(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-174289(P2015-174289A)
(43)【公開日】2015年10月5日
(54)【発明の名称】点字打刻装置
(51)【国際特許分類】
B41J 3/32 20060101AFI20150908BHJP
G09B 21/02 20060101ALI20150908BHJP
【FI】
B41J3/32
G09B21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-51743(P2014-51743)
(22)【出願日】2014年3月14日
(71)【出願人】
【識別番号】592209087
【氏名又は名称】株式会社フロンティア
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 吉孝
【テーマコード(参考)】
2C055
【Fターム(参考)】
2C055BB00
2C055BB02
2C055BB10
(57)【要約】
【課題】様々な素材のシート片に対し、鮮明にかつ効率よく点字を打刻することができ、構造がシンプルで安価に製作可能な点字打刻装置を提供する。
【解決手段】シート片Sが載置される基準板20と、平坦面に所定の点字を形成する複数の凸部22aが設けられた金属製の凸型22と、凸部22aに対応した複数の透孔26aが設けられた金属製の凹型26とを備える。基準板20の上方に上下方向に移動可能に設けられたヘッド部30と、これを駆動する駆動部32とを備える。シート片Sをヘッド部30の下方に位置決めする位置決め部34,36を備える。駆動部32は、モータ44により駆動されるリンク機構48とトグル機構50を備え、トグル機構50のリンク部材46fの一端にヘッド部30を有する。凸型22及び凹型26は、それぞれヘッド部30下面又は基準板20上面に取り付けられた状態で互いに対向し、ヘッド部30が下向きに移動してシート片Sに点字を打刻する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
点字打刻対象物であるシート片が載置される基準板と、平坦面に所定の点字を形成する複数の凸部が設けられた金属製の凸型と、前記凸部の形状に対応した間隔で形成された複数の透孔が設けられた金属製の凹型と、前記基準板の上方に上下方向に移動可能に設けられたヘッド部と、前記ヘッド部を駆動する駆動部と、前記シート片を前記ヘッド部の下方に位置決めする位置決め部とを備え、
前記凸型及び前記凹型は、それぞれ前記ヘッド部下面又は前記基準板上面に取り付けられて互いに対向し、
前記駆動部は、モータにより駆動されるリンク機構とトグル機構を備え、前記トグル機構のリンク部材の一端に前記ヘッド部が取り付けられ、
前記位置決め部により位置決めされた前記シート片に点字を打刻する際、前記ヘッド部が下向きに移動して、前記凸型と前記凹型とが前記シート片を挟持し、前記シート片の複数の点字打刻箇所に前記所定の点字が形成されることを特徴とする点字打刻装置。
【請求項2】
前記凸型は、金属板をプレス加工して前記凸部が形成されたものであり、所定の金型治具の表面に取り付けられ、この金型治具を前記基準板又は前記ヘッド部に着脱することにより交換可能である請求項1記載の点字打刻装置。
【請求項3】
前記凹型は、厚みが前記凸部の高さよりも薄い金属板をプレス加工して前記透孔が形成され、弾性体板を介して所定の金型治具の表面に取り付けられ、この金型治具を前記基準板又は前記ヘッド部に着脱することにより交換可能である請求項1記載の点字打刻装置。
【請求項4】
前記ヘッド部は、前記基準板から離れた上方の位置が初期位置であり、
前記駆動部には、点字打刻動作を開始させるためのスイッチが設けられ、作業者が前記スイッチをオンする毎に、前記モータが回転して、前記ヘッド部が初期位置から下降し再び前記初期位置に戻るまでの1サイクルの駆動を行う請求項1乃至3のいずれか記載の点字打刻装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封筒や厚紙等のシート状の対象物にエンボス状の点字を打刻するための点字打刻装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート材に点字を表示する技術として、特許文献1に開示されているように、表面に樹熱膨張性樹脂層とデータ印字されたトナー層とが積層された連続紙を用意し、連続紙の表面に光を照射することによって点字を形成し、その後、連続紙をバーストして封書(封筒、封筒の内部に封入される封入物)を形成する封書の製造方法があった。
