【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究事業「アニオン導電性高分子を用いた三相界面の創製とアルカリ形燃料電池の特性評価」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【課題】耐久性に優れる燃料電池用電解質膜、電極触媒層形成用バインダーおよび電池電極触媒層を製造できる陰イオン交換樹脂、その陰イオン交換樹脂から形成される燃料電池用電解質膜、電極触媒層形成用バインダーおよび電池電極触媒層、ならびにその燃料電池用電解質膜または電池電極触媒層を備える燃料電池を提供する。
【解決手段】単数の芳香環からなる、または、2価の炭化水素基や炭素−炭素結合等を介して互いに結合する複数の芳香環からなる2価の疎水性基が、エーテル結合を介して互いに結合する疎水ユニットと、単数の芳香環からなる、または、2価の炭化水素基もしくは炭素−炭素結合を介して互いに結合する複数の芳香環からなり、前記芳香環のうち少なくとも1つが陰イオン交換基を有する2価の親水性基が、炭素−炭素結合を介して互いに結合する親水ユニットとを、炭素−炭素結合を介して結合させる。
単数の芳香環からなる、または、2価の炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価の窒素含有基、2価のリン含有基、2価の酸素含有基、2価の硫黄含有基、もしくは炭素−炭素結合を介して互いに結合する複数の芳香環からなる2価の疎水性基と、
単数の芳香環からなる、または、2価の炭化水素基もしくは炭素−炭素結合を介して互いに結合する複数の芳香環からなり、前記芳香環のうち少なくとも1つが陰イオン交換基を有する2価の親水性基と
からなり、
前記疎水性基がエーテル結合を介して互いに結合する疎水ユニットと、
前記親水性基が炭素−炭素結合を介して互いに結合する親水ユニットと
を有し、
前記疎水ユニットと前記親水ユニットとが炭素−炭素結合を介して結合されていることを特徴とする、陰イオン交換樹脂。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の陰イオン交換樹脂は、2価の疎水性基と2価の親水性基とからなる。
【0022】
本発明の陰イオン交換樹脂において、2価の疎水性基は、単数の芳香環からなる、または、2価の炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価の窒素含有基、2価のリン含有基、2価の酸素含有基、2価の硫黄含有基、もしくは炭素−炭素結合を介して互いに結合する複数(2つ以上、好ましくは、2つ)の芳香環からなる。
【0023】
芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、インデン環、アズレン環、フルオレン環、アントラセン環、フェナントレン環などの、炭素数6〜14の単環または多環芳香族炭化水素が挙げられる。
【0024】
芳香環として、好ましくは、炭素数6〜14の単環芳香族炭化水素が挙げられ、より好ましくは、ベンゼン環が挙げられる。
【0025】
また、芳香環は、必要により、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基などの置換基に置換されていてもよい。
【0026】
なお、芳香環がハロゲン原子、アルキル基、シアノ基などの置換基に置換される場合において、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基などの置換基の置換数および置換位置は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0027】
ハロゲン原子に置換された芳香環として、より具体的には、例えば、1〜4つのハロゲン原子で置換されたベンゼン環(例えば、1〜4つのフッ素で置換されたベンゼン環、1〜4つの塩素で置換されたベンゼン環、1〜4つの臭素で置換されたベンゼン環、1〜4つのヨウ素で置換されたベンゼン環など、1〜4のハロゲン原子は、全て同一であっても、相異なっていてもよい)などが挙げられる。
【0028】
2価の炭化水素基としては、例えば、メチレン(−CH
2−)、エチレン、プロピレン、イソプロピレン(−C(CH
3)
2−)、ブチレン、イソブチレン、sec−ブチレン、ペンチレン(ペンテン)、イソペンチレン、sec−ペンチレン、ヘキシレン(ヘキサメチレン)、3−メチルペンテン、ヘプチレン、オクチレン、2−エチルヘキシレン、ノニレン、デシレン、イソデシレン、ドデシレン、テトラデシレン、ヘキサデシレン、オクタデシレンなどの、炭素数1〜20の2価の飽和炭化水素基が挙げられる。
【0029】
2価の炭化水素基として、好ましくは、炭素数1〜3の2価の飽和炭化水素基、具体的には、メチレン(−CH
2−)、エチレン、プロピレン、イソプロピレン(−C(CH
3)
2−)が挙げられ、より好ましくは、メチレン(−CH
2−)、イソプロピレン(−C(CH
3)
2−)が挙げられ、とりわけ好ましくは、イソプロピレン(−C(CH
3)
2−)が挙げられる。
【0030】
また、2価の炭化水素基は、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子に置換されていてもよい。ハロゲン原子として、好ましくは、フッ素が挙げられる。
【0031】
2価の炭化水素基がハロゲン原子に置換される場合において、ハロゲン原子の置換数および置換位置は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0032】
ハロゲン原子に置換された2価の炭化水素基として、より具体的には、例えば、ハロゲン原子で置換されたメチレン(例えば、フルオロメチレン、ジフルオロメチレン、クロロメチレン、ジクロロメチレン、ブロモメチレン、ジブロモメチレン、ヨードメチレン、ジヨードメチレンなど)、ハロゲン原子で置換されたイソプロピレン(例えば、フルオロイソプロピレン、ジフルオロイソプロピレン、トリフルオロイソプロピレン、テトラフルオロイソプロピレン、ペンタフルオロイソプロピレン、ヘキサフルオロイソプロピレン、クロロイソプロピレン、ジクロロイソプロピレン、トリクロロイソプロピレン、テトラクロロイソプロピレン、ペンタクロロイソプロピレン、ヘキサクロロイソプロピレン、ブロモイソプロピレン、ジブロモイソプロピレン、トリブロモイソプロピレン、テトラブロモイソプロピレン、ペンタブロモイソプロピレン、ヘキサブロモイソプロピレン、ヨードイソプロピレン、ジヨードイソプロピレン、トリヨードイソプロピレン、テトラヨードイソプロピレン、ペンタヨードイソプロピレン、ヘキサヨードイソプロピレンなど)などが挙げられる。
【0033】
ハロゲン原子で置換された2価の炭化水素基として、好ましくは、ハロゲン原子で置換されたイソプロピレン、より好ましくは、ヘキサフルオロイソプロピレンが挙げられる。
【0034】
このような疎水性基として、好ましくは、下記式(1)で示される、ハロゲン原子またはアルキル基で置換されていてもよいビスフェノール残基(Rを介して互いに結合する2つのベンゼン環からなる2価の疎水性基)が挙げられる。
【0035】
【化4】
(式中、Rは、ハロゲン原子で置換されていてもよい、炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、リン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、または直接結合を示し、Alkは、互いに同一または相異なって、アルキル基を示し、Xは、互いに同一または相異なって、ハロゲン原子またはシアノ基を示し、a、b、c、およびdは、互いに同一または相異なって、0〜4の整数を示す。)
【0036】
上記式(1)において、Rは、ハロゲン原子で置換されていてもよい、炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、リン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、または直接結合を示し、好ましくは、ハロゲン原子で置換されていてもよいイソプロピレン(−C(CH
3)
2−)を示す。
【0037】
上記式(1)において、Alkは、互いに同一または相異なって、アルキル基を示す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の炭素数1〜20のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の炭素数1〜20のシクロアルキル基が挙げられる。
