特開2015-179638(P2015-179638A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2015-179638燃焼器、該燃焼器の点火方法および失火検知方法、ならびに該燃焼器を有する改質器の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2015-179638(P2015-179638A)
(43)【公開日】2015年10月8日
(54)【発明の名称】燃焼器、該燃焼器の点火方法および失火検知方法、ならびに該燃焼器を有する改質器の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/06 20060101AFI20150911BHJP
   C01B 3/38 20060101ALI20150911BHJP
   H01M 8/10 20060101ALN20150911BHJP
【FI】
   H01M8/06 G
   C01B3/38
   H01M8/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-57246(P2014-57246)
(22)【出願日】2014年3月19日
(71)【出願人】
【識別番号】301060299
【氏名又は名称】東芝燃料電池システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】川本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】田中 正俊
(72)【発明者】
【氏名】新井 康弘
(72)【発明者】
【氏名】和田 克也
【テーマコード(参考)】
4G140
5H026
5H127
【Fターム(参考)】
4G140EA03
4G140EA06
4G140EB01
4G140EB12
4G140EB32
4G140EB35
4G140EB42
4G140EB43
4G140EB45
4G140EB47
5H026AA06
5H127AA06
5H127BA12
5H127BA18
5H127BA19
5H127BA57
5H127BA59
5H127DA05
5H127DB75
5H127DB90
5H127DC83
5H127EE12
(57)【要約】
【課題】 放電によらずに点火を行えるようにすること。
【解決手段】 実施形態の燃焼器は、ノズルから吹き出る燃料もしくは燃料と空気との混合気を点火器で点火することにより燃焼させる燃料電池発電システム用改質器の燃焼器であって、前記点火器が、通電によって発熱する電気抵抗体からなる発熱部を備えた点火ヒータにより構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから吹き出る燃料もしくは燃料と空気との混合気を点火器で点火することにより燃焼させる燃料電池発電システム用改質器の燃焼器であって、
前記点火器が、通電によって発熱する電気抵抗体からなる発熱部を備えた点火ヒータにより構成されていることを特徴とする燃焼器。
【請求項2】
前記点火ヒータの発熱部の位置は、ノズル先端から一定距離だけ離れた所定の領域に限定されていることを特徴とする請求項1に記載の燃焼器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃焼器の点火方法であって、
ノズルに一定時間空気のみを流すステップと、
ノズルに何も流さない状態で、前記点火ヒータを通電させるステップと、
ノズルに空気と燃料ガスとの混合気を流すステップと
を含むことを特徴とする燃焼器の点火方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の燃焼器の失火検知方法であって、
オフガス燃焼時に、前記点火ヒータの電気抵抗を測定することによって、失火を検知することを特徴とする燃焼器の失火検知方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の燃焼器を有する改質器の制御方法であって、
オフガス燃焼時に、前記点火ヒータに一定の電流を流すことで計測される電圧に基づいて改質器に流す燃料流量を制御することを特徴とする改質器の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、燃料電池発電システム用改質器に適用される燃焼器、該燃焼器の点火方法および失火検知方法、ならびに該燃焼器を有する改質器の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ガスやLPGなどの市販のガス燃料を原燃料とする固体高分子形燃料電池システムでは、炭化水素系の原燃料ガスから水素を精製する際、さまざまな方法があるが、水蒸気改質反応を利用することが多い。
