【課題】100℃以下の低温で硬化させた場合でも、金属部材とプラスチック部材との双方に対して、優れた付着性及び耐食性等を示す塗膜を形成できる塗料組成物及びその塗装方法を提供する。
【解決手段】主剤と硬化剤とを含有する2液混合形塗料組成物であって、(A)水酸基価が60〜100mgKOH/gのアクリル樹脂、(B)イソシアネート化合物、(C)ビスフェノールA型のエポキシ樹脂及び(D)シランカップリング剤を含み、主剤としては少なくとも前記(A)成分を含み、硬化剤としては少なくとも前記(B)成分を含むことを特徴とする2液混合形塗料組成物、並びにこれを用いた複合部材の塗装方法及び塗装基材である。
前記アクリル樹脂(A)は、重量平均分子量が5000〜15000の範囲内であり、かつ分子内にヒンダードアミン構造を有することを特徴とする請求項1記載の2液混合形塗料組成物。
前記イソシアネート化合物(B)が、分子内にイソシアヌレート結合を有する化合物又はジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加体(トリメチロールプロパンのアダクト体)のいずれか一方を少なくとも有することを特徴とする請求項1又は2記載の2液混合形塗料組成物。
金属部材とプラスチック部材とが一体的に組み合わされた複合部材の表面に、請求項1〜4のいずれかに記載の2液混合形塗料組成物を65〜100℃で焼付硬化させることを特徴とする複合部材の塗装方法。
前記金属部材が鉄であり、前記プラスチック部材がABS、ポリプロピレン又はポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾールであることを特徴とする請求項5又は6記載の複合部材の塗装方法。
前記金属部材がリン酸亜鉛処理された鉄であり、前記プラスチック部材がABS、ポリプロピレン又はポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾールであることを特徴とする請求項5及び6に記載の複合部材の塗装方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの記載に限定されるものではなく、以下の例示以外についても、本発明の主旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
【0018】
本発明の2液混合形塗料組成物は、主剤と硬化剤とを含有し、水酸基価が60〜100mgKOH/gのアクリル樹脂(A)、イソシアネート化合物(B)、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂(C)及びシランカップリング剤(D)を含む。このうち、主剤としては少なくとも前記(A)成分を含み、硬化剤としては少なくとも前記(B)成分を含むことを特徴とする。なお、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂(C)及びシランカップリング剤(D)については、主剤、硬化剤どちらにも配合することができるが、主剤に配合することが好ましい。
【0019】
本発明の2液混合形塗料組成物の他の好適例については、前記アクリル樹脂(A)が重量平均分子量5000〜15000を有し、かつ分子内にヒンダードアミン構造を有する。
【0020】
本発明の2液混合形塗料組成物の他の好適例については、前記イソシアネート化合物(B)が、イソシアヌレート結合を有する化合物又はジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加体(トリメチロールプロパンのアダクト体)を有する。
【0021】
本発明の2液混合形塗料組成物の他の好適例については、前記シランカップリング剤が、エポキシ基を有する。
【0022】
<アクリル樹脂(A)>
本発明で使用されるアクリル樹脂(A)は、水酸基価が60〜100mgKOH/gであることが必須である。上記範囲の水酸基価を有するアクリル樹脂を用いることにより、水酸基が後述のイソシアネート化合物と効率的に反応し、塗膜の架橋密度を高めることが可能となる。水酸基価が60mgKOH/g未満であると、塗膜の架橋密度が低下し、逆に100mgKOH/gを超えると、耐水性及び耐湿性が低下する。
【0023】
また、このアクリル樹脂(A)は、重量平均分子量5000〜15000を有することが好ましい。5000未満であると、金属基材、プラスチック基材や導電プライマー層との付着性が悪くなる傾向があり、一方で、15000を超えると、塗料の粘度が高くなる傾向があり、塗装性が悪くなる場合がある。
