(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-174710(P2015-174710A)
(43)【公開日】2015年10月5日
(54)【発明の名称】ガード部材取付状態検知装置
(51)【国際特許分類】
B66B 29/04 20060101AFI20150908BHJP
B66B 27/00 20060101ALI20150908BHJP
【FI】
B66B29/04 F
B66B27/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-50130(P2014-50130)
(22)【出願日】2014年3月13日
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 敏満
(72)【発明者】
【氏名】出森 公人
(72)【発明者】
【氏名】中田 好彦
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321DB05
3F321EA11
3F321EB07
3F321EC07
3F321GA28
(57)【要約】
【課題】エスカレータに設置される三角部ガード板の取付状態が正常であるか否かを検知し得る三角部ガード板状態検知装置を提供すること。
【解決手段】本実施形態に係るガード部材取付状態検知装置は、エスカレータの移動経路上に設置された反射体を有するガード部材に特定波長の光信号を放射し、反射体で反射された光信号を検知する光電センサと、光電センサでの光信号の検知結果に基づいて、ガード部材の取付状態を判定する取付状態判定手段とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレータの移動経路上に設置された反射体を有するガード部材に特定波長の光信号を放射し、前記反射体で反射された光信号を検知する光電センサと、
前記光電センサでの光信号の検知結果に基づいて、前記ガード部材の取付状態を判定する取付状態判定手段と
を具備することを特徴とするガード部材取付状態検知装置。
【請求項2】
前記取付状態判定手段は、
前記光電センサによって光信号が放射されてから所定時間内に前記反射された光信号を検知できた場合、前記ガード部材の取付状態が正常であると判定し、
前記光電センサによって光信号が放射されてから所定時間内に前記反射された光信号を検知できなかった場合、前記ガード部材の取付状態が異常であると判定することを特徴とする請求項1に記載のガード部材取付状態検知装置。
【請求項3】
前記光電センサは、
前記特定波長の光信号を特定パターンで前記ガード部材に繰り返し放射し、前記反射体で反射された光信号を検知するセンサであり、
前記取付状態判定手段は、
前記光電センサによって光信号が放射されてから所定時間内に前記特定パターンに一致するパターンの前記反射された光信号を複数回検知できた場合、前記ガード部材の取付状態が正常であると判定し、
前記光電センサによって光信号が放射されてから所定時間内に前記特定パターンに一致するパターンの前記反射された光信号を複数回検知できなかった場合、前記ガード部材の取付状態が異常であると判定する請求項1に記載のガード部材取付状態検知装置。
【請求項4】
前記光電センサは、
前記特定波長の光信号を特定パターンで前記ガード部材に繰り返し放射し、前記反射体で反射された光信号を検知するセンサであり、
前記取付状態判定手段は、
前記光電センサによって光信号が放射されてから所定時間内に前記検知結果として連続的に得られた光信号のパターンを平均化する平均化処理手段を有し、
前記平均化された光信号のパターンが前記特定パターンに一致する場合、前記ガード部材の取付状態が正常であると判定し、前記平均化された光信号のパターンが前記特定パターンに一致しない場合、前記ガード部材の取付状態が異常であると判定することを特徴とする請求項1に記載のガード部材取付状態検知装置。
【請求項5】
前記取付状態判定手段での判定の結果を監視センタに通知する通知手段をさらに具備する請求項1に記載のガード部材取付状態検知装置。
【請求項6】
前記光電センサは、
前記反射体で反射された光信号とは異なる光信号の誤検知を防止するためのカバー部材を有することを特徴とする請求項1に記載のガード部材取付状態検知装置。
【請求項7】
前記光電センサは、
前記エスカレータのデッキボード上に設置されることを特徴とする請求項1に記載のガード部材取付状態検知装置。
【請求項8】
エスカレータの移動経路上に設置されたガード部材の傾斜角を検知する傾斜センサと、
