(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-17596(P2015-17596A)
(43)【公開日】2015年1月29日
(54)【発明の名称】弁機構及び外燃式クローズドサイクル熱機関
(51)【国際特許分類】
F01L 3/20 20060101AFI20141226BHJP
F02G 1/043 20060101ALI20141226BHJP
F02G 1/05 20060101ALI20141226BHJP
F02G 1/055 20060101ALI20141226BHJP
F01L 3/22 20060101ALI20141226BHJP
F01L 1/08 20060101ALI20141226BHJP
【FI】
F01L3/20 Z
F02G1/043 D
F02G1/043 Z
F02G1/05 A
F02G1/055 G
F01L3/22 B
F01L3/22 Z
F01L1/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-146808(P2013-146808)
(22)【出願日】2013年7月12日
(71)【出願人】
【識別番号】591265840
【氏名又は名称】横浜製機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】海法 俊光
(72)【発明者】
【氏名】楠 健次郎
【テーマコード(参考)】
3G016
【Fターム(参考)】
3G016AA19
3G016BA30
3G016BB03
3G016BB04
3G016CA27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】大容量の作動ガスを短時間に小さな力で開閉できるポペットバルブを開発する。
【解決手段】バルブヘッド2がバルブシート5と密着した閉の状態から、開の状態に移動する動作が、高圧環境側から低圧環境側に移動する構成とし、当該移動が自由状態下で行われるポペットバルブとする。また、バルブシート5を弁台4に対して弾性体6を介して浮動状態に取り付け、バルブシート5と弁台4間は連結部材6により気密とし、バルブヘッド2に印加する圧力をバルブシャフトによって支持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブヘッドがバルブシートと密着した閉の状態から、開の状態に移動する動作が、高圧環境側から低圧環境側に移動する構成とし、当該移動が自由状態下で行われることを特徴とするポペットバルブ。
【請求項2】
バルブシートが弁台に対して弾性体6を介して浮動状態に取り付けられており、バルブシートと弁台間はシール機構により気密とし、バルブヘッドに印加する圧力がバルブシャフトによって支持されることを特徴とする請求項1記載のポペットバルブ。
【請求項3】
弁台には、バルブシートの下方から受ける係合段部が形成されていることを特徴とする請求項2記載のポペットバルブ。
【請求項4】
ポペットバルブが閉の状態が、バルブヘッドが前記弾性体の弾性に抗してバルブシートを押圧し、圧着を維持する位置で形成されることを特徴とする請求項2又は3に記載のポペットバルブ。
【請求項5】
バルブヘッドと接触するバルブシートの当たり面にテーパであり、当該バルブシートの当たり面に対向するバルブヘッドの当たり面にテーパが形成されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のポペットバルブ。
【請求項6】
請求項2記載の弾性体は、円形の板バネであって、外周側が弁台に接合され、内周側がバルブシートに接合されており、該円形板バネによってシール機構も形成されることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のポペットバルブ。
【請求項7】
シール機構が、バルブシートと弁台の摺動面間に配置された弾性シール部材によって形成されていることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載のポペットバルブ。
【請求項8】
請求項2記載の弾性体が、通気性のバネ体であり、一端が弁台に接合され、他端がバルブシートに接合されていることを特徴とする請求項7記載のポペットバルブ。
【請求項9】
請求項2記載の弾性体がリング状弾性体であり、バルブシートが該リング状弾性体の上面に接触、且つ、該リング状弾性体が弁台に設けた環状凹部に配置されていることを特徴とする請求項7記載のポペットバルブ。
【請求項10】
バルブ支持機構は、カムによって制御される機構を備えており、バルブヘッドはシャフトを介し、カムによって支持され、カムは遊びを持って駆動軸に取り付けられており、カムによって押し上げられてバルブが閉となるとともに、カムによって閉位置に固定保持され、
開時において、バルブヘッドは、シャフトを介し支持カムによる支持が外れるとともにバルブヘッドに加わる圧力によりバルブヘッド及びシャフトは押し下げられ、カムは空転制御されるバルブ支持機構を備えていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のポペットバルブ。
【請求項11】
外燃式クローズドサイクル熱機関において、加熱器あるいは冷却器の入り口側及び出口側に配置される開閉弁である請求項1〜10のいずれかに記載のポペットバルブ。
【請求項12】
密閉された気室と加熱器及び冷却器を設け、該気室と該加熱器の入り口側及び出口側と導通する流路を設け、該気室と冷却器の入り口側及び出口側と導通する流路を設け、それぞれ入り口側及び出口側の流路に開閉弁を設け、作動ガスを移動する手段が設けられた外燃式クローズドサイクル熱機関であって、