【0003】
+nHO→nCO+(m/2+n)H …(1)
この反応は一般的に吸熱反応であり、反応を進めるために、外部から熱を与える。
【0004】
熱源としては、固体高分子形燃料電池システムの電池セルスタックのアノードで反応せずに排気した水素ガス(アノードオフガス)や、原燃料の都市ガスやLPGを燃焼して、その燃焼熱を利用する場合が多い。すなわち、
+(n+m/4)・O→nCO+m/2・HO …(2)
の反応式で代表される炭化水素の燃焼反応と
+1/2O→HO …(3)
の反応式で代表させる水素の燃焼反応と
を同時に生じさせる必要がある。
【0005】
また、燃焼電池システムを起動するためには、反応式(1)の反応が効率良く生じる温度である600℃〜800℃程度に改質器をあらかじめ予熱する必要があるが、起動時には水素がまだないため、反応式(2)の燃焼反応のみで発生した熱を改質器に伝える必要がある。また、発電中は、アノードを通過したアノード未反応水素ガスを燃焼して熱を得るが、この反応ガス中には改質器で精製したCOやアノード反応で生じたHOを多く含む場合が多く、純水素の燃焼とは異なる燃焼性を示す。また、アノードオフガスだけでは改質や改質水の蒸発、蒸気温度の上昇に必要な熱が得られない場合は、アノードオフガスまたは燃焼空気に微量の炭化水素を混合して燃焼で発生する熱を増加させる方法をとる。
【0006】
このように、アノードオフガスと炭化水素を、同じノズルで燃焼する方式には、起動時は完全予混合燃焼、運転時はアノードオフガスの拡散燃焼と炭化水素の予混合燃焼を行う方式や、起動時は部分予混合燃焼、運転時はアノードオフガスを拡散燃焼する方式や、着火時のみ炭化水素の拡散燃焼、昇温時、および発電運転時はアノードオフガスの拡散燃焼を行う方式などが従来から提案されている。
【0007】
いずれの場合も、燃料電池システムの改質器用バーナーでは、最初に着火するときは、点火プラグに高電圧をかけて放電する着火方式が用いられている。また、失火の検知には、燃焼ガス温度低下や微小な炎電流を検知する検知手段を設けて失火を検知する方法が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−6111号公報
【特許文献2】特開2004−182489号公報
【特許文献3】特開2002−63926号公報
【特許文献4】特許第3880372号公報
【特許文献5】特開2013−87037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、放電を利用した点火方法を採用する場合、放電距離を適正に管理する必要があり、点火プラグとノズルとの位置関係を決める、点火プラグの軸ブレや突出し長さなどの公差をかなり狭くする必要がある。これを怠ると、ノズルから吹き出した予混合気の最適な位置に最適な量のエネルギーが伝わらず、点火しなくなるからである。この公差の厳密な管理が、設計上の大きな制約となっている。また、特許文献5にあるような点火プラグを火炎検知にも併用するような燃焼制御方法は、燃料電池改質器以外の目的では良く使われている方式であるが、高電圧と微小電圧を瞬時に切り替えるために特殊なリレーと回路が必要となる。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、放電によらずに点火を行うことが可能な燃焼器、該燃焼器の点火方法および失火検知方法、ならびに該燃焼器を有する改質器の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態の燃焼器は、ノズルから吹き出る燃料もしくは燃料と空気との混合気を点火器で点火することにより燃焼させる燃料電池発電システム用改質器の燃焼器であって、前記点火器が、通電によって発熱する電気抵抗体からなる発熱部を備えた点火ヒータにより構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、放電によらずに点火を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る燃焼器を組み込んだ改質器の構成を示す縦断面図。
