(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-174927(P2015-174927A)
(43)【公開日】2015年10月5日
(54)【発明の名称】発泡体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/10 20060101AFI20150908BHJP
【FI】
C08J9/10CEW
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-52897(P2014-52897)
(22)【出願日】2014年3月17日
(71)【出願人】
【識別番号】594060831
【氏名又は名称】三福工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】特許業務法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上杉 壮慶
(72)【発明者】
【氏名】監物 孝明
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA39A
4F074AC02
4F074AD08
4F074BA13
4F074BB02
4F074BB27
4F074CA21
4F074CC42Y
4F074DA02
4F074DA03
4F074DA39
(57)【要約】
【課題】 本発明は、耐熱性、耐油性に加えて耐薬品性にも優れたテトラフルオロエチレンと、パーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるフッ素系ゴムを用いた発泡体及びその製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】 本発明に係る発泡体は、テトラフルオロエチレンと、パーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるフッ素系ゴムを用いた発泡体であって、比重が0.1〜0.5の範囲内で、平均気泡径が100μm以下の気泡を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラフルオロエチレンと、パーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるフッ素系ゴムを用いた発泡体であって、
比重が0.1〜0.5の範囲内で、平均気泡径が100μm以下の気泡を有することを特徴とする発泡体。
【請求項2】
請求項1に記載の発泡体の製造方法であって、
テトラフルオロエチレンと、パーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体100重量部に対して、熱分解型発泡剤0.5重量部〜10重量部と、パーオキサイド系架橋剤0.1重量部〜5重量部とを配合してなることを特徴とする発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程、自動車部品製造工程、パーソナルコンピュータやモバイル機器等の製造プロセス、複写機やプリンター等のOA(Office Automation)機器等の分野で幅広く使用されている耐熱性、耐薬品性、耐油性等に優れたフッ素系ゴムを用いた発泡体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、耐熱性の優れたゴム発泡体として、シリコーン系ゴム発泡体やフッ素系ゴム発泡体がある。フッ素系のゴム発泡体は、耐熱性とともに耐薬品性も優れていることから、薬液の容器のシール材や、半導体製造工程における部品のシール材として使用されている。
【0003】
従来、フッ素系ゴム発泡体に使用されているフッ素系ゴムは、ビニリデンフルオライド(VDF;Vinylidene fluoride)とヘキサフルオロプロピレン(HEP;Hexafluoropropylene)を共重合した二元系フッ素系ゴムや、更にテトラフルオロエチレン(TFE;Tetrafluoroethylene)を共重合させた三元系フッ素系ゴム(FKM)を用いたものである(特許文献1参照)。また、従来のフッ素系ゴム発泡体の製造方法が特許文献2にも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−278335号公報
【特許文献2】特開2005−146030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来から使用されているフッ素系ゴムを用いた発泡体は、フッ素系ゴムにフッ化ビニリデン系ゴムが主に使用されており、他のゴム系発泡体と比較すれば、耐熱性、耐油性は、優れているものの、耐薬品性に関しては、特に、Oリングやガスケットの用途として用いる場合、寿命が短く、さらなる改善が望まれている。
【0006】
本発明者らは、従来のフッ素系ゴムを用いた発泡体の耐薬品性を更に改善し、耐プラズマ性も付与したフッ素系ゴムを用いた発泡体の研究を進めた結果、テトラフルオロエチレンと、パーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるフッ素系ゴムを用いた発泡体を得ることに成功したものである。
【0007】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、耐熱性、耐油性に加えて耐薬品性にも優れた発泡体及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための本発明に係る発泡体は、テトラフルオロエチレンと、パーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるフッ素系ゴムを用いた発泡体であって、比重が0.1〜0.5の範囲内で、平均気泡径が100μm以下の気泡を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る発泡体の製造方法は、前記発泡体の製造方法であって、テトラフルオロエチレンと、パーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体100重量部に対して、熱分解型発泡剤0.5重量部〜10重量部と、パーオキサイド系架橋剤0.1重量部〜5重量部とを配合してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る発泡体によれば、耐熱性、耐油性に加えて耐薬品性と耐プラズマ性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る発泡体の浸漬試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図により本発明に係る発泡体及びその製造方法の一実施形態を具体的に説明する。
【0013】
本実施形態の発泡体は、テトラフルオロエチレンと、パーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるフッ素系ゴムを用いた発泡体であって、比重が0.1〜0.5の範囲内で、平均気泡径が100μm以下の気泡を有する。発泡体の製造方法としては、テトラフルオロエチレンと、パーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体100重量部に対して、熱分解型発泡剤0.5重量部〜10重量部と、パーオキサイド系架橋剤0.1重量部〜5重量部とを配合して製造する。
【0014】
