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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-174507(P2015-174507A)
(43)【公開日】2015年10月5日
(54)【発明の名称】軌道観光列車の車窓構造
(51)【国際特許分類】
   B61D 25/00 20060101AFI20150908BHJP
   B61D 1/02 20060101ALI20150908BHJP
【FI】
   B61D25/00 A
   B61D1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-50900(P2014-50900)
(22)【出願日】2014年3月13日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成25年9月13日に、九州旅客鉄道株式会社が、自社の小倉総合車両センターにて、軌道観光車両の車窓構造を備えた車両について公開した。 平成25年10月10日に、九州旅客鉄道株式会社が乗車取材会を開催し、鹿児島中央駅〜隼人駅間にて、軌道観光車両の車窓構造を備えた車両について公開した。 平成25年10月15日以降、九州旅客鉄道株式会社がクルーズトレイン「ななつ星in九州」として営業運転を開始し、証明書に記載の営業運転区間にて、乗客に対し、軌道観光車両の車窓構造を備えた車両について公開した。 添付資料1に記載の各「公開者」が、添付資料1に記載の各「放送日」に、添付資料1に記載の各「放送番組」内で、軌道観光車両の車窓構造を備えた車両について、添付資料1に記載の各「放送日」に公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】591146893
【氏名又は名称】九州旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】香月 弘二
(72)【発明者】
【氏名】榎 清一
(57)【要約】
【課題】車窓は、騒音の最大の侵入箇所であり、また車外の陽光を露骨に受けるため大きく睡眠を妨げる箇所でもあり、更には雨天走行時や寒暖差の大きい土地柄では車窓内面に結露を生起し、車内湿度等の劣悪環境が乗客に不快感を与える原因ともなっていた。
【解決手段】 列車の内部の進行方向の一側を居住空間や寝室空間等に区画形成すると共に、他側を通路に形成して構成した観光車輌において、居住空間或は寝室空間の外側壁に車窓を形成し、車窓は固定した外窓ガラスと、その内側に重ねた状態で上方に巻取自在のすだれ体と、左右に開閉自在の引戸とした左右障子体と、左右に開閉自在の引戸とした左右扉体と、左右に開閉自在に張設した布状のカーテンとを重ねて配設し、しかも、最内側に張設したカーテンの四方周縁には車窓を枠付けする状態で額縁状の装飾枠体を設けたことを特徴とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車の内部の進行方向の一側を居住空間や寝室空間等に区画形成すると共に、他側を通路に形成して構成した観光車輌において、居住空間或は寝室空間の外側壁に車窓を形成し、車窓は
固定した外窓ガラスと、
その内側に重ねた状態で
上方に巻取自在のすだれ体と、
左右に開閉自在の引戸とした左右障子体と、
左右に開閉自在の引戸とした左右扉体と、
左右に開閉自在に張設した布状のカーテンとを重ねて配設し、
しかも、最内側に張設したカーテンの四方周縁には車窓を枠付けする状態で額縁状の装飾枠体を設けたことを特徴とする軌道観光列車の車窓構造。
【請求項2】