開閉弁として請求項1〜10のいずれかに記載のポペットバルブを用いたことを特徴とする外燃式クローズドサイクル熱機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポペットバルブに関するものである。特に、大面積の弁機構に適したポペットバルブであり、この弁機構を用いた外燃式クローズドサイクル熱機関に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
本発明者等は、外燃式クローズドサイクル熱機関の研究開発を行っている。特許文献1(特許第4520527号公報)、特許文献2(特開2011−64121号公報)、特許文献3(特開2011−17411号公報)、特許文献4(特開2012−31804号公報)などを提案した。
本発明者等が開発している外燃式クローズドサイクル熱機関は、スターリングエンジンから発達したものある。
加熱器内の作動ガスは高圧(P
H)であるが高温(T
H)であり、冷却器内の作動ガスは低圧(P
L)であるが低温(T
L)である。したがって、ボイル・シャルルの法則によりP
H/P
L<T
H/T
Lの範囲では冷却器内の作動ガスの密度ρ
Lは加熱器内の作動ガスの密度ρ
Hより大きい。当該エンジンにおいては気室と弁装置を介し、冷却器内の高密度の作動ガスと加熱器内の低密度作動ガスの作動ガスを入れ替えることにより冷却器から加熱器に作動ガス質量を移動させ、上限ρ
H=ρ
L、即ちP
H=P
L×T
H/T
Lになるまで加熱器内作動ガスの圧力を高め、発生する作動ガス圧力差により動力ピストンを駆動するものである。
この方式の外燃式クローズドサイクル熱機関はすでに特許を取得しており、平成20年度NEDO委託事業「新エネルギーベンチャー技術革新事業」において原理実証機を試作し、自立運転に成功して原理は証明されている。
外燃式機関としてバイオマス等の固形燃料を使用できる。また液体、気体燃料に関しても燃焼を最適条件で行える等の利点を有しているが、従来のスターリングエンジンが加熱器、冷却器を極度に小さくしなければ効率が低下するに対し、サイクル中において弁により加熱器または冷却器を隔離することにより加熱器または冷却器の圧力変化を小さくし、加熱器および冷却器等を大きくしても効率低下をきたさないことを可能ならしめたものである。
即ち、外部からの熱をエンジン内にとりこむ伝熱面積を大きくできるため従来のスターリングエンジンに比し、低い温度での加熱、また低い作動ガス充填圧でも作動できる利点を有するものである。加熱器または冷却器を隔離するための弁は大きな作動ガス流量に対処するため大面積が必要であり、大きな圧力差に抗して迅速に開くことができなくてはならない。この目的のためポペットバルブを使用している。ポペットバルブは、通常、内燃機関の吸排気を行う弁機構に用いられている。自動車のエンジンなど一般的に普及しており、この弁のバルブヘッドは、シリンダ内に押し出されて開状態となる構造が用いられている。内燃機関の燃焼室吸排気口(ポート)には素早く開閉ができる、片側からの高圧に耐えられる、構造が簡単で耐用作動時間が長い等の理由でポペットバルブが主に使用されている。これは弁体が弁座シート面から直角方向に移動する形式のバルブであり、閉時には片側からの高圧により弁体が弁座シートに押しつけられるため高圧に耐え、また高い気密性を得ることができる。この構造の弁体は、弁座シートに押しつけられる力に抗して開く必要がある。内燃機関では、爆発的な膨張スピードと圧力を伴い2000℃以上の燃焼ガスに曝されるので、数リットル以下の容積のシリンダの吸排気を取り扱う弁機構に適している。したがって、この構造のポペットバルブでは、開くためにはバルブヘッドの面積に応じた大きさの力が必要になる。
例えば、従来方式のポペットバルブが
図10(特許文献6(特開平6−81616号公報))に示されている。バルブは、常時はバルブスプリングによって、バルブシートに密着するように付勢されており、バルブシャフトの後端側をロッカーアームで押し込むことにより、バルブヘッドがシリンダなどの高圧側に押し出されて、弁が開状体となる。閉状態において、バルブヘッドは、バルブスプリングと高圧によりバルブシートに押しつけられるため、大面積の弁では弁を開くために大きな力が必要となる。
【0003】
本発明者等は平成23年度NEDO委託事業「新エネルギーベンチャー技術革新事業」(フェーズB)において23kW出力(設計目標)のエンジンを試作した。2気筒の高温気室(180mmφ)には各2個の吸気弁、排気弁が付いている。その開口径は各70mmである。最大発生差圧は1.2Mpaと計画しているが、その結果、弁に加わる圧力による力は各4.6kN、2個で9.2kNになり、弁を開けるにはこの力に抗する力をカムにより発生する必要がある。試作エンジンでは圧力バランスピストンを設け、弁開力の低減を図り、成功しているが、構造が複雑になるのみならず差圧によりカムの発生すべき力は変化し、最適設計が課題である。またシール材の耐熱性に限界があり、作動ガス温度を300℃以上にするには冷却等を行う必要がある。さらに弁を開けるカム(従来カム
図6(b)参照)は通常形状とせざるを得ないため、弁開の初期においては弁開の速度は遅く、気室内の圧力低下に時間がかかり、気室内ピストンが上昇するに抵抗となる。
このように外燃式クローズドサイクル熱機関の研究開発を行う過程において、容量を大きくして出力を向上させる上において、既存の構造のポペットバルブでは大量の作動ガスを制御する弁機構としては、欠点があることを判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4520527号公報
【特許文献2】特開2011−64121号公報
【特許文献3】特開2011−17411号公報
【特許文献4】特開2012−31804号公報
【特許文献5】特開2006−275018号公報
【特許文献6】特開平6−81616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、大面積で短時間に開き、小さな力で駆動できるポペットバルブを開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、圧力差に対し、バルブヘッドを後退させて弁を開放する機構を採用することにより、大容量の作動ガスを素早く制御する弁機構を提案する。
