特開2015-174772(P2015-174772A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンノプコ株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-174772(P2015-174772A)
(43)【公開日】2015年10月5日
(54)【発明の名称】セメント強度向上剤
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/08 20060101AFI20150908BHJP
   C04B 24/00 20060101ALI20150908BHJP
   C04B 24/02 20060101ALI20150908BHJP
   C04B 24/32 20060101ALI20150908BHJP
   C04B 24/12 20060101ALI20150908BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20150908BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20150908BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20150908BHJP
【FI】
   C04B24/08
   C04B24/00
   C04B24/02
   C04B24/32 A
   C04B24/12 A
   C04B24/26 Z
   C04B22/06 A
   C04B28/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2014-49426(P2014-49426)
(22)【出願日】2014年3月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000106438
【氏名又は名称】サンノプコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112438
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 健一
(72)【発明者】
【氏名】田中 優己
(72)【発明者】
【氏名】熊野 いつか
(72)【発明者】
【氏名】宮田 努
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MD08
4G112PB04
4G112PB15
4G112PB18
4G112PB20
4G112PB27
4G112PB36
(57)【要約】
【課題】
セメント組成物の強度を十分に向上できるセメント強度向上剤を提供することである。
【解決手段】
脂肪酸エステル(A)と、炭化水素油、高級アルコール及びポリオキシアルキレン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(B)と、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、ワックス及び疎水性シリカからなる群より選ばれる少なくとも1種の固状成分(C)とを含むことを特徴とするセメント強度向上剤を用いる。脂肪酸エステル(A)、化合物(B)及び固状成分(C)の合計重量に基づいて、脂肪酸エステル(A)の含有量が40〜99重量%、化合物(B)の含有量が0.9〜50重量%、固状成分(C)の含有量が0.1〜15重量%であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸エステル(A)と、
炭化水素油(b1)、高級アルコール(b2)及びポリオキシアルキレン化合物(b3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(B)と、
脂肪酸金属塩(c1)、脂肪酸アミド(c2)、ワックス(c3)及び疎水性シリカ(c4)からなる群より選ばれる少なくとも1種の固状粒子(C)とを含むことを特徴とするセメント強度向上剤。
【請求項2】
脂肪酸エステル(A)、化合物(B)及び固状粒子(C)の合計重量に基づいて、脂肪酸エステル(A)の含有量が40〜99重量%、化合物(B)の含有量が0.9〜50重量%、固状粒子(C)の含有量が0.1〜15重量%である請求項1に記載のセメント強度向上剤。
【請求項3】
セメントと、水と、充填材と、請求項1又は2に記載されたセメント強度向上剤とを含有することを特徴とするセメント組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセメント強度向上剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、焼成カオリンを含む材料を粉砕した粉粒体であり、特に、この粉粒体全体に対し、粒径0.075mm以下の微粉末が5重量%以上含まれていることを特徴とするセメント硬化体用強度向上材が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−306361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のセメント硬化体強度向上材では、セメント組成物の強度が十分に向上しないという問題がある。本発明の目的は、セメント組成物の強度を十分に向上できるセメント強度向上剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のセメント強度向上剤の特徴は、脂肪酸エステル(A)と、炭化水素油(b1)、高級アルコール(b2)及びポリオキシアルキレン化合物(b3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(B)と、脂肪酸金属塩(c1)、脂肪酸アミド(c2)、ワックス(c3)及び疎水性シリカ(c4)からなる群より選ばれる少なくとも1種の固状粒子(C)とを含有してなる点を要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のセメント強度向上剤は、セメント組成物の強度を十分に向上できる。特に、セメント組成物の硬化体の圧縮強度が飛躍的に向上する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
脂肪酸エステル(A)としては、25℃における粘度が1〜3000mPa・sであり、炭素数2〜30の脂肪酸と炭素数1〜30の1〜8価アルコールとのエステルが含まれる。
【0008】
粘度は、JIS Z8803:2011の「9 単一円筒形回転粘度計による粘度測定方法」に準拠して、ブルックフィールド型粘度計(25℃、60rpm)にて測定する(以下、同じである。)。
【0009】
脂肪酸としては、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸が含まれる。
飽和脂肪酸としては、炭素数2〜30の飽和脂肪酸が含まれ、直鎖飽和脂肪酸及び分岐鎖飽和脂肪酸が使用できる。
【0010】
直鎖飽和脂肪酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、セロチン酸及びメリシン酸等が挙げられる。
【0011】
分岐鎖飽和脂肪酸としては、イソ酪酸、イソ吉草酸、ピバル酸及びイソステアリン酸等が挙げられる。
【0012】
不飽和脂肪酸としては、炭素数3〜30の不飽和脂肪酸が含まれ、直鎖不飽和脂肪酸及び分岐鎖不飽和脂肪酸が使用できる。
【0013】
直鎖不飽和脂肪酸としては、アクリル酸、クロトン酸、ヘプテン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸及びトリアコンテン酸等が挙げられる。
【0014】
分岐鎖不飽和脂肪酸としては、メタクリル酸、イソミリストレイン酸及びイソオレイン酸等が挙げられる。
【0015】
これらのうち、セメント強度向上の観点から、直鎖飽和脂肪酸及び直鎖不飽和脂肪酸が好ましく、さらに好ましくはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、クロトン酸、ヘプテン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エルシン酸、リノール酸及びリノレン酸、特に好ましくはミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エルシン酸、リノール酸及びリノレン酸、最も好ましくはパルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エルシン酸、リノール酸及びリノレン酸である。
【0016】
これらの脂肪酸は単一成分であってもよいし、複数の脂肪酸を含有していてもよい。
【0017】
炭素数1〜30の1〜8価アルコールのうち、1価アルコールとしては、炭素数1〜30のモノオールが含まれ、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、イコサノール、ヘンイコサノール及びトリアコンタノール等が挙げられる。
【0018】
2価アルコールとしては、炭素数2〜6のジオールが含まれ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、トリメチレングリコール、カテコール、レゾルシン及びハイドロキノン等が挙げられる。
【0019】
3価アルコールとしては、炭素数3〜5のトリオールが含まれ、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ブタントリオール及びペンタントリオール等が挙げられる。
【0020】
4価アルコールとしては、炭素数5〜6のテトラオールが含まれ、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビタン及びマンニタン等が挙げられる。
【0021】
5〜8価アルコールとしては、炭素数5〜12のポリオールが含まれ、アラビット、テトラグリセリン、ソルビット(ソルビトール)、マンニット及び蔗糖等が挙げられる。
【0022】
これらのうち、セメント強度向上の観点から、1〜4価のアルコールが好ましく、さらに好ましくはエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビタン及び炭素数1〜12の1価アルコール、特に好ましくはエチレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノール、プロパノール及びブタノール、最も好ましくはグリセリンである。
【0023】
脂肪酸エステル(A)は、公知の方法で得ることができる。たとえば、脂肪酸とアルコールとを酸触媒にて部分又は完全エステル化反応させて得る方法が挙げられる。
