【課題】衝突事故の衝撃が大きい場合、運転者2aは負傷し、緊急通報の警告に応答できない恐れがある。1秒でも早く救援要請すべき事態において、直ちに通報されないことは運転者2aに重大な影響を及ぼしかねない。
【解決手段】通信端末3は、車両2に加速度が発生し、かつ通信端末3に発生した加速度が第1閾値を超えた場合は、運転者2aの操作を受け付けなくても通報を行う。このため、迅速な通報が可能となる。これにより、運転者2aが重大な異常を負っていた場合でも早期の保護及び救済を図ることができ、運転者2aがさらなる重大な事態に陥るのを回避できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
<1.第1の実施の形態>
<1−1.概要>
図1は、本実施の形態に係る通信システム1の概要を示す。通信システム1は、車両2内にユーザ2a(主に運転者)により持ち込まれた通信端末3、エアバッグECU4(Electronic Controled Unit)を含む。通信端末3は、クレードル3aによりダッシュボードに固定され、コンピュータ・ネットワークや電話回線(以下、ネットワーク5と略記する。)を介して緊急通報センタ6と無線通信を行う。緊急通報センタ6では、オペレータ6aが通信端末3からの通信に応じて消防署やロードサービス会社6bに24時間連絡できる態勢がとられている。
【0024】
ユーザ2aが運転操作を誤るなどして車両2に衝突事故を生じると、すなわち車両2に大きな加速度が生じると、エアバッグECU4はエアバッグを展開しユーザの保護を図る。さらにエアバッグECU4は、通信端末3へ加速度が発生した旨を示す発生信号を送信する。
【0025】
通信端末3は、エアバッグECU4から発生信号を受信し、かつ端末内に備える加速度センサ(図示せず)で大きな加速度を検知した場合、直ちに緊急通報センタ6へ通報を行う。エアバッグECU4のみならず通信端末3でも大きな加速度を検知した以上、車両2に衝突事故を生じた可能性が高いからである。この際、ユーザ2aに通報する旨の確認は行わない。ユーザ2aは負傷を負い、確認に対する応答ができない恐れがあるからである。また、確認のための待機時間中にユーザの症状が悪化する恐れがあるからである。したがって、加速度の大きさを判定する閾値は、ユーザ2aがこのような状況に陥る恐れのある値が設定される。なお、中程度の加速度が発生した場合は、ユーザ2aに通報する旨の確認を行うべきである。無用な通報を防止するためである。
【0026】
このように、エアバッグECU4及び通信端末3で大きな加速度を検知すると、ユーザ2aに確認することなく直ちに通報を行うので、ユーザ2aの迅速な保護及び救済を図ることができる。直ちに通報することで、確認のための時間を浪費することなく、ユーザの症状を悪化させることがない。また、中程度の加速度が発生した場合はユーザ2aに確認を行うので、無用な通報を防止できる。
【0027】
なお、以下の実施の形態において、エアバッグECU4が検出する加速度は、車両2後方への加速度である減速度を含む。通信端末3が検出する加速度についても同様である。
【0028】
<1−2.構成>
通信システム1の構成について説明する。通信システム1は、車両内に持ち込まれた通信端末3及びエアバッグECU4を備える。
図2は、通信システム1の構成、特に通信端末3の構成を示す。
【0029】
通信端末3は、携帯電話やスマートフォン等、携帯型の通信機器である。通信端末3は、車両2に持ち込まれた際、車両2のダッシュボード中心付近に設置されたクレードル3aに固定される。ユーザのポケットや鞄の中に収納されてもよい。緊急通報を行うためのアプリケーションがバックグラウンドで実行される。通信端末3は、エアバッグECU4と無線で通信を行い、エアバッグECU4から衝撃を検知した旨の信号を受信すると、ネットワーク5を介し、緊急通報センタ6へ通報を行う。ユーザは必要に応じて、オペレータ6aと対話し、状況を伝達する。通信端末3は、制御部31、ディスプレイ32、スピーカ33、マイクロフォン34、通信部35、記憶部36、位置検出部37、加速度センサ38、及び連携部39を備える。
【0030】
制御部31は、CPU、RAM、及びROMを備えたマイクロコンピュータである。制御部31は、通信端末3が備える他の構成と接続され、端末全体を制御する。制御部31の機能については後述する。
【0031】
ディスプレイ32は、文字や図形等の各種情報を表示し、通信端末3のユーザに視覚的に情報を提示する表示装置である。例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイである。ディスプレイ32はタッチパネル32aを備える。
【0032】
タッチパネル32aは、ディスプレイ32に表示されたボタン領域への接触を感知し、感知した位置情報を制御部31へ出力する。
【0033】
スピーカ33は、通話相手の声や音楽、ブザー等の音声を出力し、ユーザに音声情報を報知する。
【0034】
マイクロフォン34は、ユーザの声や通信端末3周辺の音声を集音する。マイクロフォン34は、集音して得られた音声情報を制御部31に送信する。マイクロフォン34は、単一指向性が望ましい。車両2外部の道路上の騒音を不必要に集音しないためである。
【0035】
通信部35は、アンテナを備え、ネットワーク5を介して緊急通報センタ6と無線通信を行う。緊急通報センタ6との通信は、音声無線や、電話通信、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、LTE(Long Term Evolution)等の情報通信の技術を用いる。
【0036】
記憶部36は、データを記憶する記憶媒体である。例えば、EEPROM(Electrical Erasable Programmable Read-Only memory)や、フラッシュメモリ、磁気ディスクを備えたハードディスクドライブ等の不揮発性メモリである。記憶部36は、閾値データ36a、緊急通報アプリケーション36b、プログラム36c、通報先データ36d、及び通報内容データ36eを記憶している。
【0037】
閾値データ36aは、通信端末3に発生した加速度の大きさを計測するための閾値である。閾値データ36aは、第1閾値Th1及び第2閾値Th2を含む。両閾値の大きさは、第1閾値Th1>第2閾値Th1である。
【0038】
第1閾値Th1は、車両2に衝突が発生した際に生じる大きな加速度に相当する値である。例えば、車両2が壁面に対し正面から時速30[km]から時速50[km]程度で衝突した際に発生する加速度である。一般的に、エアバッグが展開する程度の加速度である。