本発明の発明者らは、この方式を追求して研究し、特に、バルブシートを浮動式として弾性を持って支持し、閉状態においてはバルブシートに加わる圧力によりバルブシートをバルブヘッドに押し付けて気密を保つ方式を提案する。高温・高圧環境下では、金属などの高温耐熱性材料が一般的であり、金属製のバルブシートとバルブヘッドをカムにて押圧し密着を維持するために、バルブシートを浮動式として、両者の押圧による干渉を吸収し、密着性を維持し、弁としての機密性を保つ構造により、本発明を実現した。
【0007】
本発明の主な態様は次のとおりである。
1.バルブヘッドがバルブシートと密着した閉の状態から、開の状態に移動する動作が、バルブヘッドが高圧環境側から低圧環境側に移動する構成とし、当該移動が自由状態下で行われることを特徴とするポペットバルブ。
2.バルブシートが弁台に対して弾性体を介して浮動状態に取り付けられており、バルブシートと弁台間はシール機構により気密とし、バルブヘッドに印加する圧力がバルブシャフトによって支持されることを特徴とする1.記載のポペットバルブ。
3.弁台には、バルブシートの下方から受ける、係合段部が形成されていることを特徴とする2.記載のポペットバルブ。
4.ポペットバルブが閉の状態が、バルブヘッドが前記弾性体の弾性に抗してバルブシートを押圧し、圧着を維持する位置で形成されることを特徴とする2.又は3.に記載のポペットバルブ。
5.バルブヘッドと接触するバルブシートの当たり面にテーパであり、当該バルブシートの当たり面に対向するバルブヘッドの当たり面にテーパが形成されていることを特徴とする2.〜4.のいずれかに記載のポペットバルブ。
6. 2.記載の弾性体は、円形の板バネであって、外周側が弁台に接合され、内周側がバルブシートに接合されており、該円形板バネによってシール機構も形成されることを
特徴とする2.〜5.のいずれかに記載のポペットバルブ。
7.シール機構が、バルブシートと弁台の摺動面間に配置された弾性シール部材によって形成されていることを特徴とする2.〜6.のいずれかに記載のポペットバルブ。
8.2.記載の弾性体が、通気性のバネ体であり、一端が弁台に接合され、他端がバルブシートを押す構造であることを特徴とする7.記載のポペットバルブ。
9.2.記載の弾性体がリング状弾性体であり、バルブシートが該リング状弾性体の上面に接触、且つ、該リング状弾性体が弁台に設けた環状凹部に配置されていることを特徴とする7.記載のポペットバルブ。
10.バルブ支持機構は、カムによって制御される機構を備えており、バルブヘッドはシャフトを介し、カムによって支持され、カムは遊びを持って駆動軸に取り付けられており、カムによって押し上げられてバルブが閉となるとともに、カムによって閉位置に固定保持され、開時において、バルブヘッドは、シャフトを介し支持カムによる支持が外れるとともにバルブヘッドに加わる圧力によりバルブヘッド及びシャフトは押し下げられ、カムは空転制御されるバルブ支持機構を備えていることを特徴とする1.〜9.のいずれかに記載のポペットバルブ。
11.外燃式クローズドサイクル熱機関において、加熱器あるいは冷却器の入り口側及び出口側に配置される開閉弁である1.〜10.のいずれかに記載のポペットバルブ。
12.密閉された気室と加熱器及び冷却器を設け、該気室と該加熱器の入り口側及び出口側と導通する流路を設け、該気室と冷却器の入り口側及び出口側と導通する流路を設け、それぞれ入り口側及び出口側の流路に開閉弁を設け、作動ガスを移動する手段が設けられた外燃式クローズドサイクル熱機関であって、開閉弁として1.〜10.のいずれかに記載のポペットバルブを用いることを特徴とする外燃式クローズドサイクル熱機関。
【発明の効果】
【0008】
1.本発明のポペットバルブは、小さな力で開くことができ、瞬間的に開となる大面積のポペットバルブに適している。バルブ開く動作が、バルブヘッドが自由移動状態で行われるので、バルブヘッドに負荷している高圧を利用して、一気に短時間に開放することが実現できる。バルブヘッドの開方向への動作を高圧環境側から低圧環境側へ移動させる構成を採用したことにより、作動ガスの圧力を開動作に活用することができるので、本発明のポペットバルブは、大容量の作動ガスを移動させる開閉弁機構として適している。
2.バルブシートが浮動状態で取り付けられているのでバルブヘッドがバルブシート押し上げることが許容され、両者の密着性が向上する。シール機構が設けられることによりバルブシートが浮動状態に設けられても、気密性が保たれる。本発明のポペットバルブは、バルブヘッドがバルブシートに対して押し上げる状態で密着して、弁の閉状態を構成する機構である。バルブシートを弁台に直接固着せずに、弾性体を介して取り付けたことによって、バルブヘッドとバルブの高い密着性を実現できる。
3.バルブシートは、下方移動がバルブ受け台に設けられた段部よって支えられるので、弾性体の強度及び可変量は小さくて済む。弁が閉から開への移動状態においては、弁座シートに負荷される圧力が弁台で支持され、耐久性が高い構造である。
4.バルブシートとバルブヘッドの当たり面に形成されたテーパによって、テーパ面によってバルブシートは広がる方向へ付勢され、弁台に圧接することとなって、両者は密着性が向上する。加圧状態においてはバルブシート5加わる圧力によりバルブシートがバルブヘッドに押し付けられることにより両者の密着性はさらに向上する。
5.バルブヘッドは、カム機構によって制動される。バルブヘッドに印加する圧力を利用して開方向へのバルブヘッドを移動させることができる。一方、閉方向への移動は、高圧環境側と低圧環境側の圧力差が少なくなった状況で行われるので、カムの駆動負荷は大きくする必要はない。また、閉方向への移動負荷は小さい状態でカムを制動させることができる。
【0009】
