特開2015-174689(P2015-174689A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キョーラク株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社九州パックの特許一覧

<>
  • 特開2015174689-容器入り食品 図000003
  • 特開2015174689-容器入り食品 図000004
  • 特開2015174689-容器入り食品 図000005
  • 特開2015174689-容器入り食品 図000006
  • 特開2015174689-容器入り食品 図000007
  • 特開2015174689-容器入り食品 図000008
  • 特開2015174689-容器入り食品 図000009
  • 特開2015174689-容器入り食品 図000010
  • 特開2015174689-容器入り食品 図000011
  • 特開2015174689-容器入り食品 図000012
  • 特開2015174689-容器入り食品 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-174689(P2015-174689A)
(43)【公開日】2015年10月5日
(54)【発明の名称】容器入り食品
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20150908BHJP
   B65D 85/50 20060101ALI20150908BHJP
   A47J 27/00 20060101ALI20150908BHJP
   B65D 77/20 20060101ALI20150908BHJP
   B29C 65/02 20060101ALI20150908BHJP
【FI】
   B65D81/34 V
   B65D85/50 R
   A47J27/00 107
   B65D77/20 H
   B29C65/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-54699(P2014-54699)
(22)【出願日】2014年3月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】512232045
【氏名又は名称】株式会社九州パック
(74)【代理人】
【識別番号】100126398
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】片山 亮
(72)【発明者】
【氏名】山村 英二
【テーマコード(参考)】
3E035
3E067
4B055
4F211
【Fターム(参考)】
3E035AA05
3E035BA02
3E035BC02
3E035BD10
3E035CA04
3E067AB02
3E067BA10A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB22A
3E067CA30
3E067EA06
3E067EA32
3E067EB27
3E067FA01
3E067FC01
4B055AA10
4B055BA31
4B055DB15
4B055FB35
4F211AA03
4F211AD24
4F211AD25
4F211AH56
4F211TA01
4F211TC16
4F211TN01
(57)【要約】
【課題】 電子レンジで調理したときに、グリルやコンロ等で焼いた焼き魚と同様の品質を実現可能な容器入り食品を提供する。
【解決手段】 容器本体の周縁に設けられた鍔部に合成樹脂製のフィルムを溶着することにより容器本体の開口部が封止され、調理対象魚が収納されてなる容器入り食品である。合成樹脂製のフィルムは、熱収縮性を有するとともに、少なくとも溶着面がポリオレフィン系樹脂により構成される。容器本体の溶着面は、合成樹脂製のフィルムの溶着面を構成するポリオレフィン系樹脂と同種のポリオレフィン系樹脂を含む少なくとも2種類のポリオレフィン系樹脂からなる混合樹脂により構成され、易開封性が付与されている。調理対象魚は、皮目に切れ目が形成されているとともに、表面に調味液が付されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂の成形体よりなり所定の開口を有する容器本体と、合成樹脂製のフィルムとを有し、前記容器本体の周縁に設けられた鍔部に前記合成樹脂製のフィルムを溶着することにより前記容器本体の開口部が封止されており、前記容器本体と前記フィルムとの間に形成される凹状の収納部に調理対象魚が収容されてなる容器入り食品であって、
