【実施例】
【0147】
(実施例1)
様々なコラーゲンマトリックスの構造上の特徴づけ
4つのコラーゲンマトリックスを試験して、微細構造および多孔度の差を求めた。コラーゲンマトリックスは、Kensey Nash Coporationから得た。マトリックスは、主にI型コラーゲンの源であるウシ真皮からの精製コラーゲン抽出物から作製した。マトリックスは、4.5%、5%、6%、および7%(w/v)の様々な濃度のコラーゲンを含むコラーゲンスラリーから作製する。乾燥コラーゲンマトリックス(4.5%、5%、6%、および7%)に液体窒素を流した後、打ち抜いて5mmのディスクにした。ディスクを、3つの異なる配向(頂部が上、底部が上、側部が上)でスタブ上に取り付け、金−パラジウムでコーティングし、走査電子顕微鏡法(SEM)によって調べた。
【0148】
SEM画像により、コラーゲンマトリックス(4.5%)およびコラーゲンマトリックス(5%)の表面上に開放孔が存在することが明らかになった。SEM画像により、コラーゲンマトリックス(6%)およびコラーゲンマトリックス(7%)の表面上の、より小さい孔を有する高密度薄層が明らかになった。コラーゲンマトリックスのそれぞれは、断面の長手方向スライスのSEM画像に基づくと、多孔質であるように思われたが、コラーゲンマトリックス(5%)は、SEMによって評価した場合、最大の全体的多孔度を有するように思われた。コラーゲンマトリックス中の孔は、均一に分布していないように思われ、一部の範囲では孔はまったく存在しない。
【0149】
ImageJソフトウェアを使用してSEM画像を分析して、孔面積サイズおよび周囲長サイズの両方を求めた。ImageJは、国立衛生研究所(rsb.info.nih.gov/ijのワールドワイドウェブ)のWayne Rasbandによって創作された画像解析プログラムである。画像解析のためのプログラムを使用するために、適切なパラメータを選択および設定する必要がある。「分析」メニューから、各SEM画像からのスケールをプログラムに入力することによって、「スケール」パラメータを設定した。次に、測定パラメータについて「面積」および「周囲長」を選択した。各画像から10個の孔をランダムに選択し、測定を行い、面積サイズおよび周囲長サイズについて平均した。各画像についての結果を記録した。表1は、1つの分析からの結果を示す。
【0150】
【表1】
コラーゲンマトリックス(5%)は、最も多孔質な構造を有すると思われ、ImageJソフトウェアによって分析した場合、側部Aおよび側部B両方の画像から、孔面積サイズは最大であった。
【0151】
(実施例2)
様々なコラーゲンマトリックスの累積PDGF放出分析
様々なコラーゲンマトリックスからの累積PDGF放出を分析した。コラーゲンマトリックスは、Kensey Nash Corporationから得た。これは、実施例1で上述したものと同じである。各タイプ、すなわち、5%、6%、および7%のコラーゲンマトリックス(8mmのディスク)を27 1/2Gの針で留め、0.3mg/mlのrhPDGF−BB 80μlで水和し、試料を室温で10分間インキュベートした。コラーゲンディスクを2mlのマイクロチューブ内に入れ、溶出バッファー(2%のウシ胎児血清を含有するMEM)2mlを添加してrhPDGF−BBを放出させた。各測定に三つ組の試料を使用した。対照試料は、rhPDGF−BB 80μlを溶出バッファー2mlに添加して構成した。マイクロチューブを37℃のインキュベーター内の軌道振盪機上で振盪した。10分、1時間、8時間、および24時間で、溶離液を各チューブから取り出し、2〜8℃で貯蔵した。等体積の新鮮な溶出バッファーを各チューブに添加した。各コラーゲンマトリックスの貯蔵した溶離液を、製造者の指示書に従って、DuoSet ELISA(R & D System)キットを使用してrhPDGF−BBについてアッセイした。
【0152】
コラーゲンマトリックス(5%)は、コラーゲンマトリックス(6%)およびコラーゲンマトリックス(7%)と比較して、同様の動態でrhPDGF−BBを放出した(
図1)。放出動態は、最初の10分間の初期の急速なrhPDGF−BBのボーラス放出、その後の残りの23時間の試験期間にわたるより遅い定常放出を特徴とした。放出動態は同様であったが、コラーゲンマトリックス(5%)から放出されたPDGFの初期ボーラス量および総量は、コラーゲンマトリックス(6%)またはコラーゲンマトリックス(7%)のいずれよりも大きかった。
【0153】
コラーゲンマトリックスからのrhPDGF−BBの放出率を対照(溶出バッファー単独中のrhPDGF−BB)と比較した。結果は、上述したように、コラーゲンマトリックス(5%)は、コラーゲンマトリックス(6%)またはコラーゲンマトリックス(7%)より速く、大きいPDGFの放出を有することを示した(
図2)。この試験結果を表2にも示す。
【0154】
【表2】
(実施例3)
様々なコラーゲンマトリックスからのPDGF放出の生物学的力価試験
様々なコラーゲンマトリックスから放出されるPDGFの生物学的力価を、細胞増殖アッセイで評価した。試料は、実施例2で上述したプロトコールの変法に従って調製した。溶出バッファーを、2%仔ウシ血清含有D−MEMに変更した。1時間の時点で採取した各物質についての二つ組の試料を使用した。rhPDGF−BBの濃度をDuoSet ELISAアッセイによって求め、その結果を参照として使用して、試料を1μg/mlの濃度に希釈使用した。0.3mg/mlのrhPDGF−BBを参照標準として使用し、すべてのプレートに適用した。1μg/mlの開始濃度を使用して、96ウェルマイクロタイタープレート(ブラックウォールおよびクリアボトム)中に各試料を装填し、次いで同じ横列にわたって1.667倍に連続的に希釈した。ブランク対照として使用した、各プレートの最後の縦列を除いて、約10
4個のNIH 3T3細胞を各ウェルに添加した。48時間培養した後、ブロモデオキシウリジン(BrdU)標識を各プレートに添加した。さらに24時間培養した後、BrdU細胞増殖アッセイを、製造者の指示書に従って行った。
【0155】
NIH 3T3細胞増殖アッセイにおいて測定した各マトリックスから放出されたrhPDGF−BBは、放出されたPDGの生物活性が、分析した3つのマトリックスについて保存されることを実証した(
図3)。
【0156】
(実施例4)
コラーゲンマトリックスから放出されるPDGFの安定性試験
コラーゲンマトリックスから放出されるrhPDGFの安定性を試験した。各タイプ(5%、6%、および7%)のコラーゲンマトリックス(8mmのディスク)を27 1/2Gの針で留め、1.0mg/mlのrhPDGF−BB 50μlで水和した。溶出バッファー(20mMの酢酸ナトリウム+0.25Nの塩化ナトリウム)0.4mlで満たしたマイクロチューブ内で、各試料を1時間インキュベートした。次いで放出されたPDGFをサイズ排除HPLCによって分析した。三つ組で測定を行った。コラーゲンマトリックスから放出されたrhPDGF−BBについて著しい特性シフトはまったく見出されず、コラーゲンマトリックスから放出されるPDGFの安定性を実証した。
【0157】
(実施例5)
様々なコラーゲンマトリックスの腱細胞浸潤試験
様々なコラーゲンマトリックス中に浸潤する腱細胞の能力を評価した。コラーゲンマトリックスは、Kensey Nash Corporationから得、本明細書に記載したように、5%、6%、および7%(w/v)のコラーゲン濃度を有するコラーゲンスラリーから作製した。コラーゲンシート(1.5〜2.0mmの厚さ)を打ち抜いて直径8mmのディスクにし、インビトロ細胞遊走試験を行った。
【0158】
一次ヒツジ腱細胞(4細胞継代未満)をヒツジ屈筋腱から単離した。成長培地(10%のウシ胎児血清(FBS)を含有するD−MEM/F−12)中で細胞を培養し、試験を開始する12時間前に、基本培地(2%のFBSを含有するD−MEM/F−12)に切り替えた。
【0159】
基本培地中の腱細胞懸濁液50μl(50,000細胞)を各コラーゲンディスク試料に添加した。培地出現(emersion)を伴うことなく、37℃および5%のCO
2雰囲気下で1時間インキュベートした後、細胞を播種したディスクを、単独の、またはrhPDGF−BB(30ng/ml)を組み合わせた基本培地2mlで予め満たした24ウェルプレートに移した。12時間静置培養した後、細胞を播種したディスクを含むプレートを、インキュベーター内の軌道振盪機(60rpm)上に配置した。培地交換は、48時間毎に行った。6日目に、各コラーゲンマトリックスおよび処置からの四つ組の試料を採取して組織評価した。
【0160】
一般に、組織評価は、以下の説明と同様であった。6日間培養した後、細胞培地を各ウェルから取り出し、4%のリン酸緩衝ホルマリン(PBF)と置換した。室温(RT)で約30分間、PBF中で試料を固定した。RTで1時間以上の期間真空下に試料を置くことによって、細胞固定を完了した。振盪機プラットフォームおよび真空チャンバーを使用して、次いで試料を、RTで、漸増する一連のエタノール濃度(70%−80%−95%−100%)を通して、約5.5時間の期間にわたって脱水し、RTで2時間の期間にわたって100%のキシレン中で浄化し、2時間以上の期間にわたってパラフィンワックス中で浸潤させた。次いで、各処置群およびマトリックスからの試料を埋め込んだ。埋め込んだ試料を埋め込み鋳型から取り出し、ロータリーミクロトームを用いて「トリム」し、「フェイシングする(face)」ことによって、すべての試料の最外側表面を露出し、次いでフリーザー内に一晩置いた。ロータリーミクロトーム、加温水浴、および予めラベルを付けたガラス顕微鏡スライドを使用して、約100〜150ミクロン離して、3〜4のレベルで、4〜6ミクロンで切片(スライド1枚当たり2切片)を採取した。スライドを乾燥器内で、60℃で一晩乾燥した。最後にスライドを、Hoescht蛍光染色剤を用いて染色し、観察した。
【0161】
結果は、腱細胞は、PDGFを含むコラーゲンマトリックス(5%)中に浸潤した一方で、腱細胞は、コラーゲンマトリックス(6%)およびコラーゲンマトリックス(7%)中に浸潤するように思われなかったことを示した。コラーゲンマトリックス(6%)およびコラーゲンマトリックス(7%)試料については、腱細胞のほとんどが、ディスクの縁部に蓄積した。したがって、コラーゲンマトリックス(5%)のより大きな多孔度により、より多数の細胞がコラーゲンマトリックス中に浸潤することが可能になったと思われた。
【0162】
(実施例6)
コラーゲン/PDGF組成物を用いたアキレス腱傷害の治療
本発明による組成物および方法の効力を評価するために、以下に説明するような例示的試験を使用した。本発明は、コラーゲンマトリックスと混合したrhPDGF−BB溶液を含む組成物およびその使用方法を含む。例えば、コラーゲンマトリックスは、流動性コラーゲンマトリックスであり、架橋ウシ腱コラーゲンおよびグリコサミノグリカン(GAG)マトリックスを含む。流動性組成物は、シリンジまたは適当な手段によって傷害部位に容易に供給される。
【0163】
この例示的な試験において、ヒツジまたは他の適当な試験対象をヒトアキレス腱修復のモデルとして使用した。ヒツジのアキレス腱のサイズはヒトアキレス腱と類似しているために、ヒツジが特に適当である。さらに、ヒツジは、標準的な整形技法および組成物の配置を可能にするのに十分なサイズのものである。この試験で使用したヒツジは、骨格的に成熟しており(年齢[3.5歳以上]および歯の摩耗によって判断した場合)、正常な歩行運動を伴い、少なくとも120ポンドの体重であり、手術時点で順応していた。ヒツジに、標準的な小反芻動物飼料によって給餌し、水を補給した。食物および水は、麻酔などの適切な試験関連のために控えた。
【0164】
この試験は、3つの処置群(n=8/群)を使用し、以下の試験組成物を、急性アキレス腱横切の傷害部位に供給および適用した:(1)バッファー中の流動性コラーゲンマトリックス(2)0.3mg/mL(150μg)のrhPDGF−BBを含むバッファー中の流動性コラーゲンマトリックス、および(3)1.0mg/mL(500μg)のrhPDGF−BBを含むバッファー中の流動性コラーゲンマトリックス。他の適当な処置群、例えば、他の適当な濃度のrhPDGF−BBを含む組成物を使用する処置群なども使用する。
【0165】
例示的な流動性コラーゲンマトリックスは、Integra LifeSciences Corporation、Plainsboro、NJのIntegra(商標)流動性創傷マトリックス(IFWM)である。当技術分野で公知の他の適当なマトリックスも使用することができる。
【0166】
実験の概要
この試験に登録されたヒツジのアキレス腱を横切し、その後即時に修復を行った。ヒツジを3つの例示的な試験群(n=8/群)に分け、以下の組成物を使用した:1)再接近させた腱端部(改良Mason Allen縫合デザインで安定化)に配置した、20mMの酢酸ナトリウムバッファー(pH6.0+/−0.5)中の流動性コラーゲンマトリックス(対照)、2)再接近させた腱端部(改良Mason Allen縫合で安定化)に配置した、0.3mg/mlのrhPDGF−BBを含有する20mMの酢酸ナトリウムバッファー中の流動性コラーゲンマトリックス、および3)再接近させた腱端部(改良Mason Allen縫合で安定化)に配置した、1.0mg/mlのrhPDGF−BBを含有する20mMの酢酸ナトリウムバッファー中の流動性コラーゲンマトリックス。#1 Ethilonナイロン縫合糸(Ethicon Endo−Surgery,
Inc、Cincinnati、OH)などの縫合材料を使用した。模擬アキレス断裂および再結合の生体力学的性能および組織応答を求めた。生体力学的性能および組織応答試験の両方についての動物の処置の割当および数を、表3に略述する。
【0167】
【表3】
