【解決手段】ガスケット締付計算システム(1)の第1締付力算出手段(34)は、指定されたサイズに対応する有効幅及び有効径と、指定された圧力と、指定されたガスケットのガスケット係数と、に基づいて、第1締付力を算出する。第2締付力算出手段(35)は、有効幅及び有効径と、指定されたガスケットの最小設計締付圧力と、に基づいて、第2締付力を算出する。第3締付力算出手段(36)は、指定されたサイズに対応するガスケット接触面積と、指定されたガスケット及び内部流体の種類に対応する最小締付面圧と、を乗算して第3締付力を算出する。最小締付トルク算出手段(37)は、第1締付力、第2締付力、及び第3締付力のうち最大のものと、ボルトに関する情報と、に基づいて、最小締付トルクを算出する。提示手段(43)は、最小締付トルクをユーザに提示する。
複数種類のガスケットの各々と、ガスケット係数、最小設計締付圧力、及び内部流体の種類に応じた最小締付面圧と、を関連付けたデータベースを記憶する記憶手段の記憶内容を取得するステップと、
前記複数種類のガスケットの何れかと、当該ガスケットに関するサイズ及び圧力と、内部流体の種類と、のユーザによる指定を受け付ける受付ステップと、
前記指定されたサイズに対応する有効幅及び有効径と、前記指定された圧力と、前記指定されたガスケットのガスケット係数と、に基づいて、内圧でフランジが開かないために必要なガスケットの第1締付力を算出する第1締付力算出ステップと、
前記有効幅及び前記有効径と、前記指定されたガスケットの最小設計締付圧力と、に基づいて、内部流体の浸透漏れ又は接面漏れが生じないために必要なガスケットの第2締付力を算出する第2締付力算出ステップと、
前記指定されたサイズに対応するガスケット接触面積と、前記指定されたガスケット及び内部流体の種類に対応する最小締付面圧と、を乗算して第3締付力を算出する第3締付力算出ステップと、
前記指定されたガスケットを締め付けるボルトに関する情報を取得する取得ステップと、
前記第1締付力、前記第2締付力、及び前記第3締付力のうち最大のものと、前記ボルトに関する情報と、に基づいて、内部流体が漏れないために必要なボルトの最小締付トルクを算出する最小締付トルク算出ステップと、
前記指定されたガスケットに関連付けて、前記最小締付トルクを前記ユーザに提示する提示ステップと、
を含むことを特徴とするガスケット締付計算システムの制御方法。
複数種類のガスケットの各々と、ガスケット係数、最小設計締付圧力、及び内部流体の種類に応じた最小締付面圧と、を関連付けたデータベースを記憶する記憶手段の記憶内容を取得する手段、
前記複数種類のガスケットの何れかと、当該ガスケットに関するサイズ及び圧力と、内部流体の種類と、のユーザによる指定を受け付ける受付手段、
前記指定されたサイズに対応する有効幅及び有効径と、前記指定された圧力と、前記指定されたガスケットのガスケット係数と、に基づいて、内圧でフランジが開かないために必要なガスケットの第1締付力を算出する第1締付力算出手段、
前記有効幅及び前記有効径と、前記指定されたガスケットの最小設計締付圧力と、に基づいて、内部流体の浸透漏れ又は接面漏れが生じないために必要なガスケットの第2締付力を算出する第2締付力算出手段、
前記指定されたサイズに対応するガスケット接触面積と、前記指定されたガスケット及び内部流体の種類に対応する最小締付面圧と、を乗算して第3締付力を算出する第3締付力算出手段、
前記指定されたガスケットを締め付けるボルトに関する情報を取得する取得手段、
前記第1締付力、前記第2締付力、及び前記第3締付力のうち最大のものと、前記ボルトに関する情報と、に基づいて、内部流体が漏れないために必要なボルトの最小締付トルクを算出する最小締付トルク算出手段、
前記指定されたガスケットに関連付けて、前記最小締付トルクを前記ユーザに提示する提示手段、
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[1.ガスケット締付計算システムの全体構成]
以下、本発明の実施形態の一例について図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係るガスケット締付計算システムの全体構成を示す図である。
図1に示すように、ガスケット締付計算システム1は、ユーザ装置10及びサーバ装置20を含む。ユーザ装置10及びサーバ装置20は、ネットワークNを介して互いにデータ送受信可能に接続される。なお、
図1では、ユーザ装置10を複数台として説明するが、ユーザ装置10は、1台であってもよい。また、サーバ装置20を1台として説明するが、サーバ装置20は、複数台であってもよい。
【0029】
ユーザ装置10は、パーソナルコンピュータや携帯端末(スマートフォンやタブレット型端末)等により実現される。ユーザ装置10は、ユーザにより操作される。例えば、ガスケットを購入する顧客やガスケットメーカーの営業担当が、ユーザ装置10を操作するユーザに相当する。
【0030】
ユーザ装置10は、例えば、CPU等からなる制御部11と、各種プログラム(アプリケーション)や当該プログラムを実行するために必要な各種データを記憶する記憶部12と、キーボードやポインティングデバイス(例えば、マウスやタッチパネル)等からなる操作部13と、液晶ディスプレイ等からなる表示部14と、他の装置と有線又は無線で通信を行うためのネットワークカード等からなる通信部15と、を含んで構成されている。
【0031】
本実施形態では、ユーザがガスケットを選定する際に利用するプログラム(以降、単にガスケットアプリという)が、記憶部12に記憶されている。なお、ガスケットには、予め定められた寸法の規格品と、顧客の要求に応じて寸法する個別寸法品と、があるが、ここでは説明の簡略化のため、ユーザが規格品を選定する場合について説明する。
【0032】
サーバ装置20は、サーバコンピュータであり、例えば、ガスケットメーカーにより管理される。サーバ装置20は、例えば、CPU等からなる制御部21と、各種プログラムや当該プログラムを実行するために必要な各種データを記憶する記憶部22と、他の装置と有線又は無線で通信を行うためのネットワークカード等からなる通信部23と、を含んで構成されている。サーバ装置20は、ユーザ装置10からの要求に応じて、記憶部22に記憶されたデータやプログラムをユーザ装置10に配信する。なお、ここでは、データやプログラムが記憶部22に記憶されている場合を説明するが、これらは、サーバ装置20に接続されたデータベースサーバに記憶されるようにしてもよい。
【0033】
また、ユーザ装置10及びサーバ装置20は、種々のコンピュータのハードウェアを適用可能である。例えば、ユーザ装置10及びサーバ装置20は、情報記憶媒体の読取装置を含んでいてもよい。更に、本実施形態において、記憶部12又は記憶部22に記憶されるものとして説明するプログラムや各種データは、光ディスクやフラッシュメモリ等の外部記憶媒体から取得されるようにしてもよいし、ネットワークを介して外部コンピュータから取得されるようにしてもよい。
【0034】
[2.ガスケット締付計算システムにおいて実現される機能]
図2は、ガスケット締付計算システム1で実現される機能のうち、本発明に関連する機能を示す機能ブロック図である。
