特開2015-175094(P2015-175094A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-175094(P2015-175094A)
(43)【公開日】2015年10月5日
(54)【発明の名称】バルコニー用非常扉
(51)【国際特許分類】
   E06C 9/08 20060101AFI20150908BHJP
【FI】
   E06C9/08 F
   E06C9/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-49535(P2014-49535)
(22)【出願日】2014年3月12日
(71)【出願人】
【識別番号】514062839
【氏名又は名称】阿舎利 秀隆
(71)【出願人】
【識別番号】514062840
【氏名又は名称】坂東 和博
(74)【代理人】
【識別番号】100152700
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 透
(74)【代理人】
【識別番号】100152700
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 透
(72)【発明者】
【氏名】阿舎利 秀隆
【テーマコード(参考)】
2E044
【Fターム(参考)】
2E044AA07
2E044BA14
2E044BB04
2E044BC19
2E044BC22
2E044CA01
2E044CB03
2E044CC01
2E044DA04
2E044DB01
2E044DC00
2E044EE13
(57)【要約】

【課題】
アウトフレーム工法の耐震補強工事によりバルコニー伝いに隣戸への避難が不可能となる集合住宅の1階バルコニーに新設する非常口に設置して、住民の地上への安全な避難を可能とするバルコニー用非常扉であって、高齢者でも簡単な操作で使用可能とでき、防犯上の新たな問題を生じさせず、かつ、外観上も目立たない非常扉を、簡易かつ低コストな構造で実現する。
【解決手段】
折れ曲がり可能に接続した上部扉体と下部扉体とから成る扉部の下端を非常口基部に外側へ転倒可能に取り付け、上部扉体は上端に高さを伸展可能に取り付けた手摺りを備え、災害時等には、扉部を水平に転倒させて非常口を開放し、さらに上部扉体を垂直下方に折り曲げて手摺りを下垂させることにより、上部扉が手摺りを足場ステップとして使用可能な梯子となることを特徴とするバルコニー用非常扉。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物のバルコニー擁壁に設けた非常口に設置するバルコニー用非常扉であって、折れ曲がり可能に接続した上部扉体と下部扉体とから成る扉部の下端を非常口基部に外側へ転倒可能に取り付け、上部扉体は上端に高さを伸展可能に取り付けた手摺りを備え、災害時等には、扉部を水平に転倒させて非常口を開放し、さらに上部扉体を垂直下方に折り曲げて手摺りを下垂させることにより、上部扉が手摺りを足場ステップとして使用可能な梯子となることを特徴とするバルコニー用非常扉。
【請求項2】
前記手摺りは、上部扉体に設けた水平桟を備えるスライド支柱に取り付けて成り、災害時等において扉部を水平に転倒させて非常口を開放し、さらに上部扉体を垂直下方に折り曲げた際には、スライド支柱が伸展して手摺りを下垂させることで、上部扉が水平桟と手摺りを足場ステップとして使用可能な梯子となることを特徴とする、請求項1に記載のバルコニー用非常扉。
【請求項3】
前記扉部のバルコニー側には、一対のハンドル体を外側へ観音開きに展開可能に非常口の両側に取り付けて成り、該ハンドル体を展開することで扉部を転倒させて非常口を開放可能とし、上部扉体を梯子として使用する際に使用者が該ハンドル体を把持可能としたことを特徴とする、請求項1又は2に記載のバルコニー用非常扉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として集合住宅の1階バルコニーの擁壁に設けた非常口に設置するバルコニー用非常扉に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅のバルコニーには、火災等の災害時の住人の避難経路として、下層階への避難にはバルコニー床面に設けたハッチと避難梯子から成る非常口を使用し、また、隣戸のバルコニーとの隔壁を容易に破壊できるものとすることで避難路を確保している。一方、一階バルコニーについては、一般的に隣戸への避難のみが考慮されている。
【0003】