【0024】
更に、本発明で使用されるアクリル樹脂(A)は、重量平均分子量5000〜15000を有し、かつ分子内にヒンダードアミン構造を有していることが好ましい。このようなアクリル樹脂を含む場合、耐候性が長期にわたり良好となる。このようなアクリル樹脂としては、例えば、日本触媒製のユータブルS−2000シリーズなどの商品が挙げられる。ここで、ヒンダードアミン構造とは、一般的には、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン又はその誘導体を含む構造を有するものである。
【0025】
尚、本発明のアクリル樹脂(A)については、1種類だけでもよいし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0026】
本発明のアクリル樹脂(A)は、2液混合形塗料固形分に対して、15〜75質量%含まれることが好ましい。ここで、塗料固形分とは、塗膜形成時に塗膜中に残存する成分を指す。
【0027】
<イソシアネート化合物(B)>
本発明においてイソシアネート化合物(B)とは、分子内にイソシアネート基を有する化合物を指し、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートのようなイソシアネートモノマーと呼ばれる化合物や、これらのビュレット体、イソシアヌレート体、トリメチロールプロパンのアダクト体のようなポリイソシアネート誘導体が挙げられる。
【0028】
ここで、ビウレット結合を有するイソシアネートとは、一般式R
1-NH-CO-N(R
2)-CO-NH-R
3で表される分子構造を有するイソシアネートであり、R
1、R
2、R
3はそれぞれイソシアネート含有基(-R
4-NCO)を示す。ここで、R
4はアルキル、アリールなどの炭化水素構造が挙げられる。一般的なビウレット結合を有するイソシアネートとしては、R
1、R
2、R
3がすべて-(CH
2)
6-NCOであるヘキサメチレンジイソシアネート系のビウレット型プレポリマーが挙げられる。ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット型プレポリマーの市販品としては、例えば、デュラネート24A−100(旭化成工業株式会社製)、デュラネート22A−75PX(旭化成工業株式会社製)、デスモジュールN3200(住友バイエルウレタン株式会社製)などが挙げられる。
【0029】
また、イソシアヌレートとは、ジイソシアネートの三量化反応で得られるものであり、環状構造を有するものであり、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量化反応で得られるヘキサメチレンジイソシアネート系イソシアヌレート型プレポリマーが挙げられる。ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型プレポリマーの市販品としては、例えば、デュラネートTKA−100(旭化成工業株式会社製)、デュラネートTPA−100(旭化成工業株式会社製)、スミジュールN3300(住友バイエルウレタン株式会社製)などが挙げられる。
【0030】
さらに、トリメチロールプロパンのアダクト体とは、ジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加体を指し、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト型プレポリマーとしては、デュラネートP−301−75E(旭化成工業株式会社製)、スミジュールHT(住友バイエルウレタン株式会社製)などの市販品が存在し、イソホロンジイソシアネートのアダクト型プレポリマーとしては、タケネート D−140N(三井武田ケミカル製)などの市販品が存在する。
【0031】
本発明のイソシアネート化合物(B)については、上記のうち、特に分子内にイソシアヌレート結合を有する化合物又はジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加体(トリメチロールプロパンのアダクト体)を有することが好ましい。このようなイソシアネート化合物を用いた場合、これを用いて得られる塗膜の耐候性及び可とう性が良好である。尚、本発明のイソシアネート化合物(B)については、1種類だけでもよいし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0032】