前記合成樹脂製のフィルムは、熱収縮性を有するとともに、少なくとも前記鍔部と接する溶着面がポリオレフィン系樹脂により構成され、
前記容器本体の鍔部の少なくとも前記フィルムと接する溶着面は、前記合成樹脂製のフィルムの溶着面を構成するポリオレフィン系樹脂と同種のポリオレフィン系樹脂を含む2種類以上のポリオレフィン系樹脂からなる混合樹脂により構成され、易開封性が付与されており、
前記調理対象魚は、皮目に切れ目が形成されているとともに、表面に調味液が付されていることを特徴とする容器入り食品。
【請求項2】
前記容器本体の底部には前記収納部の側に突出するリブが形成されていることを特徴とする請求項1記載の容器入り食品。
【請求項3】
前記リブは、少なくとも一方向に並行して複数配列していることを特徴とする請求項2記載の容器入り食品。
【請求項4】
前記リブは、少なくとも第一方向と第二方向の二方向に配列し、前記第一方向に配列するリブと、前記第二方向に配列するリブとが交差していることを特徴とする請求項2記載の容器入り食品。
【請求項5】
前記調理対象魚の皮目に形成される切れ目は、少なくとも異なる二方向に形成されていることを特徴とする請求項1記載の容器入り食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部を合成樹脂製のフィルムで封止した容器内に食品が包装された容器入り食品に関するものであり、特に、魚の調理を目的とした容器入り食品に関する。
【背景技術】
【0002】
食品包装の分野においては、合成樹脂製の容器本体に内容物を収納した後、容器本体の開口部をフィルムで塞ぐようにした密封容器が容器包装体として広く利用されている。前記構成の容器包装体は、簡易な構成でありながら内容物を高度に密封した状態に維持することができるという特徴を有する。
【0003】
例えば、特許文献1には、トレーを下型に載せ、合成樹脂製のフィルムを上型で押し付けてトレーのフランジ(鍔部)に加熱接合する技術が開示されている。この技術によれば、フランジに溶着されたフィルムでトレーの内部を確実に密封することができ、トレー内に充填された食品を密封状態で保存することができる。
【0004】
このように食品包装の技術の向上に伴い、様々な容器入り食品が提案されている。特に、電子レンジにより調理可能な容器入り食品は、調理や片付けの手間が少なく、電子レンジがあれば調理可能であり、又、火を使わないという点で安全面にも優れており、一般家庭や飲食店、その他の施設において広く普及している。例えば、特許文献2には、電子レンジにより内容物を調理可能な包装体入り食品が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−138459号公報
【特許文献2】特開2013−129435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電子レンジ調理用の容器入り食品においては、グリルやコンロ等を使用した場合と同様の品質に向上させることが重要な課題の一つである。特に焼き魚については、グリル等で焼いたときに、水分、油分、うまみ成分が最適なバランスとして魚の中に残り、又、適度な焦げ目や焼き目が付くことも、味と見た目を良くしており、電子レンジによる調理でもそれらを再現することが品質向上に大きく寄与する。
【0007】
そこで、本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、その目的は、電子レンジで調理したときに、グリルやコンロ等で焼いた焼き魚と同様の品質を実現可能な容器入り食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の目的を達成するために、本発明の容器入り食品は、合成樹脂の成形体よりなり所定の開口を有する容器本体と、合成樹脂製のフィルムとを有し、前記容器本体の周縁に設けられた鍔部に前記合成樹脂製のフィルムを溶着することにより前記容器本体の開口部が封止されており、前記容器本体と前記フィルムとの間に形成される凹状の収納部に調理対象魚が収容されてなる容器入り食品であって、
前記合成樹脂製のフィルムは、熱収縮性を有するとともに、少なくとも前記鍔部と接する溶着面がポリオレフィン系樹脂により構成され、
前記容器本体の鍔部の少なくとも前記フィルムと接する溶着面は、前記合成樹脂製のフィルムの溶着面を構成するポリオレフィン系樹脂と同種のポリオレフィン系樹脂を含む2種類以上のポリオレフィン系樹脂からなる混合樹脂により構成され、易開封性が付与されており、