近年では、地震に備えた既存建築物の耐震補強工事が進められている。その工法には、柱や梁の補強、耐震壁の増設、ブレースの取付、アウトフレームの構築、制振・免震装置の取り付け等があるが、集合住宅の場合、住民生活の継続やコスト抑制等の要請から、内部構造の抜本的補強や高コストな制振・免震装置の取り付けよりも、主要な躯体構造へのブレースの取り付けや、建築物外部の全部又は一部に既存構造体と結合する形でアウトフレームを構築する工法が多く用いられている。
【0004】
具体的には、バルコニーを有する集合住宅の場合、例えば図1に示すように、一部住戸のバルコニー側の既存の柱や梁に鉄筋コンクリート製の補強柱や補強スラブ等の構造物を増設した上で、バルコニー擁壁の外側で増設構造物に鋼材の補強フレームや斜め方向のブレースを組み付けてアウトフレームを構築することが一般的である。
【0005】
かかるアウトフレーム工法は、住戸屋内の工事が不要であり、施工後もバルコニーの使用に障害がないという利点を有するが、例えば図2に示すように、バルコニーの両側に増設した補強柱により隣戸への避難が不可能となるため、バルコニーの擁壁の一部に新たに非常扉を設けて地上への避難路を確保する必要が生じる。この際、1階といえども建築物の基礎構造の高さによりバルコニー床面は地上から80cm程度の高さとなる。また、V字型に取り付けられるブレースと非常扉との干渉を避けるためには、非常扉はバルコニーの中央部でブレースの下端を係止する取付板を跨げる位置に設置する必要があるため、実際の非常口下端の地上高は1mを超えることになり、高齢者等の住民にとって非常扉からの避難は危険を伴うものとなる。しかし、非常口から地上に降りるための避難用梯子を常設した場合、外部からバルコニーへの侵入が容易となって防犯上の問題が生じ、建築物の外観も損ねるため好ましくない。
【0006】
これに対し、たとえば特許文献1乃至2に示される如き避難用器具をバルコニーの擁壁に設けた非常扉に装備することが考えられる。しかし、特許文献1に記載の非常脱出用器具取付け装置は非常時に脱出用器具を取り付ける手間が必要なため、高齢者等の迅速な避難には適しておらず、非常口の外観も目立つものとなる。一方、特許文献2に記載のベランダ用避難装置はその構造が複雑でコスト高とならざるを得ず、また、1階バルコニーからの避難用に限定するならば過剰な構造といわざるを得ない。
【特許文献1】特開平9−248348号公報
【特許文献2】特開2011−122400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明に係るバルコニー用非常扉は、前述のアウトフレーム工法の耐震補強工事によりバルコニー伝いに隣戸への避難が不可能となる集合住宅の1階バルコニーに設置して、住民の地上への安全な避難を可能とすることを目的とするものであり、その解決しようとする課題は、高齢者でも簡単な操作で使用可能とでき、防犯上の新たな問題を生じさせず、かつ、外観上も目立たない非常扉を、簡易かつ低コストな構造で実現することにある。
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載した発明は、建築物のバルコニー擁壁(以下、「擁壁」と記す。)に設けた非常口に設置するバルコニー用非常扉であって、折れ曲がり可能に接続した上部扉体と下部扉体とから成る扉部の下端を非常口基部に外側へ転倒可能に取り付け、上部扉体は上端に高さを伸展可能に取り付けた手摺りを備え、災害時等には、扉部を水平に転倒させて非常口を開放し、さらに上部扉体を垂直下方に折り曲げて手摺りを下垂させることにより、上部扉が手摺りを足場ステップとして使用可能な梯子となることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るバルコニー用非常扉は、バルコニー中央部の擁壁に設けた非常口に設置するものであり、上部扉体と下部扉体を一体の扉部として非常口に嵌合するように構成する。また、扉部の外側面は擁壁の外側面と面一を成すように取り付け、上部扉体と擁壁の上端の高さを揃え、かつ、上部扉体の上端に取り付けた手摺りは擁壁上の手摺りと共通のデザインとする。これにより、バルコニー用非常扉は、通常時には擁壁と一体化して目立たず、建築物の外観への影響を最小限とできる。
【0010】
