの種を乾燥させた後に焙煎する乾燥・焙煎工程と、
前記第1の乾燥焙煎工程を経た後のびわの種を切断または破砕して複数の細片または粒片とする刻み工程と、
前記刻み工程で生成された複数の細片または粒片を前記焙煎温度よりも高温度で極めて短時間焙煎する第2焙煎工程を含むことを特徴とするびわ種茶の製造方法。
【請求項2】
前記第1の焙煎は、前記びわの種を焙煎器内で移動させながら熱風を吹き付けて乾燥させたのち比較的低温度で加熱するものである請求項1に記載のびわ種茶の製造方法。
【請求項3】
前記第1の焙煎工程における前記びわの種の焙煎は、80〜120℃で10〜30分加熱するものである請求項2に記載のびわ種茶の製造方法。
【請求項4】
前記乾燥は、日陰干しにより5日〜30日間または低温度(80℃以下)の熱風を前記びわの種に20〜40時間吹き付けて行うものである請求項1に記載のびわ種茶の製造方法。
【請求項5】
前記第2の焙煎は、前記びわの種を焙煎器内で150〜180℃の高温度で5分間前後加熱するものである請求項1〜4のいずれか1項に記載のびわ種茶の製造方法。
【請求項6】
前記細片または粒片の大きさは、1〜10mmである請求項1〜5のいずれか1項に記載のびわ種茶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、びわ(枇杷)の種を原料とし、健康に有用とされるアミグダリン,タンニン等を多量に含むびわ種茶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
びわの果実の中の種(種子)は、乾燥後に粉砕されて健康食品または医薬品の原料として使用されるのみであり、利用用途が少ないものであった。しかしながら、びわの種には、アミグダリン,タンニンが多く含まれている。これらの成分は制癌作用があり、またそれが分解されてできる安息香酸は殺菌、抗リウマチ、鎮痛の効果があるとされ、健康上優れていることが知られている。従来、このびわの種を、茶の原料とすることは一般にはなされていなかった。一方、びわの葉の方は茶の原料として使用されている。しかしながら、葉に含まれるアミグダリンは種に含まれるアミグダリンの大略1/1000程度でアミグダリンの含有率は低いものであった。
【0003】
そこで、びわの種を細片に切断・破砕し、これを乾燥して焙煎し、さらにそれを乾燥させてびわ種茶とする製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−237270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の製造方法では、びわの種を多数の細片に切断・破砕してから、これを乾燥して焙煎するので、びわの種に多く含まれ茶として利用する場合の有効成分である、アミグダリン・タンニンなどが、焙煎時の熱によって損なわれるおそれがある。
【0006】
本発明は、そのようなアミグダリン・タンニンなどの有効成分を損なうことなく、びわ種茶を製造することができるびわ種茶の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明にかかるびわ種茶の製造方法は、びわの種を乾燥させた後に焙煎する乾燥・焙煎工程と、前記第1の乾燥焙煎工程を経た後のびわの種を切断または破砕して複数の細片または粒片とする刻み工程と、前記刻み工程で生成された複数の細片または粒片を前記焙煎温度よりも高温度で極めて短時間焙煎する第2焙煎工程を含むことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、びわの種を細片または粒片に切断・破砕することなく、第1の焙煎工程においてびわの種をそのまま乾燥した後に焙煎し、それから、第1の焙煎工程を経た後のびわの種を切断または破砕して複数の細片または粒片とし、さらに第2の焙煎工程においてそれらの細片または粒片を焙煎器内で極めて短い時間(例えば5分間前後)だけ高温加熱して焙煎するようにしている。これらにより、第1の焙煎工程ではびわの種全体を周囲から加熱して穏やかに焙煎するので、焙煎時にびわの種に含まれる有効成分の変化が極力抑えられるとともに、第2の焙煎は裁断または粉砕したびわの種の細片または粒片を高温で極めて短い時間だけ加熱するだけで焙煎でき、したがって第2の焙煎行程では速やかに焙煎できるから、焙煎による熱の影響が最小限に抑えられ、また第2の焙煎時の高温加熱にて香ばしく仕上げることができ、びわ種に多く含まれている有効成分を損なうことなく、びわ種茶を製造することができる。