外窓ガラスとカーテンとの間に重ねて配設したすだれ体と左右障子体と左右扉体はその前後配設順序を任意としたことを特徴とする請求項1に記載の軌道観光列車の車窓構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軌道レール上を走行する軌道観光列車の車窓構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レール等の軌道を走行する列車は、用途に合わせて通勤列車や、ビジネス、観光等を主体とした特定駅間の特急列車や、主に宿泊による観光を目的とした寝台列車等の種々の形態の列車がある。
特に最近は、観光時に高級感を味わって貰うための内装や外観に特別の仕様を施し、高価な価格に対応した特別内外仕様列車も誕生し、世間の耳目を集めている。
例えば、ヨーロッパのオリエンタル特急列車や日本のJRにおいて運行されている特別観光寝台列車等はこれらの特別内外仕様列車と言うことができる。
これらの従来の特別仕様の観光列車や旅客車両は、例えば実願平9−1866に開示されているように、ゆったりと快適な旅ができるようにカーペットを車両内に敷いたものや動くホテルと称される調度品や家具調の仕様を内装し、軌道走行列車とは思われない意外性を誇示することにより世間の注目を集めて経営的な集客手段や極上の観光旅行提供手段として機能するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実願平9−1866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のこれらの特別仕様列車は、軌道上を走行移動するという機能上の利点の特性が内装の贅沢な仕様に有効に融合されているか否かという観点から評価すると充分なものではなかった。
すなわち、軌道列車の特性は、車窓の風景が刻々と変化し、特に観光列車にあっては旅行という目的を果しながらも車窓からの種々の風景を楽しむことも最重要な課題であり、そのために乗客に旅行経験を実感させながら刻々変化する車窓外風景を充分に堪能させる機能上の工夫が必要である。
しかしながら車窓は、騒音の最大の侵入箇所であり、また車外の陽光を露骨に受けるため大きく睡眠を妨げる箇所でもあり、更には雨天走行時や寒暖差の大きい土地柄では車窓内面に結露を生起し、車内湿度等の劣悪環境が乗客に不快感を与える原因ともなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、列車の内部の進行方向の一側を居住空間や寝室空間等に区画形成すると共に、他側を通路に形成して構成した観光車輌において、居住空間或は寝室空間の外側壁に車窓を形成し、車窓は固定した外窓ガラスと、その内側に重ねた状態で上方に巻取自在のすだれ体と、左右に開閉自在の引戸とした左右障子体と、左右に開閉自在の引戸とした左右扉体と、左右に開閉自在に張設した布状のカーテンとを重ねて配設し、しかも、最内側に張設したカーテンの四方周縁には車窓を枠付けする状態で額縁状の装飾枠体を設けたことを特徴とする軌道観光列車の車窓構造を提供せんとするものである。
【0006】
また、外窓ガラスとカーテンとの間に重ねて配設したすだれ体と左右障子体と左右扉体はその前後配設順序を任意としたことにも特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、観光車輌の内部を長手方向で左右に二分し、一側を居住空間と寝室空間とし、他側を移動用の通路としたことにより、居住空間と寝室空間から車輌外側壁の車窓から外部の流れる風景を見ることができ、特に車窓を枠付けする状態で額縁状の装飾枠体を設けたので単に車窓に外の風景が映すだけではなく、変化する風景が額縁内に収まり、あたかも連続して変化する風景絵画を額縁で飾って観賞するような芸術的な錯覚を生起する効果を有する。
この理は、従来の車窓外の風景を単に窓から観賞するのではなく、装飾額縁内の動く絵画として見ることができるように構成したことと同じであり、観光列車における居住空間や寝室空間における移動価値を一段と向上することができる効果を生起し、乗客に観光列車の観光価値に対して走行周辺の風景絵画を芸術品として提供することができるようになり、従来にない観光列車の新たな価値感を創造することに貢献する。