また、かかる構成により、災害時等に避難する住民がバルコニー側から扉部を外側に向かって押すと、下部扉体の下端が非常口基部に外側に転倒可能に取り付けられているため、扉部全体が外側に転倒して非常口が開放される。図3に示す如く、アウトフレーム工法の耐震補強工事によりバルコニー下方には補強スラブが擁壁を超えて突出するように新設されており、さらに、該補強スラブの先端には横方向の補強フレームが固定され、V字型にブレースの下端を固定するブレース取付板が起立している。転倒した扉部は、下部扉体が該ブレース取付板の上端に当接してこれを跨ぐ渡し板の如く水平に支持され、さらに、下部扉体に折れ曲がり可能に接続された上部扉体は、垂直下方に90度折れ曲がる。この際、上部扉体の上端に取り付けた手摺りは伸展可能に構成しているため、それ自体の重量により垂直下方に伸展する。これにより、手摺りは避難の際に足場ステップとして使用可能となる。
【0011】
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載したバルコニー用非常扉であって、前記手摺りは上部扉体に設けた水平桟を備えるスライド支柱に取り付けて成り、災害時等において扉部を水平に転倒させて非常口を開放し、さらに上部扉体を垂直下方に折り曲げた際には、スライド支柱が伸展して手摺りを下垂させることで、上部扉が水平桟と手摺りを足場ステップとして使用可能な梯子となることを特徴とする。
【0012】
前述の通り、非常時等に住民がバルコニー側から押すことにより転倒した扉部は、まず、下部扉体がブレース取付板を跨ぐ水平の渡し板としての役割を果たし、さらに、上部扉体が垂直方向に90度折れ曲がって先端から手摺りを下垂させることで梯子としての役割を果たす。請求項2に記載した発明は、上部扉体に設けた水平桟を備えるスライド支柱に手摺りが取り付けられているため、手摺と水平桟がスライド支柱と一体的に下垂する。これにより、手摺りだけでなく水平桟も足場ステップとして使用可能となるため、梯子としての利便性及び安全性が向上する。なお、水平桟の数は任意であるが、水平状態の下部扉体と地面との距離を1m程度と想定した場合、たとえば水平桟を2本とすることで、手摺りと合わせて合計3段の足場ステップを有する梯子として使用可能とすることが好適である。
【0013】
次に、請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載したバルコニー用非常扉であって、前記扉部のバルコニー側には、一対のハンドル体を外側へ観音開きに展開可能に非常口の両側に取り付けて成り、該ハンドル体を展開することで扉部を転倒させて非常口を開放可能とし、上部扉体を梯子として使用する際に使用者が該ハンドル体を把持可能としたことを特徴とする。
【0014】
災害時等にバルコニーから屋外へ避難する場合には、住民はまずバルコニー用非常扉を外側に転倒させて非常口を開放した後、水平状態となった下部扉体の上に上がり、そこで身体をバルコニー側に反転させた後、垂直下方に下垂した上部扉体と手摺りを梯子として使用することで地上に降りる。この際、住民の避難の安全性確保のためには、両手で把持して身体の安定を支えるためのハンドルが必要である。
【0015】
本発明では、扉部のバルコニー側に、非常口の両側を支持点として外側に観音開きに展開可能な一対のハンドルを取り付けた構成としている。具体的には、たとえば、縦棒状の一対のハンドルとステーから成るハンドル部を、非常口両側に設けた丁番に取り付け、上方から見て外側に90度観音開きに展開した時点でハンドルが固定される構造とすることが望ましい。
【0016】
かかる構成により、災害時等には、住民が両手で一対のハンドルを外側に向かって押し開くだけで、ハンドルに押された扉部が外側に転倒し、自動的に渡し板と梯子が形成され、ハンドルが90度展開した時点で固定される。住民は渡し板となった下部扉体に上がって身体をバルコニー側に反転させた後、両手で各ハンドルに掴まりながら梯子となった上部扉体と手摺りに順次脚を掛けて地上へ降りることができる。これにより、下部扉体上での身体の反転動作及び地上へ降りる行動の間を通じて、住民は身体の安定を保つことができ、高齢者でも安全な避難が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の構成によれば、極めて簡易かつ低コストな構造で、集合住宅の1階バルコニーに設けた非常口から住民が落差のある地上に容易に避難できるバルコニー用非常扉を提供できる。本発明に係るバルコニー用非常扉は、通常時にはバルコニー擁壁と一体化するために建築物の美観を損ねることがなく、バルコニー外部に梯子等を常設することもないので、防犯上の問題も防止できるという効果を奏する。一方、災害時等には、バルコニー側から扉部を押し倒すという簡単な操作だけで、耐震補強工事によりバルコニーの外側に増設されたアウトフレーム構造を乗り越える渡し板と梯子が自動的に形成されるため、地上への避難が迅速に行えるという効果を奏する。また、バルコニー用非常扉に外部へ観音開きに展開して固定可能なハンドルを設けることにより、高齢者を含む住民の避難時の安全性が確保できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図3は、アウトフレーム工法の耐震補強工事を施した集合住宅の1階バルコニーの非常口に本発明に係るバルコニー用非常扉を適用した状態を示す一実施形態の断面図であり、左図は非常口を閉鎖した通常時、右図はバルコニー用非常扉を展開した避難時を示す。