図2】同実施形態の燃焼器を構成するノズルブロックおよび点火ヒータの構成を拡大して示す縦断面図および横断面図。
図3】同実施形態の燃焼器を構成するノズルブロックの外観を示す斜視図。
図4】同実施形態の燃焼器を構成する点火ヒータに接続される電気回路の構成を示す回路図。
図5】同実施形態の燃焼器を組み込んだ改質器80を用いた固体高分子形燃料電池発電システムの全体構成を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
図1は、一実施形態に係る燃焼器を組み込んだ改質器の構成を示す縦断面図である。図2(a)は、同実施形態の燃焼器を構成するノズルブロックおよび点火ヒータの構成を拡大して示す縦断面図であり、図2(b)は、図1および図2(a)中の矢視Aに示す部分の断面形状を示す横断面図である。図3は、同実施形態の燃焼器を構成するノズルブロックの外観を示す斜視図である。
【0016】
本実施形態に係る燃焼器は、ノズルから吹き出る燃料もしくは燃料と空気との混合気を点火器で点火することにより燃焼させる燃料電池発電システム用改質器の燃焼器であるが、この場合の点火器は、通電によって発熱する電気抵抗体からなる発熱部を備えた点火ヒータにより構成される。該燃焼器が適用される改質器80の構成を図1に示す。
【0017】
改質器80には、改質部90、第1の円筒状部材91、第2の円筒状部材92、第3の円筒状部材93、燃焼器ブロック94、燃焼排ガスブロック95、改質触媒層96、熱電対97などが備えられる。これらの要素のうち、本実施形態に係る燃焼器は、少なくともノズルブロック10、このノズルブロック10の側面に配置される第1〜第3の円筒状部材91〜93、燃焼器ブロック94、および点火ヒータ20により構成される。点火ヒータ20は、図2(a)に示されるように、通電によって発熱する電気抵抗体からなる発熱部21を備えている。点火ヒータ20における発熱部21の位置は、燃焼器ノズル下端から一定距離だけ離れた所定の領域、例えば燃焼器ノズル下端位置から10mm程度離れた領域に限定される。
【0018】
ノズルブロック10には、図2(a),(b)に示されるように、燃焼器ノズルを構成する第1〜第3のノズル11〜13が備えられる。例えば、ノズルブロック10の中心部に穿たれた穴とその中の点火ヒータ20との間に形成される円環状断面の空間で第1のノズル11を構成し、第1のノズル11の断面の中心と同心で、PCDが第1ノズルの径の1.5倍程度の値になるように、円周状に等間隔でノズルブロック10に穿たれた12個の直径数ミリの穴によって第2のノズル12を構成し、さらにその外側のPCDが第1のノズルの径の2倍〜3倍程度の円周状に等間隔に穿たれた24個の直径数ミリの穴で第3のノズル13を構成する。
【0019】
また、図1に示されるように、第1の円筒状部材91と第2の円筒状部材92とノズルブロック10とによって構成される空間で燃料ヘッダを形成し、第2の円筒状部材92と第3の円筒状部材93とノズルブロック10とによって構成される空間で予混合燃料ヘッダを構成する。ノズルブロック10には、第1のノズル11につながる穴と、燃料ヘッダにつながる穴と、予混合燃料ヘッダにつながる穴とが穿たれている。
【0020】
図4は、本実施形態の燃焼器を構成する点火ヒータ20に接続される電気回路の構成を示す回路図である。
【0021】
点火ヒータ20には、100V交流電圧を印加するための電気回路30と、一定電流を通流し、点火ヒータ20の電圧を測定するための電気回路40とが、スイッチ回路50を介して選択的に接続されるように構成されている。電気回路30は交流電源31を備え、電気回路40は定電流電源41および電圧計42を備えている。
【0022】
スイッチ回路50には、スイッチS1,S2が備えられ、これらの切り替え制御が制御装置60により行われる。スイッチS1,S2がそれぞれ接点1に接続されると、電気回路30により100V交流電圧が点火ヒータ20に印加される。一方、スイッチS1,S2がそれぞれ接点2に接続されると、電気回路40により点火ヒータ20に対して一定電流の通流が行われている状態でその電圧測定が行われる。
【0023】
こうして構成された燃焼器は、燃焼排ガスヘッダとその下部の4つの円筒部材で構成される改質部90の上部に取り付けられる。
【0024】
図5は、本実施形態に係る燃焼器を組み込んだ改質器80を用いた固体高分子形燃料電池発電システムの全体構成を示す構成図である。
【0025】
