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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-174025(P2015-174025A)
(43)【公開日】2015年10月5日
(54)【発明の名称】海水排煙脱硫装置とその運用方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/50 20060101AFI20150908BHJP
   B01D 53/77 20060101ALI20150908BHJP
   B01D 53/64 20060101ALI20150908BHJP
   B01D 53/18 20060101ALI20150908BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20150908BHJP
   B01D 47/06 20060101ALI20150908BHJP
   C02F 1/74 20060101ALI20150908BHJP
【FI】
   B01D53/34 125Q
   B01D53/34 125K
   B01D53/34 136A
   B01D53/18 EZAB
   B01D53/14 102
   B01D47/06 Z
   C02F1/74 C
   B01D53/34 125R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-51759(P2014-51759)
(22)【出願日】2014年3月14日
(71)【出願人】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096541
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 孝義
(74)【代理人】
【識別番号】100133318
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 向日子
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100174953
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 豪
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 郷紀
(72)【発明者】
【氏名】今田 典幸
(72)【発明者】
【氏名】石坂 浩
(72)【発明者】
【氏名】中本 隆則
(72)【発明者】
【氏名】野坂 浩之
(72)【発明者】
【氏名】片川 篤
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4D032
4D050
【Fターム(参考)】
4D002AA02
4D002AA29
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA14
4D002CA01
4D002CA13
4D002DA36
4D002EA03
4D002EA11
4D002GA01
4D002GB01
4D002GB06
4D002GB20
4D020AA06
4D020AA10
4D020BA23
4D020CB25
4D020CC04
4D020CC06
4D020CD01
4D020CD02
4D020DA03
4D020DB12
4D032AC07
4D032BA05
4D032CA01
4D032CA10
4D050AA12
4D050AB42
4D050BB01
4D050BD03
(57)【要約】
【課題】排ガス中の煤塵及び重金属類を除くための除塵部と排ガス中のSOxを除く吸収部の間で液体が通過しないようにした海水排煙脱硫装置を提供すること。
【解決手段】吸収塔1内に循環タンク5内の海水を繰返し供給して排ガス中の煤塵及び重金属を吸収除去する除塵スプレノズル8と、該ノズル8の上方に新鮮な海水を噴霧して排ガス中のSOxを吸収除去する脱硫スプレノズル9を設け、2つのノズル8、9の間に上から順に噴霧海水整流用の部材22、噴霧海水回収用のコレクタ10、ミスト除去層23を配置し、コレクタ10で回収された噴霧海水を空気酸化する酸化槽14を吸収塔1の外に備え、整流部材22とコレクタ10の最上部との上下方向の距離が、0〜コレクタ10の底面幅の2倍以下となるように配置し、吸収塔1内を脱硫スプレノズル9を有する吸収部Aと除塵スプレノズル8を有する除塵部Bとに分けた海水排煙脱硫装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラを含む燃焼装置から排出される排ガスを導入する入口と該入口より下部に海水を貯留する循環タンクを設け、
循環タンク内の海水を繰り返し供給して入口から導入される排ガス中の煤塵及び重金属を吸収除去する除塵スプレノズルを設け、
除塵スプレノズルの上方に新鮮な海水を噴霧して前記入口から導入される排ガス中の硫黄酸化物を吸収除去する脱硫スプレノズルを設け、
除塵スプレノズルと脱硫スプレノズルの間に脱硫スプレノズルから噴霧される海水を回収する上方が開放された断面コ字状の樋状底面を有するコレクタを設け、