試験物質を配置した後、標準的な外科的技法を使用して切開部を閉じ、添え木を脚下部に配置することによって、歩行運動の間のナックリングを防止した。手術後の週の間、異常治癒または創傷裂開について手術部位をモニターした。動物を8週間普通に歩行させ、術後2、4、および8週間に超音波評価を実施した。手術して8週間後に、すべての動物を安楽死させ、近位および遠位の筋腱接合部を含めたアキレス腱を収集し、組織学的および生体力学的評価を行った。正常な未処置の腱について組織学的および生体力学的試験を実施することができるように、対照動物(すなわち、流動性コラーゲン創傷マトリックス単独)の対側後肢から正常な未手術の腱およびその筋腱接合部を収集した。最初の手術部位および対側対照からの皮膚も、組織学的評価のために採取する。
【0168】
外科的プロトコール
手術日に、全身麻酔を誘導するためにジアゼパム(0.22mg/kg)およびケタミン(10mg/kg)からなるIV注射を投与した。カフ付き気管内チューブを配置し、再呼吸系を通じて、100%の酸素(2L/分)中のイソフルオラン(1.5%〜3.0%)を用いて全身麻酔を維持した。呼吸を補助するために動物を人工呼吸器上に配置した。胃管を配置することができた。
【0169】
動物を左側横臥位とし、右脚から羊毛を除去することによって、手術部位を準備するための適切なアクセスを提供した。ポビドン−ヨウ素(Betadine)およびアルコールで交互にスクラブして、無菌手術のために、右足首関節上の皮膚を準備した。次いで、無菌手術のために手術部位をドレープした。脚の外側側面にわたって切開を行い、次いで皮下組織まで深めることによって、踵骨上のその挿入部位で腱を露出した。次いで、腓腹筋腱のより大きい分岐を単離した。踵骨へのアキレス腱挿入部を触診し、滅菌マーカーを用いて挿入部位から2cm、4cm、および6cmにマークを付けた。
【0170】
手術前に、マトリックスおよび適切なバッファー溶液(20mMの酢酸ナトリウムバッファー、pH6.0+/−0.5)+/−rhPDGF−BBは、乾燥コラーゲンおよびバッファー+/−rhPDGF−BBを含有する、供給された、ラベルを付けた滅菌シリンジを使用して、流動性コラーゲン物質(IFWM)3.0ccに、バッファー+/−rhPDGF−BB 6.0ccを添加することによって合わせた(2:1 v/v)。物質は、rhPDGF−BBを含有するシリンジから先端キャップを取り除き、これを、供給された、滅菌ルアーロックコネクタと取り替え、次いでこれに乾燥コラーゲンを含有するシリンジを接続することによって合わせた。コラーゲンマトリックスの水和は、コラーゲンシリンジ中にすべてのバッファー+/−rhPDGF−BBを供給し、混合物が均一であると思われ、すべての物質がシリンジ同士間を前後に容易に動くことができるようになるまで、プランジャーを少なくとも15回押し下げて前後させることにより混合することによって実現した。水和した流動性コラーゲンマトリックスをアリコートして滅菌容器内で体積0.5ccにし、使用するまで4℃で貯蔵した。
【0171】
腱を露出した後、安定化縫合糸(#1 Ethilon)を、改良Mason Allenデザインを使用して配置し、一端が2cmのマーク箇所であり、一端が6cmのマーク箇所であった。Mason Allen縫合糸は張り詰めたままにすることによって腱の長さを維持したが、腱端部の操作のために一端は縛らないままにした。次いで4cmまたは約4cmのマーク箇所で腱を横切し、その後、腱端部を再接近させ、Mason Allen縫合糸の自由端を腱の遠位末端で縛った。横切した腱の写真を定規とともに撮り、踵骨挿入部からの距離の記録をとった。例えば、
図4に表した例示的な縫合された、横切した腱を参照。縫合糸の小さい末端を遠位末端に残し、剖検後の同定のために近位端に小さい識別縫合糸(3〜0)を配置した。流動性マトリックスを挿入するために腱横切部周囲に空間を残して、上に被さる軟部組織を閉じた。次いで、水和した流動性コラーゲンマトリックス物質を、以下の様式で腱端部に配置した:斜面側を横切した腱端部に向けて、シリンジから20ゲージの針を通して滅菌アリコート0.5ccを搾り出した。滅菌アリコートの半分(0.25cc)を、横切した腱端部のそれぞれの表面に沿って搾り出した。物質が、ギャップ空間内に均等に分布されることを確実にするように注意を払った。
図5に表したような、送達されている本発明の例示的な流動性組成物、例示的な縫合された、横切した腱を参照。
【0172】
上に被さる皮下組織および皮膚を、標準的な外科手術によって閉じた。OrthoGlass製の添え木を脚下部上に形成することによって、歩行運動の間のナックリングを防止した。手術直後に、ヒツジを手術台から移し、嚥下反射が戻るまで観察し、戻った時点でヒツジから抜管した。手術を完了した後、ヒツジを胸骨横臥位で支え、次いで試験の継続時間収容した。ヒツジの添え木および/またはギプス固定を使用することによって、修復した腱のナックリングおよび/または過伸展を低減した。術後の鎮痛を施し、標準的な術後ケア手順に従って動物を管理した。
【0173】
臨床的知見
動物を、屠殺するまで1日2回観察した。第1週の間に、異常治癒および創傷裂開について、手術部位を観察し、写真を得た。手術後の試験期間を通して、一般的な姿勢、食欲、手術した肢の使用(例えば、跛行)、および手術部位の外見について動物を観察した。手術部位で感染症が発症した場合、抗生物質を動物に投与し、観察記録に記録した。当技術分野で公知の方法を使用して、手術して2週間後、4週間後、および8週間後に、手術したアキレス腱および対側の未手術のアキレス腱の両方についての超音波画像をすべての処置部位について得た。インデックス手術(index surgery)の8週間後に、すべての動物を屠殺し、組織を回収した。
【0174】
生体力学的試験
実験概要セクションで上に論じた3つの異なる処置群を使用した誘導アキレス腱断裂および再結合の機械的性能を求めた。
【0175】
材料および方法
試料は、採取した後、食塩水に浸漬したガーゼでラップし、試験するまで−20℃で貯蔵した。高強度ポリメチルメタクリレート(PMMA)を使用して2インチのPVDパイプに中足をポッティングした。ポッティング調製および生体力学的試験の間、15分間隔で食塩水をスプレーして、試料を湿気のある状態に保持した。材料試験システム負荷フレーム(MTS MiniBionix II、Edan Prairie、MN)にしっかり取り付けられた特注設計試験備品にポッティングした中足を取り付けた。アキレス腱の天然の断面を保存し、軟部組織の滑りを最小限にするために、特注設計のクライオクランプ(cryoclamp)を実装し、ポッティングした中足に対して約135°の角度でコンストラクトに一軸性のけん引力を印加した。これは、腱の生理的力ベクトルを模倣するために行った。試験は、クライオクランプに付けられた熱電対が−22℃、すなわち腱とクランプの間の安定したカップリングを保証するのに十分であると以前に報告された温度を記録したとき開始した。試験前に切断された、組織に埋め込まれた縫合糸物質はまったくなかった。したがって、生体力学的結果は、埋め込まれた縫合糸と修復性組織の合わされた機械的寄与を表す。
【0176】
4つの逆反射マーカーをポッティングしたコンストラクト、すなわち、1つを修復部位に直接隣接する踵骨上に、2つを腱上に、すなわち、1つをアキレス腱−修復組織界面の近位に、および1つをこの界面の遠位に縫合または接着剤接合した。4番目のものは、クライオクランプ上に接着接合した。3つのカメラ(Motion Analysis、Santa Rosa、CA)により、60Hzでマーカーの空間的移動を記録した。このカメラシステムを使用するマーカー変位測定により、修復性組織内の局所的な組織変位/歪みのリアルタイムモニタリングが可能になった。
【0177】
フェーズ1:30サイクルの動的プレコンディショニング
周期的負荷試験を最初に使用することによって、修復した腱をプレコンディショニングした。力制御プロトコールを使用して、10ニュートン(N)の前負荷をコンストラクトに2分間印加した。これにより、すべてのコンストラクトについての初期構成が指定された。次いで、修復したコンストラクトを、定常状態に達するように、60サイクルにわたって0.25Hzで10〜50Nの力制御プロトコールで周期的にプレコンディショニングした。変位対時間曲線の傾きが50サイクルと60サイクルの間で収束することを実証した、本発明者らの実験室における以前の実験に基づいて、60(n=60)サイクルを選択した。対象とするパラメータは、最初と60番目のサイクルの間のピークトゥピーク変位の差として定義されるコンディショニング伸長、および58番目、59番目、および60番目のサイクルの局部的な最小と最大の差の平均として定義されるピークトゥピーク伸長を含んでいた。
【0178】
準静的破損負荷
プレコンディショニングした後、1mm/sの速度での変位制御下で、修復したコンストラクトに破損するまで負荷をかけた。対象とする生体力学的パラメータは、極限破損までの荷重、準静的コンストラクト全体の剛性(負荷−変位曲線の傾きとして定義される)、局所的修復組織剛性、破損時点での伸長、および破損時に吸収されたエネルギーを含んでいた。最後に、破損機構を各試料について記録した。試験の前、破損までのランプ手順の間、コンストラクト破損の後に、デジタル画像および/またはビデオを撮った。
【0179】
統計分析
一元配置ANOVA、その後にTukeyのポストホック多重比較検定を使用することによって、IFWM対照および0.3mg/mLのPDGFおよび1.0mg/mLのPDGF処置群の間の連続的生体力学的パラメータの有意な差を識別した。有意性をp≦0.05に設定し、すべての分析は、SigmaStat 3.1(Systat Software, Inc.、San Jose、CA)を用いて実施した。
【0180】
結果
3つの処置群の間で、大きな視覚的な差はまったく識別されなかった。IFWM+0.3mg/mlのrhPDGF−BB群における6つのうち2つ(33%)のコンストラクトは、修復組織の外側側面上に明白な血腫を示した。この血腫の存在は、修復の生体力学的特性に影響し、異常に低い負荷で、血腫の正確な位置で開始する破損によって証明された。データ分析は、これらの血腫のある2つの試料を含めて(n=6)および含めないで(n=4)実施した。0.3mg/mlのrhPDGF−BB群における血腫のある2つの試料を含めた試験の周期的プレコンディショニング成分からの未処理データを表4に示す。コンディショニング伸長(p=0.636)またはピークトゥピーク伸長(p=0.813)の有意な差は、IFWM、IFWM+0.3mg/mlのrhPDGF−BB、またはIFWM+1.0mg/mlのrhPDGF−BB処置群の間でまったく識別されなかった(
図6A)。
【0181】
【表4A】
同様に、コンディショニング伸長(p=0.709)、またはピークトゥピーク伸長(p=0.947)の有意な差は、IFWM、IFWM+0.3mg/mlのrhPDGF−BB、またはIFWM+1.0mg/mlのrhPDGF−BB処置群の間でまったく識別されなかった。
図6B。分析から除外された血腫のある試料を含む、試験の周期的プレコンディショニング成分からの未処理データを表4Bに示す。
【0182】
【表4B】
分析に含められた血腫のある2つの試料を含む、生体力学的試験の破損までのランプ成分からの未処理データを、表5Aに示す。外科的に修復したアキレス腱における、任意の準静的パラメータについての有意な差は、IFWM、IFWM+0.3mg/mlのrhPDGF−BB、またはIFWM+1.0mg/mlのrhPDGF−BB処置群の間でまったく識別されなかった(p>0.05、表5、
図7A)。有意ではないが、1.0mg/mLのrhPDGF−BBの用量は、IFWM対照および0.3mg/mLのrhPDGF−BB群と比べて、破損に対する極限の力において、平均でそれぞれ57.4%および55.0%の増加をもたらした。破損時に吸収されたエネルギーの有意な差は、3つの処置群(p=0.209:IFWM、6423.33±1811.26N
*mm;0.3mg/mLのrhPDGF−BB、7346.00±2989.94N
*mm;1.0mg/mLのPDGF、12173.33±2049.62N
*mm)の間でまったく識別されなかったが、1.0mg/mLのrhPDGF−BB処置群における破損時に吸収されたエネルギーは、IFWM対照および0.3mg/mLのrhPDGF−BB処置群より、平均でそれぞれ89.5%および65.7%大きかった。
【0183】
【表5A】
分析から除外された血腫のある2つの試料を含む、生体力学的試験の破損までのランプ成分からの未処理データを表5Bに示す。外科的に修復したアキレス腱における、任意の全体的な準静的パラメータについての有意な差は、IFWM、IFWM+0.3mg/mlのrhPDGF−BB、またはIFWM+1.0mg/mlのrhPDGF−BB群の間でまったく識別されなかった(p>0.05、表5B、
図7B)。有意ではないが、1.0mg/mlのPDGFの用量は、IFWM対照および0.3mg/mlのPDGF群と比べて、破損に対する極限の力において、平均でそれぞれ57.4%および22.2%の増加をもたらした。破損時に吸収されたエネルギーの有意な差は、3つの処置群(p=0.247:IFWM、6423.33±1811.26N
*mm;0.3mg/mlのPDGF、9850.75±4006.36N
*mm;1.0mg/mlのPDGF、12173.33±2049.62N
*mm)の間でまったく識別されなかったが、1.0mg/mlのPDGF処置群における破損時に吸収されたエネルギーは、IFWM対照および0.3mg/mlのPDGF処置群より、平均でそれぞれ89.5%および23.6%大きかった。
【0184】
【表5B】
血腫のある2つの試料を分析に含めて(表6、