前記傾斜センサによって検知された傾斜角が所定値を超えている場合、前記ガード部材の取付状態が異常であると判定し、前記所定値を超えていない場合、前記ガード部材の取付状態が正常であると判定する取付状態判定手段と
を具備するガード部材取付状態検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ガード部材取付状態検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エスカレータには、手摺と建物の梁との間(以下、「三角部」と表記)に三角部ガード板が設置されている。この三角部ガード板を設置することで、乗客が三角部に挟まれる危険性を低減させることができる。
【0003】
上記三角部ガード板に関する公知の技術としては、例えば、乗客が三角部ガード板に接触したことを検知し、エスカレータの運転を停止させる技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−7363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した技術では、三角部ガード板の取付状態が正常であるか否かを検知することはできないという不都合がある。つまり、乗客が三角部ガード板に接触した際に三角部ガード板の取付状態に不具合が生じたとしても、これを検知することはできないという不都合がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、エスカレータに設置される三角部ガード板の取付状態が正常であるか否かを検知し得る三角部ガード板状態検知装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係るガード部材取付状態検知装置は、エスカレータの移動経路上に設置された反射体を有するガード部材に特定波長の光信号を放射し、前記反射体で反射された光信号を検知する光電センサと、前記光電センサでの光信号の検知結果に基づいて、前記ガード部材の取付状態を判定する取付状態判定手段とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係るガード部材取付状態検知装置が適用されるエスカレータ制御システムの概略構成例を示す模式図。
【
図2】同実施形態に係るガード部材取付状態検知装置に含まれる取付状態判定部の構成例を示す模式図。
【
図3】同実施形態に係る16ビットで構成された特定パターンのパルス信号を模式的に示す図。
【
図4】同実施形態に係るタイマ値、特定パターン検知パルス及び光電センサ出力データの関係を模式的に示す図。
【
図5】同実施形態に係るガード部材取付状態検知装置の動作の一例を示すフローチャート。
【
図6】第2実施形態に係るガード部材取付状態検知装置に含まれる取付状態判定部の構成例を示す模式図。
【
図7】同実施形態に係る平均化処理部で得られるN個のデジタルコードを模式的に示す図。
【
図8】同実施形態に係る蓄積処理を実行した結果として得られるデジタルコードを模式的に示す図。
【
図9】同実施形態に係る平均化処理を実行した結果として得られるデジタルコードを模式的に示す図。
【
図10】同実施形態に係るガード部材取付状態検知装置の動作の一例を示すフローチャート。
【
図11】変形例として傾斜センサを使用したガード部材取付状態検知装置が適用されるエスカレータ制御システムの概略構成例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るガード部材取付状態検知装置が適用されるエスカレータ制御システムの概略構成例を示す模式図である。
【0011】
エスカレータは、一般に、建物の上階と下階との間に傾斜して設置される。このエスカレータの移動経路上にはガード部材1が設置される。具体的には、ガード部材1は、エスカレータの手摺と建物の梁2との間の三角部に吊り金具3で吊り下げられている。ガード部材1は、例えば、アクリル材やプラスチック材等で構成される。また、ガード部材1は、一般的に三角形形状であり、「三角部ガード板」とも称される。但し、ガード部材1の形状は上記した三角形に限定されず、任意の多角形であれば良い。
【0012】
三角部ガード板1には反射体4が取り付けられている。例えば、反射体4は