該コレクタと脱硫スプレノズルの間に噴霧海水の整流を行う整流部材を設け、
コレクタと脱硫スプレノズルの間にミスト除去用のミストエリミネータを設けた吸収塔を備えており、
該吸収塔内を整流部材とコレクタとミストエリミネータにより、脱硫スプレノズルを有する吸収部と、該吸収部の下方に設けた除塵スプレノズルを有する除塵部とに分け、
さらに、前記吸収塔の他に、該吸収塔のコレクタで回収された噴霧海水を導入して酸化空気を供給する酸化槽を備えた海水排煙脱硫装置において、
整流部材と、コレクタの最上部との鉛直上下方向の距離が、0から、コレクタの断面コ字状の樋状底面の幅の2倍以内であることを特徴とする海水排煙脱硫装置。
【請求項2】
整流部材が多孔板、複数の充填材又は複数の鉛直方向に平面を有する板材を並列配置したスリット板からなることを特徴とする請求項1記載の海水排煙脱硫装置。
【請求項3】
整流部材が多孔板である場合に、該多孔板の上面に直接又は該多孔板から距離をおいて上方に、鉛直上向きで、かつ、コレクタの長手方向の配置方向とは直行する方向に複数の仕切り板を設けることを特徴とする請求項1又は2に記載の海水排煙脱硫装置。
【請求項4】
コレクタが、少なくとも上下2段を用い、上段のコレクタの間隙部の下方に下段のコレクタを千鳥配置することを特徴とする請求項1、2又は3記載の海水排煙脱硫装置。
【請求項5】
請求項1記載の海水排煙脱硫装置における、除塵スプレノズルから噴霧する循環タンク内の海水の単位時間当たりの排ガス量に対する供給量と、脱硫スプレノズルから噴霧する新鮮な海水の単位時間当たりの排ガス量に対する供給量との比は3:5〜3:10であることを特徴とする海水排煙脱硫装置の運用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電所や工場等に設置されるボイラ等の燃焼装置から発生する排ガス中の有害成分である硫黄酸化物を除去する排煙処理装置に係わり、特に、脱硫吸収液として海水を利用する海水排煙脱硫装置と該海水排煙脱硫装置の運用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所における排煙脱硫装置として、海外の沿岸部、特に東南アジアなどでは海水を利用した海水湿式脱硫装置を使用する場合がある。排ガス中の硫黄酸化物の吸収液として海水を使用し、硫黄酸化物を吸収後の海水を曝気した後、海洋に放流する海水排煙脱硫方式により、設備にかかるコストを低減できる。
【0003】
従来技術の海水を利用した湿式排煙脱硫装置の系統を図15に示す。
この湿式脱硫装置は、主にボイラから排出される燃焼排ガス中の硫黄酸化物(SOx)を処理する脱硫吸収塔1、脱硫吸収塔1に排ガスを導入する入口ダクト2、脱硫吸収塔1でSOxが処理された排ガスを排出する出口ダクト3、排ガス中のSOxを吸収する吸収液(海水)を排ガスに噴霧する脱硫(海水)スプレノズル9、排ガスの流れに同伴する微小な液滴(ミスト)を除去するミストエリミネータ7、海水を脱硫スプレノズル9に供給するための海水ポンプ13、SOxの吸収によって生じた亜硫酸を酸化処理する酸化槽14、酸化槽14に供給する空気を送る酸化用空気ブロワ16、酸化用空気ブロワ16により送った空気を噴出させる散気ノズル17等から構成される。
【0004】
図示しないボイラから排出される燃焼排ガスは、図示しない脱硫ファンにより入口ダクト2から脱硫吸収塔1にほぼ水平方向に導入され、脱硫吸収塔1の塔頂部に設けられた出口ダクト3から排出される。
【0005】
脱硫吸収塔1では、海水ポンプ13によって海洋12から汲み上げられ、吸収用海水送水管L2を介して送られる海水が脱硫スプレノズル9から微細な液滴として噴霧され、この海水と排ガスとの気液接触が行われることで、排ガス中の煤塵や塩化水素(HCl)、フッ化水素(HF)等の酸性ガスと共に、排ガス中のSOx、主にSO2が脱硫スプレノズル9の吸収液滴表面で選択的に吸収、除去される。
【0006】
そして、脱硫スプレノズル9からの噴霧によって微粒化された海水の中で、排ガスの流れに同伴するミストは脱硫吸収塔1の上部の出口ダクト3に設置されたミストエリミネータ7により捕集される。ミストエリミネータ7を通過した排ガスは、必要により再加熱された後、煙突(図示せず)から大気中に排出される。
【0007】
排ガス中のSO2を吸収した海水は、亜硫酸イオン含有海水となって亜硫酸イオン含有海水送水管L4によって脱硫吸収塔1から抜き出されて酸化槽14に送られる。ここで亜硫酸イオン含有海水は希釈用海水送水管L3から送られる希釈用海水によって希釈されながら、酸化用空気ブロワ16から送られて散気ノズル17から噴出される空気(気泡)中に溶け込む酸素によって酸化され、処理海水として海洋12に戻される。
【0008】
この従来の海水湿式脱硫装置は、石灰石−石膏法のように石灰石供給設備や石膏回収設備を設ける必要が無く、また、SO2吸収後の排水処理が簡単であり、脱硫システムのコストを低く抑えることができるという利点がある。
【0009】
しかしながら、排ガス中にはSO2等の硫黄酸化物以外に、図示していない集塵機で除去しきれなかった煤塵や水銀等の重金属類が含まれており、SO2と同様に吸収塔1で吸収除去されるため、酸化槽14で処理された処理海水と共に海洋12に排出されることになり、海洋汚染の原因となり得る。
【0010】