6. バルブヘッドがカムにより駆動される本発明のポペットバルブは、素早く開閉ができ、片側からの高圧に耐え、構造が簡単で、耐久性に優れ、かつ大面積としても駆動に大きな力を要しない利点を有する。本発明のポペットバルブは、大容量の作動ガスの回路設計に有効であり、実用的な出力を得ることができる大型の外燃式クローズドサイクル熱機関に適している。特に、気室、加熱器、冷却器が独立した外燃式クローズドサイクル熱機関における、それぞれの出入り口に設ける弁に適している。
7.外燃式クローズドサイクル熱機関に採用すると、例えば、バルブシート5が弁台4に対して弾性体6を介して取り付けられており、またバルブシートと弁台間は弾性体6、または他に設けたシール材により気密とし、閉状態において加圧前においてはバルブヘッドをバルブシートに押し付けることにより生じる弾性体の反力によりバルブヘッドとバルブシート間の気密を保ち、加圧後はバルブシートに印加される圧力(70mmφ、幅5mmのバルブシートであれば差圧は1.2Mpaにおいて1.3kNになる)によりバルブシートがバルブシャフト3によって固定保持されたバルブヘッド2に押し付けられて気密が保たれる。この状態から、本発明は、シャフト側の支えを外し、無抵抗状態でバルブヘッドを後退させてバルブを開とする。バルブヘッドの支えが無くなったバルブシートも、開動作の初期に瞬間的に高い圧力が負荷されるが、弁台の段部が受け止めることができる。そして、バルブヘッドの上下動制御を、カムを用いた場合、瞬間的に支えを外すようなカムを設計することができ、開の状態ではカムを遊び期間とし、閉方向への移動は、気圧差が少ない状態で行うことができる。したがって、バルブの開は短時間かつ瞬間的に実現でき、閉動作は小さな抵抗で行うことができるのでカムを駆動する力も少ない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本発明のポペットバルブ例1の閉状体を示す図。
【
図3】本発明のポペットバルブ例1の閉状体における加圧状態を示す図。
【
図4】本発明のポペットバルブ例1の開状体への動作を示す図。
【
図5】本発明のポペットバルブに用いられるカム機構の例を示す図。
【
図6】回転カムの例を示す図。(a)本発明の回転カムの例、(b)従来の回転カムの例、(c)弁の開放度を示す概略曲線
【
図8】浮動バルブシートの例を示す図。(a)円形板状バネの例、(b)小穴付き円形バネ+機密バネの例、(c)Oリング弾性体の例、(d)Oリングシール機構の例
【
図9】本発明のポペットバルブに用いられるカム機構の他の例を示す図。
【
図11】外燃式クローズドサイクル熱機関1の例を示す図。
【
図12】外燃式クローズドサイクル熱機関2の例を示す図。
【
図13】外燃式クローズドサイクル熱機関2に適用した本発明のポペットバルブの例を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、大面積で短時間に開き、小さな力で駆動できるポペットバルブを提供する。本発明は、圧力差に対し、バルブヘッドを後退させて弁を開放する機構を採用することにより、大容量の作動ガスを素早く制御する弁機構である。特に、バルブシートを浮動式として弾性を持って支持し、閉状態においては弁座に加わる圧力によりバルブシートをバルブヘッドに押し付けて気密を保つ方式である。高温・高圧環境下では、金属などの高温耐熱性材料が一般的であり、金属製のバルブシートとバルブヘッドをカムにて押圧し密着を維持するために、バルブシートを浮動式として、両者の押圧による干渉を吸収し、密着性を維持し、弁としての機密性を保つ構造である。
バルブシートを高圧環境側に配置し、バルブヘッドを低圧環境側に配置し、バルブヘッドは開動作において、低圧環境側に移動する構成である。
バルブシートは、弁台に対して浮動可能に取り付けられている。閉動作によって、バルブヘッドがバブルシートに近づき、押し上げることができる。バルブシートが浮動状態であるので、バルブヘッドの押し上げを許容して、両者が密着できる。
バルブシートは、弁台との間に弾性部材を介して取り付けられ、弁台との間を密閉するシール機構が設けられる。また、開動作に伴う圧力をバルブシートの下方において弁台が受ける段部を設け、弾性部材に負担を軽減する。弾性部材の疲労も軽減され、耐久性が向上する。
バルブヘッドは、開動作において速やかに移動し、素早く全開となる支持機構、制御機構を備えている。バルブヘッドは、バルブシートと密着する弁の閉状態と隔離して開状体となる位置に移動することにより、弁の開閉がなされる。本発明のポペットバルブでは、弁の開動作において、バルブヘッドがバルブシートから速やかに離反させる構造を採用することが重要である。
カム制御による弁の開放度をグラフ化して
図6(c)に示す。バルブヘッドをシリンダ内などの高圧側に押し出して弁を開放する従来例では、高い抵抗に対抗するために初期の開放スピードが低く、その後も圧に抵抗して動かす必要があるので、カムは駆動軸と一体となって制御される。本発明は、バルブヘッドの支えが外れるようにして開放動作が始まり、高圧が開放動作を加速する方向に働くことになり、カムは駆動軸に対してフリーの状態となるので、急速に短時間に弁は完全に開放される。
図6(c)に示される開放度曲線に見られるように、初期抵抗および駆動制御による弁の開放動作挙動の差によって、本発明は、瞬発力、作動ガスの圧力ロスにおいて、従来例に比して格段の利得が得られる。特徴は内燃機関では燃やせないゴミでも燃やせることにある。瞬発力は内燃機関と対抗できない外燃式クローズドサイクル熱機関において、本発明は出力向上に有用な技術である。
バルブヘッドは、開方向への移動は、自由移動可能とし、閉動作は強制駆動される構成である。例えば、バルブシャフトをバルブシートに対して遠近可能に移動できるように案内支持し、バルブシャフトの後端をカムの案内面に当接させて、摺動可能にする。弁の閉鎖動作においてカムが強制駆動され、弁が閉鎖している間は閉位置をキープする構成である。開動作においては、カム駆動に対して遊嵌によって、自由動を許動し、及び閉を維持する間は、カムの案内面がバルブヘッドに負荷する圧力を受ける構成とする。このような、構造としては、カムを駆動軸に遊嵌し、バルブヘッドを閉動作及び閉位置に保つ間は、カムが制動され、開動作においては、カムはフリーとなる構成とする。さらに、バルブシャフトの案内部にバネ配置して開放方向へ付勢するように配置し、開動作の初動を助勢することも、開動作手段の補助手段として有効である。