図1に示すように三角部ガード板1の支柱の下底に取り付けられる。但し、三角部ガード板1の支柱の下底及び上底が共に光を透過可能な材料で構成されていれば、反射体4は三角部ガード板1の支柱の上底に取り付けられても良い。反射体4は、例えば、鏡や偏光フィルタ等である。反射体4の垂直下方向に位置するエスカレータのデッキボード上には、光電センサ5が設置される。
【0013】
光電センサ5は、後述する取付状態判定部6から出力されるパルス信号(電気信号)を光信号として三角部ガード板1に放射し、反射体4で反射された光信号を検知するセンサである。光電センサ5によって検知された光信号はパルス信号(電気信号)に変換されて、取付状態判定部6に出力される。なお、光電センサ5の周囲には、反射体4で反射された光信号とは異なる光信号(例、太陽光)の誤検知を防止するためにカバー部材が設置されても良い。
【0014】
取付状態判定部6は、光電センサ5から出力されたパルス信号に基づいて、三角部ガード板1の取付状態が正常であるか否かを判定する。なお、取付状態判定部6の詳細については後述するため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0015】
ガード部材取付状態検知装置は、上記光電センサ5と上記取付状態判定部6とによって構成される。但し、ガード部材取付状態検知装置は光電センサ5を含まずに、取付状態判定部6だけで構成されるとしても良い。
【0016】
エスカレータ制御部7はエスカレータを構成する各部を制御する。ここでは、エスカレータ制御部7は取付状態判定部6を制御する。遠隔監視端末8は、後述する取付状態判定部6からの通知やデータを受けると、これら通知やデータをネットワーク9を介して遠隔地に存在する監視センタ10に送出する。また、遠隔監視端末8は、ネットワーク9を介した監視センタ10からの各種要求を取付状態判定部6に出力する。監視センタ10には、多数の監視員が駐在し、これら監視員は監視対象となる各物件のエスカレータの運転状態を監視センタ10内の監視端末のモニタ画面上で監視している。
【0017】
図2は、第1実施形態に係るガード部材取付状態検知装置に含まれる取付状態判定部6の構成例を示す模式図である。取付状態判定部6は、
図2に示すように、起動回路61、特定パターン発生回路62、タイマ63、特定パターン検知回路64及び状態判定回路65等を備えている。
【0018】
起動回路61は、エスカレータ制御部7または遠隔監視端末8のうちの少なくとも一方から出力される判定開始要求を受けると、特定パターン発生回路62を起動させる。判定開始要求は、エスカレータ制御部7及び(監視センタ10から送出され)遠隔監視端末8から出力される要求であって、三角部ガード板1の取付状態が正常であるか否かを判定する処理を取付状態判定部6に実行させるための要求である。
【0019】
特定パターン発生回路62は起動回路61によって起動されると、特定パターンが繰り返されるパルス信号を光電センサ5に出力すると共にタイマ63を起動させる。
図3に、16ビットで構成された特定パターンのパルス信号を模式的に例示する。なお、特定パターンのパルス信号は16ビットではなく、任意のビット数で構成されるとしても良い。特定パターン発生回路62によって出力されるパルス信号は、光電センサ5により光信号として反射体4を有する三角部ガード板1に放射される。
【0020】
タイマ63は特定パターン発生回路62によりパルス信号が光電センサ5に出力されてからの時間を測定する。タイマ63は、予め設定された所定時間が経過すると(タイマ値が最大値になると)、タイマ値を0にリセットして、繰り返し時間を測定する。タイマ63は、起動されてから予め設定された一定時間(X回分の上記所定時間)が経過すると、一定時間が経過した旨を状態判定回路65に通知する。
【0021】
特定パターン検知回路64は、光電センサ5から出力されたパルス信号の入力を受け付けると、当該入力を受け付けたパルス信号のパターンと、特定パターン発生回路62によって出力されたパルス信号の特定パターンとが一致しているか否かを判定する。この判定の結果、上記した2つのパターンが一致する場合、特定パターン検知回路64は、特定パターン検知パルスを状態判定回路65に出力する(特定パターン検知パルスをONにする)。
【0022】
状態判定回路65は、一定時間の間中、特定パターン検知回路64から出力された特定パターン検知パルスの入力を受け付ける。また、状態判定回路65は、タイマ63が起動されてから一度リセットされるまでの間に上記特定パターン検知パルスの入力を受け付けると、特定パターン検知パルスが入力された回数(入力回数)としてカウントする。さらに、状態判定回路65は、一定時間経過後に、特定パターン検知パルスの入力回数が予め設定された規定回数を超えているか否かを判定する。この判定の結果、特定パターン検知パルスの入力回数が規定回数を超えている場合、状態判定回路65は、三角部ガード板1の取付状態が正常であると判定し、この旨をエスカレータ制御部7と遠隔監視端末8とに通知する。