図2に示すように、ガスケット締付計算システム1は、データベース記憶部30、ガスケット情報取得部31、ボルト情報取得部32、受付部33、第1締付力算出部34、第2締付力算出部35、第3締付力算出部36、最小締付トルク算出部37、許容締付力算出部38、許容締付トルク算出部39、応力算出部40、応力判定部41、使用可否判定部42、及び提示部43を実現する。
【0035】
これら各機能は、制御部11がガスケットアプリを実行することによって実現される。本実施形態では、データベース記憶部30は、記憶部22を主として実現され、他の各機能は、制御部11を主として実現される。なお、データベース記憶部30、ボルト情報取得部32、受付部33、第1締付力算出部34、第2締付力算出部35、第3締付力算出部36、及び提示部43以外の機能は、省略するようにしてもよい。
【0036】
[2−1.データベース記憶部]
データベース記憶部30は、ガスケットに関する各種情報が格納されたガスケットデータベースを記憶する。例えば、ガスケットデータベースは、ガスケットの締付計算を実行するために必要なデータを格納した締付計算データベースと、各ガスケットに設定された値を格納した設定基準データベースと、各ガスケットと使用可能条件とを関連付けた推奨ガスケットデータベースと、を含む。
【0037】
図3は、締付計算データベースの一例を示す図である。本実施形態では、締付計算データベースには、複数種類のガスケットの各々と、圧力に関する規格である圧力クラス(フランジ規格)と、ガスケットの大きさに関する規格であるサイズ(呼び径)と、ガスケットの内径及び外径(単位は、[mm]とする。)と、フランジのうちガスケットと接する部分の径であるフランジ座RF径(単位は、[mm]とする。)と、ガスケットを締め付けるボルトに関する情報と、ガスケットの内圧P(単位は、[MPa]とする。)と、が関連付けられている。
【0038】
ここでは、規格品のガスケットを例に挙げて説明するので、圧力クラス(フランジ規格)及びサイズ(呼び径)には、例えば、JIS等の規格で規定される記号列が格納される。また、ボルトに関する情報は、同じレコードに格納されたガスケットを締め付ける際に用いられるボルトに関する情報であり、例えば、ボルトの本数n、ボルトの種類、ボルトの外径D(単位は[mm]とする。)、及びボルト谷径断面積(単位は[mm
2]とする。)を含む。
【0039】
図4は、設定基準データベースの一例を示す図である。本実施形態では、設定基準データベースには、複数種類のガスケットの各々と、ガスケット係数m、ガスケットがフランジ座に馴染むために必要な圧力である最小設計締付圧力y(単位は[N/mm
2]とする。)、内部流体の種類に応じた最小締付面圧σ
3(内部流体をシールするために必要な面圧であり、単位は[N/mm
2]とする。)、及びガスケットに許容される面圧である許容面圧p(単位は[N/mm
2]とする。)と、が関連付けられている。最小締付面圧σ
3は、内部流体の種類に応じて値が異なるように設定されている。
【0040】
なお、
図4では省略しているが、特定種類のガスケットについては、厚みに応じて、ガスケット係数m、最小設計締付圧力y、及び許容面圧pのうちの少なくとも一つが異なるようにしてもよい。
【0041】
図5は、推奨ガスケットデータベースの一例を示す図である。
図5に示すように、推奨ガスケットデータベースは、ガスケットの使用可能条件(ここでは、内部流体、温度、及び圧力)と、当該使用可能条件のときに推奨するガスケット(又は、使用可能なガスケット)の種類と、が関連付けられている。使用可能条件には、例えば、内部流体の種類、使用時の温度の範囲、及び使用時の圧力の範囲が定義されている。なお、推奨するガスケットの種類は、一つであってもよいし、複数種類であってもよい。複数種類である場合には、ユーザに推奨する優先度が定められているようにしてもよい。
【0042】
また、データベース記憶部30は、複数種類のボルトの各々に関する各種情報が格納されたボルトデータベースを記憶するようにしてもよい。ボルトデータベースには、ユーザにより指定されたガスケットを締め付けるボルトに関する情報が格納されている。本実施形態では、ボルトデータベースは、複数種類のボルトの各々の耐久応力を含む。耐久応力は、ボルトに許容される応力であり、ボルトを破壊しないための限界応力ともいえる。なお、耐久応力は、ユーザごとに異なるようにしてもよいし、ガスケットの種類に応じて異なるようにしてもよい。例えば、ユーザによっては、ボルトが破壊される応力の50%の値を耐久応力とするようにしてもよい。
【0043】
なお、データベース記憶部30に記憶されるデータは、上記の例に限られない。データベース記憶部30は、各ガスケットの締付計算を実行するために必要なデータを記憶すればよい。例えば、締付計算データベース、設定基準データベース、及び推奨ガスケットデータベースのデータ格納例は、
図3〜
図5に示す例に限られない。
【0044】
[2−2.ガスケット情報取得部,ボルト情報取得部]
ガスケット情報取得部31は、データベース記憶部30に記憶された締付計算データベース、設定基準データベース、及び推奨ガスケットデータベースを取得する。ボルト情報取得部32は、ボルトデータベースや締付計算データベースに格納されたボルトに関する情報を取得する。
【0045】
[2−3.受付部]
受付部33は、複数種類のガスケットの何れかと、当該ガスケットに関するサイズ及び圧力と、内部流体の種類と、のユーザによる指定を受け付ける。受付部33は、締付計算の対象とするガスケットに関する情報を入力するための入力画面から、これらの指定を受け付ける。
【0046】
図6は、表示部14に表示される入力画面の一例である。
図6に示すように、入力画面60には、ガスケットの種類を指定するための種類指定フォーム61と、ガスケットに関する圧力クラスを指定するための圧力クラス指定フォーム62と、ガスケットに関するサイズを指定するためのサイズ指定フォーム63と、内部流体の種類を指定するための流体指定フォーム64と、を含む。
【0047】
ユーザは、種類指定フォーム61に、複数種類のガスケットのうちの何れかを指定する。例えば、ユーザは、ガスケットを一意に識別するための製品番号を種類指定フォーム61に入力する。なお、複数種類の厚さが存在するガスケットについては、種類指定フォーム61において、ガスケットの種類と厚さとが指定できるようにしてもよい。
【0048】
ユーザは、圧力クラス指定フォーム62に、複数種類の圧力クラスのうちの何れかを指定する。例えば、ユーザは、規格で定められた圧力クラス(フランジ径)を示す記号列を、圧力クラス指定フォーム62に入力する。ユーザは、サイズ指定フォーム63に、複数種類のサイズの規格のうちの何れかを指定する。例えば、ユーザは、規格で定められたサイズ(呼び径)を示す記号列をサイズ指定フォーム63に入力する。ユーザは、流体指定フォーム64に、複数種類の流体(例えば、水及び油系と、ガス系と、の何れか)のうちの何れかを指定する。
【0049】