この燃料電池発電システムには、改質器80、蒸発器81、脱硫器82、シフト反応器83、およびメタン化反応器84からなる燃料処理装置100、燃料電池アノード極85などが備えられる。また、燃料処理装置100の周辺には、空気ブロワ61、燃料ブロワ62、バルブ71、バルブ72、バルブ73、オリフィス74,75、三方弁76などが配置される。
【0026】
燃料処理装置100やその周辺に配置される各種ブロワ・バルブ等の補機類のそれぞれの動作は、制御装置60により制御される。この制御装置60は、所定の手順で燃焼器の点火を行う機能、改質器80に流す燃料流量を制御する機能、燃焼器の失火を検知する機能など、各種の機能を有する。
【0027】
例えば、制御装置60は、燃焼器を点火させるために、第1段階として燃焼器ノズルに一定時間空気のみを流し、第2段階として燃焼器ノズルに何も流さない状態で、前記点火ヒータを通電させ、第3段階として燃焼器ノズルに空気と燃料ガスとの混合気を流す、3段階の手順によって着火させる。
【0028】
また、制御装置60は、オフガス燃焼時に、点火ヒータ20に一定の電流を流すことで計測される電圧に基づいて改質器80に流す燃料流量を制御する。
【0029】
また、制御装置60は、燃焼器の失火を検知するために、オフガス燃焼時に、点火ヒータ20の電気抵抗を測定することによって、失火を検知する。
【0030】
次に、本実施形態に係る制御装置60による燃料電池発電システムの動作の一例を、図1乃至図4を参照しつつ、図5を参照して説明する。
【0031】
図5に示される燃料処理装置100の起動時には、まず、バルブ73を開いた状態で空気ブロワ61を起動し、燃焼用空気がオリフィス75を経由して第1のノズル11と第3のノズル13へ一定時間流れるようにし、改質器80の燃焼空間内を空気のみの状態にする。
【0032】
次に、空気ブロワ61を一旦停止し、スイッチ回路50(図4参照)のスイッチS1,S2をそれぞれ接点1に接続して、点火ヒータ20に交流電圧を印加して発熱させる。これにより、一定時間経過後、点火ヒータ20の発熱部21(図2(a)参照)は温度が800℃以上に上昇する。
【0033】
次に、空気ブロワ61と燃料ブロワ62とを同時に起動する。このとき、バルブ73を閉止することによって、第3のノズル13にのみ、空気が流れるようにする。また、原燃料については、最初、バルブ71を閉止状態にすることで、三方弁76およびオリフィス74を経由して改質器80側にのみに流れるようにし、プロセス入口には流れないようにする。これにより、改質器80側に流れてきた原燃料は、空気ブロワ61によって供給された空気の一部と混合し、予混合の状態で、改質器80における燃焼器の空気配管に供給され、第3のノズル13へと導かれる。そして、第3のノズル13から吹き出した燃料と空気との混合気は、800℃以上に加熱された状態の点火ヒータ20からの輻射熱を吸収して着火し、予混合火炎を形成する。
【0034】
火炎を形成したのち、スイッチ回路50(図4参照)のスイッチS1,S2をそれぞれ接点1から接点2に切り替えることにより、点火ヒータ20への交流の電圧印加を止めると同時に、点火ヒータ20に一定電流を流してその電圧を計測し、印加した一定電流と計測した電圧とから抵抗値を得る。
【0035】
火炎で反応した混合気は、燃焼排ガスとなって、図1に示す改質器80内の燃焼空間へと流れ、改質部90の最下端で900℃程度の温度となって折り返し、円環断面状の改質触媒層96を伝熱筒を介して加熱昇温し、改質器80を出た後、蒸発器81に入り、改質水に熱を与えて蒸発させ、排気される。
【0036】
蒸発器81で発生した蒸気は、改質器80の原燃料配管を通じて改質触媒層96に入り、プロセスガス流路を水蒸気で充満した状態にする。この昇温中はバルブ73を開放し、第1のノズル11に空気を流して、点火ヒータ20周囲に空気を流すことも可能である。
【0037】
改質触媒層96の下端部に取り付けた熱電対97の指示値がおおむね700℃以上になったところで、バルブ71を開放し、原燃料を脱硫器82へ流す。これにより、第3のノズル13への燃料の供給量を減少させると同時に、改質触媒層96に原燃料と水蒸気の混合物を供給し、水素生成を開始する。このとき第3のノズル13と第1のノズル11への空気供給は停止せず、空気ブロワ61の回転数を調整して流量を調整する。この流量調整過程で火炎は一旦消える場合もある。
【0038】
改質触媒層96で生成した水素を含むガスは、図5に示されるように、シフト触媒を有するシフト反応器83、メタン化触媒を有するメタン化反応器84でCOを除去されたのち、バルブ72を経由し、燃料管を通じて燃焼器の第2のノズル12に供給される。