【0009】
この発明の場合、請求項2に記載のように、前記第1の焙煎は、前記びわの種を焙煎器内で移動させながら熱風を吹き付けて乾燥させたのち比較的低温度で加熱するものであったり、請求項3に記載のように、前記第1の焙煎工程における前記びわの種の焙煎は、80〜120℃で10〜30分加熱するものであったり、請求項4に記載のように、前記乾燥は、日陰干しにより5日〜30日間または低温度(80℃以下)の熱風を前記びわの種に20〜40時間吹き付けるものであったりすることが好ましく、また、請求項5に記載のように、前記第2の焙煎は、前記びわの種を焙煎器内で150〜180℃の高温度で5分間前後加熱するものであったり、請求項6に記載のように、前記細片または粒片の大きさは、1〜10mmであったりすることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、切断あるいは破砕せずにびわの種を水洗後にそのまま乾燥したのちにびわの種全体を周囲から低温加熱して緩やかに焙煎し、それからびわ種を切断または破砕して細片または粒片とし再び焙煎するようにするとともに、第2の焙煎は高温の熱で速やかに焙煎するから、焙煎の熱による影響を小さくすることができ、しかもお茶としてびわの果実が有する独特な甘味をもち香ばしさがあり、びわ種に多く含まれている有効成分(アミグダリン・タンニンなど)を損なうことなく、びわ種茶を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例に係るびわ種茶の製造方法による処理の流れを示すフロー図である。
図2】第1の焙煎作業を示す一部を省略した斜視図である。
図3】本発明の第2実施例に係るびわ種茶の製造方法において焙煎釜で粒片のびわの種を焙煎する状態を示す斜視図である。
図4】ティーパック式びわ種茶を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のびわ種茶の製造方法について実施例を説明する。
【0013】
本発明の実施例に係るびわ種茶の製造方法は、図1に示すように、(乾燥・焙煎工程)S1→(原料納品)S2→(受け入れ検査)S3→(刻み工程)S4→(篩い・粉抜き工程)S5→(乾燥・殺菌焙煎工程)S6→(中間原料検査)S7→(合組み)S8→(梱包)S9→(出荷)S10という工程を経てから最終製品のびわ種茶になるので、各工程について順に説明する。
【0014】
(乾燥・焙煎工程)S1
びわの種(種子)を切断や破断する前にそのまま乾燥し、乾燥終了後、焙煎する。ここで、乾燥は、日陰干しなどの自然乾燥でもよいし、乾燥機などを用いて熱風を吹き付けて乾燥する強制乾燥でもよい。焙煎は、周知の焙煎器(金網)を用いて、加熱温度80〜120℃で、10〜30分間程度行う。なお、乾燥に先立って、びわの種表面のぬめりを水洗いにて除去する。
本例では、図2に示すように、水洗した多数のびわの種Aを焙煎器1の金網2上に載せた状態で、金網2を振動させてびわの種Aを移動させながら金網2の下方からびわの種Aに向けて70〜80℃の熱風を吹き付ける。びわの種は1回当たりの量にもよるが、20〜25時間程度で概ね乾燥する。ここで、熱風の温度を例えば120℃まで上げることにより、継続してびわの種Aを金網2上で移動させながら焙煎する。この状態で、大部分のびわの種は表面の茶色の薄皮A2が剥がれ落ち、びわの種の黄白色の胚部分(本体部分)A1が露呈する。そして、焙煎が進行するのに伴って本体部分A1の表面が徐々に茶色に変色していく。全てのびわ種の本体部分A1の表面が茶色もしくは焦げ茶色に変色した状態で焙煎作業を終了する。本例では、この間、20分程度である。