また、車窓の構造は外窓ガラス、すだれ体、左右障子体、左右扉体、カーテン等の五重の重複層で構成し、その外枠を装飾枠体で囲繞しているため次のような効果を生起することができる。
すなわち、すだれ体は和室の雰囲気を醸成し、外観に木質風の柔らかさを生起することができる効果を有し、その手前に左右障子体を更に重ねて張設したことにより、すだれ体よりもより典型的な和室風の柔らかい紙製障子の雰囲気を生起することができる効果がある。更には、その手前に左右扉体を張設したので閉扉した車窓を車輌内側壁の連続壁となり、車窓の存在を消去して側壁と一体融合壁として安眠や精神安定性に適した雰囲気を生起することができる効果を有する。
また、外窓ガラスに直接重複隣接したすだれ体は木製のすだれ部材を一定隙間を保有して綴製しているため外窓ガラスからの充分な採光を可能とし、車窓外の風景も充分に確認することがでる。更には、外窓ガラスに生起した結露が列車の振動にともない重ねて閉塞した他の障子体や扉体に飛散するのを遮断して防ぐことができる効果がある。
特に観光車輌は軌道車輌の宿命として走行時に継続した微振動を生起するため車窓に張設したすだれ体も上下振動して搖動し、すだれ部材のひご体間の隙間が上下に搖動するひご体で瞬間的に閉塞されることになり、かかるひご体の搖動は上記した結露飛散を遮断する効果を有し、他方、外窓ガラスを透過した車輌外風景をひご体間の隙間から断片的に観賞することもできることになり、新鮮な興味の尽きない動画として風景を観賞することができる効果がある。
また、左右障子体や左右扉体は車窓を閉塞することにより外窓ガラスの振動や外窓ガラスから伝播する走行騒音を遮断して列車内部の静寂性を向上することができると共に、車窓を開放すれば居住空間や寝室空間における風景のみの単調な観賞的雰囲気を変化させることができ乗客に意外性のある楽しみを付与することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の軌道観光列車の車窓構造を有する車輌の内部平面説明図
図2図1の要部拡大図
図3】同要部の正面説明図
図4】同要部の斜視説明図
図5】同要部の断面説明図
図6】同要部のすだれ体の中途使用状態を示す正面図
図7】同要部の使用完了状態を示す正面図
図8】同要部の左右障子体の使用状態を示す正面図
図9】同要部の左右扉体の使用状態を示す正面図
図10】(a)同要部の各種使用形態の説明図、(b)(a)のI−I線の横断面図(一部拡大)
図11図5の要部拡大の側断面図
図12図5の要部拡大の側断面図
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0009】
この発明の実施例は、列車の内部の進行方向の一側を居住空間や寝室空間等に区画形成すると共に、他側を通路に形成して構成した観光車輌において、居住空間或は寝室空間の外側壁に車窓を形成し、車窓は固定した外窓ガラスと、その内側に重ねた状態で上方に巻取自在のすだれ体と、左右に開閉自在の引戸とした左右障子体と、左右に開閉自在の引戸とした左右扉体と、左右に開閉自在に張設した布状のカーテンとを重ねて配設し、しかも、最内側に張設したカーテンの四方周縁には車窓を枠付けする状態で額縁状の装飾枠体を設けたことを特徴とする軌道観光列車の車窓構造を提供せんとするものである。
【0010】
また、外窓ガラスとカーテンとの間に重ねて配設したすだれ体と左右障子体と左右扉体はその前後配設順序を任意としたことにも特徴を有する。
【0011】
この発明の実施例を図面に基づき詳説する。
図1および図2は、本発明の軌道観光列車の車窓構造を有する車輌の内部を示している。
すなわち、長手状の観光車輌Aは進行方向の一側に三部屋Rを並列に設け、反対側の他側には通路Pを形成しており、三部屋に区画した部屋Rはそれぞれ居住空間Lと寝室空間Sと水回り空間Bとに区画している。区画した各空間L,S,Bには、仕切用の扉等を設けても良く、また図1に示すように仕切りのない連通空間としてもよい。
【0012】
また隣接した水回り空間Bと他の空間L,Sの境には区画壁W1と開閉扉D1,D2を形成している。