【0039】
第2のノズル12に供給された水素リッチガスは、第1のノズル11、第3のノズル13から吹き出す空気とノズルを出たのちに混合する。このとき燃焼空間は700℃以上の高温となっているので、水素リッチガス流量が徐々に増加するにつれ自然に着火し、第2のノズル12出口に拡散火炎を形成する。拡散火炎によって、第3のノズル13の空気にわずかに混合した原燃料ガスも燃焼する。
【0040】
メタン化反応器84を出た後の水素リッチガスの一部は、燃料ブロワ62入口に流れ、原燃料とともに脱硫器82へ流れ、水添脱硫反応を生じて、原燃料の硫黄分が取り除かれる。一方、改質器80内で改質触媒層96に熱を伝えたあとの燃焼ガスは、蒸発器81に入り、改質水を蒸発させる。蒸発した蒸気は脱硫器82を出た原燃料と混合され改質触媒層96へ供給される。
【0041】
一定時間経過後、バルブ72を閉止し、水素リッチガスを燃料電池アノード極85に流し、発電を開始する。これにより、水素リッチガスの水素の80%〜90%を消費して水素濃度の低下したアノードオフガスが、第2のノズル12に流れ、燃焼と改質を継続する。このとき、第1のノズル11には、拡散空気が流れている。
【0042】
運転中は、点火ヒータ20の抵抗値を監視し、この抵抗値を用いて、燃料流量や改質水流量を適正な値に設定する。もし運転中に、点火ヒータ20の抵抗値が低下し、設定した閾値以下になった場合には、失火と判定し、運転を停止する。
【0043】
このように、本実施形態によれば、点火プラグではなく点火ヒータ20を点火器に用いるため、従来のように放電に好適な狭い範囲にバーナーノズル位置と点火プラグ電極との距離が入るようにすることをしなくても、800℃以上に加熱された点火ヒータ20によって第3のノズル13から噴出するすべての予混合気の温度を輻射伝熱によって高くすることができるので、バーナーノズル位置や点火器の軸ブレなどの管理公差を通常の製造公差より厳しく管理する必要がなくなる。
【0044】
また、発熱部21を燃焼器出口よりも下流の位置にのみ設置することによって、バーナーノズルへの輻射伝熱を減らすことができるので、点火ヒータ20の発熱を効率よく予混合気に伝えることができる。
【0045】
また、起動の際に、空気パージ実施後、一度空気を止めて、燃焼空気状態に強制的な流れがないようにすることによって、点火ヒータ20が冷却されることがなくなり、ガスと空気を流したときには着火に必要な800℃以上の温度を保つことができる。
【0046】
また、図4に示されるような電気回路30,40を設け、制御装置60により点火動作時はスイッチS1,S2をそれぞれ接点1に設定して点火ヒータ20に交流電圧を印加し、一方、運転中はスイッチS1,S2をそれぞれ接点2に切り替えて、点火ヒータ20に一定電流を印加しながら電圧を計測することにより、印加した一定電流と計測した電圧とから点火ヒータ20の電気抵抗値を知得することができる。例えば、金属の電気抵抗が温度の上昇によって増加する性質を利用して、金属抵抗と温度の関係をあらかじめ計測して得られる対応表を作っておけば、点火ヒータ20の電圧を測定して得られる電気抵抗値から、点火ヒータ20の温度を知得することができる。これにより、燃焼器内の温度を点火ヒータ20を通じて知得することができるので、熱電対などの温度計測器や炎電流測定器などの計測装置を追設することなく、燃料流量を制御することが可能となり、失火判定を行うことも可能となる。
【0047】
以上詳述したように、上記実施形態によれば、放電によらずに点火を行うことができる。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
10…ノズルブロック、11…第1のノズル、12…第2のノズル、13…第3のノズル、20…点火ヒータ、21…発熱部、30,40…電気回路、31…交流電源、41…定電流電源、42…電圧計、50…スイッチ回路、60…制御装置、71〜73…バルブ、74,75…オリフィス、76…三方弁、61…空気ブロワ、62…燃料ブロワ、81…蒸発器、82…脱硫器、83…シフト反応器、84…メタン化反応器、85…燃料電池アノード極、90…改質部、91…第1の円筒状部材、92…第2の円筒状部材、93…第3の円筒状部材、94…燃焼器ブロック、95…燃焼排ガスブロック、96…改質触媒層、97…熱電対、100…燃料処理装置、S1,S2…スイッチ。
図2
図3
図4
図5
図1