図8(左))、1.0mg/mLのrhPDGF−BB処置群(n=6、312.56±20.86N/mm)における修復組織の局所的剛性は、0.3mg/mLの処置群において定量化した局所的剛性(n=6、176.30±31.17N/mm)より、平均で77.3%大きかった。この差は統計的に有意である(p=0.012)。修復組織の局所的剛性の有意な差は、1.0mg/mLのPDGF処置群およびIFWM対照(n=6、215.23±33.23N/mm、p=0.075)の間でまったく識別されなかった。分析から除外した血腫のある2つの試料を含めて(
図8(右))、1.0mg/mlのrhPDGF−BB処置群における修復組織の局所的剛性は、0.3mg/mlの処置群において定量化した局所的剛性(n=4、223.72±11.46N/mm)より、平均で39.7%大きかった。この差は統計的に有意ではなかった(p=0.096)。しかし、1.0mg/ml群における修復組織の局所的剛性は、IFWM対照の修復組織の局所的剛性(215.23±33.23N/mm)より有意に大きかった(45.2%、p=0.039)。
【0185】
【表6】
試験した18(n=8)の処置コンストラクトのうちで、n=16(88.9%)が、調製組織と無傷のアキレスの近位界面で破損した。注目すべきことに、IFWM+0.3mg/mLのrhPDGF−BB処置群におけるそのようなコンストラクトの2つは、修復組織の外側側面上に血腫を示し、これは、解剖および後続の生体力学的試験の間に肉眼で見えた。両コンストラクトにおいて、破損は、これらの領域で開始した。残りのn=2(11.1%)の処置コンストラクトは、修復性組織と無傷のアキレスの遠位界面で破損した。n=6の無傷の対側アキレス腱コンストラクトについての破損様式は多様であった。2つの(n=2、33.3%)無傷のコンストラクトは、PMMAポッティング材内の中足骨破損を介して破損した。3つの(n=3、50%)無傷のコンストラクトは、アキレス腱の中央物質(mid−substance)引裂を介して破損し、1つ(n=1、16.7%)は、踵骨裂離を介して破損した。
【0186】
結論
インビボで8週間後、IFWM+1.0mg/mLのrhPDGF−BBで処置した群について観察された生体力学的データは、IFWM対照およびIFWM+0.3mg/mLのrhPDGF−BB処置群と比較して一貫して増加し、より大きい治癒応答を平均で示した。この投薬効果は、0.3mg/mLおよびIFWM単独の処置群と比べて、それぞれ、55%/22.2%(n=6/n=4)および57.4%の極限破損までの荷重の増大として顕在化した。修復(すなわち、局所的な)組織剛性は、0.3mg/mLのrhPDGF−BBおよびIFWM単独の処置群と比べて、平均でそれぞれ、77.3%/39.7%(n=6/n=4)および45.2%増大した。さらに、IFWM+1.0mg/mLのrhPDGF−BB群についてのこの試験で観察された極限の力は、マトリックス(血小板に富む血漿フィブリンマトリックスと合わせたコラーゲンパッチを使用する24週間の修復(Sarrafianら、Trans ORS、33巻:322頁(2008年)より34.9倍高い))、またはタンパク質(CDMP−2で処置された3週間の修復(Virchenko、Arch Orthop Trauma Surg、128巻:1001〜1006頁(2008年)より1.9倍高い))を利用した他の試験と比較して増大した。
【0187】
組織学的試験
組織の回収およびトリミング
安楽死させた後、手術したアキレス腱を回収し、組織の湾曲を防止するために添え木で支え、組織学的処理のために10%の中性緩衝ホルマリン中に入れた。手術したアキレスに加えて、2つの未手術の対側アキレス腱を回収して組織を分析した。24時間固定した後、メスを使用して各アキレス腱を内側と外側の半分に二分した。アキレスの近位端に刻み目を付けることによって、組織学的処理の間を通して配向を保存した。1.0mg/mlのrhPDGF−BB群中の1頭の動物は、試験と無関係の理由(肺炎)のために、治癒の40日(5.8週間)後に安楽死させた。
【0188】
組織学的処理
標準的なパラフィン組織学技法および装置(Shandon Citadel 2000 ProcessorおよびShandon Histocentre 2、Thermo Shandon, Inc、Pittsburgh、PA)を使用して、すべての試料(n=8)をさらに固定、脱水、浄化、浸潤、および包埋した。Shandon Finesseロータリーミクロトーム(Thermo Shandon, Inc、Pittsburgh、PA)でパラフィンブロックをフェイシングし、約10ミクロンの切片を切断した。合計40切片に対して、1試料当たり5枚の切片を切断した。各組織切片をヘマトキシリン−エオシン(H&E)で染色した。Image Pro Imagingシステム(Media Cybernetics、Silver Spring、MD)およびNikon E800顕微鏡(AG Heinze、Lake Forest、CA)を使用して、対象とする領域を含む染色したスライド全体について、高分解能デジタル画像をフィールドバイフィールドで得た。
【0189】
定性的病理組織検査
すべての組織切片について、修復性/治癒組織、天然の腱/修復性組織界面、血管新生、炎症、およびコラーゲン密度/線維配向の質を評価した。切片は、処置に対して盲検化して評価した。Image Pro Plusイメージングシステムを使用して、較正した全体のデジタル画像によって腱の退縮も測定した。
【0190】
結果
腱の退縮
すべての手術した試料を、治癒して8週間後にある程度の腱の退縮を示した。平均で、アキレス腱は、投与なしの群について55.7±16.1mm、0.3mg/mlのrhPDGF−BB用量群について39.8±4.5mm、および1.0mg/mlのrhPDGF−BB用量群について44.4±1.5mm退縮した。
【0191】
病理組織検査
8週間の治癒後に、rhPDGF−BBの用量にかかわらず、すべての試料において流動性コラーゲンは目に見えた。流動性コラーゲンは一般に、修復部位の遠位末端に向かってより多く認められた。少数例において、流動性コラーゲンは、修復部位の中心から修復性組織の背側表面に向けて移動していた。1つの試料において、修復部位の全長にわたって分散した流動性コラーゲンが観察された。軽度の炎症のみが、流動性コラーゲン中およびこの周囲に観察された。炎症は、用量なしの試料と比較して流動性コラーゲン+rhPDGF−BB群(0.3mg/mlおよび1.0mg/mlの用量)においてわずかに増大していると判断された。炎症は一般に、多核異物巨細胞および/または単核炎症(リンパ球、単球および血漿細胞)からなっていた。好中球は一般に観察されなかった。rhPDGF−BBの用量にかかわらず、流動性コラーゲン内に、活性化線維芽細胞による新規コラーゲン産生を伴う線維増殖が観察された。いくつかの線維増殖が流動性コラーゲン内に観察されたが、修復性コラーゲン線維内に不連続があった。天然アキレス腱の近位末端および遠位末端は、修復性組織の新規コラーゲン線維と一般によく一体化されていた。少数例において、遠位の界面は、近位の界面と比較した場合、わずかにより良好な一体化を示した。近位の界面は、軽度の炎症と合わさった、ねじれた天然アキレス腱端部とともに、未成熟コラーゲンを産生する多くの幼若線維芽細胞を含有していた。
【0192】
処置またはrhPDGF−BBの用量にかかわらず、高密度のコラーゲン線維を伴った、活性化線維芽細胞による比較的高い線維増殖およびコラーゲン産生があった。偏光を使用して観察した場合、主要なコラーゲン線維のアライメントは天然アキレスコラーゲン線維方向と一致していた。線維芽細胞密度は、処置同士間で同様であった。一試料において、線維芽細胞の密度は相対的により低く、コラーゲン線維はより未成熟であり、より密度が低く、より配向性が低かった。コラーゲン線維は一般に、天然のアキレス線維方向と平行に整列していたが、コラーゲンまたは線維芽細胞密度について群間で差はまったく観察されなかった。
【0193】
炎症は、すべての処置について、修復部位内に観察され、一般に軽度であった。炎症は、単核の炎症(リンパ球、単球、および血漿細胞)を伴った多核異物巨細胞からなっていた。好中球は、一般に観察されなかった。炎症は、縫合糸物質および流動性コラーゲンの存在に関連しており、まず間違いなく、宿主組織の局在的な損傷によるものであった。豊富な血管新生も、すべての処置について、修復部位内で観察された。炎症の増大は、より豊富な血管新生と関連していた。血管肥大、膨らんだ内皮細胞を伴った反応性血管、および血管壁の肥厚は、すべてのrhPDGF−BBの用量について観察された。用量なしの試料と比較した場合、0.3mg/mlおよび1.0mg/mlの用量で処置した試料において、より肥大性の血管が確認された。これらの血管は通常、背側表面の表層性領域における修復性組織内に位置していた。一試料(手術後40日)において、豊富な血管新生があったが、これらの血管はより小さく、肥大性血管は観察されなかった。ヘマトマトマタスな(hematomatomatous)空間およびフィブリンとともに見出された出血が、2試料において観察された。
【0194】
結論
要約すると、試験した限られた数の試料に基づいて、0.3mg/mlの用量、1.0mg/mlの用量、および対照(用量なし)群の間で、アキレス腱修復において定性的な差はまったくなかった。rhPDGF−BBの存在は、治癒を妨げず、また、組織学的に負の応答を誘発(illicit)しなかった。0.3mg/mlの用量および1.0mg/mlの用量の処置群の間で同様の治癒があった。すべての手術した試料は、ある程度の腱退縮を示した。流動性コラーゲンは、rhPDGF−BB処置または用量にかかわらず、すべての試料において目に見え、一般に修復部位の遠位末端に向けて位置していた。炎症は、一般に軽度であり、単核の炎症(リンパ球、単球、および血漿細胞)を伴った多核異物巨細胞からなっていた(considered of)。炎症は、用量なしの群と比較した場合、rhPDGF−BB(0.3mg/mlおよび1.0mg/mlの用量)で処置した流動性コラーゲン内でわずかに増大したと判断された。修復性組織において、高密度のコラーゲン線維を伴った、実質的な、進行中の線維増殖があり、これは、rhPDGF−BBの処置または用量に無関係であった。修復性コラーゲン線維のアライメントは一般に、天然アキレスコラーゲン線維方向と平行であった。コラーゲンおよび線維芽細胞密度は、処置同士間で同様であった。豊富な血管分布は、すべての試料において観察された。用量なしの群と比較した場合、0.3mg/mlおよび1.0mg/mlの用量を用いた試料において確認される、より肥大性の血管があることが判断された。少数例では、遠位界面は、近位界面と比較した場合、わずかにより良好な一体化を示し、近位界面では、成熟の低いコラーゲンおよび軽度の炎症と合わさった、ねじれた天然アキレス腱端部が存在した。これは、連続的な腱退縮、および縫合糸の滑りによって生じた同時の局部組織損傷の結果である場合がある。
【0195】
(実施例7)
rhPDGF−BBに応答して正常および疾患一次ヒト腱細胞が増殖する
この試験により、rhPDGF−BBが、腱障害を有する患者に由来する一次腱細胞の増殖および/または走化性を直接活性化したかどうかを判定した。そのような知見は、腱障害におけるrhPDGF−BBの治療可能性の概念を指示することができる。
【0196】
患者および方法
患者
アキレス腱障害を有する5人の患者および後脛骨腱(PTT)の腱障害を有する5人の患者を含む、腱障害を有する患者10人がこの試験に関与した。膝の完全関節置換を受けた追加の5人の患者も関わった。
【0197】
腱細胞の一次培養
その他の場合では処分される腱組織は、臨床的適応症のために実施された再建的手術手順の間に、正常な腱および傷害された腱から得た。これらの組織は、アキレス腱またはPTT腱の腱障害(tendinopathic)部分、ならびに長指屈筋(FDL)腱組織、アキレス腱組織、および膝蓋腱組織の健康な(非腱障害)部分を含んでいた。一次腱細胞外植片培養物を、これらの組織から得、継代3〜5で試験した。腱細胞同一性は、特異的プライマーを用いたリアルタイムPCRアッセイにおいて、腱細胞特異的遺伝子スクレラキス、およびコラーゲンα1(I)、α2(I)、およびα1(III)に関する遺伝子の発現を評価することによって確認した。
【0198】
細胞増殖
腱細胞単層をトリプシン処理し、0.5%の透析ウシ胎児血清を含有するDMEM/F12培地中に再懸濁し、一晩付着させ、次いで滴定濃度のrhPDGF−BBで24時間インキュベートした。市販のアッセイ(Roche Applied Science、Indianapolis、IN)を使用して、細胞中のDNA合成の間のBrdU取り込みに基づいて、細胞増殖速度の変化を評価した。各培養物を、rhPDGF−BBの各用量について三つ組で試験した。
【0199】
細胞遊走
腱細胞単層をトリプシン処理し、0.5%の透析ウシ胎児血清を含有するDMEM/F12培地中に再懸濁し、96ウェルChemoTx(登録商標)使い捨て細胞遊走システム(Neuro Probe、Gaithersburg、MD)の上段のチャンバー内に置いた。下段のチャンバーに、滴定濃度のrhPDGF−BBを入れた。チャンバーを分離している膜を横切って、48時間腱細胞を遊走させた。次いで、96ウェルプレートを遠心沈殿し、3回凍結融解することによって、遊走細胞を溶解した。成育可能な遊走細胞の量を、Promega(Madison、WI)からの市販キットを使用して、細胞質乳酸脱水素酵素(LDH)に基づいて測定した。
【0200】
統計分析
一元配置ANOVAを使用することによって、rhPDGF−BBを用いた刺激が、用量依存的な様式で腱細胞増殖に影響するかどうかを判定した。
【0201】
結果
対照の肺線維芽細胞培養物または対照の一次Tリンパ球培養物ではなく、腱細胞培養物のみがスクレラキシスmRNAを発現した一方で、リンパ球ではなく、腱細胞および線維芽細胞がコラーゲン遺伝子mRNAを発現した。