本発明の2液混合形塗料組成物において、アクリル樹脂由来の水酸基の濃度(OHモル%)とイソシアネート基の濃度(NCOモル%)の比(NCOモル%/OHモル%)が、0.8〜1.2になるように、イソシアネート化合物(B)の含有量を調整することが好ましい。この範囲に調整した場合、未反応の水酸基やイソシアネート基が少なくなるため、良好な耐水性、膜硬度が得られる。
【0033】
<ビスフェノールA型のエポキシ樹脂(C)>
本発明のエポキシ樹脂(C)は、プラスチック基材への付着性を保持しつつ、金属基材への付着性を向上させるために配合されるものである。また、本発明のエポキシ樹脂(C)は、塗膜を形成する際に、アクリルポリオールなどの水酸基とも一部反応する。
本発明のビスフェノールA型のエポキシ樹脂(C)とは、分子内にビスフェノールA骨格を有するエポキシ樹脂を指し、これらの構造を有するものであれば、特に制限なく使用することができる。本発明のビスフェノールA型のエポキシ樹脂(C)については、1種類だけでもよいし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0034】
本発明のビスフェノールA型のエポキシ樹脂(C)は、上述のアクリル樹脂(A)との相溶性やプラスチック基材への付着性を考慮した場合、重量平均分子量が500〜2000であることが好ましく、500〜1500であることがより好ましい。
また、本発明のビスフェノールA型のエポキシ樹脂(C)は、塗膜の架橋度を高める点から、エポキシ基を分子内に2個以上有するエポキシ樹脂であることが好ましい。尚、エポキシ基を分子内に1個有するエポキシ樹脂を含んでもよいが、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の含有量は、エポキシ樹脂(C)100質量部に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上が更に好ましい。
本発明のビスフェノールA型のエポキシ樹脂(C)は、前記アクリル樹脂(A)100質量部に対して10〜35質量部含むことが好ましく、15〜30質量部含むことがより好ましい。ビスフェノールA型のエポキシ樹脂(C)の配合量が10質量部未満であると、これを用いて得られる塗膜と金属基材との付着性が得られにくく、35質量部を超えると、膜硬度が低下する傾向がある。
【0035】
<シランカップリング剤(D)>
本発明のシランカップリング剤(D)は、分子内にエポキシ基を含むことが好ましい。エポキシ基を含むことで、これを用いて得られる塗膜と金属基材との付着性をより高めることができる。
【0036】
このようなエポキシ基を含むシランカップリング剤(D)としては、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0037】
本発明のシランカップリング剤(D)は、前記アクリル樹脂(A)100質量部に対して、5〜20質量部含むことが好ましい。シランカップリング剤(D)の配合量が5質量部未満であると、これを用いて得られる塗膜と金属基材との付着性が得られにくく、20質量部を超えると、塗料組成物の貯蔵安定性が低下する傾向がある。
【0038】
更に、本発明の2液混合形塗料組成物は、顔料を含んでいても良い。顔料としては、着色顔料、体質顔料及びメタリック顔料等が挙げられ、塗膜の着色やツヤ、塗装作業性、塗膜の強度、物性等に応じて適宜選択して使用できる。着色顔料は、公知の材料が使用でき、例えば、酸化チタン及びカーボンブラック等の無機顔料や、フタロシアニン系顔料及びアゾ系顔料等の有機顔料が挙げられる。また、体質顔料も、公知の材料が使用でき、例えば、タルク、マイカ、硫酸バリウム、クレー、炭酸カルシウム等が挙げられる。顔料の添加量は、塗膜成分において0〜50質量%が好ましい。
【0039】
また、静電塗装に適応するために、上記塗料組成物に導電性を付与することも可能である。導電性を付与する方法としては、例えば導電性カーボンブラック粒子を配合する方法が挙げられる。
【0040】