前記調理対象魚は、皮目に切れ目が形成されているとともに、表面に調味液が付されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の容器入り食品によれば、マイクロ波を照射すると、容器の構成、調理対象魚に形成された切れ目、表面に付された調味液が総合的に作用した状態で調理される。調理された調理対象魚は、水分、油分、うまみ成分が最適なバランスとして魚の中に残り、又、適度な焦げ目や焼き目が付き、味及び見た目において、グリルやコンロで焼いたときと同様の品質を有する焼き魚となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電子レンジで調理したときに、グリルやコンロ等で焼いた焼き魚と同様の品質を実現可能な容器入り食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態にかかる容器入り食品の斜視図である。
図2】実施形態にかかる容器入り食品に用いられる容器本体の内面を示す図である。
図3】調理対象魚の皮目に形成される切れ目の一例を示す図である。
図4】実施形態にかかる容器入り食品の製造に用いる溶着装置の一例を示す概略断面図である。
図5】シールユニットの底面図(図4の矢印B方向から見た図)である。
図6】実施形態にかかる容器入り食品の製造方法を説明する図であり、溶着装置に容器本体及びフィルムを配置する工程を示す図である。
図7】実施形態にかかる容器入り食品の製造方法を説明する図であり、溶着装置で容器本体にフィルムを溶着する工程を示す図である。
図8】空間部によるフィルムの収縮作用を説明する図であり、(a)はフィルムが収縮していない状態を示す図、(b)はフィルムが収縮した状態を示す図である。
図9】フィルムを剥がして開封する時の様子を示す概略斜視図である。
図10】容器本体の底部に形成されるリブの形態を変更した変更例を示す図である。
図11】容器本体の開口部近傍の形態を変更した変更例を示すものであり、(a)は開口部近傍の概略斜視図、(b)は(a)のC部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した容器入り食品の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の各実施形態や添付図面において、同じ要素には同じ番号を付している。本実施の形態の容器入り食品は、容器包装袋10と、容器包装袋10に収納されている調理対象魚13から構成される。
【0013】
図1に示すように、容器包装体10は、上方に向けて開口した合成樹脂製の容器本体11と、容器本体11の開口部12を塞ぐ合成樹脂製のフィルム20とからなるものである。
【0014】
前記容器本体11は、圧空成形や真空成形、プレス成形等、任意の樹脂成形法で成形されたものであり、その形状も任意である。本実施形態の場合、容器本体11は、凹状に成形され、調理対象魚13を収容可能なように、ほぼ直方体形状の収納部15を有する。
【0015】
調理対象魚13は容器本体11の底部内面に載置され、収納部15に収納される。この底部内面は平坦に形成されても良いが、収納部15の側に突出するリブが設けられるほうが好ましい。図2は、容器本体11の収納部15を示す図である。容器本体11の底部内面の中央付近には、複数のリブr1,,,r1が一方向(ここでは容器本体11の長手方向)に並行して配列している。これにより底部内面にはリブr1よりも低い凹領域が形成される。調理対象魚13は、このリブr1,,,r1と凹領域とに跨って載置され、調理時に生じる余分な水分や油分はこの凹領域に流れ込むこととなる。
【0016】
底部内面に形成されるリブの形態(形状・高さ・幅・位置)は、調理対象魚の種類や大きさ等に合わせて適宜調整すれば良い。例えば、本実施の形態では、複数のリブr1,,,r1を囲む位置にリブr1に比して幅広のリブr2も形成されており、リブr1と同様の効果を発揮している。また、本実施の形態では、容器本体11の底部はほぼ均一な厚みであり、このため底部外面はリブに対応する位置に溝が形成され、内面とは凹凸が逆転している。ただし、リブ部分のみ厚みを厚くすることで凹凸を形成し、外面はフラット又は独自の形状としても良い。
【0017】
また、前記収納部15の周壁には、凹条部16と凸条部17とが周方向において交互に並ぶように形成されている。収納部15の周壁に前記凹条部16や凸条部17を形成することで、周壁の剛性が高まり、製造ラインにおける容器本体11の搬送性、あるいは輸送時や保管時の容器本体11の耐圧縮性及び耐衝撃性が高められている。
