特開2015-176724(P2015-176724A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-176724(P2015-176724A)
(43)【公開日】2015年10月5日
(54)【発明の名称】アース接続構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/64 20060101AFI20150908BHJP
   H01R 4/70 20060101ALI20150908BHJP
   H01R 13/719 20110101ALI20150908BHJP
   H01R 4/34 20060101ALI20150908BHJP
【FI】
   H01R4/64 C
   H01R4/70 K
   H01R13/719
   H01R4/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-51748(P2014-51748)
(22)【出願日】2014年3月14日
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相澤 武史
【テーマコード(参考)】
5E012
5E021
【Fターム(参考)】
5E012BA12
5E021FA03
5E021FA09
5E021FA14
5E021FB20
5E021FC40
5E021MA09
5E021MA18
(57)【要約】
【課題】接地部における錆の発生を確実に防止する。
【解決手段】アース接続構造Aは、接地部50と、接地部50のアース面51(表面)の少なくとも一部を覆う被覆層53と、被覆層53を覆うように配されたアース部材40と、アース部材40に形成された貫通孔43と、貫通孔43に挿通された雄ネジ部64と、アース部材40を接地部50との間で挟み付ける座面67とを有する締結部材60と、アース面51と貫通孔43の内周面と座面67とに囲まれた接続空間69と、接続空間69内に配され、アース面51のうち被覆層53で覆われていない領域とアース部材40を導通させる突起部68(導通部)と、アース部材40と座面67との当接領域を包囲する周壁部18と、周壁部18で囲まれた領域に注入された充填材70とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地部と、
前記接地部の表面の少なくとも一部を覆うように配された被覆層と、
前記被覆層を覆うように配されたアース部材と、
前記アース部材に形成された貫通孔と、
前記貫通孔に挿通された雄ネジ部と、前記アース部材を前記接地部との間で挟み付ける座面とを有する締結部材と、
前記接地部の前記表面と前記貫通孔の内周面と前記座面とに囲まれた接続空間と、
前記接続空間内に配され、前記接地部の前記表面のうち前記被覆層で覆われていない領域と、前記アース部材とを導通させる導通部と、
前記アース部材と前記座面との当接領域を包囲する周壁部と、
前記周壁部で囲まれた領域に注入された充填材とを備えていることを特徴とするアース接続構造。
【請求項2】
前記アース部材が、ハウジング内に収容されたフィルタ素子に接続されており、
前記周壁部が前記ハウジングに一体に形成されていることを特徴とする請求項1記載のアース接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アース接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、表面が塗料や錆止剤等の被覆層で覆われた車体に、アース用端子金具を接続する手段として、アース用端子金具と被覆層との間に、突起を有する導電性の被締結材を介装し、突起が被覆層を突き破って車体に接触することにより、アース用端子金具と車体が接続されるようにしたアース接続構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−149514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のアース接続構造では、突起が、被覆層を突き破るときに車体の表面も削る。そのため、突起で削られた部分に水分が付着して錆が発生することを防止する手段として、突起が収容される空間に対する外部からの浸水を防止するためのパッキンが設けられている。しかし、パッキンを用いる方法では、パッキンが他部材との干渉によって傷付けられた場合に、防水機能が発揮されなくなることが懸念される。したがって、従来の防水方法では、車体における防錆性能の信頼性が低い。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、接地部における錆の発生を確実に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のアース接続構造は、