【0024】
脂肪酸エステル(A)としては、ラウリル酸メチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸ブチル、ソルビタンセスキオレート、グリセリン(モノ/ジ)オレイン酸エステル、菜種油、大豆油、コーン油及びパーム油等が好ましく例示できる。なお、「(モノ/ジ)」は、モノ及び/又はジを意味する(以下、同じである。)。
【0025】
これらの脂肪酸エステル(A)は単一化合物であってもよいし、複数の化合物を含有していてもよい。
【0026】
脂肪酸エステル(A)は、市場からも容易に入手でき、たとえば以下の商品等が挙げられる。
【0027】
<1価アルコールと脂肪酸とのエステル>
エキセパール(登録商標)シリーズ(HO、MC、ML−85、IPM、IPP、OD−M、MS、BS、EH−S、TD−S、M−OL、MY−M等){花王株式会社}
ユニスター(登録商標)シリーズ(M−182A、MB−816、MB−876、MBー871、MBー881、M−9676、M−2222SL等){日油株式会社}
【0028】
<グリセリン脂肪酸エステル>
レオドール(登録商標)シリーズ(MS−50、MS−60及びMS−165V等){花王株式会社}
NIKKOL(登録商標)シリーズ(MGU、MGM、AMV、ASEV、BV、MGIS、MGOL−70及びDGS−80等){日光ケミカルズ株式会社}
大豆油、ヤシ油、パーム油、アマニ油、綿実油及びナタネ油等{日清オイリオグループ株式会社}
【0029】
<トリメチロールプロパン脂肪酸エステル>
トリメチロールプロパントリカプリル酸エステル、トリメチロールプロパントリラウリン酸エステル及びトリメチロールプロパントリオレイン酸エステル等{三光化学工業株式会社}
【0030】
<ソルビタン脂肪酸エステル>
イオネット(登録商標)シリーズ(S−80、S−60C、S−80及びS−85等){三洋化成工業株式会社}
【0031】
脂肪酸エステル(A)の含有量(重量%)は、脂肪酸エステル(A)、化合物(B)及び固状粒子(C)の合計重量に基づいて、40〜99が好ましく、さらに好ましくは50〜90、特に好ましくは60〜85である。
【0032】
化合物(B)としては、炭化水素油(b1)、高級アルコール(b2)及びポリオキシアルキレン化合物(b3)からなる群より選ばれる少なくとも1種であれば制限なく使用できる。
【0033】
炭化水素油(b1)としては、25℃における粘度が1〜500mPa・s、常圧(およそ101kPa)における初留点が150〜300℃の炭化水素油が含まれ、ミネラルスピリット、灯油及びパラフィン等が挙げられる。
【0034】
高級アルコール(b2)としては、炭素数8〜30の天然アルコール及び合成アルコールが含まれる。
【0035】
天然アルコールとしては、飽和アルコール(カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、エイコサノール、ドコサノール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノール及びミリシルアルコール等)及び不飽和アルコール(オレイルアルコール等)等が挙げられる。
【0036】
合成アルコールとしては、チーグラー法で合成された直鎖で非分岐状の飽和アルコール、オキソ法で合成された直鎖第1級アルコールあるいは分岐鎖第1級アルコール及びこれらの炭素数の異なるアルコール混合物、並びにパラフィンを空気酸化してつくられる直鎖第2級アルコール等が挙げられる。
【0037】
これらの高級アルコールのうち、セメント強度向上の観点から、天然アルコールが好ましく、さらに好ましくはセチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、オクチルドデカノール及びベヘニルアルコールである。
【0038】
ポリオキシアルキレン化合物(b3)としては、複数のオキシアルキレン基を含む化合物であれば制限なく使用でき、一般式(1)で表される化合物が好ましく例示できる。
【0039】

−(OA)n−OR (1)
【0040】
は炭素数2〜30のアシル基、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、2〜8価アルコールから水酸基を除いた反応残基又は炭素数1〜30の2〜8価アルコールと炭素数1〜30の脂肪酸との部分エステルの水酸基を除いた反応残基、Rは水素原子、炭素数2〜30のアシル基、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数2〜30のアルケニル基、OAは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nは2〜100の整数を表す。
【0041】
炭素数2〜30のアシル基としては、飽和カルボン酸アシル基及び不飽和カルボン酸アシル基が含まれる。
飽和カルボン酸アシル基としては、アセチル(エタノイル)、プロパノイル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ウンデカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ペンタデカノイル、ヘキサデカノイル、ヘプタデカノイル、オクタデカノイル、ノナデカノイル、イコサノイル、エイコサノイル、ヘンイコサノイル、ヘンエイコサノイル、ドコサノイル、トリカサノイル、テトラコサノイル、ペンタコサノイル、ヘキサコサノイル、ヘプタコサノイル、オクタコサノイル、ノナコサノイル及びトリアコンタノイル等が挙げられる。
【0042】
不飽和カルボン酸アシル基としては、アクリロイル、メタクリロイル、クロトノイル、イソクロトノイル、ブテノイル、ブタジエノイル、ペンテノイル、ヘキセノイル、ヘプテノイル、オクテノイル、ノネノイル、デセノイル、ウンデセノイル、ドデセノイル、テトラデセノイル、オレロイル、エライジノイル、シクロペンタノイル、シクロヘキサノイル、シクロヘプタノイル、メチルシクロペンタノイル、メチルシクロヘキサノイル、メチルシクロヘプタノイル、シクロペンテノイル、2,4−シクロペンタジエノイル、シクロヘキセノイル、2,4−シクロヘキサジエノイル、シクロヘプテノイル、メチルシクロペンテノイル、メチルシクロヘキセノイル及びメチルシクロヘプテノイル等が挙げられる。
【0043】
炭素数1〜30のアルキル基としては、直鎖アルキル基及び分岐鎖アルキル基が含まれる。
【0044】
直鎖アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、ヘニコシル、ドコシル、トリコシル、テトラコシル、ヘプタコシル、ヘキサキシル、ヘプタコシル、オクタコシル、ノナコシル及びトリアコンシル等が挙げられる。
【0045】
分岐鎖アルキル基としては、イソプロピル、イソブチル、t−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、イソヘキシル、2−エチルヘキシル、イソトリデシル、イソテトラデシル、イソオクタデシル、イソトリアコンシル、2−エチルヘキシル、2−プロピルヘプチル、2−ブチルオクチル、2−ヘキシルデシル、2−オクチルドデシル、2−デシルテトラデシル、2−ドデシルヘキシル、2−ドデシルヘキサデシル、3,5,5−トリメチルヘキシル及び3,7,11−トリメチルドデシル等が挙げられる。
【0046】
炭素数2〜30のアルケニル基としては、直鎖アルケニル基及び分岐鎖アルケニル基が含まれる。
【0047】
直鎖アルケニル基としては、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、イコセニル、ヘニコセニル、ドコセニル、トリコセニル、テトラコセニル、ヘプタコセニル、ヘキサキセニル、ヘプタコセニル、オクタコセニル、ノナコセニル及びトリアコンテニル等が挙げられる。
【0048】
分岐鎖アルケニル基としては、イソブテニル、イソペンテニル、ネオペンテニル、イソヘキセニル、イソトリデセニル、イソオクタデセニル及びイソトリアコンテニル等が挙げられる。
【0049】
2〜8価アルコールとしては、上記の炭素数1〜30の1〜8価アルコールから1価アルコールを除いたものと同じである。なお、2〜8価アルコールから除かれる水酸基は、一つであってもよいし、複数でもよい。
【0050】
炭素数1〜30の2〜8価アルコールと炭素数1〜30の脂肪酸との部分エステルの水酸基を除いた反応残基としては、上記の炭素数1〜30の2〜8価アルコールと上記の炭素数1〜30の脂肪酸との部分エステルであり、炭素数1〜30の2〜8価アルコールと炭素数1〜30の脂肪酸との部分エステルから除かれる水酸基は、一つであってもよいし、複数でもよい。
【0051】
のうち、セメント強度向上の観点から、炭素数2〜22のアシル基、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、2〜4価のアルコールから水酸基を除いた反応残基、2〜3価のアルコールと脂肪酸との部分エステルから水酸基を除いた反応残基が好ましく、さらに好ましくは炭素数12〜18のアシル基、炭素数12〜18のアルキル基、炭素数12〜18のアルケニル基、エチレングリコールの残基、プロピレングリコールの残基、グリセリンの残基、トリメチロールエタンの残基、トリメチロールプロパンの残基、エチレングリコールモノオレートの残基、エチレングリコールモノステアレートの残基、プロピレングリコールモノオレートの残基、プロピレングリコールモノステアレートの残基、グリセリン(モノ/ジ)オレートの残基、グリセリン(モノ/ジ)ステアレートの残基、トリメチロールエタン(モノ/ジ)オレートの残基、トリメチロールエタン(モノ/ジ)ステアレートの残基、トリメチロールプロパン(モノ/ジ)オレートの残基及びトリメチロールプロパン(モノ/ジ)ステアレートの残基、特に好ましくはドデカノイル、オクタデカノイル、オレロイル、ドデシル、オクタデシル、デドセニル、オクタデセニル、エチレングリコール残基、グリセリン残基、エチレングリコールモノオレートの残基、エチレングリコールモノステアレートの残基、グリセリン(モノ/ジ)オレートの残基及びグリセリン(モノ/ジ)ステアレートの残基、最も好ましくはオレロイル、オクタデセニル、グリセリン残基、グリセリン(モノ/ジ)オレートの残基及びグリセリン(モノ/ジ)ステアレートの残基である。
【0052】
のうち、セメント強度向上の観点から、水素原子、炭素数2〜22のアシル基、炭素数1〜22のアルキル基及び炭素数2〜22のアルケニル基が好ましく、さらに好ましくは水素原子、炭素数3〜18のアシル基、炭素数2〜18のアルキル基及び炭素数2〜18のアルケニル基、特に好ましくは水素原子、エチル、プロピル、ブチル、ドデカノイル、オクタデカノイル、オレロイル、ドデシル、オクタデシル、デドセニル及びオクタデセニル、最も好ましくは水素原子、オレロイル、オクタデセニルである。
【0053】