また、本発明の2液混合形塗料組成物には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記(A)、(C)以外の樹脂(E)や添加剤を添加しても良い。樹脂(E)としては、例えば、ポリエステル樹脂や上記(A)以外のアクリル樹脂、酢酸酪酸セルロース、ニトロセルロースなどが挙げられる。尚、樹脂(E)を添加する場合、樹脂(E)の含有量は、前記のアクリル樹脂(A)の含有量未満であることが好ましい。添加剤として、例えば、溶剤、表面調整剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、増粘剤、沈降防止剤、皮張り防止剤、たれ防止剤、消泡剤、色分かれ防止剤、レベリング剤、乾燥剤、可塑剤、防カビ剤、抗菌剤、殺虫剤、光安定化剤または紫外線吸収剤等を適宜配合することができる。これら添加剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0041】
本発明の2液混合形塗料組成物は、金属部材とプラスチック部材とが一体的に組み合わされた複合部材に対し、1回の塗装で、付着性及び耐食性に優れた塗膜を形成することが出来る。
【0042】
上記の付着性及び耐食性に優れた塗膜を、金属部材とプラスチック部材とが一体的に組み合わされた複合部材表面に形成する方法としては、以下の工程(1)〜(3)を含む塗装方法を用いることが好ましい。
工程(1):金属部材とプラスチック部材とが一体的に組み合わされた複合部材の表面に本発明の塗料組成物を塗装して、ベースコート層を形成する工程。
工程(2):ベースコート層が未硬化の状態で、ベースコート層の上に上塗り塗料を塗装する工程。
工程(3):ベースコート層と上塗り層とを65〜100℃で同時に焼付硬化させる工程。
【0043】
工程(1)は、金属部材とプラスチック部材とが一体的に組み合わされた複合部材の表面に本発明の塗料組成物を塗装して、ベースコート層を形成する工程である。ここで、前記の金属部材とプラスチック部材とが一体的に組み合わされた複合部材としては、例えば、大型バスなどの車両の外板鋼板と、それに付属するバンパーなどのプラスチック部材が一体に組み合わされた自動車外板などが挙げられる。
【0044】
前記の金属部材としては、鉄、鋼材、ステンレス鋼、アルミニウムなどの金属、及び合金などを加工したものが挙げられるが、鉄であることが好ましい。また、前記の金属部材には、予め、電着塗膜等のプライマー塗装を施しても良いし、表面処理されていても良い。本発明においては、リン酸亜鉛処理された鉄であることがより好ましい。
【0045】
前記プラスチック部材としては、塗料の焼付け温度(100℃以下)で熱変形しない素材であることが好ましく、例えば、ポリエステル系樹脂や、エポキシ樹脂を主体とした繊維強化プラスチック(FRP)や、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ABS、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)及びこれらのポリマーアロイなどが挙げられる。これらのプラスチック基材については、静電塗装の塗着効率の点から、予め導電プライマーが塗装されていることが好ましい。本発明の塗料組成物をベースコート塗料として塗装する際には、乾燥膜厚が10〜100μmになるように塗装することが好ましい。
【0046】
本発明の2液混合形塗料組成物をベースコート塗料として塗装する場合の塗装方法としては、特に制限されず、公知の塗布方法、例えば、ディッピング法、スピンコート法、フローコート法、ロールコート法、スプレーコート法、ブレードコート法及びエアーナイフコート法等が挙げられる。これらの中でも、膜厚の制御を容易に行う観点から、スプレーコート法が好ましい。
【0047】
工程(1)の後、工程(2)の塗装が行われることが好ましい。工程(2)は、ベースコート層が未硬化の状態で、ベースコート層の上に上塗り塗料を塗装する工程である。本工程は、いわゆるウエットオンウエット塗装と呼ばれるものである。ウエットオンウエットで塗装することにより、乾燥工程の短縮が可能で、CO
2の排出量を節減することができるので、環境負荷を低減する観点で好ましい。前記上塗り塗料は本発明の効果を損なうものでなければ、特に制限なく使用することが出来る。勿論、上塗り塗料として、本発明の塗料組成物を用いることもできる。
【0048】
上塗り塗料の塗装方法としては、特に制限されず、公知の塗布方法、例えば、ディッピング法、スピンコート法、フローコート法、ロールコート法、スプレーコート法、ブレードコート法及びエアーナイフコート法等が挙げられる。これらの中でも、膜厚の制御を容易に行う観点から、スプレーコート法が好ましい。
また、上塗り塗料を塗装する際には、乾燥膜厚が10〜100μmになるように塗装することが好ましい。