接地部と、
前記接地部の表面の少なくとも一部を覆うように配された被覆層と、
前記被覆層を覆うように配されたアース部材と、
前記アース部材に形成された貫通孔と、
前記貫通孔に挿通された雄ネジ部と、前記アース部材を前記接地部との間で挟み付ける座面とを有する締結部材と、
前記接地部の前記表面と前記貫通孔の内周面と前記座面とに囲まれた接続空間と、
前記接続空間内に配され、前記接地部の前記表面のうち前記被覆層で覆われていない領域と、前記アース部材とを導通させる導通部と、
前記アース部材と前記座面の当接領域を包囲する周壁部と、
前記周壁部で囲まれた領域に注入された充填材とを備えているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0007】
アース部材と座面の当接領域の隙間は、外部から接続空間内への浸水経路となり得るのであるが、周壁部で囲まれた領域に注入した充填材によって塞がれる。これにより、接続空間への浸水が防止され、ひいては、接地部の表面のうち被覆層で覆われていない領域が、被水しないように保護される。本発明によれば、充填材の充填量が適正に管理されていれば、充填後の充填材が外部からの干渉を受けても、防水性能が低下する虞がない。したがって、接地部における錆の発生を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1のアース部材が接地部に接続される前の状態をあらわす平面図
図2図1のX−X線断面図
図3】アース部材を接地部に接続した状態をあらわす部分拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)本発明のアース接続構造は、前記アース部材が、ハウジング内に収容されたフィルタ素子に接続されており、前記周壁部が前記ハウジングに一体に形成されていてもよい。この構成によれば、周壁部をハウジングとは別体の部品とした場合に比べると、部品点数を削減できる。
【0010】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図3を参照して説明する。本実施例1のアース接続構造Aは、フィルタ素子内蔵型コネクタBに適用したものである。アース接続構造Aは、自動車のボディ等の接地部50と、ワイヤーハーネス等の導電路(図示省略)に接続されたアース部材40と、アース部材40を接地部50の表面に接続した状態に保持するための締結部材60と、ハウジング10と、充填材70とを備えて構成されている。このアース接続構造Aは、アース部材40を接地部50に導通させるための構造である。
【0011】
尚、以下の説明において、左右の方向は、図1〜3における左方を前方と定義する。上下の方向については、図2,3に表れる向きを、そのまま上方、下方と定義する。また、表面の文言を上面と同義で用い、裏面の文言を下面と同義で用いる。
【0012】
<接地部50>
図3に示すように、接地部50の表面は、アース部材40を導通させるためのアース面51となっている。接地部50には、そのアース面51から裏面まで上下方向に貫通した円形のガイド孔52が形成されている。アース面51と裏面は平坦面である。アース面51には、塗料や錆止め剤等からなる被覆層53が形成されている。この被覆層53は、ガイド孔52の内周面にも形成されている。アース面51を覆う被覆層53は、電気的な絶縁性を有するか、電気抵抗が非常に大きい層である。したがって、アース部材40をアース面51に接続して安定したアース接続を実現するためには、被覆層53を除去する必要がある。
【0013】
<アース部材40>
アース部材40は、平面視が略方形をなす平板状の金属板材に、曲げ加工等を施して成形されている。図2に示すように、アース部材40は、略平板状の結合部41と、結合部41と平行であり且つ結合部41に対して段差状に低くなった本体部42とから構成されている。本体部42は、結合部41の後端縁に対し段差状に連なっている。本体部42には、その表面(図2,3における上面)から裏面(接地部50の表面の被覆層53と対向する面)まで上下方向に貫通する円形の貫通孔43が形成されている。貫通孔43の内径は、ガイド孔52の内径よりも大きい寸法とされている。
【0014】
<締結部材60>
図3に示すように、締結部材60は、ナット61とボルト63との2つの部品によって構成されている。ナット61は、接地部50の裏面に溶接により固着されている。固着されたナット61は、その雌ネジ孔62がガイド孔52と同心となるように配置されている。ナット61の雌ネジ孔62には、接地部50に形成されていたような被覆層53は形成されていない。
【0015】