本実施形態では、受付部33は、ユーザにより指定されたガスケットの使用条件について、当該ユーザによる指定を受け付ける。例えば、入力画面60には、使用温度指定フォーム65と、使用時圧力指定フォーム66と、使用ボルト指定フォーム67と、が表示される。なお、これらのフォームへの入力は、締付計算を行うためには必須ではなく、ユーザが指定したガスケットが、これらの使用条件のもとで使用可能か否かを判定するために用いられる。ユーザは、ガスケット使用時に想定する温度及び圧力を、それぞれ、使用温度指定フォーム65及び使用時圧力指定フォーム66に入力する。また、ユーザは、ガスケット使用時のボルトに関する情報を、使用ボルト指定フォーム67に入力する。
【0050】
ユーザが計算ボタン68を選択すると、入力された条件に基づいてガスケットの締付計算処理が実行される。更に、使用温度指定フォーム65、使用時圧力指定フォーム66、及び使用ボルト指定フォーム67に入力が行われた場合は、ユーザが指定したガスケットの使用可否の判定処理が実行される。
【0051】
なお、各フォームには、ユーザに記号列を直接入力させるようにしてもよいし、ガスケットの種類、圧力クラス、及びサイズ等の入力候補を提示したうえで、ユーザに選択させることによって、フォームに各情報が入力されるようにしてもよい。
【0052】
[2−4.第1締付力算出部]
第1締付力算出部34は、ユーザにより指定されたサイズに対応する有効幅b及び有効径Gと、ユーザにより指定された圧力(例えば、圧力クラスに対応する内圧P)と、ユーザにより指定されたガスケットのガスケット係数mと、に基づいて、内圧Pでフランジが開かないために必要なガスケットの第1締付力Wm
1を算出する。
【0053】
有効幅bは、ガスケットがフランジに接触している部分のうち、内部流体をシールしている部分の幅のことである。第1締付力算出部34は、下記の計算式により、有効幅b(単位は、[mm]とする。)を算出する。
(式1−1)b
0=w
1/2
(式1−2)b
0≦6.35[mm]の場合は、b=b
0
(式1−3)b
0>6.35[mm]の場合は、b=2.52√b
0
w
1:ガスケットの接触幅。単位は、[mm]とする。接触幅は、「(ガスケット接触外径−ガスケット内径)/2」とする。ガスケット接触外径は、ガスケット外径とフランジ座RF径とのうちの小さい方である。
b
0:ガスケットの基本幅。単位は、[mm]とする。
【0054】
有効径Gは、ガスケットのうち、内部流体をシールしている部分よりも内側の径のことである。第1締付力算出部34は、下記の計算式により、有効径G(単位は、[mm]とする。)を算出する。
(式2−1)b
0≦6.35[mm]の場合は、G=w
2
(式2−2)b
0>6.35[mm]の場合は、G=w
3−2b
w
2:ガスケット接触面の平均径。単位は、[mm]とする。
w
3:ガスケット接触外径。単位は、[mm]とする。
【0055】
第1締付力算出部34は、上記算出された有効幅b及び有効径Gに基づいて、下記の計算式により、第1締付力Wm
1を算出する。
(式3−1)H=πG
2P/4
(式3−2)Hp=2πbGmP
(式3−3)Wm
1=H+Hp=πGP(G+8bm)/4
P:内圧
H:フランジを開こうとする圧力(エンドフォース)。単位は、[N]とする。
m:ガスケット係数
Hp:内圧Pの場合に内部流体をシールするために必要な圧力。単位は[N]とする。
【0056】
[2−5.第2締付力算出部]
第2締付力算出部35は、有効幅b及び有効径Gと、ユーザにより指定されたガスケットの最小設計締付圧力yと、に基づいて、内部流体の浸透漏れ又は接面漏れが生じないために必要なガスケットの第2締付力Wm
2を算出する。第2締付力算出部35は、上記算出された有効幅b及び有効径Gに基づいて、下記の計算式により、第2締付力Wm
2を算出する。
(式4)Wm
2=πbGy
y:最小設計締付圧力
【0057】
[2−6.第3締付力算出部]
第3締付力算出部36は、ユーザにより指定されたサイズに対応するガスケット接触面積Ag(単位は[mm
2]とする。)と、ユーザにより指定されたガスケット及び内部流体の種類に対応する最小締付面圧σ
3と、を乗算して第3締付力Wm
3を算出する。第3締付力Wm
3は、ユーザの使用条件を考慮した締付力といえる。第3締付力算出部36は、下記の計算式により、第3締付力Wm
3を算出する。
(式5)Wm
3=σ
3Ag
σ
3:最小締付面圧
Ag:ガスケット接触面積。例えば、π{(ガスケット接触外径の半分)
2−(ガスケット内径の半分)
2}
【0058】
[2−7.最小締付トルク算出部]
最小締付トルク算出部37は、第1締付力Wm
1、第2締付力Wm
2、及び第3締付力Wm
3のうち最大のものと、ボルトに関する情報と、に基づいて、内部流体が漏れないために必要なボルトの最小締付トルクT
minを算出する。最小締付トルク算出部37は、下記の計算式により、最小締付トルクT
minを算出する。
(式6)T
min=KW
maxD/1000n
K:トルク係数。本実施形態では、0.20とする。
W
max:第1締付力Wm
1、第2締付力Wm
2、及び第3締付力Wm
3のうち最大のもの
D:ボルト外径
n:ボルト本数
【0059】
[2−8.許容締付力算出部]
許容締付力算出部38は、ガスケット接触面積Agと、ユーザにより指定されたガスケットの許容面圧pと、を乗算して許容締付力Wm
4を算出する。許容締付力算出部38は、下記の計算式により、許容締付力Wm
4を算出する。
(式7)Wm
4=pAg
p:許容面圧
Ag:ガスケット接触面積
【0060】
[2−9.許容締付トルク算出部]
許容締付トルク算出部39は、許容締付力Wm
4とボルトに関する情報とに基づいて、指定されたガスケットを圧縮破壊させないためのボルトの許容締付トルクT
maxを算出する。許容締付トルク算出部39は、下記の計算式により、許容締付トルクT
maxを算出する。
(式8)T
max=KWm
4D/1000n
K:トルク係数。本実施形態では、0.20とする。
D:ボルト外径
n:ボルトの本数
【0061】
[2−10.応力算出部]
応力算出部40は、最小締付トルクT
minとボルトに関する情報とに基づいて、ユーザにより指定されたガスケットを最小締付トルクT
minで締め付けた場合にボルトにかかる応力F
minを算出する。応力算出部40は、下記の計算式により、ボルトにかかる応力F
minを算出する。
(式9)F
min=W
max/S
S:ボルト総谷断面積。即ち、ボルト谷断面積にボルトの本数nを乗じた値。
【0062】
[2−11.応力判定部]
応力判定部41は、応力算出部40により算出された応力F
minが耐久応力を超えたか否かを判定する。例えば、応力判定部41は、締付計算データベースを参照し、ユーザにより指定されたガスケットを締め付けるボルトの種類を特定する。そして、応力判定部41は、ボルトデータベースを参照し、当該種類のボルトに関連付けられた耐久応力と、応力F
minと、を比較する。
【0063】
[2−12.使用可否判定部]
使用可否判定部42は、ユーザにより指定された使用条件が、当該ユーザにより指定されたガスケットに関連付けられた使用可能条件を満たすか否かを判定する。例えば、使用可否判定部42は、推奨ガスケットデータベースを参照して、ユーザが指定したガスケットに関連付けられた使用可能条件を取得する。そして、使用可否判定部42は、当該取得された使用可能条件と、ユーザが指定した使用条件と、を比較することによって、ユーザが指定したガスケットの使用可否を判定する。