【0018】
一方、容器本体11の開口部12の周縁には、外方に向かって張り出す形で鍔部18が形成されている。この鍔部18を形成することで、開口部の周囲に所定の面積を有する平坦面を確保することができ、ここにフィルム20を溶着する。
【0019】
容器本体11の材質は、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等、任意の合成樹脂材料から選択可能である。また、容器本体11は、単層構造または積層構造のいずれの構成であってもよい。ただし、冷凍保存、冷凍流通及び電子レンジによる加熱等を考慮すると、容器本体11は、低温から高温まで幅広い温度範囲で使用可能な耐寒性ポリプロピレンを用いることが好ましい。
【0020】
また、少なくともフィルム20との溶着面(すなわち、前記鍔部18のフィルム20と接する上面)については、易開封性(いわゆるイージーオープン性)を考慮して、微視的に異なる材質で構成する必要がある。例えばポリオレフィン系樹脂の場合、同じ種類の樹脂同士(例えばポリエチレン同士やポリプロピレン同士)は溶着し、異なる種類の樹脂(例えばポリエチレンとポリプロピレンのように融点の異なる樹脂)は互いに溶着し難いという性質を有する。そこで、鍔部18の前記フィルム20と接する溶着面を、フィルム20の溶着面を構成するポリオレフィン系樹脂と同種のポリオレフィン系樹脂と、フィルム20の溶着面を構成するポリオレフィン系樹脂とは異なるポリオレフィン系樹脂とを含む2種類以上のポリオレフィン系樹脂からなる混合樹脂により構成すれば、前記溶着面が異なる種類のポリオレフィン系樹脂が微視的に混在した状態となり、開封時には凝集剥離により容易にフィルム20を引き剥がすことができるようになる。
【0021】
なお、前記混合樹脂とする必要があるのは、容器本体11の鍔部18の溶着面であるが、容器本体11全体を前記混合樹脂で形成することも可能である。また、容器本体11の大部分を前述の耐寒性ポリプロピレン等の樹脂材料で形成し、鍔部18のみを、あるいは鍔部18の溶着面のみを混合樹脂で形成することも可能である。
【0022】
混合樹脂におけるポリオレフィン系樹脂の具体的な組み合わせ例としては、フィルム20を、ポリエチレン系樹脂フィルム、あるいは溶着面にポリエチレン系樹脂からなるシーラント層が形成されたフィルムとし、容器本体11の材質を、ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂とを組み合わせた混合樹脂とすること等を挙げることができる。
【0023】
容器本体11とフィルム20の剥離については、材料の選択等により界面剥離、層間剥離、凝集剥離とすることができる。ここで、界面剥離による開封では、熱溶着の際の熱の加え方等により剥離強度が大きく変わり、安定的に同じ剥離強度を得ることは難しい。また、層間剥離による開封では、開封の際に大きな力が必要となり、易開封性を実現することは困難である。前述のように、容器本体11の溶着面を混合樹脂により形成し、凝集剥離による易開封性を付与することで、同じ力で開封し得る易開封性を安定的に得ることができる。
【0024】
また、配合する樹脂の比率を変えることで、剥離強度を調整することも可能である。例えば、フィルム20がポリエチレンフィルムである場合、混合樹脂に含まれるポリエチレンの割合を多くすれば接着力を大きくすることができ、逆に少なくすれば剥離性を高めることができる。ただし、同種の樹脂の割合が大きくなり過ぎると易開封性を得ることが難しくなり、逆に同種の樹脂の割合が少なくなり過ぎると、溶着強度を維持することが難しくなるおそれがある。このため、前記同種のポリオレフィン樹脂と異なる種類のポリオレフィン樹脂の配合比率は、モノマー比率で5:95〜95:5とすることが好ましい。
【0025】
なお、前記において同種のポリオレフィン系樹脂とは、全く同一のポリオレフィンのみを指すのではなく、主体となるモノマーが同一であればよく、例えばフィルム20がポリエチレンフィルムである場合、ポリエチレンの他、ポリエチレンを主体とし(例えばポリエチレンの比率がモノマー比で50%以上であり)他のポリオレフィン等と共重合した共重合体等も含むものとする。異なる種類のポリオレフィン樹脂についても同様であり、主体となるモノマーの種類が異なればよく、同一のモノマーが一部含まれていても構わない。
【0026】