図2及び図3に示すように居住空間Lや寝室空間Sの車輌本体A1の外側壁W2には一定大きさの車窓2を形成している。
居住空間Lには、車窓2に面してテーブルT及び椅子Cなどの什器を設置し、テーブルT上にはスタンドT1等の必要な什器を設置しており、車輌本体A1の上側壁内面には壁掛用のランプT2が設けられている。
【0013】
寝室空間SにはソファーベッドS1が二列に併設されており、これは通常は二個のソファーとして使用され、就寝時にはソファーの背もたれ部をソファー座面に継ぎ足して水平長手状のベッドに変更して使用できるように構成しており、このソファーベッドは二段階の組立てソファーベッドとして最小限の車輌空間で可及的に機能的な広さで使用できるように構成している。
【0014】
水回り空間Bとは、トイレB1と洗面台B2とシャワー室B3とを機能的に配置しており、いずれも水を使用する空間として機能し、居住空間Lと寝室空間Sをホテルと同様の使い勝手となるように、かつ各空間を快適に利用できるように構成している。
また、通路Pと居住空間Lとの間の区画壁W1には客室扉D3を設けており、通路P側の車輌本体外側壁W3には適当な位置に通常形態の窓部Iを設けている。
かかる観光車輌の前端部と後端部には前後車輌と連結した連結通路を形成している。
【0015】
この発明の要旨は、図3図5及び図9に示すように、かかる観光車輌Aの車両本体A1において居住空間Lや寝室空間Sの車輌本体の外側壁W2に特別構造を施した車窓2を形成し、該車窓2は外窓ガラス3とすだれ体4と左右障子体5,5と左右扉体6,6とカーテン7との五層重複構造で構成したことにある。
【0016】
外窓ガラス3は、車輌本体A1の外側壁W2に形成した窓枠10に透明素材のガラス11や樹脂板を装着固定している。
従って、外窓ガラス3は内外方から開閉不能に構成されている。
【0017】
図5から図7に示すように、すだれ体4は、竹、木材等の有機素材よりなるひご体13を一定間隔で多数並設し、多数の縦紐体で互いに結束してすだれ状に巻取り、展開自在に構成したものである。
車輌本体A1の外側壁内側で車窓2の上部には、図4図5及び図11に示すように下底板にスリットを設けた収納ボックス14を設けており、該ボックス14中には芯体15を横架してすだれ体4の巻取り解舒を可能にしている。すだれ体の巻取り等の操作は、芯体15にギヤ等を介して連動連結した操作紐体により行う。
【0018】
収納ボックス14中に巻取られたすだれ体4は下方に吊下することによりこの収納ボックス14の芯体15から解舒されて車窓2の外窓ガラス3を内側から閉塞する。
【0019】
左右障子体5,5はすだれ体4の内側に重複して配設されている。
図5図11及び図12に示すように車窓2の内側には方形窓枠20が形成されており、方形窓枠20を構成する車窓上部枠49、車窓基部枠33の上辺と下辺に敷設された上下ガイド溝21,22間には左右に分割した各障子体5,5が挟持されており、上下ガイド溝21,22に沿って左右障子体5,5は左右にスライドして車窓2を開閉する機能を有しており、方形枠に付設した格子に和紙を張設して障子体5を構成しており、外窓ガラス3からの採光に和紙のフィルター機能をかけて柔らかい光を居住空間に満たすように機能する。
【0020】
また、外窓ガラス3の内側に付着する結露は、車輌本体A1の振動にともない細かく飛散したとしても和紙張設の左右障子体5,5には直接に付着しないようになる。なぜならば、外窓ガラス3の内面と左右障子体5,5との間にはすだれ体4が介在しているために、列車の微振動と共にすだれ体4も微妙に上下搖動して細い隙間を互いに介在して配列されたひご体13も搖動しながら外窓ガラス3の内面全体を遮断する動きとなるからである。
【0021】
また、左右障子体5,5の和紙は、湿度等の調整機能も果たし、特に列車振動による障子体の微振動が和紙素材の植物繊維の編織により形成された微小網目を搖動することになり、湿度や騒音や採光の自然調整を自然に、かつ自動的に行うことができる。