【0064】
本実施形態では、使用可否判定部42は、ユーザが指定した流体、温度、及び圧力が、ユーザが指定したガスケットに関連付けられた流体、温度、及び圧力に関する使用可能条件を満たすか否かを判定する。また、使用可否判定部42は、締付計算データベースを参照し、ユーザが指定したボルトの種類が、ユーザが指定したガスケットに関連付けられたボルトの種類であるか否かを判定する。
【0065】
[2−13.提示部]
提示部43は、ユーザにより指定されたガスケットに関連付けて、最小締付トルクT
minをユーザに提示する。例えば、ユーザにより指定されたガスケットを識別する情報及び最小締付トルクT
minを同じ画面で表示させることが、これらを関連付けて提示することに相当する。以降、同様の記載をした場合も同じである。なお、本実施形態における提示とは、画像による提示に限られず、音声による提示であってもよい。
【0066】
図7は、表示部14に表示される締付計算結果画面の一例を示す図である。
図7に示すように締付計算結果画面70には、ユーザによる指定内容71と、最小締付トルクT
minを示す最小締付トルク情報72と、が表示される。
【0067】
また、本実施形態では、提示部43は、ユーザにより指定されたガスケットに関連付けて、応力算出部40により算出された応力F
minをユーザに提示する。
図7に示すように、締付計算結果画面70には、応力F
minを示す応力情報73が表示される。更に、本実施形態では、提示部43は、ユーザにより指定されたガスケットに関連付けて、許容締付トルクT
maxをユーザに提示する。
図7に示すように、締付計算結果画面70には、許容締付トルクT
maxを示す許容締付トルク情報74が表示される。
【0068】
本実施形態では、提示部43は、使用可否判定部42の判定結果をユーザに提示する。
図7に示すように、ユーザが、使用温度指定フォーム65、使用時圧力指定フォーム66、及び使用ボルト指定フォーム67に入力をした場合は、ユーザが指定したガスケットの使用可否を示す使用可否情報75が表示される。
【0069】
また、本実施形態では、提示部43は、応力判定部41の判定結果をユーザに提示する。例えば、提示部43は、応力判定部41により耐久応力を超えたと判定された場合にユーザにアラートを提示する。提示部43は、所与の画像又は所与の音声を出力することにより、アラートを提示する。
【0070】
図8は、アラートが表示された締付計算結果画面70の一例を示す図である。
図8に示すように、締付計算結果画面70には、応力算出部40により算出された応力F
minがボルトの耐久応力を超えたことを示すアラート情報76が表示される。アラート情報76は、例えば、他のガスケットやボルトを奨励することを示すメッセージであってもよい。
【0071】
[3.ガスケット締付計算システムにおいて実行される処理]
図9は、ガスケット締付計算システムが実行する処理を示すフロー図である。
図9に示す処理は、ユーザによりガスケットアプリの起動指示が行われた場合に実行される。下記に説明する処理が実行されることにより、
図2に示す機能ブロックが実現される。
【0072】
まず、
図9に示すように、制御部11は、ガスケットアプリを起動し、入力画面60を表示部14に表示させる(S1)。制御部11は、S1において入力画面60を表示させると、各入力フォームへの入力を待ち受けることになる。
【0073】
制御部11は、ユーザが各指定フォームに指定内容を入力したか否かを判定する(S2)。入力したと判定された場合(S2;Y)、制御部11は、ユーザによる指定内容を各フォームに反映させる(S3)。S3においては、制御部11は、入力画面60に表示された各フォームのうち、フォーカスされたフォームに対して、ユーザによる指定内容を入力する。
【0074】
制御部11は、ユーザが計算ボタン68を選択したか否かを判定する(S4)。計算ボタン68が選択されたと判定された場合(S4;Y)、制御部11は、必須の指定内容が入力されているか否かを判定する(S5)。S5においては、制御部11は、種類指定フォーム61、圧力クラス指定フォーム62、サイズ指定フォーム63、及び流体指定フォーム64に対してユーザが指定内容を入力したか否かを判定する。
【0075】
必須の指定内容が入力されていないと判定された場合(S5;N)、制御部11は、エラーメッセージを入力画面60に表示させ(S6)、S2の処理に戻る。この場合、ガスケット締付計算を実行するために必要な情報が足りないので、ユーザに指定内容の入力を促すことになる。
【0076】
一方、必須の指定内容が入力されたと判定された場合(S5;Y)、制御部11は、ユーザが指定したガスケットの使用可否の判定処理を行うか否かを判定する(S7)。S7においては、制御部11は、使用温度指定フォーム65、使用時圧力指定フォーム66、及び使用ボルト指定フォーム67に対してユーザが指定内容を入力したか否かを判定する。
【0077】
使用可否の判定処理を行うと判定された場合(S7;Y)、制御部11は、サーバ装置20から、締付計算及び使用可否の判定処理に必要なデータを取得する(S8)。S8においては、制御部11は、サーバ装置20に対して、各フォームに入力された指定内容及びデータの取得要求を送信する。サーバ装置20においては、これらを受信すると、制御部21は、締付計算データベース、設定基準データベース、推奨ガスケットデータベース、及びボルトデータベースを参照して、要求されたデータをユーザ装置10に送信する。
【0078】
制御部11は、ユーザが指定したガスケットの使用可否を判定する(S9)。S9においては、制御部11は、ユーザが指定した流体、温度、及び圧力が、ユーザが指定したガスケットに関連付けられた使用可能条件を満たすか否かを判定する。また、制御部11は、ユーザが指定したボルトの種類と、ユーザが指定したガスケットに関連付けられたボルトの種類と、が一致するか否かを判定する。
【0079】
一方、使用可否の判定処理を行わないと判定された場合(S7;N)、制御部11は、サーバ装置20から、締付計算に必要なデータを取得する(S10)。この場合、使用可否の判定処理は実行しないので、制御部11は、推奨ガスケットデータベースに格納されたデータは取得せず、S8及びS9の処理は実行されない。
【0080】
制御部11は、第1締付力Wm
1、第2締付力Wm
2、及び第3締付力Wm
3を計算する(S11)。S11における計算方法は、先述した通りである。制御部11は、第1締付力Wm
1、第2締付力Wm
2、及び第3締付力Wm
3を比較して最大の締付力W
maxを特定する(S12)。制御部11は、当該特定した最大の締付力W
maxに基づいて、最小締付トルクT
min及び応力F
minを計算する(S13)。S13における計算方法は、先述した通りである。
【0081】
制御部11は、サーバ装置20から受信したデータに基づいて、許容締付力Wm
4及び許容締付トルクT
maxを計算する(S14)。S14における計算方法は、先述した通りである。制御部11は、応力F
minがボルトの耐久応力を超えたか否かを判定する(S15)。応力F