ボルト63は、雄ネジ部64と、雄ネジ部64の上端部に一体形成された頭部65とを備えて構成されている。雄ネジ部64は雌ネジ孔62にねじ込まれるようになっている。頭部65には、その上端面を凹ませた六角形断面の嵌合孔66が形成されている。この嵌合孔66には、六角レンチ(図示省略)が嵌合されるようになっている。頭部65の下面は、雄ネジ部64を雌ネジ孔62にねじ込んで締め付けた時に、アース部材40の表面に密着し、アース部材40を接地部50との間で上下に挟み付ける座面67となっている。座面67は、アース部材40の上面と平行な平坦面である。
【0016】
座面67には、複数の突起部68が、周方向に間隔を空けて一体に形成されている。突起部68は、円錐状をなし、座面67から下向きに突出している。座面67からの突起部68の突出寸法は、アース部材40の板厚寸法よりも大きい寸法に設定されている。複数の突起部68は、ボルト63(雄ネジ部64)と同心の単一仮想円周上に配置されている。複数の突起部68に内接する仮想外接円の直径寸法は、接地部50のガイド孔52の内径よりも大きい寸法である。複数の突起部68に外接する仮想外接円の直径寸法は、貫通孔43の内径より大きい寸法である。
【0017】
<フィルタ素子内蔵型コネクタB>
フィルタ素子内蔵型コネクタBは、アース接続構造Aを構成するハウジング10と、端子金具20と、一対のコンデンサ30(請求項に記載のフィルタ素子)と、1つのコイル35(請求項に記載のフィルタ素子)と、アース接続構造Aを構成するアース部材40とを備えて構成されている。
【0018】
<ハウジング10>
ハウジング10は、合成樹脂材料からなり、図2に示すように、上面が開放された箱形部11と、フード部12とを一体に形成して構成されている。箱形部11の上面の開口部は、カバー13によって閉塞されるようになっている。箱形部11を構成する底壁部14には、アース部材40の結合部41がインサート成形により一体化されている。底壁部14の前後方向における略中央部には、上下方向に貫通した形態の溶接用切欠部15が形成されている。溶接用切欠部15においては、結合部41の後端部上面が箱形部11内に露出している。フード部12は、箱形部11を構成する前壁部16の外周縁から前方へ角筒状に延出した形態である。
【0019】
底壁部14の後端側領域には、略方形に切欠されたアース用切欠部17が形成されている。アース用切欠部17は、底壁部14の上面から下面に連通されている。アース用切欠部17は、アース部材40の本体部42で塞がれた状態となっている。但し、本体部42には、貫通孔43が形成されているので、貫通孔43を通してハウジング10の下面側外部空間と箱形部11の内部とが連通している。そして、本体部42は、インサート成形により底壁部14及びアース用切欠部17と一体化されている。本体部42の下面は、ハウジング10の下面と同じ高さとなっている。
【0020】
また、ハウジング10には、底壁部14の上面から立ち上がった形態の周壁部18が、一体に形成されている。周壁部18は、箱形部11の内部において、アース部材40と座面67との当接領域を包囲するように配されている。周壁部18は、アース用切欠部17の開口縁に沿い、且つアース用切欠部17を全周に亘って連続して包囲する形態である。即ち、図1,2に示すように、周壁部18は、アース用切欠部17の前縁から略直角に立ち上がる前面壁18Fと、アース用切欠部17の左右両側縁から立ち上がる左右一対の側面壁18Sと、箱形部11の後壁部を構成する後面壁18Rとから構成されている。
【0021】
周壁部18で囲まれた方形の空間は、充填材70を注入するための注入空間19となっている。注入空間19は、上面が全体に亘って開口されている。注入空間19は、貫通孔43を介してハウジング10の下方外部(つまり、接地部50側)に連通している。また、周壁部18の高さは、箱形部11の全高寸法よりも小さい。したがって、周壁部18の注入空間19は、後述するコンデンサ30とコイル35が収容される空間と連通している。
【0022】
<端子金具20>
端子金具20は、全体として前後方向に細長い形状である。一対の端子金具20は、左右に並列するように配されており、前壁部16を前後に貫通した状態でインサート成形によりハウジング10(箱形部11)と一体化されている。端子金具20の前端側領域を構成するタブ21は、フード部12内に収容され、図示しない回路を構成する相手側端子(図示省略)に接続されるようになっている。端子金具20の後端部領域を構成する溶接部22は、箱形部11内に収容されている。溶接部22の上面には、コンデンサ30のリード線32Fが半田33(溶接)により接続されている。
【0023】
<コンデンサ30>