OAは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、オキシエチレン、オキシプロピレン及びオキシブチレンが含まれる。これらのうち、オキシエチレン及びオキシプロピレンが好ましく、さらに好ましくはオキシエチレンである。
【0054】
OAには2種以上のオキシアルキレン基が含まれてもよい。2種以上のオキシアルキレン基が含まれる場合、ブロック状、ランダム状及びこれらの混合のいずれでもよいが、オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック状が好ましい。
【0055】
nは、セメント強度向上の観点から、2〜60の整数が好ましく、さらに好ましくは3〜45、特に好ましくは4〜30の整数である。
【0056】
ポリオキシアルキレン化合物(b3)は公知の方法(特開2003−268291号公報、特開平9−117607号公報等及び上記のエステル化反応)等で製造できる。
【0057】
ポリオキシアルキレン化合物(b3)としては、ポリオキシエチレングリコールモノセチルエーテル、ポリオキシエチレングリコールモノステアリルエーテル、ポリオキシエチレングリコールモノオレイルエーテル、ひまし油のエチレンオキシド付加体、ポリオキシエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレングリコールジオレート、ブトキシポリオキシエチレンステアリルエーテル、グリセリルポリオキシエチレン(モノ/ジ/トリ)オレート、グリセリン(モノ/ジ)オレートポリオキシエチレン付加物及びグリセリン(モノ/ジ)オレートポリオキシプロピレン付加物等が好ましく例示できる。なお、「(モノ/ジ/トリ)」は、モノ、ジ及び/又はトリを意味する。
【0058】
ポリオキシアルキレン化合物(b3)は市場から容易に入手でき、たとえば以下の商品等が挙げられる。
【0059】
<ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル>
ブラウノン(登録商標)シリーズ(CH−302L、SR−702、EN−1502){青木油脂工業株式会社}
【0060】
<ひまし油エチレンオキシド付加体>
ブラウノン(登録商標)BR−404{青木油脂工業株式会社}
【0061】
<ポリオキシエチレングリコール(モノ/ジ)ラウリン酸エステル、ポリオキシエチレングリコール(モノ/ジ)オレイン酸エステル、ポリオキシエチレングリコール(モノ/ジ)ステアリン酸エステル>
イオネット(登録商標)シリーズ(MS−400、MS−1000、MO−200、DL−200、DO−600、DS−400及びDS−4000等){三洋化成工業株式会社}
【0062】
<ポリオキシプロピレングリコールモノデシルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールモノイソデシルエーテル>
ブラウノンシリーズ(NDB−800、NDB−1400、IDEP−608及びIDEP−802等){青木油脂工業株式会社}
【0063】
化合物(B)の含有量(重量%)は、脂肪酸エステル(A)、化合物(B)、固状粒子(C)の合計重量に基づいて、0.9〜50が好ましく、さらに好ましくは5〜45、特に好ましくは10〜38である。
【0064】
固状粒子(C)は、25℃で固体であって、脂肪酸金属塩(c1)、脂肪酸アミド(c2)、ワックス(c3)及び疎水性シリカ(c4)からなる群より選ばれる少なくとも1種であれば制限なく使用できる。
【0065】
脂肪酸金属塩(c1)は、脂肪酸から水素原子を除いた残基と金属原子との塩で構成される。なお、脂肪酸金属塩には、塩及び錯体の両方の意味が含まれる。また、脂肪酸金属塩(c1)は1種のみから構成されてもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0066】
脂肪酸としては、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸(上記と同じ)が含まれる。
金属原子としては、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム及びカリウム等)、アルカリ土類金属(バリウム、カルシウム及びマグネシウム等)、遷移金属(亜鉛、ニッケル、鉄、銅、マンガン、コバルト、銀、金、白金、パラジウム、チタン、ジルコニウム及びカドミウム等)、周期律表13族金属(アルミニウム等)、同14族金属(錫及び鉛等)又はランタノイド金属(ランタン及びセリウム等)の原子が含まれる。
【0067】
このような脂肪酸金属塩(c1)としては、一般式(2)で表される化合物が好ましく例示できる。
【0068】

(R−COO)pM (2)
【0069】
なお、Rは炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数2〜30のアルケニル基、Mは1〜3価の金属原子、pは1〜3の整数を表す。
【0070】
一般式(2)において、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数2〜30のアルケニル基(R)は、上記と同様である。
【0071】
これらのうち、セメント強度向上の観点から、直鎖アルキル基及び直鎖アルケニル基が好ましく、さらに好ましくは直鎖アルキル基、特に好ましくは炭素数8〜24の直鎖アルキル基、最も好ましくはドデシル及びオクタデシルである。
【0072】
1〜3価の金属原子(M)としては、上記の金属原子が含まれる。これらのうち、セメント強度向上の観点から、2価金属原子及び3価金属原子が好ましく、さらに好ましくは亜鉛原子、マグネシウム原子及びアルミニウム原子、特に好ましくはアルミニウム原子である。
【0073】
pは、1〜3の整数を表し、好ましくは2〜3の整数、さらに好ましくは3の整数である。
【0074】
このような脂肪酸金属塩は、1種のpを持つ単一化合物でも、pが異なる複数の混合物でもよい。また、アルキル基又はアルケニル基の種類が異なる混合物でもよい。
【0075】
脂肪酸金属塩(c1)として、ラウリン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム及びステアリン酸バリウムがさらに好ましく例示できる。
このような脂肪酸金属塩(c1)は市場からも容易に入手でき、たとえば以下の商品等が挙げられる。
【0076】
カルシウムステアレート、オブラートCA−65、パウダーベースL、ジンクベヘネート、アルミニウムステアレート300、アルミニウムステアレート600、アルミニウムステアレート900及びバリウムステアレート{日油株式会社}
【0077】
脂肪酸アミド(c2)としては、炭素数1〜6のアルキレンジアミンと炭素数10〜22の脂肪酸との脂肪酸ビスアミド及び炭素数10〜22の脂肪酸モノアミドが含まれる。
【0078】
脂肪酸ビスアミドとしては、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスパルミチルアミド、エチレンビスミリスチルアミド、エチレンビスラウリルアミド、エチレンビスオレイルアミド、プロピレンビスステアリルアミド、プロピレンビスパルミチルアミド、プロピレンビスミリスチルアミド、プロピレンビスラウリルアミド、プロピレンビスオレイルアミド、ブチレンビスステアリルアミド、ブチレンビスパルミチルアミド、ブチレンビスミリスチルアミド、ブチレンビスラウリルアミド、ブチレンビスオレイルアミド、メチレンビスラウリルアミド、メチレンビスステアリルアミド、ヘキサメチレンビスステアリルアミド、エチレン−ビス−12−ヒドロキシステアリルアミド及びヘキサメチレン−ビス−12−ヒドロキシステアリルアミド等が挙げられる。
【0079】
脂肪酸モノアミドとしては、ステアリルアミド、N−ステアリルステアリルアミド及びN−メチルステアリルアミド等が挙げられる。
【0080】
これらのうち、セメント強度向上の観点から、脂肪酸ビスアミドが好ましく、さらに好ましくはエチレンビスステアリルアミド、エチレンビスパルミチルアミド、エチレンビスラウリルアミド、メチレンビスステアリルアミド及びヘキサメチレンビスステアリルアミド、特に好ましくはエチレンビスステアリルアミド、エチレンビスパルミチルアミド及びエチレンビスミリスチルアミドである。
【0081】
ワックス(c3)としては、天然ワックス及び合成ワックスが含まれる。
天然ワックスとしては、植物ワックス(カルナバワックス、キャンデリラワックス、シュガーワックス、ライスワックス、木ロウ、ベイベリーワックス、オーキュリーワックス及びエスパルトワックス等)、動物ワックス(みつろう、昆虫ロウ、鯨ロウ、セラックロウ及びラノリンワックス等)、石油ワックス(パラフィンワックス及びマイクロクリスタリンワックス等)及び鉱物ワックス(オゾケライトワックス及びセレシン等)等が用いられる。
【0082】
合成ワックスとしては、酸化天然ワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸変性ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸変性ポリプロピレンワックス及びフィッシャートロプシュワックスが含まれる。
【0083】
酸化天然ワックスとしては、上記の天然ワックスを空気酸化及び/又はオゾン酸化等により酸化(カルボキシ基、水酸基及び/又はホルミル基を導入)したもの等が使用できる。
【0084】
ポリエチレンワックスとしては、エチレンの重合により得られるもの、一般成型用ポリエチレンの熱分解(低分子量化)により得られるもの、一般成型用ポリエチレンを製造する際に副生する低分子量ポリエチレンの分離精製により得られるものがあるが、いずれの方法で得られたものでも使用できる。
【0085】
ポリエチレンワックスの重量平均分子量(Mw−a)としては、500〜10,000が好ましく、さらに好ましくは600〜9,000、特に好ましくは700〜8,000である。なお、ポリエチレンワックスの重量平均分子量(Mw−a)は、静的光散乱光度計{例えば、大塚電子(株)製のスタティック光散乱光度計SLS−6000}により、溶媒を1−クロロナフタレン、測定温度を160℃として測定される。
【0086】
ポリエチレンワックスの融点(℃)としては、60〜200が好ましく、さらに好ましくは70〜180、特に好ましくは80〜170である。
【0087】
なお、融点は、JIS K7121−1987の3.(2)及び8.6(1)に準拠して測定される(以下、同様である。)。すなわち、測定試料をDSC装置(たとえばDSC−6200、セイコーインスツルメンツ社製)の容器(たとえば560−002、セイコーインスツルメンツ社製)に入れ、窒素ガスを40mL/分流入しながら、融解ピーク終了時より約30℃高い温度まで加熱速度毎分10℃で加熱溶融させ、その温度に10分間保った後、融解温度より約100℃低い温度まで冷却速度毎分5℃で冷却し、装置が安定するまで保持する。次いで、加熱速度毎分10℃で昇温時に観測される融解ピークを融点とする。