【0038】
上記式(1)において、Xは、互いに同一または相異なって、上記したハロゲン原子またはシアノ基を示す。
【0039】
上記式(1)において、aおよびbは、互いに同一または相異なって、0〜4の整数を示し、好ましくは、0〜2の整数を示し、さらに好ましくは、aおよびbが、ともに0を示す。
【0040】
上記式(1)において、cおよびdは、互いに同一または相異なって、0〜4の整数を示し、好ましくは、0〜2の整数を示し、さらに好ましくは、cおよびdが、ともに0を示す。
【0041】
このような疎水性基として、とりわけ好ましくは、下記式(4)で示されるビスフェノール残基(ビスフェノールA残基)が挙げられる。
【0043】
また、このような疎水性基として、好ましくは、下記式(2)で示される、ハロゲン原子で置換されていてもよいビフェニレン基、下記式(2’)で示される、ハロゲン原子で置換されていてもよいo−、m−またはp−フェニレン基、下記式(2’’)で示される、シアノ基で置換されていてもよいo−、m−またはp−フェニレン基、下記式(2’’’)で示される、アルキル基で置換されていてもよいo−、m−またはp−フェニレン基が挙げられる。
【0044】
【化6】
(式中、Xは、互いに同一または相異なって、ハロゲン原子を示し、cおよびdは、互いに同一または相異なって、0〜4の整数を示す。)
【0045】
【化7】
(式中、Xは、ハロゲン原子を示し、c’は、0〜4の整数を示す。)
【0046】
【化8】
(式中、CNはシアノ基を示し、c’’は、0〜4の整数を示す。)
【0047】
【化9】
(式中、Alkはアルキル基を示し、c’’’は、0〜4の整数を示す。)
【0048】
上記式(2)において、Xは、互いに同一または相異なって、上記したハロゲン原子を示す。
【0049】
上記式(2)において、cおよびdは、互いに同一または相異なって、0〜4の整数を示し、耐ラジカル性の観点から、好ましくは、cおよびdの少なくとも一方が1〜4を示し、とりわけ好ましくは、cおよびdがともに4を示す。
【0050】
上記式(2’)において、Xは、上記したハロゲン原子を示し、また、c’は、0〜4の整数を示し、好ましくは、4を示す。
【0051】
上記式(2’’)において、c’’は、0〜4の整数を示し、好ましくは、1を示す。
【0052】
上記式(2’’’)において、Alkは、上記したアルキル基を示し、c’’’は、0〜4の整数を示し、好ましくは、1を示す。
【0053】
疎水性基として、その他にも、以下の構造を有するものが挙げられる。
【0055】
このような疎水性基として、とりわけ好ましくは、ビフェニレン基、下記式(5)で示されるビフェニレン基(各ベンゼン環に4つのフッ素が置換されたビフェニレン基)、p−フェニレン基、下記式(5’)で示される、パーフルオロp−フェニレン基(ベンゼン環に4つのフッ素が置換されたp−フェニレン基)、下記式(5’’)で示される、2−シアノ−1,3−フェニレン基(ベンゼン環に1つのシアノ基が置換されたm−フェニレン基)が挙げられる。
【0059】
陰イオン交換樹脂において、2価の親水性基は、単数の芳香環からなる、または、2価の炭化水素基もしくは炭素−炭素結合を介して互いに結合する複数の芳香環からなり、前記芳香環のうち少なくとも1つが陰イオン交換基を有する。
【0060】
芳香環としては、例えば、上記した芳香環が挙げられ、好ましくは、ベンゼン環が挙げられる。
【0061】
2価の炭化水素基としては、上記したハロゲン原子に置換されていてもよい2価の炭化水素基が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子に置換されていないメチレン(−CH
2−)が挙げられる。
【0062】
また、2価の炭化水素基に結合する芳香環の数は、1つまたは2つであって、好ましくは、2つである。
【0063】
なお、2価の炭化水素基に対して、さらに1つの芳香環が結合する場合には、その炭化水素基は、3価になり、また、さらに2つの芳香環が結合する場合には、その炭化水素基は、4価(炭素数が1の場合には、炭素原子)になる。
【0064】
また、2価の炭化水素基に対して2つの芳香環が結合する場合には、それら芳香環は、例えば、炭素−炭素結合を介して結合していてもよい。
【0065】
陰イオン交換基は、親水性基において主鎖または側鎖に導入され、具体的には、特に制限されず、四級アンモニウム基、三級アミノ基、二級アミノ基、一級アミノ基、ホスフィン、ホスファゼン、三級スルホニウム基、四級ボロニウム基、四級ホスホニウム基など、公知の陰イオン交換基をいずれも採用することができる。陰イオン伝導性の観点から、好ましくは、四級アンモニウム塩が挙げられる。
【0066】
陰イオン交換基として、好ましくは、−CH
2N
+(CH
3)
3OH
−が挙げられるが、その他にも、以下の構造を有するものが挙げられる。なお、以下の構造式において、*は置換基を含む芳香環に結合する部分を示し、陰イオン(OH
−)は省略している。
【0067】
【化14】
(図中、Alk、Alk’、Alk’’は、上記したアルキル基を示す。)
【0068】
このような陰イオン交換基を有する芳香環としては、上記した芳香環が挙げられ、好ましくは、ベンゼン環が挙げられる。
【0069】
親水性基が複数の芳香環を有する場合には、陰イオン交換基を含む置換基は、それら芳香環の少なくとも1つに置換されていればよく、複数の芳香環に置換されていてもよく、全ての芳香環に置換されていてもよい。また、2価の炭化水素基に対して2つの芳香環が結合する場合には、陰イオン交換基を含む置換基は、それら芳香環の少なくとも1つに置換されていればよく、例えば、側鎖の芳香環の一方に置換されていてもよく、その両方に置換されていてもよい。また、陰イオン交換基を含む置換基は、1つの芳香環に複数個置換されていてもよい。
【0070】
このような親水性基として、好ましくは、下記式(3)で示される、前記陰イオン交換基を含む置換基で置換されているジフェニルフルオレン残基、下記式(3’)で示される、前記陰イオン交換基を含む置換基で置換されているo−、m−またはp−フェニレン基が挙げられる。
【0071】
【化15】
(式中、Aは、互いに同一または相異なって、陰イオン交換基を含む置換基を示し、s、t、u、およびvは、互いに同一または相異なって、0〜4の整数を示すとともに、s、t、u、およびvの少なくとも一つが、1以上を示す。)
【0072】
【化16】
(式中、Aは、陰イオン交換基を含む置換基を示し、sは、1〜4の整数を示す。)
【0073】
上記式(3)中、Aは、互いに同一または相異なって、上記した陰イオン交換基を含む置換基を示し、好ましくは、上記した四級アンモニウム基を示す。
【0074】
上記式(3)中、s、t、u、およびvは、互いに同一または相異なって、0〜4の整数を示すとともに、s、t、u、およびvの少なくとも一方が、1以上を示す。
【0075】
なお、上記式(3)において、s、t、u、および/またはvが、1〜3の範囲である場合には、陰イオン交換基を含む置換基の置換位置は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0076】
上記式(3’)中、Aは、上記した陰イオン交換基を含む置換基を示し、好ましくは、上記した四級アンモニウム基を示す。
【0077】
上記式(3’)中、sは、1〜4の整数を示す。なお、陰イオン交換基を含む置換基の置換位置は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0078】
親水性基として、その他にも、以下の構造を有するものが挙げられる。
【0079】
【化17】
(式中、Aは、陰イオン交換基を含む置換基または水素原子を示し、少なくとも1つは陰イオン交換基を含む置換基である。また、1つのベンゼン環構造に複数のAが結合していてもよい。)
【0080】
このような親水性基として、とりわけ好ましくは、下記式(6)で示されるビスフェノールフルオレン残基、下記式(6’)で示されるp−フェニレン基、下記式(6’’)で示されるm−フェニレン基が挙げられる。
【0081】
【化18】
(式中、A’およびA’’は、少なくとも一方が、−CH
2N
+(CH
3)
3OH
−を示し、他方が、−CH
2N
+(CH
3)
3OH
−または水素原子を示す。)
【0082】
【化19】
(式中、A’は、−CH
2N
+(CH
3)
3OH
−を示す。)
【0083】
【化20】
(式中、A’は、−CH
2N
+(CH
3)
3OH
