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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-177281(P2015-177281A)
(43)【公開日】2015年10月5日
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/08 20060101AFI20150908BHJP
   G06K 17/00 20060101ALI20150908BHJP
【FI】
   H01Q13/08
   G06K17/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-51146(P2014-51146)
(22)【出願日】2014年3月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正則
(74)【代理人】
【識別番号】100165261
【弁理士】
【氏名又は名称】登原 究
(74)【代理人】
【識別番号】100194076
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 篤志
(72)【発明者】
【氏名】大石 禎利
(72)【発明者】
【氏名】松下 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】槌田 直
【テーマコード(参考)】
5B058
5J045
【Fターム(参考)】
5B058CA17
5B058KA24
5J045AA05
5J045AB06
5J045DA10
5J045HA06
5J045LA02
5J045MA07
5J045NA03
(57)【要約】
【課題】
導電体ディスクを平板放射導電体と接地板の間に配置したアンテナ構成では、導電体ディスクを手で回転させながら、調整することは難しい。また、アンテナにカバーを取り付けた状態で調整することができないといった課題がある。
【解決手段】
上記課題を解決するために、実施形態のアンテナ装置は、第1の面と前記第1の面とは異なる第2の面を有する放射素子と、前記放射素子の第1の面に対向する筐体と、前記放射素子の第2の面に対向して配置された第3の面と、前記第3の面と異なる第4の面を有する地板と、前記第2の面と前記第3の面との間に配置された給電素子と、前記地板に電気的に接続され、前記第4の面側から可動に設けられ前記放射素子との距離を可変可能な少なくとも一つの調整素子と、を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と前記第1の面とは異なる第2の面を有する放射素子と、
前記放射素子の第1の面に対向する筐体と、
前記放射素子の第2の面に対向して配置された第3の面と、前記第3の面と異なる第4の面を有する地板と、
前記第2の面と前記第3の面との間に配置された給電素子と、
前記地板に電気的に接続され、前記第4の面側から可動に設けられ前記放射素子との距離を可変可能な少なくとも一つの調整素子と、を備えるアンテナ装置。
【請求項2】
前記放射素子は円形でかつ前記円形の中心部に開口を有し、前記調整素子は前記円形の外周部近傍または前記開口の周囲近傍に配置されている請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記放射素子の外周部に切欠き部を備え、前記調整素子は前記切欠き部の近傍に配置されている請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記調整素子は導電体である請求項1乃至3の1項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
第1の面と前記第1の面とは異なる第2の面を有する放射素子と、
前記放射素子の第1の面に対向する筐体と、
前記放射素子の第2の面に対向して配置された第3の面と、前記第3の面と異なる第4の面を有する地板と、
前記第2の面と前記第3の面との間に配置された給電素子と、
前記第1の面または第2の面に接する誘電体を備え、前記誘電体を前記第4の面側から可動させ、前記第1の面または第2の面と前記誘電体が接する面積を変更可能な可動部を有する調整素子と、を備えるアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、RFIDタグリーダライタに用いられるアンテナ装置に関する。(RFID:Radio Frequency Identification)