【0088】
酸化ポリエチレンワックスとしては、上記のポリエチレンワックスを空気酸化及び/又はオゾン酸化等により酸化(カルボキシ基、水酸基及び/又はホルミル基を導入)したもの等が使用できる。
【0089】
酸変性ポリエチレンワックスとしては、上記のポリエチレンワックスに不飽和二重結合含有カルボン酸(α,β−不飽和モノカルボン酸及びα,β−不飽和ジカルボン酸等)等をグラフトさせたカルボン酸変性ポリエチレンワックス等が使用できる。
【0090】
α,β−不飽和モノカルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸及び2−エチルアクリル酸等が挙げられる。α,β−不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、無水マレイン酸、マロン酸、コハク酸、イタコン酸及びフマル酸等が挙げられる。
【0091】
ポリプロピレンワックスとしては、プロピレンの重合により得られるもの、一般成型用ポリプロピレンの熱分解(低分子量化)により得られるもの、一般成型用ポロプロピレンを製造する際に副生する低分子量ポリエチレンの分離精製により得られるものがあるが、いずれの方法で得られたものでも使用できる。
【0092】
ポリプロピレンワックスの重量平均分子量(Mw−b)としては、1000〜50000が好ましく、さらに好ましくは1500〜40000、特に好ましくは2000〜30000である。ポリプロピレンワックスの重量平均分子量(Mw−b)としては、ポリエチレンワックスの重量平均分子量(Mw−a)と同様にして測定される。
【0093】
ポリプロピレンワックスの融点(℃)としては、60〜200が好ましく、さらに好ましくは70〜180、特に好ましくは80〜170である。
【0094】
酸化ポリプロピレンワックスとしては、上記のポリプロピレンワックスを空気酸化及び/又はオゾン酸化等により酸化(カルボキシ基、水酸基及び/又はホルミル基を導入)したもの等が使用できる。
【0095】
酸変性ポリプロピレンワックスとしては、上記のポリプロピレンワックスに不飽和二重結合含有カルボン酸(α,β−不飽和モノカルボン酸及びα,β−不飽和ジカルボン酸等)等をグラフトさせたカルボン酸変性ポリプロピレンワックス等が使用できる。
【0096】
フィッシャートロプシュワックスとは、石炭を原料とするガスからアーゲ法により得られる生成物を蒸留し、この最高沸点の留分に水素添加することにより得られるものであり、南アフリカ共和国のサゾール公社製のものが好適である。
【0097】
これらのワックス(c3)のうち、セメント強度向上の観点から、植物ワックス、石油ワックス、酸化天然ワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス及び酸変性ポリエチレンワックスが好ましく、さらに好ましくはカルナバワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸化カルナバワックス、並びに重量平均分子量(Mw−a)が600〜9000であるポリエチレンワックス及びその酸化物である。
【0098】
疎水性シリカ(c4)としては、シリカ(c−a){シリカとは親水性シリカを意味する。以下、同様である。}を親油性化合物(c−b)で疎水化処理した疎水性シリカが含まれる。
【0099】
シリカ(c−a)としては、非晶質合成シリカ(沈殿法シリカ、ゲル法シリカ、熱分解法シリカ及び溶融シリカ等)が含まれる。
【0100】
沈殿法シリカは、アルカリ性環境下にて珪酸ソーダを酸で中和し、生じた析出物をろ過、乾燥することによって得られるシリカである。ゲル法シリカは、酸性環境下にて珪酸ソーダを酸で中和し、生じた析出物をろ過、乾燥することによって得られるシリカである。熱分解法シリカは、四塩化珪素等の珪素化合物を酸水素炎中で燃焼させて得られるシリカである。溶融シリカは、シリカ粉末を火炎中で溶融・球状化して得られるシリカである。これらのうち、沈殿法シリカ、ゲル法シリカ及び熱分解法シリカが好ましく、さらに好ましくは沈殿法シリカ及び熱分解法シリカ、特に好ましくは沈殿法シリカである。
【0101】
シリカ(c−a)は、市場から容易に入手できる。以下に、市場から入手できる商品のシリーズ名を例示する。
【0102】
沈殿法シリカとしては、Nipsilシリーズ{東ソー・シリカ株式会社、「Nipsil」は東ソー・シリカ株式会社の登録商標である。}、ゲル法シリカとしては、Carplexシリーズ、SYLYSIAシリーズ{富士シリシア株式会社、「SYLYSIA」は有限会社ワイ・ケイ・エフ の登録商標である。}、熱分解法シリカとしては、Aerosilシリーズ{日本アエロジル株式会社及びエボニック デグサ社、「Aerosil」はエボニック デグサ ゲーエムベーハーの登録商標である。}、溶融法シリカとしては、Admafineシリーズ{アドマテックス社、「Admafine」はトヨタ自動車株式会社の登録商標である。}等が挙げられる。
【0103】
シリカ(c−a)を疎水化するのに用いる親油性化合物(c−b)としては、シリコーン化合物が含まれ、ポリジメチルシロキサン、アルキル基変性ポリジメチルシロキサン(変性アルキル基の炭素数2〜6)、アルコキシ基変性ポリジメチルシロキサン(変性アルコキシ基の炭素数2〜4)、水酸基変性ポリジメチルシロキサン、アミノ基変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ハイドロジェンポリジメチルシロキサン、フェニル基変性ポリジメチルシロキサン、シリコーンレジン及びハロゲン変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
【0104】
これらの親油性化合物(c−b)のうち、セメント強度向上の観点から、ポリジメチルシロキサン、アルキル基変性ポリジメチルシロキサン、ハイドロジェンポリジメチルシロキサン及びシリコーンレジンが好ましく、さらに好ましくはポリジメチルシロキサン、ハイドロジェンポリジメチルシロキサン及びシリコーンレジンである。
【0105】
シリカ(c−a)の親油性化合物(c−b)による疎水化は、公知の方法(たとえば、米国特許第3207698号公報及び米国特許第3634288号公報)等が適用できる。
【0106】
親油性化合物(c−b)を用いて疎水化する場合、親油性化合物(c−b)の使用量(重量%)としては、シリカ(c−a)の重量に基づいて、2〜80が好ましく、さらに好ましくは5〜70、特に好ましくは10〜50である。この範囲にあると、セメント強度向上がさらに良好となる。
【0107】
シリカ(c−a)のうち、沈殿法シリカ及び熱分解法シリカを疎水化した疎水性シリカは市場からも容易に入手できる。以下に商品の名を例示する。
【0108】
<沈殿法シリカを疎水化した疎水性シリカ>
Nipsil SSシリーズ、Sipernat D及びCシリーズ、並びにSYLOPHOBICシリーズ{富士シリシア化学株式会社、「SYLOPHOBIC」は富士シリシア化学株式会社の登録商標である。}等。
【0109】
<熱分解法シリカを疎水化した疎水性シリカ>
Aerosil Cシリーズ{日本アエロジル株式会社及びエボニック デグサ社}、Reolosil MT及びDMシリーズ{株式会社トクヤマ}等。
【0110】
疎水性シリカ(c4)のメタノール湿潤性(M値)は、30〜90が好ましく、さらに好ましくは35〜85、特に好ましくは40〜80、最も好ましくは45〜75である。
【0111】
メタノール湿潤性(M値)は、疎水性の程度を表す概念であり、M値が高いほど親水性が低いことを示し、水・メタノール混合溶液に測定試料{疎水性シリカ(c4)}を均一分散させる際、必要最低量のメタノールの容量割合で表され、次の方法で求めることができる。
【0112】
<メタノール湿潤性(M値)算出法>
測定試料{疎水性シリカ(c4)}0.2gを容量250mLのビーカー中の50mLの水に添加し、続いてメタノールをビュレットから測定試料の全量が均一懸濁するまで滴下する。この際ビーカー内の液体をマグネティックスターラーで常時攪拌し、測定試料の全量が液体中に均一懸濁された時点を終点とし、終点におけるビーカー内の液体のメタノールの容量百分率をメタノール湿潤性(M値)とする。
【0113】
これらの固状粒子(C)のうち、セメント強度向上の観点から、脂肪酸アミド(c2)、ワックス(c3)及び疎水性シリカ(c4)が好ましく、少なくともこれらのいずれかを含有することが好ましい。
【0114】
固状粒子(C)の含有量(重量%)は、脂肪酸エステル(A)、化合物(B)、固状粒子(C)の合計重量に基づいて、0.1〜15が好ましく、さらに好ましくは0.2〜10、特に好ましくは0.5〜8である。
【0115】
本発明のセメント強度向上剤には、脂肪酸エステル(A)、化合物(B)及び固状粒子(C)以外に、他の成分{合成樹脂、天然樹脂、乳化剤、シリコーンオイル及び親水性シリカ等}及び/又は公知の添加剤{消泡剤、分散剤、増粘剤、防黴剤、防腐剤、防錆剤、酸化防止剤及び皮張り防止剤等;たとえば、特開2000−327946号公報及び特開2004−305882号公報に記載されたもの等}、水等を含有してもよい。
【0116】
合成樹脂としては、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリウレタン及びポリウレアが含まれる。
【0117】
ポリエステルとしては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸ポリブチレンサクシネートブロック共重合体、カプロラクトンブチレンサクシネート共重合体、ブチレンサクシネートアジペート共重合体、ブチレンサクシネートカーボネート共重合体、ポリヒドロキシブチレート及びヒドロキシブチレートヒドロキシサクシネート共重合体等が挙げられる。
【0118】
ポリエステルの重量平均分子量(Mw−c)は、5000〜500000が好ましく、さらに好ましくは10000〜300000である。
【0119】
なお、ポリエステルの重量平均分子量(Mw−c)は、分子量既知の(ポリ)メタクリル酸メチルを標準物質として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される(カラム温度40℃、溶離液:テトラヒドロフラン、流速0.8ml/分、試料濃度:0.4重量%溶離液溶液。)。
【0120】
ポリビニルアルコールとしては、完全ケン化型ポリビニルアルコール、部分ケン化型ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール及びノニオン変性ポリビニルアルコールが含まれる。
【0121】