minがボルトの耐久応力を超えたと判定された場合(S15;Y)、制御部11は、アラート情報76を含む締付計算結果画面70を表示部14に表示させる(S16)。なお、S8及びS9の処理が実行されている場合、S16において、制御部11は、使用可否情報75を締付計算結果画面70に表示させる。
【0082】
一方、応力F
minがボルトの耐久応力を超えていないと判定された場合(S15;N)、制御部11は、アラート情報76を含まない締付計算結果画面70を表示部14に表示させる(S17)。なお、S8及びS9の処理が実行されている場合、S17において、制御部11は、使用可否情報75を締付計算結果画面70に表示させる。
【0083】
制御部11は、終了条件が満たされるか否かを判定する(S18)。終了条件は、本処理を終了するために予め定められた条件であればよい。例えば、ユーザによりガスケットアプリの終了指示操作が行われたか否かである。終了条件が満たされると判定された場合(S18;Y)、本処理は終了する。終了条件が満たされると判定されない場合(S18;N)、S2の処理に戻り、別の入力内容に基づいて締付計算が実行される。
【0084】
以上説明したガスケット締付計算システム1によれば、第1締付力Wm
1、第2締付力Wm
2、及び第3締付力Wm
3を考慮して最小締付トルクT
minを算出することにより、ユーザに正確な締付トルクを提示することができるので、締付トルクを検討する際のユーザの負担を軽減することができる。特に、ガスケットの締め付けを実際に行うのはメーカーではなく顧客であるため、顧客がガスケット締付計算システム1を利用することによって、実際にガスケットを締め付ける顧客側で締付トルクの検討をしやすくなる。
【0085】
また、許容締付トルクT
maxを提示することにより、ガスケットを圧縮破壊しないための締付トルクをユーザに把握させることができる。更に、応力F
minを提示することにより、ボルトを破壊する可能性をユーザが把握しやすくなる。また、応力F
minがボルトの耐久応力を超えた場合には、アラート情報76を提示することにより、ボルトが破壊される可能性があることを、より効果的にユーザに把握させることができる。更に、使用可否情報75を表示させることにより、ユーザがガスケットを選定する際の負担を軽減することができる。
【0086】
[4.変形例]
なお、本発明は、以上に説明した実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更可能である。
【0087】
図10は、変形例の機能ブロック図である。
図10に示すように、以降説明する変形例では、実施形態の機能に加えて、ボルト検索部44、ガスケット検索部45、ボルト許容締付トルク算出部46、発注処理実行部47、発注処理制限部48、提示制限部49、及び記録部50が実現される。例えば、ボルト検索部44、ガスケット検索部45、発注処理実行部47、及び記録部50は、制御部21を主として実現され、発注処理制限部48及び提示制限部49は、制御部11を主として実現される。
【0088】
(1)例えば、実施形態においては、応力F
minがボルトの耐久応力を超えた場合にアラート情報76が表示されるが、この場合に、耐久応力が応力F
minよりも大きい他のボルトをユーザに提案するようにしてもよい。
【0089】
例えば、受付部33は、複数種類のボルトのうち、ユーザにより指定されたガスケットを締め付けるボルトのユーザによる指定を受け付けるようにしてもよい。この場合、入力画面60において、ユーザがボルトを指定するためのフォームが表示され、受付部33は、当該フォームへの入力を受け付ける。例えば、ユーザは、ボルトの種類、本数、及びサイズの指定を行う。ボルト情報取得部32は、ユーザにより指定されたボルトに関する情報を取得する。また、最小締付トルク算出部37は、ユーザにより指定された種類のボルトに基づいて、最小締付トルクT
minを算出する。最小締付トルクT
minの計算方法自体は、実施形態で説明した方法と同様である。
【0090】
変形例(1)のガスケット締付計算システム1は、ボルト検索部44を含む。ボルト検索部44は、複数種類のボルトのうち、応力算出部40により算出された応力F
minよりも耐久応力が大きいボルトを検索する。ボルト検索部44は、ボルトデータベースに格納された各ボルトのうち、耐久応力が応力F
minよりも大きいボルトを検索する。
【0091】
例えば、ボルト検索部44は、ユーザが指定したボルトに対応する他のボルトのうちから、応力F
minよりも耐久応力が大きいボルトを検索する。対応する他のボルトとは、ユーザが指定したボルトと同一種類又は類似する種類のボルト、及び、ユーザが指定したサイズのボルトと同一サイズ又は類似するサイズ(ユーザが指定したサイズとのずれが基準以内のサイズ)のボルトである。この場合、ボルトデータベースに、類似する種類のボルトどうしの関連付けが定義されているものとする。
【0092】
例えば、応力判定部41は、応力算出部40により算出された応力F
minが、ユーザにより指定されたボルトの耐久応力を超えたか否かを判定する。即ち、応力判定部41は、ボルトデータベースを参照し、ユーザにより指定されたボルトに関連付けられた耐久応力を取得して判定処理を実行する。提示部43は、応力算出部40により算出された応力F
minが、ユーザにより指定されたボルトの耐久応力を超えたと判定された場合、ボルト検索部44により検索された他のボルトをユーザに提示する。
【0093】
図11は、変形例(1)における締付計算結果画面70の一例を示す図である。
図11に示すように、提示部43は、ボルト検索部44により検索された他のボルトを識別するボルト情報77を、締付計算結果画面70に表示させる。
【0094】
変形例(1)によれば、ボルトが破損する恐れがある場合には、より最適なボルトをユーザに提案することができる。ユーザは、ボルト情報77を見ることで、他のボルトの使用を検討しつつ、ガスケット選定を行うことができる。
【0095】
(2)また例えば、応力F
minがボルトの耐久応力を超えた場合に、ユーザの使用条件を満たすガスケットのうちで、応力F
minがボルトの耐久応力を超えないような他のガスケットをユーザに提案するようにしてもよい。
【0096】
変形例(2)のガスケット締付計算システム1は、ガスケット検索部45を含む。ガスケット検索部45は、複数種類のガスケットのうちから、応力算出部40により算出される応力F
minが耐久応力を超えないガスケットを検索する。具体的には、ガスケット検索部45は、まず、ユーザが指定したサイズ、圧力、及び流体の種類に基づいて、応力F
minが耐久応力を超えないために、ガスケットが満たすべき設計値(例えば、ガスケット係数m、最小設計締付圧力y、最小締付面圧σ
3、及び許容面圧p)を逆算して特定する。即ち、通常の締付計算では、これらの設計値は係数として用いられるが、ここでは、因数として用いる。そして、ガスケット検索部45は、設定基準データベースを参照し、これら設計値を満たすガスケットを抽出する。
【0097】
なお、ガスケットの検索方法はこれに限られない。例えば、ガスケット検索部45は、ユーザが指定したサイズ、圧力、及び流体の種類に基づいて、他のガスケットのそれぞれに対応する応力F