【0020】
1階及び2階の既設のバルコニーの下部には鉄筋コンクリート製の補強スラブが新設されており、上下両補強スラブの前面には横方向の補強フレームが、既存柱の前面に新設された補強柱(図示せず)の前面には縦方向の補強フレーム(図示せず)が組み付けられ、これらのH型鋼から成る補強フレームが外部から見てロの字型のアウトフレームを構成している。また、1階バルコニー側の横方向の補強フレームの中央部上面にはブレース取付板が起立する形で設けられており、アウトフレームの両上隅部と該ブレース取付板との間には、外部から見てV字型を成すように2本の補強ブレース(図示せず)が固定されている。
【0021】
図4は、本実施形態に係るバルコニー用非常扉の三面図である。扉部20は下部扉体21と上部扉体22が第2丁番24で折れ曲がり可能に接続されて成り、下部扉体21の下端の第1丁番23でバルコニー擁壁に設けられた非常口の基部に外側へ転倒可能に取り付けられている。また、上部扉体22のバルコニー側面両端には開口溝34を有する一対の固定支柱31が開口溝34を対面する方向で固定されている。さらに、固定支柱31内には2本の水平桟33で連結された一対のスライド支柱32がスライド可能に内挿されており、スライド支柱32の上端に手摺り30が取り付けられている。かかる構成により、手摺り30、スライド支柱32、水平桟33は梯子状の一体的な枠体として一対の固定支柱31内に沿って自由にスライド可能となる。また、両固定支柱31の上部には一対のプッシュボルト11が取り付けられている。
【0022】
非常口両側部の擁壁の切断面には一対の支持柱10が取り付けられており、通常時は扉部20が一枚板として起立して両支持柱10の間に嵌合して非常口を閉鎖している。両支持柱10の上部内側面には前記プッシュボルト11に対応するロック孔(図示せず)が設けられており、通常時はプッシュボルト11のピンが該ロック孔に嵌合することにより扉部20を固定して閉鎖状態を維持している。また、両支持柱10の対向面2か所に設けたハンドル丁番43には、縦棒状のハンドル41とそれを支持するステー41から成る一対のハンドル部40が回動可能に取り付けられており、通常時はハンドル41が非常口両側部の擁壁の間で非常口を封鎖する位置に保持されているが、災害時等には両ハンドル部40は外側に向けて観音開きに展開可能としている。さらに、両支持柱10のバルコニー側面の上下端にはマグネット12を設けており、通常時には、マグネット12に対応する位置に金属片を取り付けたカバー13が非常口のバルコニー側前面を覆う形で装着されている。カバー13は、通常時に住戸側から非常口を見た際に本バルコニー用非常扉の構成が見えないよう景観上の配慮から装着するものであり、材質としてはたとえば軽量なポリカーボネート板を用いることが好適である。
【0023】
図5は、本実施形態に係るバルコニー用非常扉のハンドル部40の開閉状態を上方から見た平面図である。前記両ステー42は外側面にそれぞれスナッチロック43を有し、また、両擁壁の外側面には対応する位置に受け金具44を設けているため、両ハンドル部40が外側に観音開きに展開された際には、スナッチロック43が受け金具44に嵌合してハンドル41が固定される。
【0024】
図6は、本実施形態に係るバルコニー用非常扉のバルコニー側から見た閉鎖時の斜視図であり、説明の便宜上、カバー13を取り外した状態を示している。図6に示す如く、バルコニー用非常扉を構成する扉部20及びハンドル部40は、通常時には非常口両側の擁壁間にすべての構成が収納された状態となり、手摺り30は擁壁上の手摺り(図示せず)と同じデザインで同じ高さに支持されるため、擁壁と一体化した外観を呈する。
【0025】