これらのポリビニルアルコールは、公知のもの(たとえば、特開2006−28233号公報、特開平10−119423号公報、特開平1−206088号公報、特開昭61−237681号、特開昭63−307979号公報、特開平7−285265号公報、特開平7−9758号公報及び特開平8−25795号公報)等が使用できる。
【0122】
これらのポリビニルアルコールのうち、完全ケン化型ポリビニルアルコール、部分ケン化型ポリビニルアルコールが好ましく、さらに好ましくは部分ケン化型ポリビニルアルコールである。
【0123】
ポリビニルアルコールの重合度は、500〜4000が好ましく、さらに好ましくは1000〜3000である。
【0124】
ポリ(メタ)アクリル酸としては、(メタ)アクリル酸のホモポリマー、並びに(メタ)アクリル酸と、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜22のアルキルエステル、炭素数1〜18のアルコールのアルキレンオキシド(炭素数2〜4)付加体の(メタ)アクリレート等の共重合モノマーとから構成されるコポリマーが含まれる。
【0125】
ポリ(メタ)アクリル酸は、さらに、(メタ)アクリロニトリル、スチレン(スチレン、メチルスチレン、ヒドロキシスチレン、ジビニルベンゼン)、アリルアルコール等のモノマーを構成単位として含んでいてもよい。
【0126】
ポリ(メタ)アクリル酸の重量平均分子量(Mw−d)は、5000〜100万が好ましく、さらに好ましくは2万〜50万である。
【0127】
なお、ポリ(メタ)アクリル酸の重量平均分子量(Mw−d)は、分子量既知のポリアクリル酸ナトリウムを標準物質として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される(カラム温度40、溶離液:0.1−MPBのリン酸水素二ナトリウム水溶液:0.1−MPBリン酸二水素ナトリウム水溶液=1:1(モル比)、流速0.8ml/分、試料濃度:0.4重量%溶離液溶液。)。
【0128】
ポリウレタンとしては、ジイソシアネートと、ポリオール及び/又はポリカルボン酸とを構成単位とする重合体が含まれる。
【0129】
ジイソシアネートとしては、炭素数8〜16のジイソシアネート{ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及び4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等}等が挙げられる。
【0130】
ポリオールとしては、炭素数2〜6の多価アルコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン及びペンタエリスリトール等)及びこれらの多価アルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキシドを水酸基1モル当たり1〜50モル付加した付加体等が挙げられる。
【0131】
ポリカルボン酸としては、炭素数4〜14のポリカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸及びダイマー酸等)等が挙げられる。
【0132】
ポリウレアとしては、ジイソシアネート及びポリアミンを構成単位とする重合体が含まれる。
【0133】
ポリアミンとしては、炭素数2〜6のポリアミンが含まれ、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン及びトリエチレンテトラミン等が挙げられる。
【0134】
天然樹脂としては、セルロース化合物、デンプン化合物、キチン及びキトサンが含まれる。
【0135】
セルロース化合物としては、セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、酸化セルロース、アセチルセルロース、アミノアセチルセルロース、アリルセルロース、酢酸セルロース及び酢酸エステルセルロース等が挙げられる。
【0136】
これらのセルロース化合物のうち、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース及び酢酸エステルセルロースが好ましく、さらに好ましくはセルロース及び酢酸セルロースである。
【0137】
デンプン化合物としては、デンプン、カルボキシメチルデンプン、カルボキシエチルデンプン、メチルデンプン、エチルデンプン、ヒドロキシエチルデンプン、酸化デンプン、アセチルデンプン、アミノアセチルデンプン、アリルデンプン、酢酸デンプン及び酢酸エステルデンプン等が挙げられる。
【0138】
これらのデンプン化合物のうち、デンプン、メチルデンプン、エチルデンプン及びエステル化デンプンが好ましく、さらに好ましくはデンプン及びエステル化デンプンである。
【0139】
乳化剤としては、ノニオン型、カチオン型、アニオン型又は両性型の乳化剤が使用できる。
【0140】
ノニオン型乳化剤としては、高級アルキルアミンのアルキレンオキシド付加体、高級脂肪酸アミドのアルキレンオキシド付加体及びアセチレングリコールのアルキレンオキシド付加体等が挙げられる。ただし、ノニオン乳化剤に、上記の脂肪酸エステル(A)及びポリオキシアルキレン化合物(b3)は含まれない。
【0141】
カチオン型乳化剤としては、高級アルキルアミン塩、高級アルキルアミンアルキレンオキシド付加体、ソロミンA型カチオン乳化剤、サパミンA型カチオン乳化剤、アーコベルA型カチオン乳化剤、イミダゾリン型カチオン乳化剤、高級アルキルトリメチルアンモニウム塩、高級アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、サパミン型第4級アンモニウム塩及びピリジニウム塩等が挙げられる。
【0142】
アニオン型乳化剤としては、脂肪酸アルカリ金属塩、脂肪酸アンモニウム塩、脂肪酸アミン塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸とその塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、N−アシルアルキルタウリン塩及びアルキルスルホコハク酸塩等が挙げられる。ただし、アニオン乳化剤に、上記の脂肪酸金属塩(c1)は含まれない。
【0143】
両性型乳化剤としては、高級アルキルアミノプロピオン酸塩及び高級アルキルジメチルベタイン等が挙げられる。
【0144】
これらの乳化剤のうち、ノニオン型乳化剤及びアニオン型乳化剤が好ましく、さらに好ましくは高級アルキルアミンのアルキレンオキシド付加体、高級脂肪酸アミドのアルキレンオキシド付加体、脂肪酸アルカリ金属塩、脂肪酸アンモニウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸とその塩及びアルキルスルホコハク酸塩、特に好ましくは高級アルキルアミンのアルキレンオキシド付加体、アルキルベンゼンスルホン酸とその塩及びアルキルスルホコハク酸塩である。
【0145】
シリコーンオイルとしては、公知のシリコーンオイル等が含まれ、疎水化剤として用いられるシリコーンオイル及び変性シリコーンオイル等が使用できる。
【0146】
他の成分を含有する場合、この含有量(重量%)は、脂肪酸エステル(A)、化合物(B)及び固状粒子(C)の合計重量に基づいて、0.1〜20が好ましく、さらに好ましくは0.2〜15、特に好ましくは0.5〜10である。この範囲であるとセメント強度向上がさらに良好となる場合がある。
【0147】
他の添加剤を含有する場合、この含有量(重量%)は、脂肪酸エステル(A)、化合物(B)及び固状粒子(C)の合計重量に基づいて、0.01〜20が好ましく、さらに好ましくは0.05〜15、特に好ましくは0.1〜10である。この範囲であるとセメント強度向上がさらに良好となる場合がある。
【0148】
水を含有する場合、この含有量(重量%)は、脂肪酸エステル(A)、化合物(B)及び固状粒子(C)の合計重量に基づいて、0.1〜55が好ましく、さらに好ましくは1〜50、特に好ましくは2〜40である。
【0149】
本発明のセメント強度向上剤は、脂肪酸エステル(A)、化合物(B)及び固状粒子(C)、並びに必要に応じて他の成分及び/又は他の添加剤、水(以下、これらを省略して「構成成分」という。)を含有していれば、製造方法に制限はないが、これらの構成成分が均一に混合されていることが好ましい。
【0150】
「構成成分」を混合する際、「構成成分」の混合をより容易にするためや、固状成分(C)のうち脂肪酸金属塩(c1)、脂肪酸アミド(c2)及び/又はワックス(c3)を溶融させて微粒化するために、加熱混合してもよい。
【0151】
加熱混合する場合、温度(℃)としては、100〜180が好ましく、さらに好ましくは103〜170、特に好ましくは105〜160、最も好ましくは110〜150である。
【0152】
加熱混合する場合、固状粒子(C)の粒子径や結晶状態を整えるために、(1)急冷又は(2)徐冷したり、(3)冷却途中で熱処理(加熱温度と最終温度との中間温度で熟成する)した後、最終温度まで冷却したりできる。
【0153】
「構成成分」を混合した後、「構成成分」をより均一にするために均質化処理してもよい。
【0154】
均質化処理としては、乳化分散機(ディスパーミル、ホモジナイザー又はゴーリンホモジナイザー、超音波乳化機等)を用いて処理することが好ましい。
【0155】
本発明のセメント強度向上剤に含有する固状粒子(C)の体積平均粒子径(μm)は、0.1〜100が好ましく、さらに好ましくは0.15〜20、特に好ましくは0.2〜10、最も好ましくは0.25〜5である。この範囲であると、セメント強度向上がさらに優れる。
【0156】
体積平均粒子径は、JIS Z8825−1:2001に準拠したレーザー回折式粒度分析計{たとえば、Leeds&Northrup社製Microtracシリーズ、株式会社堀場製作所製ParticaLAシリーズ}を用い、n−ヘキサン{純度96重量%以上}1000重量部に、測定試料の濃度が0.1重量%となるように測定試料を添加して測定分散液を調製して、測定温度25±5℃で測定した後、n−ヘキサンの屈折率として1.3749を、測定試料の屈折率として文献値(「A GUIDE FOR ENTERING MICROTRAC ”RUN INFORMATION”(F3)DATA」、Leeds&Northrup社作成)を用いて、50%積算体積平均粒子径として求められる(以下、同じである。)。
【0157】
固状粒子(C)は破砕機等で破砕することにより、体積平均粒子径を好ましい範囲にしてもよい。
【0158】
破砕機としては、公知の破砕機等が使用でき、湿式媒体型粉砕機{ビーズミル、サンドグラインダー、コロイドミル、アトライタ(日本コークス工業株式会社製、「アトライタ」は日本コークス工業株式会社の登録商標である。)、DISPERMAT(VMA−GETAMANN GMBH社製)等}、湿式ジェットミル{ナノマイザー(吉田機械株式会社製、「ナノマイザー」はエス・ジーエンジニアリング株式会社の登録商標である。)、スターバースト(株式会社スギノマシン製、「スターバースト」は株式会社スギノマシンの登録商標である。)、ゴーリンホモジナイザー(APV社製)等}等が使用できる。