【0202】
すべての場合において、疾患過程に関与した、または関与していない腱組織に由来する腱細胞は、BrdU取り込みを加速することによってrhPDGF−BB刺激に応答した(p<0.05、一元配置ANOVA)。応答は用量依存的であり、10、50、および150ng/mLのrhPDGF−BBで観察された。すべての細胞培養物がrhPDGF−BB刺激に応答したが、rhPDGF−BB刺激後のBrdU取り込みの規模において患者間で有意なばらつきがあった。BrdUの取り込みは、対照の刺激されていない培養物と比較して、最低2.1±0.2倍から最大10.7±0.5倍まで増大した。5人の患者に由来する腱細胞は、逆説的に応答し、rhPDGF−BBのより高い(50および150ng/mL)濃度より低い(10ng/mL)濃度でBrdU取り込みがより大きく増大した。そのような逆説的応答は、これらの患者の腱障害組織および正常組織の両方に由来する腱細胞において観察された。4人の患者の健康な腱に由来する腱細胞は、患部組織に由来する腱細胞より、rhPDGF−BB刺激に応答して、BrdUを2倍多く取り込んだ。1人の患者において、疾患組織に由来する腱細胞が、非病変部の組織に由来する腱細胞より、rhPDGF−BB刺激に応答して、BrdUを4倍多く取り込んだ。
【0203】
すべての場合において、腱細胞は、50ng/mLおよび150ng/mLでのrhPDGF−BBに対して走化的に応答性であった。走化性実験のために10ng/mLのrhPDGF−BBに腱細胞を曝さなかったが、これは、パイロット実験において応答が低かったためである。やはり、応答は用量依存的であり、50ng/mLのrhPDGF−BBより、150ng/mLに対して走化性が大きかった。しかし、5人の患者に由来する腱細胞は、150ng/mLのrhPDGF−BBより50ng/mLに対して大きい走化性で応答し、遊走細胞数の有意な減少を伴った(p<0.05、両側スチューデントt−検定)。刺激されていない対照と比較して、1.4±0.1〜4.0±0.5倍の増大まで、rhPDGF−BBに対する最大の走化性応答において患者間でばらつきがあった。腱障害組織または健康な腱組織に由来する整合(matching)腱細胞培養物内で、rhPDGF−BBに対する腱細胞走化性の統計的に有意な差(p>0.05)はまったくなかった。
【0204】
結論
これらの実験の結果は、健康な組織および腱障害組織に由来する腱細胞は、増殖速度および走化性速度を増大させることによって、rhPDGF−BBに応答することを示す。重要なことに、一部の患者に由来する腱細胞は、PDGFに対して逆説的な応答を示し、より高い用量は、より低い用量より小さい効果を生じた。同様に重要なことに、疾患の腱に由来する腱細胞は、いくつかの場合では、健康な腱に由来する腱細胞に対して、PDGFに差次的に応答性であり、適切な投薬が臨床状況において最も重要となり得ることを示した。
【0205】
(実施例8)
腱を骨に再結合する治療において適用するための、組換えヒト血小板由来成長因子−BB(rhPDGF−BB)と組み合わせた4つのコラーゲンマトリックスの評価
この試験により、前十字靭帯再建などの腱を骨に結合する治療において適用するための、腱−骨界面でrhPDGF−BBとともに使用することができる4つのコラーゲンマトリックスの物理的特性、生体適合性(インビトロおよびインビボ)および安定性(生分解)を評価した。
【0206】
方法
(i)材料および調製
この試験において、4つのI型コラーゲンマトリックス(パッド)を評価した。3つの線維性コラーゲンマトリックス(A、B、およびC)は、様々なコラーゲン密度(A=4.5%のコラーゲン;B=5%のコラーゲン、C=6%のコラーゲン;Kensey Nash Corporationによって提供された、様々な百分率のコラーゲンスラリーから作製されたBIOBLANKET(商標)コラーゲン)のウシ真皮誘導体であり、4番目の線維性マトリックス(D)は、「高度に多孔質」(90%の多孔度)として特徴づけられるウシ腱誘導体(COLLATAPE(登録商標)、Integra LifeSciences)であった。すべてのコラーゲンシート(1.5〜2.0mmの厚さ)を打ち抜いて直径8mmのディスクにし、物理的特徴づけおよびインビトロ(細胞適合性)評価を行った。インビボ(生体適合性および生分解)評価は、1×1cm
2のパッドを利用して実施した。rhPDGF−BB:0.3mg/mlの組換えヒト血小板由来成長因子(rhPDGF−BB)も調製した。
【0207】
細胞源は、ヒツジ屈筋腱から単離した一次ヒツジ腱細胞(<4継代)であり、これは、成長培地(10%のウシ胎児血清(FBS)を含有するDMEM/F−12)中で培養し、使用する12時間前に基本培地(2%のFBSを含有するDMEM/F−12)でダウンレギュレートした。
【0208】
(ii)インビトロ細胞適合性試験
基本培地中の腱細胞懸濁液50μl(50,000細胞)を各コラーゲンディスクに添加した。培地出現を伴うことなく、37℃および5%のCO
2雰囲気で1時間インキュベートした後、細胞を播種したディスクを、単独の、またはrhPDGF−BB(30ng/ml)を組み合わせた基本培地2mlで予め満たした24ウェルプレートに移した。12時間静置培養した後、細胞を播種したディスクを含むプレートを、インキュベーター内の軌道振盪機(60rpm)上に配置した。培地交換は、48時間毎に行った。2、4、および6日目に、各物質および処置からの三つ組の試料をATPアッセイのために利用することによって、コラーゲンマトリックス中/上の生細胞数を求めた。4日目に、各物質および処置からの1つの試料を、走査電子顕微鏡(SEM)評価のために使用した。6日目に、各物質および処置からの四つ組の試料を利用して組織学的評価を行った。
【0209】
(iii)インビボ生体適合性および生分解試験
合計12匹のニュージーランド白ウサギをこの試験に使用した。前方−内側の切開によって、大腿骨を露出した。骨膜を除去した後、大腿骨の腹側表面の中間点を位置づけ、この中間点に対して約0.5〜0.8cm近位および遠位の2つの範囲(1cm×1cm)を、ラウンドバーおよび骨の過熱を防止するための多量の洗浄を使用して皮質除去した。内側および外側縁部上の皮質除去部位の中間点で2つの穴(0.9mm)をあけた。最後に、5〜0絹縫合糸を2つの穴に通し、次いでコラーゲンパッド(0.3mg/mlのrhPDGF−BB 100μlで予め飽和させた)を縛ることによって、大腿骨の表面にパッドを固定した。手術は両方に行い、その結果、各大腿骨は2つのパッドを受け、各動物は4つの異なるコラーゲンパッドをそれぞれ1つ受けた。大腿骨上のパッドの順序は無作為化した。手術して1、2、および3週間後に、4匹の動物を安楽死させ、パッドおよび周囲組織と一緒に大腿骨を10%の中性緩衝ホルマリン(NBF)中で固定し、メタクリル酸メチル(MMA)中に埋め込み、Goldnerのトリクローム手順で染色した。
【0210】
結果
(i)インビトロ細胞適合性試験
ATPアッセイにより、コラーゲンディスク上/中の細胞増殖は、rhPDGF−BBの存在下で有意に増大し、培養物中で時間とともに増大し、同じ処置状態下で、異なるマトリックスにわたって有意な差は観察されなかったことが明らかになった。マトリックス単独についてのSEM画像により、多孔度において定性的な差が明らかになり、マトリックスDは最大の多孔度を示し、マトリックスA、B、およびCは、漸減するレベルの多孔度を示した。細胞播種後のマトリックスのそれぞれについてのSEM結果は、異なる密度の3つの線維性マトリックスの表面上でより多くの細胞が観察され、「高度に多孔質な」マトリックス(D)の表面上で最少の細胞が観察されたことを示した。細胞を播種したマトリックスのそれぞれの断面からの組織画像は、SEM観察結果をさらに支持し、漸増密度のマトリックスについて、パッドの外表面に沿った細胞分布を示し、マトリックスDは、マトリックス全体にわたって細胞の最大分布を示した。
【0211】
(ii)インビボ生体適合性および生分解試験
組織学的評価により、4つのすべてのコラーゲンパッドは、移植後1週間無傷のままであったことが明らかになった。4つの異なるマトリックスの周囲の組織において、顆粒球および単核細胞の細胞浸潤の増大があった。移植して2週間後に、マトリックスA、B、およびDについて部分的な分解が観察され、明白な細胞浸潤がマトリックスDに伴っていた。移植して3週間後に、マトリックスDは、大部分が分解し、正常な線維芽細胞の中で小さいコラーゲン断片のみが観察された(
図9D)。真皮が起源のコラーゲンマトリックス誘導体(A、B、およびC)を受けた部位は分解を示し、これはコラーゲン密度と反比例した。広範な炎症細胞浸潤がこれらのマトリックスについて観察され、これは、3週間の観察期間にわたってより局在的となった(
図9A〜9C)。
【0212】
結果は、コラーゲンマトリックスDは、最も多孔質であり、均質の微細なコラーゲン線維ネットワークを有し、細胞結合および遊走にとってより多くアクセス可能な表面積を提供することを示した。個々のマトリックスのインビボ評価は、コラーゲンDは、最短の滞留期間を示し、最も生体適合性である物質であると思われ、移植して3週間後に最小の炎症細胞浸潤を示した一方で、異なる密度のコラーゲンマトリックスは、漸増する炎症細胞浸潤を示し、これは移植して3週間後までに局在化して病巣になったことを示した。
【0213】
(実施例9)
腱−骨または靭帯−骨再結合のヤギモデルにおける、腱のトンネル固定を増強するための、rhPDGF−BBおよびコラーゲンラップの使用
この試験は、骨幹端を貫く(transmetaphyseal)脛骨トンネル中に長指屈筋腱を挿入および固定する前に、ある用量のrhPDGF−BB中に浸漬したコラーゲンスポンジをラップすることの組織学的および生体力学的利点を評価する。前十字靭帯(anterior curciate ligament)を再建するためにグラフトを添える方法は、Rodeoら、J. Bone Joint Surg. Am.、75巻(12号):1795〜1803頁(1993年)に記載された通りであった。rhPDGF−BBと組み合わせたコラーゲンパッドを使用することによって、脛骨挿入部位内での腱または靭帯のより急速で完全な一体化を促進する。
【0214】
(A)物質および方法
(i)種
ヤギは、ヒトと同様に、その骨は、骨形成および再吸収のバランスのとれた組合せであり、正常な骨構造に導くリモデリングを起こすので、適当なモデルである。ラットまたはマウスなどのより小さい動物の骨は、リモデリングを起こさず、したがって腱が骨と再一体化するにつれて起こる生物学的プロセスを表さない。さらに、ヤギなどのより大きい動物の腱は、ヒトの手術において使用される技法および器具を使用して、より容易に操作および再結合することができる。
【0215】
合計24頭の骨格的に成熟したヤギ(メス、混合された遺伝的背景)をこの試験において使用する。これらの動物を3つ処置群に分割する(表7)。群1に、外側側部上の大腿挿入部からの長指屈筋腱の素早い剥離、その後に脛骨骨幹端を通して斜めにあけられた骨トンネルを通るスレッディングを行う。反対側では、ステンレス鋼縫合糸で脛骨の内側皮質に腱を結合させる(
図10および11参照)。群1の動物の対側の肢は、群2におけるものを含む。群2に同じ外科手術を行うが、トンネルを通すスレッディングの前に、腱に25×15mmのコラーゲンスポンジ(COLLATAPE(登録商標)、Integra LifeScience Corporation、Plainsboro、NJ)でラップする。脛骨の内側皮質に添えたら、コラーゲンマトリックスを酢酸ナトリウムバッファー(20mM、pH6.0)1.0mLで水和する。各動物内で、これらの処置を受ける肢を無作為化する(表8)。群1および2について合計10頭の動物を使用し、各時点(2週間および4週間)についてn=5をもたらす。生涯(各時点および各処置に使用される動物のコホート)における各回は、生体力学的試験について3つの試料、および組織学について2つの試料を生じる。
【0216】
群3の動物に群2におけるものと同じ外科手術を行うが、コラーゲンスポンジは、1.0mg/mLの組換えヒト血小板由来成長因子BB(PDGF−BB)1.0mLで水和する。この群において、両方の肢にPDGF−BBで処置を施す。群3は、10頭の動物からなる;これは、各時点(2週間および4週間)についてn=10試料(2つの手術した肢/動物)をもたらす。生涯における各回は、生体力学的試験について5つの試料、および組織学について5つの試料を生じる。
【0217】
外科的パイロット試験のためにさらに2頭を使用することによって、物質を外科的に移植する実現可能性を確認する(一方に上記群1および2について記載した処置を施し、他方に上記群3について記載した処置を施す)。これらの動物を、手術後2週間観察することによって、正常な歩行運動に戻ること、および合併症がないことを確認する。この期間の後、パイロット試験からの動物を安楽死させ、組織を収集する。手術および術後の評価期間が、事故を伴うことなく行われる場合、試験の残り(20頭の動物)を計画したように実施する。
【0218】
(ii)試験物品および対照物品
試験物品1は、20mMの酢酸ナトリウムバッファー、pH6.0+/−0.5中の1.0mg/mlのrhPDGF−BBであり、液体形態であり、2℃〜8℃で貯蔵する。試験物品2は、COLLATAPE(登録商標)、Integra LifeSciencesからのコラーゲンであり、固体形態であり、室温で貯蔵する。
【0219】
iii)用量調製
コラーゲンのrhDGF−BBとの混合
試験物品および対照物品を混合する。無菌配合物を物品に使用する。すべての混合は室温で実施する。製剤化した試験物品および対照物品は、調製して最大1時間後までに使用する。
【0220】