【0039】
第2閾値Th1は、軽微な衝突が発生した際に生じる中程度の加速度に相当する値である。例えば、車両2が徐行運転中(時速3[km]から時速5[km]程度)に壁面に衝突した際に発生する加速度である。
【0040】
緊急通報アプリケーション36bは、通信端末3が車両2内に持ち込まれた際に起動し、衝突事故等の発生時に緊急通報を行うためのアプリケーション・ソフトウェアである。緊急通報アプリケーション36bは、複数のアプリケーション・ソフトウェアが同時に動作するマルチタスク環境においては、操作ウィンドウが最前面にない状態(いわゆる、バックグランド)で処理が継続される。緊急時に使用できればよいからである。したがって、衝突事故に相当するような大きな加速度が検出されると、操作ウィンドウが最前面(いわゆる、フォアグランド)に表示され、ユーザの入力を受け付ける。
【0041】
プログラム36cは、制御部31により読み出され、制御部31が通信端末3を制御するために実行されるファームウェアである。
【0042】
通報先データ36dは、通信端末3に衝突事故に相当する加速度が発生した際、緊急通報すべき相手先の宛先情報を含むデータテーブルである。例えば、通報先が受信可能な周波数や電話番号である。
【0043】
通報内容データ36eは、通信端末3に衝突事故に相当する加速度が発生した際、緊急通報すべき内容を含むデータテーブルである。例えば、氏名、電話番号、通報日時、通報場所、及び通報位置である。
【0044】
位置検出部37は、衛星測位システムを利用し、通信端末3の所在する位置を検出するセンサである。衛星測位システムは、例えば、グローバル・ポジショニング・システム(GPS)である。位置検出部37は、通信端末3の所在する位置の経緯度及び道路交通上の地理的名称を検出し、制御部31へ送信する。
【0045】
加速度センサ38は、通信端末3に生じる加速度(端末加速度)を測定するセンサである。例えば、静電容量型や半導体ピエゾ抵抗型の3軸加速度センサである。加速度センサ38は、通信端末3に生じた加速度を加速度データとして制御部31へ送信する。
【0046】
連携部39は、エアバッグECU4とデータを無線で送受信する。連携部39は、小電力の無線通信機能を利用し、近距離に所在するエアバッグECU4と互いにデータ通信を行う。無線通信機能は、例えば、ブルートゥース(Bluetooth)(登録商標)等の近距離無線通信や、Wi−Fi(Wireless Fidelity)(登録商標)等の無線LANによる通信である。連携部39は、エアバッグECU4に接近すると、エアバッグECU4と認証処理を実行し、無線接続を確立(いわゆるペアリング)させる。
【0047】
前述の制御部31の機能を説明する。制御部31は、受信手段として機能する信号受信部31a、判定手段として機能する加速度判定部31b、ユーザの操作を受け付ける受付手段として機能する表示制御部31c、通報手段として機能する通報部31d、及び計時手段として機能する計時部31eを備える。
【0048】
信号受信部31aは、エアバッグECU4が車両2の衝突を検知した際に送信する衝突検知信号を受信する。
【0049】
加速度判定部31bは、加速度センサ38から送信される加速度の値と記憶部36の閾値データ36aとに基づき、通信端末3に発生した加速度の大きさを判定する。
【0050】
表示制御部31cは、画像や文字等のデータをディスプレイ32に表示させる。タッチパネル32aから出力される位置情報を取得する。表示制御部31cは、位置情報とボタンを示す領域情報とから、ユーザの操作内容を認識する。
【0051】
通報部31dは、音声無線により、緊急通報センタ6が常時監視している周波数帯で緊急信号(コールサイン)を送信し、緊急事態が発生した旨を緊急通報センタ6へ伝達する。いわゆるメーデー呼び出しに準じる機能である。また、通報部31dは、ユーザの氏名や位置等に関する情報(後述の通報内容データ36eのユーザ情報)を緊急通報センタ6へ送信する。
【0052】
計時部31eは、時間の経過を計測するタイマーである。
【0053】
次に、記憶部36に記憶された通報先データ36d及び通報内容データ36eの例を説明する。
図3は、通報先データ36dの例である。通報先データ36dは、通報先名称、緊急信号周波数、及び電話番号のデータ項目を含む。通報先データ36dは、通報先名称として「緊急通報センタ」、緊急信号周波数として「**Hz」、及び電話番号として「03−****−****」が記録される。なお、緊急信号周波数は、緊急通報センタ6が緊急事態に備えて常時監視している無線通信の周波数である。通報先データ36dは、車両2の衝突発生時に通報部31dにより参照され、通報処理に用いられる。
【0054】
図4は、通報内容データ36eの例である。通報内容データ36eは、通報種別及び通報内容のデータ項目を含む。通報内容データ36eは、通報種別として「ユーザ情報」、及び通報内容として「氏名」、「電話番号」、「通報日時」、「通報場所」、並びに「通報位置」が記録される。なお、「通報日時」、「通報場所」、及び「通報位置」は、車両2の衝突発生時に位置検出部37から送信される位置情報等に基づき通報内容データ36eに通報部31dにより記録される。なお、「通報場所」は、道路交通上の目印となる場所である。例えば、「**交差点付近」である。「通報位置」は、経緯度で示す位置である。例えば、「東経135度**分**秒 北緯40度**分**秒」である。通報内容データ36eは、車両2の衝突発生時に通報部31dにより記録及び参照され、緊急信号周波数で緊急通報センタ6へ発信される。
【0055】
図5は、通信端末3が衝突を検出した際のディスプレイ32の表示例である。車両2が衝突発生と判断された場合、バックグランドで動作していた緊急通報アプリケーション36bは、「オペレータに通報しますか?」のメッセージMEを表示する。また、タッチパネル用ボタンとして機能する「通報する」のボタンB1、及び「通報しない」のボタンB2をディスプレイ32に表示する。したがって、ユーザは「通報する」ボタンB1及び「通報しない」ボタンB2のいずれかをタッチすることで、通報の要否を入力できる。
【0056】
なお、ディスプレイ32には、家族及び勤務先に連絡するためのボタンB3を設けてもよい。ユーザがボタンB3にタッチすると、家族及び勤務先に通報内容データ36eを内容とする電子メールが送信される。ユーザはアドレス入力等の複数の操作を必要としない。また、衝突事故発生時に連絡したい者へ早急かつ容易に通報内容データ36eを送信できるので、緊急事態に精神の安定を図ることができる。また、信頼できる者と早期に連絡を取り合うことで、事故を冷静に収拾できる。
