特開2015-175087(P2015-175087A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-175087摩擦杭用の鋼管芯材およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-175087(P2015-175087A)
(43)【公開日】2015年10月5日
(54)【発明の名称】摩擦杭用の鋼管芯材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/28 20060101AFI20150908BHJP
【FI】
   E02D5/28
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-49451(P2014-49451)
(22)【出願日】2014年3月12日
(11)【特許番号】特許第5576578号(P5576578)
(45)【特許公報発行日】2014年8月20日
(71)【出願人】
【識別番号】594087300
【氏名又は名称】エイチ・ジー・サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179176
【弁理士】
【氏名又は名称】江川 寛
(72)【発明者】
【氏名】樋口 雅久
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041AA03
2D041BA22
2D041CA03
2D041CB06
2D041DA01
2D041DA12
2D041DB02
(57)【要約】
【課題】軟弱地盤等において建屋等の構造物を支持するソイルセメント杭やコンクリート杭という摩擦杭の補強用に使用される鋼管芯材について、建設現場でも製造可能な簡単な方法で充分な表面積をもつ鋼管芯材を提供する。
【解決手段】内側に少なくとも一つの突起部14を持つ形成部材12aおよび12bを、鋼管芯材10の表面に圧着し、鋼管芯材10を回転させながら固定された形成部材12aおよび12bから鋼管芯材10を引き抜いて鋼管芯材10の表面にらせん状のくぼみ16を形成する。これにより建設現場にもともと備えられている摩擦杭設置用の重機でも容易に製造可能な摩擦杭用の鋼管芯材を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦杭の中心部分に設置される摩擦杭用の鋼管芯材において、
前記鋼管芯材は表面にらせん状のくぼみを備えることを特徴とする摩擦杭用の鋼管芯材。
【請求項2】
前記らせん状のくぼみは、内側に少なくとも一つの突起部を持つ形成部材を、前記鋼管芯材の表面に圧着し、前記鋼管芯材を回転させながら前記形成部材から引き抜いて形成されたことを特徴とする請求項1に記載の摩擦杭用の鋼管芯材。
【請求項3】
前記鋼管芯材は、前記らせん状のくぼみを複数備え、前記鋼管芯材の長手方向に対して垂直断面上に前記らせん状のくぼみが等間隔に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の摩擦杭用の鋼管芯材。
【請求項4】
表面にらせん状のくぼみを備える摩擦杭用の鋼管芯材の製造方法であって、
内側に少なくとも一つの突起部を持つ形成部材を前記鋼管芯材の表面に圧着させる工程と、
前記鋼管芯材を回転させながら前記形成部材から引き抜く工程と、
を備えることを特徴とする摩擦杭用の鋼管芯材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱地盤等において建屋等の構造物を支持するために使用される摩擦杭の鋼管芯材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に軟弱地盤等であって地盤の支持力が充分でない場所に建屋等を建設する際には杭を地盤に打ち込み、地盤の支持力を改善する場合が多い。
【0003】
地盤の支持力を改善する杭は支持方式によって支持杭と摩擦杭に分けられる。
【0004】
支持杭では杭を地下にある支持層まで打ち込み、主として杭の支持力によって建屋等の荷重を支える。
【0005】
一方、摩擦杭では杭を支持層まで到達させず、主として杭の側面と地盤との間に働く摩擦力によって荷重を支える。摩擦杭は、住宅などの荷重が比較的軽い場合に採用されることが多い。
【0006】
ここで摩擦杭は、地盤を柱状に掘削し掘削した土砂とセメントミルクを撹拌して形成されるソイルセメントからなるソイルセメント杭と、地盤を掘削した後に掘削土砂を除去しコンクリートを流し込んで形成されるコンクリート杭に分類される。
【0007】
しかし軟弱地盤の一部に腐植土や伏流水がある場合などでは、ソイルセメント杭とコンクリート杭のどちらの場合であっても腐植土や伏流水に接する部分が固化しにくい場合があり、その場合には摩擦杭全体の補強として摩擦杭の中心部分に鋼管芯材が使用される。
【0008】