【0023】
一方で、上記判定の結果、特定パターン検知パルスの入力回数が規定回数を超えていない場合、状態判定回路65は、三角部ガード板1の取付状態が異常であると判定し、この旨をエスカレータ制御部7と遠隔監視端末8とに通知する。三角部ガード板1の取付状態の異常とは、例えば、少なくとも一方の吊り金具3から脱落している状態を示す。さらに、状態判定回路65は、特定パターン検知パルスの入力を受け付けたタイミングとタイマ値との関係を示すタイミングデータを遠隔監視端末8に出力する。このタイミングデータは、遠隔監視端末8からネットワーク9を介して監視センタ10に送出される。
【0024】
次に、
図4の模式図と
図5のフローチャートとを参照して、第1実施形態に係るガード部材取付状態検知装置によって実行される処理の一例について説明する。以下の説明では、判定開始要求がエスカレータ制御部7または遠隔監視端末8のうちの少なくとも一方から状態判定部6に出力された場合を想定する。
【0025】
始めに、起動回路61は判定開始要求を受けると、当該判定開始要求に応じて特定パターン発生回路62を起動させる(ステップS1)。続いて、特定パターン発生回路62は、特定パターンが繰り返されるパルス信号を光電センサ5に出力すると共にタイマ63を起動させる(ステップS2)。
【0026】
光電センサ5は、特定パターン発生回路62から出力されたパルス信号の入力を受け付けると、当該入力を受け付けたパルス信号を光信号として反射体4を有する三角部ガード板1に出力する(ステップS3)。そして、光電センサ5は、反射体4で反射された光信号を検知すると、当該検知された光信号をパルス信号に変換して、特定パターン検知回路64に出力する(ステップS4)。
【0027】
特定パターン検知回路64は、光電センサ5から出力されたパルス信号の入力を受け付けると、当該入力を受け付けたパルス信号のパターンと、特定パターン発生回路62から光電センサ5に出力されたパルス信号の特定パターンとを比較して、これら2つのパターンが一致しているか否かを判定する(ステップS5)。これら2つのパターンが一致していない場合(ステップS5のNO)、上記ステップS4の処理に戻る。
【0028】
一方で、これら2つのパターンが一致している場合(ステップS5のYES)、特定パターン検知回路64は特定パターン検知パルス(
図4のp1に相当するパルス)を状態判定回路65に出力する(ステップS6)。
【0029】
状態判定回路65は、特定パターン検知回路64から出力された特定パターン検知パルスの入力を受け付けると、当該特定パターン検知パルスが所定時間内(
図4のt1に相当する時間)に入力された特定パターン検知パルスであるか否かを判定する(ステップS7)。特定パターン検知パルスが所定時間内に入力されている場合(ステップS7のYES)、状態判定回路65は、当該特定パターン検知パルスの入力を、入力回数としてカウントして(ステップS8)、後述するステップS10の処理に進む。一方で、特定パターン検知パルスが所定時間内に入力されていない場合(ステップS7のNO)、状態判定回路65は、当該特定パターン検知パルスの入力を、入力回数としてカウントせずに(ステップS9)、後述するステップS10の処理に進む。
【0030】
次に、状態判定回路65は、タイマ63が起動されてから一定時間(
図4のt2に相当する時間)が経過した旨の通知を受けたか否かを判定する(ステップS10)。通知を受けていない場合(ステップS10のNO)、上記ステップS4の処理に戻る。
【0031】
一方で、通知を受けている場合(ステップS10のYES)、状態判定回路65は、カウントされた特定パターン検知パルスの入力回数が予め設定された規定回数を超えているか否かを判定する(ステップS11)。
【0032】
特定パターン検知パルスの入力回数が規定回数を超えている場合(ステップS11のYES)、状態判定回路65は、三角部ガード板1の取付状態が正常であると判定し、この旨をエスカレータ制御部7と遠隔監視端末8とに通知して(ステップS12)、ここでの処理を終了させる。
【0033】