図7は、本実施形態に係るバルコニー用非常扉を災害時等に外部に展開して避難に使用する場合の状態を外部から見た斜視図であるが、説明の便宜上、バルコニー外側に位置するアウトフレームやバルコニー周辺の外部構造は省略している。災害時等に住民がバルコニーから地上へと避難する必要が生じた場合、住民はまずバルコニーに出て非常口を覆うカバー13を取り外してバルコニー用非常扉の内面を露出させる。次に、プッシュボルト11のリリースボタン(図示せず)を押して扉部20の固定を解除した後、両手でハンドル41を外側に向けて押す。すでに固定が解除されている扉部20は、ハンドル41に押されることで、まず、第1丁番23を軸に外側へと転倒し、下部扉体21が前記ブレース取付板の上端に当接して水平に支持される。さらに、上部扉体22が第2丁番24を軸に垂直下方に折れ曲がり(A図参照)、その際、手摺り30、スライド支柱32、水平桟33から成る枠体が固定支柱31内をスライドして下垂し、手摺り30が地上付近まで降下することで避難用梯子が形成される(B図参照)。なお、固定支柱31の適宜の位置にはスライド支柱32が下垂し過ぎて脱落することを防ぐために、緩衝材を備えた落下防止板(図示せず)を設けておくことが望ましい。また、図7に示す如く、上部扉体25にはその中央部に長方形の開口部25を設けている。これは、手摺り30の下垂が完了して水平桟33とともに梯子の足場ステップとして使用する際に、水平桟33に掛けた足先と上部扉体25との干渉を回避するためのものである。
【0026】
さらに、扉体20の転倒時の下部扉体21への衝撃を緩和するために、ブレース取付板の上端には、ゴム等から成る緩衝材を設けておくことが望ましい。また、展開時に折れ曲がり下垂した上部扉体22が不用意に揺動して避難に支障をきたすことのないように、第2丁番には上部扉体22を垂直に下垂した状態になった時点で固定する固定機構を設けても良い。
【0027】
一方、外側に観音開きに開かれたハンドル部40は、90度展開した所で前記スナッチロック44が前記受け金具45に嵌合するため、ハンドル41は渡し板となった下部扉体21の上方で非常口外側両脇に固定される。その後、住民は下部扉体21の上に上がり、身体を住戸側に反転させた上で、両手でハンドル41を把持しながら水平桟33及び手摺り30を梯子の足場ステップとして使用しつつ地上に降り、避難が完了する。
【0028】
以上、本発明に係るバルコニー用非常扉の実施形態の具体的な構成と災害時等の使用状態ついて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において改良又は変更が可能であり、それらは本発明の技術的範囲に属する。本発明に係るバルコニー用非常扉は、アウトフレーム工法による耐震補強工事を施した集合住宅のバルコニーを前提に、一般的にブレース取付板が位置するバルコニー中央部に非常口を設けて設置することを想定しているが、設置位置はこれに限られるものではなく、耐震補強工事の有無に関わらず、非常口の外側に転倒時の下部扉体21を支持し得る構造を設けることにより、バルコニーの任意の位置に設置可能である。また、非常口を設けるバルコニーは擁壁構造に限定されるものではなく、本バルコニー用非常扉は金属製の柵等から成るバルコニーにも適用可能である。なお、バルコニー用非常扉の構成部材の材質は特に限定されないが、手摺り30、固定支柱31、スライド支柱32、水平桟33及びハンドル部40を構成する部材は、軽量かつ堅牢で耐錆性に優れたステンレス製あるいはアルミ合金製とすることが好適である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係るバルコニー用非常扉は、主にアウトフレーム工法による耐震補強工事を行うことで隣戸バルコニーへの避難が困難となる集合住宅の1階バルコニーに新設する非常口へ設置することで、災害時等における1階住戸住民の地上への安全な避難を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】集合住宅耐震補強工事施工側面図
図2】集合住宅耐震補強工事施工平面図
図3】本実施形態の断面図
図4】本実施形態に係るバルコニー用非常扉の三面図
図5】本実施形態に係るハンドル部の開閉状態を示す平面図
図6】本実施形態に係るバルコニー用非常扉のバルコニー側から見た通常時の斜視図
図7】本実施形態に係るバルコニー用非常扉の外側から見た展開時の斜視図
【符号の説明】
【0031】
10 支持柱
11 プッシュボルト
12 マグネット
13 カバー
20 扉部
21 下部扉体
22 上部扉体
23 第1丁番
24 第2丁番
25 開口部
30 手摺り
31 固定支柱
32 スライド支柱
33 水平桟
34 開口溝
40 ハンドル部
41 ハンドル
42 ステー
43 ハンドル丁番
44 スナッチロック
45 受け金具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7