【解決手段】互いに接続部Jを介して接続されたケーブルCと、内部に前記ケーブルCの接続部Jを収容するとともに壁面に開口16,17が貫通して形成されたケーシングと6、前記ケーシング6の内部に充填されたジェル19と、前記ケーシング6のうち少なくとも前記開口16,17の外側を包囲するようにして形成された樹脂製のアウタモールド部20と、を備えている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のケーブル接続構造は、前記ケーブルは幹線から分岐した分岐線を有し、前記ケーシングは前記幹線の長手方向に沿って分割された半割体を合体させて構成されるとともに、前記ケーシングには前記幹線が収容される幹線収容部とこの幹線収容部に連通し前記分岐線を収容する分岐線収容部とが形成されているものとしてもよい。
このような構成によれば、ケーシングを長手方向に沿って分割したため、分岐線を有するケーブルであっても、ケーシングの一方の半割体内に沿って配索し、他方の半割体を閉じて合体させれば、ケーブルの幹線は幹線収容部に、分岐線は分岐線収容部にそれぞれ収容することができる。このようにケーシングが分割されていても、アウタモールド部によりケーシングが分離してしまう事態も回避することができる。
また、本発明のケーブル接続構造は、前記ケーシングは前記ケーブルをシールド状態で収容することができるものとしてもよい。
【0011】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した一実施例について、
図1〜
図6を参照しつつ詳細に説明する。
<ケーブルC>
図1に示すように、本実施例のケーブルCは幹線C1から2本の分岐線C2を分岐させた構成となっている。なお、幹線C1と両分岐線C2とは共にシールド線によって構成されている。
図6に示すように、ケーブルCは、内側被覆1に包囲された2本の導線2が、相互に離間した状態で平行に配索されている。内側被覆1の外周面は中間被覆21を介して編組線3によって包囲され、さらに編組線3の外側は外側被覆4によって覆われている。
【0012】
幹線C1の両導線2は、その途中の異なる位置において被覆1,21,4が剥がされて露出されており、この露出部分にはそれぞれ分岐線C2が接続されている。分岐線C2の端末部分も被覆1,21,4が剥がされて内部の導線2が露出されている。そして、分岐線C2側及び幹線C1側において露出された導線2同士は、スプライス端子5を介してかしめ付けられ、またはスプライス溶接によって接続されている。かくして、幹線C1と分岐線C2とは接続部Jを介して接続される。
【0013】
<ケーシング6>
ケーシング6は、ケーブルCの接続部Jを含む幹線C1および分岐線C2のそれぞれをシールド状態で収容することができる。
図4に示すように、ケーシング6は長手方向に沿って上下に二分割され、アッパシェル6Aとロアシェル6Bとの2部材(半割体)からなり、これらを合体させた構成となっている。本実施例の両シェル6A,6Bは、導電金属製(例えば銅製)の板材を上向きあるいは下向きに開放する断面略C字形状に折り曲げて構成されている。
【0014】
図1に示すように、ケーシング6は、長手方向に沿って形成されケーブルCの幹線C1を収容する幹線収容部8と、この幹線収容部8の途中の部位(長手方向の略中央部位)において幹線収容部8と連通しつつ斜め方向に延出して形成され分岐線C2を収容する分岐線収容部9とから構成されている。
図2に示すように、ロアシェル6Bには、幹線収容部8及び分岐線収容部9のいずれの側壁の上縁にも、一定の長さ間隔毎に突片10が上向きに張出し形成されている。
図4に示すように、ロアシェル6Bにおいて各突片10の下部には係止爪7が切り起こしによって形成されている。各係止爪7は下端側が自由端となっていて、内方へ斜め下向きにかつ撓み可能に突出している。一方、
図2に示すように、ロアシェル6Bの両側壁において係止爪7から長さ方向へずれた位置であって、かつ係止爪7より低位には、長手方向に沿って一定間隔毎に抜け止め爪12が設けられている。
図4に破線で示すように、各抜け止め爪12はロアシェル6Bの内方へ斜め上向きに突出するようにして切り起こしによって形成され、上方の端部が自由端となる片持ち状に形成されている。
【0015】
一方、アッパシェル6Aは、