【背景技術】
【0002】
RFIDリーダライタはアンテナから無変調波をRFIDタグに向けて送信しながら、同じアンテナでRFIDタグからの微小な返答信号を受信する。送信した無変調波がリーダライタのアンテナで反射されRFIDリーダライタの受信部に回り込むと、その反射した無変調波が妨害波となるためRFIDリーダライタの受信感度が低下する。アンテナの反射特性はリターンロス値で評価されている。通常のアンテナはリターンロス(反射損失)が−10dB程度でも実用範囲内であるが、RFIDリーダライタでは−20dB以下のリターンロスが望ましい。所望のリターンロス値を有するアンテナを製造するために、アンテナのインピーダンス調整を行う技術が知られている。
【0003】
インピーダンス調整可能なアンテナが知られている。アンテナは、接地板と,接地板に並行して配置される平板放射導体と、平板放射導体の給電点に一端が接続され、他端がアンテナ端子として同軸ケーブルの内導体に接続され、平板放射導体に垂直である給電線導体と、給電線導体と電気的に接続され、接地板に平行に対向して配置される導電体ディスクを有している。導電体ディスク又は導電体ネジの回転により、同軸ケーブルと接続されるアンテナの接続部のインピーダンスを調整することが可能である。しかし、導電体ディスクは平板放射導電体と接地板の間に配置され、かつ平板放射導電体と接地板より小さいため、導電体ディスクを手で回転させながら、調整することは難しい構成になっている。
【0004】
また、円偏波アンテナの特性を調整する方法が知られている。円偏波アンテナは誘電体基板表面に設けた放射素子と誘電体基板の他の表面に設けたグランドパターンを備えている。誘電体基板表面に設けた放射素子の横辺又は縦辺、又は誘電体基板の他の表面に設けたグランドパターンの辺又は角を削ってトリミングすることによって、円偏波アンテナの特性を調整する。しかし、円偏波アンテナのパターンを高精度で切削する装置が必要になるため、少量生産のアンテナに適用することは困難である。また、アンテナにカバーを取り付けた状態で調整することができないといった問題がある。
【0005】
更に、共振周波数の微調整が可能な携帯通信端末が知られている。携帯通信端末のアンテナは、給電点を介して電力供給を受ける給電層と、給電層から所定距離隔てて配置されたグランド層と、給電層とグランド層に挟まれた誘電体層と、導電性の1つの調整部材を備えている。導電性の調整部材がグランド層の外側に向けて延出して接続され、調整部材のグランド層からのはみ出し量の変化により、アンテナの共振周波数を調整する。しかし、グランド層の形状により共振周波数が変化するため、アンテナ周辺の基板や金属などの影響を受けやすい問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2006/064547公報
【特許文献2】特開2001−339233公報
【特許文献3】特開2011−77834公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来のアンテナでは、導電体ディスクは平板放射導電体と接地板の間に配置され、かつ平板放射導電体と接地板より小さいため、導電体ディスクを手で回転させながら、調整することは難しい。
【0008】
また、上述した従来の円偏波アンテナの調整方法では、円偏波アンテナのパターンを高精度で切削する装置が必要になるため、少量生産のアンテナに適用することは困難である。また、アンテナにカバーを取り付けた状態で調整することができないといった問題がある。
【0009】
更に、上述した従来の携帯通信端末では、グランド層の形状により共振周波数が変化するため、アンテナ周辺の基板や金属などの影響を受けやすいという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、実施形態のアンテナ装置は、第1の面と前記第1の面とは異なる第2の面を有する放射素子と、前記放射素子の第1の面に対向する筐体と、前記放射素子の第2の面に対向して配置された第3の面と、前記第3の面と異なる第4の面を有する地板と、前記第2の面と前記第3の面との間に配置された給電素子と、前記地板に電気的に接続され、前記第4の面側から可動に設けられ前記放射素子との距離を可変可能な少なくとも一つの調整素子と、を有している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施の形態によるアンテナの斜視図である。
図2】本発明の第1の実施の形態によるアンテナの搭載例を示した斜視図である。