minをいったん算出して、応力F
minが耐久応力を超えないガスケットを抽出するようにしてもよい。他にも例えば、ユーザが使用条件を指定した場合には、ガスケット検索部45は、推奨ガスケットデータベースを参照し、当該使用条件を満たす他のガスケットのうちから、ユーザが指定したサイズ、圧力、及び流体の種類に基づいて算出される応力F
minが耐久応力を超えないものを抽出するようにしてもよい。
【0098】
提示部43は、応力算出部40により算出された応力F
minが耐久応力を超えていると判定された場合、ガスケット検索部45により検索された他のガスケットをユーザに提示する。
図12は、変形例(2)における締付計算結果画面70の一例を示す図である。
図12に示すように、提示部43は、ガスケット検索部45により検索された他のガスケットを識別するガスケット情報78を、締付計算結果画面70に表示させる。なお、ガスケット情報78には、当該提示されたガスケットが使用条件に本当に合うか否かを、ユーザが確認することを促すメッセージが含まれているようにしてもよい。
【0099】
変形例(2)によれば、ボルトが破損する恐れがある場合には、他のガスケットをユーザに提案することで、ユーザがガスケットを選定する際の支援を行うことができる。
【0100】
(3)また例えば、ボルトの耐久応力に基づいて定まる締付トルクをユーザに提示するようにしてもよい。
【0101】
変形例(3)のガスケット締付計算システム1は、ボルト許容締付トルク算出部46を含む。ボルト許容締付トルク算出部46は、ユーザにより指定されたガスケットを締め付けるボルトの耐久応力に基づいて、当該ボルトに許容される締付トルクT
5を算出する。
(式10)W
5=F
maxS
(式11)T
5=KW
5D/1000n
F
max:耐久応力
S:ボルト総谷断面積
K:トルク係数
D:ボルト外径
n:ボルト本数
【0102】
提示部43は、ユーザにより指定されたガスケットに関連付けて、ボルトに許容される締付トルクT
5をユーザに提示する。
図13は、変形例(3)における締付計算結果画面70の一例を示す図である。
図13に示すように、提示部43は、ボルトに許容される締付トルクT
5を示すトルク情報79を、締付計算結果画面70に表示させる。例えば、最小締付トルク情報72が示す最小締付トルクT
minから、トルク情報79が示す締付トルクT
5までの締付トルクでボルトを締め付けることを促すメッセージが表示されるようにしてもよい。
【0103】
変形例(3)によれば、ボルトに許容される締付トルクT
5をユーザが把握することができる。即ち、ユーザは、内部流体を漏れさせないための最小締付トルクT
min及びボルトを破損させないための締付トルクT
5を把握することができるので、より効果的にユーザの負担を軽減することができる。
【0104】
(4)また例えば、ユーザが指定したガスケットの締付計算が実行された場合、ユーザが当該ガスケットを発注できるようにしてもよい。変形例(4)では、説明の簡略化のため、ガスケットの受発注が、サーバ装置20により管理される場合を説明するが、他のサーバにより管理されるようにしてもよい。
【0105】
例えば、データベース記憶部30は、ガスケットの受発注に関する受発注データベースを記憶する。例えば、受発注データベースには、複数のガスケットの各々と、ガスケットの在庫及び納品時期と、が関連付けられている。なお、受発注データベースに格納されるデータは、これに限られない。他にも例えば、各ガスケットの価格やユーザに関する個人情報等が、受発注データベースに格納されているようにしてもよい。
【0106】
受付部33は、提示部43により最小締付トルクT
minが提示された場合、ユーザにより指定されたガスケットの発注操作を受け付ける。
図14は、変形例(4)における締付計算結果画面70の一例を示す図である。
図14に示すように、締付計算結果画面70には、ユーザが指定したガスケットを発注するための発注ボタン80が表示される。ユーザが発注ボタン80を選択すると、ユーザが指定したガスケットを発注するための要求が、ユーザ装置10からサーバ装置20に送信される。
【0107】
変形例(4)のガスケット締付計算システム1は、発注処理実行部47を含む。発注処理実行部47は、ユーザによる発注操作を受け付けた場合、ユーザにより指定されたガスケットの発注処理を実行する。例えば、発注処理実行部47は、ガスケットを発注するための要求を受け付けると、ユーザが指定したガスケットの発注処理を実行する。発注処理は、ユーザにガスケットを納品するための処理であり、当該処理自体は、公知の種々の処理を適用可能である。例えば、発注処理実行部47は、受発注データベースを更新し、ガスケットメーカーがユーザにガスケットを納品するための情報(例えば、出荷伝票等)を出力する。
【0108】
変形例(4)によれば、ユーザが指定したガスケットの締付計算が実行された場合に、当該ガスケットの発注処理を実行することができるので、ユーザは、締付計算の結果が問題ないことを確認しつつ、そのままガスケットの発注を行うことができる。
【0109】
(5)また例えば、応力F
minが耐久応力を超えた場合はボルトが破損する可能性があるため、この場合には、ユーザがガスケットを発注できないようにしてもよい。変形例(5)のガスケット締付計算システム1は、発注処理制限部48を含む。発注処理制限部48は、応力判定部41により耐久応力を超えたと判定された場合に、発注処理実行部47による発注処理の実行を制限する。
【0110】
ここでは、発注ボタン80を表示させないこと、発注ボタン80の選択を無効化すること、ユーザが発注ボタン80を選択しても発注処理実行部47に発注処理を実行させないこと(例えば、発注要求をサーバ装置20に送信しないこと)、が発注処理の実行を制限することに相当する。変形例(5)によれば、ボルトが破損する可能性のあるガスケットを発注させないことができるので、より安全性の高いガスケットのみをユーザに納品することができる。
【0111】
(6)また例えば、ユーザがガスケットを発注した場合、当該ガスケットの出荷伝票等に最小締付トルクT
minが印刷されるようにしてもよい。発注処理実行部47は、ユーザにより指定されたガスケットの発注処理が実行される場合、最小締付トルクT
minを、ガスケットが発送される際の添付用紙(例えば、出荷伝票)に印刷する。
【0112】
例えば、サーバ装置20に、出荷伝票を印刷するためのプリンタが接続されており、発注処理実行部47は、最小締付トルクT
minを含む出荷伝票を当該プリンタに印刷させる。当該出荷伝票は、ユーザが発注したガスケットと共に、ユーザに配送される。変形例(6)によれば、ユーザがガスケットを受け取った場合にボルトの締付トルクを把握できるので、締付不足による事故を確実に防止することができる。
【0113】
(7)また例えば、ユーザが指定したガスケットの締付計算が実行された場合に、当該ガスケットの在庫量及び納期が提示されるようにしてもよい。ここでは、受発注データベースに、複数種類のガスケットの各々の在庫量及び納期に関する情報が格納されているものとする。
【0114】
提示部43は、最小締付トルクT