【0057】
加速度判定部31bによる加速度の大きさの判定手法を説明する。
図6は、加速度の大きさを判定する手法を説明する図である。図中縦軸は加速度の大きさを示す。g0は0[G]である。g1は例えば80[G]、−g1は例えば−80[G]である。図中横軸は時間を示す。t0は車両2が障壁に衝突した時点である。t0からt3は、例えば100[msec]である。グラフ線Gは、車両2のクレードル3aに通信端末3を固定し、車両2が障壁に衝突した際に生じる通信端末3の加速度センサ38の出力変化である。加速度は、車両2が障壁に衝突後、高い周波数で大きく振動する。なお、グラフ線Gは車両2後方への加速度の大きさを示す。すなわち、減速度である。第1閾値Th1及び第2閾値Th2は、加速度判定部31bにより記憶部36から読み出され、グラフ線Gで示される加速度と対比される。
【0058】
加速度判定部31bは、時間t1において加速度が第2閾値Th2を超えたことを検出し、時間t2において加速度が第1閾値Th1を超えたことを検出する。加速度判定部31bは、加速度が第2閾値Th2又は第1閾値Th1を超過したことを検出すると、検出結果を所定期間保持する。加速度判定部31bは、検出結果の保持期間中に、加速度が第2閾値Th2又は第1閾値Th1を再度超過したことを検出した場合は、その時点から検出結果をさらに所定期間保持する。所定期間とは、例えば2[msec]である。
【0059】
加速度判定部31bは、所定期間内に検出した最も大きな加速度を所定期間内に発生した加速度として判定する。したがって、加速度が第1閾値Th1を超えたことを検出し、判定結果の保持期間中に加速度が第2閾値Th2のみ超えた場合、加速度判定部31bは、第1閾値Th1を超えた旨の判定結果を得る。加速度が第1閾値Th1を超えた場合の方が、第2閾値Th2のみ超えた場合に比較してユーザへの影響が大きいためである。この場合、第1閾値Th1を超えた旨の判定結果を優先して得ることができる。
【0060】
なお、加速度判定部31bは、一定期間における加速度の積分値(すなわち、速度)の大きさに基づき判定してもよい。この場合、悪路走行による瞬間的な加速度発生による誤判定を防止できる。加速度の積分値に基づく判定手法は、変形例として後述する。
【0061】
次に、エアバッグECU4の構成について説明する。
図7は、エアバッグECU4の構成を示す。エアバッグECU4は、車両2の座席間下部のボディに固定して設置され、車両2に衝撃が加わった際には、ボディから直接的に衝撃が伝達される。エアバッグECU4は、加速度センサを備え、衝撃による加速度を検出すると、エアバッグを展開し、ユーザの保護を図る。また、通信端末3へ加速度を検知した旨(発生信号)を送信する。エアバッグECU4は、制御部41、連携部42、加速度センサ43、記憶部44、及び点火ドライバ45を備える。
【0062】
制御部41は、CPU、RAM、及びROMを備えたマイクロコンピュータである。制御部41は、エアバッグECU4が備える他の構成と接続され、装置全体を制御する。制御部41の機能は後述する
連携部42は、通信端末3と無線でデータを送受信する通信装置である。連携部42は、小電力の無線通信機能を利用し、近距離に所在する通信端末3と情報通信を行う。通信機能は、例えば、Wi−Fi(Wireless Fidelity)(登録商標)等の無線LAN技術やブルートゥース(Bluetooth)(登録商標)等の近距離無線通信規格が用いられる。連携部42は、通信端末3が接近すると、通信端末3と認証処理を実行し、無線接続を確立(いわゆるペアリング)させる。
【0063】
加速度センサ43は、車両2に生じる加速度を測定するセンサである。例えば、静電容量型や半導体ピエゾ抵抗型の3軸加速度センサである。
【0064】
記憶部44は、データを記憶する記憶媒体である。例えば、EEPROM(Electrical Erasable Programmable Read-Only memory)や、フラッシュメモリ、磁気ディスクを備えたハードディスクドライブ等の不揮発性メモリである。記憶部44は、閾値データ44a及びプログラム44bを記憶している。
【0065】
閾値データ44aは、車両2に発生した加速度の大きさを計測するための閾値である。閾値データ44aは、車両2に衝突が発生した際に生じる加速度に相当する値である。例えば、車両2が壁面に対し正面から時速30[km]から時速50[km]程度で衝突した際に発生する加速度である。一般的に、エアバッグが展開する程度の加速度である。
【0066】
プログラム44bは、制御部41により読み出され、制御部41がエアバッグECU4を制御するために実行されるファームウェアである。
【0067】
点火ドライバ45は、エアバッグECU外部に接続されたスクイブ45aを点火させるための制御装置である。点火ドライバ45は、制御部41からスクイブ45aを点火させるための点火信号を受信すると、スクイブ45aを制御して点火させる。
【0068】
スクイブ45aは、後述のエアバッグ45bを瞬時に膨張させるガスを発生させる火薬に点火する点火器である。
【0069】
エアバッグ45bは、車両衝突時に急速膨張し、ユーザの衝撃を緩和する袋体である。エアバッグECU4、スクイブ45a、及びエアバッグ45bで、エアバッグシステムを構成する。
【0070】
前述の制御部41の機能を説明する。制御部41は、展開判定部41a及び通報判定部41bを備える。
【0071】
展開判定部41a及び通報判定部41bは、加速度センサ43から送信される加速度の値と記憶部44の閾値データ44aとに基づき、エアバッグECU4が設置された車両2に発生した加速度の大きさを判定する。
【0072】
展開判定部41aは、エアバッグ45bを展開すべき加速度が発生したと判定すると、エアバッグ45bを展開させる点火信号を点火ドライバ45へ送信する。
【0073】
通報判定部41bは、緊急通報すべき加速度が発生したと判定すると、加速度が発生した旨を示す発生信号を連携部42を介して通信端末3へ送信する。
【0074】
なお、展開判定部41a及び通報判定部41bによる加速度の大きさの判定は、通信端末3の加速度判定部31bによる判定手法と同手法を用いればよい。また、閾値データ44aを記憶部44に複数備え、展開判定部41aと通報判定部41bとで異なる閾値を用いて加速度の大きさを判定してもよい。この場合、エアバッグ展開の判定閾値よりも通報判定の閾値を小さくすることが好ましい。少なくとも、エアバッグを展開すべきと判定した場合には、通報されるべきだからである。