コラーゲンパッドを切断して25×15mmにし、腱上にラップし、骨トンネル中に通す。27Gの針を用いて、1.0mg/mLのrhPDGF−BB 1.0mLを、コラーゲンマトリックスの最終的な移植部位に隣接したトンネル中に注入する。トンネルの内側および外側の開口部に、合計で約0.5mLの1.0mg/mLのrhPDGF−BBを投与する。トンネルの内側または外側で行われる注入は、トンネル周囲の複数箇所、すなわちトンネル開口部のおおよそ1/4、1/2、3/4、および全円周で注入することによって行われる。
(iv)試験システム(動物および動物のケア)
30〜40ポンドの、Q熱検査して健康が証明された、骨格的に成熟したメスの家畜ヤギ(混血、n=24)を使用する。予備実験のために動物はまったく使用しなかった。動物は、ヤギ1頭当たり最低10平方フィートの空間を有するラン内に置いた。ケージは、ステンレス鋼で構築し、定期的に清掃する。周囲温度を60〜80°Fの間に維持し、湿度を30〜70%の間に維持する。
【0221】
ヤギに、バケツでおよび自動給水システム(LIX−IT)によって自由に水を与える。乾草は、連続的に1日1回提供する。ヤギに市販で購入したヤギ用固形飼料を与える。試験動物は、投薬の初日の前に少なくとも14日間、指定された小屋に順応させる。この順化期間により、動物が、試験室の設定に慣れることが可能になる。すべての動物に、心拍数、呼吸、および糞便浮遊を含めた理学的検査を施す。獣医によって優れた健康状態にあると判断された動物のみを施設に入れ、試験を認める。アイボメック(1cc/75ポンド)、ならびにペニシリンGおよびベンゾカイン(1cc/10ポンド)を用いて、動物を予防的に処置する。
【0222】
(B)実験デザイン
(i)一般的な説明および外科的方法
1ml/10kgで、IMでヤギカクテル[ケタミン(100mg/ml)10cc+キシラジン(20mg/ml)1cc]を使用して、前投薬の30分以内に麻酔を誘導する。誘導後、頭部IVカテーテルを所定位置に配置する。眼の軟膏を角膜上に穏やかに塗布することによって眼の乾燥を最小限にする。気管内チューブ(5−8 ETT)ならびにルーメンチューブを使用してヤギに挿管する。再呼吸回路を使用して100%の酸素で送達される1.5〜2%のイソフルランを使用することによって麻酔を維持する。必要な場合、一回呼吸量(15mL/kg BW)による人工呼吸器上にヤギを置く。麻酔の間全体にわたって、10ml/kg/時間で加温した乳酸リンガー液をヤギに投与する。
【0223】
ペニシリンGおよびベンゾカイン(1cc/10ポンド BW)を、手術の1時間前、および手術後のEOD(エンドオブデイ(end of day))に、合計3回の投与にわたって投与する。ブプレノルフィン(Buprenex)を、手術後、0.005mg/kg BW IM BID×48時間で投与する。
【0224】
手術部位を、無菌手術(滅菌食塩液と交互に3−クロルヘキシジン[4%]のスクラブ)に対して準備し、ドレープする。無菌的に、外側傍膝蓋(parapatellar)切開によって各膝関節を露出し、長指伸筋腱を外側大腿顆上の挿入部から素早く剥離する(
図10)。前脛骨筋の筋膜を切開し、筋肉を横方向に後退させることによって、近位脛骨骨幹端を露出する。
【0225】
脛骨の長軸に対して30度と45度の間の角度で、近位脛骨骨幹端内に直径5.6mmのドリル穴を作る(
図11)。すべてのドリル穴あけは、多量の洗浄とともに実施し、脛骨内顆(触診した関節ラインの1cm下)の近位で開始し、脛骨の外側(触診した関節ラインの2cm下)上の遠位で終了する。ドリルであけた穴の深さは、薄い金属の深さゲージを用いて測定し、記録する。25×15mmのコラーゲンスポンジを、重ねることなく腱の周囲にラップし、4−0Vicryl縫合糸で固定し、次いでステンレス鋼ワイヤを用いて骨トンネルに通す。骨の反対側では、2つの小さい穴、および4−0ステンレス鋼の結節縫合を使用することによって腱を内側皮質に固定する。コラーゲンをラップした腱を骨に固定した後、27Gのシリンジ針を使用して、pH6.0の酢酸ナトリウムバッファー1mLを分割量でトンネルの両側に注入することによって、コラーゲンスポンジを水和させる。コラーゲンラップを施していない対照動物の腱は、単に骨トンネルに通し、内側皮質上で固定する。成長因子で処置した腱は、上記のようにコラーゲンスポンジでラップし、骨トンネルに通し、内側皮質上で固定し、次いで1mg/mLのPDGF−BBを含有する酢酸ナトリウム(pH6)バッファー1mLで水和する。
【0226】
軟部組織は、吸収性縫合糸(例えば、4−0 Vicryl)を用いて層状に閉じる。切開部および皮膚を閉じた後、各肢の放射線撮影を実施することによって、トンネルの位置および角度を記録する。理想的には、放射線撮影は、脛骨トンネルの全長を画像化するような向きにする。
【0227】
ヤギを胸骨横臥位にし、移動できるようになったとき、これらを檻に戻す。各ヤギを自由に飲食させる。
【0228】
骨幹端の骨トンネル中に挿入された長指屈筋腱の一部に、ある用量のrhPDGF−BBを添加することにより、生体力学的破損までの荷重の25%の増大、ならびに組織像およびマイクロCTによる一体化および石灰化の改善を示すことが予期される。
【0229】
外科手術を、獣医の存在下で2頭の動物に対して最初に実施することによって、手術および動物ケアのすべての側面を考察する。14日後、すべての動物が事故を伴うことなく回復した場合、次いで実験的なプロトコールを実施する。困難が生じる場合には、研究者らは、獣医スタッフと鋭意取り組むことによって、動物に最適なケアを提供し、試験の成功を保証するのに必要なあらゆる問題を解決する。手術の間、動物に麻酔をし、動物に鎮静剤を投与して血液サンプリング手順を行う。
【0230】
(ii)群の割り当ておよび用量レベル
【0231】
【表7】
【0232】
【表8】
(C)生存中の観察および測定
動物を、試験の間全体にわたって少なくとも毎日観察する。事前選択判定基準が完成したら観察の記録を開始し、試験の終了まで継続する。歩行運動の変化を含む、一般的な外見および挙動についての変化について各動物を観察する。手術の前、および屠殺時に体重を測定する。体重は、動物の健康をモニターするのに必要な場合、追加の時点で測定する。
【0233】
術後1週目の最後に、2週目で屠殺される動物に、10mg/kgのカルセイン(購入先TBD)をIP(腹腔内)注射する。同様に、3週目に、4週目で屠殺される動物に、10mg/kgのカルセイン(購入先TBD)をIP注射する。これらの注射は、組織試料のトンネル中への新規骨形成および成長のスケッチを提供する。
【0234】
(D)臨床病理学的評価
(i)分析のための血清採取
外科手術前に1回、および屠殺前に、すべての動物から血液約5mlを無添加(すなわち、「血餅」)チューブに採取する。血液を遠心分離することによって血清を得、2つのアリコートに分割する。さらなる分析のために、血清を−70℃以下で貯蔵する。
【0235】
(E)解剖学的病理学
適切な試験エンドポイントですべての動物を屠殺する。死亡したことが分かった、または瀕死状態で屠殺された動物に肉眼的剖検を行うことによって、死亡原因を判定する。
【0236】
(i)剖検
USDA動物保護法および実験動物の管理と使用に関する指針(ILAR刊行物、1996年、National Academy Press)に従ってヤギを安楽死させる。1ml/10kg IMで、ヤギカクテル[ケタミン(100mg/ml)10cc+キシラジン(20mg/ml)1cc]を使用してヤギに最初に鎮静剤投与する。次いで、1cc/10ポンドBW IVで、Euthasol(360mg/mlのナトリウムペントバルビタール)を投与する。聴診および反射(まばたき、引っ込めなど)の欠如によって死亡を確認する。
【0237】
(ii)組織の採取および保存
インプラント部位の巨視的観察および写真撮影
安楽死の時点で、移植部位を肉眼で検査し、部位の記述を記録する。デジタル写真撮影を使用して観察結果を記録する。
【0238】
(iii)病理学
後膝関節を外し、ストライカーのこぎりを使用することによって、中央骨幹で脛骨を切断する。臨床評価を実施するのに必要である以上に骨の創傷を露出することなく、周囲の筋肉および皮膚を可能な限りトリムする。各試料に、ヤギの番号ならびにこれが右肢であるか左肢であるかの表示を標識する。組織を中性緩衝ホルマリン(10体積の固定液:1体積の組織)中に入れ、スポンサーに発送する。
【0239】
(F)エンドポイント
(i)組織学および病理組織学
組織の処理を行う。簡単に言えば、組織をメタクリル酸メチル(MMA)に埋設し、切片にし、ヘマトキシリン/エオシン、Safranin O/Fast Green、Von Kossa/MacNealおよび/またはVan Giesonを使用して染色して光学顕微鏡評価を行う。評価するための切片の面は、脛骨のトンネルに対して断面および長手方向としてである。各移植部位に残っている物質の量、トンネル壁に沿った腱の石灰化の程度および新規骨成長の量を評価するために、格付けシステムを考案する。ヘマトキシリン/エオシンで染色した切片に隣接する未染色の切片に対してカルセイン視覚化を実施する。
【0240】
(ii)生体力学
生体力学的試験のために保持した試料を、使用するまで−20℃に凍結させる。トンネルの長軸を、引っ張った腱の方向と合わせるために、脛骨/腱複合体を多軸テーブルに固定する。この方向づけにより、摩擦のいずれの影響も最小限になり、周囲の骨との腱の一体化/石灰化を直接試験することが可能になる。破損までの荷重のピーク測定値を、手作業および術後の放射線撮影によって測定したトンネルの長さに対して正規化する。
【0241】
(a)試験デザイン
この試験により、脛骨トンネル中の模擬指伸筋腱再結合の機械的性能を求める。12頭のボーアヤギをこの試験に利用する。
【0242】
(b)生体力学的試験
試料を食塩水に浸漬したガーゼでラップし、試験するまで−20℃で貯蔵する。高ポリメチルメタクリレートを使用して2インチのPVCパイプに脛骨の遠位部分をポッティングする。ポッティング調製および生体力学的試験の間、15分間隔で食塩水をスプレーして、試料を湿気のある状態に保持する。物質試験システム負荷フレーム(MTS MiniBionix、Edan Prairie、MN;
図12)に強固に付けられた特注設計試験備品にポッティングした脛骨を取り付ける。腱の天然断面をつかむように設計された特注設計のクライオクランプをこの試験において使用することによって、コンストラクトに一軸性のけん引力を印加する。任意の残っている外側の縫合糸を横切する。
【0243】
生体力学的および組織学的読みの分析を、共分散技法の分析によって実施する。rhPDGF−BBおよびCOLLATAPE(登録商標)の効果を、動物の体質量および腱の直径を共変量として調査する。
【0244】
読みは、適切な方法によって分析する前に変換することができる。
【0245】
フェーズI:30サイクルの動的プレコンディショニング
周期的な負荷試験を最初に使用することによって、腱修復をプレコンディショニングする。10ニュートン(N)の前負荷を印加し、コンストラクトの力を約40%緩和させる。これにより、すべてのコンストラクトについての初期構成が指定される。次いで、修復したコンストラクトを、定常状態に達するように、30サイクルにわたって0.25Hzで10〜30Nの力制御プロトコールで周期的にプレコンディショニングする。本発明者らの実験室における以前の実験は、変位対時間曲線の傾きは、20サイクルと30サイクルの間で安定となるように思われることを示すので、30(n=30)サイクルを選択する。
【0246】
フェーズ2:準静的破損負荷
プレコンディショニングした後、1mm/sの速度での変位制御下で、修復したコンストラクトに破損するまで負荷をかける。対象とする生体力学的パラメータは、極限破損までの荷重、および準静的剛性(負荷−変位曲線の傾きとして定義される)を含む。最後に、破損機構を各試料について記録する。各試料のデジタル画像を、試験デバイスに装填する際、および破損後に撮って、破損の様式および条件を記録する。
【0247】
(iii)マイクロトモグラフィー(CT)
試料サイズによって決定される最適な分解能で各試料をスキャンする。
図13を参照。円柱状欠陥に対する近似断面でスライスを得る。半自動輪郭法を使用することによって、欠陥の本来の境界の周囲長に限定される関心体積(VOI)を選択する。最適化した密度閾値およびノイズフィルターを選択し、すべての試料に均一に適用することによって、軟部組織から骨を分割する。総平均密度、骨の平均密度、およびトンネル内の骨体積/総体積を計算する。
【0248】
(実施例10)
BenchTopモデルによる、BIOBLANKE(商標)およびCOLLATAPE(登録商標)マトリックスからのrhPDGF−BB(組換えヒト血小板由来成長因子−BB)の放出特性の評価
この試験の目的は、室温でBenchTopモデルを使用して、様々な密度を有するBIOBLANKET(商標)およびCOLLATAPE(登録商標)マトリックスからのrhPDGF−BB放出を測定することである。
【0249】
試験物質
【0250】
【表9】
試験デザイン
試験デザインを、すべての試料群(BIOBLANKET(商標)マトリックス、COLLATAPE(登録商標)マトリックス、およびコラーゲンマトリックスを含まない対照群)について5分の初期フラッシング時間を示す表10に列挙する。
【0251】
【表10】
無菌法を使用して、生検パンチを用いて、BIOBLANKET(商標)およびCOLLATAPE(登録商標)シートのそれぞれから8mmのディスクを打ち抜く。シリンジ針を使用することによって、27G11/4針で1枚のBIOBLANKET(商標)およびCOLLATAPE(登録商標)ディスクを穏やかに突き刺し、特別に設計されたチャンバー内に取り付けられた1mLのシリンジヘッドを有する針を接続する。PDGF−BB(20mMの酢酸ナトリウムバッファー中1.0mg/mL)50μlを各ディスクにかける。次いで、ディスクを室温で10分間インキュベートする。関節鏡カニューレデバイスへのシリコンチューブの一方の端、および20mlのシリンジへのチューブの他方の端を