−を示す。)
【0084】
そして、この陰イオン交換樹脂では、上記した疎水性基がエーテル結合を介して互いに結合する疎水ユニットと、上記した親水性基が炭素−炭素結合を介して互いに結合する親水ユニットとを有している。
【0085】
なお、ユニットとは一般に用いられるブロック共重合体のブロックに相当する。
【0086】
疎水ユニットとして、好ましくは、上記式(1)で示されるハロゲン原子で置換されていてもよいビスフェノール残基(疎水性基)と、上記式(2)で示されるハロゲン原子で置換されていてもよいビフェニレン基(疎水性基)とが、エーテル結合を介して互いに結合して形成されるユニットが挙げられる。上記ビスフェノール残基や上記ビフェニレン基は、複数種がランダム状またはブロック状で互いに結合して形成されるユニットでもよい。
【0087】
このような疎水ユニットは、例えば、下記式(7)で示される。
【0088】
【化21】
(式中、RおよびR’は、上記式(1)のRと同意義を示し、Alkは、上記式(1)のAlkと同意義を示し、Xは、上記式(1)のXと同意義を示し、a、b、c、d、e、f、g、h、i、およびjは、互いに同一または相異なって、0〜4の整数を示す、xは、0〜200となる数値を示す。)
【0089】
上記式(7)において、xは、例えば、0〜200、好ましくは、4〜50を示す。
【0090】
このような疎水ユニットとして、とりわけ好ましくは、上記式(4)で示されるビスフェノール残基(ビスフェノールA残基)と上記式(5)で示されるビフェニレン基(各ベンゼン環に4つのフッ素が置換されたビフェニレン基)とがエーテル結合を介して互いに結合して形成されるユニットと、フェニレン基とが、エーテル結合を介して互いに結合して形成されるユニットが挙げられる。
【0091】
このような疎水ユニットは、例えば、下記式(8)で示される。
【0092】
【化22】
(式中、xは、0〜200となる数値を示す。)
【0093】
また、親水ユニットとして、好ましくは、上記式(3)で示される陰イオン交換基を含む置換基で置換されているビスフェノールフルオレン残基(親水性基)、および/または、上記式(3’)で示される陰イオン交換基を含む置換基で置換されているo−、m−またはp−フェニレン基(親水性基)が炭素−炭素結合を介して互いに結合して形成されるユニットが挙げられる。複数種の親水性基が炭素−炭素結合を介して互いに結合して形成されるユニットでもよい。
【0094】
このような親水ユニットは、例えば、下記式(9)、または下記式(9’)で示される。
【0095】
【化23】
(式中、Aは、上記式(3)のAと同意義を示し、s、t、u、およびvは、上記式(3)のs、t、u、およびvと同意義を示し、mは、1〜200の数値を示す。)
【0096】
【化24】
(式中、Aは、上記式(3’)のAと同意義を示し、sは、上記式(3’)のsと同意義を示し、mは、1〜200の数値を示す。)
【0097】
このような親水ユニットとして、とりわけ好ましくは、上記式(6)で示されるビスフェノールフルオレン残基が炭素−炭素結合を介して互いに結合して形成されるユニット、上記式(6’)で示されるp−フェニレンが炭素−炭素結合を介して互いに結合して形成されるユニット、上記式(6’)で示されるm−フェニレン基が炭素−炭素結合を介して互いに結合して形成されるユニット、上記式(6’)で示されるp−フェニレン、上記式(6’’)で示されるm−フェニレン基が炭素−炭素結合を介して互いに結合して形成されるユニットが挙げられる。
【0098】
このような親水ユニットは、例えば、下記式(10)、下記式(10’)、下記式(10’’)、または下記式(10’’’)で示される。
【0099】
【化25】
(式中、A’およびA’’は、上記式(6)のA’およびA’’と同意義を示し、mは、上記式(9)のmと同意義を示す。)
【0100】
【化26】
(式中、A’は、上記式(6’)のA’と同意義を示し、mは、上記式(9’)のmと同意義を示す。)
【0101】
【化27】
(式中、A’は、上記式(6’’)のA’と同意義を示し、mは、上記式(9’)のmと同意義を示す。)
【0102】
【化28】
(式中、A’は、上記式(6’)または上記式(6’’)のA’と同意義を示し、qおよびrは、上記式(9’)のmと同意義を示す。)
【0103】
そして、この陰イオン交換樹脂では、上記した疎水ユニットと、上記した親水ユニットとが、炭素−炭素結合を介して結合されている。
【0104】
陰イオン交換樹脂として、好ましくは、下記式(11)で示されるように、上記式(7)で示される疎水ユニットと、上記式(9)で示される親水ユニットや、下記式(11’)で示されるように、上記式(7)で示される疎水ユニットと、上記式(9’)で示される親水ユニットとが炭素−炭素結合を介して結合された陰イオン交換樹脂が挙げられる。
【0105】
【化29】
(式中、RおよびR’は、上記式(1)のRと同意義を示し、Alkは、上記式(1)のAlkと同意義を示し、Xは、上記式(1)のXと同意義を示し、Aは、上記式(3)のAと同意義を示し、a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、s、t、u、およびvは、互いに同一または相異なって、0〜4の整数を示し、xは、上記式(7)のxと同意義を示し、pおよびmは、配合比を示し、lは、1〜100の数値を示す。)
【0106】
【化30】
(式中、RおよびR’は、上記式(1)のRと同意義を示し、Alkは、上記式(1)のAlkと同意義を示し、Xは、上記式(1)のXと同意義を示し、Aは、上記式(3)のAと同意義を示し、a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、およびsは、互いに同一または相異なって、0〜4の整数を示し、xは、上記式(7)のxと同意義を示し、pおよびmは、配合比を示し、lは、1〜100の数値を示す。)
【0107】
なお、陰イオン交換樹脂の数平均分子量が、10〜1000kDa、好ましくは、30〜500kDaとなるように、調整される。
【0108】
このような陰イオン交換樹脂として、とりわけ好ましくは、下記式(12)で示されるように、上記式(8)で示される疎水ユニットと、上記式(10)で示される親水ユニットとが炭素−炭素結合を介して結合された陰イオン交換樹脂、下記式(12’)で示されるように、上記式(8)で示される疎水ユニットと、上記式(10’)で示される親水ユニットとが炭素−炭素結合を介して結合された陰イオン交換樹脂、下記式(12’’)で示されるように、上記式(8)で示される疎水ユニットと、上記式(10’’)で示される親水ユニットとが炭素−炭素結合を介して結合された陰イオン交換樹脂、下記式(12’’’)で示されるように、上記式(8)で示される疎水ユニットと、上記式(10’’’)で示される親水ユニットとが炭素−炭素結合を介して結合された陰イオン交換樹脂、が挙げられる。
【0109】
【化31】
(式中、A’およびA’’は、上記式(6)のA’およびA’’と同意義を示し、xは、上記式(7)のxと同意義を示し、pおよびmは、配合比を示し、lは、上記式(11)のlと同意義を示す。)
【0110】
【化32】
(式中、A’は、上記式(6’)のA’と同意義を示し、xは、上記式(7)のxと同意義を示し、pおよびmは、配合比を示し、lは、上記式(11’)のlと同意義を示す。)
【0111】
【化33】
(式中、A’は、上記式(6’’)のA’’と同意義を示し、xは、上記式(7)のxと同意義を示し、pおよびmは、配合比を示し、lは、上記式(11’)のlと同意義を示す。)
【0112】
【化34】
(式中、A’は、上記式(6’)または上記式(6’’)のA’と同意義を示し、xは、上記式(7)のxと同意義を示し、p、qおよびrは、配合比を示し、lは、上記式(11’)のlと同意義を示す。)
【0113】
また、このような陰イオン交換樹脂の数平均分子量は、上記したように、例えば、10〜1000kDa、好ましくは、30〜500kDaである。
【0114】
陰イオン交換樹脂を製造する方法としては、特に制限されず、公知の方法を採用することができる。好ましくは、重縮合反応による方法が、採用される。
【0115】
この方法により陰イオン交換樹脂を製造する場合には、例えば、まず、疎水ユニットの少なくとも一部を形成するための第1オリゴマーを重縮合反応により製造し、さらに必要に応じて残りの疎水ユニットを形成するためのモノマーを重縮合反応させた第2オリゴマーを製造し、親水ユニットを形成するためのモノマーをクロスカップリング反応により重合させた後、得られる陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーに、陰イオン交換基を含む置換基を導入する。