特許文献1(特開2001−170444号公報)には、図17に示すように、石灰石を含む吸収液を溜めた吸収液貯留部330を下部に備えた吸収塔100において、空塔部をコレクタ420により上下二段に分け、下段は前記吸収液貯留部330から循環供給される石灰石を含む吸収液を排ガスに噴霧する下部スプレノズル370’を備えた下部吸収部とし、上段は海水を噴霧する上部スプレノズル370を設けた上部吸収部とした構成が開示されている。上部吸収部で排ガスと接触した使用済み海水の一部はコレクタ420で回収されて吸収塔の外部に放流され、吸収液貯留部370に溜まった使用後の吸収液は石灰石を補給されながら下部吸収部の下部スプレノズル370’から噴霧されて排ガスの吸収に利用される。
【0011】
特許文献2(特開2008−200619号公報)には、脱硫塔内の上部から海水を流下させ、吸収塔内の下部から上部に向けて排ガスを上昇させて排ガスの脱硫を行うに際して、脱硫塔内の水平断面積を複数に仕切ることにより脱硫塔内での海水の偏流や排ガスの吹き抜けを抑制する構成が開示されている。
【0012】
また、特許文献3(特開昭61−259730号公報)には図16に示すように、石灰石を含む吸収液を用いる排煙脱硫装置として吸収塔100を下段の除塵部Bと上段の吸収部Aに分けて、噴霧後の吸収液を回収するコレクタ122を設けた構成が開示されている。
【0013】
吸収液を溜めた除塵部循環タンク103を下部に備えた吸収塔100の空塔部をコレクタ122により上下二段に分け、上段は石灰石を含む吸収液を排ガスに噴霧するスプレノズル121を備えた吸収塔吸収部Aとし、下段は循環タンク103からの吸収液が循環する吸収塔除塵部Bとし、コレクタ122により回収された排ガスと接触した後の吸収液を循環タンク103とは別に設けられた吸収液循環タンク118に集めた後に、除塵部循環タンク103と吸収塔吸収部Aのスプレノズル121に送られて排ガスの脱硫に利用される構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2001−170444号公報
【特許文献2】特開2008−200619号公報
【特許文献3】特開昭61−259730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献3(特開昭61−259730号公報)記載の排煙脱硫装置は、海水を使用しないで、図16に示すように石灰石を含む吸収液を用いる排煙脱硫装置であり、このように循環タンク103を下部に備えた吸収塔100の空塔部をコレクタ122により上下二段に分けた構成は、コレクタ122で吸収塔吸収部Aと吸収塔除塵部Bが完全に分離するものではなく、吸収部Aで噴霧された吸収液は除塵部Bにも流下する構成であり、除塵部Bの下部の循環タンク103の一部を仕切り、液溜部109として、液溜部109で粒径の大きな石膏を回収する構成である。
【0016】
すなわち、図16に示す発明では吸収部Aと除塵部Bが完全に機能分離されておらず、専ら循環タンク103からスラリを抜き出す際のポンプのキャビテーションを防止して、循環タンク103中への空気吹き込みによる亜硫酸塩の酸化を円滑に行うことを目的としており、コレクタ122によって吸収部Aと除塵部Bを完全に分離することができず、また吸収部Aと除塵部Bにおける排ガス処理機能も分離されていない。
【0017】
また、特許文献1に開示された発明では、図17に示すように吸収塔100の上段の海水を排ガスに噴霧するスプレノズル370を備えた吸収部を設け、下段には循環タンク内に貯留された吸収液が循環する下段部を設け、両者の間をコレクタ420で実質的に仕切っている。
【0018】
しかし、特許文献1に示す発明では上段の吸収部から流下する海水からなる排ガス吸収液はコレクタ420でその一部は回収されるものの、吸収部に備えられたノズル370が、一般に用いられるような噴射角80〜120度のものであった場合、提示された構造のコレクタ420では、運転条件によっては、その隙間から下段部に、その吸収液供給量に対して最大数%もの吸収液が流れ込んでしまうので、下段部で循環している石灰石を含む吸収液に混入することになる。そのため、下段部の石灰石を含む吸収液の塩素濃度がより濃縮され、SO吸収後に回収される石膏(CaSO)に塩分が相当量含有されることになる。塩分が付着した石膏は水洗により脱硫石膏として2次利用は可能となるが、排水処理設備はこれらの対策のためよりユーティリティー使用量を増やさなくてはならなくなる。
【0019】
また、貯留部330から下段部に循環する石灰石を含む吸収液により、排ガス中の煤塵及び重金属類が吸収除去されるため、貯留部330の吸収液は浄化処理しないまま放流することはできない。このような貯留部330に溜まった吸収液に吸収部から大量の海水が流下すると、限りがある吸収塔100および排水処理設備の容積では対応できなくなる。吸収部に供給される海水量が下段部に供給される吸収液量に比べて数倍多くなる場合には貯留部のスペースでは対応不能になる。
【0020】
また、下段部で循環される吸収液には排ガス中から除去された煤塵及び重金属類が濃縮されており、この吸収液をスプレすることにより発生する飛沫=スプレミストには高濃度の煤塵及び重金属類が含まれることになる。特許文献1の構成ではそのスプレミストを除去する手段はなく、コレクタ420をすり抜けて上段の吸収液(海水)に吸収され、コレクタ420を経由して放流される。
【0021】