あるいは、楔形カムを用いて、開動作を楔カムの傾斜面を自由に滑動できるように構成する。
バルブヘッドは、前述のように、バルブシートに対して干渉する位置まで接近し、浮動状態に設けられたバルブシートが干渉を吸収して、両者は密着する。
本発明のポペットバルブは素早く、開とでき、片側からの高圧に耐え、構造が簡単で、耐用作動時間が長く、かつ大面積としても駆動に大きな力を要しない利点を有する。したがって、大容量の作動ガスの回路設計に有効であり、実用的な出力を得ることができる大型の外燃式クローズドサイクル熱機関に適し、大型の外燃式クローズドサイクル熱機関を実現することができる。
本発明を具体的な態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
本発明のポペットバルブ例1を
図1〜
図4に示す。図示は、ポペットバルブの弁機構1の要部を模式的に示している。弁台4に開口部Wを設け、開口部の周縁にバルブシート5を配置する。このバルブシート5に対してバルブヘッド2が遠近動して、弁の開閉が行われる。
バルブシート5は、開口部Wに面した弁台4の周縁部に形成された嵌合部4cに配置される。この嵌合部4cは高圧環境側に面して形成されており、弁台の周縁部を削って凹状部あるいは、リング状に土手状に形成しても良い。図示の例では、凹部に形成され、バルブシート5は、弁台の肉薄周縁部4b上に載置されている。バルブシート5は、弾性部材で形成された連結部材6を介して弁台4と接続されている。バルブシート5は、連結材6が弾性変形する範囲で自由である。連結材の一端が弁台に固定され、他端がバルブシートに固定されている。この取付け機構によって、バルブシート5は高圧環境側が自由面となり、弁台の肉薄周縁部4bに向けて常時付勢されている。連結部材6は、例えば、リング状板バネが用いられる。リング状板バネの中間部に湾曲部を設けることにより、バルブヘッドがバルブシートを押し上げに対する干渉を吸収し密着性が向上して、姿勢が安定する。バルブシートと弁台の間は気密性が保たれるように構成される。リング状バネが上方を封鎖することによって、シール機能が発揮されている。
バルブシート5がバルブヘッド2と当接する当たり面5cは、テーパが形成されている。バルブヘッド2側の当たり面2cもテーパが形成されており、両者が接合してバルブシートと弁台の気密性は向上する。
【0013】
バルブヘッド2は、バルブシート5に当接して開口部Wを封鎖する状態と、バルブシート5から離間して開口部Wを開放する遠近動作を行う。バルブヘッド2はバルブシャフト3が一体に形成されており、該バルブシャフトの後端がカムなどの制動機構に連結されている。バルブヘッド2は、バルブフェース2aを上面とし、側面はテーパを形成してバルブシートとの当たり面2cとする。裏面2bにはバルブシャフト3が形成されている。
バルブシャフト3の後端にはロール3bが回転自由に取り付けられている。バルブシャフトの後端は、カム機構7のカム面7aによって、上下動に位置が制御される。カム機構7は、カム駆動回転軸8によって駆動される。
図1は、バルブの開状態を示しており、この図示の例では、バルブシート5の側が高圧環境HPであり、バルブヘッド2側が低圧環境LPであるが、弁が開いているので圧力差はない。
【0014】
図2は、バルブが閉の状態を示している。カム機構7が回動してカム面7aに案内されてバルブシャフト3が上昇しバルブヘッドの当たり面2cとバルブシートの当たり面5cが接触し、バルブシート5が少し持ち上げられた状態で開口部Wは閉鎖される。バルブシート5は、リング状板バネなどの弾性によって反力F2が発生し、両者を密着し、気密性が保たれる。バルブヘッドがバルブシートを押し上げる量は機器の設計及び加工精度によもよるが、例えば、0.1〜0.5mm程度である。
【0015】
図3は、バルブが閉状態において、高圧環境側HPから高圧P3が加わった状態を示している。高圧が加わることにより、バルブシート5はバルブヘッド2に押しつけられ、さらに気密が強化される。バルブヘッド2のバルブフェース2aにも圧力による力が加わるが、バルブ3はカム機構7により高位置が維持され、支持力P1が高圧P3と均衡する。そして、
図3は、カム面の変位点を示しており、この位置に至った瞬間にカムは自由回動して、一気にバルブヘッドが下降する。
【0016】
その結果、ポペットバルブが閉から開状体に変位した状態を
図4に示されている。カム機構7が回転してカム面7bに案内されてバルブシャフト3の支持位置が低位置になって、バルブヘッド2が高圧P3により押し下げられバルブは開となり、開口部Wは開放される。高圧環境HPにある作動ガスは低圧環境LPに向かって移動する。
【0017】
[回転カムの例]
図5は、回転カム機構の例を示す。
図5(a)は、カム機構の正面図、
図5(b)は側面図を示す。
回転カム7をカム駆動軸8に回転フリーな状態に取付け、回転カム7の側面に押しピン9を取付け、駆動回転軸8には押しピン9に当接するアーム8aを設ける。駆動回転軸8が回転して、アーム8aが押しピン9に当接し、さらに回転が進むにつれて、カム案内面7aに接触しているバルブシャフト3の後端は押し上げられ、トップの位置にて、バルブは閉となる。しばらく、トップの位置が保たれ、カム案内面が下降点に位置すると、バルブシャフトの後端が急激に下降して、バルブ開放される。回転カム7がフリーなので、押しピン9はアーム8aとの当接が外れた状態となる。さらに駆動回転軸8が回転すると、アーム8aが再び押しピン9に当接して、案内面7aとバルブシャフトの後端が接触した時点より、バルブの閉動作が始まる。