【0116】
重縮合反応については、従来公知の一般的な方法(「新高分子実験学3 高分子の合成法・反応(2)縮合系高分子の合成」p.7−57、p.399−401、(1996)共立出版株式会社)、(J.Am.Chem.Soc.,129,,3879−3887(2007)),(Eur.Polym.J.,44,4054−4062(2008))を採用することができる。好ましくは、ジハロゲン化化合物とジオール化合物とを反応させる方法が採用される。
【0117】
第1オリゴマーを製造するには、まず、疎水性基を形成するためのジオール化合物とジハロゲン化化合物とを重縮合反応させる。
【0118】
疎水性基を形成するためのジオール化合物としては、例えば、上記した2価の炭化水素基を介して互いに結合する複数(好ましくは、2つ)の上記した芳香環と、その芳香環に結合された2つの水酸基とを含有する化合物が挙げられる。
【0119】
疎水性基を形成するためのジオール化合物として、好ましくは、上記式(1)に対応する、下記式(13)で示される化合物が挙げられる。
【0120】
【化35】
(式中、Rは、上記式(1)のRと同意義を示し、Alkは、上記式(1)のAlkと同意義を示し、Xは、上記式(1)のXと同意義を示し、a、b、c、およびdは、上記式(1)のa、b、c、およびdと同意義を示す。)
【0121】
また、疎水性基を形成するためのジオール化合物として、とりわけ好ましくは、上記式(4)に対応する、下記式(14)で示される化合物(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン)が挙げられる。
【0123】
一方、疎水性基を形成するためのジハロゲン化化合物としては、例えば、上記した2価の炭化水素基を介して互いに結合する複数(好ましくは、2つ)の上記した芳香環と、その芳香環に結合された2つの上記したハロゲン原子とを含有する化合物が挙げられる。
【0124】
疎水性基を形成するためのジハロゲン化化合物として、好ましくは、上記式(1)に対応する、下記式(13’)で示される化合物が挙げられる。
【0125】
【化37】
(式中、Rは、上記式(1)のRと同意義を示し、Alkは、上記式(1)のAlkと同意義を示し、Xは、上記式(1)のXと同意義を示し、a、b、c、およびdは、互いに同一または相異なって、0〜4の整数を示す。)
【0126】
また、疎水性基を形成するためのジハロゲン化化合物として、とりわけ好ましくは、上記式(5)に対応する、下記式(16)で示される化合物(デカフルオロビフェニル)が挙げられる。
【0128】
重縮合反応において、これら疎水性基を形成するためのジオール化合物とジハロゲン化化合物との配合比は、得られる第1オリゴマーにおける繰り返し単位数が、上記式(11)または式(11’)におけるxになるように調整される。
【0129】
このような第1オリゴマーは、ジハロゲン化化合物またはジオール化合物として形成される。
【0130】
第1オリゴマーをジハロゲン化化合物として形成する場合には、ジオール化合物と、ジハロゲン化化合物との配合比は、ジハロゲン化化合物が過剰となるように調整される。具体的には、ジオール化合物1モルに対して、ジハロゲン化化合物が、上記式(7)におけるxとの関係において、好ましくは、(x+1)/xモルである。
【0131】
一方、第1オリゴマーをジオール化合物として形成する場合には、ジオール化合物と、ジハロゲン化化合物との配合比は、ジオール化合物が過剰となるように調整される。具体的には、ジハロゲン化化合物1モルに対して、ジオール化合物が、上記式(7)におけるxとの関係において、好ましくは、(x+1)/xモルである。
【0132】
そして、この方法では、これら疎水性基を形成するためのジオール化合物およびジハロゲン化化合物を、有機溶媒中で重縮合反応させる。
【0133】
有機溶媒としては、例えば、極性非プロトン性溶媒が挙げられる。
【0134】
極性非プロトン性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ピリジン、N−メチルピロリドン、N−シクロヘキシルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)などが挙げられる。
【0135】
これら極性非プロトン性溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0136】
極性非プロトン性溶媒として、好ましくは、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0137】
また、有機溶媒としては、さらに、その他の溶媒を併用することができる。
【0138】
その他の溶媒としては、特に制限されず、公知の非極性溶媒(例えば、脂肪族炭化水素類、ハロゲン化脂肪族炭化水素(例えば、クロロホルムなど)、脂環式炭化水素類(例えば、シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類)や、公知の非プロトン性芳香族系溶媒(例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼンまたはo−ジクロロベンゼンなど)などが挙げられる。
【0139】
なお、極性非プロトン性溶媒とその他の溶媒とを併用する場合において、それらの配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0140】
また、疎水性基を形成するためのジオール化合物およびジハロゲン化化合物に対する、有機溶媒の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0141】
また、重縮合反応では、塩基性化合物を配合することができる。
【0142】
塩基性化合物としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、などの炭酸塩、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの金属水酸化物、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸二水素カリウムなどのリン酸塩などが挙げられる。
【0143】
これら塩基性化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0144】
塩基性化合物として、好ましくは、金属炭酸塩、より好ましくは、炭酸カリウムが挙げられる。
【0145】
なお、塩基性化合物の配合量は、例えば、炭酸塩触媒の場合、反応混合物中に存在する水酸基と等モル以上、好ましくは1.2倍モル以上である。
【0146】
重縮合反応における反応温度は、例えば、50〜300℃、好ましくは、50〜200℃であり、反応時間は、例えば、1〜20時間、好ましくは、2〜5時間である。
【0147】
このような第1オリゴマーは、好ましくは、上記したように、上記式(13)で示されるジオール化合物と、上記式(15)で示されるジハロゲン化化合物との反応により、ジハロゲン化化合物として得られる。
【0148】
このようなジハロゲン化化合物は、具体的には、下記式(17)で示される。
【0149】
【化39】
(式中、RおよびR’は、上記式(1)のRと同意義を示し、Alkは、上記式(1)のAlkと同意義を示し、Xは、上記式(1)のXと同意義を示し、a、b、c、d、e、f、g、およびhは、互いに同一または相異なって、0〜4の整数を示し、xは、上記式(7)のxと同意義を示す。)
【0150】
また、第1オリゴマーは、とりわけ好ましくは、上記式(14)で示されるジオール化合物と、上記式(16)で示されるジハロゲン化化合物との反応により、ジハロゲン化化合物またはジオール化合物、好ましくは、ジハロゲン化化合物として得られる。
【0151】
このようなジハロゲン化化合物は、具体的には、下記式(18)で示される。
【0152】
【化40】
(式中、xは、上記式(7)のxと同意義を示す。)
【0153】
また、例えば、第1オリゴマーは、上記したように、上記式(13’)で示されるジハロゲン化化合物と、上記式(15’)で示されるジオール化合物との反応により、ジオール化合物として得ることもできる。
【0154】
このようなジオール化合物は、具体的には、下記式(17’)で示される。
【0155】
【化41】