【0075】
<1−3.処理>
通信システム1の処理手順を説明する。
図8ないし
図10は、通信システム1の処理手順を示す。本処理は、所定周期で繰り返し実行される。
【0076】
図8はエアバッグECU4の処理手順である。まず、制御部41の展開判定部41a及び通報判定部41bが、加速度センサ43から送信される加速度データ及び閾値データ44aに基づき、車両2に発生した加速度が閾値を超えたか否か判定する(ステップ101)。
【0077】
加速度が閾値を超えないと判定されると(ステップ101でNo)、処理は終了する。
【0078】
一方、加速度が閾値を超えたと判定されると(ステップ101でYes)、展開判定部41aが点火信号を送信し(ステップ102)、点火ドライバ45によりスクイブ45aを点火する。これにより、エアバッグ45bが膨張し、ユーザを衝撃から保護する。
【0079】
次に、通報判定部41bが、閾値を超える加速度が発生した旨を示す発生信号を通信端末3へ連携部42を介して送信する(ステップ103)。これにより、通信端末3は車両2に大きな加速度が発生した旨を認識できる。
【0080】
図9は通信端末3の処理手順である。まず、制御部31が、緊急通報アプリケーション36bが起動しているか否か判断する(ステップS201)。緊急通報アプリケーション36bは、衝撃発生時に即時対応するため、いわゆるバックグランドで常時作動している必要があるからである。
【0081】
緊急通報アプリケーション36bが起動していないと判断されると(ステップS201でNo)、制御部31は、緊急通報アプリケーション36bを起動させる処理を実行する(ステップS202)。なお、緊急通報アプリケーション36bを起動させる処理の詳細は後述する。
【0082】
緊急通報アプリケーション36bを起動させる処理が実行されると、及び、緊急通報アプリケーション36bが起動中であると判断されると(ステップS201でYes)、信号受信部31aは、エアバッグECU4から閾値を超える加速度が発生した旨を示す発生信号を受信したか否か判断する(ステップS203)。
【0083】
信号受信部31aが発生信号を受信しないと判断すると(ステップS203でNo)、処理は終了する。エアバッグECU4から検知信号を受信しない以上、通信端末3に生じる加速度のみで判定することによる誤通報を防止するためである。なお、エアバッグECU4から発生信号を受信しない場合には、車両2に加速度が発生しない場合のみならず、通信端末3が車両2内及び車両2付近に所在せず、連携部による無線接続が確立していない場合もある。
【0084】
一方、信号受信部31aが発生信号を受信したと判断すると(ステップS203でYes)、加速度判定部31bは、加速度センサ38からの加速度データに基づき、通信端末3に発生した加速度が第1閾値Th1を超えたか否か判断する(ステップS204)。
【0085】
加速度判定部31bが通信端末3に発生した加速度が第1閾値Th1を超えたと判断すると(ステップS204でYes)、通報部31dは、緊急通報センタ6へ通報を行う(ステップS205)。通報部31dは、記憶部36の通報先データ36d及び通報内容データ36eを参照し、緊急信号周波数を用いて緊急信号及びユーザ情報を緊急通報センタ6へ送信する。この場合、通報部31dは、ユーザの通報要否の意思表示を確認することなく、直ちに通報を行う。エアバッグECU4が加速度を検知し、かつ通信端末3が第1閾値Th1を超える加速度を検知している以上、ユーザに重大な異常が発生し、タッチパネル32aを操作不能な状態にある可能性が高いからである。また、車両2の衝突の衝撃で、通信端末3がクレードル3aから離脱し、ユーザの届かない位置へ転落した場合も想定されるからである。これにより、迅速な通報が可能となる。したがって、第1閾値Th1は、車両2に生じた加速度により、ユーザに重大な異常が発生し得る値、又は通信端末3がクレードル3aを離脱し得る値が設定される。
【0086】
一方、加速度判定部31bは、通信端末3に発生した加速度が第1閾値Th1を超えないと判断すると(ステップS204でNo)、加速度が第2閾値Th2を超えたか否か判断する(ステップS206)。
【0087】
加速度判定部31bが通信端末3に発生した加速度が第2閾値Th2を超えたと判断すると(ステップS206でYes)、表示制御部31cは、ディスプレイ32にメッセージMEを表示する(ステップS207)。
【0088】
表示制御部31cがメッセージMEを表示すると、計時部31eが時間の経過の計測を開始する。また、表示制御部31cがメッセージMEを表示すると、通報部31dは、緊急通報センタ6へ通報を行うか否か判断する(ステップS208)。
【0089】
通報部31dが緊急通報センタ6へ通報を行わないと判断すると(ステップS208でNo)、すなわちユーザがタッチパネル32aに対し「通報しない」ボタンB2をタッチすると、処理は終了する。ユーザ自ら「通報しない」旨の意思表示をした以上、もはや処理を継続する必要がないからである。
【0090】
一方、通報部31dは、緊急通報センタ6へ通報を行うと判断すると(ステップS208でYes)、すなわちユーザがタッチパネル32aに対し「通報する」ボタンB1をタッチすると、緊急通報センタ6へ通報を行う(ステップS205)。通信端末3に発生した加速度が第1閾値Th1を超えなくとも、ユーザ自ら「通報する」旨の意思表示をしているからである。
【0091】
他方、通報部31dは、緊急通報センタ6へ通報を行うか否か判断できない場合(ステップS208で未定)、すなわちユーザがタッチパネル32aに対しタッチ操作しない場合、計時部31eの計測時間を参照し、メッセージMEの表示から30[秒]が経過したか否か判断する(ステップS209)。
【0092】
なお、通信端末3に発生した加速度が第2閾値Th2を超えた場合の通報要否の判断時間は、本実施の形態においては30[秒]とした。かかる判断時間は、ユーザが通信端末3を手に取り、メッセージMEを確認し、タッチパネル32aを操作して自ら意思表示できる時間のうち、極力短い時間が好ましい。タッチパネル32aの操作等のため一定時間の確保が必要な一方、ユーザに異常が発生している可能性があり、極力早期に通報要否を判定すべきだからである。
【0093】
通報部31dは、メッセージMEの表示から30[秒]が経過しないと判断すると(ステップS209でNo)、緊急通報センタ6へ通報を行うか否か再度判断する(ステップS208)、すなわちユーザがタッチパネル32aに対しタッチ操作したか否か再度判断する。メッセージMEの表示から30[秒]が経過するまでの間、ユーザがタッチパネル32aに対しタッチ操作しないと、時間経過の判断(ステップS209)、及び通報要否の判断(ステップS208)が繰り返し実行される。