このように、従来技術では、吸収塔内の排ガス吸収部と除塵部とが分離できていないので、排ガス中の煤塵及び重金属類を放流しないように除去することが困難であった。
本発明の課題は、一つの吸収塔内で排ガス中の煤塵及び重金属類を除くための除塵部と排ガス中の硫黄酸化物を除く吸収部の間でそれぞれの吸収液が通過しないようにした海水排煙脱硫装置とその運用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記本発明の課題は、下記の構成を採用することにより達成できる。
請求項1記載の発明は、ボイラを含む燃焼装置から排出される排ガスを導入する入口(2)と、該入口(2)より下部に海水を貯留する循環タンク(5)を設け、循環タンク(5)内の海水を繰り返し供給して入口(2)から導入される排ガス中の煤塵及び重金属を吸収除去する除塵スプレノズル(8)を設け、除塵スプレノズル(8)の上方に新鮮な海水を噴霧して前記入口(2)から導入される排ガス中の硫黄酸化物を吸収除去する脱硫スプレノズル(9)を設け、除塵スプレノズル(8)と脱硫スプレノズル(9)の間に脱硫スプレノズル(9)から噴霧される海水を回収する上方が開放された断面コ字状の樋状底面を有するコレクタ(10)を設け、該コレクタ(10)と脱硫スプレノズル(9)の間に噴霧海水の整流を行う整流部材(22)を設け、コレクタ(10)と脱硫スプレノズル(9)の間にミスト除去用のミストエリミネータ(23)を設けた吸収塔(1)を備えており、該吸収塔(1)内を整流部材(22)とコレクタ(10)とミストエリミネータ(23)により、脱硫スプレノズル(9)を有する吸収部(A)と、該吸収部(A)の下方に設けた除塵スプレノズル(8)を有する除塵部(B)とに分け、さらに、前記吸収塔(1)の他に、該吸収塔(1)のコレクタ(10)で回収された噴霧海水を導入して酸化空気を供給する酸化槽(14)を備えた海水排煙脱硫装置において、
整流部材(22)と、コレクタ(10)の最上部との鉛直上下方向の距離が、0から、コレクタ(10)の断面コ字状の樋状底面の幅の2倍以内であることを特徴とする海水排煙脱硫装置である。
【0023】
請求項2記載の発明は、整流部材(22)が多孔板、複数の充填材又は複数の鉛直方向に平面を有する板材を並列配置したスリット板からなることを特徴とする請求項1記載の海水排煙脱硫装置である。
【0024】
請求項3に記載の発明は、整流部材(22)が多孔板である場合に、該多孔板の上面に直接又は該多孔板から距離をおいて上方に、鉛直上向きで、かつ、コレクタ(10)の長手方向の配置方向とは直行する方向に複数の仕切り板(40)を設けることを特徴とする請求項1又は2に記載の海水排煙脱硫装置である。
【0025】
請求項4に記載の発明は、コレクタ(10)が、少なくとも上下2段を用い、上段のコレクタ(10)の間隙部の下方に下段のコレクタ(10)を千鳥配置することを特徴とする請求項1、2又は3記載の海水排煙脱硫装置である。
【0026】
請求項5に記載の発明は、請求項1記載の海水排煙脱硫装置における、除塵スプレノズル(8)から噴霧する循環タンク(5)内の海水の単位時間当たりの排ガス量に対する供給量と、脱硫スプレノズル(9)から噴霧する新鮮な海水の単位時間当たりの排ガス量に対する供給量との比は3:5〜3:10であることを特徴とする海水排煙脱硫装置の運用方法である。
(作用)
本発明によれば、吸収塔(1)の吸収部(A)で燃焼装置から排出される排ガスに新鮮な海水を脱硫スプレノズル(9)から噴霧して排ガス中の硫黄酸化物を吸収除去する。排ガス中の硫黄酸化物を吸収した海水は整流部材(22)により鉛直下方向に整流されて、コレクタ(10)で回収される。このとき脱硫スプレノズル(9)から噴霧された海水は整流部材(22)により鉛直方向下方に整流されながら流下するので、海水の流下領域が限定され、流下する海水を全てコレクタ(10)で回収することができる。
【0027】
特にそのコレクタ(10)と脱硫スプレノズル(9)の間の噴霧海水の整流を行う整流部材(22)と、コレクタ(10)の最上部との鉛直上下方向の距離を近づけるほど、脱硫スプレノズル(8)から噴霧された海水は、コレクタ(10)の直上部に集結する傾向が強まり、コレクタ(10)での回収率が向上する。
【0028】
図13は、コレクタ10上端と整流部材22間の距離を横軸に、式(1)で表される流速の変動率、すなわち平均流速からどれだけ偏っているかを表した指数を、縦軸にとってプロットしたグラフである。各流速は実機サイズの流動数値解析をANSYS社のFLUENT6.3を用いて解析した結果を用いた。
【0029】
流速の変動率=
その面での各部位のガス流速の標準偏差/平均流速×100(%) (1)
すなわち、図13は、コレクタ10によって変動したガス流速分布の影響がコレクタ10からどれだけ離れれば小さくなるかを示している。ガス流速の変動率が小さいほどガス流速分布が小さく、流速値のばらつきが小さいことになる。
【0030】
本発明はコレクタ10によるガス流速の分布(コレクタ10の直上では低く、隣接した2つのコレクタ10の間隙部では高い)が大きくなることを利用するものであり、ガス流速分布の大きな部位に整流部材22を配置して、コレクタ10の直上部に脱硫スプレノズル9の噴霧海水を集結させるのが特徴である。
【0031】