【0159】
本発明のセメント強度向上剤は、固状粒子(C)を脂肪酸エステル(A)及び化合物(B)に乳化又は分散させて乳化分散体(ABC)を得た後、これを粉体に担持させてもよい。
【0160】
粉体としては、親水性シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カーボンブラック及びタルクからなる群より選ばれる少なくとも1種であれば制限ないが、炭酸カルシウム及び親水性シリカが好ましく、さらに好ましくは親水性シリカである。
【0161】
粉体のBET比表面積(m/g)は、0.5〜1000が好ましく、さらに好ましくは50〜800、特に好ましくは100〜500である。この範囲であると、セメント強度向上がさらに良好となる。
【0162】
粉体のフタル酸ジ-n-ブチル(DBP)吸油量(ml/100g)は、10〜500が好ましく、さらに好ましくは50〜400、特に好ましくは100〜300である。この範囲であると、セメント強度向上がさらに良好となる。
【0163】
粉体の体積平均粒子径(μm)は、0.1〜1000が好ましく、さらに好ましくは3〜500、特に好ましくは5〜300である。この範囲であると、セメント強度向上がさらに良好となる。
【0164】
乳化分散体(ABC)の含有量(重量%)は、乳化分散体(ABC)及び粉体の合計重量に基づいて、1〜70が好ましく、さらに好ましくは10〜65、特に好ましくは20〜60である。この範囲であると、セメント強度向上がさらに良好となる。
【0165】
粉体の含有量(重量%)は、乳化分散体(ABC)及び粉体の合計重量に基づいて、30〜99が好ましく、さらに好ましくは35〜90、特に好ましくは40〜80である。この範囲であると、セメント強度向上がさらに良好となる。
【0166】
本発明のセメント強度向上剤は、セメント、水、充填材等と共にセメント組成物を構成することが好ましい。
【0167】
セメントとしては、ポルトランドセメント(普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント及び耐硫酸塩ポルトランドセメント等;JIS R5210:2003)、高炉セメント(JIS R5211:2003)、シリカセメント(JIS R5212−1997)及びフライアッシュセメント(JIS R5213−1997)等が挙げられる。これらのセメントは、一種又は二種以上の混合物として使用することができる。これらのうち、ポルトランドセメントが好ましく、さらに好ましくはAPI(American Petroleum Institute)規格におけるクラスG又はクラスHのセメントである。
【0168】
充填剤としては、骨材(骨材川砂、砕砂、硅砂、硅石粉、ワラストナイト、石灰石、マイカ、軽量骨材、シリカフューム、フライアッシュ、スラグ及びポゾラン等)、補強材(石綿、岩石綿、ガラス繊維、パルプ、故紙、ポリアミド繊維、ビニロン繊維及び炭素繊維等)、有機粒子(ポリスチレン粒子、ポリ塩化ビニリデン粒子、ポリエチレン粒子、ポリプロピレン粒子、クロロプレンゴムラテックス及びスチレンブタジエンゴムラテックス等)及び無機粒子(ガラスビーズ、シリカ及びシリカアルミナ等)等が挙げられる。これらの充填剤は、一種又は二種以上の混合物として使用することができる。これらのうち、セメント組成物の強度の観点から、骨材、有機粒子、無機粒子が好ましく、さらに好ましくは有機粒子、特に好ましくはポリプロピレン粒子及びスチレンブタジエンゴムラテックス、最も好ましくはポリプロピレン粒子である。
【0169】
セメント組成物には、必要に応じて、セメントと共に用いられている公知の添加剤(AE剤、AE減水剤、高性能減水剤、遅延剤、早強剤、促進剤、起泡剤、発泡剤、消泡剤、急結剤、膨張剤、増粘剤、防水剤及びベントナイト等)を添加でき、これらは単独又は混合して用いられてよい。これらの添加剤を含む場合、これらの添加量は通常の場合と同様である。
【0170】
本発明のセメント強度向上剤の使用量は、セメント組成物の組成、温度、濃度等により適宜増減することができるが、セメント及び充填材の重量に基づいて、0.01〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは0.05〜5重量%、特に好ましくは0.1〜2重量%である。
【実施例】
【0171】
実施例で使用した固状粒子(C)の体積平均粒子径は以下の方法で測定した。
<固状粒子(C)の体積平均粒子径>
固状粒子(C)の濃度が約0.1重量%となるようにn−ヘキサンを測定試料{セメント強度向上剤}に添加し、希釈してから、超音波分散機(Hiel−scher GmbH製、ULTRASONIC PROCESSOR MODELUP400S、以下同様である。)を用いて出力60%にて1分間分散して分散液を調製した。次いで分散液中の固状粒子(C)の体積平均粒子径をレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、Partica LA−950、以下同様である。)にて測定した。
【0172】
疎水性シリカのメタノール湿潤性(M値)は以下の方法で測定した。
<前処理>
測定試料に疎水性シリカ以外の成分が含まれている場合、疎水性シリカを分離する。
70mLガラス容器に測定試料5g、n−ヘキサンを30mL入れてスパーテルで混合し、ラボ用高速遠心機{Sigma Laborzentrifugen GmbH製、Model 3−16}にて遠心分離(4800rpmにて10分間)する。上澄み液を廃棄し、n−ヘキサンを30mL入れ、スパーテルで混合し、超音波分散機(Hiel−scher GmbH製、ULTRASONIC PROCESSOR MODELUP400S)を用いて出力60%にて1分間分散して、疎水性シリカ以外の成分をn−ヘキサンに溶解させた後、再度遠心分離(4800rpmにて10分間)し、上澄み液を廃棄し、80℃に加熱してn−ヘキサンを揮発させ、疎水性シリカを分離する。
【0173】
<M値の測定>
測定試料{疎水性シリカ}0.2gを容量250mLのビーカー中の50mLのイオン交換水に添加した。続いてビーカー内の液体をマグネティックスターラーで常時攪拌しながらメタノール(関東化学株式会社、試薬特級、以下同様である。)をビュレットからビーカーに壁を伝わせながら徐々に滴下した。測定試料の全量がイオン交換水に均一懸濁するまで、メタノールの滴下を続けた。測定試料の全量が均一懸濁された時点でのメタノールの滴下量(g)を記録し、下記式からM値を算出した。
【0174】

M値=(メタノールの滴下量)÷{(メタノールの滴下量)+50}×100
【0175】
<実施例1>
加熱、攪拌、冷却の可能な容器内で、脂肪酸エステル(a11){ラウリン酸メチル、エキセパールML−85、花王株式会社}45部と、脂肪酸エステル(a12){ソルビタンモノオレート、イオネットS−80、三洋化成工業株式会社}5部と、炭化水素油(b11){パラフィン系ニュートラルオイル、コスモSP−10、コスモ石油ルブリカンツ株式会社}36部と、ポリオキシアルキレン化合物(b301){ポリオキシエチレン(重合度:2)グリコールモノオレイルエーテル、ブラウノンEN−1502、青木油脂工業株式会社}2部と、ワックス(c31){酸化ポリエチレンワックス、エポレンE−10、イーストマンケミカルジャパン株式会社}12部と、合成樹脂(1){ポリメタクリル酸メチル、タフチック(登録商標)FH−S015、東洋紡株式会社}0.5部を、150℃で撹拌混合した後、30℃まで撹拌しながら冷却して混合液を得た。この混合液を、ステンレス製容器に移して、ホモジナイザー(ハイフレックスディスパーサーHG−92G、タイテック株式会社)にて4000rpmで攪拌することにより均質化処理して、本発明のセメント強度向上剤(1)を得た。
セメント強度向上剤(1)中の固状粒子(C)の体積平均粒子径は15μmであった。
【0176】
<実施例2>
「脂肪酸エステル(a11)45部」、「脂肪酸エステル(a12)5部」、「炭化水素油(b11)36部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b301)2部」、「ワックス(c31)12部」及び「合成樹脂(1)0.5部」を、「脂肪酸エステル(a13){ソルビタントリオレート、イオネットSー85、三洋化成工業株式会社}15部」、「脂肪酸エステル(a14){ナタネ油、日本オイリオグループ株式会社}60部」、「高級アルコール(b21){2−オクチルドデカノール、カルコール200GD、花王株式会社}10部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b302){ポリオキシエチレン(重合度:20)グリコールジオレイン酸エステル、イオネットDO−1000、三洋化成工業株式会社}5部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b303){ポリオキシプロピレン(重合度:40)モノブチルエーテル、ニューポール(登録商標)LB−1715、三洋化成工業株式会社}5部」及び「脂肪酸金属塩(c11){トリステアリン酸アルミニウム、アルミニウムステアレート900、日油株式会社}5部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明のセメント強度向上剤(2)を得た。
セメント強度向上剤(2)中の固状粒子(C)の体積平均粒子径は12μmであった。
【0177】
<実施例3>
「脂肪酸エステル(a11)45部」、「脂肪酸エステル(a12)5部」、「炭化水素油(b11)36部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b301)2部」、「ワックス(c31)12部」、「合成樹脂(1)0.5部」及び「150℃で」を、「脂肪酸エステル(a15){ミリスチン酸2−オクチルドデシル、エキセパールOD−M、花王株式会社}99部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b302)0.9部」、「疎水性シリカ(c41){疎水性シリカ、ニップシールSSー70、東ソー・シリカ株式会社}0.1部」及び「25〜30℃で」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明のセメント強度向上剤(3)を得た。
セメント強度向上剤(3)中の固状粒子(C)の体積平均粒子径は10μmであり、疎水性シリカ(c41)のM値は65であった。
【0178】
<実施例4>