【0094】
一方、通報部31dは、メッセージMEの表示から30[秒]が経過したと判断すると(ステップS209でYes)、緊急通報センタ6へ通報を行う(ステップS205)。この場合、通報部31dは、ユーザがタッチパネル32aに対し「通報する」ボタンB1をタッチしていなくとも、通報を行う。エアバッグECU4が加速度を検知し、かつ通信端末3が第2閾値Th2を超える加速度を検知している以上、ユーザに異常が発生し、タッチパネル32aを操作不能な状態にある可能性があるためである。これにより、確実な通報が可能となる。
【0095】
一方、ステップS206において、加速度判定部31bが通信端末3に発生した加速度が第2閾値Th2を超えないと判断すると(ステップS206でNo)、表示制御部31cは、ディスプレイ32にメッセージMEを表示する(ステップS210)。
【0096】
表示制御部31cがメッセージMEを表示すると、計時部31eが時間の経過の計測を開始する。また、表示制御部31cがメッセージMEを表示すると、通報部31dは、緊急通報センタ6へ通報を行うか否か判断する(ステップS211)。
【0097】
通報部31dが緊急通報センタ6へ通報を行わないと判断すると(ステップS211でNo)、すなわちユーザがタッチパネル32aに対し「通報しない」ボタンB2をタッチすると、処理は終了する。ユーザ自ら「通報しない」旨の意思表示をした以上、もはや処理を継続する必要がないからである。これにより、ユーザのタッチ操作を受け付けないと通報を行わないので、ユーザに通報要否の判断を委ねつつ、無用な通報を防止できる。
【0098】
一方、通報部31dは、緊急通報センタ6へ通報を行うと判断すると(ステップS211でYes)、すなわちユーザがタッチパネル32aに対し「通報する」ボタンB1をタッチすると、緊急通報センタ6へ通報を行う(ステップS205)。
【0099】
他方、通報部31dは、緊急通報センタ6へ通報を行うか否か判断できない場合(ステップS211で未定)、すなわちユーザがタッチパネル32aに対しタッチ操作しない場合、計時部31eの計測時間を参照し、メッセージMEの表示から180[秒]が経過したか否か判断する(ステップS209)。
【0100】
なお、通信端末3に発生した加速度が第2閾値Th2を超えない場合の通報要否の判断時間は、本実施の形態においては180[秒]とした。かかる判断時間は、ユーザが通信端末3を手に取り、メッセージMEを確認し、タッチパネル32aを操作して自らの意思表示できる時間のうち、比較的余裕のある時間であることが好ましい。タッチパネル32aの操作等のため一定時間の確保が必要であり、発生した加速度がそれほど大きくなく、ユーザに異常が発生している可能性が少ないからである。したがって、誤通報防止のため、十分な時間を確保することが好ましい。
【0101】
通報部31dは、メッセージMEの表示から180[秒]が経過しないと判断すると(ステップS212でNo)、緊急通報センタ6へ通報を行うか否か再度判断する(ステップS211)、すなわちユーザがタッチパネル32aに対しタッチ操作したか否か再度判断する。メッセージMEの表示から180[秒]が経過するまでの間、ユーザがタッチパネル32aに対しタッチ操作しないと、時間経過の判断(ステップS212)、及び通報要否の判断(ステップS211)が繰り返し実行される。
【0102】
一方、通報部31dは、メッセージMEの表示から180[秒]が経過したと判断すると(ステップS212でYes)、緊急通報センタ6への通報は行わず、処理は終了する。通報要否の判断及び操作のための十分な時間を確保したにも関わらず、ユーザによる積極的な通報要請がない場合、ユーザ自らの意思によりメッセージMEに対する応答を放置したと考えられるからである。また、発生した加速度がそれほど大きくなく、ユーザに異常が発生している可能性が少ないからである。
【0103】
次に、ステップS202における、緊急通報アプリケーション36bを起動させる処理の詳細を説明する。
図10は、緊急通報アプリケーション36bを起動させる処理の詳細を示す。
【0104】
まず、通信端末3の制御部31が、エアバッグECU4と無線通信を確立(いわゆるペアリング)した際に連携部39が取得した認証情報を取得する(ステップS301)。認証情報は、エアバッグECU4と無線通信の確立の際に、エアバッグECU4から取得して制御部31のRAMに記憶されている。
【0105】
制御部31は、通信端末3が車両2の車室内に所在するか否か判断する(ステップS302)。制御部31が認証情報を取得できた場合は、通信端末3は車両2の車室内に所在すると判断する(ステップS302でYes)。認証情報を取得できた場合は、車両2に設置されたエアバッグECU4と近距離無線通信により無線通信を確立した場合であるため、通信端末3は車両2の車室内に所在すると判断できる。なお、制御部31は、位置検出部37から通信端末3の所在する位置データを取得し、車両2を駐車した場所の位置データと一致する場合に、通信端末3は車両2の車室内に所在すると判断してもよい。
【0106】
一方、制御部31が認証情報を取得できない場合は、通信端末3は車両2の車室内に所在しないと判断する(ステップS302でNo)。通信端末3が車両2の車室内に所在しないと判断されると、処理は
図9の処理に戻り、ステップS203以下が実行される。なお、この場合、通信端末3が車両2から離れて所在し、無線通信を確立していないため、通信端末3はエアバッグECU4から加速度の検知信号を受信することがない。したがって、
図9のステップS203における検知信号の受信有無の判断は常にNoとなり、通信端末3に大きな加速度が発生しても通報が行われることはない。通信端末3を所持するユーザが車両2に乗車しない以上、通報の必要がないからである。
【0107】
制御部31は、通信端末3が車両2の車室内に所在すると判断すると(ステップS301でYes)、緊急通報アプリケーション36bを起動する旨をユーザに通知する(ステップS303)。緊急通報アプリケーション36bは起動後バックグランドで作動するため、このような通知を行わない場合、ユーザがアプリケーションの起動を認識せず、自ら起動のための操作を実行し、重複してアプリケーションが作動する恐れがあるためである。起動の通知は、ディスプレイ32に文字で提示してもよいし、スピーカ33から音声で報知してもよい。
【0108】