図3】本発明の第1の実施の形態によるアンテナの平面図と側面図である。
図4】本発明の第1の実施の形態による(a)アンテナの周波数特性を示す図、(b)アンテナのインピーダンスを示す図である。
図5】本発明の第2の実施の形態によるアンテナの平面図と側面図である。
図6】本発明の第2の実施の形態による(a)アンテナの周波数特性を示す図、(b)アンテナのインピーダンスを示す図である。
図7】本発明の第3の実施の形態によるアンテナの平面図と側面図である。
図8】本発明の第3の実施の形態による(a)アンテナの周波数特性を示す図、(b)アンテナのインピーダンスを示す図である。
図9】本発明の第4の実施の形態によるアンテナの平面図と側面図である。
図10】本発明の第4の実施の形態による(a)アンテナの周波数特性を示す図、(b)アンテナのインピーダンスを示す図である。
図11】本発明の第5の実施の形態によるアンテナの平面図と側面図である。
図12】本発明の第5の実施の形態による(a)アンテナの周波数特性を示す図、(b)アンテナのインピーダンスを示す図である。
図13】本発明の第6の実施の形態によるアンテナの平面図と側面図である。
図14】本発明の第6の実施の形態による(a)アンテナの周波数特性を示す図、(b)アンテナのインピーダンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。図面で同じ番号は同じ構成または類似した構成を示し、同じ説明は省いている。
【0013】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施形態によるアンテナ1の斜視図である。放射器2(放射素子)はグランド板3(地板)と平行に配置され、樹脂製のスペーサ6でグランド板3に固定されている。円形の放射器2は、外周上に2か所の切欠きを有し、切欠き部は摂動素子7として機能する。円形の放射器2は、放射器中心部に同心円の開口を有している。摂動素子7を有するアンテナ1は円偏波アンテナとして機能する。一方の切り欠き部内にアンテナ1のインピーダンスおよび周波数特性を調整する調整素子8が設けられている。放射器2は金属板であり、表面(第1面)と裏面(第2面)を有し、グランド板3も金属板で構成され表面(第3面)と裏面(第4面)を有し、電気的に接地されている。放射器2の第2面とグランド板3の第3面間に給電線4(給電素子)が配置されている。給電線4の端部に配置される給電点5は同軸コネクタ10を用いている。
【0014】
図2は、第1の実施形態のアンテナ1を搭載したRFIDリーダライタのアンテナ部100を分解した斜視図である。アンテナ部100は、樹脂製のトップカバー22と樹脂製のボトムカバー23でアンテナ1を覆う構成になっている。トップカバー22はアンテナ1の放射器2に面する側に設けられ、放射器2から放射された電波はトップカバー22を通してRFIDタグに向けられる。RFIDタグからの受信波もトップカバー22を通して放射器2で受信する。ボトムカバー23はアンテナ1のグランド板3側を覆うように設けられている。ボトムカバー23は把持部21を有し、操作者は把持部21を握り、放射器2をRFIDタグ方向に向けるようにRFIDリーダライタを利用する。
【0015】
ボトムカバー23とグランド板3との間に、RFIDモジュール24と制御基板25と調整素子8が設けられている。RFIDモジュール24はRFIDを読み書きするUHF帯の高周波信号を発生または受信する回路であり、同軸ケーブル26、同軸コネクタ10を通してアンテナ1へ接続されている。制御基板25はRFIDモジュール24の読み書き信号をデジタル信号として処理し、コネクタ28を通してRFIDリーダライタの外部回路へデジタル信号を送受信する。
【0016】
調整素子8はアンテナ1のグランド板3に設けられ、調整素子8と放射器2との距離を可変することによって、アンテナ1の周波数特性およびインピーダンスを調整する。調整素子8は、一部グランド板3から放射器2へ向かって延出した構成を備え、また他の部分でグランド板3からボトムカバー側(放射器2とは反対側)へ吐出するように構成されている。グランド板3外部へ吐出した部分を回転させて、調整素子8の先端部と放射器2との距離を可変できるようになっている。調整素子8の詳細な構成は後述する。トップカバー22(筐体)に、アンテナ1、RFIDモジュール、制御基板25を組込んだ後、アンテナ部100の周波数特性およびインピーダンスを測定しながら、調整素子8を操作して、アンテナ部100の周波数特性およびインピーダンスを所望な値に調整する。周波数特性およびインピーダンスの調整と検査が完了後、ボトムカバー23を取り付けてアンテナ部100を構成する。