前記流速の変動率60%におけるガス流速分布と同40%、20%での分布を比較した結果を図14に示す。ここで、横軸は最上段コレクタ10の上端より、ある距離Dだけ離して設置した整流部材22上の点を示したもので、図14の横軸の中央付近、及び両端部の直下には最上段コレクタ10は存在していない。各地点での相対的なガス流速を縦軸で示した。
【0032】
変動率60%の条件では、最低0.1から最高2までの明らかな流速分布があり、変動率40%の条件でも0.4〜1.4の流速分布があることが分かる。一方、変動率20%では一様な分布であると判断されるので、図13において、整流部材22とコレクタ10の間の鉛直方向の距離が0〜コレクタ幅L(図14参照)の2.5倍、より望ましくは0〜コレクタ幅Lの2倍の範囲ではガス流速に明らかな分布があり、3倍以上とすると流速分布はほぼ一様になることが分かる。
【0033】
そこで、そのコレクタ10と脱硫スプレノズル9の間の噴霧海水の整流を行う整流部材22と、コレクタ10の最上部との鉛直上下方向の距離が、0〜コレクタ10の上方が開放された断面コ字状の樋状の底面の幅Lの2倍以内に存在することを本発明での第一の特徴としている。
【0034】
さらに整流部材22として多孔板を用いた場合、その上面に、鉛直上向きでかつ、該コレクタ10の配置方向と垂直となる方向に仕切り板を設けることで、脱硫スプレノズル9から噴霧された海水が該コレクタ10の配置方向に対して、偏りが生じるのを防ぐことができ、コレクタ10での噴霧海水の回収率を向上させることができる。
【0035】
こうして脱硫スプレノズル9から噴霧した新鮮な海水は排ガス中の硫黄酸化物を吸収した後、全てコレクタ10を介して吸収塔1の外に設けた酸化槽14内に流れ落ちるので、除塵部Bには吸収部Aで噴霧された海水は流れ落ちない。
【0036】
また、吸収部Aで噴霧される海水は除塵部Bで噴霧される海水に比較して大量に用いることで排ガス中の硫黄酸化物を十分に吸収除去することができる。
このように吸収部Aで噴霧される海水は全て酸化槽14内に流れ落ち、酸化槽14で浄化処理した後に海洋中に海水を放流することができる。吸収部Aで噴霧された海水は整流部材22とコレクタ10により全て回収され、除塵部Bに流下することがないので、吸収部Aで噴霧される海水が大量であっても除塵部Bに浄化処理負荷を掛けることがない。
【0037】
一方、除塵部Bでは循環タンク5内に貯留した海水を除塵スプレノズル8から繰り返して噴霧することで排ガス中の煤塵及び重金属を噴霧海水中に吸収除去することができる。この除塵スプレノズル8から繰り返して噴霧される海水は、吸収部Aの脱硫スプレノズル9で噴霧される海水に比べて、煤塵などでかなり汚染されているので、この汚染された海水は排水処理槽24で浄化された後に海洋に放流することができる。
【0038】
また、除塵スプレノズル8から繰り返して噴霧される海水が吸収部Aに上昇してしまうと海水で回収した煤塵及び重金属がコレクタ10経由で海洋に放出されることになり、海洋汚染の原因となるので、避ける必要がある。そのため除塵スプレノズル8の上方であって、コレクタ10の下方に設けたミストエリミネータ23でミストを除去することが重要である。
【発明の効果】
【0039】
請求項1記載の発明によれば、除塵部(B)と吸収部(A)で、それぞれ噴霧された海水は整流部材(22)、コレクタ(10)及びミストエリミネータ(23)により混じり合うことなく、それぞれ独立して処理出来ることに大きな特徴があり、また、従来の海水を用いる排ガスの浄化処理技術に比べて、浄化処理後の海水が清浄であることにも特徴があり、吸収部(A)で噴霧される海水は大量であっても除塵部(B)での汚染海水の浄化処理負荷が大きくならず、安価な海水を使用する排煙脱硫装置として有用である。特に脱硫スプレノズル(9)から噴霧された海水は、コレクタ(10)の直上部に集結する傾向が強まり、コレクタ(10)での回収率が従来より向上する。
【0040】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、多孔板、複数の充填材又は複数の鉛直方向に平面を有する板材を並列配置したスリット板からなる整流部材(22)を用いることで、脱硫スプレノズル(9)から末広がり状に拡がる噴霧海水を鉛直方向下向きに流下させることができ、整流された噴霧海水をコレクタ(10)で確実に回収することができる。
【0041】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、整流部材(22)として多孔板を用いることで、脱硫スプレノズル(9)から末広がり状に拡がる噴霧海水を鉛直方向下向きに流下させることができ、整流された噴霧海水をコレクタ(10)で確実に回収することができる。
【0042】
請求項4記載の発明によれば、上記請求項1、2又は3記載の発明の効果に加えて、コレクタ(10)として少なくとも上下2段を用いて上段のコレクタ(10)の間隙部の下方に下段のコレクタ(10)を千鳥配置することにより吸収部(A)で用いる新鮮な海水が除塵部(B)に流下することがなくなり、吸収部(A)で使用する海水に比較して除塵部(B)で使用する海水が比較的少量で良く、除塵部(B)で使用した汚染海水の浄化処理が容易となる。
【0043】