(原料納品)S2
乾燥・焙煎後のびわ種が原料として別部署へ納品される。
(受け入れ検査)S3
原料として納品されたびわ種が、びわ種茶とするために必要とする条件を満たしているか否かの検査を行い、びわ種の選別を行う。具体的には、腐敗したびわの種などの不良品が除去される。
(刻み工程)S4
選別された焙煎済みのびわ種を、切断・粉砕し、所定の大きさの、複数の細片とする。びわの種を細片にするのに、周知の裁断機・粉砕機を用いる。なお、この切断・粉砕されるびわの種は、内部まで十分に乾燥しているので、無理なく、切断・粉砕され、複数の細片とされる。前記細片の大きさは、幅1〜2mm×長さ1〜10mmの範囲が好ましいが、本例では幅1〜2mm×長さ3〜5mmの細片に切断される。
(篩い・粉抜き工程)S5
篩いにかけ、所定の大きさより小さい(通常,0.5mm未満)細片および粉体を除去する。同時に、びわの種Aの本体部分A1から剥がれ落ちた薄皮A2が除去される。
(乾燥・殺菌焙煎工程)S6
篩いで選択された所定の大きさの、複数の細片を、周知の焙煎器を用いて、150〜180℃で、5分間程度焙煎する。この焙煎の温度、時間は 第1の焙煎工程S1での焙煎の温度、時間に応じて適宜調整される。また、本工程での焙煎の際に、焙煎時の高温の熱風によりびわの種は殺菌もされる。なお、第2の焙煎作業は第1の焙煎とは別の部署で行われるが、細片に切断されたびわの種が湿っている場合には、いったん乾燥させた後に焙煎される。
(中間原料検査)S7
乾燥・殺菌焙煎工程を経たびわの種の細片からなる中間原料に不良品(例えば、真っ黒に焦げた細片)が含まれているか、いいかえればびわ種茶とするために必要とする条件を満たしているか否かの検査を行い、中間原料に含まれている不良品を除去する。
(合組み)S8
乾燥・殺菌焙煎工程が終了し検査に合格したびわの種の細片に対し、S5工程で篩いで除去した所定の大きさよりも小さい細片および粉体を混合して最終製品としてのびわ種茶に仕上げられる。このびわ種茶にはアミグダリンとタンニンなどの有効成分が、損なわれることなく、多く含まれている。
(梱包)S9
びわ種茶が、出荷のために梱包される。
(出荷)S10
梱包後のびわ種茶が出荷される。
【他の実施例】
【0015】
本発明の他の実施例として、びわの種の表面のぬめりを水洗いにより確実に除去し、次に水洗いしたびわの種を日陰干しで5日間以上乾燥させる。びわの種の表面の薄皮がパリパリになる程度まで十分に乾燥する。その後、乾燥したびわの種を鋳鉄製もしくは陶製の焙煎釜3(図3参照)に投入し、焙煎釜3を回転しながらガスの火炎等により120℃まで加熱して15分間焙煎する。焙煎作業後、びわの種Aの薄皮A2が剥げ落ち、本体部分A1の表面が茶色になる。焙煎後にびわの種を破砕機で3〜5mmの粒片に破砕し、それらの粒片A3を再び焙煎釜3に投入し、図3に示すように焙煎釜3を回転しながらガスの火炎等により170℃で5分間加熱して第2の焙煎を終了する。
【0016】
上記のようにして製造されたびわ種茶の粒片A3は、計量されて所定重量(2〜3g)ごとに分けられ、袋状のフィルターBに投入されて投入口が綴じられ、図4に示すように最終製品としてのティーパック式びわ種茶Cが完成する。
【0017】
本実施例のびわ種茶Cは、紅茶や日本茶などのティーパックと同様に定量のお湯を注ぐことによって茶の成分が抽出される。このびわ種茶は、紅茶よりやや薄い褐色を呈し、びわの果実が有する独特な甘味が漂った香ばしい茶となる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、制がん作用・美容・健康に優れたびわ種の茶である。
【符号の説明】
【0019】
1 焙煎器1
2 金網
3 焙煎釜
A びわの種
A1 胚部分(本体部分)
A2 薄皮
A3 粒片
B フィルター
C ティーパック式びわ種茶
図1
図2
図3
図4