【0017】
トップカバー22およびボトムカバー23はポリカーボネートとABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)のポリマーアロイを用いている。トップカバー22、ボトムカバー23の樹脂として、他にポリスチレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ABS樹脂、または、これらの複合樹脂を用いることも可能である。
【0018】
図3は、第1の実施形態によるアンテナ1の(a)平面図(b)側面図である。図3(c)はアンテナ1にトップカバー22を組み付けた状態を示す側面図である。
【0019】
アンテナ1は、箱状に形成されたグランド板3内に、ドーナツ型の放射器2と高周波を伝送する給電線4、給電線4に高周波を送る同軸コネクタ10、周波数特性とインピーダンスを調整する調整素子8で構成されている。グランド板3は厚さ0.5mmのアルミニウム板を、外形140mm×140mm、壁部(深さ)10mm(H2)に成形された、箱型になっている。壁部の1つの隅は45度に形成され、給電点5として機能する同軸コネクタ10が設けられている。グランド板3上にスペーサ6が3か所配置されている。各スペーサ6はABS製で直径10mm高さ9.5mmに成形され、接着剤でグランド板3に固定されている。スペーサ6上に放射器2が接着剤で固定されている。アンテナ1は920MHz帯で共振するように設計され、放射器2は厚さ0.5mmアルミニウム板で、外形130mm内側φ90mmのドーナツ型に形成されている。言い換えれば、放射器2は外形φ130mmの円盤に、同心円でφ90mmの開口が形成された形になっている。円形の放射器2の中心はグランド板3の中心に位置するように配置されている。さらに、放射器2に2個の7mm×7mmの切欠き部が線対称な位置に形成され、切欠き部は摂動素子7として機能する。給電線4は厚さ0.5mmのアルミニウム板で幅8mm長さ70mmに形成され、放射器2の直径方向で放射器2を横切るように配置されている。給電線4の一端はグランド板3と絶縁を保ってグランド板3に固定され、同軸コネクタ10へ接続されている。さらに、給電線4はグランド板3から5mm(H1)の高さで放射器2とグランド板3間に配置されている。放射器2の第2面とグランド板3の第3面間は空気の誘電体層になっている。なお、放射器2の円形の開口に変えて、必要な周波数を考慮して、四角、多角形などにすることも可能である。
【0020】
グランド板3は小型化のために140mm×140mmの大きさなっている。グランド板3が大きいほど、アンテナ1の利得は高くなる。言い換えれば、小型化よりもアンテナの高利得を求める場合には、グランド板3をより大きくすることは可能である。
【0021】
調整素子8はステンレス製M3ネジでグランド板3に設けた雌ネジと係合し、グランド板3に直交するように設けられている。さらに、調整素子8は摂動素子7の切欠き部に位置し、グランド板3の外部で調整素子8を回転させ、グランド板3から調整素子8の先端までの距離Lを調整することができる。グランド板3と電気的に繋がる調整素子8の先端部と、放射器2との距離が変化すると、アンテナ1の周波数特性及びインピーダンスが変化する。
【0022】
調整素子8としてM3ネジを基に説明したが、ネジの直径を大きくすれば、周波数特性およびインピーダンス特性の変化量が大きくなり、粗調整に利用することができる。他に、調整素子8のステンレスネジ先端に円形のステンレス板を溶接して、調整素子8を作成することもできる。ネジ先端の面積が大きくなることで、周波数特性やインピーダンスの変化量を変えることができる。また、周波数特性やインピーダンスの変化量を変えるために、調整素子8のステンレスネジを複数個所に設けることも、可能である。
【0023】
調整素子8のネジ材料はステンレスに変えて、鉄鋼材、真鍮、銅、燐青銅、アルミニウム、チタンなども利用できる。グランド板3に雌ネジを形成できない場合には、グランド板3に金属製ナットを固定しネジ(調整素子8)を係合させて、距離Lを調整することも可能である。
【0024】
ネジ(調整素子8)はグランド板3に直交するように設けられている。言い換えれば、グランド板3の法線方向にネジは配置されている。ネジを配置し易い構成とするために、グランド板3の法線方向にネジを配置している。ネジと放射器2との距離を変化させれば、アンテナ1の周波数特性及びインピーダンスを変化させることができるので、ネジを法線方向から多少傾斜して配置することも可能である。