バルブヘッドが受ける圧力は、バルブシャフトを通して、回転カムで受け止められる。駆動回転軸と回転カムとをフリーの状態に設定することにより、開放時に生ずる回転カムに加わる衝撃的な回転モーメントから駆動回転軸を保全することができる。このため駆動回転軸、及び駆動回転軸駆動装置は大きな強度を要しない。そして、回転カムの支持機構は駆動回転軸とは別に構成することができ、強度設計も自由となる。
【0018】
本発明に使用できる回転カムの例を
図6(a)に示し、従来例の回転カムの例を
図6(b)に示す。
本例の回転カムは、中心に通るカム駆動回転軸に対してフリーに取り付けられる。これに対して、従来の回転カムは、キー結合用の切欠きが設けられており、カム駆動回転軸の回転と連動する構成とされている。
本例の回転カムと従来の回転カムの開動作時の弁の開放度曲線を
図6(c)に示す。本例は、カムがフリー状態で弁が開動作するので瞬間的に全開状態となる。これに対して、従来例は、押圧圧力と駆動軸の回転速度に規制されるので、開放初期には開きが小さく、完全に開くのに時間を要する。このため、本例では作動ガス圧力は瞬時に低下し、ピストンの移動に障害となる残圧の影響を減少させる。
【0019】
[本発明のポペットバルブの機構例2]
図7は、バルブシャフト側が高圧環境HP、バルブヘッドフェース側が低圧環境LPに設けられる本発明のポペットバルブの例を示している。弁台4の開口部Wの周縁であって高圧環境側に形成した肉薄周縁部4bにバルブシート5が配置されている。このバルブシート5は、
図1に開示したバルブシート同様にリング状板バネで形成した連結部材6で両者が接続されている。
図示において、バルブシャフトの後端がカムの案内面が最下点と接触している位置で弁は閉の状態を維持し、カムが回転しカムの案内面が直線的に変化する箇所においてバルブシャフトの後端は、カムとの係合が外れ、バルブヘッドは高圧によって押されて、低圧環境側へ短時間で移動して、バルブは開状態に変化する。カム面と接触しない間が開の状態を維持している。その後、カムが回転して、カム案内面とバルブシャフトの後端が接触して、開から閉へと変化する。
【0020】
[浮動バルブシートの例]
浮動バルブシートの例を
図8に示す。
バルブシート5は固定されておらず、弁台4に設けた開口部の周縁に配置されている。図示の例では、弁台4に段部41を形成し、先端側に形成した肉薄周縁部4bにバルブシートの一部が係合する形状となっている。バルブシート5は、弾性のある連結部材を介在させて弁台に取り付けられている。バルブシートは、高温耐性のある金属製、焼結材などで形成する。連結部材も高温耐性が必要であり、金属製が望ましい。
図8(a)は、連結部材として円形板状バネ61を使用した例である。図示は断面表示である。幅のあるリングであり、中央が湾曲している。外側周縁が弁台4に設けられたスリット42に差し込まれて固定され、内側周縁がバルブシート5の上面に接合されている。中央を湾曲されることによりバルブシート5をバルブヘッド2側に付勢するように構成されている。外側周縁が弁台4に設けられたスリット42に差し込まれ、内側周縁がバルブシート5の上面に接合されている構造により弁台4とバルブシート間が気密とされる。バルブヘッド2が下方に移動した際にバルブシートは段部41に係合して安定する。
【0021】
図8(b)は、非気密円形バネ+気密バネシールの例である。
連結部材は(a)と同様に円形板バネであるが、非気密である。湾曲した形状の気密バネ55を弁台4とバルブシート5の間に挿入し、シール性を確保している。気密バネ55の下端は弁台に設けたスリット43に挿入して、片持ち状に固定してある。
図8(c)は、Oリング弾性体を用いた例である。弁台の開口部に面する壁面に環状に凹部を設けて嵌合部4cを形成する。下方は前述と同様に肉薄周縁部4bとなり、上部は張出部4dを形成する。この嵌合部4cにバルブシート5の上方を挿入し、その上方にOリング弾性体63を配置する。バルブシートの上下動は、Oリングの変形性を利用して吸収する。弁が開状態において、バルブシートが肉薄周縁部4bの段部に接するように配置されており、バルブヘッド2が上昇しバルブシート5を押し上げた場合に、Oリングが撓んで、嵌合部4cの壁面に密着することとなり、シール性が発揮される。
図8(d)は、非気密円形バネ+Oリングシールの例である。
図8(b)の気密バネに代えてOリング56をシール材に利用した例である。弁台4の肉薄周縁部4bに環状凹部44を設け、この環状凹部44にOリング56を嵌め込み、バルブシート5の壁面と摺動するように設ける。このOリング56によってシール性が発揮される。このOリングはシールのみを行うもので弾性変形は要求されないため金属Oリングとして耐熱性を高めることができる。
【0022】
[楔カムの例]
図9は、楔型のカムを用いた例である。バルブシート及びバルブヘッドの構成は
図1と同様の例を示している。バルブシャフトの後端の高さを制御するカム機構として、楔型カム17を使用している。トップポイントTPとアンダーポイントUPを設け、両ポイントの間に傾斜した案内面17aを配置してある。トップポイントTPとアンダーポイントUPは平坦に形成してバルブシャフトの後端がこれらの位置で安定して支持されるようにする。
バルブシャフトの後端がトップポイントTPに位置する図示の状態で、バルブは閉の状態であり、楔型カム17が図面右R方向に移動すると、バルブシャフトに印加されている荷重によって、バルブシャフト後端は案内面17aを滑りアンダーポイントLPの位置で安定し、この状態でバルブは開となる。楔型カム17は、TPとLPの間を水平に往復動可能に設定されており、右R方向はフリー、左L方向はカム押しピンなどにより、強制移動される構造とする。この構造により、楔型カム17を左L方向に移動すると、バルブシャフトの後端はUPから案内面17aに沿って上昇し、TPに至る。これによって、バルブは、開から閉となる。
楔型カムは平面で荷重を受けることができ、また、閉の状態においてバルブシャフトに負荷される大きな圧力をほとんど停止状態で受けることができるので、バルブが閉の状態でバルブシャフトに負荷される大きな圧力を安定して受けることができる機構である。