「脂肪酸エステル(a11)45部」、「脂肪酸エステル(a12)5部」、「炭化水素油(b11)36部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b301)2部」、「ワックス(c31)12部」、「合成樹脂(1)0.5部」及び「150℃で」を、「脂肪酸エステル(a14)40部」、「高級アルコール(b22){ベヘニルアルコール、カルコール220−80、花王株式会社}20部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b304){ヒマシ油エチレンオキシド付加体、ブラウノンBR−404、青木油脂工業株式会社}15部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b305){ポリオキシエチレン(重合度:9)グリコールモノステアリン酸エステル、イオネットMS−400、三洋化成工業株式会社}10部」、「脂肪酸アミド(c21){エチレンビスオレイルアミド、アルフロー(登録商標)AD−281F、日油株式会社}5部」、「疎水性シリカ(c42){アエロジルRX−200、日本アエロジル株式会社}10部」及び「25〜30℃で」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明のセメント強度向上剤(4)を得た。
セメント強度向上剤(4)中の固状粒子(C)の体積平均粒子径は1μmであった。疎水性シリカ(c42)のM値は70であった。
【0179】
<実施例5>
「脂肪酸エステル(a11)45部」、「脂肪酸エステル(a12)5部」、「炭化水素油(b11)36部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b301)2部」、「ワックス(c31)12部」及び「合成樹脂(1)0.5部」を、「脂肪酸エステル(a14)94.8部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b306){ポリオキシエチレン(重合度:4)グリコールジラウリン酸エステル、イオネットDL−200、三洋化成工業株式会社}5部」、「脂肪酸アミド(c21)0.2部」及び「シリコーンオイル{変性シリコーンオイル、X22−4515、信越化学工業株式会社}5部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明のセメント強度向上剤(5)を得た。
セメント強度向上剤(5)中の固状粒子(C)の体積平均粒子径は10μmであった。
【0180】
<実施例6>
加熱、攪拌、冷却の可能な容器内で、脂肪酸エステル(a12)5部、炭化水素油(b12){鉱物油、コスモSC22、コスモ石油ルブリカンツ株式会社20部、脂肪酸アミド(c22){エチレンビスステアリルアミド、アルフロー(登録商標)H−50S、日油株式会社}5部、疎水性シリカ(c42)5部及び乳化剤{ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、テイカパワー(登録商標)BC−2070M、テイカ株式会社}2.5部を加熱攪拌しながら140℃まで昇温し、この温度にてさらに15分間加熱攪拌を続けてアミド溶解液を得た。
【0181】
次いで、脂肪酸エステル(a14)65部を20〜30℃にて攪拌しながら、これにアミド溶解液を少量ずつ投入し、15分間攪拌して混合液を得た。アミド溶解液の投入中及び投入後の混合液の温度は25〜75℃であった。25℃に冷却した混合液をゴーリンホモジナイザー(マントンゴーリン社製)を用いて3500psi(24.1MPa)にて均一混合処理して、本発明のセメント強度向上剤(6)を得た。均一混合の処理中及び処理後の温度は25〜40℃であった。
セメント強度向上剤(6)中の固状粒子(C)の体積平均粒子径は2μmであった。
【0182】
<実施例7>
加熱、冷却、滴下及び攪拌が可能な耐圧反応容器内で、ステアリン酸{試薬特級、和光純薬工業株式会社}1モル部(284部)、水酸化カリウム{試薬特級、和光純薬工業株式会社}0.9部を均一混合した後、加圧窒素置換しながら100℃に昇温した。その後、減圧下(0.013MPa以下;以下同じである。)で1時間脱水し、150℃に昇温した後、この温度でエチレンオキシド(EO)2モル部(88部)を0.2MPa以下に保ちつつ滴下し、さらに4時間同温度で撹拌した。次いで90℃に冷却し、イオン交換水9.3部(原料の合計の2.5重量%;以下同じである。)を加えた後、アルカリ吸着剤(1){キョーワード(登録商標)600、協和化学工業株式会社}18.6部(原料の合計の5重量%;以下同じである。)を加え、同温度にて1時間撹拌して、水酸化カリウムをアルカリ吸着剤(1)に吸着させた。次いで、同温度で、ヌッチェ、吸引瓶及びNo.2濾紙{東洋濾紙株式会社}を用いてアルカリ吸着剤(1)をろ別した{以下、イオン交換水、アルカリ吸着剤(1)を加え、撹拌した後、アルカリ吸着剤(1)をろ別した操作を「アルカリ吸着処理」と略する。}。得られたろ液を減圧下120℃にて脱水処理して、ポリオキシアルキレン化合物(b307)[ポリオキシエチレン(重合度:2)グリコールステアリン酸モノエステル]を得た。
【0183】
「脂肪酸エステル(a11)45部」、「脂肪酸エステル(a12)5部」、「炭化水素油(b11)36部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b301)2部」、「ワックス(c31)12部」及び「合成樹脂(1)0.5部」を、「脂肪酸エステル(a11)71部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b302)5部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b307)20部」、「脂肪酸金属塩(c11)2部」及び「脂肪酸アミド(c21)2部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、混合液を得た。この混合液を、粒径0.7mmのジルコニアビーズ100mlを充填した湿式媒体型粉砕機{DISPERMAT SL−C−12(VMA−GETAMANN GMBH社製、以下同様}にてローター回転数1000rpmにて5分間破砕処理して、本発明のセメント強度向上剤(7)を得た。
セメント強度向上剤(7)中の固状粒子(C)の体積平均粒子径は6μmであった。
【0184】
<実施例8>
「脂肪酸エステル(a11)45部」、「脂肪酸エステル(a12)5部」、「炭化水素油(b11)36部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b301)2部」、「ワックス(c31)12部」及び「合成樹脂(1)0.5部」を、「脂肪酸エステル(a11)10部」、「脂肪酸エステル(a16){ソルビタンセスキオレート、レオドールAO−15V、花王株式会社}75部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b302)10部」、「脂肪酸金属塩(c11)2部」及び「脂肪酸アミド(c22)3部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明のセメント強度向上剤(8)を得た。
セメント強度向上剤(8)中の固状粒子(C)の体積平均粒子径は14μmであった。
【0185】
<実施例9>
加熱、冷却及び撹拌可能な脱水冷却装置付きの反応容器内で、ポリオキシアルキンレン化合物(b301){ポリオキシエチレン(重合度:2)グリコールモノオレイルエーテル、ブラウノンEN−1502、青木油脂工業株式会社}1モル部(268.5部)、ステアリン酸{試薬1級、和光純薬工業株式会社}284部(1モル部)及びパラトルエンスルホン酸{試薬特級、和光純薬工業株式会社}8.6部(0.05モル部)を均一混合して混合液を調製してから、反応容器内を窒素置換した後、混合液の温度を130℃に昇温し、生成する水を除去しながら20時間反応を行い、反応物を得た。そして、この反応物にアルカリ吸着剤(2){酸化マグネシウム、キョーワード100、協和化学工業株式会社}172部を添加して、100℃で1時間攪拌処理した後、減圧濾過により、アルカリ除去剤を除去して、ポリオキシアルキレン化合物(b308){ポリオキシエチレン(重合度:2)グリコールモノオレイルエーテルのステアリン酸エステル}を得た。
【0186】
「脂肪酸エステル(a11)45部」、「脂肪酸エステル(a12)5部」、「炭化水素油(b11)36部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b301)2部」、「ワックス(c31)12部」及び「合成樹脂(1)0.5部」を、「脂肪酸エステル(a17){コーン油、日清オイリオグループ株式会社90部}」、「ポリオキシアルキレン化合物(b308)9.5部」、「ワックス(c32){カルナバワックス、精製微粒状カルナバS、東亜化成株式会社}0.5部」及び「合成樹脂(2){ポリカプロラクトン、プラクセル(登録商標)H1P、ダイセル化学工業株式会社}0.5部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明のセメント強度向上剤(9)を得た。
セメント強度向上剤(9)中の固状粒子(C)の体積平均粒子径は13μmであった。
【0187】
<実施例10>
加熱、冷却、滴下及び攪拌が可能な耐圧反応容器内で、グリセリン{試薬特級、和光純薬工業株式会社}1モル部(92部)、水酸化カリウム{試薬特級、和光純薬工業株式会社}0.5部を均一混合した後、加圧窒素置換しながら100℃に昇温した。その後、減圧下(0.013MPa以下)で1時間脱水し、150℃に昇温した後、この温度でエチレンオキシド(EO)3モル部(132部)を0.4MPa以下に保ちつつ滴下し、さらに4時間同温度で撹拌した。次いで90℃に冷却し、イオン交換水4.5部を加えた後、「アルカリ吸着処理」した。得られたろ液を減圧下120℃にて脱水処理して、ポリオキシアルキレン化合物(b309){グリセリンエチレンオキシド3モル付加物}を得た。
【0188】
加熱、冷却及び撹拌可能な脱水冷却装置付きの反応容器内で、ポリオキシアルキンレン化合物(b309)1モル部(224部)、オレイン酸{試薬1級、和光純薬工業株式会社}283部(1モル部)及びパラトルエンスルホン酸{試薬特級、和光純薬工業株式会社}8.6部(0.05モル部)を均一混合して混合液を調製してから、反応容器内を窒素置換した後、混合液の温度を130℃に昇温し、生成する水を除去しながら20時間反応を行い反応物を得た。そして、この反応物にアルカリ吸着剤(2){酸化マグネシウム、キョーワード100、協和化学工業株式会社}172部を添加して、100℃で1時間攪拌処理した後、減圧濾過により、アルカリ吸着剤(2)を除去して、ポリオキシアルキレン化合物(b310){グリセリンエチレンオキシド3モル付加物のモノオレイン酸エステル}を得た。
【0189】