図14に示すように接続する。溶出バッファー(EME+2%のFBS)20mlをシリンジ中に満たし、Varistalticポンプへのシリコンチューブをアセンブルする。rhPDGF−BBで飽和したコラーゲンパッドを、関節鏡カニューレデバイスの頂部に装填する。200ml/分(予め較正した)の流速を設定する。ポンプの電源を入れ、5分作動させる。対照については、関節鏡カニューレデバイスの頂部からシステムに、1.0mg/mlでrhPDGF−BB 50μlを添加する。フラッシングして5分後に、ポンプを依然として作動させながら、シリコンチューブを20mlのシリンジから外すことによって、50mlの円錐チューブに溶出バッファーを収集する。分析のために試料を2〜4℃で貯蔵する。各試料中で溶出されたrhPDGF−BBの量は、以下のELISAアッセイ手順において説明するように、R & D systemsからのDuoSet ELISAキットを使用して測定する。
【0252】
ELISAアッセイ手順
捕獲試薬は、捕獲試薬原液56μlをDPBS 10mlに添加することによってDPBS中の作業濃度(0.4μg/ml)に希釈し、次いで希釈捕獲試薬100μlを、96ウェルプレートの各ウェルに添加する。プレートをプレートシーラーで密封し、振盪機上で、室温で一晩インキュベートする。吸引および分配マニホールドからの気泡を排出し、プレートを洗浄バッファーで3回洗浄する。溶出バッファー200μlを各ウェルに添加し、揺り動かしながら室温で2時間(最大4時間)、プレートをブロックする。プレートを洗浄バッファーで3回洗浄する。
【0253】
ストレプトアビジン(steptavidin)−HRPは、ストレプトアビジン−HRP原液50μlを、試薬希釈剤バッファー10mlに添加することによって、試薬希釈剤バッファー中の作業濃度(200倍希釈)に希釈する。次いでストレプトアビジン−HRP 100μlを各ウェルに添加し、アルミホイルで覆い、軌道振盪機上で、室温で20分間インキュベートする。ストレプトアビジン−HRPをプレートに添加した直後に、次いで必要な体積のSureBlue TMBを、ホイルでラップされた15mlの円錐チューブにアリコートし、ベンチ上に置き、室温まで平衡状態にさせる。各プレートについて別個のチューブを準備する。次いでプレートを洗浄バッファーで3回洗浄する。
【0254】
Sure Blue 100μlを各ウェルに添加し、アルミホイルで覆い、室温で20分間インキュベートする。1NのHCL 50μlを各ウェルに添加することによって、反応を停止する。反応が停止して30分以内に、540nmで設定した補正値を用いて、450nmでの光学密度を読み取る。
【0255】
データの計算
4−パラメータグラフを使用してスタンダードをプロットし、各プレートに対する検量線を使用して、各希釈での各試験試料についてのrhPDGF−BB濃度を計算する。各時点での2つの希釈からの三つ組の試料のそれぞれについての平均値および標準偏差(SD)も計算する。
【0256】
各試料中に存在する総rhPDGF−BBを、rhPDGF−BB濃度に各試料の総体積を乗じることによって求める。各時点での各試料中のrhPDGF−BBの累積量を、以前の時点にその時点でのrhPDGF−BBの量を加算することによって計算する。
【0257】
4つの時点のそれぞれにおいて放出されたrhPDGF−BBの累積量についての平均+/−SDをプロットする。各時点での累積rhPDGF−BB放出量を、同じ時点での対照の平均値で除することによって、各試料中のrhPDGF−BB放出率を計算する。各時点での三つ組の試料のそれぞれについてのrhPDGF−BB放出率の平均値も計算する。4つの時点のそれぞれにおけるrhPDGF−BB放出率についての平均+/−SDをプロットする。
【0258】
統計分析
各時点でのデータの統計的比較を、データ分布に従って適切な方法によって行う。
【0259】
(実施例11)
関節鏡下洗浄のBenchTopモデルを使用した、コラーゲンマトリックスと合わせた組換えヒト血小板由来成長因子−BB(rhPDGF−BB)の放出、安定性、および生物作用能の特徴づけ
この試験は、高流量関節鏡下環境を再現するため、および腱を骨に結合する手順、例えば、前十字靭帯再建手順または回旋腱板傷害治療手順などにおいて適用するために考慮された4つの異なるコラーゲンマトリックスから溶出されるrhPDGF−BBの放出、安定性、および生物作用能を特徴づけるための新規のBench Top関節鏡下モデルを開発するために行った。
【0260】
方法
3つが異なるコラーゲン濃度の経皮由来のコラーゲンマトリックス(Kensey Nash CorporationからのA=4.5%のコラーゲン;B=5%のコラーゲン、C=6%のコラーゲン)であり、1つがアキレス腱由来のマトリックス(コラーゲンD、Integra LifeSciencesからのCOLLATAPE(登録商標))である、4つのI型コラーゲンマトリックスを評価した。すべてのマトリックスを打ち抜いて8mmのディスクにした。コラーゲンマトリックスからのrhPDGF−BB(Novartis)の放出を評価するために、各ディスクを1mg/mlのrhPDGF−BB 50μl(50μg)で水和し、室温で10分間インキュベートし、溶出バッファー(2%のFBSを含有するMEM)20mlで予め満たしたBench Top関節鏡システム中に装填し(
図14参照)、200ml/分の流速で5分間流した。同じ量のrhPDGF−BBを、対照としてこのシステムに添加した。マトリックスを洗浄するのに使用した溶出バッファー試料は、DuoSet ELISAアッセイ(R & D Systems)を使用して分析した。逆相およびサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用することによって、コラーゲンマトリックスから放出されたrhPDGF−BBの特性を引き出して、rhPDGF−BBの天然/変性構造の変化/改変を評価した。ブロモデオキシウリジン(BrdU)細胞増殖アッセイ(Promega)を使用して、コラーゲンマトリックスから放出されるrhPDGF−BBの生物作用能を試験した。NIH3T3線維芽細胞を、rhPDGF−BB(0〜0.24μg/ml)を含有する放出物(releasate)中で培養し、次いでBrdUを添加し、細胞を48時間インキュベートした。
【0261】
4つのコラーゲンマトリックスのそれぞれについての対照と比べた平均rhPDGF−BB放出率は、以下の通りであった:コラーゲンA、79%;コラーゲンB、64.6%;コラーゲンC、74.3%;およびコラーゲンD、89.0%。コラーゲンDは、rhPDGF−BBの最大の放出を示し、これは、一元配置分散分析のFisher LSD法を使用して実証されたように、マトリックスBまたはCについて観察されたものより有意に大きかった。逆相HPLCで実証されたように、マトリックスDと組み合わせた後に、rhPDGF−BBに対する明らかな変化はまったく見出されなかったが、軽度のrhPDGF−BBの酸化が、コラーゲンマトリックスA、B、およびCで起こった。しかしこれらの変化は、生物作用能に影響するように思われなかった(BrdUによって評価した場合)。
【0262】
この試験は、Bench Top関節鏡下モデルが、スポーツ医学関節鏡下修復/再生手順において使用することが提案された組換えタンパク質治療剤の送達のためのマトリックスを評価するのに有効なシステムであることを示す。コラーゲンAおよびDは、コラーゲンBおよびCより多くのrhPDGF−BBを放出し、コラーゲンDは、rhPDGF−BBに対していずれの変化ももたらさず、スポーツ医学再生手順において使用するための大きな可能性を示した。さらに、この関節鏡下モデルは、有効性を最大にするのに最適な送達用量を提供するための組換えタンパク質治療デバイスを作ることを可能にする優れたインビトロツールを代表する。
【0263】
(実施例12)
走査電子顕微鏡(SEM)評価による、rhPDGF−BBに応答した様々な密度のBIOBLANKET(商標)マトリックスおよびCOLLATAPE(登録商標)における細胞遊走
この試験により、一次ヒツジ腱細胞を培養することによって、BIOBLANKET(商標)およびCOLLATAPE(登録商標)マトリックス中への細胞遊走の程度を評価する。この腱細胞は、rhPDGF−BBを用いて、または用いずに処理され、引き続いて走査電子顕微鏡(SEM)技法によって評価される。
【0264】
物質および方法
BIOBLANKET(商標)マトリックスおよびCOLLATAPE(登録商標)中へのヒツジ腱細胞の遊走は、既知量の細胞を含むマトリックスを播種し、次いでこのマトリックスを4日間培養することによって評価した。次いでマトリックスを臨界点乾燥によって処理し、マトリックス中の細胞分布および密度を、走査型電子顕微鏡下で評価した。
【0265】
試験物質は、1)5%、6%、または7%のBIOBLANKET(商標)(ロット番号R436−1、R436−2、R436−3);2)COLLATAPE(登録商標)(ロット番号1072549);3)rhPDGF−BB(0.3mg/ml;ロット番号:BMTI204)、および4)足首関節で切断した新鮮なヒツジの脚を含む。試験デザインを表11に列挙する。
【0266】
【表11】
(i)一次ヒツジ腱細胞の単離および培養
石けん、水、および70%のアルコールを使用して、新鮮なヒツジの脚を、浄化、噴霧、および洗浄した。屈筋腱の表面から約3インチの幅の皮膚を切除した。切開部を70%のアルコールで噴霧し、外科的ドレープで覆った。腱鞘の上を切開することによって、腱を露出した。次いで、腱を遠位側から切断した。腱をできる限り長く引っ張り、近位側を切断した。次いで腱を、氷冷のDPBSで満たされた50mlの円錐チューブに入れた。脚および余分の組織を廃棄した。
【0267】
層流フード作業域内で、滅菌した120mmの細胞培養皿中で、腱組織を刻んで小さい断片にした。次いで刻んだ組織を、新しい50mlの円錐チューブに移した。刻んだ腱組織を、DPBSで2回、およびDMEM/F−12培地で1回洗浄した。次いで腱組織を、DMEM/F−12培地中の500ユニット/mlのプロナーゼプロテアーゼで1時間消化した。プロナーゼプロテアーゼを吸引し、DPBSで2回、および無血清DMEM/F−12培地で1回洗浄した。
【0268】
次いで、無血清DMEM/F−12培地(meidum)中の0.2コラゲナーゼPと150ユニット/mlのDNAse−IIを用いて1時間、腱細胞を遊離した。消化産物を、75μmの細胞ストレーナを通して濾過した。残った組織を50mlの円錐チューブへのストレーナ内に戻し、無血清DMEM/F−12培地中の0.2%のコラゲナーゼPと150ユニット/mlのDNAse−IIを用いて1時間、腱細胞を遊離した。細胞を、1200〜1500RPMで、4℃で5分間遠心分離することによってペレット化した。細胞をDMEM/F12成長培地10ml中に再懸濁し、トリパンブルーおよび血球計数器を使用して細胞計数を実施した。5000〜7500細胞/cm
2の間の密度で、DMEM/F−12成長培地を含むT75またはT150フラスコ中に細胞を蒔いた。すべての腱組織が消化されるまで、この段落に記載した全プロセスを1時間毎に繰り返した。成長培地は、2日毎に交換し、BIOBLANKET(商標)およびCOLLATAPE(登録商標)マトリックスに細胞を播種する24時間前に基本培地に交換した。
【0269】
(ii)細胞播種およびrhPDGF−BB添加
滅菌技法を使用して、BIOBLANKET(商標)およびCOLLATAPE(登録商標)マトリックスから8mmのディスクを生検パンチを使用して打ち抜いた。各27G1/2針上の1枚のBIOBLANKET(商標)またはCOLLATAPE(登録商標)ディスクを穏やかに突き刺し、開放矩形形状に対して90度の角度で2回曲げることによって、ディスクが滑り落ちる恐れをなくした。BIOBLANKET(商標)およびCOLLATAPE(登録商標)マトリックスディスクが刺さった針を、特別に設計されたチャンバー内の1mlのシリンジヘッドに接続した。腱細胞をトリプシン処理し、2%のFBSおよび10
6細胞/mlの濃度の抗生物質を含有するDMEM基本培地1ml中に懸濁した(4継代未満)。総量60ng(培地2ml中30ng/ml)のrhPDGF−BBを各ディスクに装填した。BIOBLANKET(商標)およびCOLLATAPE(登録商標)マトリックスディスクに、細胞を播種し、培地を浸漬することなく、インキュベーター内のチャンバー内で1時間インキュベートした。2%のFBSを含有するDMEM培地を調製し、rhPDGF−BB処置群としての合計8ウェルについて、各24ウェル超低付着プレートの8ウェルに2mlを添加した。1時間インキュベートした後、細胞を播種したディスクを装填ボックスから取り出した。止血鉗子を使用して、針先端部をプラスチックの根元から折った。細胞を播種したディスクを、針先端部と一緒に、様々な組成物を含有する培地で予め満たしたウェルに移した。ディスク中に付着した針先は、ディスクを培地中で浮遊させ、その結果、ディスクの両側の細胞は、栄養を均等に供給された。各物質について合計4つの処置を行い、各物質および各処置について三つ組の試料を準備した。37℃および5%のCO
2雰囲気で、インキュベーター内で12時間静置培養した後、プレートを、インキュベーター内の軌道振盪機上に、細胞を播種したコラーゲンマトリックスとともに置いた。初回のフィーディングと同じ組成物を含有する培地を、48時間毎に交換した。
【0270】
(iii)走査電子顕微鏡プロセス