【0023】
バルブの回動の制動と機構として、回転カムや楔型カムを例示したが、これらの機構に限定するものではない。高圧の作動ガスを短時間に移動させるために、大面積のバルブヘッドが必要であり、高圧側へバルブヘッドを押し上げて開放するには、大きな力が必要になるが、本発明のポペットバルブは、低圧側へバルブヘッドを移動させることによって、押し上げ力を必要とせず、短時間に開放できるバルブ構成である。
一方、閉状態でバルブヘッドに印加する圧力に抗して、バルブシートとの密着性を維持するために、バルブシートを弁台に固定せずに浮動型とし、弾性の支持部材を介して弁台に取り付ける構成を採用した。これによって、バルブヘッドがバルブシートを押し上げる状態で密着することが可能となり、バルブの閉鎖性を向上、及び耐久性を実現できている。
さらに、バルブシートの配置は、弁台の開口周縁を薄くして設けた嵌合凹部に載置する構成して、バルブシートに係る力を弁台で受けることができるので、弾性の支持部材のヘタリなどの劣化が抑制され、実用的な耐久性を実現した。
また、バルブシャフトを通して、圧力がカムなどの機構に付加されるが、カムの構造を駆動軸と切り離すなど工夫することにより、駆動軸及び駆動システムに強度を要しない構造を実現した。
本発明に使用される素材、材質、材料は、従来この分野で用いられているものを使用することができる。
【0024】
[外燃式クローズドサイクル熱機関1]
図11に、本発明のポペットバルブを適用できる外燃式クローズドサイクル熱機関の例を示す。この外燃式クローズドサイクル熱機関は、特許文献1に開示したものと同様である。外燃式クローズドサイクル熱機関100の実施例を示す概略断面図である。
同図において、気室101の下部に隔壁110およびシリンダ111が設けられ、該シリンダ111内側へピストン112が設けられている。113はクランク、114は回転軸、115はフライホイールで構成されている。クランク113、回転軸114、フライホイール115は密閉されたクランク室116内に収められている。これらは、従来公知であるので詳細については言及しない。気室101上端にはファン120を設け、該ファン120下流にはチャンバー130が形成されている。ファン120を駆動する電動機(図示せず)は、気室101上部に設けられ、該ファン120は駆動軸121に固設されている。140は加熱器で、一端がチャンバー130と熱気入り口側流路141を介して導通し、他端が気室の下部と熱気出口側流路142を介して導通している。150は冷却器で、一端がチャンバー130と冷気入り口側流路151を介して導通し、他端が気室101の下部と冷気出口側流路152を介して導通している。143は、熱気入り口側流路141に設けられた開閉弁、144は、熱気出口側流路142に設けられた開閉弁、153は冷気入り口側流路151に設けられた開閉弁、154は冷気出口側流路152に設けられた開閉弁である。
【0025】
実線で示す開閉弁143、144、153、154の位置は加熱過程で、破線は冷却過程を示している。これらの開閉弁に、本発明の構成のポペットバルブを適用する。気室101の容量を大きくすることにより、ピストン112に作用する力が大きくなり、回転軸114からの出力を大きくすることができる。この気室101に充填される作動ガスを加熱器140あるいは冷却器150の間で流通させる開閉弁の開口も大きくする必要となる。
【0026】
上記作用は、まずファン120により気室内の窒素ガス等の作動ガスの流れが矢印方向に生じ、チャンバー130へ送り込まれ、開閉弁143、144開、開閉弁153、154閉と制御されているので、作動ガス流が矢印で示すように熱気入り口側流路141へ導かれ、加熱器140を通過して熱気出口側流路142から気室下部へ矢印で示すように流れ込むことにより、気室内の作動ガスが加熱されて高温・高圧となり膨張し、ピストン112を下方へ押し下げ、クランク113を介して回転軸114が回転される。この気室が加熱過程にある時、開閉弁153、154は閉じられた状態で、冷却器150内の作動ガスは冷却され続けている。次に、熱気出口側流路142の開閉弁144と熱気入り口側流路141の開閉弁143を破線で示す閉の位置とし、冷気出口側流路152の開閉弁154と冷気入り口側流路151の開閉弁153を破線で示す開の位置とすれば、気室内の高温・高圧の作動ガスは冷却器150内に流入して、気室内の圧力は急激に低下する。冷却器150内と気室内の圧力がほぼ均等になった時点で、気室、ファン120、冷気入り口側流路151、冷却器150、冷気出口側流路152、気室と作動ガスの循環が作動し、気室内の作動ガスが冷却・減圧され収縮するので、ピストン112はクランク室116内のガスの圧力で押し上げられ、(気室内は高圧であるので冷却時においても圧力は大気圧よりはるかに高い。)クランク113を介して回転軸114が回転される。この気室が冷却過程にある時、開閉弁143、144は閉じられた状態で、加熱器140内の作動ガスは加熱され続けている。したがって、気室が加熱過程開始時、冷却過程が終了後の低温・低圧の気室を開閉弁143、144、153、154の切り替えで、急激に上昇させることができる。このように開閉弁143、144、153、154の開閉切り替えを繰り返すことにより、気室内の作動ガスは繰り返して加熱・冷却され、加圧・減圧される。
従来のスターリングエンジンの加熱器、冷却器が一部の期間動作するのに比し、上記したように加熱器140及び冷却器150は、全期間有効に作用しているため、性能は向上する。また加熱するための熱量、冷却するための冷熱量は全期間を通じて有効に利用され、従来のスターリングエンジンのように熱量、冷熱量の一部が無駄に消費されることがないため、システムの熱効率は向上する。
適用でき外燃式クローズドサイクル熱機関は、この
図9に開示した例にとどまらず、気室と加熱器あるいは冷却器との間に設けた開閉弁に適用できる。開閉弁の加熱器側が高圧環境、冷却器側が低圧環境である。本発明者、本出願人が提案した特許文献1〜4に提案した外燃式クローズドサイクル熱機関のそれぞれに適用して、さらに大出力化を実現することができる。