「脂肪酸エステル(a11)45部」、「脂肪酸エステル(a12)5部」、「炭化水素油(b11)36部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b301)2部」、「ワックス(c31)12部」及び「合成樹脂(1)0.5部」を、「脂肪酸エステル(a18){グリセリンモノオレート、エキセルO−95R、花王株式会社}32部」、「脂肪酸エステル(a12)8部」、「炭化水素油(b12)37部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b302)5部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b310)5部」、「脂肪酸金属塩(c12)5部」、「疎水性シリカ(c41)8部」及び「合成樹脂(3){ポリ乳酸、テラマック(登録商標)TE−2000、ユニチカ株式会社}1部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明のセメント強度向上剤(10)を得た。
セメント強度向上剤(10)中の固状粒子(C)の体積平均粒子径は10μmであった。
【0190】
<実施例11>
「脂肪酸エステル(a11)45部」、「脂肪酸エステル(a12)5部」、「炭化水素油(b11)36部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b301)2部」、「ワックス(c31)12部」及び「合成樹脂(1)0.5部」を、「脂肪酸エステル(a17)70部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b310)15部」、「脂肪酸金属塩(c12)5部」、「脂肪酸アミド(c22)2部」、及び「疎水性シリカ(c41)8部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明のセメント強度向上剤(11)を得た。
セメント強度向上剤(11)中の固状粒子(C)の体積平均粒子径は12μmであった。
【0191】
<実施例12>
加熱、冷却及び撹拌可能な脱水冷却装置付きの反応容器内で、ポリオキシアルキンレン化合物(b310)1モル部(224部)、オレイン酸2モル部(565部)及びパラトルエンスルホン酸{試薬特級、和光純薬工業株式会社}8.6部(0.05モル部)を均一混合して混合液を調製してから、反応容器内を窒素置換した後、混合液の温度を130℃に昇温し、生成する水を除去しながら20時間反応を行い反応物を得た。そして、この反応物にアルカリ吸着剤(2)172部を添加して、100℃で1時間攪拌処理した後、減圧濾過により、アルカリ吸着剤(2)を除去して、ポリオキシアルキレン化合物(b311){グリセリンエチレンオキシド3モル付加物のトリオレイン酸エステル}を得た。
【0192】
「脂肪酸エステル(a11)45部」、「脂肪酸エステル(a12)5部」、「炭化水素油(b11)36部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b301)2部」、「ワックス(c31)12部」及び「合成樹脂(1)0.5部」を、「脂肪酸エステル(a17)60部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b302)3部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b311)34部」及び「脂肪酸アミド(c23){エルカ酸モノアミド、アルフローP−10、日油株式会社}3部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして、本発明のセメント強度向上剤(12)を得た。
セメント強度向上剤(12)中の固状粒子(C)の体積平均粒子径は23μmであった。
【0193】
<実施例13>
加熱、攪拌の可能な容器内に、脂肪酸エステル(a11)85部、炭化水素油(b12)8部及びシリカ(c−a1){沈降法シリカ、Nipsil(登録商標)VN−3、東ソー・シリカ株式会社}4.9部を投入し、低速撹拌(750rpm)しながら、25℃で、親油性化合物(c−b1){シリコーンレジン、SR−2400、東レダウコーニング株式会社}2.1部を投入した。次いで、150℃に加熱し、ホモジナイザー(ハイフレックスディスパーサーHG−92G、タイテック株式会社)で4000rpmにて3時間撹拌して、シリカ(c−a1)と親油性化合物(c−b1)を反応させて疎水性シリカ(c43)を調製すると共に、疎水性シリカ(c43)を含む本発明のセメント強度向上剤(13)を得た。
セメント強度向上剤(13)中の固状粒子(C)の体積平均粒子径は18μmであり、疎水性シリカ(c43)のM値は70であった。
【0194】
<実施例14>
「脂肪酸エステル(a11)85部」、「炭化水素油(b12)8部」、「シリカ(c−a1)4.9部」及び「親油性化合物(c−b1)2.1部」を、「脂肪酸エステル(a15)42部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b306)50部」、「シリカ(c−a2){沈降法シリカ、Nipsil KQ、東ソー・シリカ株式会社}7.6部」及び「親油性化合物(c−b2){ポリジメチルシロキサン、KF−96−3000CS、信越化学工業株式会社}0.4部」に変更したこと以外、実施例13と同様にして、疎水性シリカ(c44)の分散液を得た。この分散液を、粒径0.7mmのジルコニアビーズ100mlを充填した湿式媒体型粉砕機にてローター回転数1000rpmにて5分間破砕処理して、本発明のセメント強度向上剤(14)を得た。
セメント強度向上剤(14)中の固状粒子(C)の体積平均粒子径は10μmであり、疎水性シリカ(c44)のM値は40であった。
【0195】
<実施例15>
「脂肪酸エステル(a11)85部」、「炭化水素油(b12)8部」、「シリカ(c−a1)4.9部」及び「親油性化合物(c−b1)2.1部」を、「脂肪酸エステル(a19){大豆油、日清オイリオグループ株式会社}58部」、「脂肪酸エステル(a12)5部」、「炭化水素油(b12)25部」、「ポリオキシアルキレン化合物(b305)5部」、「シリカ(c−a1)4.6部」及び「親油性化合物(c−b1)2.4部」に変更したこと以外、実施例13と同様にして、疎水性シリカ(c45)の分散液を得た。次いで、撹拌可能な容器に、この分散液、「乳化剤{ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム}3部」を投入し、25〜30℃で30分間撹拌して分散液を得た。この分散液を、粒径0.7mmのジルコニアビーズ100mlを充填した湿式媒体型粉砕機にてローター回転数4000rpmにて60分間破砕処理して、本発明のセメント強度向上剤(15)を得た。
セメント強度向上剤(15)中の固状粒子(C)の体積平均粒子径は0.2μmであり、疎水性シリカ(c45)のM値は80であった。
【0196】
<実施例16>
「脂肪酸エステル(a11)85部」、「炭化水素油(b12)8部」、「シリカ(c−a1)4.9部」及び「親油性化合物(c−b1)2.1部」を、「脂肪酸エステル(a11)49.5部」、「シリカ(c−a1)0.35部」及び「親油性化合物(c−b2)0.15部」に変更したこと以外、実施例13と同様にして、疎水性シリカ(c46)の分散液を得た。この分散液を、粒径0.7mmのジルコニアビーズ100mlを充填した湿式媒体型粉砕機にてローター回転数4000rpmにて120分間破砕処理して、破砕液を得た。この破砕液50部と実施例12で得たセメント強度向上剤(12)50部とを均一混合して、本発明のセメント強度向上剤(16)を得た。
セメント強度向上剤(16)中の固状粒子(C)の体積平均粒子径は0.1μmであり、疎水性シリカ(c46)のM値は70であった。
【0197】
<比較例1>
越前瓦(株式会社セラミカ)をジョークラッシャー(JCA−100、株式会社マキノ)で粉砕した後、ロールクラッシャー(MRCA−0 株式会社マキノ)で粉砕し、さらにボールミル(LP−M2 株式会社 伊藤製作所)で粉砕し、0.075mmの網篩でふるい分け、粒径0.075mm以下の微粉末(密度2.62g/cm)とすることにより、比較用のセメント強度向上剤(H1)を得た。
【0198】
実施例で得たセメント強度向上剤(1)〜(16)及び比較用のセメント強度向上剤(H1)を用いて、以下の方法でセメント組成物を調製し、圧縮強度を測定し、これらの結果を表4〜6に示した。
【0199】
<セメント組成物の調整>
表1〜3に示す配合成分のうち、減水剤及び水以外の成分の所定量をモルタルミキサー{型式:C138A−486、株式会社丸東製作所}を用いて10秒間空練りした後、減水剤及び水を表1〜3の配合量で加えて、3分間混練して評価用のセメント組成物を得た。
また、セメント強度向上剤を加えず、上記と同様にして、ブランクのセメント組成物を得た。
【0200】
<圧縮強度の評価>
セメント組成物(実施例1〜16、比較例1及びブランク)を、直径50mm×高さ100mmの筒型枠に入れて、水が蒸発しないようにビニール袋で密封し、成型硬化させた。
「JIS A1108:2006(コンクリートの圧縮強度試験方法);ISO1920−4:2005に対応する。」に準じて、1日後及び28日後の時点における20℃の室内における密封状態での圧縮強度を測定した。
【0201】
【表1】
【0202】
表1において、配合成分は、以下のものを使用した。
セメント:普通ポルトランドセメント、太平洋セメント株式会社
充填材 :珪砂6号(愛知県八草地区乾燥珪砂)
減水剤 :三洋レベロン(登録商標)PHL、三洋化成工業株式会社
増粘剤 :メチルセルロース(90SH−30000)、信越化学工業株式会社
【0203】
【表2】
【0204】
表2において、配合成分は、以下のものを使用した。
セメント:クラスGセメント(OWC)、宇部三菱マテリアル株式会社
充填材 :スチレンブタジエンラテックス(A−3255)
旭化成ケミカルズ株式会社
減水剤 :三洋レベロンPHL、三洋化成工業株式会社
増粘剤 :メチルセルロース(90SH−30000)、信越化学工業株式会社
【0205】
【表3】
【0206】
表3において、配合成分は、以下のものを使用した。
セメント:クラスGセメント(OWC)宇部三菱セメント株式会社
充填材 :ポリプロピレン粒子(フローブレン(登録商標) Q9A379)
住友精化株式会社
減水剤 :三洋レベロンPHL、三洋化成工業株式会社
増粘剤 :メチルセルロース(90SH−30000)、信越化学工業株式会社
【0207】
【表4】
【0208】
【表5】
【0209】
【表6】
【0210】
本発明のセメント強度向上剤(1)〜(16)を用いると、比較用セメント強度向上剤(H1)を用いた場合やブランクに比べて、セメント組成物の硬化後の圧縮強度が高かった。すなわち、本発明のセメント強度向上剤は、比較用のセメント強度向上剤に比較して、ブランクの圧縮強度を大きく向上できた。