図4に示すように、ロアシェル6Bの内側に嵌め入れて組み合わされている。アッパシェル6Aの両側壁の下縁寄りの部位には長手方向に沿って一定間隔毎に複数の係止孔11が開口している。アッパ・ロアの両シェル6A,6Bが組み合されたときに、上記した各係止爪7が対応する係止孔11の下縁に係止可能となっている。また、両シェル6A,6Bが組み合されたときには、同時にロアシェル6Bの各抜け止め爪12がアッパシェル6Aの両側壁の下縁に略突き当て状態で係止する。これらのことによって、アッパ・ロアの両シェル6A,6Bが上下方向に分離不能に合体されてケーシング6が組み立てられる。
【0016】
図1、3に示すように、幹線収容部8の長手方向の両端部及び分岐線収容部9の延出端部には、ケーブルCを外方へ引き出すための引き出し部13が連続して形成されている。
図4に示すように、ケーシング6(幹線収容部8および分岐線収容部9)の一般部が方形状の断面をもって形成されているのに対し、各引き出し部13は、
図5に示すように、概ね円形断面をもって形成されている。そのため、ケーシング6(アッパ・ロアの両シェル6A,6B)の一般部と各引き出し部13との境界部分には、幅方向に沿って対向するようにしてスリット14が切り込まれており、各引き出し部13の弧状の曲げ加工を容易にしている。
図5に示すように、各引き出し部13におけるアッパシェル6A側とロアシェル6B側の相互の対向縁には、組み合わせ時に互いに係止し合う爪部15が設けられている。このことにより、各引き出し部13においてもアッパ・ロアの両シェル6A,6Bが係止状態で組み合わされる。
【0017】
図1に示すように、アッパシェル6Aの上面壁には複数の開口16,17が内外方向に貫通形成されている。開口16は、幹線収容部8において分岐線収容部9が分岐する部位に配されており、円形状をなして貫通している。より詳細には、開口16が設けられている位置は、幹線収容部8の幅方向に関する中心軸線と分岐線収容部9の幅方向に関する中心軸線との交点上に、開口16の中心が位置するように形成されている。また、開口17は、幹線収容部8の長手方向の両端部と分岐線収容部9の延出端部にそれぞれ配されている。各開口17は幹線収容部8及び分岐線収容部9の各幅方向の中心軸線上に配されるとともに、いずれも開口16より小径に形成されている。
なお、上記したケーシング6は図示しないが、車両ボディに接続されてアースがとられている。
【0018】
<ケーブルCとケーシング6との接続構造>
ケーブルCは上記したケーシング6内に収容され、計3か所の引き出し部13からそれぞれ外部に引き出されるようになっている。ケーブルCとケーシング6の各引き出し部13とは次のようにして接続されている。
図1に示すように、ケーブルCのうち幹線収容部8及び分岐線収容部9内に対しては中間被覆21及び編組線3が剥がされて内部被覆1付きの導線2が収容されている。また、ケーブルCのうち引き出し部13と対応する部位では外部被覆4が剥がされ、中間被覆21および編組線3が露出されている。そして、
図5に示すように、この露出された中間被覆21は、引き出し部13を構成するアッパ・ロアの両シェル6A,6Bによって外面側から挟み込まれ、その両シェル6A,6Bの外側に編組線3が被せ付けられた後に、かしめリング18によってかしめ付けられている。
【0019】
かしめリング18は金属製薄板材によって軸方向の両端が開口する略円筒形状に形成されている。このかしめリング18は、軸方向の前後部位でそれぞれ別個にかしめ付けられるようになっており、前側部位は上記の折り返された編組線3を引き出し部13との間で挟み付けた状態でかしめ付けられるようになっている。一方、かしめリング18の後側部位は幹線C1及び分岐線C2の外側被覆4にかしめ付けられる。かくして、幹線C1あるいは分岐線C2にそれぞれ固定されたかしめリング18により編組線3は各引き出し部13、つまりケーシング6に対して電気的に接続されてアースがとられる。
【0020】
<ケーブル接続構造の製造方法の一例>
まず、先に説明したように、ケーブルCの幹線C1と分岐線C2とを接続部Jを介して接続する。
次いで、ケーシング6内にケーブルCを収容するとともにジェル19を充填する。まず、両シェル6A,6Bのうちいずれか一方のシェル6Aまたは6BにケーブルCをセットし、アッパシェル6Aとロアシェル6Bとを合体させる。次いで、開口16からケーシング6内にジェル19を充填する。このとき、ジェル19の量が大幅な不足または過剰にならないよう適宜調整する。すると、ケーシング6内にケーブルCが収容されるとともにジェル19が充填された状態になる。このとき、ジェル19が若干過剰だった場合には幹線収容部8または分岐先収容部9の端部(引き出し部13との連結部位)、もしくは開口16,17からジェル19が外側に漏れ出す。また、ジェル19が若干不足していた場合にはケーシング6内にわずかな隙間が形成される。こうしてアッパシェル6Aとロアシェル6Bとを合体させた後、先に説明したように、ケーブルCとケーシング6の各引き出し部13とを接続する。