minをユーザに提示した場合、ユーザにより指定されたガスケットの在庫量及び納期に関する情報を、ユーザに提示する。例えば、提示部43は、ユーザが指定したガスケットに関連付けられた在庫量及び納期を取得し、当該取得された在庫量及び納期を示す情報を、締付計算結果画面70に表示させる。変形例(7)によれば、締付計算を実行したガスケットの在庫量及び納期を確認したうえで、ユーザにガスケットを発注させることができる。
【0115】
(8)また例えば、応力F
minが耐久応力を超えた場合は、ガスケットの在庫量や納期を確認できないようにしてもよい。変形例(8)のガスケット締付計算システム1は、提示制限部49を含む。提示制限部49は、応力判定部41により耐久応力を超えたと判定された場合に、ユーザにより指定されたガスケットの在庫量及び納期に関する情報が提示されることを制限する。
【0116】
提示制限部49は、応力判定部41により耐久応力を超えたと判定された場合には、在庫量及び納期に関する情報を提示せず、応力判定部41により耐久応力を超えていないと判定された場合には、在庫量及び納期に関する情報を提示する。変形例(8)によれば、応力F
minが耐久応力を超えた場合は、ガスケットの在庫量や納期を確認できないようにすることにより、ボルトが破損する可能性のあるガスケットの発注を防止することができる。
【0117】
(9)また例えば、受発注データベースの内容は、各ユーザの発注により、リアルタイムで更新されるようにしてもよい。発注処理実行部47は、ユーザにより指定されたガスケットの発注処理に応じて、複数のガスケットのそれぞれの在庫量及び納期に関する情報を更新する。
【0118】
例えば、発注処理実行部47は、ユーザが発注したガスケットの在庫量を、ユーザが指定した発注量だけ減少させる。また例えば、発注処理実行部47は、各ガスケットの在庫量が閾値を下回った場合に、当該ガスケットの納期を更新する。納期の更新は、予め定められた方法により実行されるようにすればよく、例えば、ガスケットメーカーにより指定された期日に更新される。変形例(9)によれば、ガスケットの在庫量や納期をリアルタイムに更新することができる。
【0119】
(10)また例えば、ユーザがガスケットを発注する際に、ガスケットを使用する機器を指定し、次回以降の発注において、過去の注文内容が利用できるようにしてもよい。受付部33は、ユーザにより指定されたガスケットを使用する機器について、ユーザによる指定を受け付ける。受付部33は、ガスケットを使用する機器の識別情報を取得する。例えば、ガスケットを使用する機器を示す記号列をユーザに入力させるようにしてもよいし、複数種類の機器のうちでユーザが使用する機器を選択させるようにしてもよい。
【0120】
変形例(10)のガスケット締付計算システム1は、記録部50を含む。記録部50は、発注処理実行部47による発注処理が実行される場合に、ユーザにより指定された機器に関連付けてユーザにより発注されたガスケットに関する発注情報を記録する。例えば、データベース記憶部30は、各ユーザの発注情報を格納した発注情報データベースを記憶する。発注情報データベースには、ガスケットを発注したユーザと、ユーザが指定した機器と、発注情報と、が関連付けられている。発注情報は、例えば、ユーザが入力画面60から指定した内容、ガスケットの発注数、及び発注時期等を含む。なお、個別寸法品の場合には、発注情報に、個別寸法品のガスケットに係る図面が含まれているようにしてもよい。
【0121】
提示部43は、発注情報が記録された後にユーザにより機器が指定された場合、当該指定された機器に関連付けられた発注情報をユーザに提示する。ユーザは、当該提示された発注情報に基づいて、発注操作を行うことになる。発注処理実行部47は、ユーザに提示された発注情報に基づいて、発注処理を実行する。
【0122】
変形例(10)によれば、ユーザが指定した機器ごとに、当該機器に用いられるガスケットを関連付けておくことができるので、ユーザがガスケットを発注する際の負担を軽減することができる。例えば、熱交換器等の機器に使用されるガスケットは、個別設計で図面をもとに発注されることが多いため、発注情報を記録しておくことで、次回発注時に、ユーザは機器を指定するだけでガスケットを発注することができるため、発注時のユーザの負担を効果的に軽減することができる。
【0123】
(11)また例えば、ユーザが過去に発注したガスケットについては、入力画面60からの入力を行わなくても、締付計算を実行できるようにしてもよい。ここでは、発注情報には、過去の発注時においてユーザが指定したガスケットの種類と、ガスケットに関するサイズ及び圧力と、内部流体の種類と、に関する情報を含む。即ち、変形例(11)の発注情報は、ユーザが入力画面60から入力した内容を含む。
【0124】
第1締付力算出部34、第2締付力算出部35、及び第3締付算出部36のそれぞれは、過去の発注時の発注情報に基づいて、第1締付力Wm
1、第2締付力Wm
2、及び第3締付力Wm
3のそれぞれを算出する。これらの算出方法は、実施形態で説明した方法と同様である。変形例(11)によれば、ガスケットの締付計算を実行する際のユーザの負担を、より効果的に軽減することができる。
【0125】
(12)また例えば、実施形態と上記変形例の二つ以上とを組み合わせるようにしてもよい。
【0126】
また例えば、上記では、規格品に関する締付計算を例に挙げて説明したが、個別寸法品も同様の方法で締付計算を行うことができる。なお、個別寸法品の場合は、ガスケットに関するサイズ及び圧力は、締付計算データベースに格納された値の代わりに、ユーザが入力した値が用いられる。第1締付力算出部34、第2締付力算出部35、及び第3締付力算出部36は、ユーザが入力した値に基づいて、第1締付力Wm
1、第2締付力Wm
2、及び第3締付力Wm
3を算出する。同様に、個別寸法品の場合は、ボルトに関する情報も、ユーザに入力させる。最小締付トルク算出部37は、ユーザが入力したボルトに関する情報に基づいて、最小締付トルクT
minを計算することになる。このように、ガスケットの寸法や形状が規格品ではなくても、締付計算を実行することができる。
【0127】
また例えば、実施形態では、最小締付トルクT
min、許容締付トルクT
max、及び応力F
minをユーザに提示する場合を説明したが、ユーザが指定したガスケットの種類に応じて提示されない項目があってもよい。例えば、メタルガスケットの場合には、許容締付トルクT
maxが提示されないようにしてもよい。また例えば、最小締付トルクT
min、許容締付トルクT
max、及び応力F
min以外の情報がユーザに提示されるようにしてもよい。例えば、最小締付面圧σ
3がユーザに提示されるようにしてもよい。
【0128】
また例えば、ガスケットの締付計算で用いられるデータベースのデータ格納例は、上記の例に限られない。例えば、上記では、ボルト谷断面積がデータベースに格納されている場合を説明したが、データベースにボルトの外径に関する情報だけを格納しておき、ボルト総谷断面積は、計算で求めてもよい。
【0129】