【0003】
また、特許文献2に開示されているように、点字を形成する凸部が設けられた凸型と、点字の凸形状に各々対応した間隔で形成された複数の透孔が設けられている金属板で成る凹型と、凹型の裏面に敷設された弾性体板とを備え、この凸型と凹型によりシート材にエンボス状の点字を打刻する点字打刻装置があった。この点字打刻装置は、点字打刻用の凸型と凹型を開示したもので、この凸型と凹型によりシート材を挟持してプレスすることにより、複数の点字打刻箇所が凸型の凸部に押されて凹型の透孔内に進入し、凸部と弾性体板とで挟持され、さらに弾性体板に食い込むことにより、エンボス状に塑性変形するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−301378号公報
【特許文献2】特開2012−20499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の封書の製造方法は、熱望膨張性樹脂層等を備えた特殊な連続紙を用意しなければならず、普通紙や再生紙で成る一般的な封筒やはがき等には使用することができない。また、この製造方法を実施するためには、連続紙を送り出し、特定部分をフラッシュランプで照射し、連続紙を回収する機構を備えた複雑な構造の装置が必要になるので、高額な費用がかかる。したがって、比較的少ない数のシート片に点字を表示する場合、この製造方法は適用しにくいものである。
【0006】
特許文献2の点字打刻装置は、本願出願人による点字打刻用の型を開示したものであって、一般的な封筒やはがき等のシート片の点字打刻にも利用できるものであるが、点字打刻用の型を駆動する装置については触れられていない。
【0007】
本発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、様々な素材のシート片に対し、鮮明かつ効率よく点字を打刻することができ、構造がシンプルで安価に製作可能な点字打刻装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、点字打刻対象物であるシート片が載置される基準板と、平坦面に所定の点字を形成する複数の凸部が設けられた金属製の凸型と、前記凸部の形状に対応した間隔で形成された複数の透孔が設けられた金属製の凹型と、前記基準板の上方に上下方向に移動可能に設けられたヘッド部と、前記ヘッド部を駆動する駆動部と、前記シート片を前記ヘッド部の下方に位置決めする位置決め部とを備え、前記凸型及び前記凹型は、それぞれ前記ヘッド部下面又は前記基準板上面に取り付けられて互いに対向し、前記駆動部は、モータにより駆動されるリンク機構とトグル機構を備え、前記トグル機構のリンク部材の一端に前記ヘッド部が取り付けられ、前記位置決め部により位置決めされた前記シート片に点字を打刻する際、前記ヘッド部が下向きに移動して、前記凸型と前記凹型とが前記シート片を挟持し、前記シート片の複数の点字打刻箇所に点字が形成される点字打刻装置である。
【0009】
前記凸型は、金属板をプレス加工して前記凸部が形成されたものであり、所定の金型治具の表面に取り付けられ、この金型治具を前記基準板又は前記ヘッド部に着脱することにより交換可能であることが好ましい。前記凹型は、厚みが前記凸部の高さよりも薄い金属板をプレス加工して前記透孔が形成され、弾性体板を介して所定の金型治具の表面に取り付けられ、この金型治具を前記基準板又は前記ヘッド部に着脱することにより交換可能であることが好ましい。
【0010】
また、前記ヘッド部は、前記基準板から離れた上方の位置が初期位置であり、前記駆動部には、点字打刻動作を開始させるためのスイッチが設けられ、作業者が前記スイッチをオンする毎に、前記ヘッド部が初期位置から下降し再び前記初期位置に戻るまでの1サイクルの駆動を行うものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の点字打刻装置は、普通紙や再生紙で成る一般的な封筒やはがき等にも、鮮明な点字を形成することができる。また、構造もシンプルなので、装置を安価に製作することができる。特に、比較的少ない数の封筒などのシート片に点字を打刻する場合に最適である。例えば、1台の点字打刻装置に1人の作業者が付いて、作業者が封筒などのシート片を位置決め部にセットし、点字を打刻した後、作業者がそのシート片を取り出すという動作を繰り返すことによって、点字打刻作業を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の点字打刻装置の一実施形態の外観を示す斜視図(a)、天板を外した本体の部分の構造を示す斜視図(b)である。