請求項5記載の発明によれば、除塵スプレノズル(8)から噴霧する循環タンク(5)内の海水の単位時間当たりの排ガス量に対する供給量と、脱硫スプレノズル(9)から噴霧する新鮮な海水の単位時間当たりの排ガス量に対する供給量との比は3:5〜10とすることで、汚染海水の浄化処理負荷を大きくしない海水を用いた排ガスの浄化が可能となり、またそのために脱硫率に関する法規制の枠内で容易に海水噴霧量を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明の一実施例である海水排煙脱硫装置の系統を示す図である。
図2図1の脱硫吸収塔に配置される整流部材の例である。
図3図1の脱硫吸収塔に配置される整流部材とコレクタの配置関係を示す図である。
図4図3のX−X線断面の矢視図である。
図5】本発明の別実施例の図3のX−X線断面の矢視図である。
図6図3のコレクタ配置部分の上面図である。
図7図1の脱硫吸収塔に配置される別の実施例の整流部材とコレクタの配置関係を示す図である。
図8図7のX−X線断面の矢視図である。
図9図7のコレクタ配置部分の上面図である。
図10図1の脱硫吸収塔に配置される別の実施例の整流部材とコレクタの配置関係を示す図である。
図11図10のX−X線断面の矢視図である。
図12図10のコレクタ配置部分の上面図である。
図13】本発明の実施例の整流部材とコレクタ間の距離と、整流部材上のガス流速変動率の関係を表すグラフである。
図14】本発明の実施例の整流部材とコレクタ間の距離Dを変化させて、変動率を変化させた場合の、整流部材上のガス流速分布を表すグラフである。
図15】従来技術の海水排煙脱硫装置の系統を示す図である。
図16】従来技術の海水排煙脱硫装置の系統を示す図である。
図17】従来技術の海水排煙脱硫装置の系統を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0046】
図1には、本発明の一実施例である海水排煙脱硫装置の配置図を示す。図1に示す海水排煙脱硫装置は、ボイラを含む燃焼装置(図示せず)から排出される排ガスを導入する排ガス入口2と該入口2より下部に設けた海水を貯留する循環タンク5を設け、循環タンク5内の海水を繰り返し供給して入口2から導入される排ガス中の煤塵及び重金属を吸収除去する除塵スプレノズル8を設け、除塵スプレノズル8の上方に新鮮な海水を噴霧して前記入口2から導入される排ガス中の硫黄酸化物を吸収除去する脱硫スプレノズル9を設け、除塵スプレノズル8と脱硫スプレノズル9の間に、該脱硫スプレノズル9から噴霧される海水を回収するコレクタ10を設けている。
【0047】
さらにコレクタ10と脱硫スプレノズル9の間に噴霧海水の整流を行う整流部材22を設け、コレクタ10と脱硫スプレノズル9の間にミスト除去用のミストエリミネータ23を設けている。
【0048】
吸収塔1内を整流部材22とコレクタ10とミストエリミネータ23により、脱硫スプレノズル9を有する吸収部Aと、該吸収部Aの下方に設けた除塵スプレノズル8を有する除塵部Bとに分けている。また、コレクタ10で回収された噴霧海水を導入してSOxの吸収によって生じた亜硫酸イオンを酸化処理する酸化槽14を吸収塔1とは別に備えている。
【0049】
また、海洋12の海水を脱硫スプレノズル9に供給するための海水ポンプ13、酸化槽14に供給する空気を送る酸化用空気ブロワ16、酸化用空気ブロワ16から送気配管L6を経由して送った空気を酸化槽14内に噴出させる散気ノズル17等から構成される。
【0050】
脱硫吸収塔1では、ポンプ18によって酸化槽14内の海水が汲み上げられ、吸収用海水送水管L2を介して新規な海水として脱硫スプレノズル9に送られ、また海水送水管L3を経由して酸化槽14に希釈用海水として供給され、さらに海水送水管L2から分岐した海水送水管L7により脱硫吸収塔1の下部の循環タンク5に補給用海水として送られる。
【0051】
燃焼排ガスは、入口ダクト2から脱硫吸収塔1にほぼ水平方向に導入され、脱硫吸収塔1の塔頂部に設けられた出口ダクト3から排出される。
なお、吸収用海水送水管L2を介して送られる新規な海水に加えて図示しないボイラ復水器から回収した復水を供給しても良い。
【0052】
本実施例の特徴は、整流部材22とコレクタ10の間の上下方向の距離を0〜コレクタ10の上方が開放された断面コ字状の樋の底面の水平方向の幅(L)×2までに規定したことである。なお、コレクタ10の底辺の水平方向の幅Lは図4に示すようにコレクタの底面幅のことである。
【0053】
なお、整流部材22が多孔板、複数の充填材又は複数の鉛直方向に平面を有する板材を並列配置したスリット板からなる。図2に示すように、整流部材22として多孔板(図2(a)の斜視図、図2(b)の断面図)、複数の充填材(ラシヒリング)を積み重ねた構成又は複数の鉛直方向に平面を有する板材を並列配置したスリット板(図2(d))の何れかを用いることで、脱硫スプレノズル9から末広がり状に拡がる噴霧海水を鉛直方向下向きに流下させることができ、整流された噴霧海水をコレクタ10で確実に回収することができる。なお、多孔板を整流部材22として用いる場合は、図2(b)の断面図に示すように各孔の下方には鉛直方向に突起がある筒部を形成しているので噴霧海水が鉛直方向にしか流下しない。
【0054】
除塵スプレノズル8から噴霧する循環タンク5内の海水の単位時間当たりの排ガス量に対する供給量と、脱硫スプレノズル9から噴霧する新鮮な海水の単位時間当たりの排ガス量に対する供給量との比は3:5〜3:10とする。
【0055】