また例えば、ガスケット締付計算システム1は、1台のコンピュータにより実現されるシステムであってもよい。例えば、ユーザ装置10においてデータベース記憶部30が実現されるようにしてもよい。この場合、ユーザ装置10のみでガスケット締付計算システム1が実現される。また、機能ブロックで説明した各処理が、ユーザ装置10ではなく、サーバ装置20で実現されるようにしてもよい。この場合、ユーザ装置10では、ユーザの入力受付及び画面表示のみが行われ、締付計算に関する処理は、サーバ装置20で実行されることになる。他にも例えば、機能ブロックで説明した各処理が、ユーザ装置10及びサーバ装置20で分担されるようにしてもよい。
複数種類のガスケットの各々と、ガスケット係数、最小設計締付圧力、及び内部流体の種類に応じた最小締付面圧と、を関連付けたデータベースを記憶する記憶手段の記憶内容を取得するステップと、
前記複数種類のガスケットの何れかと、当該ガスケットに関するサイズ及び圧力と、内部流体の種類と、のユーザによる指定を受け付ける受付ステップと、
前記指定されたサイズに対応する有効幅及び有効径と、前記指定された圧力と、前記指定されたガスケットのガスケット係数と、に基づいて、内圧でフランジが開かないために必要なガスケットの第1締付力を算出する第1締付力算出ステップと、
前記有効幅及び前記有効径と、前記指定されたガスケットの最小設計締付圧力と、に基づいて、内部流体の浸透漏れ又は接面漏れが生じないために必要なガスケットの第2締付力を算出する第2締付力算出ステップと、
前記指定されたサイズに対応するガスケット接触面積と、前記指定されたガスケット及び内部流体の種類に対応する最小締付面圧と、を乗算して第3締付力を算出する第3締付力算出ステップと、
前記指定されたガスケットを締め付けるボルトに関する情報を取得する取得ステップと、
前記第1締付力、前記第2締付力、及び前記第3締付力のうち最大のものと、前記ボルトに関する情報と、に基づいて、内部流体が漏れないために必要なボルトの最小締付トルクを算出する最小締付トルク算出ステップと、
前記指定されたガスケットに関連付けて、前記最小締付トルクを前記ユーザに提示する提示ステップと、
を含むガスケット締付計算システムの制御方法であって、
前記受付ステップは、前記提示ステップにより前記最小締付トルクが提示された場合、前記指定されたガスケットの前記ユーザによる発注操作を受け付け、更に、前記指定されたガスケットを使用する機器について、前記ユーザによる指定を受け付け、
前記ガスケット締付計算システムの制御方法は、
前記ユーザによる発注操作を受け付けた場合、前記指定されたガスケットの発注処理を実行する発注処理実行ステップと、
前記発注処理ステップによる発注処理が実行される場合に、前記指定された機器に関連付けて前記ユーザにより発注されたガスケットに関する発注情報であって、過去の発注時において前記ユーザが指定したガスケットの種類と、ガスケットに関するサイズ及び圧力と、内部流体の種類と、に関する情報を含む発注情報を記録するステップと、
を更に含み、
前記提示ステップは、前記発注情報が記録された後に前記ユーザにより機器が指定された場合、当該指定された機器に関連付けられた前記発注情報を前記ユーザに提示し、
前記第1締付力算出ステップ、前記第2締付力算出ステップ、及び前記第3締付算出ステップのそれぞれは、過去の発注時の前記発注情報に基づいて、前記第1締付力、前記第2締付力、及び前記第3締付力のそれぞれを算出する、
ことを特徴とするガスケット締付計算システムの制御方法。
複数種類のガスケットの各々と、ガスケット係数、最小設計締付圧力、及び内部流体の種類に応じた最小締付面圧と、を関連付けたデータベースを記憶する記憶手段の記憶内容を取得する手段、
前記複数種類のガスケットの何れかと、当該ガスケットに関するサイズ及び圧力と、内部流体の種類と、のユーザによる指定を受け付ける受付手段、
前記指定されたサイズに対応する有効幅及び有効径と、前記指定された圧力と、前記指定されたガスケットのガスケット係数と、に基づいて、内圧でフランジが開かないために必要なガスケットの第1締付力を算出する第1締付力算出手段、
前記有効幅及び前記有効径と、前記指定されたガスケットの最小設計締付圧力と、に基づいて、内部流体の浸透漏れ又は接面漏れが生じないために必要なガスケットの第2締付力を算出する第2締付力算出手段、
前記指定されたサイズに対応するガスケット接触面積と、前記指定されたガスケット及び内部流体の種類に対応する最小締付面圧と、を乗算して第3締付力を算出する第3締付力算出手段、
前記指定されたガスケットを締め付けるボルトに関する情報を取得する取得手段、
前記第1締付力、前記第2締付力、及び前記第3締付力のうち最大のものと、前記ボルトに関する情報と、に基づいて、内部流体が漏れないために必要なボルトの最小締付トルクを算出する最小締付トルク算出手段、
前記指定されたガスケットに関連付けて、前記最小締付トルクを前記ユーザに提示する提示手段、
としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、
前記受付手段は、前記提示手段により前記最小締付トルクが提示された場合、前記指定されたガスケットの前記ユーザによる発注操作を受け付け、更に、前記指定されたガスケットを使用する機器について、前記ユーザによる指定を受け付け、
前記コンピュータを、
前記ユーザによる発注操作を受け付けた場合、前記指定されたガスケットの発注処理を実行する発注処理実行手段、
前記発注処理手段による発注処理が実行される場合に、前記指定された機器に関連付けて前記ユーザにより発注されたガスケットに関する発注情報であって、過去の発注時において前記ユーザが指定したガスケットの種類と、ガスケットに関するサイズ及び圧力と、内部流体の種類と、に関する情報を含む発注情報を記録する手段、
として更に機能させ、
前記提示手段は、前記発注情報が記録された後に前記ユーザにより機器が指定された場合、当該指定された機器に関連付けられた前記発注情報を前記ユーザに提示し、
前記第1締付力算出手段、前記第2締付力算出手段、及び前記第3締付算出手段のそれぞれは、過去の発注時の前記発注情報に基づいて、前記第1締付力、前記第2締付力、及び前記第3締付力のそれぞれを算出する、
ことを特徴とするプログラム。
前記ボルトに関する情報は、ボルトの耐久応力に関する情報を含み、前記ガスケット締付計算システムは、前記最小締付トルクと前記ボルトに関する情報とに基づいて、前記指定されたガスケットを前記最小締付トルクで締め付けた場合に
ボルトにかかる応力を算出する応力算出手段と、前記算出された応力が前記耐久応力を超えたか否かを判定する応力判定手段と、前記応力判定手段により前記耐久応力を超えたと判定された場合に、前記発注処理実行手段による発注処理の実行を制限する手段と、を更に含むことを特徴とする。
前記ボルトに関する情報は、ボルトの耐久応力に関する情報を含み、前記ガスケット締付計算システムは、前記最小締付トルクと前記ボルトに関する情報とに基づいて、前記指定されたガスケットを前記最小締付トルクで締め付けた場合に
ボルトにかかる応力を算出する応力算出手段と、前記算出された応力が前記耐久応力を超えたか否かを判定する応力判定手段と、前記応力判定手段により前記耐久応力を超えたと判定された場合に、前記指定されたガスケットの在庫量及び納期に関する情報が提示されることを制限する手段と、を更に含むことを特徴とする。