この鋼管芯材に、一般的に販売されている表面が平滑な鋼管を使用すると、ソイルセメントとコンクリート(以下、「ソイルセメント等」と記載する。)と充分に結合せず、補強の効果を充分に発揮することができない。
【0009】
そのためソイルセメント杭とコンクリート杭のどちらの場合であっても周辺のソイルセメント等と充分な強度を持って結合させるために鋼管芯材の表面積を増やす必要があり、特許文献1および特許文献2のように表面に突起物をもつ鋼管芯材などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−114845号公報
【特許文献2】特開2013−256841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし特許文献1に記載の摩擦杭用の鋼管芯材では表面にらせん状の突起物を持つ構造となっているため製造コストが高い上に、事実上、工場でしか製造できないという課題がある。
【0012】
また特許文献2に記載の摩擦杭用の鋼管芯材の場合であっても製造コストの高さに加え、その構造の複雑さのため事実上、工場でしか製造できないという課題がある。
【0013】
そのためもし鋼管芯材が緊急に建設現場で必要となっても工場で製造されたものを取り寄せるしかなく、工期が遅れる原因ともなっていた。
【0014】
本発明はこの課題に鑑み、ソイルセメント等と結合するための充分な表面積を持ちながら簡単に製造可能であり、かつ建設現場でも製造可能な摩擦杭用の鋼管芯材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1) 本発明に係る摩擦杭用の鋼管芯材は、摩擦杭の中心部分に設置される摩擦杭用の鋼管芯材において、前記鋼管芯材は表面にらせん状のくぼみを備えることを特徴とする。
【0016】
(2) また本発明に係る摩擦杭用の鋼管芯材は、(1)に記載の摩擦杭用の鋼管芯材において、前記らせん状のくぼみは、内側に少なくとも一つの突起部を持つ形成部材を、前記鋼管芯材の表面に圧着し、前記鋼管芯材を回転させながら前記形成部材から引き抜いて形成されたことを特徴とする。
【0017】
(3) また本発明に係る摩擦杭用の鋼管芯材は、(1)または(2)に記載の鋼管芯材において、前記鋼管芯材は、前記らせん状のくぼみを複数備え、前記鋼管芯材の長手方向に対して垂直断面上に前記らせん状のくぼみが等間隔に配置されていることを特徴とする。
【0018】
(4) また本発明に係る摩擦杭用の鋼管芯材の製造方法は、表面にらせん状のくぼみを備える摩擦杭用の鋼管芯材の製造方法であって、内側に少なくとも一つの突起部を持つ形成部材を前記鋼管芯材の表面に圧着させる工程と、前記鋼管芯材を回転させながら前記形成部材から引き抜く工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
(1)に記載の摩擦杭用の鋼管芯材によれば、鋼管芯材の表面にらせん状のくぼみを形成するという簡単な方法でソイルセメント等と結合させるための充分な表面積を備えることが可能となる。
【0020】
(2)に記載の摩擦杭用の鋼管芯材によれば、内側に突起部を持つ形成部材を鋼管芯材の表面に圧着させることで鋼管芯材の表面にくぼみを形成し、形成部材が圧着した状態で鋼管芯材を回転させながら形成部材から引き抜くという簡単な方法で鋼管芯材の表面にらせん状のくぼみを形成することが可能となる。
【0021】
また摩擦杭を設置するために必要な重機は鋼管芯材を回転させながら引き抜くという動作が可能なので、建設現場でも重機を使用して簡単にこの鋼管芯材を製造することが可能となる。
【0022】
(3)に記載の摩擦杭用の鋼管芯材によれば、複数のらせん状のくぼみが鋼管芯材の表面に等間隔に配置されているので、鋼管芯材のどの断面であって同じ断面形状となることで鋼管芯材の強度を均一にすることが可能となる。
【0023】
(4)に記載の摩擦杭用の鋼管芯材の製造方法によれば、内側に突起部を持つ形成部材を鋼管芯材に圧着させ、鋼管芯材表面にくぼみを形成した後に鋼管芯材を回転させながら引き抜くという簡単な工程で充分な表面積を持つ鋼管芯材を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】内側に突起部を持つ形成部材と鋼管芯材の模式図である。
図2】鋼管芯材の表面にらせん状のくぼみを形成する状態の模式図である。
図3】らせん状のくぼみを備える鋼管芯材の模式図である。
図4】鋼管芯材が使用された摩擦杭の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。かかる実施形態は発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0026】
本発明の実施形態の構成について図を参照しながら説明する。
【0027】
図1は充分な強度を持つ金属からなる形成部材12aおよび12bを鋼管芯材10に圧着させ、鋼管芯材10の表面にくぼみを形成する図である。
【0028】