一方で、特定パターン検知パルスの入力回数が規定回数を超えていない場合(ステップS11のNO)、状態判定回路65は、三角部ガード板1の取付状態が異常であると判定し、この旨をエスカレータ制御部7と遠隔監視端末8とに通知する。しかる後、状態判定回路65は、タイミングデータを遠隔監視端末8に出力して(ステップS13)、ここでの処理を終了させる。
【0034】
以上説明した第1実施形態によれば、光電センサ5を用いて三角部ガード板1の取付状態を精度良く判定することができる。また、タイマ63が起動されてから一定時間の間にカウントされた特定パターン検知パルスの入力回数に基づいて三角部ガード板1の取付状態を判定するため、光電センサ5で使用する波長と同じ波長の外乱光が設置環境近くに存在したとしても誤検知を防ぐことができる。さらに、異常時にはタイミングデータが監視センタ10に出力されるので、監視員はこのタイミングデータを用いて異常の程度を判断し、適切なタイミングで保守員を派遣することができる。
【0035】
[第2実施形態]
次に、
図6を参照して、第2実施形態に係るガード部材取付状態検知装置について説明する。なお、上記した第1実施形態と同様な機能を有する機能ブロックには、
図2と同一符号を付して、詳細な説明は省略するものとする。第2実施形態では、光電センサがアナログ入出力を備えたセンサである場合について説明する。
【0036】
光電センサ5´は、上記した光電センサ5とは異なりアナログ入出力を備えたセンサであり、後述するデジタル/アナログ回路66から出力されたアナログ信号を光信号として三角部ガード板1に放射する。また、光電センサ5´は、反射体4で反射された光信号を検知すると、当該検知した光信号をアナログ信号として、後述するアナログ/デジタル回路67に出力する。
【0037】
次に、光電センサ5´を使用したことに伴い、上記した第1実施形態とは異なる機能を有する取付状態判定部6´について説明する。
【0038】
デジタル/アナログ回路(以下、「D/A回路」と表記)66は、特定パターン発生回路62から出力されたパルス信号(デジタル信号)の入力を受け付けると、当該入力を受け付けたパルス信号をアナログ信号に変換して、光電センサ5´に出力する。
【0039】
アナログ/デジタル回路(以下、「A/D回路」と表記)67は、光電センサ5´から出力されたアナログ信号の入力を受け付けると、当該入力を受け付けたアナログ信号をデジタル信号(デジタルコード)に変換する。具体的には、A/D回路67は、入力を受け付けたアナログ信号を、上記特定パターンの1ビットの1/2以下の時間でサンプリングしてデジタルコードに変換する。変換の結果として得られたデジタルコードは平均化処理部68に出力される。
【0040】
平均化処理部68は、A/D回路67から出力されたデジタルコードの入力を受け付けると、当該デジタルコードを特定パターンの時間間隔で分割して、N個のデジタルコードを得る。
図7では、入力を受け付けたデジタルコードを、16ビットで構成された特定パターンの時間間隔で分割した場合に得られるN個のデジタルコードが模式的に示されている。
【0041】
平均化処理部68は、得られたN個のデジタルコードに対して蓄積処理(加算処理)を実行する。
図8では、蓄積処理を実行した結果として得られるデジタルコードが模式的に示されている。さらに、平均化処理部68は、蓄積処理を実行した結果として得られるデジタルコードに対して平均化処理を実行する。
図9では、平均化処理を実行した結果として得られるデジタルコードが模式的に示されている。平均化処理の結果として得られたデジタルコードは特定パターン検知回路64´に出力される。
【0042】
特定パターン検知回路64´は、平均化処理部68から出力されたデジタルコードの入力を受け付けると、当該デジタルコードの時系列パターンと、特定パターン発生回路62によって出力されたパルス信号の特定パターンとが一致しているか否かを判定する。この判定の結果、上記した2つのパターンが一致する場合、特定パターン検知回路64は、特定パターン検知パルスを状態判定回路65に出力する(特定パターン検知パルスをONにする)。
【0043】
状態判定回路65´は、タイマ63によりN回分の特定パターンに相当する時間がカウントされた時点で、特定パターン検知回路64´から出力された特定パターン検知パルスの入力を受け付けていた場合、三角部ガード板1の取付状態が正常であると判定し、この旨をエスカレータ制御部7と遠隔監視端末8とに通知する。一方で、状態判定回路65´は、タイマ63によりN回分の特定パターンに相当する時間がカウントされた時点で、特定パターン検知回路64´から出力された特定パターン検知パルスの入力を受け付けていない場合、三角部ガード板1の取付状態が異常であると判定し、この旨をエスカレータ制御部7と遠隔監視端末8とに通知する。