制御部31は、緊急通報アプリケーション36bを起動する旨をユーザに通知すると、緊急通報アプリケーション36bを起動する(ステップS304)。
【0109】
制御部31が緊急通報アプリケーション36bを起動すると、処理は
図9の処理に戻り、ステップS203以下が実行される。
【0110】
以上の通り、本実施の形態の通信端末3は、車両2に加速度が発生し、かつ通信端末3に発生した加速度が第1閾値Th1を超えた場合は、ユーザの操作を受け付けなくても通報を行う。このため、迅速な通報が可能となる。これにより、ユーザが重大な異常を負っていた場合でも早期の保護及び救済を図ることができ、ユーザがさらなる重大な事態に陥るのを回避できる。
【0111】
また、本実施の形態の通信端末3は、車両2に加速度が発生し、かつ通信端末3に発生した加速度が第1閾値Th1を超えず第2閾値Th2を超えた場合に、例えば30[秒]の第1閾時間内にタッチパネル32aがユーザの通報しない旨の操作を受け付けないと、第1閾時間の経過後に通報を行う。このため、ユーザに通報の判断を委ねつつ、確実な通報が可能となる。これにより、ユーザが異常を負っていた場合でもさらに深刻な事態に陥るのを回避できる。
【0112】
また、本実施の形態の通信端末3は、車両2に加速度が発生し、かつ通信端末3に発生した加速度が第2閾値Th2を超えない場合は、例えば180[秒]の第2閾時間内にタッチパネル32aがユーザの操作を受け付けないと通報を行わない。このため、ユーザに通報の判断を委ねつつ、無用な通報を防止できる。
【0113】
<2.第2の実施の形態>
<2−1.概要>
本発明の第2の実施の形態を説明する。前述の第1の実施の形態は、車両2及び通信端末3に大きな加速度が発生すると、緊急信号周波数(通報方式)で緊急通報センタ6(通報先)へ緊急信号及びユーザ情報(通報内容)を通報した。すなわち、通報方式、通報先、及び通報内容は1通りであった。
【0114】
第2の実施の形態は、通信端末3が通報方式、通報先、及び通報内容を各々複数備え、検出した加速度の大きさに応じ、通報方式、通報先、及び通報内容を選択して通報を行う。例えば、第1閾値Th1を超える加速度が発生した場合、通報方式として緊急信号周波数での信号発信に加え、電話や電子メールも用いる。また、通報先として緊急通報センタ6に加え、自動車保険会社、自宅、及び勤務先に通報する。さらに、通報内容として、ユーザ情報に加え、車両2に関する情報、エアバッグやシートベルト等の装備に関する情報、及び予めユーザにより作成されたメッセージを通報する。一方、発生した加速度が第2閾値Th2を超えない場合、電話で自宅のみ通報する。
【0115】
このように、通信端末3が通報方式、通報先、及び通報内容を各々複数備え、検出した加速度の大きさに応じて、通報方式、通報先、及び通報内容を選択して通報を行うことで、大きな加速度発生時には多方面からユーザの保護及び救済を図ることができると共に、大きくない加速度発生時には不相応な範囲まで事態が拡大することを防止できる。
【0116】
また、予めユーザにより、発生した加速度の大きさに応じた通報方式、通報先、及び通報内容を設定しておくことで、ユーザの希望する通報方式、通報先、及び通報内容で通報できる。この場合、ユーザの望む保護及び救済を得ることができると共に、ユーザは事態の拡大する範囲を管理できる。したがって、ユーザは安心して通信システム1を利用することができる。
【0117】
なお、第2の実施の形態は、第1の実施の形態と同様の構成及び処理を含む。このため、以下では第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0118】
<2−2.構成>
第2の実施の形態の通信システム1の構成を説明する。
図11は、第2の実施の形態の通信システム1の構成を示す。第1の実施の形態との主な相違点は、通信端末3の通報部31dが、緊急発信部31da、通話部31db、及びメール部31dcによる複数の通報方式を備える点である。また、記憶部36が、複数の通報先データ36dp、複数の通報内容データ36ep、及び通報処理データ36fを備える点である。また、通信部35がネットワーク5を介して、緊急通報センタ6に加え、自動車保険会社7、自動車ディーラ8、自宅9、及び勤務先10の複数の通報先と通信を行う点である。また、制御部31が書き換え部31fを備える点である。その他の構成は、第1の実施の形態と同様に構成され、また同様に機能する。
【0119】
通報部31dの緊急発信部31daは、音声無線により、緊急通報センタ6が常時監視している周波数帯で緊急信号(コールサイン)を送信し、緊急事態が発生した旨を緊急通報センタ6へ伝達する。すなわち、緊急発信部31daの機能は、第1の実施の形態における通報部31dの機能と同様である。
【0120】
通話部31dbは、電話回線を通じて音声を伝達する電話機能である。通話部31dbは、図示しない電話番号リストを参照し、所望の通話先へ電話を掛ける。
【0121】
メール部31dcは、電子メールの作成や送受信、受信したメールの保存及び管理を行う、いわゆるメーラーである。
【0122】
記憶部36の複数の通報先データ36dpは、「通報先名称」、「緊急信号周波数」、「電話番号」、及び「メールアドレス」の項目からなるデータテーブルである。複数の通報先データ36dpの詳細は後述する。
【0123】
複数の通報内容データ36epは、「通報種別」及び「通報内容」の項目からなるデータテーブルである。複数の通報内容データ36epの詳細は後述する。
【0124】
通報処理データ36fは、通報処理データ36fの例を示す。通報処理データ36fは、「通報処理」、「通報先」、「通報方式」、及び「通報内容」の項目からなるデータテーブルである。通報処理データ36fの詳細は後述する。「通報処理」は、「第1通報」、「第2通報」、及び「第3通報」の3通りの通報処理の項目を備える。
【0125】
自動車保険会社7は、ユーザに対し、保険サービスのほかレッカー車による車両移動や代車手配等のロードサービスを提供する。自動車保険会社7に通報することで、ロードサービスの提供を受けることができる。
【0126】
自動車ディーラ8は、車両2を販売又は点検整備等を行った自動車販売業者である。自動車ディーラ8は、車両2の状態を把握しており、自動車ディーラ8に通報することで、車両2の速やかな修理や整備を受けることができる。
【0127】
自宅9は、ユーザが家族と共に生活する住居である。自宅9に通報することで、ユーザは自宅9に居住する家族に連絡を取ることができる。
【0128】
勤務先10は、ユーザの勤務する企業等である。ユーザは勤務先10に勤務する同僚に連絡を取ることで、勤務先10の無用な混乱を防止し、出勤後の仕事の円滑を図ることができる。