【
図2】この実施形態の基準板に取り付けられる下金型を示す斜視図(a)、ヘッド部に取り付けられる上金型を示す斜視図(b)である。
【
図3】この実施形態のヘッド部及び駆動部の構造及び動作を説明する簡略図(a),(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の点字打刻装置の一実施形態について、図面に基づいて説明する。この実施形態の点字打刻装置10は、例えば、封筒やはがき等の点字打刻対象物である長方形のシート片Sにエンボス状の点字を打刻するための装置であり、
図1(a)に示すように、本体12と、本体12を下方から支持する支持台14、及び本体12の各部を覆う第一及び第二カバー16,18で構成されている。以下、
図1(a),(b)における左斜め前側を正面として説明する。
【0014】
本体12は、
図1(a),(b)に示すように、支持台14に取り付けられ基部を構成する基準板20と、基準板20の表面を覆って重ねられた天板21を備えている。基準板20及び天板21の表面側には、後述するように、凸型22を有する下金型24が取り付けられ、天板21の表面には、シート片Sの位置決めを行う位置決め部34,36が位置している。天板21の上方には、凹型26を有する上金型28と、上金型28を保持したヘッド部30が位置し、ヘッド部30を駆動する駆動部32が基準板20に固定されている。
【0015】
基準板20は、天板21を介して上面にシート片Sが載置される長方形の相対的に厚い板であり、天板21を外した本体12を示す
図1(b)に示すように、正面から奥に向かって長く、支持台14により略水平に支持されている。基準板20上面の正面寄りの位置には、基準板20の短辺と略平行に配された凹溝である下金型取付部20aが設けられている。下金型取付部20aは、後述する下金型24がちょうど収まる形状になっている。
【0016】
天板21には、下金型取付部20aが形成された位置に合致し下金型取付部20aの幅と等しい幅で溝状に形成された開口部が設けられ、下金型24がその開口部から露出可能に形成されている。天板21上の、下金型取付部20aに対して一側方には、天板21の上面から突出し天板21の短辺と略平行に配された突条である位置決め部34が設けられている。位置決め部34は、天板21上面に載置されたシート片Sの一辺を位置決めする。天板の、下金型取付部20aを挟んで他方の側である正面側に位置した部分にも、天板21の長辺と略平行に配され、シート片Sの他の辺を位置決めする位置決め部36が設けられている。位置決め部36は、天板21上面の左寄りの位置に設けられた突条であり、位置決め部34と面一で互いに直角に交わる角度に配されている。位置決め部34,36は、それぞれ位置調節可能に設けられている。
【0017】
下金型24は、
図2(a)に示すように、凸型22と金型治具38とで構成されている。凸型22は長方形の薄い金属板である。長手方向の内側に、所定の点字を形成する複数の凸部22aが設けられ、長手方向の両端部分に、上下型の位置合わせを行う位置合わせ用貫通孔22bが一対に設けられている。凸部22aは、プレス加工によってエンボス状に形成されている。
【0018】
金型治具38は長方形の厚い金属板であり、その長辺の長さが凸型22の長辺よりも長く、短辺が凸型22の短辺と等しい長さである。長手方向の両端部分には、厚みを薄くした段部38aが各々設けられている。各段部38aの厚みは、金型治具38が基準板22に逆向きに取り付けられることを防止するために、異なる厚みに形成されている。段部38aを除く中央の厚い部分は、凸型22が取り付けられる面が凸型22と同じ形状に形成され、その両端部分に、上下型の位置合わせを行う位置合わせ用貫通孔38bが一対に設けられている。各位置合わせ用貫通孔38bの直径と間隔は、上記の位置合わせ貫通孔22bと等しい。
【0019】
下金型24は、凸型22の凸部22aが突出している表面とは反対側の面に金型治具38の中央の厚い部分を接着固定して組み立てられる。凸型22と金型治具38とを重ねて接着する際、位置合わせ用貫通孔22b,38b内にピンを貫通させた状態で、接着剤を硬化させることにより、正確に位置合わせをすることが可能となる。下金型24を基準板20の下金型取付部20aに取り付ける際の位置合わせについては、後で説明する。