【0044】
次に、
図10のフローチャートを参照して、第2実施形態に係るガード部材取付状態検知装置によって実行される処理の一例について説明する。以下の説明では、判定開始要求がエスカレータ制御部7または遠隔監視端末8のうちの少なくとも一方から状態判定部6´に出力された場合を想定する。
【0045】
始めに、起動回路61は判定開始要求を受けると、当該判定開始要求に応じて特定パターン発生回路62を起動させる(ステップS21)。続いて、特定パターン発生回路62は、特定パターンが繰り返されるパルス信号をD/A回路66に出力すると共にタイマ63を起動させる(ステップS22)。
【0046】
D/A回路66は、特定パターン発生回路62から出力されたパルス信号の入力を受け付けると、当該入力を受け付けたパルス信号をアナログ信号に変換して、光電センサ5´に出力する(ステップS23)。
【0047】
光電センサ5´は、特定パターン発生回路62から出力されたアナログ信号の入力を受け付けると、当該入力を受け付けたアナログ信号を光信号として反射体4を有する三角部ガード板1に出力する(ステップS24)。そして、光電センサ5´は、反射体4で反射された光信号を検知すると、当該検知された光信号をアナログ信号としてA/D回路67に出力する(ステップS25)。
【0048】
A/D回路67は、光電センサ5´から出力されたアナログ信号の入力を受け付けると、当該入力を受け付けたアナログ信号をデジタルコードに変換して、平均化処理部68に出力する(ステップS26)。
【0049】
平均化処理部68は、A/D回路67から出力されたデジタルコードの入力を受け付けると、当該デジタルコードを特定パターンの時間間隔で分割して、N個のデジタルコードを得る処理を実行する(ステップS27)。そして、平均化処理部68は、得られたN個のデジタルコードに対して蓄積処理及び平均化処理を実行する(ステップS28)。平均化処理の結果として得られたデジタルコードは平均化処理部68によって特定パターン検知回路64´に出力される。
【0050】
特定パターン検知回路64´は、平均化処理部68から出力されたデジタルコードの入力を受け付けると、当該デジタルコードの時系列パターンと、特定パターン発生回路62によって出力されたパルス信号の特定パターンとを比較して、これら2つのパターンが一致しているか否かを判定する(ステップS29)。これら2つのパターンが一致していない場合(ステップS29のNO)、後述するステップS31の処理に進む。
【0051】
一方で、これら2つのパターンが一致している場合(ステップS29のYES)、特定パターン検知回路64´は、特定パターン検知パルスを状態判定回路65´に出力する(ステップS30)。
【0052】
次に、状態判定回路65´は、タイマ63によりN回分の特定パターンに相当する時間がカウントされた時点で、特定パターン検知回路64´から出力された特定パターン検知パルスの入力を受けたか否かを判定する(ステップS31)。特定パターン検知パルスの入力を受けた場合(ステップS31のYES)、状態判定回路65´は、三角部ガード板1の取付状態が正常であると判定し、この旨をエスカレータ制御部7と遠隔監視端末8とに通知し(ステップS32)、ここでの処理を終了させる。
【0053】
一方で、特定パターン検知パルスの入力を受けていない場合(ステップS31のNO)、状態判定回路65´は、三角部ガード板1の取付状態が異常であると判定し、この旨をエスカレータ制御部7と遠隔監視端末8とに通知し(ステップS33)、ここでの処理を終了させる。
【0054】
以上説明した第2実施形態によれば、アナログ入出力を備えた光電センサ5´を用いた場合でも平均化処理を行う構成により特定パターンと比較することができる。したがって、例えば、反射体4で乱反射が生じ、反射光にノイズが生じたとしても三角部ガード板1の取付状態を正しく判定することができる。
【0055】
(変形例)
なお、上記した第1実施形態及び第2実施形態では、光電センサを使用して、三角部ガード板1の取付状態を判定したが、例えば
図11に示すように傾斜センサ11を使用して、三角部ガード板1の取付状態が正常であるか否かを検知することもできる。この場合、傾斜センサ11で検知される傾斜角が所定値を超えているか否かを判定する。判定の結果が所定値を超えている旨を示す場合に三角部ガード板1の取付状態が異常であると判定し、上記判定の結果が所定値を超えていない旨を示す場合に三角部ガード板1の取付状態が正常であると判定する。このように光電センサに限らず多種多様なセンサを使用して、三角部ガード板1の取付状態を判定することができる。