本実施形態で使用する熱分解型発泡剤としては、好ましくは、アゾジカルボンアミドがある。更に、アゾジカルボンアミドと同等もしくはそれより高い分解温度を有するヒドラゾシカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム塩、ジニトロソペンタエチレンテトラミン、ニトロソグアニジン、p,p'−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジド、トリヒドラジンシンメトリックトリアジン、ビスベンゼンスルホニルヒドラジド、バリウムアゾジカルバキシレート、アゾビスイソブチロニトリル、トルエンスルホニルヒドラジド等が用いられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0015】
熱分解型発泡剤の配合量は、前述のフッ素系ゴム組成物中のテトラフルオロエチレンと、パーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるフッ素系ゴム100質量部に対して、熱分解型発泡剤0.5質量部〜10質量部程度であり、所望の発泡倍率に応じて設定される。
【0016】
本実施形態において用いられるパーオキサイド系架橋剤には、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス−ターシャリーブチルパーオキシヘキサン、1,3−ビス−ターシャリーパーオキシ−イソプロピルベンゼン等の有機過酸化物等を使用することができる。
【0017】
前記パーオキサイド系架橋剤の配合量は、前述のフッ素系ゴム組成物中のテトラフルオロエチレンと、パーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるフッ素系ゴム100重量部に対して、パーオキサイド系架橋剤0.1重量部〜5重量部である。パーオキサイド系架橋剤が0.1重量部未満では、所望の効果が出難く、また、パーオキサイド系架橋剤が5重量部を超えると、発泡時に亀裂や粗大気泡が発生し易くなるので好ましくない。
【0018】
本実施形態において、架橋反応を効率的に行なわせるために、架橋助剤として、多官能性モノマーを併用することができる。多官能性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、エチルビニルベンゼン等を使用することができる。これらの多官能性モノマーは、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。架橋助剤の添加量は、前述のフッ素系ゴム組成物中のテトラフルオロエチレンと、パーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるフッ素系ゴム100重量部に対して、0.1重量部〜5重量部の範囲内で用いるのが好ましい。
【0019】
本実施形態においては、用途や必要に応じて、カーボンブラックや酸化チタン、シリカ、クレー等の充填剤や、可塑剤として液状フッ化ゴム、セバシン酸ジオクチル、リン酸トリクレジルエステル等を任意に添加することが出来る。
【0020】
本実施形態の製造方法により得られた発泡体について、耐薬品性の評価を行い、比較例1として従来のフッ素系ゴム発泡体の一例として三福工業株式会社製の「DF700(商品名)」と比較した浸漬試験結果を
図1に示す。耐薬品性の評価方法は、発泡体として縦が50mm×横が20mm×厚みが3.5mmの試験片を準備し、薬品としてメチルエチルケトン(MEK;Methyl ethyl ketone)溶液を使用してステンレス製の容器にメチルエチルケトン溶液を注ぎ、発泡体の試験片を投入して、室温(常温)で200時間浸漬後、試験片を取り出して寸法と重量を測定し、浸漬前の数値と比較して体積変化率と重量変化率とから良否判定を行った。
【0021】
[比較例1]
比較例1として従来のフッ素系ゴム発泡体の一例として三福工業株式会社製の「DF700(商品名)」の配合及び製造方法は以下の通りである。フッ素ゴム(ダイキン工業株式会社製の「G−702(商品名)」)を100重量部、MT(Medium Thermal)カーボンブラック(CANCARB Ltd製の「Thermax N−990(商品名)」)を20重量部、酸化マグネシウム(協和化学工業株式会社製の「キョーワマグMA−150(商品名)」)を3重量部、水酸化カルシウム(近江化学工業株式会社製の「CALDIC−2000(商品名)」)を6重量部、熱膨張性のマイクロカプセル(松本油脂製薬株式会社製の「マツモトマイクロスフェア−F−30(商品名)」)を5重量部、アゾジカルボンアミド(三協化成株式会社製の「セルマイクCAP−250(商品名)」)を4重量部からなる組成物をロール温度35℃以下の水冷式のオープンロールにより混練し、160℃に加熱されたプレス内金型に上記混和物を充填して20分間の加圧下で加熱して発泡体を得たものである。
【実施例1】
【0022】
テトラフルオロエチレンと、パーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体であるダイキン工業株式会社製の「GA−15(商品名)」100gに、熱分解型発泡剤としてアゾジカルボニルアミド(三協化学株式会社製の「セルマイクCAP250(商品名)」)1.5g、パーオキサイド系架橋剤として日本油脂株式会社製の「パーブチルP(商品名)」0.15g、架橋助剤として日本化成株式会社製の「TMAIC(商品名)」0.15g、カーボンブラック(旭カーボン株式会社製の「旭60(商品名)」)1gを8吋(インチ)オープンロールにて混合し、プレスにて、140℃の温度で10分間加圧し、更に160℃のオーブンにて5分間加熱して発泡体を得た。発泡体の密度を測定したところ、0.42g/cm
3であった。耐薬品性については、
図1に示したように、比較例1のフッ素系発泡体(三福工業株式会社製の「DF700(商品名)」)よりも優れていた。
【実施例2】
【0023】
前記実施例1において、前記熱分解型発泡剤としてアゾジカルボニルアミド(三協化学株式会社製の「セルマイクCAP250(商品名)」)1.5gを3gに変更した以外は、前記実施例1と同一の配合と同一の条件にて、発泡体を得た。発泡体の密度を測定したところ、0.25g/cm
3であった。
【0024】
[比較例2]
前記実施例1において、前記熱分解型発泡剤としてアゾジカルボニルアミド(三協化学株式会社製の「セルマイクCAP250(商品名)」)1.5gを12gに変更した以外は、前記実施例1と同一の配合と同一の条件にて、発泡体を得ようとしたが、発泡体の表面から脱泡してしまい、良好な発泡体を得ることが出来なった。
【0025】
[比較例3]
テトラフルオロエチレンと、パーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるフッ素系ゴムとして、フッ化ビニリデン系のダイキン工業株式会社製の「G801(商品名)」を用いた以外は、前記実施例1と同様にして発泡体を得た。本比較例3においても前記比較例2と同様に、前記実施例1と同一の配合と同一の条件にて、発泡体を得ようとしたが、発泡体の表面から脱泡してしまい、良好な発泡体を得ることが出来なった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によって得られるテトラフルオロエチレンと、パーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体からなるフッ素系ゴムを用いた発泡体は、耐熱性だけでなく、耐薬品性、特にエステルやケトン系薬品に対する耐久性が優れたものとなっていることから、シール材やパッキン用途として有効である。