【0027】
[外燃式クローズドサイクル熱機関2]
図12は、本発明の外燃式クローズドサイクル熱機関200の実施例を示す概念図である。この例は本出願人が先に提案した特許文献4に
図7として開示した例と同様である。
気室B、Aとして内部にピストン281、286を設けたシリンダー280、285の2個を使用し、各シリンダートップにはそれぞれ作動ガスの出入り口283、288が設けられ、ピストンロッド282、287を介してピストン281、286を180°の位相をもってクランクシャフト90で連動する構成としたものである。
【0028】
気室Aの出入り口288に対して、加熱器210及び冷却器220に対する流路214、224に開閉弁216、226が設けられており、気室Bの出入り口283に対して、加熱器210及び冷却器220に対する流路213、223に開閉弁215、225が設けられている。気室A及び気室Bは、ピストン281、286を180°の位相をもって移動させることにより、作動ガスの移動を行うことができる。
作用体240は、公知のピストンシリンダー241、該ピストンシリンダー241内を上下に摺動するピストン242、駆動軸244に固設されたフライホイール243、ピストン242とフライホイール243を連接するクランク245、クランク室246で構成されている。駆動軸244は、クランク室246外へ軸封装置(図示せず)を介して外部へ出力する。ピストンシリンダー241トップへ作動ガスの出入り口部247を設け、加熱器210の出口部217及び冷却器220入り口部227と導通する流路218、228をそれぞれ設け、該流路218、228にそれぞれ開閉弁219、229が設けられている。作動ガスは、窒素ガス等が封入されている。
本実施例の作用は、先行文献4に開示した内容と同様であり、ここでは詳細は省略する。
【0029】
外燃式クローズドサイクル熱機関200に本発明のポペットバルブ機構を応用した例である。加熱器210と冷却器220と気室A、Bとの間に設けられた開閉弁215、225に応用した例を
図13、
図14に示す。
気室B(シリンダ280)の入り口283と加熱器210と連絡する流路213に開閉弁215が設けられ、冷却器220と連絡する流路223に開閉弁225が設けられている。各流路において、加熱器に近い側が高圧環境HPであり、冷却器に近い側が低圧環境LPとなっている。この圧力環境に応じて、本発明のポペットバルブのバルブヘッドの移動方向が設定される。
【0030】
図13(a)は、上から見たポペットバルブ機構を示している。
図13(b)は、側面から見た構成を示している。気室が2基設けられた例を示している。2基は構成が同じである。カム駆動回転軸8が左右に配置されている。中央部に気室の出入り口が開口している。その出入り口の左右に開閉弁215、225が配置されている。バルブシート5に対して遠近動するバルブヘッド2が配置され、バルブヘッドからバルブシャフト3が伸び、該シャフトの先端がローラを介して、カム駆動回転軸8の取り付けられたカム7に接触している。
図13(b)では、バルブヘッド、バルブシート付近は
図13(a)と同様であるので省略してある。
図13bではカム駆動回転軸8に取り付けられた回転カム7の構成が明らかである。
図14は、
図13の右側を拡大表示である。
図14(a)は上から見た構成、
図14bは側面から見た構成である。
流路の壁部に設けられた弁台4にバルブシート5が弾性の連結部材6にて取り付けられて浮動弁座を構成している。バルブシートに対抗してバルブヘッド2が配置され、該バルブヘッド2から回転カム7側に向けて、バルブシャフト3が伸び、シャフト基部3aに取り付けられたトローラ3bを介して、回転カム7に接触し案内されるように構成されている。バルブシャフト3には高圧が負荷されるので、中間に案内部を設けることができる。また、バルブシャフトの先端が安定するように基部3aを設け架台側に案内レールなどを設けて、カムによる昇降動作を安定した姿勢で行うように構成している。
なお、回転カム7はカム駆動回転軸8に対してベアリングを介在させて、回転フリーに取り付けられている。回転カムにも大きな負荷が掛かるので、ベアリングを左右に設けて両持ち支持として、安定性を備えた構成としている。
【符号の説明】
【0031】
1 弁機構
2 バルブヘッド
2a バルブフェース
2b バルブヘッドの裏面
2c 当たり面
3 バルブシャフト
3a 基部
3b ロール
4 弁台
4b 肉薄周縁部
4c 嵌合部
4d 張出部
42 スリット
43 スリット
5 バルブシート
5c 当たり面
55 気密バネ
56 管状Oリング
6 連結部材
61 円形板状バネ
7 カム機構
7a カム面
7b カム面
8 カム駆動回転軸
8a アーム
9 押しピン
17 楔型カム
17a 案内面
HP 高圧環境
LP 低圧環境
W 開口部
P1 支持力
P2 反力
P3 高圧
TP トップポイント
UP アンダーポイント
100 外燃式クローズドサイクル熱機関
101 気室
110 隔壁
111 シリンダ
112 パワーピストン
113 クランク
114 回転軸
115 フライホイール
116 クランク室
120 ファン
121 駆動軸
130 チャンバー
140 加熱器
141 熱気入り口側流路
142 熱気出口側流路
143、144、153、154 開閉弁
150 冷却器
151 冷気入り口側流路
152 冷気出口側流路
210 加熱器213、214、218、223、224、228 流路
217 出口部
215、216、219、225、226、229 開閉弁
220 冷却器227 入り口部240 作用体
241 ピストンシリンダー
242 ピストン
243 フライホイール
244 駆動軸
245 クランク
246 クランク室
247 出入り口部
248 ピストントップ280、285 シリンダー(気室B、A)
281、286 ピストン
282、287 ピストンロッド
283、288 出入り口
290 クランクシャフト