コンデンサ30は、コンデンサ本体31と、コンデンサ本体31から延出する前後一対のリード線32F,32Rとを備えて構成されている。コンデンサ30は、箱形部11内における左右両側部に配されている。一対のリード線32F,32Rは、コンデンサ本体31の上面における前端部と後端部から上向きに導出されて曲げ加工されている。前側のリード線32Fは、半田33により端子金具20の溶接部22の上面に導通可能に接続されている。また、後側のリード線32Rは、結合部41の上面のうち溶接用切欠部15において箱形部11内に露出する領域に対し、半田33(溶接)により接続されている。
【0024】
<コイル35>
コイル35は、軸線を前後方向に向けた円柱形のコア36の外周に螺旋状に巻き付けられて構成され、箱形部11内に収容されている。コイル35は、底壁部14の上面に載置された状態で、左右一対のコンデンサ30の間に配されている。コイル35の両端部は、一対の端子金具20の溶接部22に、半田33(溶接)により導通可能に接続される。コイル35の溶接は、コンデンサ30の前側のリード線32Fを溶接する工程で同時に行われる。アース部材40と端子金具20に接続されたコイル35と2つのコンデンサ30は、π型のフィルタ回路を構成し、端子金具20に接続された回路のノイズを効果的に除去するフィルタとしての機能を発揮する。
【0025】
<実施例1の作用及び効果>
アース部材40を接地部50に接続する際には、まず、箱形部11からカバー13を外しておき、アース部材40の貫通孔43を接地部50のガイド孔52に位置合わせする。そして、ボルト63の雄ネジ部64を、ハウジング10の上方から箱形部11内及び注入空間19内に収容し、貫通孔43とガイド孔52に挿通し、雌ネジ孔62の上端に到達させる。この過程で、複数の突起部68を貫通孔43内に収容する。
【0026】
この後、頭部65の嵌合孔66に六角レンチ(図示省略)を嵌合してボルト63を回転させ、雄ネジ部64を雌ネジ孔62にねじ込んでいく。ねじ込みの過程では、突起部68が頭部65(座面67)と一体となって回転しながら下降し、突起部68の下端部が被覆層53に接近していく。そして、突起部68の下端部が被覆層53に接触した後は、ボルト63のねじ込みが進むのに伴い、突起部68が、被覆層53を引っ掛いて接地部50の表面から剥がすように除去し、更には、突起部68の下端部が接地部50の表面に接触する。
【0027】
そして、ボルト63のねじ込みが完了した状態では、図3に示すように、突起部68の下端部が被覆層53を突き破ってアース面51に食い込む。これにより、突起部68とアース面51(接地部50)が、直接、接触して導通可能となる。そして、座面67の外周縁部が、アース部材40の上面のうち貫通孔43の開口縁部に対し、直接、接触して導通可能となる。これにより、アース部材40は、座面67、頭部65、雄ネジ部64、ナット61を通る経路と、座面67、頭部65、突起部68を通る経路とにより、アース面51(接地部50)に対して導通可能に接続される。
【0028】
接地部50に対するアース部材40の接続工程が完了すると、貫通孔43の内周面と、座面67と、アース面51及び被覆層53の表面とによって囲まれた接続空間69が構成される。この接続空間69内では、突起部68が被覆層53を除去してアース面51の金属を露出させているため、この露出部分に水分が付着すると、錆の発生が懸念される。本実施例1では、アース部材40の上面とボルト63の座面67との当接面が、外部から接続空間69内への浸水経路となり得る。そこで、防錆手段として、アース部材40の表面と座面67との当接領域を包囲する周壁部18を設け、この周壁部18で囲まれた注入空間19に充填材70を充填している。
【0029】
注入空間19には、アース部材40の本体部42の上面(表面)が露出している。そして、注入空間19の内部において、本体部42の表面に対しボルト63の頭部65の座面67が当接しているのである。したがって、図3に示すように、注入空間19内に充填材70を充填すれば、アース部材40の表面と座面67との当接領域が、全周に亘って液密状に覆い隠される。したがって、アース部材40と座面67との当接領域を通って接続空間69内に至る浸水経路は、充填材70によって確実に遮断される。
【0030】
本実施例1のアース接続構造Aは、接地部50と、接地部50の表面の少なくとも一部を覆うように配された被覆層53と、被覆層53を覆うように配されたアース部材40と、アース部材40に形成された貫通孔43と、締結部材60とを有する。締結部材60は、貫通孔43に挿通された雄ネジ部64と、アース部材40を接地部50との間で挟み付ける座面67とを有している。そして、アース部材40を接地部50に接続した状態では、アース面51(接地部50の表面)と貫通孔43の内周面と座面67とに囲まれた接続空間69が構成され、接続空間69内に配した突起部68が、アース面51のうち被覆層53で覆われていない領域と、アース部材40とを導通させる。さらに、接続空間69内における防錆手段として、アース部材40と座面67との当接領域を包囲する周壁部18を設け、この周壁部18で囲まれた領域に充填材70を注入している。