フィルム20については、容器本体11の鍔部18の溶着面を構成する樹脂と前述の関係を有するポリオレフィン系樹脂フィルムを用いればよく、例えばポリエチレンフィルムやポリプロピレン等のフィルムを用いる。また、フィルム20には、例えば前記ポリエチレンやポリプロピレン等の単層フィルムを用いることができるが、フィルム20の溶着面にポリエチレンやポリプロピレン等からなるシーラント層を形成することも可能である。
【0027】
前記フィルム20は、鍔部18の上面に溶着される時に熱収縮するように、熱収縮性を有することが必要である。これにより、熱溶着の際に収縮し、高度に引っ張られた状態で鍔部18に溶着される。フィルム20に薄いフィルムを用いた場合にも、平坦性の高い状態で溶着され、弛みや皺が発生することがない。
【0028】
したがって、前記フィルム20の素材としては、熱固定されていない延伸フィルム(いわゆるシュリンクフィルム)が好適であり、特に強度的にも優れた2軸延伸フィルムが好適である。具体的には、厚さが30μm以下のポリエチレン2軸延伸フィルム、ポリプロピレン2軸延伸フィルム等であり、これらは単層のものであっても多層のものであってもよい。なお、前記フィルム20には、表面に水滴が付きにくい防曇性に優れる材質や、透明性に優れる材質とするために、界面活性剤等、公知の添加剤を混合することも可能である。
【0029】
前記フィルム20は、容器本体11の鍔部18の形状に合わせて、本実施形態の場合、ほぼ長方形状に形成すればよい。その大きさも鍔部18の外周縁とほぼ一致する大きさとすればよいが、溶着時の作業性を考え、多少のずれがあっても確実に溶着するためには、フィルム20のサイズを鍔部18のサイズよりも若干大きく設定し、溶着後にフィルム20の外周縁が鍔部18の外周縁の内側位置まで収縮するようにすることが好ましい。
【0030】
また、前記フィルム20の4隅のうちの少なくとも1カ所については、面積を拡大することで、いわゆる摘み部21とすることも可能である。摘み部21は、鍔部18の任意の部位(ここでは角部)から浮かした部分、あるいは、はみ出した部分であり、開封時に使用される。
【0031】
また、調理対象魚13は、焼き魚用に内臓処理をされたり、切身にされたり等、焼き魚用に下処理されたものである。魚の種類としては、焼き魚に適するものであればどのようなものでも良いが、特に焼き魚に適している青魚(サバ、アジ、サワラ、イワシ、サンマ等)が好適である。
【0032】
この調理対象魚13は、表面に調味液が付されている。ここで表面とは、調理対象魚の皮側表面や身側表面を含む全体でも良いし、一部でも良い。好ましくは、調味液量が身側表面よりも皮側表面に多くなるように調整しながら、表面全体に塗布する。これにより、焦げ目が皮目に形成されやすくなる。調味液は、小麦たんぱく質加水分解物、酒、水あめ、食塩、キシロース、増粘剤、酸味料、酒粕のうち少なくとも一つを含むものである。なお、これら全てを含むほうが、より高品質の焼き魚とすることができる。各成分の比率は、調理対象魚13の種類や味の好み等に合わせて適宜調整すれば良い。
【0033】
また、調理対象魚13には、皮目に切れ目が形成されている。図3は、調理対象魚13の切れ目13aの一例である。切れ目13aは、一方向に形成しても良いが、少なくとも異なる二方向に形成するのが好ましい。例えば、第一方向は、縦方向、横方向、斜め方向のいずれか一方向とし、第二方向は、第一方向以外のいずれか一方向とする。なお、ここで横方向とは、調理対象魚の頭側と尾びれ側を結ぶ方向を意味し、縦方向とはそれに直交する方向を意味する。三方向以上としても良いが、見た目等の観点からは二方向であることが好ましい。異なる方向の切れ目は互いに交差するようにしても良い。この切れ目13aにより、調味液が調理対象魚13にしみこむと同時に、見た目もきれいな焼き魚に調理される。更には、調味液と魚との味の相性も高まる。
【0034】
また、少なくとも一つの切れ目13aは、調理対象魚13の略縦方向及び/又は略縦方向に近い斜め方向に形成されることが好ましい。これにより、身の破裂を防止しつつ、適切な食感を作ることができる。
【0035】
また、調理対象魚13は、皮目を上(すなわち、フィルム20の側)にして収納部15に収納されるのが好ましい。これにより、焦げ目が皮目に付きやすくなる。
【0036】
次に、本実施形態の容器包装体10の製造に用いられる溶着装置、及びこれを用いた容器入り食品の製造方法について説明する。
【0037】