【0129】
書き換え部31fは、通報処理データ36fの内容をユーザの希望通りに書き換える処理部である。書き換え部31fは、ディスプレイ32に書き換え開始ボタンを表示し、ユーザによりボタンがタッチされると書き換え処理を開始する。書き換え処理が開始されると、書き換え部31fは、記憶部36に記憶されている複数の通報先データ36dp、複数の通報内容データ36ep、及び通報処理データ36fをディスプレイ32に表示する。書き換え部31fは、各データに対するタッチパネル32aによるタッチ操作に応じ、第1通報、第2通報、及び第3通報の通報先、通報方式、通報内容を書き換え、記憶部36に上書きして記憶する。通報処理データ36fが書き換えられると、通報部31dは、書き換えられた通報処理データ36fに基づき通報を行う。
【0130】
図12は、複数の通報先データ36dpの例を示す。複数の通報先データ36dpは、「通報先名称」、「緊急信号周波数」、「電話番号」、及び「メールアドレス」の項目からなるデータテーブルである。複数の通報先データ36dpは、通報部31dが通報を行う際に参照される。通報部31dは、複数の通報先データ36dpに登録された通報先のうち、いずれかの通報先を選択し、通報を行う。
【0131】
通報先名称の項目には、「緊急通報センタ」、「自動車保険会社」、「自動車ディーラ」、「自宅」、「勤務先」の名称が登録される。「緊急信号周波数」の項目には、緊急通報センタ6に該当する欄にのみ周波数値が入力される。緊急信号周波数の信号は緊急通報センタ6のみが常時監視する信号だからである。「電話番号」及び「メールアドレス」の項目には、各通報先の電話番号及びメールアドレスが登録される。
【0132】
図13は、複数の通報内容データ36epの例を示す。複数の通報内容データ36epは、「通報種別」及び「通報内容」の項目からなるデータテーブルである。複数の通報内容データ36epは、通報部31dが通報を行う際に参照される。通報部31dは、複数の通報内容データ36epに登録された通報内容のうち、いずれかの通報内容を選択し、通報を行う。
【0133】
「通報種別」の項目には、「ユーザ情報」、「車両情報」、「装備情報」、及び「メッセージ」が登録される。「通報内容」の項目のうち「ユーザ情報」該当する欄には、「氏名」、「電話番号」、「通報日時」、「通報場所」、及び「通報位置」のデータが登録される。各データは第1の実施の形態における通報内容データ36eと同様である。
【0134】
「通報内容」の項目のうち「車両情報」に該当する欄には、「加速度」、及び「横転」のデータが登録される。「加速度」のデータは、加速度センサ38からのデータに基づき、車両2の前方、後方、右側、及び左側に発生した加速度の値が登録される。「横転」のデータは、車両2が横転しているか否かを示すデータである。車両2が横転している場合は、車両2の上面側や側面側に重力が加わるため、加速度センサ38からのデータに基づき判定できる。各加速度の値及び横転状況は、加速度判定部31bにより複数の通報内容データ36epへ書き込みが行われる。
【0135】
「通報内容」の項目のうち「装備情報」に該当する欄には、「シートベルト」、及び「エアバッグ」のデータが登録される。「シートベルト」のデータは、運転席側及び助手席側のシートベルトが着用されていたか否かのデータが登録される。シートベルトが着用されていたか否かのデータは、ボディECUから取得すればよい。「エアバッグ」のデータは、運転席側、助手席側、及び側面のエアバッグが展開されていたか否かのデータが登録される。エアバッグが展開されていたか否かのデータは、エアバッグECU4から取得すればよい。
【0136】
「通報内容」の項目のうち「メッセージ」に該当する欄には、ユーザにより作成されたメッセージが登録される。ユーザは、タッチパネル32aを用いて予めメッセージを入力すればよい。
【0137】
図14は、通報処理データ36fの例を示す。通報処理データ36fは、「通報処理」、「通報先」、「通報方式」、及び「通報内容」の項目からなるデータテーブルである。「通報処理」の項目は、「第1通報」、「第2通報」、及び「第3通報」が登録される。通報処理データ36fは、通報部31dが通報を行う際に参照される。
【0138】
「通報処理」の「第1通報」のうち、「通報先」に該当する欄には、「緊急通報センタ」、「自宅」、及び「勤務先」が登録され、「通報方式」に該当する欄には、「緊急発信」、及び「メール」が登録され、「通報内容」に該当する欄には、「ユーザ情報、車両情報、装備情報」、「メッセージ」、及び「ユーザ情報」が登録される。
【0139】
「通報処理」の「第2通報」のうち、「通報先」に該当する欄には、「自動車保険会社」、及び「自動車ディーラ」が登録され、「通報方式」に該当する欄には、「電話」、及び「メール」が登録され、「通報内容」に該当する欄には、「ユーザ情報、車両情報」が登録される。
【0140】
「通報処理」の「第3通報」のうち、「通報先」に該当する欄には、「自宅」が登録され、「通報方式」に該当する欄には、「電話」が登録され、「通報内容」に該当する欄には、データは登録されない。電話で通報した場合は、ユーザが音声で通報内容を伝えるからである。
【0141】
<2−3.処理>
第2の実施の形態の処理手順を説明する。
図15は、第2の実施の形態の通信システム1の処理手順を示す。第1の実施の形態との主な相違点は、第1通報(ステップS205a)、第2通報(ステップS208a)、及び第3通報(ステップS211a)を実行する点である。その他の処理は、第1の実施の形態と同様に処理される。したがって、相違点となる3つの処理を以下に説明する。
【0142】
エアバッグECU4から加速度発生の検知信号を受信(ステップS203でYes)した後、通信端末3で検知した加速度が第1閾値Th1より大きい場合(ステップS204でYes)に、通報部31dは第1通報を実行する(ステップS205a)。
【0143】
第1通報の処理は、通報部31dが記憶部36の通報処理データ36fを参照し、第1通報に該当する通報先、通報方式、及び通報内容を複数の通報先データ36dp及び複数の通報内容データ36epから読み出して実行される。例えば、通報処理データ36fの第1通報に該当する通報先及び通報方式が、緊急通報センタ・緊急発信、自宅・電話、自動車保険会社・メールである場合、複数の通報先データ36dpから各通報先の通報方式に該当する緊急信号周波数、電話番号、又はメールアドレスのいずれかを読み出す。次に、複数の通報内容データ36epからユーザ情報、車両情報、装備情報、メッセージの通報内容を読み出す。通報部31dは、読み出した通報先の通報方式で、複数の通報内容データ36epから読み出した通報内容を該当する通報先へ通報する。この際、通報部31dは、通報先の通報方式に応じ、緊急発信部31da、通話部31db、メール部31dcを駆動させ、通報を行う。