培養して4日後に、24ウェルプレートからの細胞を播種した各ディスクを、培地の出現を伴ってクライオバイアルに移した。次いでクライオバイアルから培地を取り出し、DPBS中で2回洗浄した。2.5%のグルタルアルデヒド中で2時間試料を固定した。次いで試料をDPBS中で5回洗浄し、2%の四酸化オスミウム中で2時間、後固定した(post−fixed)。試料を脱イオン水中に10分間浸漬し、脱イオン水で5回洗浄することによって過剰の四酸化オスミウムを除去した。試料を上昇系列のエタノール中で脱水し、次いでPolaron臨界点乾燥機内で乾燥させた。試料に金−パラジウムをコーティングし、Hitachi SEMを用いて見た。
【0271】
結果および結論
腱細胞は、様々な濃度のコラーゲンスラリーを有するすべてのBIOBLANKET(商標)マトリックスの表面上で成長したが、COLLATAPE(登録商標)マトリックスの内部で成長した。ほとんどの腱細胞は、様々な濃度のコラーゲンスラリーを有するすべてのBIOBLANKET(商標)マトリックス上で成長しながら丸い形状であったが、COLLATAPE(登録商標)マトリックス上で紡錐体形状であった。
図15を参照。
【0272】
(実施例12)
ヒツジモデルにおける、rhPDGF−BBおよびI型ウシコラーゲンマトリックスを使用する回旋腱板修復
この試験の目的は、ヒツジモデルを使用して、回旋腱板を修復するために、棘下筋腱の上腕骨へのより強い再結合を促進することを意図した、rhPDGF−BBを装填したマトリックスの効力を求めることであった。実験デザインを以下のように提供する:1)縫合のみ(n=9);2)縫合+コラーゲンマトリックス+バッファー(n=9);3)縫合+コラーゲンマトリックス+0.15mg/ml(または75μg)のrhPDGF−BB(n=9);4)縫合+コラーゲンマトリックス+0.30mg/ml(または150μg)のrhPDGF−BB(n=9);5)縫合糸+コラーゲンマトリックス+1.0mg/ml(または500μg)のrhPDGF−BB(n=9);および6)iCTL(n=9)無傷のコントララテラル対照。縫合のみ、縫合+コラーゲンマトリックス+バッファー、および3つの用量群からの9頭の動物を生体力学的試験に利用し、それぞれ3頭を組織診断試験に利用した。iCTL群はより小さく、生体力学的試験について6頭であり、組織診断試験について3頭であった。
【0273】
外科手術
骨格的に成熟したヒツジ(3.5歳以上)の棘下筋腱を外科的に露出し、上腕骨頭から素早く剥離した。腱フットプリント(tendon footprint)を剥皮し、出血を誘導するために3つの穿孔を骨に作った。試験物品を、腱と骨の間の挿入(interpositional)移植片として配置した。2本の縫合糸を、Mason−Allen技法を使用して腱に通し、3つの骨トンネルからなる単列修復によって、腱を上腕骨頭に固定した。標準的な手順を使用して手術部位を閉じ、ヒツジを普通に歩き回らせた。手術して12週間後に動物を屠殺した。
【0274】
材料および方法
生体力学的な試験
生体力学的な試験に割り当てた動物からの肩を回収し、上腕骨−棘下筋腱のコンストラクトを無傷にしたまますべての筋系を剥皮した。合計51個の肩を生体力学的に評価した。浄化後、食塩水に浸漬したガーゼで試料をラップし、生体力学的試験まで−20℃で貯蔵した。高強度ポリ−メチル−メタクリレート(PMMA)樹脂を使用して、2インチのPVCパイプに上腕骨をポッティングした。試料は、15分間隔で食塩水を噴霧して、ポッティング調製および生体力学的試験の間、水和した状態を保った。物質試験システム負荷フレーム(MTS MiniBionix、Edan Prairie、MN)にしっかり取り付けた特注設計試験備品にポッティングした上腕骨を取り付けた。棘下筋腱の天然断面を保存し、軟部組織の滑りを最小限にするように設計された特注設計のクライオクランプは、ポッティングした上腕骨に対して約135°の角度でコンストラクトに一軸性のけん引力を印加するためであった。これは、腱の生理的力ベクトルを模倣するために行った。試験は、クライオクランプに付けられた熱電対が−22℃、すなわち腱とクランプの間の安定したカップリングを保証するのに十分であると以前に報告された温度を記録したとき開始した。
【0275】
3つの逆反射マーカーをポッティングしたコンストラクト、すなわち、1つを修復部位に直接隣接する上腕骨上に、1つを修復界面の近位の腱上に、および3番目をクライオクランプ上に縫合または接着剤接合した。3つのカメラ(Motion Analysis、Santa Rosa、CA)により、60Hzでマーカーの空間的な移動を記録した。このカメラシステムを使用するマーカー変位測定により、回旋腱板修復部位にわたる局所的な組織変形のリアルタイムモニタリングが可能になった。
【0276】
フェーズ1:30サイクルの動的プレコンディショニング
周期的負荷試験を最初に使用することによって、回旋腱板修復をプレコンディショニングした。10ニュートン(N)の前負荷を力制御で2分間印加し、その後、修復したコンストラクトを、定常状態に達するように、60サイクルにわたって0.25Hzで10〜50Nの力制御プロトコールで周期的にプレコンディショニングした。変位対時間曲線の傾きが50サイクルと60サイクルの間で、繰り返し可能な定常状態の挙動に到達することを実証した、本発明者らの実験室におけるパイロット実験に基づいて、60(n=60)サイクルを選択した。コンディショニング伸長およびピークトゥピーク伸長を、周期的なプレコンディショニング試験の間に求めた。コンディショニング伸長は、1番目のサイクルのピークと60番目のサイクルのピークの間のy変位における距離として定義した。ピークトゥピーク伸長は、58番目、59番目、および60番目のサイクルの局部的な最小から最大の平均として定義した。
【0277】
フェーズ2:準静的破損負荷
プレコンディショニングした後、1mm/sの速度での変位制御下で、修復したコンストラクトに破損するまで負荷をかけた。対象とする生体力学的パラメータは、極限破損までの荷重、および準静的剛性(負荷−変位曲線の傾きとして定義される)を含んでいた。最後に、破損機構を各試料について記録した。適切な場合、デジタル画像を撮った。
【0278】
統計分析
一元配置ANOVAおよびポストホックFisher’s LSDおよびTukey検定を使用することによって、無傷の対照を除外した処置群同士間の連続的生体力学的パラメータの有意な差を識別した。有意性をp≦0.05に設定し、すべての分析は、SigmaStat 3.1(Systat Software, Inc.、San Jose、CA)を用いて実施した。
【0279】
結果
試験の周期的プレコンディショニング成分からの未処理データを表12に示す。0.15mg/mlのPDGFおよび0.30mg/mlのrhPDGF−BB群は、縫合のみ、および縫合+コラーゲンマトリックス群より有意に大きいコンディショニング伸長を受けた(Tukey’s:p≦0.024;Fisher LSD:p≦0.003)。
図16A。任意の群同士間で、ピークトゥピーク伸長の有意な差はまったくなかった(p=0.111、
図16B)。
【0280】
【表12】
生体力学的試験の破損までのランプ成分からの未処理データを表13に示す。0.15mg/mlおよび0.30mg/mlのrhPDGF−BBを用いた修復増強は、縫合のみの群と比べてそれぞれ、63.7%および63.3%の破損までの荷重の増大をもたらした(Tukey:p=0.176;Fischer LSD:p=0.029、およびTukey:p=0.181;Fisher LSD:p=0.030、
図17A)。さらに、破損時の負荷データは、0.15mg/mlおよび0.30mg/mlのより低いrhPDGF−BB用量は、より高い1.0mg/mlのPDGF用量より性能が優れていることを示し、破損時の負荷においてそれぞれ120%および119.3%の増大として顕在化した(p=0.023およびp=0.023(Fisher:p=0.003))。コンストラクトの剛性の統計的な差は、群同士間でまったく識別されなかった(p=0.254、
図17B)。0.15mg/mlおよび0.30mg/mlのrhPDGF−BBの群におけるコンストラクトは、縫合のみの群と比べて破損時に有意に大きい伸長を示した(それぞれ、p≦0.018およびp≦0.024)。Fisher’s LSDは、0.15mg/mlおよび0.30mg/mlのPDGF群は、縫合+コラーゲンマトリックスバッファー群より有意に多く伸長したことを示した(それぞれ、p=0.015およびp=0.011)。0.15mg/ml、0.30mg/ml、または1.0mg/mlのrhPDGF−BB群の間で、破損時の伸長の差はまったく識別されなかった(p≧0.054)。
【0281】
【表13】
縫合のみ、縫合+コラーゲンマトリックス+バッファー、および縫合+コラーゲンマトリックス+1.0mg/mlのrhPDGF−BB処置群について、あらゆる試料におけるコンストラクト破損は、上腕骨上の挿入部位での中央物質組織破損として顕在化した。これらの3つの群中の腱のいずれ(n=27)においても、上腕骨剥離破損はまったく確認されなかった。対照的に、0.15mg/mlのrhPDGF−BBおよび0.30mg/mlのrhPDGF−BB処置群における破損モードは混合されており、上腕骨上の挿入部位での中央物質組織破損、またはいくらかの骨の裂離と合わさった中央物質組織破損として顕在化した。具体的には、0.15mg/mlのrhPDGF−BB群における肩の9個のうちの6個(66.7%)が、ある度の骨の裂離を示した一方で、0.30mg/mlのrhPDGF−BB群における肩の9個のうちの5個(55.6%)が、ある程度の骨の裂離を示した。無傷の、対側のコンストラクトの破損は、中央骨幹の(middiaphyseal)上腕骨(humoral)破損(n=5)、または上腕骨上の棘下筋腱挿入部位での骨の裂離(n=1)として顕在化した。
【0282】
結論
0.15mg/mlおよび0.30mg/mlのrhPDGFを用いた上腕骨棘下筋腱再結合の増強は、縫合のみ、縫合+コラーゲンマトリックス+バッファー、および縫合+コラーゲンマトリックス+1.0mg/mlのrhPDGF−BB群と比べて、ヒツジモデルにおいて3カ月後に機械的機能を改善した。より低い用量のrhPDGF−BBの生体力学的完全性の増強は、縫合のみの群と比べて、破損までの荷重の63%の増大、および1.0mg/mlのrhPDGF−BB群と比べて、破損時の負荷の120%の増大として顕在化した。ここで報告したデータは、回旋腱板増強に対する用量依存的効果を支持し、より低いrhPDGF−BB用量は、成長因子のより高い1.0mg/mlの用量と比べてより大きい治癒応答を誘発する。さらに、0.15mg/mlのrhPDGF−BBおよび0.30mg/mlのrhPDGF−BB処置群における破損モードは、0.15mg/mlのrhPDGF−BB群における肩の9個のうちの6個(66.7%)がある程度の骨の裂離を示した一方で、0.30mg/mlのrhPDGF−BB群における肩の9個のうちの5個(55.6%)が、ある程度の骨の裂離を示したように、無傷の、未手術の肩において一貫してみられる破損モードと同様であった。この知見は、より低い用量のPDGF(例えば、rhPDGF−BB)は、12週間の治癒期間の過程にわたって、より大きい上腕骨粗面との腱の(tendinacious)一体化を促進し、より低い用量のPDGFは、回旋腱板修復を増強するのにより適していることを示す。
【0283】
(実施例13)
ヒツジモデルにおける、rhPDGF−BBおよびI型ウシコラーゲンマトリックスを使用する回旋腱板修復:組織学的結果
この試験は、ヒツジ回旋腱板挿入部の治癒および再生を促進するための、I型ウシコラーゲンマトリックスと組み合わせた組換えヒト血小板由来成長因子−BB(rhPDGF−BB)の有効性を評価するために設計した。回旋腱板傷害の最適な治癒は、結合の本来の部位(腱「フットプリント」)での腱の骨への再挿入を伴う。腱線維の骨への再挿入がない場合、治癒した部位は、本来の結合より「弱い」と考えられ、潜在的に機能を制限し、再傷害のより大きい確率に導く。回旋腱板修復後の相対的に高い割合の破損が報告されており(例えば、Boileau P.ら、J Bone Joint Surg Am、87巻:1229〜1240頁(2005年);Galatz L. M.ら、J. Bone Joint Surg Am.、86巻:219〜224頁(2004年);Gazielly D. F.、Clin. Orthop Relat Res、304巻:43〜53頁(1994年);Gerber C. J.ら、Bone Joint Surg Am、82巻:505〜515頁(2000年);およびHarryman D. T.ら、J. Bone Joint Surg Am、73巻:982〜989頁(1991年)を参照)、これは、様々な異なる要因から生じると仮定されている(例えば、Goutalier D.ら、Clin Orthop、304巻:78〜83頁(1994年);Gerber C.ら.、J Bone Joint Surg Br、76巻:371〜380頁(1994年);Warner J. P.ら、J Bone Joint Surg Am、74巻:36〜45頁(1992年)を参照)。腱組織の質および腱から骨までの治癒が、回旋腱板修復の失敗の一因となる最も重要な要因の2つとして提案されており、腱から骨までの治癒を増強するための成長因子または細胞の送達が、これらの傷害の治癒を最適化するための方法として示されている(例えば、Gamradt S. C.ら、Tech in Orthop、22巻:26〜33頁(2007年)およびDovacevic D.ら、Clin. Orthop Relat Res、466巻:622〜633頁(2008年)を参照)。PDGF−BBは、十分に特徴づけられた創傷治癒タンパク質であり、これは、骨(骨芽細胞)および腱(腱細胞)細胞を含めた間葉系起源の細胞に関して、走化性(細胞遊走)および分裂促進性(細胞増殖)であることが公知である。さらに、PDGF−BBは、血管内皮成長因子(VEGF)をアップレギュレートし、再生プロセスの成功にとって本質的である血管新生(血管再生)の増大に導くことが示されている。この試験の目的は、生体力学的および組織学的結果の措置を使用して、腱再結合を増強および改善するための、腱修復部位での、I型ウシコラーゲンマトリックスと合わせたrhPDGF−BBの効力を求めることであった。