図4に示すように、溶着装置30は、バケット(保持体)31と、バケット31に対向するようにバケット31の上方に設けられるシールユニット32と、を有する。バケット31は、保持凹部33を有する。この保持凹部33は、容器11の収納部15(図1参照)の形態に合わせて形成される。シールユニット32は、熱源(ここでは、電熱ヒータ)35を内部に備える金属製のシールバー(加熱体)36と、シールバー36を白抜きの矢印の向きに昇降させるロッド37とを有する。なお、熱源35は、電熱ヒータに格別に限定されるものではなく、容器包装体10(図1参照)の材質や、ヒートシールの条件等に応じて変更可能であり、熱源の種類、形態および位置は任意である。
【0038】
シールバー36は、ロッド37が固定される基部36aと、基部36aの下面に設けられ下方に環状に突出するヒートシール部36bとを有する。ヒートシール部36bは、バケット31の上面に向き合い、かつ、保持凹部33よりも外側で環状(ここでは、ほぼ長方形状)に形成される。ヒートシール部36bは、熱源35によって加熱される。ヒートシール部36bの温度は、所定の範囲(例えば、150℃〜160℃)に制御される。
【0039】
また、図5に示すように、シールバー36の中央部には、フィルム20(図1参照)を収縮させるための空間部38が設けられる。空間部38は、バケット31(図4参照)側に開放するほぼ長方形状でヒートシール時にフィルム20と非接触をなる凹部であって、ヒートシール部36bで囲われる。空間部38の空気は、ヒートシール部36bからの熱によって加熱される。なお、空間部38は、ここでは、ほぼ長方形状としたが、容器の開口部12(図1参照)の形状やフィルム20(図1参照)の外形に応じて変更可能であり、フィルム20(図1参照)を収縮可能な空間であれば、形態は任意である。
【0040】
続いて、溶着装置30を用いた容器入り食品の製造方法を図6図8に基づいて説明する。容器包装体10の製造方法は、容器本体11およびフィルム20を溶着装置30に配置する配置工程と、容器本体11にフィルム20を溶着する工程とからなる。
【0041】
図6に示すように、配置工程では、収納部に調理対象魚13が収納された容器本体11を、保持凹部33に嵌めて保持させる。また、容器本体11とシールバー36の間にフィルム20を配置する。このとき、フィルム20は、容器本体11の鍔部18の上面に載せてもよいし、容器11とシールバー36の間に浮かせてもよい。
【0042】
ここで、容器本体11に収納される調理対象魚13は、上記配置工程よりも前工程にて処理が施されている。すなわち、調理対象魚13は、切身に加工され、皮目に所定の切れ目が入れられた後、調味液が塗布され、その状態にて、容器本体11の収納部に収納された後、上記配置工程に進む。
【0043】
次に、図7に示すように、溶着工程では、シールバー36を下降させてバケット31に接近させ、バケット31とヒートシール部36bの合わせ面で鍔部18およびフィルム20を挟む。これにより、鍔部18の上面にフィルム20の外周部を溶着する。フィルム20は予め所定の大きさに裁断したものを用いても良いが、この場合に容器本体11の鍔部18との位置決めが必要となることから、ロール等から引き出した容器本体11の幅より大きなフィルム20を配置し、ヒートシールと同時またはその後に鍔部18の外周位置で裁断する。
【0044】
これと同時に、図8(a)に示すように、鍔部18で囲われるフィルム20の内側領域(図中、符号Aで示す領域)を空間部38の熱によって加熱する。フィルム20の内側領域Aは、溶着されない浮いた部分であるため、若干弛んでいるが、空間部38の熱によって加熱されると、図8(b)に示すように、熱収縮して張り、平坦になる。フィルム20が十分に収縮した段階で、容器包装体10は、次のトリミング工程に搬送される。トリミング工程では、鍔部18の余分な部位やフィルム20の余分な部位が切断されて、容器包装体10の形態が整えられる。
【0045】
なお、ここでは1個の容器に対して1枚のフィルムを溶着する容器入り食品の製造方法を説明したが、連結した複数個の容器を長尺のフィルムで密封した後、連結した複数の容器包装体を適宜切離するようにしてもよい。
【0046】
このように製造された容器入り食品は、一般家庭や飲食店、その他の施設等において、電子レンジを用いて調理される。容器入り食品にマイクロ波が照射されると、容器包装袋10の構成、及び、調理対象魚13に付された切れ目や調味液が総合的に作用しながら調理対象魚13が調理される。これにより、水分、油分、うまみ成分が最適なバランスとして魚の中に残り、又、適度な焦げ目や焼き目が付き、グリルやコンロで焼いたときと同様の品質を有する焼き魚となる。
【0047】