【0025】
アルミニウム製の放射器2、グランド板3、給電線4に変えて、銅、鉄、ステンレス、マグネシウム、銀、金などの材料を利用することもできる。
【0026】
図3(c)に示すように、アンテナ部100を小型、軽量にするため放射器2とトップカバー22の間隙は2mm(H3)程度になっている。またはトップカバー22に設けられたリブ29が放射器2に接する程度に間隙は形成されている。放射器2とトップカバー22の間隙が狭いので、樹脂製のトップカバー22は放射器2近傍の誘電体として働き、アンテナ部100を組み立てるためにトップカバー22をアンテナ1に組み付けただけで周波数特性およびインピーダンスが変化する。したがって、トップカバー22とアンテナ1を組み立てた後、アンテナ1のグランド板3の外側から調整素子8を使って周波数特性およびインピーダンスを調整するようになっている。調整後、調整素子8を接着剤でグランド板3に固定している。逆に、ボトムカバー23を組み付けても、放射器2はグランド板3に囲まれているので、ボトムカバー23による周波数特性やインピーダンスへの影響は殆ど無視できる。
【0027】
図4(a)は第1の実施形態によるアンテナの周波数特性を示す図である。図4(b)は第1の実施形態によるアンテナのインピーダンスを示す図(スミスチャート)である。図4(a)(b)においてLは調整素子8の先端部とグランド板3との距離を表し、L=2mmからL=9mmまで変化させた例を示している。図4(a)では、横軸が周波数(MHz)、縦軸が反射損失(dB)、Lが調整素子8の先端部とグランド板3との距離を表している。L=8では917MHzと932MHzで反射損失(リターンロス)が極小値を示し、2つの共振点を示している。L=9では916MHzと929MHzで反射損失が極小値を示し、2つの共振点を示している。距離Lを変化させることで、2つの共振周波数の差が小さくなっている。図4(b)のスミスチャート上では、L=8とL=9のインピーダンス曲線を比べると、L=8のインピーダンス曲線がL=9のインピーダンス曲線へ移動している。すなわち、調整素子8とグランド板3との距離L(2mmから9mmまで)を変化させると、周波数特性およびインピーダンスを可変することができ、アンテナ1の円偏波特性を調整可能であることを示している。この調整により、アンテナのリターンロス値を所望な値に可変することができる。
【0028】
(第2の実施の形態)
図5は、第2の実施形態によるアンテナの(a)平面図と(b)側面図である。図5(c)はアンテナ1にトップカバー22を組み付けた状態を示す側面図である。第2の実施形態のアンテナ1の構成は、調整素子8の位置が異なる点を除き、第1の実施形態で示したアンテナ1と同じになっている。ステンレス製ネジ(調整素子8)は、線対称に配置された2つの摂動素子7の線対称軸上で、放射器2のφ90mmの内周付近に、グランド板3と直交するように配置されている。グランド板3に係合するネジの先端部を放射器2の方向へ移動させると、アンテナ1の周波数特性およびインピーダンスが変化する。言い換えれば、グランド板3から調整素子8の先端までの距離Lを可変して、アンテナ1の特性を調整する。
【0029】
図6(a)は第2の実施形態によるアンテナの周波数特性を示す図である。図6(b)は第2の実施の形態によるアンテナのインピーダンスを示す図(スミスチャート)である。図6(a)において、L=6mmの場合、反射損失の極小値が922MHzと927MHzに発生し、L=8mmの場合、反射損失の極小値が916MHzと932MHzに発生している。言い換えれば、2つの共振周波数の差が大きくなっている。図6(b)のスミスチャートでもL=6mmのインピーダンス曲線がL=9mmのインピーダンス曲線へ移動している。このことは、距離Lを変化させることでアンテナ1の円偏波特性を調整可能であることを示している。
【0030】
(第3の実施の形態)
図7は、第3の実施形態によるアンテナの(a)平面図(b)側面図である。図7(c)はアンテナ1にトップカバー22を組み付けた状態を示す側面図である。第3の実施形態のアンテナ1の構成は、調整素子8の位置が異なる点を除き、第1の実施形態で示したアンテナ1と同じになっている。ステンレス製ネジ(調整素子8)は、線対称に配置された2つの摂動素子7の線対称軸上で、放射器2のφ130mmの外周付近に、グランド板3と直交するように配置されている。グランド板3に係合するネジの先端部を放射器2の方向へ移動させると、アンテナ1の周波数特性およびインピーダンスが変化する。言い換えれば、グランド板3から調整素子8の先端までの距離Lを可変して、アンテナ1の特性を調整する。