【0031】
この構成の技術的意義は次の通りである。アース部材40と座面67の当接領域の隙間は、外部から接続空間69内への浸水経路となり得るのであるが、周壁部18で囲まれた領域に注入した充填材70によって塞がれる。これにより、接続空間69への浸水が防止され、ひいては、アース面51のうち被覆層53で覆われていない領域が、被水しないように保護される。したがって本実施例1によれば、充填材70の充填量が適正に管理されていれば、充填後の充填材70が外部からの干渉を受けても、防水性能が低下する虞がない。これにより、接地部50における錆の発生を確実に防止できる。
【0032】
また、アース接続構造Aは、アース部材40が、ハウジング10内に収容されたフィルタ素子(コンデンサ30及びコイル35)に接続されており、周壁部18がハウジング10に一体に形成されている。この構成によれば、周壁部をハウジングとは別体の部品とした場合に比べると、部品点数を削減できる。
【0033】
また、突起部68は、接続空間69内においてアース面51のうち被覆層53で覆われていない領域とアース部材40とを導通させる導通部としての機能を有するものである。それに加え、突起部68を座面67から突出した形態とし、締結部材60の締付けに伴って突起部68が被覆層53を除去するようになっている。このように突起部68は、接地部50とアース部材40を接地部50に導通させる機能と、被覆層53を除去してアース面51を露出させる機能を兼ね備えているので、突起部68とは別に被覆層53を除去するための専用手段を設ける場合に比べると、構造の簡素化が実現されている。
【0034】
また、突起部68が被覆層53を除去するのに伴い、被覆層53の削り屑が接地部50の表面から捲れ上がる。しかし、本実施例1では、被覆層53を除去する手段として、複数の突起部68を周方向に間隔を空けて配置しているので、隣り合う突起部68同士の間には、削り屑を収容するためのスペースが確保されている。したがって、被覆層53の削り屑が、突起部68とアース面51との間に噛み込む虞はない。
【0035】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、周壁部をハウジングに一体に形成したが、周壁部は、ハウジングとは別体の部品であってもよい。この場合、別体の周壁部品は、ハウジングに組み付けてもよく、アース部材に組み付けてもよい。
(2)上記実施例では、座面がボルトの頭部に形成されているが、接地部からスタッドボルトを突出させ、このスタッドボルトにねじ込まれるナットに座面を形成してもよい。この場合、ナットの座面に突起部を形成してもよい。
(3)上記実施例では、ボルトを締め付ける工程で、座面の突起部により被覆層を除去するようにしたが、ボルト締め工程の前に予め被覆層を除去しておいてもよく、あるいは、被覆層を成膜する工程で、接続空間と対応する領域に被膜層が形成されないようにマスキングしておいてもよい。
(4)上記実施例では、座面から突出する突起部を、接地部とアース部材を導通させる導通部として機能させるようにしたが、導通部は、アース部材に形成されていてもよい。
(5)上記実施例では、座面がボルトの頭部に一体に形成されていたが、座面は、ボルトの頭部とは別体のワッシャに形成されていてもよい。
(6)上記実施例では、充填材が、アース部材と締結部材とに接触して接地部や被覆層には接しない形態としたが、充填材は、接地部や被覆層にも接するように注入してもよい。
(7)上記実施例では、アース部材がフィルタ素子(コンデンサとコイル)に接続されているが、本発明は、アース部材が、フィルタ素子に接続されず、ワイヤーハーネスを構成する電線に直接、接続される場合にも適用できる。
(8)上記実施例では、周壁部と充填材を収容する空間とフィルタ素子(コンデンサ及びコイル)を収容する空間が互いに連通する1つの空間であったが、周壁部と充填材を収容する空間とフィルタ素子を収容する空間は、互いに区画されていてもよい。
(9)上記実施例では、アース部材とハウジングをインサート成形により一体化したが、アース部材は成形済みのハウジングに組み付けてもよい。
(10)上記実施例では、充填材を周壁部で囲まれた注入空間のみに注入したが、充填材は、ハウジングの内部全体に注入し、フィルタ素子(コンデンサとコイル)も充填材の内部に埋設してもよい。
【符号の説明】
【0036】
A…アース接続構造
10…ハウジング
18…周壁部
30…コンデンサ(フィルタ素子)
35…コイル(フィルタ素子)
40…アース部材
43…貫通孔
50…接地部
51…アース面(接地部の表面)
53…被覆層
60…締結部材
64…雄ネジ部
67…座面
68…突起部(導通部)
69…接続空間
70…充填材
図1
図2
図3