【0284】
試験デザイン
合計17頭の骨格的に成熟したヒツジを試験の一部として含めた。動物に、外科的な剥離、その後、骨トンネルを通す縫合を使用して、上腕骨のより大きい粗面への右棘下筋腱の即時の再結合を行った。第1のセットの実験では、実験動物(n=3)の腱−骨界面に、20mMの酢酸ナトリウム(酢酸塩)バッファー中、0.15(n=3)または0.3(n=3)mg/mlの濃度を有するrhPDGF−BBと合わせたI型コラーゲン担体を投与した。すべての動物についての生存時間は、12週間であった。処置の割り当てを表14に示す。
【0285】
【表14】
第2のセットの実験では、実験動物(n=3/群)の腱−骨界面に、20mMの酢酸ナトリウム(酢酸塩)バッファー中、1.0mg/mLの濃度を有するrhPDGF−BBと合わせたI型コラーゲン担体(コラーゲンマトリックス)またはコラーゲンマトリックス単独を投与した。表15。
【0286】
【表15】
組織の回収およびトリミング
治癒の12週間後に動物を人道的に安楽死させ、手術した(右)肩を回収し、組織学的な処理のために10%の中性緩衝ホルマリン中に入れた。腱用メスおよび上腕骨用ダイヤモンドブレードソー(Exakt Technologies、Oklahoma City、OK)を使用して、棘下筋腱およびその上腕骨結合部位を通して頭側の半分と尾側の半分に各肩を二分した。トリミングの間に各試料のデジタル画像を撮った。一方の半分(頭側または尾側の面のいずれか)を、脱灰組織診断のために処理し、他方の半分を、未脱灰組織分析のために処理した。
【0287】
脱灰組織学的処理
頭側または尾側の面のいずれかを脱灰組織診断のために処理し、パラフィン中に埋め込んだ。標準的なパラフィン組織学技法および装置(Sakura Tissue TEK V.I.P. Processor、Sakura Finetek USA, Inc.、Torrance、CA、およびShandon Histocentre 2、Thermo Shandon, Inc、Pittsburgh、PA)を使用して、試料を固定、脱灰、脱水、浄化、浸潤、および包埋した。パラフィンブロックを、Shandon Finesseロータリーミクロトーム(Thermo Shandon, Inc、Pittsburgh、PA)でフェイシングし、約8mmの切片を切断した。約250ミクロンの空間的厚さの増分で、各肩から5つの組織切片を得た。Image Pro Imagingシステム(Media Cybernetics、Silver Spring、MD)、Nikon E800顕微鏡(AG Heinze、Lake Forest、CA)、およびSpotデジタルカメラ(Diagnostic Instruments、Sterling Heights、MI)、メモリー機能を拡張したPentium(登録商標) IBM系コンピューター(Dell Computer Corp.、Round Rock、TX)を使用して、全体の対象とする染色したスライドおよび領域について、フィールドバイフィールドで高分解能デジタル画像を得た。
【0288】
半定量的病理組織学的検査
腱退縮の程度(もしあれば)、修復性/治癒組織の評価、腱骨界面、処置に対する組織の応答、血管新生、炎症、コラーゲン方向づけ/線維のアライメント、ならびに挿入部位でのシャーペー線維の嵌合および存在を評価するための格付けスケールに従って、すべての組織切片を格付けした。切片を、処置に対して盲検化して最初に評価し、互いに比較して総合的な治癒に対して評価し、治癒スコアを与えた。各スコアについての判定基準の説明を表16に示す。Image Pro Plusイメージングシステム(Media Cybernetics、Silver Spring、MD)を使用して、較正した全体のデジタル画像によって腱の退縮の程度(もしあれば)も測定した。
【0289】
【表16】
結果
(i)
第1のセットの実験(コラーゲンマトリックス+0.15mg/mlのrhPDGF−BBまたは0.3mg/mlのrhPDGF−BB)では、処置にかかわらず、すべての手術した試料が治癒の12週間後にある程度の腱退縮を示した。平均で、棘下筋腱は、0.15mg/mlのrhPDGF−BB用量群について、骨溝から41.8±3.5mm(平均±標準偏差)、および0.3mg/mlのrhPDGF−BB用量群について、45.2±8.9mm退縮した。
【0290】
第1のセットの実験における処置によって平均した病理組織学的スコアを、表17に示す;これらの結果のグラフによる表示を、
図18に示す。縫合は、治癒の12週間後に、6試料のうち4つについて骨トンネル内で無傷であることが観察された。これは、腱退縮に導く破損は、骨−縫合界面ではなく縫合−腱界面で起こったことを示す。
【0291】
全体的に、処置にかかわらず、上腕骨と天然の腱端部の間の修復性組織は、線維性血管性組織(高度に血管新生した線維性組織)からなり、活性な線維増殖および適度に高密度な分極性コラーゲン線維が存在した。線維芽細胞密度の差は、処置同士間でまったく観察されなかった。すべての試料は、元の腱のアライメントと平行な一次コラーゲン線維のアライメントを示し、あまり組織化されていない線維ポケットを伴った。平均のコラーゲン線維配向および線維密度は、処置同士間で同様であった。
【0292】
【表17】
再生中の挿入部位で、骨コラーゲンと直接、または線維軟骨の層を通じて挿入および嵌合している修復性腱組織のコラーゲン性シャーペー線維が、すべての試料について観察された。平均で、嵌合は、完全に剥皮した骨表面の約30〜40%にわたって観察され、この観察結果は、すべての処置群にわたって一貫していた。手術した試料において観察されたシャーペー線維は、無傷の対照よりも未成熟であったが、下にある骨のコラーゲンとの、これらの再生線維の挿入および連続性があった。少数例で、元の天然の腱の結合部位の一部が、手術した肩において観察された。
【0293】
骨表面の以前の破骨細胞性吸収が、ほとんどの試料中で、元の結合部位の剥皮した領域において観察された。これは、破骨細胞がもはや存在していなかった骨の波打った表面(ハウシップ窩)、または表面が新規骨組織によって覆われていた、波打った好塩基球性反転線(reversal line)によって認識された。一般に、以前の再吸収の領域は、反応性の網状骨の層で覆われており、骨芽細胞が存在した。反応性の骨は、シャーペー線維挿入部を有することが多かった。再吸収の程度は、多様であった。これは、処置にかかわらず、全骨表面の約10〜50%にわたって見出され、一般に、新規網状骨によって覆われていた。反応性網状骨および/または線維軟骨の島が、修復性組織内に時折観察された。
【0294】
すべての試料において、軽度の異物炎症が治癒組織内に観察され、主に縫合物質付近に集中していた。少数例で、単核の炎症の小さいポケットが修復性組織内に観察され、おそらく血管新生または局所的に損傷した組織と関連していた。炎症は主に、多核巨細胞を伴う単核であった。好中球は、一般にまったく観察されなかった。処置にかかわらず、豊富な血管新生がすべての試料中の治癒組織において観察された。新規血管生成を示す血管芽細胞増殖もいくつかの試料において観察され、特定の処置と相関していなかった。この増殖は、まず間違いなく、治癒プロセスに関連した進行中の適応変化によるものであった。
【0295】
脂肪浸潤は、回旋腱板腱引裂の1つの結果であることが公知であり、腱退縮の程度と相関することが示されている(Nakagakiら、J. Clin Orth Rel Res(2008年)およびBjorkenheim J. M.ら、Acta Orthop Scand.60巻(4号):461〜3頁(1989年))。脂肪浸潤は、いくつかの試料中で、筋肉に隣接する末梢組織において観察された。これは、1つの試料(0.3mg/mlのrhPDGF−BB用量)中の修復性組織の中心においてのみ観察された。
【0296】
(ii)
第2のセットの実験(縫合、縫合+コラーゲンマトリックス+酢酸バッファー、縫合+コラーゲンマトリックス+rhPDGF−BB、または無傷の対照)では、棘下筋腱は、縫合のみの群について骨溝から28.1±2.8mm、縫合+コラーゲンマトリックス+酢酸バッファー群について、39.0±4.6mm、および縫合+コラーゲンマトリックス+rhPDGF−BB群について40.9±8.3mm退縮した。
【0297】
縫合は、治癒の12週間後に、すべての試料について骨トンネル内で無傷であった。これは、腱退縮に導く破損は、骨−縫合界面ではなく縫合−腱界面で起こったことを示す。処置内および処置同士間の治癒は多様であった。縫合のみの群についての治癒は、最も多様であり、群の最良の治癒から最悪の治癒までの範囲の試料を伴った。縫合+コラーゲンマトリックス+酢酸バッファー試料は、中程度/高度から中程度/低度の治癒までの格付けの範囲であり、縫合+コラーゲンマトリックス+rhPDGF−BBの試料は、中程度/低度から低度の治癒までの範囲であった。処置自体は、染色した組織スライドのいずれにおいても目に見えなかった。群の最良の治癒から最悪の治癒まで並べた、すべての試料についての治癒スコアを、表18に示す。
【0298】
【表18】
処置によって平均した病理組織学的スコアを表19および
図19に示す。全体的に、処置にかかわらず、上腕骨と天然の腱端部の間の修復性組織は、線維性血管性組織(高度に血管新生した線維性組織)からなり、活性な線維増殖および分極性コラーゲン線維が存在した。線維芽細胞密度の差は、処置同士間でまったく観察されなかった。いくつかの試料は、一次コラーゲン線維のアライメント(コラーゲンのアライメントは、元の腱のアライメントと平行である)の領域を有し、他の試料は有していなかった;ほとんどの試料は、組織化された、および組織化されていないコラーゲン線維のアライメントの両方の領域を有していた。一般に、コラーゲンのアライメントは、退縮した腱端部付近より、骨の表面付近で良好であった。
【0299】
【表19】
一般に、挿入部での腱のコラーゲン性シャーペー線維、および線維軟骨の層を通じた骨コラーゲンとのこれらの線維の嵌合が観察されたが、非常に小さい領域においてであった;嵌合は通常、全骨結合表面の10%未満にわたって観察された。小さい領域のシャーペー線維挿入は、3つすべての縫合のみ(単独)の試料、縫合+コラーゲンマトリックス+酢酸バッファー試料のうちの2つ、およびすべての縫合+コラーゲンマトリックス+rhPDGF−BB試料において観察された。少数例で、元の天然の腱の結合部位の一部が、手術した肩において観察された。
【0300】
骨表面の破骨細胞性吸収が、ほとんどの試料中で、元の結合部位の剥皮した領域において観察された。これは、破骨細胞がもはや存在しないか、または表面が他の組織によって覆われていた、骨の波打った表面(ハウシップ窩)によって認識された。再吸収は、処置にかかわらず、全骨表面の約10〜20%にわたって起こった。3つのすべての縫合のみの試料、および1つの縫合+コラーゲンマトリックス+酢酸バッファー試料において、反応性網状骨および/または線維軟骨が、修復性組織内および骨の表面で観察された。
【0301】
すべての試料において、軽度の異物炎症が、主に縫合物質付近に集中して、治癒組織内に観察された。少数例で、単核の炎症の小さいポケットが修復性組織内に観察され、おそらく局所的に損傷した組織と関連していた。炎症は主に、多核巨細胞を伴う単核であった。一般に、好中球はまったく観察されなかった。豊富な血管新生が、処置にかかわらず、すべての試料中の治癒組織において観察された。新規血管生成を示す血管芽細胞増殖も、処置にかかわらずいくつかの試料において観察され、おそらく、治癒プロセスにおける進行中の適応変化を表した。
【0302】
結論
rhPDGF−BBを浸漬したコラーゲンマトリックスを用いた上腕骨(humural)棘下筋腱再結合の増強により、縫合−組織界面での破損は防止されなかった。治癒の12週間後に、すべての試料において、腱は、上腕骨から退縮し、修復性線維性血管性組織によって置換された。これは、退縮が、手術後の最初の数週間以内に起こったことを示す。
【0303】
試料は、様々な程度の新規骨形成、炎症、血管分布、および挿入部位での、腱を骨に挿入するシャーペー線維を示した。腱退縮、炎症細胞、血管新生、またはシャーペー線維の評価において、縫合のみ、縫合+コラーゲン、および縫合+コラーゲン+1.0mg/mlのrhPDGF−BB群の中で差はまったく確認されなかった。縫合+コラーゲンマトリックス+0.15mg/mlのrhPDGF−BB、および縫合+コラーゲンマトリックス+0.3mg/mlのrhPDGF−BB群の組織切片は、腱修復の増大、および腱コラーゲンの、線維軟骨界面での骨のコラーゲンとの嵌合を示した。
図20Aおよび20B。
【0304】
別段の定義のない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語の意味は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるものである。記載した特定の方法、プロトコール、および試薬は変更することができるので、本発明はこれらに限定されないことが理解されるべきである。当業者は、本明細書に記載されたものと同様または等価な任意の方法および物質も、本発明を実践または試験するのに使用することができることも理解するであろう。
【0305】
本明細書に設けられた見出しは、全体として本明細書に参照により有され得る、本発明の様々な態様または実施形態の限定ではない。