(式中、RおよびR’は、上記式(1)のRと同意義を示し、Alkは、上記式(1)のAlkと同意義を示し、Xは、上記式(1)のXと同意義を示し、a、b、c、d、e、f、g、およびhは、互いに同一または相異なって、0〜4の整数を示し、xは、上記式(7)のxと同意義を示す。)
【0156】
第2オリゴマーは、例えば、ジハロゲン化化合物である第1オリゴマーに、疎水性基を形成するためのハロゲン化フェノール化合物を重縮合反応させることで製造できる。
【0157】
疎水性基を形成するためのハロゲン化フェノール化合物として、好ましくは、下記式(19)または(19’)で示される化合物が挙げられる。
【0158】
【化42】
(式中、Alkは、上記式(1)のAlkと同意義を示し、Xは、上記式(1)のXと同意義を示し、iおよびkは0〜4の整数を示す。)
【0159】
【化43】
(式中、Rは、上記式(1)のRと同意義を示し、Alkは、上記式(1)のAlkと同意義を示し、Xは、上記式(1)のXと同意義を示し、i、j、k、およびlは、互いに同一または相異なって、0〜4の整数を示す。)
【0160】
疎水性基を形成するためのハロゲン化フェノール化合物として、とりわけ好ましくは、下記式(19’’)で示される化合物が挙げられる。
【化44】
【0161】
第2オリゴマーは、好ましくは、上記式(17)で示されるジハロゲン化化合物と、上記式(19)で示されるハロゲン化フェノール化合物との反応により、ジハロゲン化化合物として得られる。
【0162】
このようなジハロゲン化化合物は、具体的には、下記式(20)で示される。
【0163】
【化45】
(式中、RおよびR’は、上記式(1)のRと同意義を示し、Alkは、上記式(1)のAlkと同意義を示し、Xは、上記式(1)のXと同意義を示し、a、b、c、d、e、f、g、h、i、およびjは、互いに同一または相異なって、0〜4の整数を示し、xは、上記式(7)のxと同意義を示す。)
【0164】
また、第2オリゴマーは、とりわけ好ましくは、上記式(18)で示されるジハロゲン化化合物と、上記式(19’’)で示されるハロゲン化フェノール化合物との反応により、ジハロゲン化化合物として得られる。
【0165】
このようなジハロゲン化化合物は、具体的には、下記式(20’)で示される。
【0166】
【化46】
(式中、xは、上記式(7)のxと同意義を示す。)
【0167】
第2オリゴマーは、例えば、ジオール化合物である第1オリゴマーに、疎水性基を形成するためのジハロゲン化ベンゼン化合物を重縮合反応させることで製造できる。
【0168】
疎水性基を形成するためのジハロゲン化ベンゼン化合物として、好ましくは、下記式(19a)または(19a’)で示される化合物が挙げられる。
【0169】
【化47】
(式中、Alkは、上記式(1)のAlkと同意義を示し、XおよびX’は、互いに同一または相異なって、ハロゲン原子を示し、iおよびkは、互いに同一または相異なって、0〜4の整数を示す。)
【0170】
【化48】
(式中、Rは、上記式(1)のRと同意義を示し、Alkは、上記式(1)のAlkと同意義を示し、Xは、互いに同一または相異なって、ハロゲン原子を示し、i、j、kおよびlは、互いに同一または相異なって、0〜4の整数を示す。)
【0171】
疎水性基を形成するためのジハロゲン化ベンゼン化合物として、とりわけ好ましくは、下記式(19a’’)で示される化合物が挙げられる。
【化49】
【0172】
そして、第1オリゴマーまたは第2オリゴマーに、親水ユニットを形成するためのモノマーをクロスカップリング反応により重合させる。親水ユニットを形成するためのモノマーとしては、親水ユニットを形成するためのジハロゲン化化合物が挙げられる。
【0173】
親水ユニットを形成するためのジハロゲン化化合物としては、例えば、単数の芳香環からなる、または、2価の炭化水素基もしくは炭素−炭素結合を介して互いに結合する複数の芳香環からなる化合物が挙げられる。
【0174】
このような親水ユニットを形成するためのジハロゲン化化合物として、好ましくは、上記式(3)に対応する、下記式(21)で示される化合物(ビスハロゲノフェニルフルオレン)、および上記式(3’)に対応する、下記式(21’)で示される化合物(ジハロゲノベンゼン)が挙げられる。
【0175】
【化50】
(式中、XおよびX’は、互いに同一または相異なって、ハロゲン原子を示す。)
【0176】
【化51】
(式中、XおよびX’は、互いに同一または相異なって、ハロゲン原子を示す。)
【0177】
クロスカップリング反応において、親水ユニットを形成するためのモノマーの配合量は、得られる陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーにおける親水ユニット中の親水性基の繰り返し単位数が、上記式(11)または式(11’)におけるmになるように調整される。
【0178】
この方法では、第1オリゴマーまたは第2オリゴマーと、親水ユニットを形成するためのモノマーを、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの溶媒に溶解させ、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)などを触媒として、重合する方法など、公知の方法を採用することができる。
【0179】
クロスカップリング反応における反応温度は、例えば、−100〜300℃、好ましくは、−50〜200℃であり、反応時間は、例えば、1〜20時間、好ましくは、2〜5時間である。
【0180】
これにより、陰イオン交換樹脂前駆体ポリマー、好ましくは、下記式(22)で示される陰イオン交換樹脂前駆体ポリマー、または下記式(22’)で示される陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーが得られる。
【0181】
【化52】
(式中、RおよびR’は、上記式(1)のRと同意義を示し、Alkは、上記式(1)のAlkと同意義を示し、Xは、上記式(1)のXと同意義を示し、a、b、c、d、e、f、g、h、i、およびjは、互いに同一または相異なって、0〜4の整数を示し、xは、上記式(7)のxと同意義を示し、pおよびmは、配合比を示し、lは、上記式(11)のlと同意義を示す。)
【0182】
【化53】
(式中、RおよびR’は、上記式(1)のRと同意義を示し、Alkは、上記式(1)のAlkと同意義を示し、Xは、上記式(1)のXと同意義を示し、a、b、c、d、e、f、g、h、i、およびjは、互いに同一または相異なって、0〜4の整数を示し、xは、上記式(7)のxと同意義を示し、pおよびmは、配合比を示し、lは、上記式(11’)のlと同意義を示す。)
【0183】
また、陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーとして、とりわけ好ましくは、下記式(23)で示される陰イオン交換樹脂前駆体ポリマー、下記式(23’)で示される陰イオン交換樹脂前駆体ポリマー、下記式(23’’)で示される陰イオン交換樹脂前駆体ポリマー、下記式(23’’’)で示される陰イオン交換樹脂前駆体ポリマー、が得られる。
【0184】
【化54】
(式中、xは、上記式(7)のxと同意義を示し、pおよびmは、配合比を示し、lは、上記式(11)のlと同意義を示す。)
【0185】
【化55】
(式中、xは、上記式(7)のxと同意義を示し、pおよびmは、配合比を示し、lは、上記式(11’)のlと同意義を示す。)
【0186】
【化56】
(式中、xは、上記式(7)のxと同意義を示し、pおよびmは、配合比を示し、lは、上記式(11’)のlと同意義を示す。)
【0187】
【化57】
(式中、xは、上記式(7)のxと同意義を示し、p、qおよびrは、配合比を示し、lは、上記式(11’)のlと同意義を示す。)
【0188】
次いで、この方法では、陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーに、陰イオン交換基を含む置換基を導入する。
【0189】
陰イオン交換基を含む置換基を導入する方法としては、特に制限されず、公知の方法を採用することができる。
【0190】
例えば、クロロアルキル化反応により、陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーをクロロアルキル化した後、そのクロロアルキル化された陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーを、四級化反応(例えば、アンモニウム化反応)させることにより、陰イオン交換基を含む置換基を導入する。