図3に整流部材22とコレクタ部10の部分の拡大側面図を示し、図4図3のX−X線断面の矢視図を示し、図6にはコレクタ10部分を上方から見た平面図を示す。図3では、コレクタ10とその下段にコレクタ10−2を配置している。図3図6には図示を省略した脱硫スプレノズル9に送られた新鮮な海水は微細な液滴として脱硫吸収塔1内の吸収部Aで噴霧され、この海水と排ガスとの気液接触が行われることで、排ガス中の煤塵やHCl、HF等の酸性ガスと共に、排ガス中のSOx(主にSO2)が脱硫スプレノズル9の吸収液滴表面で選択的に吸収、除去される。
【0056】
脱硫スプレノズル9から噴霧された海水は、排ガス中の硫黄酸化物を吸収し、該硫黄酸化物を吸収した海水は整流部材22により整流されて、コレクタ10で回収される。
そして、脱硫スプレノズル9からの噴霧によって微粒化された海水の中で、排ガスの流れに同伴するミストは脱硫吸収塔1の上部の出口ダクト3に設置された第1のミストエリミネータ7により捕集される。ミストエリミネータ7を通過した排ガスは、必要により再加熱された後、煙突(図示せず)から大気中に排出される。
【0057】
脱硫スプレノズル9から噴霧された海水は整流部材22により鉛直方向下方に整流されながら流下する。また、図4図3のX−X線断面の矢視図を示すように、整流部材22とコレクタ10の先端部との上下方向の距離Dは0〜L×2の間とする。ここで、Lは上部コレクタ10の上方が開放された断面コ字状の樋の底面の幅(図4参照)を示す。このように短い間隔とすることで、整流部材22を通過するガスの流速に図6に示すような分布が生じる。
【0058】
図6は整流部材22を該部材22の上から見た図に示すように、領域(1)、(3)、(5)はコレクタ10の間の空間、領域(2)、(4)はコレクタ10の真上の空間に対応する。また、コレクタ10を排ガス流れ方向に2段以上で配置する場合は、少なくとも排ガス流れ方向の上段のコレクタ10の間隙部の下方に下段のコレクタ10−2を千鳥配置する。すなわち、コレクタ10の間をガスは高速で通過するため、前記距離(整流部材22とコレクタ10の先端部との距離)Dを上記範囲にすると、領域(1)、(3)、(5)はガス流速が高く、領域(2)、(4)ではガス流速が低くなる。そのため、脱硫スプレノズル9から噴霧された海水はそのガス流れに押されて、ガス流速の低い領域(2)、(4)に自然と集結することになり、海水の流下領域が限定される。前記限定された海水の流下領域の下方にコレクタ10の液受け領域を配置することが重要であり、こうして整流部材22から流下する海水をほとんど全てコレクタ10で回収することができ、一部の海水も鉛直下向きに落下するため、コレクタ10−2で漏れなく回収される。
【0059】
したがって、上段のコレクタ10での海水処理量の方が、下段のコレクタ10−2よりも多くなるため、図4に示すようにコレクタ10−2をコレクタ10より大型(深さがより深い)構造にする必要はなく、逆に図5に示すように上段のコレクタ10の深さを増やす方が望ましい。
【0060】
コレクタ10と除塵スプレノズル8の間には、図1に示すようにミストエリミネータ23を備えることが重要である。下部除塵部Bにおける循環タンク5には除塵スプレノズル8によって排ガスから除去された煤塵、重金属類が濃縮されているため、ノズル8からの除塵液噴霧時に発生する微細ミストが少量でも上部の吸収部Aに移動すると、除塵及び重金属除去率は大きく低下する。本実施例の構成とすることで、その影響を排除することが可能であり、高効率に煤塵、重金属類を除去できる。
【0061】
なお、本実施例では、整流部材22を脱硫スプレノズル9の下に設置しているため、一般的な脱硫スプレノズルを使用する脱硫装置よりも、脱硫スプレノズル9から噴霧する新鮮な海水の単位時間当たりの排ガス量に対する供給量は小さくできる。これは整流部材22内で気液接触が活発に行われるためであり、その供給量は6割〜7割に低減できる。仮に従来の海水排煙脱硫装置での海水の供給量を100とすると、本実施例では最大でも60〜70になる。
【0062】
また、除塵スプレノズル8による除塵率はそのスプレ液滴粒径と相関関係があり、除去したい煤塵粒子径が変化しない限りは、液滴粒径が小さくなるほど、また、液の供給量が増えるほど、除塵率が向上する傾向にある。
【0063】
除塵スプレノズル8では排ガスから除去された煤塵、重金属類が濃縮されているため、除塵スプレノズル8からの吸収液噴霧時に発生する微細ミストは少ないほうが望ましい。しかし、本実施例の構成とすることで、その影響を排除することが可能であり、除塵スプレノズル8にはミストエリミネータ23の性能が保証する限りの微細スプレを用いることができる。
【0064】
空塔速度を通常使用される3〜4m/sに維持する限りは、平板式のミストエリミネータでも約40μmのミストを95%以上除去することが可能であり、この粒径以下のミストが発生しなければ問題はない。
【0065】
本実施例では吸収塔本体の空塔速度は一定であるため、通常の脱硫装置で用いられる平均粒径2000μm程度の吸収液液滴のスプレでは供給量は100まで上げないと約90%の除塵率を保証できない。
【0066】
そこで、除塵スプレノズル8の平均粒径をたとえば400μmまで下げれば、除塵スプレ供給量は20まで下げることが可能である。この場合をケース1とする。
このケース1の場合、除塵スプレノズル8の流量の比率は20、脱硫スプレノズル9の流量の比率は60〜70なので、その相対比率は0.29〜0.33、すなわち3:9〜10.5となる。