【0020】
上金型28は、
図2(b)に示すように、凹型26、弾性体板40、及び金型治具42とで構成されている。凹型26は、凸型22と同外形の薄い金属板であり、凸型22の凸部22aに各々対応する複数の透孔26aが形成され、長手方向の両端部分に位置合わせ用貫通孔26bが一対に設けられている。位置合わせ用貫通孔26bの直径と間隔は、上記の位置合わせ用貫通孔22bと等しい。
【0021】
弾性体板40は、凹型26と同外形に形成されたシート状のポリウレタンゴム等であり、長手方向の両端部分に位置合わせ用貫通孔40aが一対に設けられている。位置合わせ用貫通孔40aの直径と間隔は、上記の位置合わせ用貫通孔26bと等しい。
【0022】
金型治具42は、長方形の厚い金属板であり、その長辺の長さが凸型22の長辺より長く、短辺も凸型22の短辺より長い。短手方向の両端部分は、段部42aが設けられて薄くなっている。段部42aを除く厚い部分は、凹型26の短辺の長さと同じ幅に形成され、長手方向の両端部分に位置合わせ用貫通孔42bが一対に設けられている。各位置合わせ用貫通孔42bの直径と間隔は、上記の位置合わせ用貫通孔26bと等しい。さらに位置合わせ用貫通孔42bの外側に、後述するヘッド部30に装着するための取り付け用貫通孔42cが一対に設けられている。一対の取り付け用貫通孔42cは、逆向きに取り付けられないように、互いに芯がずれて形成されている。
【0023】
上金型28は、凹型26の裏面に弾性体板40を接着固定し、弾性体板40の反対側の面に金型治具42の中央の厚い部分を接着固定して組み立てられる。凹型26、弾性体板40及び金型治具42を重ねて接着するときは、位置合わせ用貫通孔26b,40a,42b内にピンを貫通させた状態で接着剤を硬化させることで、正確な位置合わせができる。
【0024】
ヘッド部30は、
図1(b)に示すように、基準板20の上方に設けられ、駆動部32に駆動されて上下方向に移動する部分であり、その下面部分に上金型28を着脱可能な上金型取付部30aが設けられている。ヘッド部30に上金型28を装着するときは、凹型26を下側に配し、上側の金型治具42の段部42aを上金型取付部30aのレール状部分にスライドさせて差し込み、取り付け用貫通孔42cを用いてヘッド部30にネジ止めする。この状態で、凹型26は、基準板20の下金型取付部20aと上下に対向する。
【0025】
下金型取付部20a内に下金型24を装着するときは、ヘッド部30にネジ止めされた上金型28を基準にして下金型24の位置合わせを行い、凸型22を凹型26に対向させる。例えば、凹型26の位置合わせ貫通孔26bに垂直にピンを差し込み、そのピンの下端部が凸型22の位置合わせ用貫通孔22bに入るように下金型24を案内することで、正確な位置合わせができる。そして、下金型取付部20a内の空間(下金型24がない部分)に固定金具25を嵌め込んで下金型24を位置決めする。下金型24の固定は、下金型24の段部38aに、固定金具25の固定片25aを係合させて、固定金具25を基準板20の下金型取付部20aに固定することにより行う。
【0026】
駆動部32は、基準板20の上方に設けられ、モータ44及び複数のリンク部材46a〜46cでクランク機構48が構成され、これに46d〜46fで成るトグル機構50を介してヘッド30が連結され、モータ44の主軸が回転することによってヘッド部30を上下移動させる構造になっている。具体的には、
図3に示すように、モータ44の主軸が円盤状の偏心カムであるリンク部材46aの中心に固定され、リンク部材46aの中心から離れた位置にリンク部材46bの一端が軸着され、リンク部材46bの他端に、左右方向に移動可能なシャフト状のリンク部材46cの一端が軸着されている。さらにリンク部材46cの他端にリンク部材46dの一端が軸着され、リンク部材46cの他端にリンク部材46e,46fの一端が軸着されている。そして、リンク部材46eの他端が、所定の位置に回動自在に固定され、リンク部材46fの他端にヘッド部30の上端部が軸着されている。
【0027】
図3(a)は、モータ44の回転により円盤状のリンク部材46aが回動し、シャフト状のリンク部材46cがヘッド部30から離れる方向に移動し、ヘッド部30が上向きに移動し上死点に位置した状態を示している。
図3(b)は、さらに円盤状のリンク部材46aが回動し、シャフト状のリンク部材46cがヘッド部30に近づく方向に移動し、ヘッド部30が下向きに移動し下死点に位置した状態を示している。したがって、円盤状のリンク部材46aの1回転が、ヘッド部30の上下移動の1サイクルとなる。駆動部32の初期状態は、ヘッド部30が基準板20から離れている状態、すなわち