【0049】
工程(2)の後、工程(3)が行われることが好ましい。工程(3)は、ベースコート層と上塗り層と同時に焼付硬化させる工程であり、焼付硬化させる条件は、65〜100℃で20〜60分間であることが好ましい。
【実施例】
【0050】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下では、特に断りが無い限り、「質量部」を単に「部」と、「質量%」を単に「%」と記載することがあるものとする。
1.ベースコート材(本発明の塗料組成物)の調製
下記の表1〜表5に示すように、各原料を混合し、公知の手法により分散させ、ベースコート材1〜22を調製した。イソシアネートの配合量は、アクリルポリオール由来の水酸基の濃度(OHモル%)とイソシアネート基の濃度(NCOモル%)の比(NCOモル%/OHモル%)が1.0になるように設定した。
尚、使用した原料の詳細を以下に示す。
【0051】
<(A)水酸基価が60〜100mgKOH/gのアクリル樹脂>
A−1:ユーダブル S−2818(日本触媒社製商品名、水酸基価:80mgKOH/g、重量平均分子量7000のアクリル樹脂をキシレン、酢酸イソブチルで希釈。固形分60%)
A−2〜A−5については、以下の手順により調製した。配合を表1に示す。
尚、A−4及びA−5については、A−1〜A〜3と区別するために、「その他の樹脂(E)」と記載した。A−2〜A−5で調製したアクリル樹脂の固形分濃度、水酸基価、重量平均分子量を下記の方法で測定した。
【0052】
<水酸基価>
樹脂固形分1g中の遊離水酸基を無水酢酸で完全にアセチル化した後、それを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を定量した。
【0053】
<加熱残分>
約3グラムの樹脂溶液をアルミカップに精秤し、これを105℃オーブンで60分間乾燥させ、次いで、残留物の質量を精秤し、元の質量に対する残留物の質量の割合を加熱残分(質量%)として求めた。
<2液混合形塗料の固形分>
各成分の固形分濃度(NV)と配合量から、ベースコート材1〜22の固形分(質量部)を計算した。
【0054】
<重量平均分子量>
重量平均分子量の測定は、TSKgelカラム〔東ソー(株)社製〕を用い、RIを装備したGPC〔東ソー(株)社製商品名:HLC−8220GPC〕により求めた。GPCの条件としては、展開溶媒にテトラヒドロフランを用い、流速0.35ml/分、温度40℃にて測定を行った。なお、TSK標準ポリスチレン〔東ソー(株)社製〕を標準物質として用いた。
【0055】
(A−2の調製)
攪拌機、温度計、還流冷却器等を備えた反応容器に、キシレン35部を仕込み、加熱撹拌し、100℃に達してから、下記のモノマー等の混合物2を3時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃を保持したまま、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.1部とキシレン1部との混合物である追加触媒溶液を1時間要して滴下した。更に100℃で1時間撹拌を続けた後、冷却した。得られた反応混合物中にキシレン4部を加えて希釈し、固形分濃度60.1%のアクリル樹脂A−2を得た。得られたアクリル樹脂A−2は、重量平均分子量(Mw)7,000、水酸基価71.7mgKOH/gであった。
配合等を表1に示す。
【0056】
<モノマー等の混合物2>スチレン5部、メチルメタクリレート5部、n−ブチルメタクリレート33部、t−ブチルメタクリレート5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、重合開始剤として2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル2.5部
【0057】
(A−3の調製)
攪拌機、温度計、還流冷却器等を備えた反応容器に、キシレン35部を仕込み、加熱撹拌し、100℃に達してから、下記のモノマー等の混合物3を3時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃を保持したまま、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.1部とキシレン1部との混合物である追加触媒溶液を1時間要して滴下した。更に100℃で1時間撹拌を続けた後、冷却した。このものにキシレン4部を加えて希釈し、固形分濃度59.8%のアクリル樹脂A−3を得た。得られたアクリル樹脂A−3は、重量平均分子量(Mw)10,300、水酸基価72.5mgKOH/gであった。