なお、本実施の形態によれば、次のような容器包装袋としての利点を得ることもできる。すなわち、剛性の低い薄いフィルム20であっても、フィルム20の浮いた部分(内側領域A)が熱収縮して良好に張る。従来は、剛性を確保し、かつ、易開封性を得るために、総厚み50μm〜80μmの積層フィルムを採用してきた。これに対して、実施形態では、たとえば、フィルム20をポリエチレンで構成した場合、厚み20μmのフィルム20を用いても、皺や弛みのない美粧性および易開封性に優れた商品を得ることができる。すなわち、図9に示すように、フィルム20を薄くしても、フィルム20が平坦に形成されて見栄えが良く、しかも、容器本体11とフィルム20の溶着力が易開封性に調整できるため、使用者は、摘み部21を摘まんでフィルム20を容器本体11から容易に剥離することができる。
【0048】
さらに、容器本体11側を混合樹脂とすることで易開封性を付与しているので、フィルム20の材質や構成に対する制約が少なく、例えば防曇性あるいは透明性に優れる性質でフィルム20を構成すれば、フィルム20を通して、内容物13の種類や保存状態をはっきりと視認することができる。
【0049】
加えて、先の製造方法では、ヒートシール部36bを加熱するための熱を利用して、フィルム20を熱収縮させるようにしていることから、フィルム20を熱収縮させるための熱源を別途必要としない。したがって、製造コストを低く抑えることができる。
【0050】
次に、本発明の他の実施形態(変更例)について説明する。図10は、図2の変更例を示す図であり、図2の構成と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。本変更例では底部内面に形成されるリブの態様が異なる。底部内面には、第一方向(収納部の長手方向)と第二方向(収納部の短手方向)に複数配列するリブr3,r4が形成されており、リブr3とリブr4が交差して格子状となっている。これにより、底部内面にはリブr3,r4よりも一段低い凹領域が形成され、調理時に生じる余分な水分や油分が流れ込むようになっている。なお、底部内面の中央付近において、長手方向に並行に配列する二つのリブr3,r3の間には、短手方向のリブr4が形成されていない。これは、中央付近はリブの密度を低くして凹領域を広く確保することで調理対象魚との接触面を減らし、その周囲は中央付近よりもリブの密度を高くすることで調理対象魚を安定して支える等の効果を奏する。なお、本変更例では、図4に示される周壁の凹条部や凸条部は形成されていないが、リブr3,r4が周壁まで及ぶことで周壁の強度を確保している。
【0051】
更に、他の変更例について、図11に基づいて説明する。図11は、図9の変更例を示す図であり、図9の構成と共通する部位には同じ符号を付して、重複する説明を省略することとする。
【0052】
先ず、前述した実施形態にかかる容器包装体10(図9参照)では、容器本体11の深さが比較的大きいものであったが、容器本体11の深さは任意である。図11(a)に示す変更例の容器包装体40では、前述した実施形態にかかる容器入り食品の製造方法を用いて、深さが比較的小さいトレー状の容器本体41に、熱収縮性を備えるフィルム42を溶着するようにしている。この変更例においても、前述した容器包装体10(図9参照)の場合と同様の作用・効果を得ることができる。
【0053】
また、本変更例では、図11(b)に示すように、容器本体41の鍔部43の外縁に、下方に折り返された折り返し部45を設けている。この折り返し部45には、ある程度の板厚を有する一般的な蓋(図示省略)が嵌合可能である。すなわち、この容器本体41には、フィルム42または一般の蓋が選択的に被着可能である。これにより、複数種の蓋材に対して容器本体41を兼用することができ、容器包装体40のコスト低減を図ることができる。
【0054】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。たとえば、容器本体の底部内面に設けられるリブや、調理対象魚に形成される切れ目は上述の実施形態に限定されるものではなく、同様の効果を奏する範囲で適宜変更可能である。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0055】
10,40 容器包装体
11,41 容器本体
12 開口部
13 調理対象魚
13a 切れ目
18,43 鍔部
20,42 フィルム
30 溶着装置
31 バケット(保持体)
36 シールバー(加熱体)
38 空間部
A フィルムの内側領域
r1,r2,r3,r4 リブ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11