図3(a)に示す状態である。
【0028】
また、駆動部32には、図示しないスイッチが設けられており、作業者がこのスイッチをオンすると、モータ44が動作を開始し、ヘッド部30の上下移動の1サイクルが終了すると、モータ44が自動的に停止するように設定されている。
【0029】
駆動部32及びヘッド部30は、
図1(a)に示すように、作業者が手を挟まれたりしないようにするため、第一及び第二カバー16,18で覆われている。第一カバー16は、正面側の開閉部16aが、注油用に取り外し可能に設けられている。
【0030】
次に、点字打刻装置10の動作を説明する。まず、作業者が、点字打刻前のシート片Sを手に取り、基準板20上面に載置し、シート片Sの端辺を位置決め部34,36に押し当てるようにして位置決めする。この状態で、
図3(a)に示すように、凸型22がシート片Sの下側に位置する。次に、作業者が駆動部32のスイッチをオンにすると、モータ44が動作を開始する。スイッチは、手で操作するタイプでもよいが、足で操作するタイプにすると両手をシート片Sに添えたままにできるので便利である。
【0031】
モータ44が動作を開始すると、
図3(b)に示すように、凹型26がヘッド部30と共に下降し、ヘッド部30のちょうど下死点で、凸型22の平坦面と凹型26の表面とがシート片Sを介して互いに当接する。このとき、シート片Sの複数の点字打刻箇所が、凸型22の凸部22aにより押されて凹型26の透孔26a内に進入し、凸部22a表面と弾性体板40表面とにより挟持され、さらに透孔26aを通過して弾性体板40に適度に食い込み、塑性変形することによって所定の点字Tが形成される。特に、ヘッド部30がクランク機構48及びトグル機構50によって駆動される構造なので、ヘッド部30が下死点に達する直前に、凸部22aがシート片Sを押し込む速度が徐々に緩くなり、シート片Sが無理なく良好に塑性変形し、鮮明な点字を形成することができる。
【0032】
その後、ヘッド部30が上向きに移動し、初期位置に戻ったところでモータ44が停止し、作業者が点字が打刻されたシート片Sを外に取り出し、次のシート片Sをセットする。以上の動作を繰り返すことによって、複数のシート片Sに同一内容の点字を連続して打刻することができる。
【0033】
打刻する点字の内容を変更するときは、凸型22及び凹型26を交換する。変更する凸型22及び凹型26は、あらかじめ別の金型治具38,42に取り付けて準備しておけば、上記の手順により簡単に交換することができる。また、同一内容の点字をシート片Sの異なる位置に打刻するとき等は、位置決め部34,36の位置を変更すればよい。
【0034】
また、位置決め部34,36を門型で囲む構造にすることにより、自動供給、排出可能な構造にすることができ、点字打刻の自動化も可能である。
【0035】
以上説明したように、点字打刻装置10は、普通紙や再生紙で成る一般的な封筒等でも、鮮明な点字Tを形成することができる。また、構造もシンプルなので、装置を安価に製作することができる。特に、比較的少ない数のシート片Sに点字を打刻する場合に好適であり、1人の作業者が付いて上述の動作を繰り返すことによって、点字打刻作業を効率よく行うことができる。
【0036】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、天板を省略して、基準板の上面に直接シート片を載置して点字を打刻するものでも良く、シート片は、基準板に直接又は間接的に載置されて位置決めされるものであればよい。ヘッド部及び駆動部の構造は、凸型及び凹型でシート片を挟持し、上述した要領でシート片の複数の箇所が塑性変形するものであれば、他の構造に変更してもよい。また、凸型をヘッド部側に、凹型を基準板側に取り付けてもよいし、シート片の大きさや形状に合わせて基準板や位置決め部の形状を変更してもよい。さらに、シート片は、封筒やはがき以外に、各種パンフレットや、その他印刷物でも良く、シート状の点字打刻対象物であれよい。
【符号の説明】
【0037】
10 点字打刻装置
12 本体
14 支持台
20 基準板
21 天板
22 凸型
24 下金型
28 上金型
26 凹型
30 ヘッド部
32 駆動部
34,36 位置決め部
38,42 金型治具
40 弾性体板
44 モータ
46a〜46f リンク部材
48 リンク機構
50 トグル機構