【0191】
クロロアルキル化反応としては、特に制限されず、例えば、陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーを、例えば、テトラクロロエタンなどの溶媒に溶解させ、塩化鉄、塩化亜鉛などのルイス酸を触媒として、クロロメチルメチルエーテル中に浸漬処理してクロロアルキル化する方法など、公知の方法を採用することができる。
【0192】
クロロアルキル化反応における反応温度は、例えば、20〜120℃、好ましくは、35〜100℃であり、反応時間は、例えば、24〜168時間、好ましくは、36〜120時間である。
【0193】
これにより、クロロアルキル化された陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーを得ることができる。
【0194】
四級化反応では、クロロアルキル化された陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーを、必要により公知の方法で製膜し、例えば、アミン、ホスフィン、ホスファゼン、スルフィド、ボロン化合物などを、適宜の割合で添加し、クロロアルキル基の塩素原子をそれらで置換することにより、陰イオン交換基を含む置換基を導入する。
【0195】
アミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジアリルアミン、ジn−プロピルアミン、ジn−ブチルアミン、ジn−ペンチルアミンなどの2級アミン、例えば、トリメチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン、トリアリルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、トリn−ペンチルアミン、トリn−ヘキシルアミンなどの3級アミン、例えば、ピリジン、キノリン、イミダゾールなどの環状アミン、例えば、グアニジンなどが挙げられる。
【0196】
これらアミンは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0197】
四級化反応における反応温度は、例えば、0〜100℃、好ましくは、20〜80℃であり、反応時間は、例えば、24〜72時間、好ましくは、48〜72時間である。
【0198】
なお、この方法では、陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーを製膜することなく、例えば、溶液状態において、四級化反応させることもできる。
【0199】
また、この方法では、必要により、上記のアミン、ホスフィン、ホスファゼン、スルフィド、ボロン化合物などを、公知の方法により除去する。
【0200】
これにより、上記陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーに、陰イオン交換基を含む置換基が導入され、陰イオン交換樹脂、好ましくは、上記式(11)で示される陰イオン交換樹脂または上記式(11’)で示される陰イオン交換樹脂、とりわけ好ましくは、上記式(12)で示される陰イオン交換樹脂、上記式(12’)で示される陰イオン交換樹脂、上記式(12’’)で示される陰イオン交換樹脂、または上記式(12’’’)で示される陰イオン交換樹脂が得られる。
【0201】
また、陰イオン交換樹脂のイオン交換基容量は、例えば、0.1〜4.0meq./g、好ましくは、0.6〜3.0meq./gである。
【0202】
なお、イオン交換基容量は、下記式(24)により求めることができる。
[イオン交換基容量(meq./g)]=イオン交換基導入量×m×1000/(第1オリゴマーまたは第2オリゴマーの分子量×p+親水ユニットの分子量×mまたはq+イオン交換基の分子量×mまたはq) (24)
(式中、mは、上記式(9)または上記式(9’)のmと同意義を示し、pは、上記式(7)のpと同意義を示し、qは、上記式(10’’)のqと同意義を示す。)
なお、イオン交換基導入量とは、単位親水性基あたりのイオン交換基の数と定義される。
【0203】
そして、このような陰イオン交換樹脂は、単数の芳香環からなる、または、2価の炭化水素基もしくは炭素−炭素結合を介して互いに結合する複数の芳香環からなる2価の疎水性基と、単数の芳香環からなる、または、2価の炭化水素基もしくは炭素−炭素結合を介して互いに結合する複数の芳香環からなり、前記芳香環のうち少なくとも1つが陰イオン交換基を有する2価の親水性基とからなり、前記疎水性基がエーテル結合を介して互いに結合する疎水ユニットと、前記親水性基が炭素−炭素結合を介して互いに結合する親水ユニットとを有し、前記疎水ユニットと前記親水ユニットとが炭素−炭素結合を介して結合されている。つまり、この陰イオン交換樹脂の親水ユニットには、エーテル結合が含有されていないため、耐アルカリ性などの耐久性に優れる。
【0204】
より詳しくは、親水ユニットにエーテル結合が含有されていると、下記のように、水酸化物イオン(OH
−)による分解が起きる可能性があり、耐アルカリ性が十分でない場合があった。
【化58】
【0205】
それに対し、本発明の陰イオン交換樹脂の親水ユニットには、エーテル結合が含有されていないため、上記の機構による分解は起こらず、その結果として耐アルカリ性などの耐久性に優れたものとなる。
【0206】
そして、本発明は、このような陰イオン交換樹脂を用いて得られる燃料電池用電解質層(燃料電池用電解質膜)、さらには、その燃料電池用電解質層を電解質層として備える燃料電池を、含んでいる。
【0207】
図1は、本発明の燃料電池の一実施形態を示す概略構成図である。
図1において、この燃料電池1は、燃料電池セルSを備えており、燃料電池セルSは、燃料側電極2、酸素側電極3および電解質膜4を備え、燃料側電極2および酸素側電極3が、それらの間に電解質膜4を挟んだ状態で、対向配置されている。
【0208】
電解質膜4としては、上記した陰イオン交換樹脂を用いることができる(すなわち、電解質膜4は、上記した陰イオン交換樹脂を含んでいる。)。
【0209】
なお、電解質膜4としては、例えば、多孔質基材などの公知の補強材により補強することができ、さらには、例えば、分子配向などを制御するための二軸延伸処理や、結晶化度や残存応力を制御するための熱処理などの各種処理することができる。また、電解質膜4には、その機械強度を上げるために、公知のフィラーを添加することができ、電解質膜4と、ガラス不織布などの補強剤とをプレスにより複合化させることもできる。
【0210】
また、電解質膜4において、通常用いられる各種添加剤、例えば、相溶性を向上させるための相溶化剤、例えば、樹脂劣化を防止するための酸化防止剤、例えば、フィルムとしての成型加工における取扱性を向上するための帯電防止剤や滑剤などを、電解質膜4としての加工や性能に影響を及ぼさない範囲で、適宜含有させることができる。
【0211】
電解質膜4の厚さは、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0212】
電解質膜4の厚みは、例えば、1.2〜350μm、好ましくは、5〜200μmである。
【0213】
燃料側電極2は、電解質膜4の一方の面に対向接触されている。この燃料側電極2は、例えば、多孔質担体に触媒が担持されている触媒層(電池電極触媒層)を含んでいる。
【0214】
多孔質担体としては、特に限定されず、カーボンなどの、撥水性担体が挙げられる。
【0215】
電極触媒としては、特に制限されず、例えば、白金族元素(Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、鉄族元素(Fe、Co、Ni)などの周期表第8〜10(IUPAC Periodic Table of the Elements(version date 19 February 2010)に従う。以下同じ。)族元素や、例えば、Cu、Ag、Auなどの周期表第11族元素など、さらにはこれらの組み合わせなどが挙げられ、好ましくは、Pt(白金)が挙げられる。
【0216】
燃料側電極2は、例えば、上記多孔質単体および触媒を、公知の電解質溶液に分散させ、電極インクを調製する。次いで、必要により、電極インクの粘度を、アルコール類などの適量の有機溶媒を配合することにより調整し、その後、電極インクを、公知の方法(例えば、スプレー法、ダイコーター法など)により電解質膜4の一方面に塗布し、所定の温度で乾燥させることにより、薄膜状の電極膜として電解質膜4の一方面に接合される。