【0022】
左右扉体6,6は完全な光遮断機能を有する全面板状体で構成されており、居住空間Lの外側壁W2内面と同じ模様や連続した材質板体を用いることにより、外側壁W2内面と連続した広い壁面を形成し同時に完全に車窓2を被覆して車窓の痕跡を見えないようにしている。
【0023】
左右扉体6,6も、左右障子体5,5と同様に方形窓枠20の上下辺に敷設した上下ガイド溝23,24間に挟持されて上下ガイド溝23,24に沿って左右にスライドし、車窓2の開閉を行う。
【0024】
左右扉体6,6を閉扉した場合は車輌本体A1の外気との遮断が完全に行われるため居住空間において車輌外気の気温や湿度の影響を受けない。
【0025】
左右障子体5,5も左右扉体6,6も左右にスライドして開閉するため、当然に車窓2の方形窓枠20の左右側方には外側壁内部へ解放時の障子体5や扉体6が収納されるだけの収納空間25(図4参照)が形成されている。
【0026】
図5図9及び図11に示すように左右扉体6,6の更に手前には左右から開閉自在のカーテン7が吊設されている。
このカーテン7は布状の一般のカーテンをひだ状にして使用する。
【0027】
上記したすだれ体4と左右障子体5,5と左右扉体6,6の順序は本実施例の順に配設する必要はなく、適宜変更しても良い。
【0028】
また、すだれ体4と左右障子体5,5は、同時に使用してもよく、また一方は収納して片方のみ外窓ガラス3を閉塞した状態で使用してもよい。
【0029】
左右扉体6,6を閉扉した場合、すだれ体4を吊下して用いると列車の振動にともなうすだれ体4の微搖動が外窓ガラス3内面の結露飛散を抑制して左右扉体6,6の外側面の汚損等を防止することができる。
【0030】
他方、左右扉体6,6を開扉しカーテン7を開放し、すだれ体4を吊下して用いると、前述したすだれ体4の外観的な特徴と機能、すなわち車輌外方からの採光機能と、列車の搖動によるすだれ体4搖動で生起する採光変化の外観的特徴、及び外窓ガラス3内面の結露の飛散から車内を守る機能等を果すことができる。
【0031】
また、すだれ体4の吊下と同時に左右障子体5,5を閉塞して併用する場合は、車輌外方からの採光はより抑制されてすだれ体4の搖動による採光変化の趣はより柔軟となり、また、結露の飛散防止機能はすだれ体4のみの場合に比しより効果的に向上することができる効果がある。
【0032】
特に、左右障子体5,5には張設和紙による自然の各種調整が機能し、すだれ体4との補完互助機能を有機的に発揮する。従って、列車走行による微振動から派生する各種の現象をより有効、有益な形で付与し、或いは各種の機能低下現象を回避することができる。
【0033】
以上詳説した事項は、すだれ体4と左右障子体5,5と左右扉体6,6とカーテン7の四重重複構造としたことに特徴を有するものであるが、その使用形態は用途や環境や乗客の要望に応じて各種の使用形態の組合せにすることができるのは前述のとおりである。
【0034】
すなわち、その選択の目的とするところは、採光、湿度、走行騒音、湿度、外観、雰囲気等を有機的に組合せて乗客に観光の最大のおもてなしを行うためである。
【0035】
従って、かかる選択目的に合わせて四重の各種の部材を任意に組合せて使用することができる。
【0036】
更に、本発明の実施例の特徴の一つは、図3図12に示すように車窓2に施した構造や外観が車窓最前面に設けた額縁状の装飾された装飾枠体8に囲繞されていることにある。
【0037】
装飾枠体8はいわゆる絵画等の額縁の様に一定の幅員とし、表面に施した彫刻模様を有した中空状に形成されており、外窓ガラス3の内側に重複して張設したすだれ体4、障子体5、扉体6、カーテン7等の各種の部材の周辺を装飾する。かかる額縁上の装飾枠体8の表面は図4図5図10から図12に示すように中心内方に向かって下り傾斜面としており、傾斜面の最下縁の奥方向にすだれ体等の各種の重複部材が存在するため、額縁状の装飾枠体8が外縁ほど前面に浮き上がり、その内側に外窓ガラス3を介して透視できる風景V(図3参照)が見えるため風景Vは奥行きをもってセットされている様に見える。従って、あたかも一幅の風景絵画を車窓2から視認することと同様の雰囲気を生成することができる。