鋼管芯材10は一般に入手の容易な足場材などの鋼管を使用するが、通常、鋼管の表面は平滑であり、鋼管の表面が平滑なままでは鋼管芯材として摩擦杭に使用してもソイルセメント等と充分に結合せず摩擦杭を充分に補強することができない。
【0029】
そこで内側に突起部14を持つ形成部材12aおよび12bを表面が平滑な鋼管芯材10に圧着させ、形成部材12aおよび12bに備えられた突起部14により鋼管芯材10の表面にくぼみが形成される。
【0030】
この図1の形成部材12aおよび12bの突起部14は三つとなっているが、突起部14は一つでもよく、要は鋼管芯材10にくぼみが形成できればよい。
【0031】
しかし好ましくは形成部材12aおよび12bの突起部はそれぞれ鋼管芯材10の表面に等間隔にくぼみを形成できるよう複数備えることが望ましい。これにより鋼管芯材10を安定して保持することが可能となる上に、鋼管芯材10の長手方向に対する垂直断面がどこで切断しても同じ断面形状となり、鋼管芯材10の強度が均一となるためである。
【0032】
また形成部材12aおよび12bは図中ではボルトで鋼管芯材10に圧着することとしているが、圧着できれば良いのでネジで締めて圧着させるなどの方法でもよい。
【0033】
図2では図1で表面にくぼみを形成した鋼管芯材10を回転させながら引き抜いて鋼管芯材10の表面にらせん状のくぼみを形成する状態を示している。
【0034】
この形成部材12aおよび12bは鋼管芯材10と同じように回転せず、また移動しないよう、固定されている(固定するための固定台等は図示せず。)。
【0035】
例えば建設現場でこの図2の作業を行う場合には、建設現場にもともと備えられている摩擦杭を設置するための重機であって、その重機の杭を打ち込むための回転部分に鋼管芯材10を固定し、形成部材12aおよび12bを回転しないよう重機の他の部分に固定した状態で鋼管芯材10を形成部材12aおよび12bから引き抜く。
【0036】
これにより建設現場でも簡単に鋼管芯材10を製造することが可能となる。
【0037】
図3は形成部材12aおよび12bから引き抜きが完了した表面にらせん状のくぼみを持つ鋼管芯材10の模式図である。
【0038】
図4は鋼管芯材10を摩擦杭100に使用した場合の断面の模式図である。
【0039】
ソイルセメント杭の場合には、土壌18を柱状に掘削し、掘削土砂とソイルセメントからなる混合物20の中心部分に鋼管芯材10を混合物20が固化する前に貫入させる。
【0040】
またコンクリート杭の場合には掘削した土砂の代わりにコンクリートと骨材からなる混合物20の中心部分に鋼管芯材10を混合物20が固化する前に貫入させる。
【0041】
このようにソイルセメント杭およびコンクリート杭のどちらの場合であっても本発明に係る鋼管芯材10は使用することが可能である。
【0042】
また本発明は、摩擦杭用の鋼管芯材の製造方法としても成立する。
【0043】
すなわち、内側に少なくとも一つの突起部を持つ形成部材12aおよび12bを、表面が平滑な鋼管芯材10の表面に圧着することで鋼管芯材10の表面にくぼみを形成する工程と、その状態のまま形成部材12aおよび12bは固定し、鋼管芯材10を回転させながら形成部材12aおよび12bから引き抜く工程とを備えることを特徴とする摩擦杭用の鋼管芯材の製造方法である。
【0044】
本発明の実施形態の効果であるが、表面に突起物を付加あるいは形成するといった従来の鋼管芯材に比べて、鋼管芯材の表面にらせん状のくぼみを形成するという簡単な方法であることに加え、従来は工場でしか製造できなかった鋼管芯材を、形成部材と、もともと建設現場にある摩擦杭設置用の重機を用いて製造することが可能となり建設工期の遅れを防止できるという顕著な効果を有する。
【0045】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明した。
【0046】
当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範囲内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、摩擦杭の補強用として使用する摩擦杭用の鋼管芯材およびその製造方法として利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
10:鋼管芯材、12a:形成部材、12b:形成部材、14:突起部、16:らせん状のくぼみ、18:地盤、20:ソイルセメント等、100:摩擦杭
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2014年5月30日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦杭の中心部分に設置される摩擦杭用の鋼管芯材において、
前記鋼管芯材は表面にらせん状のくぼみを複数備え、前記らせん上のくぼみは前記鋼管芯材の長手方向に対して垂直断面上に等間隔に配置されていることを特徴とする摩擦杭用の鋼管芯材。