【0031】
図8(a)は第3の実施形態によるアンテナの周波数特性を示す図である。図8(b)は第3の実施形態によるアンテナのインピーダンスを示す図(スミスチャート)である。図8(a)において、L=4mmの場合、反射損失の極小値が926MHzに発生し、L=8mmの場合、反射損失の極小値が917MHzと932MHzに発生している。言い換えれば、1つの共振周波数がLの変化に従い、2つの共振周波数を持つように変化している。図8(b)のスミスチャートでもL=4mmのインピーダンス曲線がL=8mmのインピーダンス曲線へ移動している。このことは、距離Lを変化させることでアンテナ1の円偏波特性を調整可能であることを示している。
【0032】
(第4の実施の形態)
図9は、第4の実施形態によるアンテナの(a)平面図(b)側面図である。図9(c)はアンテナ1にトップカバー22を組み付けた状態を示す側面図である。第4の実施形態のアンテナ1の構成は、調整素子8の位置が異なる点を除き、第1の実施形態で示したアンテナ1と同じになっている。ステンレス製ネジ(調整素子8)は、給電線4の延長線上で、放射器2のφ130mmの外周付近に、グランド板3と直交するように配置されている。グランド板3に係合するネジの先端部を放射器2の方向へ移動させると、アンテナ1の周波数特性およびインピーダンスが変化する。言い換えれば、グランド板3から調整素子8の先端までの距離Lを可変して、アンテナ1の特性を調整する。
【0033】
図10(a)は第4の実施形態によるアンテナの周波数特性を示す図である。図10(b)は第4の実施形態によるアンテナのインピーダンスを示す図(スミスチャート)である。図10(a)において、L=3mmの場合、反射損失の極小値が925MHzに発生し、L=7mmの場合、反射損失の極小値が922MHzに発生している。言い換えれば、共振周波数がLの変化に従い、共振周波数が少し変化している。図10(b)のスミスチャートでもL=3mmのインピーダンス曲線がL=7mmのインピーダンス曲線へわずかに移動している。このことは、距離Lを変化させることで微調整できることを示している。
【0034】
第4の実施形態の調整素子8は、第1から第3の実施形態の調整素子8に比べ、アンテナ1の円偏波特性を微調整できる。微調整と疎調整を組合せれば、より精密にアンテナ1の円偏波特性を調整できる。例えば、第1の調整素子8を第1の実施形態で説明した摂動素子7近傍に配置し、第2の調整素子8を第4の実施形態で説明した給電線4の延長線上で、放射器2の外周付近に配置する。調整範囲の異なる第1、第2の調整素子8を組合せることで、より精密にアンテナ1の円偏波特性を調整できる。
【0035】
(第5の実施の形態)
図11は、第5の実施形態によるアンテナの(a)平面図(b)側面図である。図11(c)はアンテナ1にトップカバー22を組み付けた状態を示す側面図である。第5の実施形態のアンテナ1の構成は、調整素子8の位置が異なる点を除き、第1の実施形態で示したアンテナ1と同じになっている。ステンレス製ネジ(調整素子8)は、円形の放射器2の中心を通る線上で、給電線4に直交する方向で、かつ、放射器2の外周付近に、グランド板3と直交するように配置されている。グランド板3に係合するネジの先端部を放射器2の方向へ移動させると、アンテナ1の周波数特性およびインピーダンスが変化する。言い換えれば、グランド板3から調整素子8の先端までの距離Lを可変して、アンテナ1の特性を調整する。
【0036】
図12(a)は第5の実施形態によるアンテナの周波数特性を示す図である。図12(b)は第5の実施の形態によるアンテナのインピーダンスを示す図(スミスチャート)である。図12(a)において、L=5mmの場合、反射損失の極小値が923.4MHzに発生し、L=7mmの場合、反射損失の極小値が923.6MHzに発生している。距離Lの変化に対して共振周波数はわずかに変化している。図6(b)のスミスチャートでもL=5mmのインピーダンス曲線とL=7mmのインピーダンス曲線とはわずかに変化している。このことは、距離Lを変化させることで微調整できることを示している。
【0037】
(第6の実施の形態)
図13は、第6の実施形態によるアンテナの(a)平面図と(b)側面図である。図13(c)はアンテナ1にトップカバー22を組み付けた状態を示す側面図である。第6の実施形態のアンテナ1の構成は、調整素子9の形状と位置が異なる点を除き、第1の実施形態で示したアンテナ1と同じになっている。
【0038】