【0056】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、エスカレータに設置される三角部ガード板の取付状態が正常であるか否かを検知し得るガード部材取付状態検知装置を提供することができる。
【0057】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1…ガード部材、2…梁、3…吊り金具、4…反射体、5,5´…光電センサ、6,6´…取付状態判定部、7…エスカレータ制御部、8…遠隔監視端末、9…ネットワーク、10…監視センタ、11…傾斜センサ、61…起動回路、62…特定パターン発生回路、63…タイマ、64,64´…特定パターン検知回路、65,65´…状態判定回路、66…D/A回路、67…A/D回路、68…平均化処理部
【手続補正書】
【提出日】2015年3月20日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エスカレータの移動経路上に設置された反射体を有するガード部材に特定波長の光信号を放射し、前記反射体で反射された光信号を検知する光電センサと、
前記光電センサでの光信号の検知結果に基づいて、前記ガード部材の取付状態を判定する取付状態判定手段と
を具備し、
前記取付状態判定手段は、
前記光電センサによって光信号が放射されてから所定時間内に前記反射された光信号を検知できた場合、前記ガード部材の取付状態が正常であると判定し、
前記光電センサによって光信号が放射されてから所定時間内に前記反射された光信号を検知できなかった場合、前記ガード部材の取付状態が異常であると判定することを特徴とするガード部材取付状態検知装置。
【請求項2】
前記光電センサは、
前記特定波長の光信号を特定パターンで前記ガード部材に繰り返し放射し、前記反射体で反射された光信号を検知するセンサであり、
前記取付状態判定手段は、
前記光電センサによって光信号が放射されてから所定時間内に前記特定パターンに一致するパターンの前記反射された光信号を複数回検知できた場合、前記ガード部材の取付状態が正常であると判定し、
前記光電センサによって光信号が放射されてから所定時間内に前記特定パターンに一致するパターンの前記反射された光信号を複数回検知できなかった場合、前記ガード部材の取付状態が異常であると判定する請求項1に記載のガード部材取付状態検知装置。
【請求項3】
前記光電センサは、
前記特定波長の光信号を特定パターンで前記ガード部材に繰り返し放射し、前記反射体で反射された光信号を検知するセンサであり、
前記取付状態判定手段は、
前記光電センサによって光信号が放射されてから所定時間内に前記検知結果として連続的に得られた光信号のパターンを平均化する平均化処理手段を有し、
前記平均化された光信号のパターンが前記特定パターンに一致する場合、前記ガード部材の取付状態が正常であると判定し、前記平均化された光信号のパターンが前記特定パターンに一致しない場合、前記ガード部材の取付状態が異常であると判定することを特徴とする請求項1に記載のガード部材取付状態検知装置。
【請求項4】
前記取付状態判定手段での判定の結果を監視センタに通知する通知手段をさらに具備する請求項1に記載のガード部材取付状態検知装置。
【請求項5】
前記光電センサは、
前記反射体で反射された光信号とは異なる光信号の誤検知を防止するためのカバー部材を有することを特徴とする請求項1に記載のガード部材取付状態検知装置。
【請求項6】
前記光電センサは、
前記エスカレータのデッキボード上に設置されることを特徴とする請求項1に記載のガード部材取付状態検知装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本実施形態に係るガード部材取付状態検知装置は、エスカレータの移動経路上に設置された反射体を有するガード部材に特定波長の光信号を放射し、前記反射体で反射された光信号を検知する光電センサと、前記光電センサでの光信号の検知結果に基づいて、前記ガード部材の取付状態を判定する取付状態判定手段とを備え
、前記取付状態判定手段は、前記光電センサによって光信号が放射されてから所定時間内に前記反射された光信号を検知できた場合、前記ガード部材の取付状態が正常であると判定し、前記光電センサによって光信号が放射されてから所定時間内に前記反射された光信号を検知できなかった場合、前記ガード部材の取付状態が異常であると判定する。