【0144】
第2通報及び第3通報の実行も第1通報の場合と同様に、通報部31dが通報処理データ36fを参照し、複数の通報先データ36dp及び複数の通報内容データ36epからデータを読み出し、読み出した通報先の通報方式で、通報内容を通報する(ステップS208a及びステップS211a)。
【0145】
以上の通り、本実施の形態の通信端末3は、複数の通報先、通報方式、及び通報内容を備え、通信端末3に発生した加速度の大きさに応じて、適切な通報先、通報方式、及び通報内容を選択して通報する。このため、通報すべき対象に確実に通報すると共に、通報すべき範囲を無用に拡大することがない。したがって、ユーザは安心して通信システム1を利用することができる。
【0146】
<3.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は上記実施の形態に限定されることはない。様々な変形が可能である。以下、変形例を説明する。なお、上記及び以下に説明される実施の形態は、適宜組み合わせ可能である。
【0147】
上記実施の形態では、通信端末3が車両2内に入った事を検知し、通信端末3が自動的に緊急通報ソフトウェアを起動した。しかし、ユーザに緊急通報ソフトウェアの手動起動を促す報知を行ってもよい。この場合、ユーザが緊急通報ソフトウェアの起動要否を判断できる。
【0148】
また、通信端末3が車両2内に入ったか否かを検知する手法として、エアバッグECU4との無線通信を利用したが、車両2に備わるワイヤレスキーロックやエンジンキーなどの無線通信システムや盗難防止用の侵入検知センサ等、車載無線機器の電波を用いてもよい。
【0149】
また、ユーザへ緊急通報を行う旨を警告する音声は、通信端末3のスピーカ33を用いると説明したが、カーオーディオやカーナビゲーションのスピーカを用いてもよい。
【0150】
また、ユーザへ提示する通報許可の確認メッセージは、通信端末3のディスプレイ32に表示させると説明したが、車両2のインナーパネルやカーナビゲーション画面に表示してもよい。
【0151】
また、通信端末3はタッチパネル32aによりタッチ操作されると説明したが、通信端末3に備わる機械的な押下式ボタンにより操作されてよい。
【0152】
また、通信端末3が外部から取り込む情報は、車両速度、ステアリング陀角、ブレーキ操作、及びエンジン回転数等の車両ネットワークで共有されている情報や、エアバッグECU4内部で記憶している加速度情報やエアバッグ展開情報でもよい。
【0153】
また、車両2の周辺状況を検出するミリ波レーダや画像認識による衝突防止装置により、前方車との車間距離や相対速度から衝突可能性が高いと判断した場合に、緊急通報アプリケーションを自動的に起動してもよい。
【0154】
また、衝突防止装置が、衝突可能性が高いと判断した場合に、緊急通報アプリケーション以外のアプリケーションを強制的に終了することが好ましい。この場合、緊急通報アプリケーションを安定的に動作できる。
【0155】
また、緊急通報を行う旨の音声や画面報知は、通信端末3の車室内における位置がユーザ、特に運転者から離れた位置にある場合に行ってもよい。
【0156】
通信端末3の車室内の位置を検出する手法として、車載機との通信に用いるブルートゥース(Bluetooth)(登録商標)等の近距離無線通信の距離情報を用いてもよい。
【0157】
ブルートゥース(Bluetooth)(登録商標)等の近距離無線通信の接続を行っても、接続可能な距離の限界付近に通信端末3が位置する場合は、走行中の振動等により接続が途絶える恐れをユーザに報知することが好ましい。
【0158】
上記実施の形態では、加速度の大きさを閾値と比較して判定したが、加速度又は減速度の一定期間における積分値と閾値とを比較して加速度の大きさを判定してもよい。この場合、悪路走行時のような加速度の瞬間的な上昇に基づく誤判定を防止できる。また、衝突の発生直後から高まる加速度を積分するので、早期に判定を行うことができる。早期に判定を行うと、早期にエアバッグを展開できるので、安全性をより向上できる。
【0159】
なお、衝突の発生の検出は、衝突の発生から20[msec]程度で行うのが好ましい。衝突の発生からエアバッグを完全に展開するまでの時間を考慮するためである。すなわち、衝突の発生後、ユーザの頭部が展開したエアバッグ接触するには、車両2が時速50[km]程度で走行していた場合、一般的に50[msec]である。スクイブを発火させるには、一般的に30[msec]必要である。したがって、積分時間(すなわち、衝突発生からエアバッグ展開を決定するまでの時間)は、ユーザの頭部が展開したエアバッグに接触する時間からスクイブの発火にかかる時間を減じた時間と同程度にする必要がある。すなわち、衝突の発生後20[msec]程度である。また、小さな加速度でも長時間継続すれば、積分値は増加して閾値を超える。一方、大きな加速度でも短時間であれば、ユーザを大きく動かすエネルギーと成り難い。この点からも、一定時間だけ積分することは利点がある。なお、積分値を用いる場合には、新たな閾値を設定する必要がある。
【0160】
他の変形例を説明する。上記実施の形態では、ユーザ情報や車両情報、装備情報を送信した。通信端末3は、車両2に備えられたドライブレコーダと接続し、ドライブレコーダが撮影した画像を送信してもよい。この場合、通報先において衝突の状況を映像を用いて把握でき、より適切な対処が可能となる。
【0161】
また、通信端末3は、携帯型でなく車両搭載型でもよい。車両に搭載されたナビゲーション装置でもよい。通信端末3とは別個に加速度センサを備える装置であればよい。
【0162】
また、上記実施の形態では、通信端末3とエアバッグECU4とは連携部39と連携部42とが無線でデータの送受信を行っていたが、有線で接続してもよい。その場合、連携部39と連携部42とはUSB(Universal Serial Bus)等で接続すればよい。
【0163】
また、エアバッグECU4は、車両に設置されると説明したが、車両には自動車のほか二輪車、鉄道、航空機、及び船舶等の輸送用機器を含む。また、車両には民生用のほか軍事用を含み、自家用のほか業務用を含む。また、エアバッグECU4は、車両のみならずエレベータやエスカレータ等の昇降機に設置してもよい。