配合等を表1に示す。
【0058】
<モノマー等の混合物3>スチレン5部、メチルメタクリレート5部、n−ブチルメタクリレート33部、t−ブチルメタクリレート5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、重合開始剤として2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル1.7部
【0059】
(A−4の調製)
攪拌機、温度計、還流冷却器等を備えた反応容器に、キシレン35部を仕込み、加熱撹拌し、100℃に達してから、下記のモノマー等の混合物4を3時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃を保持したまま、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.1部とキシレン1部との混合物である追加触媒溶液を1時間要して滴下した。更に100℃で1時間撹拌を続けた後、冷却した。このものにキシレン4部を加えて希釈し、固形分濃度60.3%のアクリル樹脂A−4を得た。得られたアクリル樹脂A−4は、重量平均分子量(Mw)6,800、水酸基価46.6mgKOH/gであった。
配合等を表1に示す。
【0060】
<モノマー等の混合物4>スチレン6.5部、メチルメタクリレート5部、n−ブチルメタクリレート35部、t−ブチルメタクリレート5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート6.5部、重合開始剤として2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル2.5部
【0061】
(A−5の調製)
攪拌機、温度計、還流冷却器等を備えた反応容器に、キシレン35部を仕込み、加熱撹拌し、100℃に達してから、下記のモノマー等の混合物5を3時間かけて滴下した。滴下終了後、100℃を保持したまま、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル0.1部とキシレン1部との混合物である追加触媒溶液を1時間要して滴下した。更に100℃で1時間撹拌を続けた後、冷却した。このものにキシレン4部を加えて希釈し、固形分濃度60.8%のアクリル樹脂A−5を得た。得られたアクリル樹脂A−5は、重量平均分子量(Mw)7,200、水酸基価107.5mgKOH/gであった。
配合等を表1に示す。
【0062】
<モノマー等の混合物5>スチレン2部、メチルメタクリレート5部、n−ブチルメタクリレート31部、t−ブチルメタクリレート5部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート15部、重合開始剤として2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル2.5部
【0063】
【表1】
【0064】
<イソシアネート化合物(B)>
デュラネート TPA−100E(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型プレポリマー、NCO含有量:23.1%、固形分:100%、旭化成ケミカルズ製商品名)
タケネート D−140N(イソホロンジイソシアネートにトリメチロールプロパン(TMP)を反応させたアダクトタイプ、NCO含有量:10.5%、固形分:75%、三井武田ケミカル製商品名)
【0065】
<ビスフェノールA型のエポキシ樹脂(C)>
エピコート1002(三菱化学製商品名、樹脂固形分70%、重量平均分子量1200)
【0066】
<シランカップリング剤(D)>
KBM−403(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業製商品名)
【0067】
<顔料>
CR−95(酸化チタン含有、石原産業製商品名)
ラーベン5000(カーボンブラック含有、コロンビア社製商品名)
【0068】
<添加剤>
ディスパロンA−630−20X(アマイド化合物、固形分:80%、楠本化成製商品名)
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
2.トップコート材の調製