調整素子9は、φ20mmの略円形、厚さ1.5mm、ABS樹脂製の誘電体板12を有し、誘電体板12の一部が放射器2の上面または下面に接しながら回転軸11を中心として回転自在に保持された、構成になっている。誘電体板12の回転中心はφ20の円盤の外周部に設けられている。回転軸11は2つの摂動素子7の線対称軸上で、放射器2の中心から23mmの位置に配置されている。調整素子9は放射器2と誘電体板12が接する範囲に限定して回転するように、構成されている。調整素子9を回転し、誘電体板12が放射器2に接する面積が変化すると、アンテナ1の周波数特性およびインピーダンスが変化する。回転軸11はグランド板3の裏面側(放射器2と反対側の面)で回転できるようになっている。そのため、アンテナ1をトップカバー22に組み込んだ状態で、アンテナ1の特性を調整することができる。
【0039】
誘電体板12の材料は、ABS以外に、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、なども利用可能である。誘電体板12が放射器2へ接するとは、誘電体板12が放射器2の周波数特性およびインピーダンス変化を起こさせるために十分近接している範囲も含まれる。
【0040】
図14(a)は第6の実施形態によるアンテナの周波数特性を示す図である。図14(b)は第6の実施形態によるアンテナのインピーダンスを示す図である。誘電体板12が放射器2と広い面積で接している位置31に配置された場合、アンテナ1は912MHzと921MHzの二つの周波数において極小値を示している。誘電体板12が約45度回転し位置32に配置された場合、アンテナ1は917MHzと927MHzの二つの周波数において極小値を示している。誘電体板12が、さらに回転し接触面積が非常に小さくなる位置33に配置された場合、アンテナ1は921MHzと931MHzの二つの周波数において極小値を示している。言い換えれば、誘電体板12と放射器2が重なる面積が増加すると、アンテナ1の共振周波数は低い方に移動し、誘電体板12と放射器2が重なる面積が減少すると、アンテナ1の共振周波数は高い方に移動する。従って、調整素子9を回転させることでアンテナ1の共振周波数を調整することができる。図14(b)のスミスチャートでも位置31、32、33でインピーダンス曲線はわずかに変化している。
【0041】
第6の実施形態では、誘電体板12を回転させて、誘電体板12と放射器2の接触面積を変更している。回転させる方法に変えて、誘電体板12を支える軸を直線状に移動させて、接触面積を変更することも可能である。例えば、誘電体板12を位置31に配置するように軸を設け、その軸を二つの摂動素子7の線対称軸上を移動させ、接触面積を変更することも可能である。
【0042】
RFIDリーダライタの操作者が、アンテナ部100の把持部21を握り、RFIDタグを読取るために放射器2をRFIDタグに向けて持ち運ぶ。持ち運びによる操作者の疲労を考慮すると、アンテナ部100は小型、軽量であることが望まれる。小型化を図るため、電波を放射または受信する放射器2と誘電体で構成されたトップカバー22は近接した構成となる。特にRFIDのように超高周波帯の電波を扱う場合、アンテナ部100を組み立てるために放射器2とトップカバー22を近接させるだけでアンテナ1の周波数特性やインピーダンスは変化してしまう。これに対し、本願各実施形態で説明した構成のアンテナ部100は筐体となるトップカバー22をアンテナ1に組み付けた状態でアンテナ1の周波数特性およびインピーダンス特性を調整することができる。結果、RFIDタグに読み書きする最適な周波数およびインピーダンスに調整することができるようになる。
【0043】
また、本願各実施形態で示す構成は、放射器2とグランド板3はそれぞれ薄い金属板であり、放射器2とグランド板3間は空気による誘電体層になっている。放射器とグランド板間に誘電物質を挟む他の構成に比べ、外形は大きくなるが誘電物質を用いないため、軽量でありながら誘電体損失の低いアンテナを実現できる。
【0044】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1…アンテナ
2…放射器(放射素子)
3…グランド板(地板)
4…給電線(給電素子)
5…給電点
6…スペーサ
7…摂動素子
8.9…調整素子
11…回転軸(可動部)
12…誘電体板
22…トップカバー(筐体)
23…ボトムカバー
100…アンテナ部
図1
図2
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