【0217】
燃料側電極2における電極触媒の担持量は、特に限定されないが、例えば、0.1〜10.0mg/cm
2、好ましくは、0.5〜5.0mg/cm
2である。
【0218】
燃料側電極2では、後述するように、供給される燃料と、電解質膜4を通過した水酸化物イオン(OH
−)とを反応させて、電子(e
−)および水(H
2O)を生成させる。なお、例えば、燃料が水素(H
2)である場合には、電子(e
−)および水(H
2O)のみを生成させ、燃料がヒドラジン(NH
2NH
2)である場合には、電子(e
−)、水(H
2O)および窒素(N
2)を生成させる。
【0219】
酸素側電極3は、電解質膜4の他方の面に対向接触されている。この酸素側電極3は、例えば、多孔質担体に触媒が担持されている触媒層(電池電極触媒層)を含んでいる。
【0220】
酸素側電極3は、例えば、上記多孔質単体および触媒を、公知の電解質溶液に分散させ、電極インクを調製する。次いで、必要により、電極インクの粘度を、アルコール類などの適量の有機溶媒を配合することにより調整し、その後、電極インクを、公知の方法(例えば、スプレー法、ダイコーター法など)により電解質膜4の他方面に塗布し、所定の温度で乾燥させることにより、薄膜状の電極膜として電解質膜4の他方面に接合される。
【0221】
これにより、電解質膜4、燃料側電極2および酸素側電極3は、電解質膜4の一方面に薄膜状の燃料側電極2が接合され、電解質膜4の他方面に薄膜状の酸素側電極3が接合されてなる膜・電極接合体を形成している。
【0222】
酸素側電極3における触媒の担持量は、特に限定されないが、例えば、0.1〜10.0mg/cm
2、好ましくは、0.5〜5.0mg/cm
2である。
【0223】
酸素側電極3では、後述するように、供給される酸素(O
2)と、電解質膜4を通過した水(H
2O)と、外部回路13を通過した電子(e
−)とを反応させて、水酸化物イオン(OH
−)を生成させる。
【0224】
燃料電池セルSは、さらに、燃料供給部材5および酸素供給部材6を備えている。燃料供給部材5は、ガス不透過性の導電性部材からなり、その一方の面が、燃料側電極2に対向接触されている。そして、この燃料供給部材5には、燃料側電極2の全体に燃料を接触させるための燃料側流路7が、一方の面から凹む葛折状の溝として形成されている。なお、この燃料側流路7には、その上流側端部および下流側端部に、燃料供給部材5を貫通する供給口8および排出口9がそれぞれ連続して形成されている。
【0225】
また、酸素供給部材6も、燃料供給部材5と同様に、ガス不透過性の導電性部材からなり、その一方の面が、酸素側電極3に対向接触されている。そして、この酸素供給部材6にも、酸素側電極3の全体に酸素(空気)を接触させるための酸素側流路10が、一方の面から凹む葛折状の溝として形成されている。なお、この酸素側流路10にも、その上流側端部および下流側端部に、酸素供給部材6を貫通する供給口11および排出口12がそれぞれ連続して形成されている。
【0226】
この燃料電池1は、実際には、上記した燃料電池セルSが、複数積層されるスタック構造として形成される。そのため、燃料供給部材5および酸素供給部材6は、実際には、両面に燃料側流路7および酸素側流路10が形成されるセパレータとして構成される。
【0227】
なお、図示しないが、この燃料電池1には、導電性材料によって形成される集電板が備えられており、集電板に備えられた端子から燃料電池1で発生した起電力を外部に取り出すことができるように構成されている。
【0228】
また、
図1においては、この燃料電池セルSの燃料供給部材5と酸素供給部材6とを外部回路13によって接続し、その外部回路13に電圧計14を介在させて、発生する電圧を計測するようにしている。
【0229】
この燃料電池1においては、燃料が、改質などを経由することなく直接に、または、改質などを経由した上で、燃料側電極2に供給される。
【0230】
燃料としては、含水素燃料が挙げられる。
【0231】
含水素燃料は、分子中に水素原子を含有する燃料であって、例えば、水素ガス、アルコール類、ヒドラジン類などが挙げられ、好ましくは、水素ガスまたはヒドラジン類が挙げられる。
【0232】
ヒドラジン類として、具体的には、例えば、ヒドラジン(NH
2NH
2)、水加ヒドラジン(NH
2NH
2・H
2O)、炭酸ヒドラジン((NH
2NH
2)
2CO
2)、塩酸ヒドラジン(NH
2NH
2・HCl)、硫酸ヒドラジン(NH
2NH
2・H
2SO
4)、モノメチルヒドラジン(CH
3NHNH
2)、ジメチルヒドラジン((CH
3)
2NNH
2、CH
3NHNHCH
3)、カルボンヒドラジド((NHNH
2)
2CO)などが挙げられる。上記例示の燃料は、単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0233】
上記した燃料化合物のうち、炭素を含まない化合物、すなわち、ヒドラジン、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジンなどは、COおよびCO
2の生成がなく、触媒の被毒が生じないことから、耐久性の向上を図ることができ、実質的なゼロエミッションを実現することができる。
【0234】
また、上記例示の燃料としては、上記の燃料化合物をそのまま用いてもよいが、上記例示の燃料化合物を、例えば、水および/またはアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの低級アルコールなど)などの溶液として用いることができる。この場合、溶液中の燃料化合物の濃度は、燃料化合物の種類によっても異なるが、例えば、1〜90質量%、好ましくは、1〜30質量%である。上記例示の溶媒は、単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0235】
さらに、燃料は、上記した燃料化合物をガス(例えば、蒸気)として用いることができる。
【0236】
そして、酸素供給部材6の酸素側流路10に酸素(空気)を供給しつつ、燃料供給部材5の燃料側流路7に上記した燃料を供給すれば、酸素側電極3においては、次に述べるように、燃料側電極2で発生し、外部回路13を介して移動する電子(e
−)と、燃料側電極2で発生する水(H
2O)と、酸素(O
2)とが反応して、水酸化物イオン(OH
−)を生成する。生成した水酸化物イオン(OH
−)は、アニオン交換膜からなる電解質膜4を、酸素側電極3から燃料側電極2へ移動する。そして、燃料側電極2においては、電解質膜4を通過した水酸化物イオン(OH
−)と、燃料とが反応して、電子(e
−)と水(H
2O)とが生成する。生成した電子(e
−)は、燃料供給部材5から外部回路13を介して酸素供給部材6に移動され、酸素側電極3へ供給される。また、生成した水(H
2O)は、電解質膜4を燃料側電極2から酸素側電極3へ移動する。このような燃料側電極2および酸素側電極3における電気化学的反応によって、起電力が生じ、発電が行われる。
【0237】
なお、この燃料電池1の運転条件は、特に限定されないが、例えば、燃料側電極2側の加圧が200kPa以下、好ましくは、100kPa以下であり、酸素側電極3側の加圧が200kPa以下、好ましくは、100kPa以下であり、燃料電池セルSの温度が0〜120℃、好ましくは、20〜80℃として設定される。
【0238】
そして、このような燃料電池1においては、電解質膜4に、上記の耐久性に優れる陰イオン交換樹脂を含む燃料電池用電解質膜が、用いられている。
【0239】
そのため、本発明の陰イオン交換樹脂を用いて得られる本発明の燃料電池用電解質膜、および、そのような燃料電池用電解質膜を備える燃料電池は、耐久性に優れる。
【0240】
また、本発明は、上記した陰イオン交換樹脂を含む電極触媒層形成用バインダー、その電極触媒層形成用バインダーを含む電池電極触媒層、さらには、その電池電極触媒層を備える燃料電池を含んでいる。
【0241】
すなわち、燃料電池1では、上記した燃料側電極2および/または酸素側電極3の形成時において、陰イオン交換樹脂を電極触媒層形成用バインダーに含有させることができる。
【0242】
陰イオン交換樹脂を電極触媒層形成用バインダーに含有させる方法として、具体的には、例えば、陰イオン交換樹脂を細断し、アルコール類などの適量の有機溶媒に溶解させることにより、電極触媒層形成用バインダーを調製する。
【0243】
電極触媒層形成用バインダーにおいて、陰イオン交換樹脂の含有割合は、電極触媒層形成用バインダー100質量部に対して、例えば、2〜10質量部、好ましくは、2〜5質量部である。