下記の表6に示すように、各原料を混合し、公知の手法により分散させ上塗り塗料を調製した(単位:質量部)。光安定剤、紫外線吸収剤以外の材料については、前記ベースコート材の原料を用いた。尚、イソシアネートの配合量は、アクリルポリオール由来の水酸基の濃度(OHモル%)とイソシアネート基の濃度(NCOモル%)の比(NCOモル%/OHモル%)が1.0になるように設定した。
【0074】
<光安定剤>
TINUVIN384−2(BASF社製商品名)
【0075】
<紫外線吸収剤>
TINUVIN292(BASF社製商品名)
【0076】
【表6】
【0077】
3.複合部材の塗装
[実施例1〜23および比較例1〜4]
まず、鉄板とプラスチック板(ABS、ポリプロピレンまたはポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO))とを、それぞれ一体的に組み合わせ、以下の基材1〜6を作製した。以下、(鉄板/プラスチック板)ように表記する。
なお、基材1〜6の全てにおいて、プラスチック板には予め導電性プライマーを塗装した。また、基材4〜6で用いた鉄板は、予めリン酸亜鉛処理を行った。
基材1:鉄/ABS(導電性プライマーを予め塗装)
基材2:鉄/ポリプロピレン(導電性プライマーを予め塗装)
基材3:鉄/PBO(導電性プライマーを予め塗装)
基材4:鉄(リン酸亜鉛処理)/ABS(導電性プライマーを予め塗装)
基材5:鉄(リン酸亜鉛処理)/ポリプロピレン(導電性プライマーを予め塗装)
基材6:鉄(リン酸亜鉛処理)/PBO(導電性プライマーを予め塗装)
【0078】
各基材1〜6をイソプロパノールで洗浄したのちに乾燥し、次いで、この基材上にベースコート材を乾燥膜厚が30〜40μmになるように塗装し、更に、上塗り塗料を乾燥膜厚が50〜60μmになるように塗装し、ベースコート層と上塗り層とを80℃×20分間の条件で同時に焼付硬化させて、実施例1〜23および比較例1〜4の試験板を作製した。
【0079】
4.塗膜評価
実施例1〜23および比較例1〜4の試験板に対して、以下の評価を行った。
【0080】
<評価項目>
(1) 基材との付着性
JIS K 5600−5−6に従い、塗膜表面にカッターで碁盤目(2mm間隔で10×10のマス目を入れる)のカットを入れて、その上からセロテープ(登録商標)による貼着と剥離を行い、目視による観察により、下記の基準で評価した。
結果を表7〜10に示す。
(判定基準)
〇:100/100
×:99/100以下
【0081】
(2) 耐食性
試験板上の塗膜について、素地に到達するように幅1mmのカットを施し、JIS K 5600 7−1(1999)に準拠して2ヶ月間(1440時間)塩水噴霧した。塩水噴霧試験後の塗膜外観を、以下の基準で目視判定した。
結果を表7〜10に示す。
(判定基準)
○:クロスカット部周辺に異常なし、または直径1mm未満の赤さびやふくれが発生
×:クロスカット部周辺に、直径1mm以上の赤さびやふくれが発生
【0082】
(3) 耐候性
メタルウェザー試験機(KW−R5TP、ダイプラ・ウィンテス株式会社製商品名)を用いた。具体的には、下記評価サイクルを100回繰り返し、下記の基準で評価した。
結果を表7〜10に示す。
(評価サイクル:L→R→シャワー→D→シャワー)
・L:波長295〜780nm、光エネルギー63mW/cm
2の光を4時間照射する(温度65℃、湿度70%)。
・R:照射無しで、温度65℃及び湿度70%の環境下で、4時間静置させる。
・シャワー:純水を10秒間撒く。
・D:照射無しで、温度30℃及び湿度98%以上の環境下で、4時間静置させる。
(評価基準)
○:外観に変化が認められない。
×:外観に激しい変化が認められる。
【0083】
(4) 膜硬度
JIS K 5600−5−4:1999に準拠して、塗膜の鉛筆硬度を引っかき硬度試験用鉛筆(Uni MITSUBISHI、三菱鉛筆社製商品名)で判定した。
結果を表7〜10に示す。
【0084】
(5) 耐湿性
槽内温度50℃、槽内湿度98%以上の耐湿試験機に試験板を240時間入れ、その後の付着性を上記(1)の方法と同様の方法で評価した。
結果を表7〜10に示す。
【0085】
(6) 耐水性
試験板を、40℃に保った恒温水槽中に浸漬し、240時間後に取り出して乾燥させ、その後の付着性を上記(1)の方法と同様の方法で評価した。
結果を表7〜10に示す。
【0086】
【表7】
【0087】
【表8】
【0088】
【表9】
【0089】
【表10】