【0067】
また、除塵スプレノズル8の平均粒径を、例えば1000μmに下げれば、除塵スプレ供給量の比率を40〜43まで下げることが可能である。この場合をケース2とする。
このケース2の場合でも、除塵スプレノズル8の流量の比率は40、脱硫スプレノズル9の流量の比率は60〜70なので、その相対比率は0.6〜0.7、すなわち3:5となる。
【0068】
すなわち、本実施例の構成であれば、除塵スプレノズル8の液滴径範囲に裕度があるため、除塵スプレノズル8で噴霧する循環タンク5内の海水の単位時間当たりの排ガス量に対する供給量と、脱硫スプレノズル9から噴霧する新鮮な海水の単位時間当たりの排ガス量に対する供給量との比は3:5〜10とすることで十分な性能を得ることができる。
【実施例2】
【0069】
図7図9には、別の実施例の整流部材22とコレクタ部10の部分を示す。図7に整流部材22とコレクタ部10の部分の拡大側面図を示し、図8図7のX−X線断面の矢視図を示し、図9はコレクタ10部分を上方から見た平面図を示す。
【0070】
本実施例では、整流部材22の上方に間隔を開けて複数の仕切り板40を配置している例である。仕切り板40は排ガス流れに沿った方向に板平面を配置している。
こうすることで、図9に示すガス流速が低い領域(2)、(4)を、さらに例えば(2−1)、(2−2)、(2−3)、・・・の複数の領域に分けることができる。また、領域(2)、(4)内におけるコレクタ10、10−2の配置により、領域(2−1)、(2−2)、(2−3)、・・・の複数の領域の中の一部に脱硫液が偏ることを防止でき、コレクタ10、10−2への海水落下量を均一にすることができ、排ガスとの接触効率を一定とし、差圧の上昇を抑制できる。
【実施例3】
【0071】
図10図12はさらに別の実施例を示す。図10に整流部材22とコレクタ部10の部分の拡大側面図を示し、図11図10のX−X線断面の矢視図を示し、図12にはコレクタ10部分を上方から見た平面図を示す。
【0072】
本実施例では、整流部材22の上部に複数の仕切り板40を配置する。このとき複数の仕切り板40の板平面は実施例2の場合と同じように、排ガス流れに沿った方向に配置するが、全ての仕切り板40を支持する整流部材22とコレクタ10、10−2とを平行に配置することを特徴としている。
【0073】
こうすることで、実施例2と同様、図11のガス流速が低い領域(2)、(4)をさらに、例えば領域(2−1)、(2−2)、(2−3)、・・・の複数の領域に分けることが出来、領域(2)、(4)内のコレクタ配置方向(すなわち、複数の領域(2−1)、(2−2)、(2−3)、・・・)で脱硫液が一部に偏ることを防止できる。
【0074】
ただし、整流部材22そのものが水平方向から所定の角度だけ傾くことになるので、仕切り板40と整流部材22で区切られる部分で海水が溜まるので、コレクタ10への海水落下量は領域(2−1)、(2−2)、(2−3)、・・・の各領域ではほぼ均一になる。
【0075】
コレクタ10、10−2と整流部材22間の距離が一定であるため、排ガス流速の分布がコレクタの配置方向において一定となり、海水とガスとの接触効率が一定となり、脱硫率が高く維持され、差圧の上昇を抑制できる。
[比較例1]
【0076】
図16には、従来の実施例である特許文献3相当の排煙脱硫装置の系統を示す。
前述した通り、石灰石を含む吸収液を用いる排煙脱硫装置として吸収塔100を下段の除塵部Bと上段の吸収部Aに分けて、噴霧後の吸収液を回収するコレクタ122を設けている。
【0077】
図16に示す発明では、吸収部Aと除塵部Bが完全に機能分離されていない。前記除塵部Bの除塵スプレ123で噴霧されたタンク103内の吸収液中には煤塵が濃縮されており、噴霧された吸収液から発生する微細なミスト中にも煤塵が含まれる。図16の構成では、この煤塵が含まれるミストを高効率に除去する手段はないので、上段の吸収部Aに煤塵が到達し、一部は排ガスとともに脱硫装置出口へ抜け、一部は上部の吸収スプレ121から噴霧される吸収液に吸収されて、コレクタ122で回収され、吸収部Aの循環タンク118に貯蔵されたのち、吸収部Aに循環供給される。このため、循環タンク118にも、タンク103と同様煤塵が濃縮されていくことになる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
排ガス浄化処理済みの海水を汚染されたまま海洋に放流することがない海水を使用する排煙脱硫装置として利用可能性がある。
【符号の説明】
【0079】
1 脱硫吸収塔 2 入口ダクト
3 出口ダクト 4 吸収液循環ポンプ
5 循環タンク 6 攪拌機
7 第1のミストエリミネータ
8 除塵スプレノズル 9 脱硫スプレノズル
10 コレクタ 11 集液樋
12 海洋 13、18 海水ポンプ
14 酸化槽 15 マイクロバブル発生器
16 酸化用空気ブロワ 17 散気ノズル
19 水車 22 整流部材
23 第2のミストエリミネータ
24 排水処理槽 26 開閉弁
L1 吸収液抜き出し管 L2 吸収用海水送水管
L3 希釈用海水送水管 L4 亜硫酸イオン含有海水送水管
L5 吸気管 L6 送気管
L7 海水送水管 L8 送水管
A 吸収部 B 除塵部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17