【0244】
また、その電極触媒層形成用バインダーを、上記した燃料側電極2および/または酸素側電極3の触媒層(電池電極触媒層)の形成に用いることにより、陰イオン交換樹脂を、触媒層(電池電極触媒層)に含有させることができ、これにより、陰イオン交換樹脂を含む触媒層(電池電極触媒層)を備える燃料電池1を得ることができる。
【0245】
そして、このような燃料電池1においては、電池電極触媒層の形成において、上記の耐久性に優れる陰イオン交換樹脂を含む電極触媒層形成用バインダーが、用いられている。
【0246】
そのため、本発明の陰イオン交換樹脂を用いて得られる本発明の電極触媒層形成用バインダー、また、その電極触媒層形成用バインダーを用いて得られる電池電極触媒層は、耐久性に優れており、優れたアニオン導電性を確保することができる。
【0247】
その結果、そのような電池電極触媒層を備える燃料電池は、耐久性に優れており、優れたアニオン導電性を確保することができる。
【0248】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜設計を変形することができる。
【0249】
本発明の燃料電池の用途としては、例えば、自動車、船舶、航空機などにおける駆動用モータの電源や、携帯電話機などの通信端末における電源などが挙げられる。
【実施例】
【0250】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
【0251】
[実施例]
<第1オリゴマーの合成>
窒素インレットおよびディーンスタックトラップを備えた100mlの丸底三口フラスコに、ヘキサフルオロビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン)(3.36g、10.0mmol)、炭酸カリウム(2.07g、15.0mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド(23ml)、トルエン(5ml)を加えた。この混合物を撹拌してヘキサフルオロビスフェノールAを溶解させた後、150℃に昇温してトルエンで共沸しながら3時間脱水した。
【0252】
脱水後、ディーンスタックトラップ内のトルエンを除去し、還流したトルエンをトラップすることで混合物からトルエンを除去した。その後、常温まで放冷し、デカフルオロビフェニル(4.18g、12.5mmol)を加え、60℃に昇温して2時間時間反応させた。
【0253】
ここで、エンドキャップ剤としてデカフルオロビフェニル(0.42g、1.3mmol)を加え、さらに1時間反応を続けた。
【0254】
反応混合物を熱水中に滴下して反応を停止させ、生成物を析出させた。生成物を濾別回収し、熱水、熱メタノールで数回洗浄後、60℃で一晩真空乾燥させた。
【0255】
これにより、下記式で示される白色の第1オリゴマー(x=6)を、収率87%で得た。
【0256】
【化59】
【0257】
<第2オリゴマーの合成>
窒素インレットを備えた100mlの丸底三口フラスコに、第1オリゴマー(3.00g、0.893mmol)、4−クロロフェノール(0.29g、2.2mmol)、炭酸カリウム(0.43g、3.0mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド(30ml)を加えた。この混合物を撹拌して第1オリゴマーおよび4−クロロフェノールを溶解した後、40℃に昇温して3時間反応させた。
【0258】
反応混合物を純水中に滴下して反応を停止させ、生成物を析出させた。生成物を濾別回収し、純水、メタノールで数回洗浄後、60℃で一晩真空乾燥させた。
【0259】
これにより、下記式で示される白色の第2オリゴマー(x=6)を収率87%で得た。
【化60】
【0260】
<陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーの合成>
窒素インレット、メカニカルスターラーおよび冷却管を備えた100mlの丸底三口フラスコに、第2オリゴマー(0.60g、0.14mmol)、1,4−ジクロロベンゼン(0.04g、0.3mmol)、1,3−ジクロロベンゼン(0.16g、1.1mmol)、2,2’−ビピリジン(0.57g、3.6mmol)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0)(1.00g、3.60mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド(10ml)を加えた。この混合物を撹拌して第2オリゴマー、1,4−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼンを溶解させた後に、80℃に加熱して3時間反応させた。
【0261】
反応混合物を塩酸中に滴下し反応を停止させ、生成物を析出させた。生成物を濾別回収し、純水、メタノールで数回洗浄後、60℃で一晩真空乾燥させた。
【0262】
これにより、下記式で示される白色の陰イオン交換樹脂前駆体ポリマー(x=6、p=1、q=2、r=8、l=1.5)を収率92%で得た。
【化61】
【0263】
<陰イオン交換基導入>
(クロロメチル化反応)
100mlのガラス反応容器に陰イオン交換樹脂前駆体ポリマー(0.60g)と1,1,2,2−テトラクロロエタン(27ml)を加えた。この混合物を撹拌して陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーを溶解させた後に、アルゴンで置換したグローブボックス中において、クロロメチルメチルエーテル(16ml)、塩化亜鉛(0.5mol/Lテトラヒドロフラン溶液)(3ml)を加えて、80℃で5日間反応させた。
【0264】
反応混合物をメタノール中に滴下して反応を停止させ、生成物を析出させた。生成物を濾別回収し、メタノールで数回洗浄後、60℃で一晩真空乾燥させた。
【0265】
これにより、陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーをクロロメチル化した。
【0266】
(製膜)
【0267】
クロロメチル化された陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーを、溶液キャスト法により製膜した。
【0268】
すなわち、クロロメチル化された陰イオン交換樹脂前駆体ポリマー(0.5g)を1,1,2,2−テトラクロロエタン(5ml)に溶解させ、ガラスフィルター(G3)で濾過した。濾液をシリコンゴムで縁取りされたガラス板状に流し込み、水平に調節した50℃のホットプレート上で静置し、乾燥させることにより厚さ約50μmの透明な膜を得た。
【0269】
(四級化反応)
クロロメチル化された陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーの膜を、トリメチルアミン45質量%水溶液中に室温で2日間浸漬させ、四級化させることにより、透明な陰イオン交換樹脂の膜を得た。
【0270】
なお、この膜はイオン交換基(アンモニオ基)の対イオンが塩化物であるため、1mol/L水酸化カリウム水溶液中に2日間浸漬させ脱気した純水で洗浄することにより、水酸化物型へ変換した。
【0271】
<耐久試験>
実施例で得た陰イオン交換樹脂の膜に対し、耐久試験を行った。具体的には、試験前の陰イオン交換樹脂の膜のIR測定と、1M KOH水溶液(80℃)に24時間浸漬後の陰イオン交換樹脂の膜のIR測定を行った。
【0272】
その結果を
図2に示すように、耐久試験後もエーテル結合の解裂を示唆するピーク(O−Hに基づくピーク)が観測されなかった。
【0273】
それに対し、Journal of Membrane Science Volumes 423−424 (2012) Pages 438−449には、下記構造を有するNF−PAESからなる陰イオン交換樹脂の膜は、同文献のFIG.2より抜粋した
図3に示すように、耐久試験後においてエーテル結合の解裂を示唆するO−Hに基づくピークが観測されることが記載されている(NF−PAES I(耐久試験前)とNF−PAES IV(0.5M NaOH水溶液(80℃)に1時間浸漬後)との対比)。
【0274】
【化62】
【0275】
実施例の耐久試験は、上記の文献に記載されている耐久試験より過酷であるにも関わらず、実施例では、耐久試験後もエーテル結合の解裂を示唆するピーク(O−Hに基づくピーク)が観測されていないことから、耐アルカリ性が向上していることが分かった。