【0038】
しかも、車窓2を流れる風景Vのみならず、外窓ガラス3に重複して張設したすだれ体4等の各種の部材の形状そのものが絵画の代わりの現代アート的な模様として乗客の目を楽しませる。
【0039】
上記した本発明の実施例の車窓構造1について、更に具体的な細部構造を図面に基づき詳説する。
図5図11及び図12は、本発明の車窓構造の一部拡大図を含む横断面図であり、外窓ガラス3は間に空間を介在した二枚の合わせガラス11,11で構成し、その周縁は車輌本体A1の外側壁W2の車窓縁に付設した区画枠部材30で嵌め込み固定している。図11,12中の符号12は二枚の合わせガラス11,11間に設けたスペーサである。
【0040】
図10(b)、図11及び図12に示すように区画枠部材30は、金属板で車輌の外側壁W2内面に断面略階段状の枠ブラケット31を介して周縁を固定しており、更にはこの枠ブラケット31の内周縁には、断面略コ字状の支持ブラケット32基部が固定されており、該ブラケット32の水平面には車窓基部枠33が固定されている。また、他の枠ブラケット34には断面略コ字状のすだれガイド35が固定されており、更には、断面略コ字状のすだれガイドフレーム36を固定することにより、すだれ体4両側縁が内部をスライドしながらガイドされる。
【0041】
図10(b)に示すように特にすだれ体4を構成するひご体13の両側縁にはスライドコマ体37が付設されている。
【0042】
外窓ガラス3の前面に配設された枠ブラケット31の車窓基部枠33の底面と天井面には図5図11及び図12に示すようにスライド用のレール溝21,22,23,24が敷設されており、左右障子体5,5や左右扉体6,6がこのレール溝21,22,23,24に沿ってスライド自在に摺動する。
【0043】
また、額縁状の装飾枠体8は図12に示すように中空状で裏面にフック状ブラケット40とスペーサ41が突設されておりフック状ブラケット40を介して車輌本体の内壁化粧板42と支持ブラケット32に当接固定している。
【0044】
車窓構造1の上部を説明すると、図11に示すように最外側には外窓ガラス3が区画枠部材30を介して張設されており、区画枠部材30の内面には断面略階段状の枠ブラケット50を固定し、L字状枠ブラケット51に支持ブラケット52を固定して、支持ブラケット52の天井面には、断面略階段状のカーテンレール用の枠ブラケット53を介して下方開口のコ字状のガイドフレーム54.55が並設されており、各ガイドフレーム54,55には、左右障子体5,5と左右扉体6,6の上縁部がスライド自在に遊嵌されている。さらに、カーテンレール用の枠ブラケット53には、カーテンレール56を固定している。
【0045】
この発明の実施例は上記のように構成されており、車窓に施した多重の重層構造により内装外観の変化を楽しむことができると共に、すだれ体や障子体や扉やカーテン等がそれぞれに一定の機能を果して外観の特徴のみならず、温度、湿気、騒音、防露飛散等の環境整備に有効な機能を果すことができる。
【0046】
なお、本発明を実施形態を通して説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の主旨を逸脱することのない限り、各構成要素の形状のレイアウトなどは適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0047】
A 観光車輌
A1 車輌本体
B 水回り空間
D1,D2 開閉扉
D3 客室扉
I 窓部
L 居住空間
P 通路
R 部屋
S 寝室空間
S1 ソファーベッド
V 風景
W1 区画壁
W2,W3 外側壁
1 車窓構造
2 車窓
3 外窓ガラス
4 すだれ体
5 障子体
6 左右扉体
7 カーテン
8 装飾枠体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12