【0021】
次に、ケーシング6の外側を包囲するようにしてアウタモールド部20を形成する。まず、ケーシング6及びケーブルCを、型開き状態にある図示しない成形用金型に仕掛ける。そして、型閉じによって金型内に形成される成形空間へ溶融樹脂を注入する。ここで、ケーシング6内に隙間がある場合には、溶融樹脂は、ケーシング6の開口16または17からケーシング6内に流れ込んで隙間を埋める。また、ジェル19がケーシング6内から漏れ出している場合には、その漏れ出したジェル19はアウタモールド部20により覆われる。そして、型内に充填された溶融樹脂が固化した後、型開きを行えばアウタモールド部20によって包囲されたケーシング6、ケーブルCを取り出すことができる。なお、アウタモールド部20は、ケーブルCがケーシング6から引き出された部分のうち、かしめリング18の全体を含む所定長さ後方まで覆う範囲に亘って形成されている。
【0022】
次に、上記のように構成された実施例の作用および効果について説明する。
本実施例のケーブル接続構造は、互いに接続部Jを介して接続されたケーブルCと、内部にケーブルCの接続部Jを収容するとともに壁面に開口16,17が貫通して形成されたケーシング6と、ケーシング6の内部に充填されたジェル19と、ケーシング6の外側を包囲するようにして形成された樹脂製のアウタモールド部20と、を備えている。この構成によれば、仮にケーシング6内に隙間があったとしても、アウタモールド部20を形成する際に、金型に流し込まれた溶融樹脂が開口を介してケーシング6内に入り込んでその隙間を埋める。また仮にケーシング6からジェル19が漏れ出していたとしても、その漏れ出した部分はアウタモールド部20により覆われた状態になる。したがって、ケーシング6の構造を複雑化することなく、防水性を高めることができる。
【0023】
また、ケーブルCは幹線C1から分岐した分岐線C2を有し、ケーシング6は幹線C1の長手方向に沿って分割されたアッパシェル6Aおよびロアシェル6Bを合体させて構成されるとともに、ケーシング6には幹線C1が収容される幹線収容部8とこの幹線収容部8に連通し分岐線C2を収容する分岐線収容部9とが形成されている。この構成によれば、ケーシング6を長手方向に沿って分割したため、分岐線C2を有するケーブルCであっても、ケーシング6の一方のアッパシェル6Aまたはロアシェル6B内に沿って配索し、他方のアッパシェル6Aまたはロアシェル6Bを閉じて合体させれば、ケーブルCの幹線C1は幹線収容部8に、分岐線C2は分岐線収容部9にそれぞれ収容することができる。このようにケーシング6が分割されていても、アウタモールド部20によりケーシング6が分離してしまう事態も回避することができる。
【0024】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、ケーブルCに関し幹線C1から分岐線C2を分岐させる形態のものを示したが、本発明は分岐線を持たず、単にケーブル同士の端末同士を連結させる形態のものに適用してもよい。
(2)上記実施例では、ケーブルCの分岐方向は一方向のみであったが、分岐の数は限定されるべきものではなく、多方向に分岐していてもよい。
(3)上記実施例では、ケーブルCはシールドタイプのものを使用したが、本発明はシールド機能のない通常の電線の接続構造に適用してもよい。
(4)上記実施例では、アウタモールド部20がケーシング6の全体を覆うものとしているが、アウタモールド部は必ずしもケーシングの全体を覆わなくてもよく、例えば、ケーシングのうち開口が設けられた部位を部分的に覆うものとしてもよい。
(5)上記実施例では、開口16は、幹線収容部8における分岐線収容部9が分岐する部位に設けられ、開口17は、幹線収容部8の長手方向の両端部と分岐線収容部9の延出端部にそれぞれ設けられているが、これに限らず、開口を設ける位置は条件に合わせて適宜変更してもよい。また、開口の大きさおよび形状も任意に設定することができる。
(6)上記実施例では、開口16,17は、いずれもアッパシェル6Aに貫通形成されているが、これに限らず、開口は、ロアシェル側に形成してもよく、また、アッパシェルおよびロアシェルの両方に形成してもよい。